田中宇さんのブログを読んでいて、どうも話が良くわからない。目眩いがしてくる。

軍産の世界支配を壊すトランプ - 田中宇 その他

これはどうも、私が「軍産複合体」の定義を曖昧にしたまま話を勧めているからだと気づいた。

すこしウィキペディアその他で基礎勉強をしておくことにする。

軍産複合体(Military-industrial complex)とは、軍需産業を中心とした私企業と軍隊、および政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体を指す概念である。

この概念は特にアメリカ合衆国に言及する際に用いられ、1961年1月、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が退任演説において、軍産複合体の存在を指摘し、それが国家・社会に過剰な影響力を行使する可能性、議会・政府の政治的・経済的・軍事的な決定に影響を与える可能性を告発したことにより、一般的に認識されるようになった。アメリカでの軍産複合体は、軍需産業と国防総省、議会が形成する経済的・軍事的・政治的な連合体である。

軍産複合体の概念を広く知らしめたアイゼンハワーの退任演説は1961年1月17日に行われた。なお、演説の最終から2番目の草案では、アイゼンハワーは最初に「Military-industrial-congressional complex(MICC)、軍産議会複合体」という概念を用いて、アメリカ合衆国議会が軍事産業の普及で演じる重要な役割を指摘していたが、アイゼンハワーは議会という語を連邦政府の立法府のメンバーを宥めるために削除した。
いわゆる「レーガン革命」は軍産複合体の優位性を建て直した。ジョージ・メイソン大学のヒュー・ヘクロのいわゆる「防衛官僚により聖別されたアメリカの展望」でロナルド・レーガンは、1980年代から共和党の合い言葉になり民主党の大半も同様だったやり方で、国家と国家の安全の状態をプロテスタントの契約神学の覆いの下に隠した。
ブッシュ家は、軍産複合体を生業としてきた。第43代大統領の曽祖父サミュエル・ブッシュはオハイオ州で兵器を製造していたバッキー・スティール・キャスティング社を経営していた。
祖父のプレスコット・ブッシュは東京大空襲の焼夷弾E46の製造社に関与していた。
父ブッシュはCIA長官、副大統領、大統領時代において、海外との兵器貿易を押し進めた。

冷戦終了後の1990年代、兵器メーカーは議会工作を強めた。献金を受けたタカ派シンクタンクが仮想敵国の軍事的脅威を強調した。

有力なロビイストが国防関係の議員達に働きかけるようになった。1997年だけでもロビー活動費として5,000万ドルが費やされ、870万ドルが1998年にかけての選挙資金として提供された。
レーガン政権時代には、多くの反対を押し切って「スターウォーズ計画」が進められた。15年間に550億ドルの巨費を投じられたが、具体的な兵器は一切完成しなかった。
1990年代、ホワイトハウスは「イラン」「イラク」「北朝鮮」の3カ国を「ならずもの国家」と名指しし、他に、「スーダン」「シリア」「キューバ」などを敵視した。これは多大な軍事費を引き出すための呼び水となった。
2001年の9・11同時多発テロのあと、アメリカの軍事費は一気に増額し、国防総省の総予算は3,750億ドルに膨れ上がった。
アフガニスタンとイラクでは、主戦闘以外のあらゆる侵攻作戦上の業務を米国の民間会社へと委託するようになった。戦争そのものが新たな産業として確立した。
新型兵器の開発も一段と進んでいる。F-22「ラプター」戦闘機や「ジョージ・H・W・ブッシュ」、「ジェラルド・R・フォード」原子力空母が新たに配備された。防衛研究費だけでもGDPの1.2%に上る。

21世紀になると、軍産複合体という概念は米国のそれに対する固有名詞となった。

軍事産業は巨大な労働市場を提供するようになった。四軍の基地も有力な就職先を提供しており、議員選挙時の支持票とも密接に結びついている。
ユダヤロビーについてはここでは省略する。
下記記事を参照されたい。


ということで、古典的にはアイゼンハワーの時代から続いていることになっているが、現実的に目に見える存在となったのはレーガンの時代からだということで、意外に新しい事象なのだ。

レーガンというのはただの見栄えの良い置物で、実体としては父ブッシュが仕切っていた。だから実質的には2期勤めたようなものだ。

この時期はさきに上げたキッシンジャー、ベーカー、シュルツ、ヘイグらの国務長官と時節を合わせている。クリントンが2期勤めた後、子ブッシュが政権を取ると副大統領にチェイニーが就任し政権を牛耳った。

政策的には幅があるものの共和党の中でも右派に属する集団であろう。固まった機構とか社会構造というよりは、政治的ムーブメントであり、しかも“欲と二人連れ”といってもおかしくないくらい利権色が濃厚だ。日本でいうとかつての「原子力ムラ」がそれに近い存在かもしれない。

田中宇さんはボルトンは「タカ派」であって軍産複合体の主流ではないとしているが、歴代国務長官がボルトンを推薦しているという事実は受け止めておくべきだと思う。やはりそれはシステムと呼ぶべきではないだろうか。

ということで、国務省官僚出身者と共和党の右派政治家を頂点とし中央・地方の軍事関係者、さらにユダヤロビーや南部プロテスタントなどを巻き込む、巨大な反共と利権の集団であり、民主党といえどもうかつに踏み込めない領域になってるものと予想される。(民主党版の軍産複合体もある)

とりあえず上記のごとく把握した上で、田中さんの記事を読むと、どうも少しづつ枠組みがずれて居るような気がしてくる。これがめまいの原因だろう。