鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

カテゴリ: 10 国際政治/経済

イングランド銀行カーニー総裁の講演 詳報

8月26日のブルームバーグ報道で、「ドル支配終わらせるデジタル基軸通貨体制を提唱
Carney Urges Libra-Like Reserve Currency to End Dollar Dominance
と題されている。

リードは下記の通り

カーニー総裁はドルを基軸通貨とする世界的金融システムの抜本的改革を求めた。
そして極めて大胆な提言を行った。
最終的には「リブラ」のような仮想通貨が準備通貨としてドルに代わることになるとの考えだ。

以下本文

最初に現状認識

経済政策を巡る不確実性が高まっている。
あからさまな保護主義がはびこり、政策余地は限定的となり、今後は悪影響を打ち消せなくなるかも知れないとの懸念が広がっている。
これらの悲観的観測が組み合わされ、世界経済のディスインフレ傾向を悪化させている

「現状維持」思想は誤り

各国・地域の中銀が短期的にはこうした事態に対応することは必要だ。しかし現状維持の思想は誤りだ。最終的には劇的な措置が必要になる。

「通貨覇権の入れ替え」であってはならない

基軸通貨がドルから中国人民元に代わっても問題は解決しない。「長期的に見て、われわれはゲームを変更する必要がある」

合成覇権通貨(SHC)の構想

世界の準備通貨としてのドルの地位が終わったあと、グローバルなデジタル通貨が登場するだろう。

それはリブラのようなものとなるかも知れない。リブラは各中銀の直接的な管理から外れたものと構想されているが、SHCは各国中銀の「デジタル通貨ネットワーク」を通じて公的セクターによって提供されることになるだろう。

カーニー総裁の結語

このアイデアの初期バージョンは試行錯誤を繰り返すことになるだろう。
しかしいくつかの欠陥が立証されたとしても、SHCのコンセプトは魅力的だ。
それは世界貿易における米ドルの支配的影響力を弱めるかもしれない。

結局、現下の経済不安の主因は、トランプの存在そのものだ。
議会も民意もない。彼がツイッターに書き込めば、それが世界を動かしていく。これは民主主義の対極だ。

そういうトランプ現象を生み出したものが2つある。
一つはアメリカの草の根に潜む漠然とした不条理であり、それはいかなる時も40%の不正義への支持を叩き出す。
もう一つはドル基軸通貨体制である。これがあるために、世界の国々はますます米国に逆らえなくなっているし、そのためにトランプの顔を伺うようになっている。

この「構造欠陥」はリーマンショックとその後の欧州金融危機のときにも話題になった。その後大規模な量的緩和の中で話題から外れた形になったが、米中経済摩擦が激化する中で再び深刻な問題として浮上しつつある。

赤旗(金子記者)によると、今回はイングランド銀行のカーニー総裁が口火を切ったらしい。
米ドルという一つの国の通貨が、世界の通貨金融システムの中で優越的地位をしめている。
今やリスクは積み上がり、それらは構造的だ。
多極的な世界経済システムに、単一の通貨体制はふさわしくない。
赤旗もいうように、シティーの主がそう語ったとしても、にわかに信用できるものではない。しかし“シティーでさえも”、という言い方もできる。

今や世界の最大リスクはトランプであり、世界はこの一人の変人の奇行をまったくコントロールできない。
ヒトラーに対してはもう一つの極が形成されたが。しかしトランプに対しては、21世紀の世界は、未だにもう一つの極を形成し得ないでいる。なぜなら単一通貨制だからだ。

ここが問題だ。

下記の記事をご参照ください

2011年10月25日  中国の国際通貨論




1.1970 年代の世界経済

不況の深刻化,失業の増大,インフレの高進という事態が,米国をはじめ,多くの 先進資本主義国を襲っていた。日本だけが例外であった。

2.世界経済における英・米経済の興亡

ポール・ケネディ『大国の興亡』(1987年)
アメリカの衰退は帝国の「過剰拡張」による。それは世界経済の覇権国にいずれは訪れる歴史的運命だ。

3.戦後世界経済とケインズ連合の興亡

マサチューセッツに留学して「戦後世界経済とケインズ連合の興亡」(1996 年)という本を書いた。

その論点は以下の通り

①1970 年代以降のアメリカ資本主義の危機は,戦後形成されたケインズ連合の危機・崩壊であった。

②その要因は企業の多国籍化と、金融自由化と金融機関の強力化である

③帝国の「過剰拡張」は国内での蓄積危機を回避し、世界経済的規模で資本蓄積を継続させる道である。

④そこに金融が再登場し,アメリカの経済システムが金融覇権を軸に回り始める。

しかしこれだけではソ連崩壊後の現代世界経 済そのものの分析には至ることはできない。

4.現代世界経済と金融不安定性の構図

『世界経済と企業行動』(2005 年)で現代世界経済論(ポストケインズ論)の一つのあり方を示せたと考える。

それは2008年リーマン・ショック後の世界経済危機についても分析の視角を提供している。
中心的な視座はミンスキー・モデルを国際的な分析に援用することにある。

この本の骨子は以下の通り。

A) 戦後世界経済システムの本質
①戦後の(西側)世界経済は世界市場志向・資本集約型産業企業を中核とする多国籍化であった。
②多国籍企業の組織的特徴は,多角的事業部門性にある。
③多国籍企業の活動には国際資本取引の自由が保証されることが必要だ。
これらに対応した世界システムが GATT → WTO 体制と呼ばれるものであった。

B)よみがえった米国巨大金融機関
ミンスキーの三分類を持ち出してくるが、少々説明が必要。
不安定撹乱型金融には(1)ヘッジ金融、(2)投機的金融、(3)ポンツィ金融の3つがある。 ポンツィは、1920年代にボストンでねずみ講を組織した詐欺師だ。要するに詐欺まがいの不安定金融。
ようするに米国の金融機関が蘇ったのはこのような悪辣な手法によるということ。
それで、米国の対外金融が投機金融からポンツィ金融に変わったとする。(ただしここでは説明はない)

C)リーマンショック後の世界

「新自由主 義と金融覇権」という視角から見る必要が出てきた。「金融覇権」というキーワードが重要であると考えるが、今後の課題となる。

(ミンスキーについては私の記事も参照されたい。

どうも、いろいろ調べてみると、「為替操作国」はアメリカの世論操作の可能性がある。

理論的には10%の追加関税は10%の通貨安で相殺することが可能である。さては中国側の「奥の手」かと興味を持ったが、中国側には為替を「禁じ手」として行使する意図も能力もなさそうだ。

たしかに下げ幅は大きいが、トレンドから見れば想定内の下げとも思える。

何が起きたのか

まずはニュース情報を総合してみる。

8月1日 トランプ大統領、中国産品に10%の追加関税を課すと発表。9月1日発動の予定。

8月5日 人民元相場が一時1ドル=7元台となる。これは11年ぶりの安値。

8月5日 トランプ大統領がツイート。「これは『為替操作』だ。中国は為替を操作して、米国からビジネスや工場を盗み出している。もう許さないぞ」

8月5日 米財務省、意図的に通貨安を誘導しているとして、中国を「為替操作国」に指定。この措置に伴う新たな経済制裁は無し。

8月6日 クドロー米国家経済会議委員長、「関税の重荷はほぼ全て中国側にかかっている。中国経済はボロボロになっている」と発言。

8月6日 中国人民銀行(中央銀行)は為替操作を否定。

8月6日 オフショア人民元は、7.1元台まで元安が進んだ。海外投機筋が元売りを主導している。


人民元相場: これまでの流れ

2005年7月21日 ドルペグ相場制(1ドル=8.28元)から管理フロート制(03%の変動幅)に移行した。同時に2.1%の切り上げ。

2007年5月21日 変動幅を上下0.5%に拡大。この結果、1ドル=6.83元まで上昇する。

2008年9月 リーマンショックが発生。人民元売り介入により、1ドル=6.83元に固定。

2010年6月 管理フロート制に復帰。1ドル=6.05元まで上昇。

2014年 人民元が下落トレンドに入る。経済成長率の鈍化、国外への資本流出が背景にあるとされる。

2015年8月 チャイナ・ショック。人民元相場が急落し、中国が制御不能な資本流出に見舞われる。

2017年 トランプ大統領の就任に伴い一時的な元高。トランプの元安攻撃に対応した可能性あり。

2018年~現在 長期の元安傾向が再現。米中貿易戦争やドル金利上昇による資金流出が背景となる。

今後の予測

アメリカにはまだまだ「経済・金融戦争」を拡大する余力が残されている。メディアはトランプにエールを送り続けている。

いまのところ中国はサンドバッグ状態に耐えるほかない。隠忍自重がもとめられる。今後は迂廻輸出や現地法人などの経営努力がもとめられることになるだろう。ただしかつての日米経済摩擦と異なり、中国には安保という重荷がない。その分フリーハンドを行使できる。

貿易赤字構造は究極的にはアメリカ自身の責任なのだから、何時までも踏み倒すわけには行かない。いづれツケが回ることになる。そのときアメリカ以外のすべての国がツケの支払いを求めることになるだろう。

とにかく最近のメディアの倫理的頽廃は目を覆うばかりだ。ほぼデマ宣伝みたいなものまで、権力側の情報をなんのためらいもなく垂れ流すから、よほど注意が必要だ。これが今回の出来事の最大の教訓かも知れない。


米財務省の「為替操作国」指定・三基準

(1)対米貿易黒字が年200億ドル以上、(2)為替介入(ドル購入)がGDPの2%以上、
(3)経常黒字がGDP比で2%以上
3つのうち、2つを満たすと「監視対象」に、すべてを満たすと「為替操作国」に指定する。

現在は日本やドイツなど9カ国が「監視対象」に指定されていいる。

チャイナ・ショック

2015年7月、中国で証券バブルが弾け、上海証券取引所は株価の30パーセントを失った。上場銘柄の半数以上が取引を停止した。8月には全世界同時株安がもたらされた。

「ファイナンシャルスター」記事を参考にしました。

赤旗の記事で初めて知ったのだが、
投資ファンドのうち最大手のバンガード・グループはアップル、フェイスブック、アルファベットの筆頭株主となっている。
このバンガードにブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席捲している。
のだそうだ。
初耳だったので調べなければとは思ったが、ついそのままにしていた。
そんなとき「資産運用3巨人」という言葉が日経新聞に載っていたのを発見した。


どうも赤旗記事はこの日経記事の引用のような気がする。とりあえず以下にその要約を載せる。

資産運用の御三家

バンガード、ブラックロック、ステート・ストリートの3社が御三家と呼ばれる。3社の株式運用額は約8兆8千億ドル(990兆円)。これは世界の時価総額(9月末)の10.4%に当たる。

東証1部の最近の時価総額が約600兆円に過ぎないことを考えれば、それがいかに凄まじい額であるかはよく分かる。

sankyotou

たとえいかに控えめな投資家であったとしても、議決権を通じた社会への影響力はもはや無視できない。

インデックス運用 投資方式の特徴
これらの投資会社は、米S&P500や日経平均株価など株価指数に連動するインデックス運用を主力としている。
のが共通の特徴なのだそうだ。

インデックス運用はコストが安いらしい。
例えばトップのバンガード社には「トータル・ストック・マーケットETF」という商品がある。
これは米国株に分散投資する一種の投資信託なのだが、その経費率が年0.04%。つまり100万円投資して、投資家が負担するコストは400円だけ。

