Scheerpost
March 14, 2025
廃墟帝国NATOは死んだ
Collapsing Empire: ‘NATO Is Dead’
By Kit Klarenberg
3月3日、イギリスのエリート国防シンクタンク、チャタムハウスのティモシー・アッシュが、ブルームバーグのインタビューで驚くべき発言をした。
彼のメッセージの第一は、「NATOは死んだ」というものだ。
彼は、2月28日の大統領執務室でのヴォロドミル・ゼレンスキーとドナルド・トランプとの衝突を受けて語った。
この大失敗の影響は今日も尾を引いており、ウクライナの指導者が鉱物資源に関する協定に署名するまでの間、キエフに対するアメリカの援助と情報共有の継続をめぐって大騒ぎとなった。
アッシュは件の首脳会談を「待ち伏せ」陰謀と決めつけた。トランプとJ.D.バンス副大統領が、軍事同盟はすでに破綻しており、回復の見込みがないことを「はっきりと明言した」と断言した。
アッシュはバルト三国にも言及した。バルト三国がロシアと戦争になった場合、ワシントンが武力介入すれば、NATOの第5条に違反することになる。そのような介入をワシントンは明らかに躊躇している。
「欧州の指導者たちにとって、NATOはもうダメだということは、もうはっきりしたことだろう。アメリカの安全保障は当てにならない。
...NATOは多かれ少なかれ、すでに死に体だ。
...アメリカがNATOのいくつかの国の後ろ盾になるかどうかについて疑念を呈することさえ、すべてを物語っている。
...これ以上アメリカに頼ることはできない。
私たちは前に進まなければならない。自国の国益、自国の安全保障について考えなければならない。
アッシュの分析は、明らかに欧州の指導者たちにも支持されている。
その1日後、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州圏の「再軍備」計画について8000億ユーロの概要を説明した。
多くの加盟国首脳がこの計画を「ほぼ支持」していると報じられている、
この計画では、欧州が「より主権的で、より責任ある存在になる」ことを求めている。
「この計画は、欧州がより主権を持ち、自国の防衛に責任を持ち、目前および将来の課題や脅威に対して自律的に行動し対処するためのより良い装備を持つようになることを求めるものである。
それにもかかわらず、世論調査では欧州市民は国防費の増加に反対しており、契約業者はこの壮大な計画の実現には「時間がかかる」と警告している。
もしNATOが本当に死んだのだとしたら、それは帝国の棺桶にまたひとつ、長い間待ち望んでいた釘が刺さったことを意味する。
それはまた、過去四半世紀にわたって計り知れない死と破壊と災いをもたらしてきたアメリカ主導の一極秩序が、もはや存在しないこと、そして二度と戻ってこないことをさらに裏付けるものでもある。
グローバル・サウスの住民は、安堵のため息をつくことができる。
- 一方、苦い皮肉なことに、ワシントンの揺るぎない覇権主義を幇助してきた西側諸国は、今や無防備である。
NATOの繰り返す暴力
1999年3月から6月にかけてユーゴスラビアで行われた空爆と残虐プロパガンダの洗礼の中で、一極的世界は形成された。NATOは78日間連続で、ユーゴスラビア全土の民間、政府、産業インフラを容赦なく空爆した。子供を含む無数の罪のない人々を殺害し、数百万人の日常生活を激しく破壊した。
米国がこの破滅的な作戦を公私ともに監督する一方で、英国のトニー・ブレア首相は、非軍事目標に対するさらなる好戦的な行動を熱烈に支持した。政府の法律顧問が重大な懸念と警告を発していたにもかかわらずである。
そしてまた、NATOの攻撃そのものが、国連安全保障理事会の承認なしに行われた完全に違法なものだった。このような介入は、それ以前の10年間には考えられなかったことだ。
1990年代を通じて、ワシントンは、米国のリーダーシップの下に世界がひとつになるという幻想を注意深く作り上げてきた。世界各地でのあからさまな帝国主義的行動すべてに国連の後ろ盾を確保することによって。
ユーゴスラビアへの空爆は、前例のない、大きな議論を呼んだこの「国連の後ろ盾戦略」からの決別であり、特にその後の模範となることを意図したものだった。
1999年4月の『ニュー・ステーツマン』誌の記事は、以下のように予言した。
NATOの無許可爆撃は「一過性のもの」ではなく、 「勇敢な新世界 」の「始まりにすぎない 」と。
その世界では、軍事同盟が世界的な 「暴動鎮圧部隊 」として自律的に行動する。中国やロシアが安保理の拒否権を行使して、米国の海外介入を阻止しそうなときは、いつでも、NATOは国連加盟国に対して「拒否権を行使」する。NATOは単に国連憲章の自衛条項を行使するだけである。
NATOは、国連憲章の自衛条項を行使し、加盟国が「脅威」を感じれば、いつでも、どこでも、何の妨げも国際法への配慮もなしに、攻撃を仕掛けることができる:
『ニュー・ステーツマン』誌の記事はさらに続く。
「脅威は大量の難民の流入、テロリズム、大量破壊兵器である。それは主力戦車ではなく、炭疽菌の胞子の入った袋や神経ガスの小瓶などに入ってやってくる。それは目に見えず、確認もできず、存在するかどうかさえわからない。
しかし、油田地帯の近くのならず者国家が西側に恨みを持ち、脅威として存在する限り、アメリカはその脅威に立ち向かう準備ができている」
