鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

タグ:霊長類

余分な分類を削ぎ取って本質的な特徴にもとづいて経過を並べてみる。

1.元祖「霊長類」の登場

これはDNAの世界のことである。哺乳類から霊長類がいつ頃分かれたかを、現存霊長類のDNA解析から探っていった。
すると、哺乳類一般のDNAと分岐したのが8150万年前のことと推定された。
もちろん絶対年代に関してはかなりアバウトだから1億年前から7千億年前くらいの幅はみておいたほうが良いかもしれない。
このときはまだ中生代の白亜紀、恐竜全盛の時代である。哺乳類は昼は葉陰にひそみ、変温動物の活動が鈍る夜になるとコソコソと動き回る、一種の盗っ人稼業であった。
哺乳類の中でも階層はあるわけで、霊長類のご先祖はその中でも位の低いモグラもどきの生き物であった。

2.爬虫類が絶滅して哺乳類が主役に

6500万年前に隕石が落ちて天候が激変して爬虫類が絶滅してしまった。
そこで哺乳類が一軍に上がったのだが、その時霊長類はまだ主役にはなれなかった。
霊長類が飛躍するのは約5500万年前、彼らが樹上生活を送るようになったからだが、それはネズミやリスから逃れるためであったと言われる。ここで初めてプレシアダピスという名がつけられる。
プレシアダピスは、拇指が他の四指と向かい合い、両眼で立体視をし、色覚は完全である。
すでに立派な霊長類だ。
しかしそれは哺乳類としての進化の王道ではなく、そこをかなりバイパスし、ジャンプアップすることによってたどり着いたことに注意しておく必要がある。

3.プレ・プレシアダピスはいずこに

しかしこれでは歴史もクソもない。昨日のモグラが教は立派な霊長類になってしまった。芝居の台本ならよくある話だが、脳の発達とかを気にする人間にとっては、このミッシングリンクはあまりにも大きい。
この間隙を埋めるものとしてプルガトリウスやカルポレステスなどの化石生物が注目されるのだが、なぜか日本の学会は頑な態度を取り続けているように思える。

プルガトリウス
                                                        プルガトリウス

4.北米のプレシアダピスがヨーロッパに移動

5千万年前に北米の気候が寒冷化または乾燥化し、プレシアダピスがいなくなり、ヨーロッパに現れた。
やがてプレシアダピスからアダピス類とオモミス類が分化した。アダピスは原猿類となり、進化を止める。オモミスは概ね真猿類の祖となっていく。
やがてヨーロッパもサルには行きづらい場所になり、アフリカとアジアへ移動する。

5.バカバカしい2つの分類

アフリカの真猿類の一部は大西洋を越えて南米大陸へと移動する。
南米はヨーロッパにとって新大陸だから移動したサルは新世界ザルと呼ばれるようになった。移動しなかったサルは旧世界ザルということになる。
ナンセンスな分類である。
もう一つ、南米に移ったサルはその後鼻の穴が横に広がった。だからそれは広鼻猿類と呼ばれる。広鼻猿類から見るとアフリカに残ったサルは鼻の穴が広くないから狭鼻猿類と呼ばれるようになった。
これもナンセンスな分類だ。
思うにこれは「権威」が増えすぎると起きる現象だ。とかく「権威」は教科書を作りたがる。教科書は必ず売れる。弟子たちに分担執筆させて、そのかわりに弟子たちの学校で採用させれば、みんな喜ぶ。
そうやって教科書がたくさんできると、定義や分類もその分増えていく。「アカデミー」というのはカビが生えたような世界だから、そのようなことはまったく気にならないのだ。

6.真猿類と類人猿の分岐

アフリカに残った真猿類はエジプトピテクスと呼ばれる。これがオリゴピテクスとプロプリオピテクスに分岐する。
この内、プロプリオピテクスが類人猿へと分化していくようだ。なおインドで発見されたラマピテクスがヒトの祖先ではないかと言われたことがあったが、現在では否定されている。
この後はホモ属の進化史年表として扱ったほうが良さそうだ。

