Rosa-Luxemburg-Stiftung
Brussels Office
26. February 2025

Li Anderssonへのinterview
“Europe Needs to Stand on Its Own Feet”

li-andersson
foto Li Andersson フィンランド政府教育大臣 欧州議会議員

フィンランド左翼連盟(与党)のリー・アンデルソンが、ロシアのウクライナ戦争とトランプ大統領の復帰がもたらす課題について語る


はじめに: 

ロシアのウクライナ侵攻は東欧諸国だけでなく、スカンジナビア諸国にも大きな影響を与えた。とりわけフィンランドに当てはまる、 

フィンランドは以前はロシア帝国に属していた。しかし1917年末、第一次大戦末期に独立した。その後、1939年にいわゆるモロトフ=リッベントロップ条約の一環としてソ連に攻撃されたことがある。

現在、ロシアとは1,300km以上の国境を接している。フィンランドは数十年にわたり東西勢力からほぼ自立した外交・防衛政策をとってきた。

しかしロシアのウクライナ侵攻によって半ロシアの傾向を強め、2023年春にNATOに加盟した。
当時、 Liは社会民主党のサンナ・マリンが率いる内閣の教育大臣だった。また、左翼連合党の党首でもあった。
その後右派政権が崩壊し、中道左派の5党連立政権に取って代わった。彼女は新政権にも残り、2024年夏には欧州議会議員に選出された。

今回、ローザ・ルクセンブルク財団のアルベルト・シャレンベルクが、ブラッセルの欧州議会を訪れ、彼女に話を聞いた。話題は、ロシアのウクライナ侵略、この戦争がフィンランドとヨーロッパにもたらしたもの。フィンランドの安全保障と防衛政策への影響についてである。

質問
ロシアがウクライナに対する侵略戦争を開始して以来、世界の左派論評は、社会主義政党は安全保障と防衛政策にもっと真剣に取り組むべきだと主張している。
あなたはこのような議論に同意しますか? あなたの所属政党である左翼連合はどのように総括をされていますか?

Li

ロシアのウクライナ侵攻が始まったとき、左翼同盟はフィンランド政府の一員だった。私たち党勢力はみな平和を望んでいるが、この侵攻を受けて私たちはより具体的な議論(challenging discussions and debates)を強いられた。

国防と安全保障に関する難しい問題について、とるべき原則的立場を表明する必要があるからだ。

政策路線という点では、ある程度の準備はできていた。たとえば、左翼同盟はすでに軍の徴兵制度に原理的に賛成していた。したがってこの点では政策を言い換える必要はなかった。しかし、国防費の増額については、これまでの主張を曲げてでも、受け入れなければならなかった。

しかし、これはフィンランド左翼の孤立した立場ではなかった。左翼であろうとなかろうと、北欧のどの政党も同じ決断を下した。なぜなら隣国ロシアが国際法に違反して、他国に対して通常戦争を仕掛けて来たのだから。
だから、私たちの立場からすれば、左派がロシアの侵略戦争をはっきりと非難し、武器供与も含めてウクライナを支援することが極めて重要である。

ここ数年間は左派にとって重大な決断の時期となった。最大の理由は、防衛問題についてこれまでとは根底的に異なる考え方を強いられたことだ。それはプーチンが私たちに強いたことだ。新たな決断の内容は、これまでの我々が望んだことではない。もはや戦争の脅威を抜きにして平和の問題を考えることはできない、という厳然たる事実に根ざしたものだ。

質問
ウクライナ戦争とロシアの脅威に対する懸念が国民の間に広がった。広範な懸念を受けて、フィンランドとスウェーデンはNATOに加盟した。左翼同盟はこれらの現実とどのように折り合いをつけたのだろうか。

Li

実際、ロシアの侵攻後、フィンランドで最も難しい問題となったのは、NATO加盟の問題だった。
私たちにとって真の論点は、NATOへの加盟を熱望することではなく、私達に安全保障が必要だということだった。この違いは左翼の立場から強調すべき重要な論点だと思う。それは、東欧の他の国々が現在抱いている懸念と完全に合致する。

