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202237

ウクライナ:南アは平和の側にしっかりと立つ

Ukraine: SA firmly on the side of peace


シリル・ラマポーザ大統領が大統領執務室からお話します。
大統領は、「ロシアの侵略を非難する投票を控える」という政府の決定を確信しています。
ウクライナの紛争解決は、強固でかつ持続的なものでなければなりません。

cyril-ramaphosa



親愛なる南アフリカの友よ

国と国、そして国内での紛争が銃口で解決される世界にいると、「両者の違いは交渉、対話、妥協によって一番うまく解決される」という見方は、あまりにも楽天的に見えるかもしれません。
それでも、交渉を通じて和解し、和解を通じて民主主義を達成した国として、私たちは確信しています。
「武力ではなく交渉を通じて、平和を達成することは間違いなく可能だ!」ということです。
これは、20世紀の末に民主主義が到来して以来、一貫してきた原則です。そしていまも外交政策の方向性をきめるうえでの重要なポイントです。


国連総会でウクライナ決議に棄権した理由

南アフリカは先週の国連総会で、ロシアとそウクライナとの「紛争」に関する投票を棄権しました。理由は、その決議が意味のある関与の仕方を前提としたものではなく、有効な呼びかけではなかったからです。

先週の国連で決議が可決される前でさえ、すでにロシアとウクライナの当局者の間の協議は始まっていました。
南アフリカは、国連決議がこれらの当事者間対話を何よりも歓迎し、「協議が成功するための条件」を作り出すために、国連が努力するよう期待しました。

しかし政治的対話による平和的解決の呼びかけは、最終テキストの結論に近い部分の1センテンスに追いやられています。この決議は、当事者が対話の努力を継続すべきだという励ましと、国際的な支持を提供するものではありません。

平和的な交渉を求めることは、国連が設立された価値観と一致しています。

私たちは、国連安全保障理事会が平和と安全を維持する責任を果たすことができなかったことを特に懸念しています。21世紀の課題に対応するためには安全保障理事会の改革が必要です。今回の事態は、長年の安保理改革の呼びかけに弾みをつけるものとなっています。

国連憲章は、第一に平和的手段によって紛争を解決するよう加盟国に命じています。そして、紛争の当事者は、まず交渉・調査・調停・仲裁などのメカニズムによって解決策を模索すべきであると述べています。このように、結論はまことに明確です。

ロシア・ウクライナ間の紛争が勃発して以来、つねに南アフリカの立場はこの呼びかけを確認することでした。

ウクライナでのロシアの軍事作戦を非難する投票を棄権することで、「南アフリカは歴史の間違った側に身を置いた」と言う人もいます。それは違います。南アフリカは、世界がもはや戦争を必要とせず、その余裕もない今という時代に、しっかりと平和の側に立っているのです。

ウクライナで示された敵対行為の結果は、今後何年にもわたって世界中に、負の記憶として残るでしょう。妥協と敵意の停止は武力や経済的圧力によって達成されるかもしれませんが、それが揺るぎなく永続的な平和につながる可能性は低いでしょう。


大事なのは柔軟かつ強固で持続可能な合意

ロシアとウクライナの間の歴史的な緊張は、仲介されるいかなる協定も長期的に持続可能であり、紛争の両当事者の懸念に対処することをさらに重要にしています。

ロシアとウクライナの間には歴史的な緊張関係があります。このためどのような合意であれ、長期的に持続可能で、紛争当事者双方の懸念に対応できる柔軟さがもとめられます。

私たち自身にはアパルトヘイトを終わらせた経験と、その後アフリカ大陸の様々な紛争を仲介してきた経験があります。その結果私たちは、自分の果たすべき役割について多くの経験を積み重ねてきました。

アパルトヘイトを廃止させた運動の教訓

教訓の1つ目は、一見手に負えないほどの食い違いでさえ、交渉のテーブルに着けば解決できるということです。2つ目の教訓は、たとえ交渉が決裂したとしても、いつかは交渉を再開することができるということです。私たち自身の交渉プロセスがそうでした。そして、当事者が顔を突き合わせて話すことができないように見えても、いつか突破口は起こり得るということです、私たちがそうでした。

私たちが交渉と対話を引き続き支持し、呼びかけることは、「人権」への関与を軽んじるものではありません。
紛争の勃発以来、私たちは、戦争は紛争の解決策ではないと信じてきました。戦争は民間人に対して深い傷を与えます。私たちが一貫して懸念を表明し続けてきた理由は、戦争が人間の深い苦しみにつながていると信じるからです。

私たち南アフリカ国民は、南アフリカの人たちだけではなく、パレスチナ、西サハラ、アフガニスタン、シリア、そしてアフリカ大陸や世界中の人々の人権と基本的自由を推進することに尽力しています。
そしてロシアとウクライナが真剣な交渉を交わし、紛争の終結への道を切り開くために、前向きな議論を積み重ねるように望んでいます。


交渉には粘り強さが必要だ

事態の緊急性に比べると、交渉のペースは遅いかもしれませんが、それでも進展は着実にあります。国際社会のあらゆる努力は、これらの協議を支援し、両者を共通の願いに結びつけることに向けられるべきです。

先週、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「敵対行為の即時停止と平和のための緊急交渉に貢献するために全力を尽くす」と語りました。私たち南アフリカの国民はこの言葉に大いに勇気づけられています。

私たちはロシアとウクライナに、紛争を調停にかけるようもとめます。そして敵対行為の停止につながる合意に達するために全力を尽くすよう求めます。これは国民の総意です。

ロシアとウクライナの人々は、お互いが密接な歴史、民族、文化遺産を持つ隣人同士です。両者の関係は長い伝統を持っています。それは両者の友好と交流の積み重ねの上に立ったものであり、永続的な平和に真に値するものです。

誠意を以て…

南アフリカ共和国大統領
シリル・ラマポーザ
2022年3月7日