余分な分類を削ぎ取って本質的な特徴にもとづいて経過を並べてみる。

1.元祖「霊長類」の登場

これはDNAの世界のことである。哺乳類から霊長類がいつ頃分かれたかを、現存霊長類のDNA解析から探っていった。
すると、哺乳類一般のDNAと分岐したのが8150万年前のことと推定された。
もちろん絶対年代に関してはかなりアバウトだから1億年前から7千億年前くらいの幅はみておいたほうが良いかもしれない。
このときはまだ中生代の白亜紀、恐竜全盛の時代である。哺乳類は昼は葉陰にひそみ、変温動物の活動が鈍る夜になるとコソコソと動き回る、一種の盗っ人稼業であった。
哺乳類の中でも階層はあるわけで、霊長類のご先祖はその中でも位の低いモグラもどきの生き物であった。

2.爬虫類が絶滅して哺乳類が主役に

6500万年前に隕石が落ちて天候が激変して爬虫類が絶滅してしまった。
そこで哺乳類が一軍に上がったのだが、その時霊長類はまだ主役にはなれなかった。
霊長類が飛躍するのは約5500万年前、彼らが樹上生活を送るようになったからだが、それはネズミやリスから逃れるためであったと言われる。ここで初めてプレシアダピスという名がつけられる。
プレシアダピスは、拇指が他の四指と向かい合い、両眼で立体視をし、色覚は完全である。
すでに立派な霊長類だ。
しかしそれは哺乳類としての進化の王道ではなく、そこをかなりバイパスし、ジャンプアップすることによってたどり着いたことに注意しておく必要がある。

3.プレ・プレシアダピスはいずこに

しかしこれでは歴史もクソもない。昨日のモグラが教は立派な霊長類になってしまった。芝居の台本ならよくある話だが、脳の発達とかを気にする人間にとっては、このミッシングリンクはあまりにも大きい。
この間隙を埋めるものとしてプルガトリウスやカルポレステスなどの化石生物が注目されるのだが、なぜか日本の学会は頑な態度を取り続けているように思える。

プルガトリウス
                                                        プルガトリウス

4.北米のプレシアダピスがヨーロッパに移動

5千万年前に北米の気候が寒冷化または乾燥化し、プレシアダピスがいなくなり、ヨーロッパに現れた。
やがてプレシアダピスからアダピス類とオモミス類が分化した。アダピスは原猿類となり、進化を止める。オモミスは概ね真猿類の祖となっていく。
やがてヨーロッパもサルには行きづらい場所になり、アフリカとアジアへ移動する。

5.バカバカしい2つの分類

アフリカの真猿類の一部は大西洋を越えて南米大陸へと移動する。
南米はヨーロッパにとって新大陸だから移動したサルは新世界ザルと呼ばれるようになった。移動しなかったサルは旧世界ザルということになる。
ナンセンスな分類である。
もう一つ、南米に移ったサルはその後鼻の穴が横に広がった。だからそれは広鼻猿類と呼ばれる。広鼻猿類から見るとアフリカに残ったサルは鼻の穴が広くないから狭鼻猿類と呼ばれるようになった。
これもナンセンスな分類だ。
思うにこれは「権威」が増えすぎると起きる現象だ。とかく「権威」は教科書を作りたがる。教科書は必ず売れる。弟子たちに分担執筆させて、そのかわりに弟子たちの学校で採用させれば、みんな喜ぶ。
そうやって教科書がたくさんできると、定義や分類もその分増えていく。「アカデミー」というのはカビが生えたような世界だから、そのようなことはまったく気にならないのだ。

6.真猿類と類人猿の分岐

アフリカに残った真猿類はエジプトピテクスと呼ばれる。これがオリゴピテクスとプロプリオピテクスに分岐する。
この内、プロプリオピテクスが類人猿へと分化していくようだ。なおインドで発見されたラマピテクスがヒトの祖先ではないかと言われたことがあったが、現在では否定されている。
この後はホモ属の進化史年表として扱ったほうが良さそうだ。

類人猿DNA分岐

ということで、かなり荒っぽくまとめてみても、研究の停滞と荒廃ぶりが見て取れる。

本格的に勉強しようと思うなら海外文献をひも解かなければなさそうだが、こちらにはそれほども気持ちもない。誰かが早く建て直してくれることを祈るばかりである。