専門用語と辛辣な英国風冗句が飛び交うが、中味はとびっきり面白い。聞き手(カーデン)との間に丁々発止のやり取り。何気ない会話の合間に超重量級の情報が飛び出す。ぜひ読んでみて。ここでは長めの紹介。
ACURA Exclusive
March 10, 2025
ACURA Q&A: イアン・プラウド: モスクワの不適合者からロンドンの平和推進者へ
Ian Proud: From Misfit in Moscow to Peacemonger in London
司会者(James W. Carden)より
イアン・プラウドは1999年から2023年まで英国外交官を務めた。2014年7月から2019年2月までモスクワの英国大使館で経済参事官を務め、痛烈な回想録『モスクワのはぐれ者(Misfit):2014年から2019年にかけてロシアにおける英国の外交はいかに失敗したか』の著者でもある。
彼はまた、Substackで広く読まれている『平和屋 The Peacemonger』の著者でもある。
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カーデン: イアン・プラウド、時間を取ってくれてありがとう。 この72時間、いろいろなことがありました。ゼレンスキーとトランプの一触即発、そしてゼレンスキーとキーア・スターマーとの会談、さらにEU国防相会合と。
いずれにせよ、トランプ大統領に地上軍駐留に同意させるつもりがないのであれば、それはすべて見せかけのものに過ぎないと私には思えるが......。
プラウド: 大局的な見方だが、これは現在進行中の戦略的再配置である。人々は基本的に、自分たちが完全に失敗したと思われないような方法で、ウクライナからの脱出路を確保しようとしている。
ですから、特に英国側では、現在、多くのみせかけの振り付けが行われています。それについてはまた後で。
ゼレンスキーとトランプに関してだけは言っておく。ゼレンスキーは自分をある種のアイコンとして作り上げようとしている。彼はTシャツを着続けている。まったく馬鹿げていると思う。
それは、彼がエンターテインメント出身で、中身よりもイメージやブランドに重きを置いていることに起因している。私は彼を政治家として見ていない。
私は以前、彼をマドンナと比較したことがある。マドンナは常にスタイルを変え、適応してきた。彼はそうしなかった。そして、彼は開戦当初から言っていることを今、トランプ大統領にぶつけている。
つまり、最初の3カ月から6カ月は、イスタンブールでサインしなかったことを除けば、かなりいいプレーをしていたと思う。しかし、それ以来、彼は行き詰まり、ますます権力を一元化し、助言に耳を貸さず、我々は彼の機嫌をとってきた。
私たちは独裁者たる彼を、民主主義の象徴としてまつり上げてきた。驚くべきことだ。
カーデン : 誰も 彼が前任者のポロシェンコを大逆罪で制裁・起訴したことは誰も報道していない。バイデンは、彼なりにトランプ(1期目の)にそうしようとしたのでしょう。
そして、トランプはゼレンスキーを独裁者と呼んだが、実は彼は正しかったのだ。トランプ流に言えば、彼は1年前に行うことになっていた選挙をサボったのでそう呼ばれても仕方ない。
プラウド: 第二次世界大戦中、イギリスでは権力分立が行われた。選挙は保留されたが、権力分立が行われ、すべての主要政党が権力を共有した。チャーチルはそれを主導したが、彼には労働党の大臣がいた。
カーデン : その通りです。超党派と呼ばれるような具体的な取り組みがあった。ゼレンスキーは在任中に11の野党を追放した。彼にはこのような独裁者イメージがある......。
プラウド: ウクライナの戦争が終われば、半年後には選挙ができるだろう。第二次世界大戦後のヨーロッパ戦勝記念日から2カ月も経たないうちに選挙が行われた。日本が敗戦する前にね。
(補注:第二次大戦の勝者チャーチルは、選挙戦の敗者としてポツダム会議にやってきた)
(補注:第二次大戦の勝者チャーチルは、選挙戦の敗者としてポツダム会議にやってきた)