と言われてもよくわからない。

一応、インデックス運用をめぐる最近の動きについて引用しておく。
世界の運用資産に占めるインデックス運用の比率は現在17%前後。これが25年には25%まで高まる見通しだ。
コストの最少化を目指すインデックス運用は投資先数の割にアナリストの数が限られるが、新しい運用も登場し、伝統的運用の領域を侵そうとしている。

もの申すファンド

2017年、石油大手の株主総会で異変が起きた。「カリフォルニア州職員退職年金基金」が気候変動に関する対応を求めた。
これに御三家の一つブラックロックが乗った。「企業の長期安定成長を目指し、健全な経営を働きかける」というのがその意向だった。
なぜなら最良のインデックス運用には、企業の誠実な株主対応が不可欠と考えたからだ。
こうして株主提案が続々と可決された。

運用大手三社

ほかにも、ステート・ストリートが「日本企業に女性取締役の登用をもとめる」と発表している。

それが意味するのは、単純な環境とかフェミニズムの問題ではなさそうだ。これはコーポレートガバナンスが空洞化し、ファンドが企業を支配する時代の始まりなのかも知れない。

5Gをめぐる争い  

夏目啓二さんの連載記事の最終回。5Gとファーウェイの話が中心となる。
この辺はほかの記事でも明らかにされていることが多く、新味はないが、よくまとめられているので転載させてもらう。

現状

5Gの通信規格は現行システムの100倍の通信速度を持つ。

この分野でファーウェイが世界をリードしており、世界を支配する可能性がある。

昨年8月、トランプ政権は国防権限法を制定し、政府機関でのファーウェイ製品の使用を禁止した。
さらに同盟国に対してもファーウェイの5G製品を使用しないよう求めた。

ここまでは周知の事実である。

各界の反応

EU

今年3月、欧州委員会は5Gについて協議した。その結果、米国とは一線を画し、ファーウェイ排除を見送った。

西側諸国

日・豪政府は米国に追従。英・独は目下のところ同調せず。

制裁の効果

18年度、ファーウェイは基地局の売上シェアを2%減らし、トップの座を譲った。ライバル社のエリクソン(スエーデン)が僅差でトップとなった。

しかしファーウェイは欧州・中東・アフリカ・アジア太平洋で以前トップの座にあり、しかもシェアを拡大している。

総じて制裁効果は著明とは言えない。

追加制裁

5月15日、米商務省は強力な措置を打ち出した。ファーウェイとの取引の禁止である。

これは昔のココムと同じ思想だ。政府機関ではなくすべての商取引を一網打尽とするものだ。当然同盟国へも同様の措置をもとめて圧力をかけてくると見られる。

特に後者の影響は深刻なものとなる可能性がある。

ファーウェイの年間海外調達額は670億ドルで、この内100億ドルが米国からの調達である。

100億ドルという額は必ずしも大きくはないし、他国への切り替えも不可能ではない。しかし中核的な部品、スマホの基本OSは、グーグルなど米企業の独占となっているもの多い。

これに加え、部品調達の6割を占める東アジア諸国が米国との同盟関係を重視するとなれば、影響は極めて深刻なものとなる。



ここまでが、記事の要約です。

米中摩擦の技術学的背景を知るにはたいへん役に立つ資料だと思います。

ただ、この米中摩擦がどうなるかという問題は、結局は米政府内における政治意思決定過程の問題です。それは短期的には米国の政治的力関係・景気動向に左右されると思われるので、そのへんの分析が大事になっているのだろうと思います。

具体的には大統領選挙に向けた支配層の動き、とりわけトランプ陣営、軍産複合体と並んで政治支配力を持つ金融ファンド(ウォール街)の動きが注目されるのではないでしょうか。

5Gとファーウェイ

米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

GAFAの背後に三大資産運用ファンド

米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

夏目さんの連載記事は本日が(中)で、3回続くことがわかった。

それで本日の話は、ハイテク面での米中摩擦がどういう局面にあるのかという話。ぶっちゃけていえば、中国のハイテクがいかにすごいのかという話だ。

それはそれで面白いのだが、この連載の主題とは少しずれた話になる。

そのことを承知した上で、話を拝聴することとする。

1.ハイテク企業の3つの分野

この記事はスクラップ・ブック並みにファクトがギチギチと詰め込まれている。これを解凍して読みやすくしようとすると、元記事の3倍位に膨らんでしまうだろう。

米中ハイテク産業の比較話に入る前に、私なりに情報を整理しておきたい。

一言でGAFAというが、業態はかなり違っている。

正確な意味でプラットフォームと呼ばれるのは、グーグルとファイスブックだろう。
グーグルは検索エンジンから始まって、アンドロイドでスマートフォンのOSを握り、クロムでメインブラウザーの地位を獲得した。しかしその圧倒的強さは検索エンジンに由来している。ブラウザーの地位は必ずしも強固とは言えない。

これに対し、アマゾンはネット通販会社であり、販売方式の斬新さによりトップの地位を獲得したが、この世界の競争は並み大抵でなく激烈である。

アップルは携帯電話(スマートフォン)で成功したハードウェアメーカーであり、技術的な優秀さよりはアイデアの斬新さとスマートさに成功の要因がある。

このように、ハイテク企業と言っても中身はものづくり、販売、「狭義のプラットフォーム」提供という3つの分野に分けられるだろう。

それぞれで米中の力関係がどうなっているのか、というより中国が如何にGAFAを追い上げているのかを見ていく必要がある。
この記事ではハードウェアに焦点が当てられ、アップルの例が取り上げられている。

2.アップルのライバルたち

4大企業がアップルとライバル関係にある。すなわちファーウェイ、オッポ、ビボ、シャオミである。

10年前、アップルは中国市場で販売1位だった。現在は5位に転落している。

フラッグシップ会社のファーウェイは、スマートフォン販売でアップルを追い越し、世界2位となった(1位はサムスン)。

3.中国企業の4大成長センター

中国には先端企業の集中する成長拠点が4つある。
北京: ハイテク系企業センター
上海: 金融系センター
深圳: スマートフォンなど製造系センター
杭州 : 電子商取引(EC)系センター

深圳のリーダーがファーウェイであるのに対し、杭州 ではアリババ集団が本拠を構える。

4.シリコンバレーと珠江デルタ

広東省の朱江河口域は多くのハードウェア系のスタートアップ企業がひしめいている。企業価値が10億ドルをこすユニコーンはこの3年間に3倍化し、70社に達している。(米国は120社)

とくに深圳市にはファーウェイ、ZTE、トランションが本拠を置き、地域に技術・ノウハウを蓄積している。

5.中国(アジア)先端企業とファンドの投資

2018年度の全世界における投資額は553億ドルであった。このうち54%がアジア太平洋地域へと投資された。これは米国をふくむ北米地域の2倍に当たる。

どこから?

米国のカーライル社がアジアファンドを立ち上げ65億ドルを集めた。ブラックストーン・グループも94億ドルを集めたと言われる。

シンガポールやマレーシアの政府系投資会社、カナダの年金投資委員会も活発に動いている。

どこへ?

アジアの企業別投資額の上位3位は中国が独占している。
1位: アリババ集団の金融部門を受け持つアント・フィナンシャルへ140億ドル
2位: 検索エンジンのバイドゥの金融部門へ43億ドル
3位: ネット金融サービスのルーコムへ13億ドル

となっている。

とりとめのないまとめになってしまったが、時間があれば別資料で補完していきたい。


米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

GAFAの背後に三大資産運用ファンド

赤旗経済面で注目すべき連載が始まった。
「米中デジタル競争」という題名で、寄稿者は愛知東邦大学教授の夏目啓二さん。本日は(上)でありこの後下になるのか中・下と続くかはわからない。

いづれにしてもインタビューでなく寄稿ということなので、相当力の入った記事であることは間違いない。

本日の見出しは「GAFAの支配と動揺」となっている。「支配」だけでなく「支配と動揺」というのが気に入った。

以下、要旨を紹介していく。

1.はじめに

GAFAはデジタル多国籍企業である。
それは世界のデジタル産業を支配している。
GAFAこそ現代世界経済の支配者である。

GAFAの2つの特徴として、①顧客の囲い込みによる利得拡大、②投資ファンドとの結合が挙げられる。

2.囲い込みで巨利

GAFAはプラットフォーマーと総称され、膨大な顧客を囲い込むことで、巨額な利益と高い利益率を確保する。

GAFAはいづれもデジテル技術開発により規模を拡大した後、投資ファンドの注目をあびるようになった。その後、新規株式公開(IPO)を利用して資本を調達して一気に巨大化をなしとげた。

これにより新たに巨大な顧客集団が創出され、高い売上対利益率をもたらす。

こうしてGAFA経営者と投資ファンドは、高利益率と高株価を一手におさめる一握りの独占者となる。

3.投資ファンドとの結合

投資ファンドはGAFA株の時価が押し上げられることで、さらなる投資家を引きつけるようになった。

新興プラットフォーマーはスタートアップ(二軍)と呼ばれる未公開企業からスタートする。

そのうちIPOにあと一歩というめぼしい企業はユニコーン(次世代GAFA)と呼ばれ、投資ファンドはテコ入れの機会をうかがっている。

投資ファンドはプラットフォーマーに対して、一種のパトロンとしての力を急速に獲得しつつある。

4.投資ファンドの実体

投資ファンドのうち最大手のバンガード・グループはアップル、フェイスブック、アルファベットの筆頭株主となっている。

このバンガードにブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席捲している。

彼らの持ち株総額は990兆円と言われ、そのうち500兆円をGAFAへの投資が占めている。

ここに今日の世界的な所得格差と資産格差の実態が厳然と示されている。

5.GAFAのゆらぎ、それをもたらしたもの

この強固な覇者連合のうち、GAFAの側に揺らぎが出ている。ここに現在の経済覇権をめぐる混乱の原因がある。

GAFAの18年通年利益(税引前)は合計で約15兆円だった。しかし売り上げ対利益率は6年前に26%だったのが20%にまで低下している。
この低下傾向はかなり確実な傾向(超過利潤の低下)であり、GAFAによる世界経済支配が揺らぎつつある兆候である。

「利潤率の低下傾向」は一般的なものであるが、直接的には強力なライバルの出現によりもたらされる。

それは具体的には中国のプラットフォーマーである。彼らはGAFAに倣ってBATHと呼ばれる。
すなわち、バイドゥ(百度)・アリババ・テンセント・ファーウェイの4企業である。




2019年5月

トランプとアメリカ帝国主義

北海道AALA学習会での講演レジメです。とりあえずそのまま載せますが、そのうち手を入れようかと思います。


帝国主義の変貌 1 ケネディー~ニクソン時代の帝国主義

私の世代では、「帝国主義」といえば、評論員論文「ケネディーとアメリカ帝国主義」と「ニクソンとアメリカ帝国主義」だった。

そこでは「帝国主義」は

1.覇権主義(特に軍事的覇権)

2.新植民地主義(民族主義の抑圧)