わが党は、事実として(as a fact)、フィンランドのNATO加盟を受け入れている。

しかしその一方で、核兵器反対運動を展開したり、NATOが域外で活動したりせず、欧州防衛を優先する、など、NATOがやってほしいことに注文をつけている。

とはいえ、NATO加盟によってフィンランドの従来の外交・安全保障政策がひっくり返ったわけではない。

 NATO加盟以前、フィンランドは経済的にEU加盟国であり、あえて中立を自称することはなかった。
しかし軍事的に非同盟だった。これが私達の選択肢だった。
残念なことに、プーチンは防衛・安全保障政策においてこの選択肢を信用できなくした。 ロシアがこのような安全保障の仕組みを踏み外し、一個の主権国家に侵攻したからだ。

注目! 痛切な自己批判
左派政党として犯した最大の過ちのひとつは、安全保障を含む欧州の代替的な安全保障構造を率先して構築・発展させなかったことだと思う。
もしそうしていれば、NATOの是非を巡りスウェーデンとフィンランドで起こった議論において、少なくとも、NATO加盟に代わる現実的で具体的な選択肢を提示することはできたはずだ。

これが非常に難しい議論であることは理解している。
欧州の左派の中にも他の立場があることは十分に尊重しているし、NATOの抱える厄介な問題を十分に認識している。

しかし、最大の問題は、安全保障に関して他の選択肢がなかった(他の選択肢を提起できなかった)ことだと思います。
いま私は、フィンランドの左派は次のように自己批判すべきだと思う。NATOの役割を可能な限り縮小すること、この点では、もっと早い段階でこのような解決策を打ち出すことができたはずだ。


質問
フィンランドとスウェーデンの加盟からわずか2年で、NATOはドナルド・トランプに率いられることになった。これはヨーロッパにとってどのような意味を持つのだろうか?

Li
トランプがまず推し進めるのは、軍事費のさらなる増加だ。私たちはこれを支持しないし、数値目標を設定することもないと思う。私たちの立場は、防衛費をGDPの2%やそれ以上といった一定の割合で固定化したくないというものだ。
さらに、そのような目標を設定することは、防衛力を測る上で愚かな方法だと思う。
国防支出は抽象的な目標に基づくのではなく、ニーズと優先順位に基づくべきである。

以前、フィンランド空軍が設備を更新し、新しい飛行機を購入したことがある。そのような場合、国防費は増加する。それは仕方がない。
しかしその後は、NATOの目標である2%を下回ることもあだろうし、下回るべきである。

もっと一般的に言えば、フィンランドはNATOに加盟する前から防衛費にかなりの額を費やしていた。これはNATOに加盟しなかった結果である。
とても単純なことだ。軍事同盟がなければ、自力で信頼に足る防衛を行うために十分な支出をする覚悟が必要なのだ。(訳注:これがウクライナ戦争の結論だとすれば、とても単純な誤りに思える)


質問
トランプ大統領の対欧外交の構えから見て、欧州はより独立した安全保障政策を必要としているのだろうか? もしそうだとすれば、そのためには何が必要なのか?

Li
何よりもまず、今この瞬間、安全保障と外交政策の中心的な目的は、米国への依存を減らすことだと考えている。

これは、ロシアがウクライナに侵攻したときに、私たち(欧州)に欠けていた選択肢に立ち戻ることになる。したがって、安全保障政策と防衛の分野における欧州の協力を強める必要がある。これにはNATO内での欧州の比重増大も含まれる。

だからこそ、EUの軍需産業についても議論が必要なのだ。
ヨーロッパの国防費を見てみると、その多くがアメリカの兵器の購入に費やされている。しかし、私たちは本当にアメリカの軍産複合体に資金を提供しなければならないのか? 私は、もっと欧州自身の軍事協力のためにお金を使った方がいいと考えている。

トランプ大統領の発言で、ヨーロッパにとって大きな収穫があった。それは、欧州が自分たちの足で立つこと、そのための準備が必要だということだ。(その際に、ロシアもヨーロッパの一員として、ふくめて考えるべきだと思う)
米国に頼ることはできないし、そうすべきでもない。
もし欧州の対米依存度を下げたいと言うのであれば、一部の国々は、防衛費を以前より少し増やす必要があるだろう。米国への依存度を下げるためにだ。

質問
ヨーロッパの目標は、アメリカからある種の「戦略的自律性」を獲得することだと主張しているように聞こえますが、そういうことですか?

