最近のイエメン情勢

これまで書いてきたイエメンの情報と基本的な特徴は変わりないが、よりひどくなっている。
同時にサウジと連合軍の攻撃が無法であること、彼らは分裂し勝ち目がなくなっていることが明らかになってきている。
トランプ政権はイエメン攻撃をビジネスと考えていて、金儲けのために戦争の継続に執着している。メディアの中にも人権派のフリをして、フーシ派を極悪人のように描くことで、ジェノサイドに肩を貸そうとする動きがある。これはベネズエラやニカラグアのケースと類似した手法だ。

イエメン関係記事: 下記をご参照ください






2012年09月08日 南イエメンの解放闘争




2018年

9月 ウォールストリート・ジャーナル、「20億ドル相当の兵器供給がフイになる」とサウジを弁護したポンペオ国務長官の発言を報道。

10月15日 国連世界食糧計画(WFP)、ホデイダでの戦闘が激化すれば1200万人が飢饉に直面すると発表。

10月23日 ローコック国連事務次長の報告。「いままさに、重大な飢餓がイエメンを飲み込もうとしています。その徴候がはっきりと現れています」

11月 国連安全保障理事会、CNNによれば、英国が「限定的な停戦を求める決議案」を提出したが、米国が「急ブレーキをかけた」とされる。

11月 サウジの反体制記者カショギが殺害される。CIAはムハンマド皇太子の命令と断定。米国はサウジ機に対する空中給油支援を停止。

11月 国連食糧農業機関(FAO)、イエメンの食糧事情について報告。人口の6割にあたる約1,780万人が支援を必要としており,うち約880万人は深刻な食料不足,約290万人は深刻な栄養不足状態。10分ごとに1人が死亡している。

11月21日 英国のNGO「セーブ・ザ・チルドレン」、イエメン内戦で栄養失調死した子どもは推定8万4千人と発表。とくに有志連合がホデイダの港を封鎖してから悪化したとする。
ホデイダでは、約5カ月にわたって続く空爆で推定30万人が難民となった。
イエメン事務所代表は「こうして亡くなる子どもは、内臓の機能が落ちてついに停止してしまうまで、大変苦しい思いをする。泣く力さえ残っていない子もいる。親たちは何もできないまま死ぬのを見ているしかない」
ワシントン・ポスト紙は恥知らずにも、こう書いている。
フーシは反対派を片っ端から拘束しては拷問する。幹部は豪華な邸宅に暮らし、高級車のポルシェなどを乗り回す。反対派を拘束、手足を縛り付けてローストチキンのように火あぶりにする。
これはありえないと思う。人道援助に対する間接的妨害だ。ワシントン・ポストを自ら貶めている。

12月14日 イエメン正統政府とフーシ派が部分停戦について合意。ホデイダにおける停戦,タイズ市における人道回廊開設が実現。
ホデイダは物流拠点で国連の支援物資が集まる港湾都市。サウジはホデイダ制圧のため1万4000人のスーダン人雇い兵を投入。
12月 サウジアラビア主導の有志連合軍は、その後も空爆を続ける。
サウジがイエメン戦争につぎ込んでいる戦闘機や爆弾はほとんどが米国製だ。現地ではボーイングなどの技術者数百人が働く。トランプは1200億ドル強の武器売却に成功した。

2019年

3月26日 WHO、イエメンで過去3ヶ月に11万人がコレラと類似症に感染。3分の1は5歳未満。
(2017年には100万人以上がコレラと類似症に感染した)