カーデン: 印象的だったのは、スターマーはつい最近まで政治的にかなり問題を抱えていたようですが、今はヨーロッパとアメリカの架け橋のような役割を担っているようです。
プラウド: マンデルソンがワシントンに着任して以来、そんな感じになっている。彼はもともとはスターマーの盟友ではないのだが、スターマーが選んだ人物です。

ピーター・マンデルソン。労働党右派の中心人物。ブレア政権で通産相

ピーター・マンデルソン。労働党右派の中心人物。ブレア政権で通産相
スターマーは、権力に対して真実を語ってくれる労働党出身の人物を求めていました。スターマーは外交政策にあまり関心がなく、ラミー(デビッド・ラミー、現英国外相)は役立たずだった。彼らはディープ・ステートから政策を吹き込まれて、それを受け売りしている。
そして彼らに公平を期すために、2014年以降9人の外務大臣と7人の首相が誕生した。
このことからわかると思うが、イギリスで権力者であろうとすればれば、誰でも、Blob からの助言にべったり寄りかることになるのです。
補注:Blob 特権的官僚を指す隠語。米国と英国では多少意味が異なる。陰謀論者によれば、彼らは地底政府(ディープ・ステート)の声を伝えているとされる。
もしあなたが国内問題に政策の焦点を当て、経済問題で国を立て直すことに関心があるのなら、外交政策ではとりあえず簡単な答えを求めて、Blob の言うままにすることになる。
彼らが政権に就いたときにやったことは、自分たちのアイデアがない中で、トーリ党がロシアでやってきたことをより極端な形で取り入れただけだった。彼らは同じことを言っているが、大衆受けするより厳しい表現を用いたがる。これはまったく馬鹿げたことだ。
補注:トーリー党は「神、国王(または女王)、そして国」を奉じる政治集団。英保守党を指す。未だにこの言葉を使うこと自体が保守的である。
そしてマンデルソンが登場し、人々は今、地球経済問題や貿易戦争などについて考えている。マンデルソンはスターマーにこう言ったと思う:
「トランプ大統領と一線を画し、何があろうともゼレンスキーを支持し、トランプ大統領に逆らい、トランプ大統領の怒りを買い、関税がかけられるリスクを冒すこともできる。
それとも、もう一つの路線もある。それは実務的に米国と協調し、貿易協議を加速させ、関税を回避することだ。(マンデルソンとしては)いずれゼレンスキーはバスの下に放り込むつもりだが、実際にバスの下に放り込んでいるようには見えないように、やんわりと時間をかけて行うのが肝心だ」
カーデン: もしかしたらトランプは、ある意味でスターマーに好意を寄せているのかもしれない。トランプがあんなに公然と彼を窓から放り出したのだから、誰も気づかないだろうから......。
プラウド : その通りだ。しかし同時に、イギリスにおいては「ゼレンスキー」ブランドはアメリカよりもはるかに強力です。だから、ゼレンスキーを捨てるのはアメリカほど簡単な仕事ではない。
世論はかなり後ろ向きだ。主流メディアはウクライナ断固支持で完全に足並みを揃えている。情報独裁が出現している。すべての政党がまったく同じことを言っている。雪崩のように押し寄せるプロパガンダという点では、ロシアよりもひどい。
補注: 2月27日の会談は「米英激突」との報道とは異なり、和気あいあいとしたものだった。トランプは、スターマーが交渉にあたって「とても一生懸命に働いた」とたたえた。スターマーがマンデルソンの忠告を聞いたことは明らかだった。
補注: 2月27日の会談は「米英激突」との報道とは異なり、和気あいあいとしたものだった。トランプは、スターマーが交渉にあたって「とても一生懸命に働いた」とたたえた。スターマーがマンデルソンの忠告を聞いたことは明らかだった。
カーデン : それはとてもショッキングなことですが、私もそれが真実だと感じていました。しかし、今週のディスカッションを通じて私が学んだことのひとつは、私がまったく知らなかった 「D通達 」だった。
