注目! 10枚の図表から知るドイツ総選挙
Jacobin
2025年2月28日
By デビッド・ブローダー
はじめに
はじめに
2月23日ドイツ連邦選挙(以下総選挙)が施行された。極右政党「ドイツと自由民主党」の支持が大幅に伸び、社会主義政党「左翼党」が復活し、社会民主党はさらに減少した。
何が起きたのかは、次の10のグラフで知ることができる。
議会構成の変化
議会構成の変化
総選挙では、5つの主要政党を代表する議会が誕生した。これまで議席を保有した2つの政党、すなわち新自由主義派の自由民主党(FDP)と旧Linke保守派のザフラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)は、5%の基準に満たず議席を確保できなかった。
図1 会派別議席数
議席数(全630議席中)
Union=キリスト教民主党、SPD=社会民主党、AfD=ドイツのための選択肢、Grüne=緑の党、Linke=左翼党、SSW=地域主義者
分析:
* 最大の勢力は、保守勢力のフリードリヒ・メルツ率いるキリスト教民主党(黒で示し、連合)だ。同党は過去に中道左派の社会民主党とGroKo(大連立)と呼ばれる体制で繰り返し政権を握っており、今回もそうすると見られている。
* この連立は以前ほど巨大な勢力ではない。この連立は、1966年の最初の連立政権では496議席中447議席を占めた。2005年にはアンゲラ・メルケル政権下で614議席中448議席を占めた。しかし今回、両党合わせて630議席中328議席というわずかな過半数を占めている。これは、2つの歴史的な「大衆政党」に基づく大連立だが、支持者の半数以下(キリスト教民主党29パーセント、社会民主党15パーセント)の支持しか得られない初の大連立となる。
* 緑の党とこの2党を含む連立政権は依然として可能だ。キリスト教民主党と極右のドイツのための選択肢を合わせると名目上の多数派となるが、この連立政権は今のところあり得ない。しかし政府が軍事費などに対する現在の憲法で義務付けられた借入制限を撤廃しようとするなら、憲法改正が必要となり、3分の2の多数派が求められることになる。
「勝ったのは誰か、負けたのは誰か」
まず敗者は政府を構成する与党各党だ。
ショルツ首相率いる社会民主党は、2021年の前回連邦選挙以来9パーセントも支持率を落とし、1887年以来最悪の結果となった。ショルツ首相率いる政府は、自由民主党のクリスティアン・リンドナー財務相が借入拡大の要請に断固として抵抗したため、11月に崩壊した。自由民主党は7パーセント支持率を落とし、議席はゼロで、リンドナー氏は引退を余儀なくされた。連立政権を組むもう1つの政党である緑の党はわずかに後退した。
勝者は主に右派で、その中心であるキリスト教民主党(バイエルン州のキリスト教社会同盟と提携しているため連合として知られる)が、与党に返り咲く結果となった。しかし同党の得票率は4%の伸びにとどまり、選挙前の予想を大きく下回った。
極右で反移民を掲げる「ドイツのための選択肢」は得票率を倍増した。左翼政党「左翼党」もほぼ同じ得票率となった。元左翼党首のワーゲンクネヒト率いる分離政党(BSW)は、得票率4.97%に達したが、議席獲得には1万3000票足りない状況となった。
図2 党派別得票率、前回(2021年)との比較
なぜ人々は「ドイツのための選択肢」(以下AfD)に投票したのか?
