非常戒厳事態から尹の弾劾・逮捕まで
ー闘いの教訓を探るー
1 内乱事件―三度の奇跡
この度の激動は3つに時期に分けられる(親衛クーデター・弾劾政局・膠着状態)。時間を追って概観してみたい。
クーデターの当日、韓国社会は数時間の間に二度驚愕した。そして数日間の聴聞で真相がわかるほどに、底知れぬ恐怖を感じることになった。
①「安定した民主主義国家」で、独裁国家へ回帰することになりうる事態が発生したこと
②それが2時間半後に阻止されたこと、国会に結集した200人の議員や5千の市民の団結力がそれを阻止したこと。
③クーデターが成功していた可能性はかなり高く、市民の驚異的速度での立ち上がりと、クーデター側のさまざまな失策や偶然の結合が首の皮一枚でそれを阻止したに過ぎなかったこと、
2.クーデター計画の全貌が明らかに
聴聞で明らかになった事実を並べてみる。
A) 尹と国防相や警察庁長官は、国家情報院(NIS)に逮捕対象者のリストを渡した。
禹元植国会議長 民主党代表李在明 国民の力党代表ハン・ドンフン 韓国再建党党首チョ・グク
元最高裁判所長官 権順一 ら11人
国家情報院の洪昌源副局長は大統領命令に従うことを拒否した。
B) 国防相は郭陸軍特殊戦司令官に、特殊兵団を国会に急行させ、これを占拠するよう命じた。さらに籠城する議員を勾留するよう命じた。司令官は部隊展開中に不安を感じ、個々の兵士に実弾を与えることを禁止し、兵士に本会議場に入らないよう命じた。
C) ヨ警察司令官はチョ警察長官に対し、議員の動向を追跡するよう命令したが、警察長官はこの措置が違法だとの疑いを持ち命令を無視した。
D) 文相鎬情報司令官は、全国選管職員を拘束する計画を立てていた。30人の部隊を派遣し、ロープで縛り、マスクを顔にかぶせて拘留させる計画で、捜査により錐、ロープ、ハンマー、結束バンド、野球のバットなど暴行の証拠が発見された。
E)
その後の捜査で、戒厳令下の人民弾圧計画の存在が明らかになった。1カ月に及ぶ包囲戦が想定され、治安部隊には「警察がこちらに対して逮捕状を執行しようとするならば、それを防ぐために銃やナイフを使え」との指示が飛んだ。(洪明教)
3.弾劾と逮捕に至る経過
A) 奇妙なにらみ合い
クーデターは阻止されたが、それを生み出した力の根源は完全には取り除かれなかった。長官(大臣)や機関の長は政府の要職にそのまま座り続け、与党「国民の力」は国会内で抵抗を続けた。警察・検察の内乱罪捜査に対し、チェ・サンモク大統領代行は拒否権行使を繰り返した。
極右派はフェイクニュースを盲信し、中国、北朝鮮、フェミニズムなどに対するヘイト宣伝を基盤に暴力化した。ソウル地方裁判所西部支所は暴力で破壊され、裁判官は人身攻撃とテロ脅迫にさらされることとなった。
B) 弾劾不成立、非逮捕? の膠着状態を破ったもの
12月7日、国会で尹大統領の弾劾訴追が採決に持ち込まれた。しかし与党の反対で否決された。その日に50万人が国会前に集まった。その後、集会は国会前にとどまらず、国内のあらゆる場所に広がり続けた。広場や路上での抗議行動は続いた。
二回目の弾劾決議が上程された12月14日には、100万人以上の人々が国会前に集まった。これを見た国民の力から10数名の弾劾賛成者が現れ、弾劾決議は僅差で可決された。
ノーベル文学賞を受賞した作家のハン・カンはこう述べている。
戒厳令が撤回されたのは、それに対する市民の抵抗があったからである。戒厳令下での国家的暴力がユンの期待通りに実施されなかったのは、韓国社会全般に、「成功した民主化闘争の生きた記憶、民衆の抵抗の歴史」が、残っていたからである。
4. 韓国の民主運動のこれから
A) 民主党の右往左往
民主党は自由主義的保守派から、社会民主主義的志向の左派まで同居するスペクトラムの広い政党だ。
今回、民主党は広場に結集した市民とともに、様々な野党政治勢力を糾合してクーデターを阻止するのに決定的な寄与をした。
しかしその後は、口では「内乱終結」をうたいながら、その実「選挙工学」に走っている。多くの人々が民主党の「右回帰」を憂慮している。たとえ困難であっても、「内乱反対・憲政守護連合戦線」を作り出すために粘り強く行動するべきだ。
B) 女性運動の前進
ユン氏は男女共同参画家族省の廃止を公言し、右翼的で主に男性、インターネット主導の世論にアピールした。女性活動家たちは政府の政策に反対する大規模なデモを行い、1万5千人が参加した。
劣悪な労働条件の改善を求める女性労働者の闘いも広がった。現在では社会運動に参加する若者の8割から9割は女性であり、20代から30代の女性が、ユン氏に対する現在の反対運動における抗議者の大部分を占めている。
わたしたちには2つの学びが必要である。つまり、韓国の闘いの勝利を心から祝福し、学ぶと同時に、日本にも同様のことが起こり得るという覚悟を持ちながら、どう立憲主義と民主主義を守るかという心構えを構築することである。
南基正さんの感想
① 「12月3日、大統領が非常事態を宣言した夜の10時半から、解除される翌日午前4時半までの6時間、韓国の民主主義は、その脆弱性と強靭性の両方を極端な形で見せてくれた」
② 「戒厳令を知って、怒りが込み上げてきて、闘志が湧いてきた。…国会で解除決議が出され、事態は収拾の方向に向かった。むしろこのとき初めて恐怖感に襲われた。議決が間に合わずに、国会が出動した軍に占拠されていたらどうなっていたろうか」
③ 「最初はその無計画性に驚いた。しかし全貌が明らかになるにつれ、いまはその計画の緻密さに驚いている」
「いまソウルは、反動の政府と進歩の市民社会が、戦争か平和国家かをめぐって一大戦を戦っている.それは。それは人類史の焦点とも言えるたたかいだ」
コメント