この間の87歳の元通産省エリートの事故は、“アクセルの踏み間違い”がたんなるヒューマンエラーではないことを明白に物語っている。
私は以前から踏み間違い対策は簡単だと主張してきた。
最も基本的には2つのペダルの間の距離を広げて、踏み間違えないようにすればよいのである。
極端に言えば、ブレーキペダルを左側で踏むようにすれば、踏み間違いは消滅する。

クラッチがあれば暴走はない

もともとマニュアル車では左足の位置が固定されていた。必ずそれはクラッチペダルの上にあったのである。アクセルとブレーキのペダルの位置認識は左足によって確認されていたのである。
そうやって育ってきた高齢者は、左足の感覚を失うことによって右足の位置感覚も失うことになったのである。高齢者の認知能力の低下だけが原因ではない。そこには「技術改革」の負の側面が顔を覗かせているのだと思う。

これは極論だが、高齢者事故ゼロを実現する秘策はクラッチの復活にある。75歳以上の運転免許をマニュアル限定にすればよい。マニュアルに乗れないのなら免許を返納するということだ。ただし僻地で車なしに生きていけない人には地域限定の免許を出す。そのへんは臨機応変にやればよい。

高齢者事故が多発するもう一つの理由は、サイドブレーキの消失である。これによりドライバーは車を緊急停止させるための有力な方法の一つを失ってしまった。
今それはパーキングブレーキとして左足の左側にあるが、かなり扱いづらい形で、「余り使うなよ」みたいに設置されている。
これを昔のクラッチ・ペダルの位置に据えてはどうか。

とにかく昔の車に比べて、フェイルセーフ機構は格段に改善されていることは間違いない。オートマのギアは素晴らしく、燃費のことだけならマニュアルを陵駕するほどである。
しかしフェイルを起こさせないようなメカニズムは明らかに退歩している。その典型が左足ペダルの消失であり、ハンド・ブレーキであり、サイドミラーだ。
何よりも、ブレーキを踏み続けなければ自然と走り出してしまうという原理的欠陥が、オートマにはつきまとうのである。うっかりしているあいだに、すでに車はかなりの程度に加速されている。それがパニックを引き起こすのである。

とりあえず緊急に改良すべき欠陥として急発進問題があるが、これについて対処したという報道を見たことはない。あるのは急発進した車がぶつかりそうになったときに急停止する仕掛けとか、ぶつかってしまったときにその衝撃を和らげる仕掛けとか、要するに対策が泥縄方式なのだ。

メディアにも責任がある。高齢者自動車事故の半分は「自動車会社の安全思想」に関わって生じていると思うのだが、そのことを警告するような記事に出会ったことがない。

これからも声を上げ続けようと思う。