それは正式には「国防・安全保障に関する対メディア勧告的警告」(Defense and Security Media Advisory Notices)という。これは、政府の方針から逸脱していると見られる報道機関に対して、政府が発する警告のようです。
(補注:D通達 政府が ”これが我々の路線だ "と示す通達、モスクワの大統領府がやっていることに同じ、日本の首相官邸と総務省に同じ)
それは正式には「国防・安全保障に関する対メディア勧告的警告」(Defense and Security Media Advisory Notices)という。これは、政府の方針から逸脱していると見られる報道機関に対して、政府が発する警告のようです。
(補注:D通達 政府が ”これが我々の路線だ "と示す通達、モスクワの大統領府がやっていることに同じ、日本の首相官邸と総務省に同じ)
プラウド: これは2003年のイラク戦争やニューヨーク9.11にさかのぼるもので、労働党は、スターマーが今トランプとやっているのと同じように、ジョージ・W・ブッシュと手を組みたがっていた。
2001年から2003年にかけて起こったことのほとんど繰り返しで、歴史の極めて重要な時期に、イギリスはアメリカの無二の親友になりたかったのです。有名な話だが、アリスター・キャンベルは、第2次イラク戦争への英国の参戦を正当化するために、情報書類をでっち上げた。
(補注: Alistair Campbell 紹介の必要もないイギリス版 竹中平蔵)
しかし重要なのは、その頃からナンバー10がメディアのシナリオを鉄のように支配し始めたということだ。
(補注:ナンバー10 首相官邸を指す業界用語、住所がダウニング街10番地であることから )
一方では、『オフレコ』、『オフレコ』と連呼し、他方では毎日のブリーフィングのために、かつてないほどメディアに門戸を開いた。しかし、その裏返しとして、メディアは何を語ることができるかをコントロールするようになった。
つまり、この24年間、ナンバー10は徐々にシナリオをコントロールするようになってきたのだ。政府の意向から外れる主要メディアを排除するため、ナンバー10は執拗なメディア・キャンペーンを展開している。
カーデン: 2014年、モスクワにいたのはいつですか?あの騒ぎで人手が必要だったからですか?
プラウド: いや、自分で選んだんだ。
カーデン: では、ドンバスで起こっているこの恐ろしい物語のまさに始まりに、あなたはそこにいたのですね?
プラウド: そうです: ウラジーミル・プーチンが出席した英国でのG8サミットを企画したのは私ですから。つまり、外交官出身者でプーチンが最後に英国を訪問したときに、実際にプーチンに会っていたのは、今の世代では私一人なんです。
それがきっかけで、2014年にロシアがG8の議長国に就任する予定だったことから、私にモスクワ行きを促したのです。それが私の決断の原動力となったのですが、当時は英露関係が、明らかに今の状態よりもずっと良好で健全な状態でした。
キエフの大使館は、当初から度し難い野蛮人だった。「ロシアは悪だ、我々は反テロ作戦を支援する必要がある」という調子です。そして、彼らは最初から例のシナリオを完全に鵜呑みにしていた。そして実際、ロンドンでの作戦班も同じ波長だった。
モスクワの大使がロシア側の意見を聞くのは、本当に本当に難しかった。
カーデン: では、あなたはマイケル・マクフォールの実験中にそこにいたのですね?
プラウド: 実験? ええまぁそうです。まあ、つまり、その後期ですね。彼は完全にしくじったから、たぶん私が到着するのと同時に出て行ったと思う。
カーデン: あなたの部下はもっとプロフェッショナルで、この地域に詳しかったと思いますが......。
プラウド: そう、ティム・バローだ。彼は驚くほど優秀な外交官で、キエフ大使も務めた超優秀な人物だ。彼は毎週ロンドンを往復し、よりニュアンスの異なる視点を持ち込もうとしていた。政策思考にロシアの視点を導入するのは、常に苦労の連続だった。
カーデン: アメリカでは、教授やジャーナリストなど、私がよく知っている人たちでさえ、テレビで「戦争はNATOとは関係ない」と言う。ここでもそのようなことを言うのでしょうか?