3.資本主義体制の盟主としての秩序強制

のセットとして描かれていた



帝国主義の変貌 2 レーニンの時代の帝国主義

私の世代では、「帝国主義論」といえばレーニンだった。

100年前の帝国主義は

1.多くの国が皇帝・王を擁する文字通りの帝国

2.銀行を頂点とする独占資本の寡占支配

3.世界を植民地として分割し非均衡貿易を強いる

という特徴を持っていた。そして帝国間で覇権を覗っていた

アメリカは独立を勝ち取った「自由の国」であり、特殊な「帝国」だった。
それは非帝国的な帝国主義という概念をもたらした。



帝国主義の変貌 3  唯一の超大国としてのアメリカ

ソ連・東欧諸国の崩壊により、アメリカが自動的に唯一の超大国となった。

しかしアメリカ自身も深刻な弱点あり、完全な一極化ではなく1.5極化にとどまる
(0.5としてEU、中国、ロシアなど)


しかしその後アメリカは次のような手段で覇権を強化した。

1.金融工学開発と米ドルの基軸化

2.新興国への新自由主義(為替・資本自由化)の押しつけ

3.国連を軽視する単独行動主義

により唯一の覇権国=「帝国主義国」への道を歩む




帝国主義の変貌 4  「唯一の超大国」が覇権を求める

イラク侵攻時に世界で起きた抗議行動など、アメリカの覇者への道は決して平坦ではなかった。それが一気に全面的な覇者の地位に上り詰める。そのきっかけはリーマン・ショックであった。

アメリカは大規模な量的緩和を繰り返すことによって、世界に対する金融支配力を強化した。対応が遅れたEUは一気に弱体化し、新興国は深刻な債務危機に陥った。

こうして次のような帝国主義の新段階が登場した。

1.ドルが唯一の決済通貨に。ドルによる世界支配

2.ドルを持つ1%の人が世界を支配する体制

3.軍事力と金融力による世界支配

これに情報分野での高い競争力を加えることにより、アメリカの世界支配が完成した。

一方で国内・国外に矛盾と不満・敵意が蓄積し、世界が急速に不安定化しつつある。



帝国主義の変貌は何をもたらすか

これが「トランプとアメリカ帝国主義」という提示に対する私なりの回答になる。

「デマゴーグ政治と軍産複合体の癒着」というのがトランプ政権の特徴であろうと考えている。
なぜそのような政権が登場したのか、その基礎となる社会的状況と歴史的段階を考えてみたい。
それは「アメリカ帝国主義の変貌」という性格を持っていると思う。


1.人類史上最強・最悪の帝国主義の出現(倫理観の欠如)

2.金融不安の増幅(常に金融恐慌の可能性が存在)

3.憎悪の共振がもたらす戦争への不安

しかし国内外の抵抗を前に支配層の不安定性もまた増強する。
国内的には例えばオバマ前政権である。オバマ評価にはいろいろ意見もあろうが、政権の姿勢次第で投資銀行への規制、銀行預金の国際規制、医療保険制度の前進など、政権次第では1%への有効な打撃を加えることもできることを示した。
またかつてのイラク侵攻反対キャンペーンのように、多国間主義(国連中心主義)に基づいてアメリカを包囲していくならば、歴史を前向きに回転させていくことも可能だ。
新興国の発展していくエネルギーはあらゆる困難を押し切って、人類の発展を保証していくものとなるだろう。

そのためにも多くの人々がアメリカ帝国主義に対する見方を一致させ、変革の展望を共有することが望まれる。

下記の記事が大変優れているので、その要約を上げておきます。一部私の見解も混じっているので、記事の責任は私にあります。興味のある方は本文をご参照ください。

東洋経済オンライン 2018/09

岩崎 博充 「リーマン破綻から10年で世界は変わったのか…今も続く恐怖と後遺症、次に来るリスク

はじめに

リーマン・ショックから10年、世界は様変わりした。
世界はアメリカを筆頭に景気回復を遂げつつある。
日本は相変わらず日銀による異次元の量的緩和を続けている。

リーマン・ショック以前には存在しなかった極右政権が数多く誕生した。とりわけトランプ大統領の出現は世界の様相を一変させた。彼らは一見、グローバリズム・自由貿易主義とは真逆の政策をとっているように見える。

一方で、リーマン・ショック後に湧き起こった「ウォール街の占拠」運動は、ウォール街の強欲主義を厳しく糾弾し、格差社会を糾弾する運動となった。

リーマン・ショックが人類にもたらしたもの

リーマン・ショックがこの世界に残したものは何だったのか。それを列挙しておきたい。

<金融市場にもたらされた影響>

Ⅰ.作り出された「過剰流動性」

① 流動性の枯渇

リーマン・ショックは、急激な流動性の枯渇が引き金となった。

アメリカでリーマン・ショックが終熄した後も、欧州の通貨危機は長期にわたった。実体経済も足を引っ張られた。

その対策として取られたのが大規模な金融緩和、とりわけ量的緩和政策だった。

② 量的緩和(QE)

米連銀のバーナンキ議長は流動性の枯渇に対応するために、量的緩和政策を導入した。長期国債などを購入することでマネーを大量投入した。

ベース・マネーは、約8720億ドル(2008年8月)から2兆6480億ドル(2012年1月)となった。4年間で3倍となったことになる。

ヘリコプターからお金をばらまくようだということから、「ヘリコプター・ベン」と呼ばれた。

欧州中央銀行や日本銀行なども、これに追随した。異次元の量的緩和によって、世界経済は平常に復した。金融危機は過剰流動性によって避けられたといえる。

③ 過剰流動性のツケ

日本銀行だけがいまも依然として量的緩和を続けているが、FRBやECBは緩和縮小(テーパリング)に入っている。

しかし世界にはマネーがあふれている。過剰流動性は至るところでバブルを引き起こしている。世界は、今後大きなツケを払わなくてはならないかもしれない。

Ⅱ.金融モラルの崩壊

投資銀行などの自己勘定による金融取引はリーマン・ショックの原因の一つとなった。

このためボルカールールが定められ、投資銀行の閉鎖と銀行の市場取引の規制が導入された。

しかしトランプ政権によりボルカー・ルールは骨抜きにされつつある。投資銀行は復活し、CEOなどの責任はほとんど問われなかった。

金融業界にとって何よりも大切なモラルが崩壊し、結局は「やった者勝ち」の世界が生み出されつつある。

<政治、国民生活への影響>

Ⅰ.格差社会の拡大

「ウォール街の占拠」運動は、世界が保有する資産の半分を1%の富裕層が独占している現実を明らかにした。

しかしそれから10年近く、格差社会は一向に縮小せず、ますます拡大している。

Ⅱ.極右勢力の台頭

デマ宣伝を運動形態とする極右の運動が広がっている。その背景には、100年に一度の金融危機があったと考えるのが自然だ。

リーマン・ショックの発生直後にオバマ政権が誕生し、8年間の苦闘の末に金融危機を抑え込んだ。しかしその間に膨らんだ大衆の不満はオバマの目指したものとは逆の方向に向かった。

ヨーロッパでは、長引く不況を背景に移民排斥を唱える人々が勢いを増している。

<リーマン・ショックは終わったのか>

過剰流動性を是正する過程が、大きな矛盾を生み出す可能性がある。

Ⅰ.資金量の減少

まず金融市場から資金が消えていく。

FRBはすでに2520億ドル(28兆円)の保有資産を減らした。FRBやECB、日本銀行の3行を合わせた買い入れ額は、この1年でゼロになる見込みだ。

Ⅱ.ドル金利の引き上げ

資金の減少は金利の上昇と投資の減少を招く。

金利の上昇は
①ドル高(円安)
②株価の下落
③新興国資金の逆流(新興国通貨安)
をもたらす

とくに新興国市場からの資金引き上げは、新興国通貨安をもたらし、ドル債務の増加となる。トルコ、南アフリカ、イラン、ベネズエラの悲劇は、明日のすべての新興国の悲劇となるかもしれない。

一方における貧困の蓄積は、他方における富の蓄積をもたらす。世界的な格差の拡大に拍車が掛かる。
強いドルを背景としたアメリカの金融支配力は格段に強化される。

アメリカの金融力が強化された理由は、リーマンショックで焼け太りしたことだ。 
FRB資産の推移
          2019年4月27日 日本経済新聞
まず連銀はこの10年間で4.5兆ドルのドルを発行した。500兆円、日本の5年分の予算と匹敵する。
これだけドルを乱発すればインフレになるのが普通なのに、まったくそのようなそぶりもない。
結果として米連銀は大金持ちになってしまったわけだ。
見えないインフレ
これは世界経済にとって何を意味するか。換金可能な現金・有価証券が世界に溢れ、その結果、物質財に対してアメリカ以外の国の持つドルは目減りしたことになる。見えないインフレだ。
不況に加えてインフレが襲えば、経済困難はますます耐え難いものとなる。

実体経済の正常化を阻害
金融構造の正常化は始まったが、実体経済の正常化は進んでいない。
下振れ圧力は軽減されないままで、なかば構造化されている。
企業が長期にわたり設備投資を手控えてきた結果、生産性が低下して経済全体の活力が落ちている。
成長率の低下により、低金利が構造化されている。
労働市場は完全雇用に近づいたにもかかわらず、賃金上昇率は低いままである。この結果インフレ率も上がらないままで推移している。

ドルは実体経済にとって「麻薬」
つまりドルは溢れているが、ユーザーサイドでは欠乏感が支配している。ドルなしでは生きていけないのに、「もっと多くのドルを」と望めば、それはますます自分の首を締めることになる。
まさにドルが麻薬化しているのである。こうなるとドルの需要は底なしとなり、アメリカのドル支配は絶対的なものとなる。
魔法使いの弟子がホウキに水くみを命じて、それが止まらなくなってしまったような恐怖感を感じる。

国債決済通貨とドルの切り離し
ドルの麻薬化は資本主義経済と国際金融システムにとってなかば宿命である。これまでは実体経済における決定力と、覇者としての節度によって金融秩序がかろうじて保たれてきたが、10年間で500兆円という巨額のドルが垂れ流されたのでは溜まったものではない。コカインを通貨代わりに使うようなものである。
かってケインズが夢見て果たせなかった国際決済通貨「オーロ」の実現に向けて一歩を踏み出す以外にはないだろう。


米中通商戦争はエネルギー戦争

米中通商戦争はエネルギー戦争としての側面も持っている。

中国が今後発展していく上で最大のネックとなっているのがエネルギーである。
20世紀末までは時代遅れの石炭でしのいできたが、それはPM5となって自分の首を絞めるようになった。
中国エネルギー
       中国における一次エネルギー消費量の推移
中国は原油の確保をめぐって悪戦苦闘を続けてきた。南シナ海の海底油田はその一つだ。
米国は逆に原油供給先を潰しにかかってきた。イラン、リビア、ベネズエラへの干渉は中国に対する兵糧攻めだ。

石油からどこへ?

