この記事は、「日本AALA連帯委員会ニューズ」No.180 に掲載された
ユン・ヨンサン「内乱と弾劾政局、民主改革進歩勢力の課題」
を要約・紹介したものです。原文はかなり長く、事情がわからない人にとってはやや難解なところがあります。ここでは「クーデターを失敗に追い込んだ民衆の力は何だったのか」を評価した部分を紹介し、これからあるであろう大統領選挙や国会議員選挙をどう戦うのかを詳述した部分は省略します。



2025年2月14日 於:フランチスコ会館

「内乱と弾劾政局、民主改革進歩勢力の課題」

ユン・ヨンサン(全国非常時局会議 企画委員長/KAIST教授)

※ 全国非常時局会議は2023年5月、尹政権の検察独裁、民生破綻、戦争危機を
防ぐことを目的に80年代の民主化運動を担った元老を中心に結成された会議。



1 三度の驚愕

情勢の全般的特徴にかんがみて考察する時、初めて接する状況であることは明らかだ。
この度の激動は3つに時期に分けられる(親衛クーデター・弾劾政局・膠着状態)。時間を追って概観してみたい。
韓国社会は数時間の間に三度驚愕した
①「安定した民主主義国家」で、独裁国家へ回帰することになりうる事態が発生したこと
②それが2時間半後に阻止されたこと、議員や市民、さらに良心的な軍人の団結力がそれを阻止したこと
③成功していた可能性はかなり高く、偶然の結合が首の皮一枚でそれを阻止したに過ぎなかったこと、それが数日後に明らかになったこと
その後の膠着事態がまさに現在の韓国を象徴していること

2.内乱回避後の推移

民主憲政擁護勢力の対峙⇒保守勢力の反撃⇒膠着状態

①議会と政府の二重権力状態

尹錫悦大統領のクーデターは阻止されたが、それを生み出した力の根源は完全に
は鎮圧されていない。彼が任命した長官(大臣)や機関の長は政府の要職にそのまま座り続け、「国民の力」は相変わらず与党として振舞っている。

②少数野党の抵抗と決定的手段を持たない多数野党

民主党(野党)は国会を掌握して戒厳解除を議決したものの、政府を掌握するには至らなかった。「国民の力」は大統領の内乱行為を公然と擁護し続けている。

③司法と政府の対立

警察と高位公務員捜査処、検察の内乱罪捜査が進むが、大統領権限代行となったチェ・サンモクは拒否権行使を繰り返し、内乱勢力に活路を与えている。

④二種類の市民たちの対立

広場は今、二種類の市民たちが埋めつくしている。内乱の終息と尹大統領の退陣
を叫ぶ民主市民と、尹大統領を支持する極右派市民である。
極右派は常戒厳を擁護し反国家勢力(野党、労働組合、民主市民団体など)の剔抉を主張する。彼らはフェイクニュースを盲信し、中国、北朝鮮、フェミニズムなどに対するヘイト宣伝を基盤に暴力化しつつある。
ソウル地方裁判所西部支所は暴力で破壊され、裁判官は人身攻撃とテロ脅迫にさらされている。

⑤保守勢力の再起⇒保守勢力と極右勢力との癒着

これらの基盤にあるのは、保守層の危機意識の結集と極右層の取り込みだ。彼らは「李在明こそが諸悪の根源」とし、李在明(民主党首)をキャンペーンの標的とすることで、新しい形のファシズムへの政治結集を図ろうとし、ある程度成功している。


3.保守派の復権を許したもの

①内乱勢力を追い込めなかった初動方針の過ち

現在の膠着状態は民主進歩勢力が内乱勢力や「国民の力」、そして保守メディア
を圧倒できなかったために登場した膠着だ。それはクーデターに賛成か反対かではなく、保守対進歩というイデオロギー対決に収れんしたことの現れである。

朴槿恵弾劾訴追の議決では、234名が弾劾に賛成したが、尹錫悦弾劾訴追にはぎりぎりの204名が賛成して可決された。2016年に比べ民主党の議席が圧倒的な多数だったが「国民の力」内部で弾劾に賛成をした数は、当時と比較にならないほど少なかったのだ。

②民主党の右往左往:口では「内乱終結」その実「選挙工学」

民主党は広場に結集した市民とともに、様々な野党政治勢力を糾合してクーデターを阻止するのに決定的な寄与をした。大統領の弾劾訴追も民主党がいたからこそ可能だった。

大失敗:
しかし、保守・極右勢力が「非常戒厳は民主党と李在明代表から大韓民国を守るためのもの」だと主張し始めたとき、民主党は内乱勢力と民主憲政秩序を守護する勢力との分水嶺を、明確に分離できなかった。
たとえ困難であっても、「内乱反対・憲政守護連合戦線」を作り出すために粘り強く行動するべきだった。与党内非主流派と手を組まなければならず、イ・ジュンソクなど中間派とも協力しなければならなかった。

結果:
民主党はあまりに早く、選挙運動(刈り取り活動)に突入してしまった。立憲主義対クーデター派の対決が、民主対保守の対決図式に収斂されたあと、多くの人々が民主党の「右回帰」を憂慮している。


4.民主党はどういう政党か

民主党は自由主義的保守派から、社会民主主義的志向の左派まですべてを包含したスペクトラムの広い政党だ。彼らは親日派や親独裁勢力との戦いや選挙で勝利しようとする戦闘的遺伝子を、左派と共有している。
その結果左派や進歩といった理念と価値より政治闘争及び選挙での勝利をより重視する特性が党組織のいたるところに刻みこまれている。そのため民主党は進歩的政策が当選に有利な場合は左のライトをつけ、保守的政策が当選に有利なら右クリックをする。時に左折のウィンカーをつけながら右折をして有権者を欺瞞することもある。


5.広場の人々=民主進歩勢力の課題

12月3日、内乱事態を阻止するのに大きな役割を果たした勢力のひとつが広場の市民たちだった。12月11日に広場の市民たちはクーデター糾弾の大集会に結集し、各野党とともに12月14日、弾劾訴追案可決に至る過程で大きな役割を果たした。

弾劾訴追が可決され、尹錫悦が逮捕された後、弾劾賛成集会の参加者が減り、それに比例して、内部の矛盾が表面化した。理由は単純明快だ。第一に、懸案が解決された以上動員数が減少するのは当然だ。第二に、弾劾され拘束された尹側に危機感が高まり動員数が増えるのも当然だ。

内乱終結のための広範な連帯は、反ファシズム連合戦線の形成を求める。合理的な保守から、中道、合理的な進歩勢力までふくむ広範囲な連合戦線が展望される。その過程で、民主党の役割が(犯罪的役割も含め)重要なことはいうまでもない。

2017年の大統領選挙以後の文在寅政府は弾劾連合、キャンドル連合を事実上瓦解させながら、その成果を独り占めした。政策的にも新自由主義に近づいた。その結果が市民の離反を招き、尹錫悦政府の登場をもたらした。民主党と李在明代表はそのような過ちと失敗を繰り返してはならない。