トランプ政権の外交を貫く一本の赤い筋

ーウクライナ処理とMAGA原理の展開ー



この1ヶ月間、ウクライナ問題にかかりきりだった。外国語文献を訳したり自分の見解をまとめたりと、数えたら30本の記事をブログに載せている。

最近になってようやく自分なりのスタンスが見えてきたような気がするので、忘れないうちにまとめておく。


A) Make Only America Great Again 

トランプのいくつかの重要発言、ヘグセスのウクライナ戦略、ヴァンスのQアノン的な対欧決別発言を、もう一度並べてみて最も強烈な印象を受けるのはMAGAの原理だ。
もともとは国内向けに錆びついたアメリカの資本主義と工業を復活させようという国内向けのスローガンだったが、第二期ではそれが世界戦略の基本に据えられた。世界をアメリカを頂点とするヒエラルキーの形に沿って裁断し、支配しようというのである。

数年前から非同盟運動諸国で議論されてきた「スーパー帝国主義」の全面展開と言ってもいいのだが、これまでの国務省・国防省などで追求されて来たネオコン路線とは相当違うものになりそうだ。

最大の違いと思われるのは、アメリカの単独行動主義である。ここでは国内政策としてのMAGAの発展形として、MOAGA(Make Only America Great Again)と呼んでおきたい。

B) 国際政治における多様性の否定

MOAGAは友達付き合いの否定である。世界が多様であることは認めるが、そんな事は知ったことではない。自ら信じた道を進むのみである。もう一つ、世界が多様であったとしても、多極ではない。世界の極となるのはアメリカのみである。多国間主義など以ての外である。本音では国連からも脱退したいのではないか。

一極支配はどのような世界の構図をもたらすか、アメリカを頂点とする臣従国群、隷属国群、その他の有象無象国という三角形が成り立つ。
臣従国群、隷属国群についてはまず関税、反抗すれば経済・金融制裁となる。
有象無象国については放任するが、気に入らなければ問答無用に潰す。シリアが典型的だ。

C)ウクライナを「助ける」理由

白人優越主義はトランプ政治の有力な特徴の一つである。白人の優越感をくすぐることで支持基盤の堅固化に一役買っていることは間違いない。トランプ体制が、どの程度これに染まっているかあまり確信はないが、ウクライナ対応とガザ対応の違いはこれで説明可能である。

そんな19世紀的な発想が今でも生きているのかと思うが、バンス副大統領のミュンヘンでの発言はヘドが出るほどの人種的悪意に満ちていた。ホワイトハウスでの罵り合いの中でも、バンスの最大の論点は「助けてやろうというのだから、感謝せよ」であった。「助けてやろう」というのは白人国だからである。「欧州諸国に任せておけば、ウクライナはいずれなぶり殺しになる。俺達がロシアと話をつけて助けてやる」というのだ。
たしかに「正義のために最後まで戦え」という欧州の主張は、まったく残酷極まりない話だ。欧州にウクライナを最後まで支援する力などない。まことに無責任である。
「停戦交渉に参加させろ」とも欧州は言うが、そもそも停戦に反対の人が出席することは場違いである。アメリカにしてみれば、無責任な連中が束になって来られても迷惑でしかない。戦争継続を主張する人が集まって、別の会議を開くべきだ。


D) ロシアもヨーロッパ、ウクライナもヨーロッパ、しかしパレスチナは非ヨーロッパ

トランプがロシアと単独交渉に入る理由として、「ロシアを助けるのは中国包囲網にロシアも加わらせるつもりだ」というのはあたっていなくもない。しかしトランプ側の本音は、そんなに悠長な話ではないと思う。ヘグセスが述べたたように、「中国との対決を控えて、二正面作戦を続けるようなヒマなどない」ということだろう。

「ロシアは白人国であり、ピョートル大帝の昔からロシアはヨーロッパの一員だ。NATO拡大のためにロシアをぶっ潰すというのは本末転倒ではないか。まず欧州は頭を冷やせ、その間にウクライナは俺が形を付けてやる」ということで話の筋は通る。

余談になるが、カナダを51番目の州にというのも、同じ論理で考えられる。ただしこっちは冗談だ。トランプ支持層は大喜びだろう。メキシコを52番目の州にとは口が裂けても言うまい。

似たような大量虐殺状況(中味はまったく異なるのだが)がガザにおいても起きているが、白人国優越主義で理解すれば、鍵穴はピッタリと符合する。トランプたちのパレスチナ人、敷衍すればアラブ人に対する態度は人間に対するそれではない。
それはアメリカ国内におけるアフリカ系市民への差別、ヒスパニック系への抑圧を見ればわかるように、差別一般では語れないほどのアパルトヘイト思想が明確に存在する。トランプが新型コロナを中国ウィルスと言い換えたりするのも、たんなる受けを狙ったものではない。

D) 白人優越を覆そうとするものへの不安と怒り

白人以外に、世界には中東系、ヒスパニック系、インド系、アジア系、アフリカ系などがいるが、これらの民族が世界に浸透して白人支配を脅かすことに、彼らは最大の危機感を抱いている。

中国は対抗馬としてそのトップランナーの位置にいるが、たんに米国に代わりトップランナーになるというのではなく、アメリカのドル支配と軍事脅迫に対抗する多くの国を組織しようとしている。ここでは対抗軸はアメリカ対中国ではなく、一国支配主義か多国間民主主義(国連中心主義)かの対立になっている。

現代は、いわば現社会体制から来たるべき新社会体制への転換のトバグチに差し掛かっている。そのことをトランプたちも認識している。

その例として国内人口の民族比率がある。アメリカもイスラエルも白人有権者は遠くない将来に過半数を割り込むと予想される。そのときにカネと雇用のアメとムチだけでいつまで白人男性政権を保てるのか、単純多数決システムに代わる何らかの方策があるのか、トランプたちにとって不安の種は尽きない。