一方で、フクシマ以来原子力への芽が絶たれたことから、「石油に代わる未来のエネルギーは何なのか?」が問われるようになっている。

私がこの間勉強してきた感じでは、それは自然エネルギーをベースロードとし、LNGで増減を調整するミックス電源となるだろう。

自然エネルギーは、あれもこれもの夢物語ではない。広大な大陸では風力、人口密集帯では太陽光だ。これに揚水発電・省エネが組み合わされることになる。

蓄電池や液体水素などの話はその次の世代の話となる可能性が高い。

いずれにせよLNGの確保が死活問題

原油と違ってエネルギーの全てではないが、LNGの重要性は死活的なものとなる。
しかしパイプラインをふくめるとLNGの初期コストは相当なものとなる。EUに対するロシアの恫喝を考えると、政治コストも高価なものとなる。
そして今後LNG最大の供給先となりそうなのが、半ば無尽蔵のシェールガスをかかえる米国だ。これに対して最大の輸入国となりそうなのが中国という構図になる。

どうやっても中国はエネルギー不足という呪縛から逃れられそうにないのである。

米朝破談、ファーウェイ事件、ベネズエラ攻撃は一連だ

この間ファーウェイ事件を取り上げたばかりなのに今回は米朝破談だ。

1.何が起きたのか

昼のニュースで米朝破談が報じられた。その背景に本日午前の複数会談の映像が流れた。
その絵を見た途端にすべての疑問が氷解した。ちゃぶ台返しの犯人はボルトンだ。

そもそも昨日の複数会談に出ていないことが奇妙な話だ。ハノイまで来ていて出ないということは考えられなない。
出ろと言われて出ない、出るなと言われて出る、まさに傍若無人である。
前回の米朝会談のときには、シンガポールには行かずに、せっせと会談つぶしに精力をつぎ込んでいた。

今回は会談にあわせてコーエンの公聴会が行われた。これがボルトンが繰り出した「奥の手」だ。彼が何をしゃべるか(ボルトンが何をしゃべらせるか)はトランプの政治的運命に関わる。
だからトランプはボルトンの言うことを聞かざるを得なかった。これがすべてだ。
ボルトンは前回会談のときも会談つぶしに動いた。下記を参照されたい。
2.ボルトンの背後に米軍産複合体

ボルトン個人にそれほどの力があるわけではない。その背後に大統領すらあごで使うような巨大な権力が存在している。彼らがボルトンを政権内に押し込んだのであって、その逆ではない。

かつてその露頭となったのが、イラク戦争のときのチェイニー元副大統領を先頭とするグループである。(いまは誰か知らない)

それは恐ろしく野蛮な勢力であり、イラクに侵攻してフセインを暗殺したり、リビアでカダフィを虐殺したりしてきた。

それが最近息を吹き返して、ファーウエイのトップレディを誘拐したり、ベネズエラの合法政府をねじ伏せたり(まだ死なずに頑張っているが…)と傍若無人ぶりを遺憾なく発揮しているのだ。

いまやトランプの乱暴ぶりは、この軍産グループのたんなるベールに過ぎなくなり、それさえも場合によってはかなぐり捨てんばかりとなっている。

3.世界は束になってもかなわなくなっている

彼らがここ数年で急速に息を吹き返したのには3つの理由がある。

一つは米国の金融力である。リーマン・ショック後世界はとてつもない不況に見舞われた。このとき苦境をともかく救ったのは米国の三次にわたる量的金融緩和(QE)である。
各国は当面の苦境から救われたものの、米国の金融支配に全面的に屈服した。

二つ目は米国の経済制裁力である。とくに輸出入制限に加え金融制裁が課せられた場合、どの国でも致命的影響力を被ることになる。
中国でさえもそうである、そのことが明らかになった。

三つ目は、米国企業の利益力である。現在米国籍の世界企業による租税回避が大きな問題になっているが、問題はそこではない。
問題は脱税額が巨額になるほどそれらの企業が膨大な利潤(超過利潤)を上げていることである。GAFAを始めとする米国籍の巨大企業の競争力は群を抜いている。


4.米軍産複合体は世界の人々の共通の敵

彼らは利益をむさぼることを何ら躊躇しない。
彼らはそのために暴力や不当な制裁、理由のない攻撃をかけること、いわれなく人を脅したり貶めることを何ら躊躇しない。

敵はトランプではなく、その背後にいる人々だ。

米軍産複合体に抗議する世界の人々が、今やお互いに赤い糸で結ばれ、連帯を強めなければならない。

そしてその一つ一つの表れを警戒し注視し警告しあわなければならないだろう。

「5G」について
がとてもわかり易い。なぜかというと、記事そのものが“PRESENTED BY ファーウェイ・ジャパン”だということ。記事の書かれたのが事件発生後の2018年12月07日だからだ。
これを読むと、5Gが何なのかだけでなく、なぜそれがファーウェイで、なぜファーウェイが狙われたかまで全部分かるからだ。

ICTというのは情報・通信技術のこと。以前はITといったが、情報インフラである通信が重視されるようになった。TVでいうと、番組のコンテンツが情報で、受像機がインフラだ。番組を作るのはヤクザな虚業だが、受像機を作るのはカタギの実業だ。どちらが偉いかは子供でも分かる。

5Gというのは第5世代の意味。
1G:アナログ携帯電話
2G:デジタル化
3G:高速データ通信 (光ケーブル)
4G:スマートフォン用通信 (電波)
5G:1平方キロメートルあたり100万台以上のデバイスの同時接続が可能となる。
ということでキャパの容量が桁違いということらしい。それ以上のことはわからない。

5Gの経済効果については様々な研究所で試算が行われており、2023年には30兆円とも予測されている。
5Gの最先端市場は中国で、基地局数がアメリカの10倍ともされている。牽引するのは、ファーウェイだ。その売り上げの約50%は通信事業。研究開発への積極投資を続け、毎年売上高の10%以上を投資している。

1月20日、オックスファムが定例となった世界での不平等の実態に関する年間報告「公共の利益か、個人の富か?」を発表した。

(Ⅰ) 骨子は以下の通り。

1.26人の大富豪が世界の貧困層38億人分の富を所有している。17年の時点では43人だった。

2.貧困層の資産は1年で11%も縮小した。大富豪の資産は12%も拡大。1日に25億ドルずつ増えている。

3.08年の経済危機以来、大富豪の数が倍増した。近年における彼らの納税額は最低額である。

*「大富豪」は資産10億ドル以上のビリオネアを指す。
*「貧困層」は中央値以下のボトム・ハーフ(貧しい半数)を指す。

(Ⅱ) 格差の年次推移

格差が過去10年間でどう変化しているかを示したのが次の図である。

図 大富豪の数

大富豪の数
リーマン・ショック後の一時的な収入低下は、早くも1年後に底を打つ。その後は一本調子に懐ろが膨らんでくる。
ビリオネアの数は10年間で2.8倍に、その総資産は3.2倍に増えている。平均年率で30%だ。これは少なく見積もってGDP成長率の10倍に相当する。このような寄生虫に取り憑かれたら一刻も早く駆除しなければ、確実に宿主は死亡する。

(Ⅲ) 格差の理由: オックスファムのコメント

以下のような要因の複合によると考える。

1.「情報通信技術」(ICT)による生産手段の寡占

2.「企業買収」による資本の集中

3.グローバル企業による悪質な租税回避

4.法人税の過剰な引き下げと「底辺への競争」

5.医療や教育予算の削減

6.富裕層への優遇税制

* 世界経済フォーラムの推計では、世界中で生産プロセスがAI制御されると,今後10年間で100兆ドルの経済価値が生まれる。
* 米国の労働生産性は、2000年を挟む10年間の好況期で2.3%伸びた。しかし下位90%層の所得成長率はマイナス0.2%だった。

私の感想として、これらの「格差の背景」は、民主主義だけでは片付かないものがふくまれている。「民主主義的な社会主義」が必要だ。それとともに国連中心主義を軸とした多国間主義も必要。


時代を読む3つのキーワード: 格差社会・超帝国主義・民主的社会主義

これが、北海道AALAの2月号に載る予定の、ちょっと遅めの、ちょっと先走った年頭の辞です。

この間、かなり根を詰めて勉強してきて、感じたのが格差社会、超帝国主義、そして民主的社会主義という3つのキーワードだ。

1.格差社会
格差社会は現在の世界をもっとも強烈に形作っている特徴だ。これが社会の歪みを生んでいるし、その歪みがますます格差社会を助長している。貧困が問題なのは可哀相だからだが、格差が問題なのは不正義であるからだ。
今日の世界の政治問題のほとんどは格差社会のなせるものとして説明できる。なぜなら格差が大きいほど政治は容易に買えるようになるからだ。これはある程度まで真実である。1%の人々は票や世論を金で集め、“民主的に”政治を支配することができる。
この歪みの深化の過程、人々の抱く怒りと無力感の構造、社会意識の液状化メカニズムをもっと鮮明に把握しなければならない。
この格差社会は決して自然に生じたものではない。それは「ネオリベラリズム」がもたらした災厄である。それはアメリカ政府とその手先の機関が世界に押し付けたものである。それは血まみれの姿で歴史に登場したのである。

2.アメリカ帝国主義の再活性化
アメリカこそが軍事・政治上の覇権を握り続けてきたのだが、それが名実ともに帝国主義の名にふさわしい相貌を呈してきたのは、じつはこの10年のことではなかったのか。
それがGAFAなどに象徴される、情報産業分野での圧倒的な優位の獲得であり、それにもとづく金融支配と経済覇権の掌握であったと考えられる。
これまでの覇権に加え、独占的な経済・金融手段を獲得したアメリカ帝国主義は、有力なライバルと目されていた中国に突如コブシを振り上げ、一撃で打ちのめした。

3.「超帝国主義」の出現
あまりにも巨大な「超帝国主義」の登場に思わず足がすくんでしまうが、逆に言えば戦いの相手がはっきりと姿を現したことで、世界の99%の人が団結して戦うべき目標が定まってきたとも言える。
ではこの「超帝国主義」とどう戦うのか。99%の人々が団結して、1%の人間の支配するディストピアの実現をどう阻止するのか?
それが方向づけされ、共同目標が明らかにされなければならない。それは怒りと抗議、正義と公正の要求にとどまってはいられない。
その作業は世界中で取り組まれることになると思うが、いくつかのクライテリアが提出されている。例えば人間的尊厳の無差別な尊重、人として生きていく権利の平等、コミュニティーの自生する権利などが挙げられると思う。

4.民主主義的社会主義の旗印
これらの権利を超帝国主義に対し主張していく際に、念頭に置かなければならない点が一つある。
それは、この格差社会と超帝国主義が第二次大戦後の戦後民主主義の中から育ってきたということである。レトリカルに言えば、超帝国主義は戦後民主主義の申し子なのであり、一般的に民主主義のスローガンを対置するだけでは解決できない問題をふくんでいる。すなわち社会主義の観点が必要なのである。
バーニー・サンダースは今、「それを民主主義的社会主義と呼ぼうじゃないか」と呼びかけている。アメリカ帝国主義の胃袋の中で闘いつづけてきた彼には、あえてみずからを民主的社会主義者と呼ぶしかなかったのだろう。
たぶん「社会主義論」は議論の多い課題にはなるだろうが、運動の性格付けをする上で避けて通れない課題だと思う。オカシオ・コルテスのような若手活動家は何のためらいもなく民主的社会主義を叫んでいる。
時代は変わりつつあるのだ。

ハードディスクの書庫を引っ掻き回していたら、以下のような文章(の断片)が出てきました。おそらく、AALAの総会方針を書いたときのものだと思います。
我ながら、20世紀末の状況を的確に把握しているなぁと思い、再掲することにしました。

20年経ってますます明らかになっていることは、この間の「グローバリゼーション」が、本質的にアメリカ帝国主義の一極支配の確立プロセスだということです。
だから我々は、「アメリカ帝国主義は衰退しつつあるのではないか」とか、「超国家企業の前に国家は消滅するのではないか」などという考えを捨てなければなりません。


21世紀を迎えようとする今,世界の情勢は極めて混乱した状況を迎えています.もちろん第三世界における人種,宗教,国家間の紛争も相変わらず続いています.その大本となる,先進国による途上国の収奪の体制も強められています.