Li
そう、これは左派にとって有益なコンセプトだ。
どうすればヨーロッパの対米依存を減らすことができるのか。これは左派の統一課題であるべきだと思う。また、これは防衛産業以外の産業政策の側面も含んでいる。

今議論されている多くの政策は、欧州左派が唱える産業への公共投資計画と多かれ少なかれ一致している。まずは米国や中国の技術独占に依存しないこと、もうひとつが 欧州内でこれらの産業を発展させること、例えば産業のエネルギー転換などである。

同時に、自立色を強めた世界には、新たなリスクももたらされる、ということも知っている。左派はそのことを伝えるべきだと思う。

すべての貿易や通商関係を断ち切ったり、高関税や保護主義をとるトランプ主義的な政策をとるべきだとは思いません。たしかに戦略的自律性という観点は、ヨーロッパ左翼的な勢力にとって良いことかもしれません。しかし、それは特に排外主義的な極右の主張する、一種の孤立主義的政策と解釈すべきではない。

質問
ロシアのウクライナ侵攻に関して、ヨーロッパは非常に率直で、攻撃を受けている側を強力に支持している。しかしガザに関しては、話はまったく異なる。
ガザ戦争は、グローバル・サウスでは広く非難されているが、欧州連合(EU)とその加盟国は、この戦争についてほとんど沈黙を守っている。
あなたの考えでは、欧州諸国はイスラエルの戦争にもっと強く反対する必要があるのでしょうか?

Li
まさにそのとおりだと思います。
EU加盟国の大多数を含む、いわゆる西側諸国の行動は、多国間機関と国際法の役割に壊滅的な影響を与えるだろう。彼らのダブルスタンダードは、あまりに露骨で目に余る。ウクライナとガザを比較すれば、それがよくわかる。
イスラエルの指導者に関しては、国際刑事裁判所(ICC)からの逮捕命令を履行しないことを表明するEU諸国もある。
一方で、プーチンの逮捕に関しては、グローバル・サウスは我々を支持すべきだと要求している。同じ裁判所が両方の逮捕命令を出したにもかかわらず、である!
このような偽善には驚かされるばかりだ。

国際政治は沸騰点に近づいている。ルールに基づく国際機関の浸食、いや破壊は最も危険な事態のひとつである。
プーチンやトランプのような指導者が望んでいるのは、彼らが、国際法を遵守する時と遵守しない時を、恣意的に選べるような世界になることだ。それこそが、彼らが形作ろうとしているグローバル秩序なのだ。
もちろん、これは平和、国際協力、国際理解、ルールに基づく秩序を目指す勢力にとっては悪い知らせだ。この世界がいかに奇妙に発展し、極右がいかに強くなったかを示している。

ガザでの大虐殺に対する欧州連合(EU)諸国の信じられないほど弱い反応は、南半球と北半球の溝を深めることになると思う。これは左翼にとって非常に重要な問題であり、私たちはこの溝を埋める努力をしなければならない。
私たちは、南北双方のアクターに、次のことを示す必要がある。
それは、国際法の制度と人権を守るために協力し、その意志を堅持する勢力、運動、政党がまだ存在することを示すことだ。


質問
最近、ウクライナでは停戦の話が盛んです。その中で左派の要求はどうあるべきだと思いますか?

