脳科学メディア から


6億3000万年前:刺胞動物の登場。『散在神経系』と呼ばれる神経網を形成。

5億4200万年前:カンブリア紀の開始。海中には多様な生物が出現し、その多くが神経細胞が集合した“神経節”を獲得した。この集中神経系が、やがて『脳』となる。

5億2400万年前:無顎類(ヤツメウナギの祖先)が登場。

4億6000万年前:顎口類の登場。ミエリン鞘を獲得し神経伝達速度を高める。その後の進化により、終脳(=大脳)が大きく拡大。
さらに顎口類において、脳の前方に存在していた鼻孔の位置が移動した。これにより終脳を形成する空間が確保された。

3億7000万年前:両生類の登場。魚類の一部が両生類となり、陸上へと進出した。脳幹が大部分を占め、大脳・小脳の割合は低かった。また『嗅球』が大きいという特徴があった。

以下、脳進化に関する記述が続くが、2016年の記事としてはやや古めかしいものだ。

この記事で注目されるのは無顎類が顎口類に進化する過程での「断絶」だ。

それは髄鞘化と嗅覚機能の移転だ。とくに後者が注目される。

ここで顎口類の脳の勉強へとシフトしていきたい。]

円口類から顎口類への飛躍

顎口類というのは面倒なカテゴリーだ。
どの世界にも分類マニアがいて、厄介な定義を作る。それは無視しよう。
要するに、サメ,エイなどの軟骨魚類のことだ。発生学的にヤツメウナギより高等で硬骨魚類より未発達な徒だ。
その多くはすでに絶滅しており、古生物学の対象でしかない。
それらも含め、円口類から顎口類への進化がいかに巨大な飛躍だったのかを知らなければならないだろう。その一つとして終脳の出現があったということを確認すべきであろう。

ネット上ではあまり系統的に書かれたものはなさそうなので、とりあえず落ち穂拾い的作業から開始していくことにする。

JT誌生命研究館のサイトから「顎から生まれる可能性」という記事

※ 円口類(ヤツメウナギ)と顎口類を比較する。顎を獲得した魚は餌を噛み砕いて食べられるようになった。そのため中脳回路や顎を動かす三叉神経も発達した。
新たな食物対象を捕らえるべく、脳は前方へ発達し、大きくなった。また食物を介した感染に対処するため胸腺を始めとする免疫系が発達した。

※ 新しい器官や組織が誕生するとき、遺伝子の数が増えることが多い。これは遺伝子重複と呼ばれる。

※ 新しい機能を発生させるとき、1から新たに遺伝子を創造するより、既存の遺伝子を重複させ、新しい機能に作り変える方が簡単だ。

※ ニワトリとヤツメウナギのゲノムを比較すると、2回の全ゲノム重複をおこした後分離してきたことが確認できる。

*ヤツメウナギに始まる脊椎動物と、その祖先とみられるホヤ幼生とのゲノムを比較すると、ここでも全ゲノムレベルの重複が2度起こっている。
genomutyouhuku

※ 顎口類で増大する遺伝子のほとんどは、神経間のシグナルに関わるペプチドや、神経をミエリン鞘で囲むために必要な遺伝子群だ。

※ 八つ目ウナギの免疫系は、顎口類の免疫系とは異なった独自のものである。

* しかしゲノム変化と新機能の照応関係はほとんど分かっていない。
後脳の分節化に着目した遺伝子が検討されている。ここでは、Hox遺伝子が顎口類における後脳の分節化に関わっていると推測されている。


ゲノムの話はとりあえず置いておく。
顎ができる、つまり獲物を適当な大きさに噛み切れるという能力は、脊椎動物に巨大な可能性を与えたようだ。この咀嚼能力の獲得に関連してさまざまな能力が開発される。それが脊椎動物を生物界の王者に仕立てたということのようだ。
脳の続発性変化が幾つか取り上げられているが、それ以上の言及はない。
咀嚼・嚥下に関わる運動神経、獲物を探し、殺し、食べるための脳の発達。とりわけ嗅脳→終脳の転化と狩猟関連神経の髄鞘化、この2点が強調されている。
「かなり私の認識も一気に進んだな!」という実感がする。