しかし一方において,米国を中心とする情報産業の発展.金融ネットワークの広がりにも目を向けられます.その善悪はともかく,情報化によって世界が根本から変わってしまうのではないか,19世紀の産業革命が世界を変えたのと同じように,インターネットを中心とする「情報革命」がまったくあらたな時代を作るのではないか,そんな感想もあります.

グローバリゼーション,あるいはグローバリズムという言葉は,そのような思いを代弁するかのような姿で登場してきました.とくに好況にわき返るアメリカでは,情報にかかわる技術革新のおかげで,世界中の富が集まってきた,失業率も最低になった,ということでグローバリゼーション万歳の声が強まっています.

グローバリゼーションという思想の結論は,国家の消滅です.ボーダーレスの時代の到来とかいわれます.電話回線(衛星通信とか光ファイバーとかディジタル通信網とかいろいろ並べますが)ですべてがつながり,情報がすべての人間の共有するものとなれば,国家の意味はなくなる,というわけです.そして国家に代わるあらたな主人公は国際金融市場です.そして投機的色彩の強い資本です.ボーダーというのは国境という意味ですが,「見境いない」という意味もあります.

それは19世紀のパックス・ブリタニカ,20世紀のパックス・アメリカーナに続く,パックス・マネタリカの時代です.ロンドンのユーロ市場,ニューヨークの証券取引所,シカゴの穀物取引所こそ,21世紀の覇者になるわけです.

 

こうしたグローバリズム万歳論は,おそらくアメリカの好況が終焉を迎えると同時に消滅するでしょう.ユーロ市場は,ドルの過剰流動性に根拠があるのであって,それ自体は世界経済の撹乱者,破壊者の役割しかもっていません.そもそもの成立が,オイル・ショック後のオイルダラーであり,70年代後半には中南米の経済をずたずたにし,90年代にはアジア経済に大きな痛手を与えました.それが今アメリカに集中しているだけのことです.

この連中は芯からの無政府主義者であり,グローバリズムは彼らの無頼思想の反映に過ぎません.

 

グローバリズムを主導する勢力にはもう一つあります.いわば保守本流,先進諸国を支配している勢力です.彼らの狙いは世界の全面支配にあり,そのために徹底した自由化を要求しています.この自由化の動きは,別に目新しいものではありません.80年代からのウルグアイ・ラウンド,そして93年のWTO創設の流れの延長線上にあります.

 

それではグローバリズムと名づけるような変化が何処にあったのか?

それは一言でいえば,先進国資本の,一段と深い浸透にあります.その典型がラテンアメリカ諸国における自由化・民営化です.

 

ラテンアメリカにとって80年代は「失われた10年」とよばれています.投機的資本に経済をずたずたにされ,残されたのは膨大な借金=対外債務でした.80年代末にアメリカのブレイディー財務長官が「救済案」を提示し,これに先進国の金融界を代表する勢力,いわゆるパリ・クラブが賛同して,経済再建への動きが始まりました.

 

フジモリだけではなく,すべての国の大統領が自由化,民営化を推し進めました.ウルグアイでは売るものがなくなって,飛行場まで「自由化」しようとしました.

民営化といえば聞こえはいいのですが,要するに公営企業の身売りです.しかも身売り先のほとんどは先進国の大企業ですから,売るというよりは借金のカタに没収され国際競売にかけられたという方があたっているかも知れません.

 

途上国政府にとっては,まさに「国家の消滅」という言葉が実感を持って迫ってきます.先進国からすれば,国家の基幹とも言えるインフラストラクチャー部門まで自らの手におさめてしまうのですから,「ボーダーレス」としかいいようがありません.

 

この場合,注意しなければならないことがあります.「国家の消滅」の危機に瀕しているのは途上国の政府であって,先進国ではないということです.先進国の政府の国際的機能は一連の経過のなかで逆に強化されています.アメリカ連邦銀行総裁のグリーンスパンの名をとって「グリーンスパン帝国」の出現とする論評もあります.

 

いま日本の政府も盛んに民営化をいっていますが,これが「国家の消滅」につながるものでは決してありません.むしろグローバル国家としての機能の再編強化を目指す「国家リストラ」というべきでしょう. 

不破さんが現綱領を作成して、その後現役を引退してから、もうずいぶんになる。
退役後、ずいぶん本を書いた。最初はこちらもお付き合いしたが、だんだんずるけるようになってしまった。
しかし未だに日本の革新運動史上最高の理論家であると思っている。

それはともかくとして、
「資本論はどのようにして形成されたか」(2011年)という本があって、その中の一節が大変印象的なので紹介しておく。
マルクスー不破

これは「リーマンショックから10年」という年がまもなく終わるにあたって、なかなかふさわしい一文ではないかと思う。

といっても、不破さん自身の発言ではなくマルクスの引用なのだが、不破さんの博識ぶりに感嘆したという話だ。ついで不破さんによる背景説明というかウンチク。
これは、1857年恐慌の終結後の58年10月、マルクスがアメリカの新聞『ニューヨーク・デイリー・トリビューン』に掲載した経済論説「イギリスの商業と金触」のなかの一節です。
イギリス議会下院委貝会の恐慌問題の報告書が、恐慌の原因は「過度の投機および信用の濫用」にあったと結論したのを読んで、マルクスが、問題はそんなところにあるのではない、「過度の投機および信用の濫用」がなぜ10年ごとに繰り返されるのか、その原因を究明するところに恐慌問題で探究すべき中心問題がある、こういう痛烈な批判の言葉を校げつけたのでした.
それから160年も経って、いまなお先進国の国民が、「きわめて見え透いた幻想に惑わされて、周期的に自分の財産を手放す発作」にとらえられるのはなぜか。しかも10年毎に繰り返されるこっぴどい警告にもかかわらずやられるのは、いったいなぜか。
自己幻惑、過度投機と架空信用を10年おきに再生産する社会的事情ってなんなのだろう。
ということで、マルクスはそれをマインドの面から説明し、しかもそれに合理的な経済的説明を継ぎ足そうとしている。
マルクスの言につづいて、これを引用した不破さんの読解と解釈。
この文章を読んで、私が求めていた問題は、まさにここにあったと直感しました。資本主義的生産はどうして恐慌という破局を周期的な必然とする運動形態をとるのか、恐慌論でいう恐慌の「根拠」――生産と消費との矛盾――が周期的な恐慌を伴う産業循環を生み出すのは、資本主義経済のどういう仕組みによってなのか。
マルクスは、“問題はここにあるのだ”と言って、核心を避けて常識的な一般論に終始したイギリス議会に批判の言集を投げつけたのです。
“そうである以上、この問題にたいするマルクス自身の回答にこそ、マルクスの恐慌論の核心があるはずだ”、私はこう考えて、マルクスが経済論説で提起した問題を「恐慌の運動論」と呼び、その探究を志したのです。
ということで、さらに文章は続いていくのだが、とりあえずは
1.恐慌は投資家のマインドの問題である
2.マインド形成には資本主義のメカニズムの必然性が反映されている
という2段構えの論理を、マルクスが準備していることが分かればよい。
「資本主義システムが直接に恐慌を生み出すメカニズムを内包しているわけではない」、というのはマルクスの成長の証であろう。

国際銀行間通信協会 「SWIFT」(Society for the Worldwide Interbank Financial Telecommunication)
はこの間のハッカーの主要な攻撃対象となっている。

SWIFTの問題点と今後

一番問題なのは、SWIFT自身がハッキングを抑える手段はないと言っていることだ。これは民間の協同組合みたいなものだから強制力は持てない。
もう一つの問題は、信用状をやり取りして然る後に、人手を介した銀行業務を開始するというシステムの問題がある。本質的に偽メッセージが潜り込む危険性を秘めているシステムだ。「支払いのメッセージング」と「決済完了」の間にタイムラグが生じることも深刻な問題だ。
第三に、そもそもこのようなきわめてアナログ的な業務スタイルが、はたして今日の世界においていかがなものかという素朴な疑問がある。
ただこれらの問題が解決され、システム的に洗練された場合は、一種の「国際商業決済銀行」として巨大な力を発揮する可能性もある。それは国際決済銀行(BIS 中銀のみ)もIMF(各国通貨の監視)も果たしえない機能だ。
さまざまな問題にもかかわらず、現に世界の200以上の国で、1万以上の金融機関が加入しているのはその反映なのだろう。
ここに国際的な基金をプールして、その資金を運用することになればアメリカの最大の武器であるドル決済体制を揺るがすことになる可能性もある。だから米NSAがSWIFTの金融取引への監視を強めているのだろう。

この間の経過

1973年 国際銀行間通信協会 「SWIFT」が発足。当初は通信ネットワークサービスを運営するための国際協同組織。ベルギーに本部を置く。15ヶ国の239銀行が参加。

1977年5月 サービスの運用が開始される。金融機関同士のネット通信。暗号化と端末の差別化により守秘性を向上。

1986年 付加価値サービスとして国際決済銀行と提携し欧州通貨単位の決済を手がける

2004年 スイフトネットへの移行を完了。202の国と地域の7800を超える金融機関が接続。

2006年6月23日 ニューヨーク・タイムズ、スイフトのクラウド情報が、中央情報局などにより利用されていたと報道。セキュリティの脆弱性が暴露される。

2013年9月 スノーデンの内部告発。米NSAがSWIFTの金融取引を監視。広範囲の銀行取引とクレジットカード決済をモニターしていることが暴露される。

2015年1月12日 サンフランシスコのウェルズ・ファーゴ銀行、「BDAからの送金依頼」に応じ、1200万ドル(約13.4億円)を送金。この事件は1年以上秘匿される。

2016年
2月5日 バングラデシュ中央銀行で約8100万ドル(約90億円)の不正送金事件が発覚。「銀行を襲った史上最大級の盗難の事例」となる。
ハッカーはニューヨーク連邦準備銀行内のバングラ銀行口座にアクセスし、不正送金させた。犯人が些細なミス(誤字)をしていなければ、約9億5000ドル(約1000億円)に達していたと推測されている。

4月 SWIFTはシステムの包括的なセキュリティ強化を行う。加入者にもソフトウェアのアップデートを促す。

5月 ニューヨーク・タイムズ、「SWIFTに関連した第二のサイバー攻撃」を報道。SWIFTはこれを否定せず。

5月15日 ベトナムの銀行でハッカー攻撃が起きたと報道される。送金は未然に防がれたとされる。NYT報道と同一ケースか。

5月後半 エクアドルの銀行から4つの銀行に約1200万ドルが不正送金されたことが発覚。その後もフィリピン、ウクライナ銀行で不正送金が次々に発覚する。

2017年

11月4日 ネパールの銀行、6ヵ国へ約4億6000万ルピー(約5億円)を不正送金。SWIFTを利用したハッキングとされる。早期発見で4億の回収に成功。

2018年

2月 インドシティユニオン銀行、2億円超のSWIFTハッキングによる流出。

2月16日 ロシア中銀、SWIFTを使って約600万ドルが不正送金されたと発表。事件が起きたのは昨年であり、詳細は発表できないとする。

10月 FireEye(米セキュリティ企業)、北朝鮮のハッカー集団「APT38」が、サイバー攻撃で1億ドルを不正に取得したと発表。これによると4年間で11カ国、16以上の金融機関を攻撃したとされる。

11月5日 SWIFTが国際送金網から、イランの複数銀行を除外する措置。トランプによる追加経済制裁を受けてのもの。イランの銀行は国際間送金ができなくなる。通貨の代替案として自国中銀発行の仮想通貨が注目を集める。