図3 「生活が苦しい」と答えた有権者の投票先
世論調査で答えた有権者の中で、「経済的に苦しんでいる」とと答えた人たちの39%はAfDを支持した。それは 全国平均の21 パーセントを大きく上回った。
一方この人たちの層で緑の党を支持する人は6 パーセントにとどまった。これは全国平均の半分に過ぎなかった。
社会民主党とキリスト教民主党はそれぞれこのグループでより悪い結果となり、左翼党とザフラ・ヴァーゲンクネヒトの党はよりよい結果となった。
AfDに投票した理由を尋ねられた有権者は、経済問題ではなく移民問題を優先した。
AfDのグループ別投票数と2021年との比較
左列:社会グループ 全員 / 労働者 / 従業員 / 自営業者 / 年金受給者 / 失業者
経済状況が悪いと、他の人が過激派と呼ぶ政党に寛容になる可能性があり、そのような政党の支持者が世論調査で経済状況に満足していると答えることはなさそうだ。それでも、ブルーカラー層や失業者の間で AfD が圧倒的な支持を得ていることは、この政党が経済的な不満を利用していることを示唆している。
左翼党の健闘、最大基盤は都市部の若い女性(35パーセント)
*「左翼党」は、すべての年齢層と職業で得票を伸ばし、全国で約9パーセントを獲得した。初めて投票する人々(27パーセント)と25歳以下(25パーセント)の間では、大幅な伸びを見せた。
* 世論調査で最も強いグループは、都市部の若い女性(35パーセント)だった。これらすべてのカテゴリーで、左翼党は最大の政党だった。また、ベルリンでも最大の政党(20パーセント)であり、旧西側諸国で初めて議席を獲得した。
地方の高齢男性の間での得票率は大幅に低かった(4パーセント)が、それでも数週間前の全国平均の世論調査スコアよりは上昇した。
* 労働者層での同党の得票率は同党の全国平均と同程度に上昇し、失業者層ではさらに上昇した。新たに共同党首に選出されたイネス・シュヴェルトナー氏は、「労働者階級の有権者にもっとアプローチしたいと考えている」とジャコバン紙に語った。
これらの数字は、AfDがこれらの層で享受した上昇とはまったく異なることを示唆している。
図7 左翼党への投票者は21年選挙のときどの党に投票したか
左翼党に移った有権者は、主に緑の党(Gruene) と社会民主党(SPD)からであり、棄権者(灰色)からも少数あった。
図8 左翼党投票者はどのテーマで投票先を選択したか
「あなたの選択に最も大きく影響するテーマは何ですか?」の質問に対し、
有権者は「社会保障」を最優先事項として挙げ、次いで「環境・気候」Umwelt u Klima、「治安」Innere Sicheheit、「平和維持」Friedenssicherungと続いた。
ドイツの若者はどのように投票したのか?
* 若いドイツ人は、伝統的な政党に引き入れられる可能性は低い。これは今回の選挙でも確認された。緑の党にも嫌気がさしたようだ。政府の経済実績やアンナレーナ・バーボック外相の頑固な親イスラエル姿勢に嫌気がさしたのかもしれない。
* 論説記事の多くは、疎外された若者が極右に傾いていると予想した。しかし若者の投票は性別によっても大きく分かれた。若い女性の間では左翼党が3分の1以上の票を獲得して楽々と1位になった。若い男性のいくらかは右翼政党に惹かれていたが、女性はそのような歪められたマチズムを拒否した。
図9 18 歳から 24 歳の青年層の投票先。左が女性、右が男性
ザーラ・ヴァーゲンクネヒトの党(BSW)は右翼の支持を獲得したか?
* 左翼党とBSWは左翼の危機に際しまったく異なる対応で望んだ。左翼党は他の緩やかに「進歩的」な政党から、多くの有権者を動員しようとし、成功を収めた。BSWは労働者階級と下層中産階級にアピールし、AfDの路線との激突を回避しつつAfDの既存支持基盤を崩そうとした。
* このような組織の性格からして、その政策には多くの矛盾を内包している。国籍選択の自由を否定する「移民の停止」路線、福祉と経済に関する社会民主党的路線など中道への歩み寄り、一方で、ウクライナ問題ではキエフ政権への軍事援助反対と強い親パレスチナ路線を堅持した。
* 残念ながら、この党は AfD の主張に対抗するのではなく、AfD 自身の主張を助長するキャンペーンを行ったに過ぎない。そして期待したAfDの既存支持基盤崩しは実現せず、BSWは主に社会民主党と左翼党からの乗り換え者を獲得するだけの結果にとどまった。(下図)
* この党の反乱戦略はすでに大きな困難に直面しているようだ。しかし平和問題で掲げた路線には注目すべきものがあり(フランスのメランシオンと共通する)、今後左翼勢力内部で共有すべき内容を含んでいる。
図10 BSW投票者の21年選挙における政党選択
Contributors
David Broder is Jacobin’s Europe editor and a historian of French and Italian communism.










コメント