プラウド: 特にボリス・ジョンソンのような人たちの話を聞いていると、ウクライナが(NATOに)加盟するという選択肢を否定することはできない、ということがすべてだとわかる。
しかし、ロシアを否定することはできない。ロシアが「実は、我々はあまり満足していない」と言う権利を否定することはできない。
カーデン: ロシアは言うだろう。「NATOは軍事同盟であり、我々には彼らにこう言う権利がある」「No!]
プラウド: NATOについてのポイントは、実はロシアのNATOに対する懸念はずっと以前からだったということだ。少なくとも2008年以来、それは明確だった。これはサプライズではなかった。
実際には、ロシアはバルト諸国がNATOに加盟した2006年までさかのぼって、懸念を抱いていた。そのとき、NATOはロシアとウズベキスタンを経由してアフガニスタンに武器を輸送していたのです。
カーデン: 北部流通ネットワークを通じて...
プラウド: その通りです。2008年のブカレスト・サミット以降も、NATOとロシアの協力関係は表面的には良好だった。しかし、プーチンは2007年のミュンヘン会議でも、2008年のグルジア戦争でも、NATOは我々にとって問題だと言っている。しかし、彼は無視された。
彼は完璧に無視された。それが問題なのだ。そして、彼が無視されたという事実を厳粛に受け止めない限り、この問題を乗り越えることはできないだろう...。
カーデン: プーチンについて誰がどう思おうと、そこがポイントだ。
プラウド: そこがポイントです。プーチンをどう思おうが関係ないはずだ。ゼレンスキーをどう思おうが関係ないはずだ。それは関係ない。問題や利害関係を冷静に見て、それに基づいて決めるべきだ。
カーデン : ラブロフとプーチンは常に、何がレッドラインなのか、見事に明確にしてきた。そこにいささかの謎もない。なのに私たちは、なぜ彼らがこのような行動をとるのか、いまだに理解できないふりをしている......。
プラウド: 「我々を無視するな」。それがロシアの唯一の要求だということだ。
私がモスクワに住んでいたとき、ロシアは私たちと経済的な結びつきを強めたいと考えていた。彼らはいつも、いつも、いつも私たちにこう言ってきた。
そして私たちは、クリミアとドンバスの後では、そんなことはできないと言った。
カーデン : ばかげている。もちろん、今はさらにおかしくなっている。
西側諸国の学者や温情主義的なジャーナリストの間では、ロシアを「脱植民地化」しようという動きがある。
補注:モスクワとペテルブルク以外はすべてロシアの植民地とみなし、ロシア連邦を解体しようとする主張。「ロシアは100以上の民族が暮らす多民族国家であり、脱植民地化していない帝国です」(東大広報室HP)
プラウド: それはウクライナのプロパガンダだ。
カーデン : 1500発以上の戦略核弾頭を持つ国を完全にガタガタにして、不安定化させよう。それは素晴らしいアイデアだ...。
プラウド: 地政学の巨人でエストニアのトップ外交官であるカジャ・カラスでさえそう言っている。それはナンセンスだ。もう一度大人になって、話し合いの場に戻ることだ。
2月27日のトランプとスターマーの会談の主な狙いは、与党になった労働党が、これまでどのような立場にあったのかについて総括し、シナリオの転換を図ることだった。労働党が過去にドナルド・トランプを批判したのは、その人物がいずれまたアメリカ大統領になる可能性を考えれば、愚かなことだった。
スターマーが今やらなければならないことは、外交的ダメージの軽減である。トランプ大統領との関係で最悪のスタートを切ってしまったことを自己批判することだ。国賓訪問の 「気分のいい 」雰囲気は、スターマーをより良い場所に置くためのパッケージの一部だと思う。
ヘグセスはウクライナのNATO加盟は非現実的だと言ったが、スターマーはウクライナの加盟は不可逆的だと言った。トランプ大統領は、ゼレンスキーは独裁者だと言った。スターマーは、ゼレンスキーは民主派の一員だと答えた。
しかし、2月27日以降、そのシナリオは変わった。
スターマーはトランプ大統領との違いを示唆する発言を明確に避けるようになった。これは非常に重要な変化である。というのも、スターマーは、トランプ大統領に楯突くやり方では続けられないとわかったからだ。
以上

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