追加: SWIFTはトランプのイラン追加制裁を受けて、国際送金網からイランの銀行を排除した。とんだ腰抜けだ。CIAやNSAにいくら盗聴されてもなんにも言えない。このようなへなちょこに世界経済の将来は到底託せない。こうなれば最後はビットコインだろうか。

そんなこと威張っても仕方ないが、習近平が詫びを入れた。私の言った通りになった。
経済通や中国通はみな不思議がっているが、そんなこと当たり前だろう。読めなかったアンタ方の程度が低いということだ。
だいたい、赤旗から日経まで、みんな中国を買いかぶりすぎている。



貿易は決済を以って完了する。決済は決済通貨なしに不可能である。中国が貿易を盛んに行えば行うほどドルの縛りを強く受けることになる。中国がドルという外貨をいくらたくさん持っていようと、それはドル決済システムを補強するだけの話でしかない。
これまで常に、中国の最大の弱点は通貨で、この弱点はまったく克服できていない。それどころかますますドルの罠に絡みとられているように見える。
かつて日本はプラザ合意でドルで累積した外貨を半分に減価された。さらに不均衡の是正ということでいいようにむしられた。ドルを決済通貨にするというのはそういうことだ。
中国にとって最後の手段は、ドル建て債務を踏み倒すかどうかだ。それはありうると見ている。ただしそれは日本とEUをふくめ、世界中で一斉に踏み倒すことができるかどうかにかかっている。その旗振りができるのは中国以外にないだろう。


情勢分析をするときに、つねに念頭に置かなければならないのは、リーマンショック以来の10年間で何が変わったのだろうか、それが政治の世界にどう反映されていくのかという視点であろう。
私はこの10年の力関係の変化を決めたのは、大量の通貨・ドルであろうと思っている。
QE、QE2、QE3という三次にわたる量的緩和策が世界のあり方を変えてしまった。
世界は身の丈に余るぜい肉をつけてしまった。ベッドから動けなくなってしまった超肥満者の状態にある。きわめて不健康な状態であり生命にも関わる。
量的緩和は窮余の策として必要であったに違いない。重病人に点滴をするのと同じである。治ったらやめればよい。しかしやめられなくなったら、どうなるのか。そのことは誰にもわからない。
とにかくそうなってしまっている体にいきなり根治療法をしても、体力が持たないから、できるところから少しづつ手を付けていく以外にはない。
何れにしても世界の通貨の99%を握る1%の人々に、これ以上金が回らないようにすることが一番肝心なことである。米中経済摩擦もその観点から見ていかなければならない。








米国・欧州における進歩派の前進 その2 ヨーロッパ

A) イギリス 「コービン現象」の現在
ブレグジット(EU離脱:ブリテン+エグジット)の着地点は見えない。なぜならそれは英国政治の真の焦点ではないからだ。
問題は長い間に蓄積されてきた社会的危機と、それを進めてきた保守党の政治に対する民衆の拒絶感である。ブレグジットはそれを逸らすための偽りの争点だ。

8年間の保守党政治のもたらしたもの
医療サービス(NHS)や各種行政サービスの切り詰め。公務部門労働者への厳しい賃金抑制。
これらが経済成長を急落へと押しやり、税収を急速に低落させる悪循環を招いた。

これらはミレニアル世代で特に深刻だ。公的住宅が不足し住居費は収入の50%に及んでいる。賃金と労働条件は低劣で、しかもそれらについての保証もない。
交通費、光熱費、娯楽費も高い。その結果多くの若者がローン漬け、カード漬けになっている。

社会的不公平の象徴となったのが、17年7月のグレンフェルタワー火災だ。この火災で70人以上が犠牲となったがその多くは低賃金の移民労働者だった。燃え上がる新建材の炎は、この国の貧困者への態度をあからさまに示すものだった。
musurimタワー住人
        住民の多くはムスリムだった

民衆の心をつかんだ生活改善の訴え
保守党政権はNHSの設備を売り払い、民営化を推進している。
NHSの民営化をやめる。保守党のやりかたにノーといおう。必要に応じて税金を適切に支出する。

政府のケチで、多くの命が犠牲になり、健康の不平等が拡大している。
富裕層が貧困層より26年も長生きしてるなんて受け入れられないよ。
我々は皆の医療、教育、住宅にきちんとお金が使われる社会に住みたい。
英国では123,000人の子供たちに家がない。保守党政権になって路上生活者が2倍以上になった。
10万戸の公的住宅を建設しよう、誰もが自分の住まいを持てるようにしよう。
最低賃金£10を実現する。従業員を正規の労働契約にする。
コービン演説
    ロイターより

17年6月選挙とその後の動き
保守党強化の予想は覆された。自由民主党は議席を激減させ、極右の英国独立党は唯一の議席を失った。
若者たちは、労働党史上もっとも左派の指導者、ジェレミー・コービンの下に結集した。23歳以下の青年の3分の2が労働党に投票した。
労働党の党員数は、ブレア時代の12万から60万以上に跳ね上がり、西欧最大の政党となった。
コービン派の中核組織「モメンタム」グループの組織員も10万を越える。
一方、保守・右翼の反撃も強まりつつある。
ロイター通信は論説で、右のトランプ、極左のコービンを2つの「おろか者政治」(ポピュリズム)と呼びその危険性を訴えてる。

今後、ブレグジットが暗礁に乗り上げた時どうするか。コービンは今年2月「EU離脱・関税同盟維持」の方針を出した。事実上は残留に近い。これで合意が形成されれば、保守党政権は吹っ飛ぶ。その先に「皆の医療、教育、住宅にきちんとお金が使われる社会」というもう一つの社会が作られる展望が開けている。

B) ドイツ左翼党の前進
長くなるので次のページへ

米国・欧州における進歩派の前進

4日の日曜日に全道教研集会でしゃべるのに大急ぎで書いています。

A. アメリカ:「民主的社会主義」が前進しつつある

いま米国ではトランプの暴政に対する反撃が強まりつつあります。おそらく1週間後に控えたいわゆる中間選挙で、明確な結果が出るでしょう。

この「中間選挙」というのは、その影響力から見て「中間」などというレベルではありません。上院議席の3分の1、下院の全議席、知事、州議会などが対象となっています。日本で言えば衆議院選挙と参議院選挙と一斉地方選を一度にやってしまうようなものです。日本ではこんなメガ選挙はありません。

いまのところ、各種世論調査を平均すると民主党48・8%、共和党40・5%となり、民主党圧勝の可能性があるようです。

ただし、そこで話題になるのはトランプがどのくらい目減りするか、選挙後にトランプの政策は変化するかどうか、というあたりに集中しています。ほんとうは世界史的に見れば、米国の中で真のリベラル進歩勢力がどれだけ前進するかが最大の焦点です。

ということを念頭に置きながら、とりあえずはサンダース派と呼んでおきます。サンダース派は中間選挙で、国民皆保険・銃規制・最賃引き上げを前面に据えており、これが有権者の支持を集めています。

7月に行われたある調査では、「革新」派と呼ばれる81人が、民主党内の各級予備選で勝利しています。これは3ヶ月前前の31人から急増しています。米国内の予備選では130人の青年・女性候補者が勝利しました。そのうち100人以上が民主党の候補者でした。

ギャラップ社の世論調査では、民主党員のうち57%が社会主義に「肯定的」な印象を持っていると回答しています。資本主義について同じ質問をしたところ、47%にとどまりました。このような結果は調査を始めて以来の10年間で初めてのことです。サンダースはこれを受けて、「社会主義は多くの米国人の支持を集め主流になった」と述べています。

このような情勢の変化の中で、サンダース派にとって最大の勝負となるのがフロリダ州知事選です。予備選を勝ち抜いて民主党の知事候補となったアンドリュー・ギラムは、タラハシーの市長を務める39歳の黒人青年です。非白人層の青年、女性が熱い支持を寄せています。もし勝利すればフロリダの史上初となる黒人知事ということになります。
ギラム
       フロリダ大学構内で演説するギラム候補

B. 民主的社会主義の背景

我々はサンダース派と呼んでいますが、実はそういう人的なつながりというレベルではなく、すでに一つの政治集団が形成されています。「アメリカ民主主義的社会主義者」(DSA)といいます。それは目下のところ民主党の中の派閥を形成していますが、いずれ独自性の高い政治結社へと発展していく可能性を持っています。

オカシオ・コルテスはDSAについてこう語っています。
「モラルある豊かな現代社会において、すべての人が十分に教育を受け、医療の機会や住居を得られること。基本的な経済的社会的尊厳を受けるべきこと、これらを主張する組織はDSA以外にない」
C. 社会主義を志向する労働運動
DSAは青年の自主的組織ですが、さらに米国労働運動の伝統に根ざしたしっかりした組織がその背景にあります。それが社会運動的労働運動(Social Movement Unionism:SMU)という運動です。
これは組織というよりはAFL-CIOがうちだしたキャンペーンですが、明確に社会主義を志向したものです。SMUは、労働組合の目的を組織維持でなく「社会正義の実現」とそのための組織の拡大におきます。
そのため、組織化の対象を従来顧みられなかった女性、マイノリティ、低賃金労働者などに拡大し、企業だけでなく、NGO、地域コミュニティ、宗教コミュニティとの連帯を重視しています。
具体的な取り組みとしては、ビル清掃労働者の組織化、訪問介護ヘルパーの組織化、ホテル・レストラン従業員の組織化、ファストフード労働者の最低賃金獲得要求などの運動などです。
こうした運動が、いざというとき労働者の闘争を支えてくれるのです。
SMUのたたかいの中で、最低賃金要求のたたかいは最も知られたものです。過大な生活負担に苦しむ労働者・国民の切実な要求として多くの支持を得て大きく前進しています。
アメリカの労働者の運動は、そのまま貧困者の運動でもあります。労働運動を担っているのはかつてのような華やかな大工場労働者ではありません。公立学校の教師、公的病院の看護師、消防士、バス運転士など一言で言って貧困者の中のエリートです。自らも厳しい生活に喘ぎながら、もっと苦しくもっと差別されている人たちに、サービスを提供する仕事をしています。
アメリカの労働者の生活は本当に厳しい。都会のアパートの家賃は1LDKで35万円です。さらに過大な医療保険代・医療費はよく知られています。
彼らが「社会正義が最優先される社会」すなわち「社会主義」の社会を志向するのは当然でしょう。


昨日の記事で3つの脆弱性と書いたが、通貨システムの脆弱性、国家財政基盤の脆弱化は良いのだが、金融システムの脆弱化という表現が正しいのかが我ながら気になる。
金融システムと言うと銀行を中心としたハード的な概念になってしまう。たとえばBISの規制強化みたいなものが金融を代表するのかと言うと、むしろそういうものはますます辺縁化しつつあるのではないかという感じもする。
そういう意味ではまさしく「金融システムの脆弱化」なのだが、金融と言うにはもっと広くて漠然としたマーケットがあるのではないか、そこがタガが外れて暴走しているのではないかという感じがする。
我々がこれまで語ってきた市場の需要・供給曲線というのは商品世界のバランスだった。しかし今我々が目の前にしているのは商品を中心として動く世界ではない。それは利子を駆動力とし貨幣を媒介として形成される需要・供給曲線の世界である。
貨幣を媒介とするというのは正確に言うと貨幣の取得権(SDR引き出し権)なのだろう。話がややこしくなるのでとりあえず貨幣にしておくが、金融市場というのは貨幣の取得権の売買が基本となる市場であろうと思う。
それで思い出したのだが、以前マルクスの資本論第3部を学んでいる時に「信用市場」という概念にこだわっことがある。結局私の基礎学力不足のために、それ以上進むことはなかったのだが、今考えてみるとこの「市場」の失調がリーマンショックの本質ではないかと考えてみたくなった。
これまでも過剰生産恐慌に加えて金融恐慌という概念はあったし、マルクスもそれを描いている。