類人猿DNA分岐

ということで、かなり荒っぽくまとめてみても、研究の停滞と荒廃ぶりが見て取れる。

本格的に勉強しようと思うなら海外文献をひも解かなければなさそうだが、こちらにはそれほども気持ちもない。誰かが早く建て直してくれることを祈るばかりである。



霊長類(サル)の進化の歴史には2つの大きな謎がある。

一つは、おそらく哺乳類の中でも傍流と考えられるサル類(原猿)がなぜ適応拡散を遂げ、「霊長」類と呼ばれるに至ったのか、という問題。八代将軍吉宗みたいのものだ。
もう一つは、サル類の中でも異端系とみられる類人猿系が一旦衰退した後なぜ復活したのかという問題である。特に、真猿系と縄張り争いをせずに棲み分けをした理由が良くわからない。
この点に関してなかなかツボにはまった答えを示してくれる文章が見つからない。
それ以前の問題として霊長類の進化史そのものが複雑怪奇で百家争鳴の様相を呈している。細かなところはどうでも良いので最大公約数的なものを出してくれないかと思うのだが、そこはそれ、専門家の意地というものがある。

もう一つ、サルの歴史を語るときに、大げさに言えば「史観」として確認しておくべきと思うことがある。サルという動物ほど天変地異の中で弄ばされ、その中をしぶとく生き抜いてきた動物はいないという実感である。世界に拡散し定着する前のホモ・サピエンスをふくめ、何度も、いとも簡単に絶滅している。ただ絶滅するだけなら、全球凍結とか爬虫類の絶滅みたいな事はあったが、「死んだと思ったらまた生き返った!」みたいな話はそうないと思う。

このことから2つのアスペクトが引き出される。
一つは「サルは“霊長類”などというものではない」ということである。哺乳類の種の中で「よーいドン!」をして、たまたま生きた時代が良くて時流に乗っただけの存在だということである。霊長類という分類名はやめるべきではないか。私はサル類で良いと思うのだが。
もう一つは、そんなサルの歴史の中で突然変異的にホモ・サピエンスが発生するのだが、その発展は進化の歴史の中で特異的なスピードだとおもう。
ここで脳の話に飛んでしまうのだが、いわば突貫工事で作り上げ、先輩格の鳥の脳に追いつき、それを追い越した秘密はどこにあるのか。その異常さを包摂しながら議論を展開しなければならないのではないだろうか。
これはマクリーンの脳進化論へのもっとも強力な反論となるであろう。名付けて「ブザマなれども強力脳」、あるいは継ぎ足し継ぎ足しの「温泉ホテル脳」である。大脳と小脳は新館と別館である。

むかし撃墜王坂井少尉の本を夢中で読んで、「美しく強いゼロ戦が、戦争末期になると、ブザマで強いグラマン」に負けてしまうのを悲しく悔しく思ったものだ。
鳥の脳がゼロ戦で、ヒトの脳はグラマンに相当するのだろう。と言っても、さすがに「グラマン脳」といってピンとくるヒトはもういないだろうと思う。このネーミングは断念する。
おかげで未だにサルの進化史年表の決定版めいたものが作れないでいる。



霊長類の進化の歴史は、全くバベルの塔状態である。10本、文書を読むと10種の言葉で10色の歴史が説かれる。これだけひどいと勉強する気も起きない。
とりあえず京都大学のページの霊長類の系統樹を紹介しておく。
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第一に、図を見て分かるのは、霊長類はルーツが曖昧な孤立系だということだ。
氏素性もわからないただの馬の骨なのだ。クオバディスだ。
第二に、霊長類は何度も絶滅しかけた危うい生物種だということだ。
点線でかろうじてつながる時代を何度も経過している。
そして中新世に入る2500万年前ころから急に適応放散が展開される。
第三に、ヒトをふくむホミノイドは進化の王道上にはないということだ。
むしろDNA的には環境に適応しそこねた、絶滅しても不思議ではない種であるといえる。
要するに、王位継承権としてはかなり下位に属する生物だったのが、何かの拍子でライバルがみなコケてしまったのだ。
我々は脳の進化を調べる前に、この三度の奇跡を後づけなくてはならない。「優れていたから生き残ったんだ」という幻想を一度捨てなければならない。「優れていない」と言っているわけではない。優れていたのに生き残れなかったものが、世の中には掃いて捨てるほどいるということだ


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