鈴木章さんの研究
せっかく北大の先生がノーベル賞をとったというのに、その中身を知らないでいたら失礼だとは思っていたが、化学賞と聞いてたじろいでいた。
たまたま、ブックオフで北大出版会の発行したパンフレットを見つけたので、買ってきた。100円の値札をつけたままさらされるのも忍びない思いがして衝動買い。かなり気が重いが読み始めることにする。
2010年のノーベル化学賞は「パラジウムを触媒とするクロスカップリング反応」の開発ということであった。
受賞者は鈴木章さんの他にヘック、根岸英一というお二方。
話は、まずそのクロスカップリングというのがどんなものなのかという話、つぎにその開発がいかに大きな貢献を果たしたかという話、そして鈴木、根岸、ヘックの研究の相互関係、という流れになるだろう。
4.鈴木、根岸、ヘックの研究の相互関係
これについては、よくわからなかった。興味のある方は他論文をあたってほしい。
北海道大学CoSTEP 「鈴木章 ノーベル化学賞への道」(北海道大学出版会 2011年)
の読後感想文である。誤りがあるかも知れない、お気づきの節はご叱正を賜りたい。
1.ベンゼン環のカップリングとはなにか
すごくわかりやすく書いてくれているのはありがたいが、かなりの省略もあって、突っ込んでいくとわからなくなる箇所がいろいろある。
まずはこの絵から
右下が右側の水素基を他の物質に置換したもの。これを精密に表すと左下の絵になる。
それで以ってやりたいことが、ふたつのベンゼン環の結合(カップリング)なのだ。わかりやすく言えば手品の「マジックリング」、“コンコンスーッ”をやりたいのだ。
これができるとチェーンがどんどん伸びていって、すごい分子量の有機物が作れることになる。
錬金術がさまざまな物質を組み合わせて金を作ることにあるとすれば、カップリングは生命を作り出す可能性を秘めた、とても魅力的な技術なのだ。
2.クロスカップリングの仕掛け
これを可能にしたのが、スズキ・メソッドだ。正式には「鈴木ー宮浦クロスカップリング」と言うらしい。宮浦さんは鈴木さんの同僚で、後任教授となった方らしい。
錬金術の種明かしは3つある。
① 置換する物質を2種類の異なる物質とすること
具体的にはホウ素化合物とハロゲン化合物の組み合わせが一番良いらしい。
異種化合物の組み合わせなのでクロスカップリングという。
② パラジウムを触媒(切断役)とすること
パラジウムは3つの働きがあるようだ。まず最初はホウ素化合物とベンゼン環の結合を切り、ハロゲン化合物とベンゼン環の結合を切る。
次に相互の切断面に付着して両者を結合させる。
その後、ベンゼン環同士が固く結びくと、パラジウムが結合部から離れていくと、双方のベンゼン環は直接結合することになる。
③ ホウ素化合物とベンゼン環のj結合を切る仕掛け
化合物とベンゼン環との結合はパラジウムが切断するのだが、特にホウ素化合物とベンゼン環の結合は強いので、なかなか切れない。
そこでこの化合物を予め塩基液につけておく。これにより結合が陰性荷電され、結合が切れやすくなるのだそうだ。洗濯の前にお湯につけてウルかすみたいなものか。
3.スズキ・メソッドの “売り”
スズキ・メソッドが発表されたのは1979年のことだったが、当時すでにクロスカップリングは「今さらの感があった」と言われる。
そこで鈴木さんたちは、さらに工夫を加える中で「鈴木ー宮浦クロスカップリング」をトップの位置に引き上げていった。
工夫の第一は、ただベンゼン環が結合するだけでなく環と環が直接結合するようにしたことだ。
これはビアリール化合物と呼ばれ、非常に応用性の高いものらしい。
工夫の第二は、これはすでに種明かしの ①として書いたことだが二種類の違ったっ化合物を使うことでビアリールのタイプが複数でなく純正になるらしい。その理由については詳しくは触れられていない。
三つ目は、ワンポット合成ができるということだ。ワンポット合成というのは、一連の化学反応を一つの容器内で次々と起こして、一気に最終目標の物質を作り出してしまうことだ。
四つめ、これは鈴木さん自身の工夫ではないが、水酸化カリの代わりに水酸化タリウムを使うとより分離が良くなるとか、パラジウム触媒の組成を工夫することでより効率を良くしたりの改善が行われているようだ。
最後に、この発明は特許をとっていない。誰でもただで使える。だから四つめのような工夫が生まれてくる。本人は「今後は取らなきゃだめ」と思っているようだが、共同研究者の宮浦さんは「取らない方向」に信念を持っているようだ。
4.鈴木、根岸、ヘックの研究の相互関係
これについては、よくわからなかった。興味のある方は他論文をあたってほしい。
北海道大学CoSTEP 「鈴木章 ノーベル化学賞への道」(北海道大学出版会 2011年)
の読後感想文である。誤りがあるかも知れない、お気づきの節はご叱正を賜りたい。