しかし、マルクスの予見したものは「金融恐慌」という枠組みをはるかに超えた、「信用市場」のメカニズムの破綻がありうるということだ。
おそらく商品市場が経済の土台で、その上にそびえるのが信用市場というもう一つのメカニズムなのだろう。マルクスは商品を手がかりに資本主義の生産システムを全面分析していくのだが、その上に信用市場が成立し、独自の論理で動き始めること、そして信用の創出過程の秘密を解き明かすことなしには、資本主義の全容は解明できないだろうということを予感していた。

日経新聞の株屋予想的分析にとどまらず、この課題への手がかりを見出していくことが「経済学」のなすべきことではないだろうか。

をご参照いただければ幸甚です。

1.宮崎さんは中国を買いかぶっている
宮崎さんの話を聞いていると、私はどうも中国経済を買いかぶっているのではないか思ってしまう。
マック価格というのがあるが、私はマックのハンバーガーは嫌いだから(モスバーガーは嫌いでない)、あまりピンとこない。それに対し居酒屋価格というのは大いに実感できる。
わたしが北京に行ったのは2004年のことだ。その時ホテルの隣の地元の人が行く食堂では腹いっぱい飲んで食って800円だった。
北京の物価は日本の10分の1、昭和40年ころの物価だなと感じた。韓国が5分の1だったから、その半分ということになる。
社会インフラはびっくりするほど遅れていて、ほとんど皆無と言ってよいほどだった。
詳しくは「中国の農村医療問題ノート」、「中国の社会保障」、「中国における失業と貧困問題」を御覧いただきたい。
これが15年前だ。それからいかに急成長を遂げたといってもまだ日本には及ばないはずだ。ただ貧富の差はすごいから、上流の人達は日本を追い越しているかもしれない。

2.中国のGDPは見掛け倒し
もう一つ、中国のGDP成長は見掛け倒しだということ。これはリーマンショックの時に相場に逆張りしたから膨らんだだけであって、働いて稼いで勝ちとったGDPではない。日本の高度成長とは中身が違う。
さらに言えば、巨額の投資を行ったにもかかわらず、GDP成長は減速しているわけだから、それは隠れ債務として積み上がっているはずだ。それがどこに潜んでいるかはわからない。こちらが専門家に聞きたいくらいである。公的債務として積み上がっていないのであれば、それは民間債務となっているはずだ。しかしそれは中国政府にとっては同じことで、かえってタチが悪いかもしれない。

3.中国は泣きを入れるだろう
日本でバブルが破綻したとき、凄まじい資産の減損が行われた。金融機関もバタバタと逝った。倒れなくても、例えばオリンパスのように、密かに莫大な不良債権を抱え続けた企業も少なくなかったはずだ。
超優良国日本ですらそうだったのだから、中国がバブル崩壊と人民元の売り浴びせに耐えられるわけがない。
だから中国は必ずどこかでアメリカに泣きを入れるはずだ。
米中の覇権争いだとか、米国が凋落しつつあるなどという見方は見当違いだし、中国経済の不当な買いかぶりだ。
私はそう思う。

4.「盛者必衰」史観の無力さ
宮崎さんの話は、結局米中貿易摩擦を世界史のレベルに還元してしまおうということで、しかもそれは唯物論と言うよりは「盛者必衰の理」という無常観に基づくものだ。
では日米貿易摩擦のとき、なぜ日本は敗れたのだろうか? なぜ中国なら勝てるのだろうか?
そこのあたりを上手く説明してもらえないと、お通夜のときの坊主の「法話」と同じで、屁のつっかいにもならない。
もしわたしがことわざで対抗するなら、「出る杭は打たれる」だ。おそらく鄧小平もそう言っただろう。
「いつかは中国は世界一になるだろう。しかしその時までは隠忍自重が求められる。今はまだ我慢のときだ」
米中の経済関係は基本的にはウィン・ウィンで推移している。トランプの中国批判は言いがかりに過ぎない。
ただしこの関係を続ける限り中国はさらに成長を続けるだろう。それは米国にとって脅威になるかもしれない。
そのように米国の一部勢力が考えたとしてもなんの不思議もない。中国は今もなお共産主義を標榜しているからだ。共産主義の名によって独裁政治を合理化しているからだ。

5.当面の主要な側面はGAFAの“開放”圧力だ
中国の成長が見掛け倒しもふくんでいるとすれば、アメリカの超巨大産業の成長は正味そのものであり、こちらのほうがはるかにでかい。
もし米中経済摩擦を論じるなら、衰亡しつつある米国の反撃と捉えるよりは、4大IT企業“GAFA”による知財攻勢の一環として位置づけたほうが情勢把握としては正確だろう。
日米経済摩擦を思い起こせば良い。たしかに最初はアメリカの自動車産業の悲鳴であったが、90年代に入って様子は一変した。彼らは次々に難題をふっかけ、日本の財産を食い物にし、ハイエナのようにたかり、すべてを奪って行った。
基本的には米国は貿易摩擦問題で決して受け身ではない。彼らは被害者ではなく加害者だ。このことをリアルにアクティブに受け止めるべきではないか。



リーマンショックは終わっていない

2008年9月15日に、リーマン・ブラザーズが経営破綻した。これに端を発して世界規模の金融危機が発生した。
金融危機はそれにとどまらず、生産の収縮、キャッシュフローの縮小、株価の全面安をもたらした。
それは脆弱な新興国にシワ寄せされ、財政危機と通貨危機をもたらした。
先進国は量的緩和を主要な手段として、乗り切りを図った。相次ぐ財政出動で国家基盤は掘り崩され、一方で金余り、金融の投機性は強まった。

要するに、リーマンショックがもたらしたものは、金融システムの脆弱化であり、国際通貨システムの脆弱化であり、国家財政基盤の脆弱化である。
その中で一方では世界中が金でじゃぶじゃぶになり、他方では富の偏在が前代未聞のレベルに広がったといえる。

これらの問題は解決されたのだろうか。これらが解決されない状態で、リーマンショックは終わったと言えるのだろうか。

リーマンショック10年を機に、これらの議論が深まることを期待したい。

「技術の本質」論のない覇権論は虚しい

宮崎さんは「米中の技術覇権争い」という考えを持ち出して、この視点から米中貿易摩擦を裁断しようと図っている。これについてはにわかに承服し難い。

まずは技術の本質論と、技術組織論についてポイントを抑えておきたい。

A) 生産技術の向上という点で、中国の発展は目覚ましいものがある。特に先進技術の場面では世界の先端を行く分野も出ているようだ。ただし、技術というのは総合力なのであって、ルチーン・レベルの高さ、技術の高度な安定性、オーディットの緻密度、人材・資金の組織度、営業事情に即応できる技術能力などの全般にわたって見ていかなければならない。
これは東北大震災の時に日本の技術の奥行きの深さにあらためて感じ入った記憶と重なっている。
こういう総合的な視点から見て、中国の技術水準は米国と覇権を争うレベルに達しているのか。私にはそうは思えない。

B) 軍事技術は民生技術とは別の次元で語られなければならない
原爆、水爆、大陸間弾道弾とソ連は米国に拮抗できるだけの軍事技術を担ってきた。中国も人工衛星を飛ばし有人宇宙飛行を可能にするまでに技術を高めた。北朝鮮は国民を飢餓状態に置きながら、ひたすら軍事技術に磨きをかけ、ついに核兵器とICBMを保有するまでに至った。
的を絞りコストを無視すれば、そういうことは可能なのである。

C) それにもかかわらず、往々にして軍事技術と民生技術とは混同される。
というより意識的に混同させられる。それは多くの場合、政治的に演出させられた「〇〇脅威論」である。そして皮肉なことに、この手の脅威論をおる連中こそがもっとも危険な「脅威」であることが多いのである。
技術の本質を人類の知的財産と考えるなら、それは確かに軍事と非軍事を問わず同じだ。
しかし政治・経済システムの中での“テクノロジー”という概念は組織であり、システムなのだということを踏まえなければならない。
それでなければ、そもそも技術に覇権がつきまとうことの説明ができないではないか。

ということを踏まえた上で、宮崎さんの議論に戻る。

宮崎さんの論点は3つある。
① 「中国の技術覇権を抑え込む」ことでは共和党・民主党を問わず米国内にコンセンサスがある。米国の政財界はこの点では一致して動くだろう。
② 国防総省が活発化し、中国脅威論を発信している。「このままでは米国の技術で開発された中国製兵器が米国に向けられる」というのが彼らの言い分である
③ 中国の二つの企業が世界の特許出願件数で1,2位になっている。個別企業レベルではすでに米国は中国に追い抜かれている。
宮崎さんはこれらの点をもって、「米中の技術覇権争い」の根拠としている。率直に言って、これは経済学者らしからぬ相当あらっぽい論理である。

ただこの記事は連載で、次の日にもう一つ記事が載るので、それをみてから判断したい。


赤旗経済面トップに、「米中貿易摩擦」と題する2日連続の囲み記事が掲載された。
語り手は宮崎礼二さん、聞き手は杉本記者である。
とりあえずお手軽に知識を吸収する目的で着手する。
1回目の見出しは「技術覇権争いが激化」というもので、経済摩擦の原因が技術開発と知財権にあることを示唆している。

貿易摩擦の事実経過
最初にこれまでの事実経過が提示されている。
今回の貿易摩擦激化は、トランプ政権が中国製品に追加関税を課したことに起因する。
追加関税の主たる理由は知財権侵害である。貿易収支の不均衡は表向きの理由にはなっていない。
これまで第1、第2弾が発動され、今週中に第3弾が発動される予定だ。関税額は第1、第2がそれぞれ500億ドルであったのに対し、今回は一気に2,000億ドルまでかさ上げされた。

報復競争の行方
中国は報復関税で反応しており、今回も報復するものとみられる。
しかし中国の対米輸出額は対米輸入額を大きく上回っているので、報復合戦は分がない。先に弾切れになる。
今回、中国は米国の2000億ドル追加関税に対し、600億ドルの報復措置しか取れない。
こうやって米国は、関税では対抗できないところに中国を追い込もうとしている。

いかが本文となる。全体として4つのQ&Aから構成されている。こちらで通し番号をつけておく。

1.トランプ政権の狙い…中間選挙対策
トランプ政権の狙いは2つある。一つは中間選挙対策である。もう一つは中国の先端技術の押さえ込みである。ここでは中間選挙対策に話を絞る。
トランプのもっとも期待する支持基盤はラストベルト(錆びた地帯)やアパラチア地方の工業地帯である。ここでは企業が消滅し工場が海外移転している。そのために労働者は没落し貧困にあえいでいる。
トランプは地域に苦境をもたらせたのが対米黒字国だとし、これらを非難することで支持を集めてきた。大統領選挙のときはメキシコが標的だったが、今回は中国が標的となった。