4月4日 米議会上下院、有志連合への米軍支援を中止する決議を採択。上院が54対46、下院が247対175。

4月8日 首都サヌアで爆発。子ども14人が死亡、重傷を負った子どもは16人。

4月16日 トランプ大統領、有志連合支援を中止する決議に拒否権を発動。「決議は大統領の権限を弱め、兵士の命を危険にさらす」と主張。

5月14日 フーシ派軍、原油パイプラインのポンプ場2か所を無人機で攻撃。「侵略者のジェノサイド及び封鎖の継続に対する報復」と声明。

5月20日 南部タイズに空爆。子ども7人が犠牲になる。この10日余りに死傷した子どもは、国連確認で27人。

6月12日 フーシ派軍、サウジ南部のアブハ空港にクルーズ・ミサイルを発射。空港の管制塔に命中したと発表。サウジ発表で26名の民間人が負傷。

6月23日 フーシ派軍,サウジ南部のアブハ空港、ジーザーン空港に対し「カースィフK2」ドローン複数機で攻撃。サウジ発表でシリア人1名が死亡、民間人21名が負傷。

7月2日 フーシ派軍、サウジ南部のアブハ空港をドローンで攻撃。サウジ発表で民間人9名が負傷。

7月 アラブ首長国連邦(UAE)、イエメン戦線から撤収開始。ホデイダ港周辺の軍事拠点をサウジに移譲。地上戦を担ったUAE軍に対し、血を流そうとしないサウジに不信が広がる。

7月19日 サウジ、16年ぶりとなる米軍国内駐留を承認。

7月20日 ニューヨーク・タイムズ、ムハンマド皇太子が特殊部隊や軍事顧問の派遣を求めてきたと報道。

7月29日 イエメン北部の町で市場が空爆を受けて、子ども4人を含む民間人14人が死亡。サウジが支援するイエメン政府は「フーシがロケット弾を使用した」と非難。

8月1日 アデンの政府軍施設がフーシのドローン攻撃を受け、少なくとも40人近くが死亡。大半は訓練中の治安要員だった。

8月1日 同日、イスラム過激派が警察署に対し自動車爆弾を使い自爆攻撃。10人が死亡し、16人が負傷。

8月10日 南部地域の分離独立派、アデンの大統領府や軍事施設を占拠。これまで分離独立派と暫定政権は共闘してきた。
分離独立派は南部暫定評議会(STC)を名乗り、アラブ首長国連邦(UAE)の支援を受けている。地上勢力を掌握してきたUAE軍は、サウジと結ぶ暫定政府に反感を募らせる。
8月17日 南部暫定評議会(STC)、占拠していたアデン市内の主要公共施設を政権側に明け渡す。

8月20日 フーシ派軍,米国の無人機MQ9を地対空ミサイルで撃墜。

8月27日 ウォール・ストリート・ジャーナル、米政権がフーシとの直接対話を準備中と報道。米議会は超党派で、連合軍への軍事支援を停止するよう要求している。

8月28日 暫定首都アデンに到着した政府軍、大統領宮殿やアデン国際空港を奪還。

8月28日 南部暫定評議会、シャブワ県での敗北・撤退を認める。政府軍背後のサウジアラビア主導の有志連合軍を非難する。

8 月29日 ポンペオ米国務長官、暫定政権と南部暫定評議会(STC)に対し、対立を解消するよう求める。

 

 データで見る:紛争下のイエメン、人道危機の規模
ユニセフ・イエメン人道状況報告書(2018年12月)/ユニセフ・イエメン人道ニーズ概況報告(2019年)

1億1,300万人  -  人道支援が必要な子どもたちの数
2億4,100万人  -  人道支援がなくては生きられない人の数
200万人  -  急性栄養不良で治療が必要な5歳未満の子どもの数
1億9,700万人  -  基本的な保健ケアへのアクセスが必要な人の数
1億7,800万人  -  安全な水、適切なトイレなどへのアクセスが必要な人の数
出典:ユニセフ・イエメン人道状況報告書(2018年12月)/ユニセフ・イエメン人道ニーズ概況報告(2019年)
ただしイエメンの総人口は約2,892万人(2018年/国連)であり、ユニセフの数字にはベネズエラ並みの誇張(翻訳ミス?)があるようだ。