『ニュー・ステーツマン』紙が正しく予言したように、 このパラダイムシフトが意味するものは「甚大」(enormous)である。 それは9.11となって実現した。それは戦後の国際安全保障システム全体を弱体化させ、「国連の正当性 」を致命的に破壊する可能性がある。
同誌はさらに、NATOの長年の加盟国が「域外活動の原則」に同意するよう、いかにうまく誘導されたかを記録している。その心理的要因は、「アメリカが東欧諸国と一方的に軍事協定を結ぶ可能性がある。自分たちは置いてけぼりにされる」という懸念からである。いま、まさにそうなっていっる。
帝国の頼もしい、疑うことを知らない忠実な飼い犬として仕え、海外におけるアメリカの経済的利益を守り、ワシントンの法外な価格の、ほとんど機能しない軍事装備をすべて購入すること…それらの見返りとして、欧州各国政府は、NATO第5条を与えられた。そしてそのおかげで、彼らは無敵感を与えられた。
その間、もし攻撃されたら、アメリカや新しい同盟国が助けに来てくれて、自分たちのために戦ったり死んだりしてくれるという妄想の中で、自国の軍隊と産業基盤は陳旧化し腐敗するのを待つしかなかった、
ジョージ・ソロスは1993年11月にこう書いている:
「NATOを通じて...アメリカは世界の警察官として行動することを求められることはない。行動するときは、他国と連携して行動する。
東欧のマンパワーとNATOの技術力が組み合わされば、軍事的な可能性が大きく広がる。NATO諸国が行動する際の主な制約となっている軍備のリスクを減らすことができるからである」
武器をキャッシュで買うという愚策
ウクライナの代理戦争は、この一極集中の自殺行為ともいえる事態を浮き彫りにした。
トランプ政権が紛争を終わらせる決意を固めたにもかかわらず、ヨーロッパの指導者たちは一歩も引く気配がない。ワシントンの援助打ち切りによって突然生じた資金と軍事援助の膨大な不足を補うために、必死に奔走している。
「正義」のレトリックと現実の間にある、この明白な欠陥に対する信頼できる解決策は、いまだに提案されていない。
ウクライナの指導者たちでさえ、「軍事支援に関しては、誰もアメリカの代わりにはなれない」と認めている。
この危険な断絶は、ティモシー・アッシュのブルームバーグのインタビューにも大きく表れている。
アッシュは欧州各国政府に対して、「これ以上アメリカに頼ることはできない」という事実を理解するよう緊急に呼びかけている。
それにもかかわらず、欧州が「これ以上アメリカに頼ることはできない」という事実を前にもがき苦しんでいる…その厳然たる事実を彼は認めた。
彼は自立への意志とは逆に、ヨーロッパが「軍事生産」をめぐる深刻な問題に苦しんでいること、そして「アメリカに頼らざるを得ない」ことを認めた。
ヨーロッパは代理戦争を続けようと構えたが、そのために必要な物資は「アメリカに頼らざるを得ない」ことに気がついたのだ。
アッシュは、ウクライナに必要な武器を購入するためには、ヨーロッパが「現金」を出し合う他に手はないことを明らかにした。
「武器購入の金融パッケージは、我々の能力を超えているとは思わない。私たちの銀行口座にはまだ3300億ドルものロシア資産がある。我々がすべきことは、アメリカ人の信用を取り付けることだ。
トランプは大きな取引が好きなのだから、われわれはアメリカに行って、「あなた方から10年かけて、5000億ドルから1兆ドルのキットを買うとを約束する」と言うべきだ。
トランプは 「大きな取引 」が好きなのかもしれないが、アッシュはワシントンがヨーロッパに「商品」を供給する能力があると仮定している。
国防総省が出資するランド研究所が2024年7月に行った調査によれば、代理戦争によって、欧州の既存の備蓄はすでに底をついている。米国製の弾薬、車両、武器に対する「異常な」レベルの「消費と需要」が続いているからだ。
これは、欧州の「防衛産業基盤」が荒廃したことだけでなく、アメリカ自身が同盟国への供給はおろか、自国の「装備品、技術、軍需品の必要性」を「満たすこともできない」状況に陥っているためだ。
ランド研究所のくだした悲惨な結論は、3月3日、ホワイトハウスの国家安全保障アドバイザー、マイク・ワルツによっても繰り返された。
トランプ大統領の和平案を受け入れなかったゼレンスキーを非難する中で、彼は「今こそ話し合う時だ」と警告した。
この明確なメッセージは、ブリュッセル、パリ、ロンドンではまだ受け入れられていないようだ。ロシアの怒涛のような進撃を食い止めようという、途方もない企てが、毎日のように発表され続けている。
おそらくヨーロッパの指導者たちは、NATO、そしてNATOが強制した一極集中の世界を、自分たちが指揮を執ることで復活させることができると、考え違いしているのだろう。
以上
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アッシュのいう資金源については倫理的に大いに疑問がある。ロシア人が平時に通常の方法で預託したお金を、勝手に凍結して引き出せなくしただけでなく、それを没収して自分の金にして、ロシア人をやっつけるための資金にするとは、あまりに無法なやり方だ。
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