“とんかつ・カツ丼・カツカレー”

というのは、テニスの大坂選手が「いま食べたいものは?」と聞かれての返事だ。さらにデザートは抹茶アイスクリームだと言う。

この人、優勝したのもすごいが、優勝後のインタビューがチャーミングで素晴らしい。
顔立ちや体付き、片言の日本語などから、“日本人の血も混じったアメリカ人”と思っていたが、このセンティメントは日本人のものだ。
それにしても「とんかつ・カツ丼・カツカレー」はみごとなコピーだ。子供の頃から口ずさんでいたのではないかとさえ思わせる。
というのは、カツ丼というのは言わないだろうと思うからだ。今やカツ丼といえば日本人にとってやや郷愁を感じさせる食べ物になっているからだ。香の物の小皿に味噌汁がついてくる。香の物は大方鮮やかな黄色のたくあんが4切れ、ということは輪切りで2枚。この付け合せは天どん、うな丼、親子丼と変わらない。これがお重になるとお吸い物に代わる。
最近の若者にはちょっと古風で、いまならハンバーグになるのではないだろうか。
悪者が捕まって、取り調べを受けて、最後にカツ丼を食うと人情刑事に自白するというのが、一時期の刑事ドラマの定番だった。あれは親子丼の具の鶏肉が入っていないやつがカツの上に載っていたのではないか。
それにしても、日本人のソウルフードといえばラーメン、カレー、スパゲッティ。それに続いてとんかつ、コロッケ、餃子となる。
もともとの和食といえばそば・うどんくらい。天ぷらだって元はポルトガルだ。ただしこれらの全てにご飯がつく。これが日本だ。
むかし日本は島国根性でだめだと自己卑下していたが、日本人くらい物好きで好奇心旺盛な民族はないのではないかと思う。
もう一つ、市井の日本人は外国人にも分け隔てなく付き合う。嫌韓だとか、チャンコロだとか、力を背景に威張り散らすのは一部の連中に過ぎない。
それというのも、逆に日本人の均質性が根っこにあるからだろう。均質的だから多様性を受け入れる。ワン・オブ・ゼムになりきれるというのは日本人の特質だろうと思う。ただし日本語の壁は未だにかなり厚い。