Li
左派は、もし停戦が実現し、その後にウクライナの将来についてより永続的な交渉が行われることを望んでいる。
その一環として、ウクライナがどのような多国間安全保障システムの一部になるのかという問題がある。ウクライナを冷遇するわけにはいかないことは確かだろう。

私の考えでは、EU加盟がウクライナにとって最も賢明な解決策であり、優先されるべきだ。理由はNATO加盟よりも簡単だからだ。米国の新政権が拒否しているNATO加盟よりも簡単だ。

そうであっても、ウクライナがEUに加盟すれば、ウクライナはヨーロッパの安全保障アーキテクチャーの一部になる。もちろん現状では、一定の政治的保証はあるが、防衛の観点からはNATO加盟ほど強力ではない。

私は、欧州左派は、この戦争後もウクライナのEU加盟を支持する立場をとるべきだと思う。わたしたちは、正式な加盟要件を満たすよう要求すべきだ。

それは容易なことではないだろう。基準を満たすためには、自国の行政や社会を改革しなければならない。それには多くの支援が必要になるだろう。
それはEUの東方拡大とEU内の資源配分に関する大きな変化を意味する。EUの将来にとって、また一般的にヨーロッパの人々にとっても大きな問題です。なぜそれが重要なのかを人々に理解してもらい、賛同してもらう必要がある。

停戦監視団の構成について

さらに、停戦が実現すれば、ウクライナに平和維持活動が必要になる。停戦を維持するために、ウクライナ領内には外国人兵士がいなければならない。(それだけではない。ヘグセスはグローバル・サウスにも押し付けている)

米国のピート・ヘグセス新国防長官はすでに、ウクライナでの平和維持活動に米兵は参加しないと宣言した。そして「その責任をヨーロッパに押し付けている」。
そのため、停戦を維持するために欧州の存在だけで十分なのかという疑問が生じる。 私は個人的には、ヨーロッパだけで十分だと思う。



質問
左派はウクライナ国内で起きていることにも焦点を当てるべきなのだろうか?
また、トランプが最近要求したレアアース取引のように、欧米によるウクライナの資源略奪を批判すべきではないのか?

Li
そのとおりです。左派はこのような恐ろしい「取引」という名の恐喝を糾弾し、ウクライナ社会そのものに焦点を当てるべきだ。
戦争が始まって以来、私たちはウクライナの国家債務の帳消しを求めてきた。そうしなければ、ウクライナ人は外国の金融機関に完全に依存することになるからだ。そんなものは自治でも独立でもありません。
私たちはこの問題についてのキャンペーンを続け、ウクライナの市民社会、労働組合、進歩的な運動と協力して、天然資源の管理や労働者の権利などの問題に取り組むべきだと思います。

今、ウクライナでは労働法をめぐって大きな議論が起きている。私の理解では、政府は戒厳令下で実施された労働法改正の一部を恒久化しようとしている。これは労働者の権利や労働組合の役割を著しく弱めるものだ。これはまさに私たちが政治化すべき問題だ。
私たちはウクライナの左派と協力し、私たちが共有している理想と政治的目的のために、彼らの活動を支援すべきである。

もう一つの例は、ウクライナの巨大な住宅危機である。なぜ誰もEU内でこのような問題を議論しないのでしょうか? あまりにも多くのオブザーバーが軍事的な問題にしか関心がない。ウクライナ人自身にとって非常に重要な国内問題には関心がない。
これらの問題は、ウクライナの社会正義の問題につながっている。それこそ、私たちが注目すべきことなのだ。

質問
最後に、欧州議会議員として、現在の政治状況における欧州の第一目標は何だとお考えですか?

Li
欧州の多くの人々は、この地政学的な隘路から脱却して、ヨーロッパが一歩踏み出すことを望んでいると思う。世界中に広がりつつある権威主義的、ファシスト的、暴力的な支配に対するオルタナティブを構築することを期待しているのです。

私たちが果たすべき役割について、異なる分析が必要です。国際法、人権、気候危機の解決を求める強い声が必要です。それらは私たちの安全保障と安心にとって、軍事的な政策よりもはるかに広範な影響を与えるでしょう。
しかし、そのためにはハイテク独占企業や世界一の富裕層と闘う意志が必要です。彼らが経済力を政治力に変えようとして公然と動いているからです。

欧州はそうするだろうか? するでしょう。
少なくとも今後数年間、欧州議会での最大の戦いは極右勢力との戦いになるでしょう。どちらが勝利し、この新たな地政学的状況においてEUがどのような立場を取るかが決まることになるでしょう。
それは決定的な戦いになるだろうと思います。

おわり