2.中国をやっつけても他の国に移転するだけ
中国が得意な輸出産業は、低賃金を武器とする労働集約型の分野である。追加関税の品目も服飾品や家具などの消費財に集中している。この分野の生産を、対中関税で米国に移すというのは非現実的な考えである。
現実にはすでにこの分野の生産拠点は中国を離れつつある。アパレル産業などでは中国からその他のアジア諸国への移転の動きが進んでいる。例えばカンボジアやバングラデシュは中国よりはるかに低賃金である。
中国をやっつけるトランプのやり方は、この流れを加速するだけである。それは決して米国に生産ももたらさないし、雇用ももたらさないだろう。

3.パリ協定から離脱する時代錯誤
トランプ政権は温室効果ガスの削減に反対しパリ協定から離脱した。アパラチア地方の人々は大喜びしているという。石炭火力発電が復活すれば、石炭を産出するアパラチアが潤うだろうと期待するからだ。
しかし石炭火発は本当に復活するだろうか。産業界はLNGから石炭に再シフトするだろうか。多分そのようなことは起きないだろう。そこには原発と同じように、環境問題だけではなく、経済合理性というもう一つの深刻な問題が横たわっているからだ。

4.中国の先端技術の押さえ込み
ここまではわかりやすい。しかしもう一つの狙いの方はちょっとややこしい。
杉本記者が宮崎さんに提起した質問は、「米中の技術覇権争いが浮上している」という、じゃっかん前のめりの判断が前提となっているが、はたしてそこまで事態は進行しているのだろうか。
そこまで言ってしまうのは米国側の「中国脅威論」宣伝に乗せられ過ぎではないか。
私には、まずはもう少し冷静な事実認識が必要である。

そのために、記事の追いかけを少し外れて、論点を整理しておこうと思う。(以下次項)

リーマン・ショック後の動き 金融政策を中心に
9.19 増補しました。ネタは主として「世界的金融危機の構図」(井村喜代子)です。2009年6月までの事項しかないので、さほど内容的には増補になっていません。

2008年

08年9月
9月07日 米政府、政府系金融機関の連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を政府の管理下に。
9.15 米投資銀行リーマン・ブラザーズが倒産。米国史上最大の倒産となる。
9.15 米投資銀行メリルリンチをバンク・オブ・アメリカが買収。
9.16 世界最大の米保険会社AIGが経営破綻、政府が管理下に。AIGは大量のCDS(倒産保険)を扱っており、破綻すればリーマンとは比べものにならない位の大混乱が起きるところだった。
9.16 FRB. ECB、BoEが緊急資金供給。
9.18 米欧日6中央銀行が史上初「ドル供給制度」で緊急ドル供給。
9.20 米政府7000億ドルの「緊急経済安定化法案」提案。
9.21 FRBが投資銀行ゴーノレドマン・サックス、モルガン・スタンレーの銀行持株会社への移行承認。米投資銀行が消滅。
9.25 S&L最大手ワシントン・ミューチュアルが破綻。
9月29日 米下院、共和党の反対で金融安定化法案を否決。予想外の結果に反応して株式市場が大暴落。世界同時株安始まる。
9.30 米欧日10中央銀行が「ドル供給制度」枠を倍増。FRBとのスワップ協定によりドル資金を供給。

08年10月
10月03日 米議会、共和党の賛成を得て「金融安定化法」を修正可決。不良債権買取のため最大7000億ドルの公的資金を投入することが決まる。
10.03 米ウェルズ・ファーゴ銀行がワコビア銀行を買収。
10.06 世界的株暴落の再開 ダウは1万ドル割れ。為替ではドル売りで円が5円高騰。
10.07 FRBがコマーシャルペーパーの買取開始。
10.08 欧米主要6カ国中銀が初の協調利下げを実施する。金利2→1.5‰に低下。
10.10 G7が金融危機対策「行動計画」発表。米欧が協調して公的資金を供給。
10.14 米、安定化法に基づく不良資産救済プログラム(TARP)を発動。大手9銀行への公的資金供給を発表(不良債権買取り用から転用)
10.24 景気悪化懸念で株の世界同時下落の再燃。ダウ8175ドル。日経平均は8000円割れ。
10.29 FRB、FF金利を1.0%に。
10.31 日銀公定歩合0.3%に。
10.31 ニューヨーク株史上最大下げ幅。
10月  欧米当局が金融機関への資本注入,銀行間取引の保証,預金保護の拡大等を実施。

08年11月
11.05 IMFが対ウクライナ融資を承認。その後、対ハンガリー融資等の承認が続く。
11月07日 米大統領選でバラク・オバマ勝利
11.14 G20による「金融市場および世界経済に関する緊急首脳会議」を開催。「金融サミット」と呼ばれる。
11.23 シテイ・グループが経営危機を迎える。政府が資本注入、保有資産への政府保証など支援策を発表。
11.25 FRBが8000億ドルの追加金融対策を発表。CPと資産担保CPの直接買取り、資産担保証券(ABS)支援、政府系住宅金融機関(GSE) 2社発行の住宅ローン担保証券および債券買取りなどをふくむ大規模なもの。
11.26 EUは、2000億ユーロの経済対策を発表。各国の財政赤字による財政出動を容認する。

08年12月
12.04 米欧日諸国、金融危機と実体経済悪化が深刻化。EU諸国、10月に続き再度、大幅な金利引下げを実施する。
12.16 FRB、FF金利を0.00~0.25%まで切り下げ。事実上のゼロ金利に移行。


12.19 日銀も公定歩合を0.1%に引き下げる。
12.19 米政府、GMとクライスラーへの支援策を発表。
12月 FRB、量的緩和第1弾(QE1)の導入を決定。実施は09年3月より。

2009年
1月 米国オバマ新政権発足。
1月 ビットコインを使った世界発の商取引。
2.10 米財務省が「金融安定化策」発表。
2.17 米議会で「米国再生・再投資法」(ARRA)が成立する。支援総額は過去最大の7870億ドルに達する。
2.18 米政府、住宅保有者に対する支援などを柱とする住宅対策を発表。
3月10日、日経平均がバブル後最安値を更新(7054円)
3.18 FRB、長期国債3000億ドルの「買い切り」を発表。さらにGSE 2社が発行する住宅ローン担保証券および債券の買取り枠を拡大するなどの対策を発表。
3.20 米財政赤字は09年会計年度で過去最大の1兆8000億ドルに達する。
3.23 米政府、不良資産買取りのための官民投資プログラムを発表。
4.30 クライスラー、GMが破たん。クライスラーが破産法第11条に基づく破産申請をおこなう。
5月 米国で、銀行のストレステスト(健全性審査)の結果が発表される。
6.01 GMも破産法の適用申請。米政府が国有化措置に踏み切る。
6月 FRB、バランスシート上の総資産が約2兆1000億ドルに達する。これは07年7月の2.3倍に相当する。
6月 BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が初の首脳会議を開催。
8.12 FRB、長期国債の買い切り期間を1ヵ月延長。
8月 衆院選で民主党圧勝。鳩山内閣が発足。
12月 ギリシャで政権交代に伴い、前政権が隠蔽していた過剰債務と財政悪化が判明。ギリシャ国債が格下げ。

2010年
3月 欧州債務危機(ソブリン危機)が勃発。EUとIMFがギリシャに金融支援。
5月 ギリシャの債務危機が南欧諸国に拡大。ユーロの為替レートが暴落する(ユーロ危機)。欧州中銀はユーロ圏諸国の国債買入れに回る。
7月 「金融規制改革法」(ドッド・フランク法)が成立。商業銀行の業務内容を制限する条項(ボルカー・ルール)を盛り込む。
9月 バーゼル銀行監督委員会が「バーゼル3」を公表。主要国の金融監督当局が金融規制の強化で合意。
11月 FRB,量的緩和第2弾(QE2)を導入。
11月 EUとIMF、アイルランドに金融支援を開始。

2011年
2月 中国のGDPが日本を上回って世界第2位となる。
3月 東日本大震災が発生。福島原発事故。
3月 G7が円高阻止で協調介入を実施
4月 欧州中銀,2回にわたり金利引き上げ。1→1.5%に
5月 ギリシャ、アイルランドに続きポルトガルへの金融支援を開始。
9月 「ウォール街を占拠せよ」運動が発生。格差問題に焦点が当てられる。トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』がビッグヒット。
10月 円相場,対ドルで史上最高値(75円32銭)
12月 欧州中銀が利下げし年初の1%に戻す。域内の民間銀行に長期流動性供給オペ(LTRO)を実施。

2012年
1月 FRB、年2%のインフレ目標を導入
3月 ギリシャ、事実上の債務不履行
6月 スペインが金融支援を申請。EUとの間で銀行部門に限定して合意。
6月 LIBORの不正操作問題が発覚。
7月 ドラギECB総裁、「ユーロ防衛のためなら何でもやる」と発言。
8月  3党合意に基づく「消費税増税法」が成立。
9月 ECBが域内重債務国に対し、短期国債の「無制限買い入れプログラム」(OMT)を発表。
9月 FRB、量的緩和第3弾(QE3)を導入する。
12月 総選挙で民主党が惨敗。安倍内閣が成立。アベノミクスが開始される。

2013年
1月 政府・日銀の共同声明。前年比2%のインフレ目標を設定。
3月 キプロスで預金封鎖が勃発。EUとIMFは預金者に損失負担を強いる異例の措置。
3月 黒田日銀総裁が就任。インフレ率2%を目標とし、大規模な金融緩和策を発表。
4月 異次元緩和(量的・質的金融緩和)スタート。長期国債の大量購入に動く。
5月 円が4年ぶりに100円を割り込む。
6月 ユーロ圏、大量資本注入で合意。欧州中銀は0.25%まで利下げ。
8月 財務省、国の借金か1000兆円を超えたと発表し、消費税の早期実施を促す。
12月 円安を引き金に、訪日外国人が年間1000万人を突破。インバウンドに注目が集まる。
2013年 サマーズ元米国財務長官、「長期停滞論」を提唱。世界的な需要不足と貯蓄余剰によって、潜在成長率が低下したと説明。

2014年
1月 新興国で通貨危機が表面化
シャドーバンキングの破綻懸念が高まった中国や、政権崩壊のタイ、経済不安のアルゼンチンやトルコなど、新興国の通貨が暴落。
2月 米FRB議長が交代(バーナンキからイエレンへ)。景気回復に伴い、量的緩和を縮小の方向へ
4月 日本で消費税を増税(5%から8%へ)
6月 欧州中銀、預金ファシリティ金利を△0.1%へ切り下げ。主要国では初のマイナス金利となる。
10月 FRBが量的緩和政策を終了しテーパリングへ移行。リーマンショック以降続いた金融緩和が終わる
10月 日銀、追加金融緩和を実施。国債購入を30兆円増加。
11月 ロシアルーブルが変動相場制へ移行。経済の低迷でルーブルを支えきれなくなり、通貨バスケット制を放棄。

2015年
1月 ECBが量的緩和政策を開始。月額600億ユーロ相当の国債の買い入れを行っていくと宣言。
1月 ギリシャ総選挙。緊縮財政に反対する急進左派連合(SYRIZA)が勝利する。
7月 ギリシャで緊縮財政の受け入れの是非を問う国民投票。反対派の勝利でEU離脱懸念が高まる
7月 東芝の不適切決算処理が発覚。経営危機が表面化する。
8月 中国ショック。当局は景気低迷や上海株式市場の暴落を受けて元安誘導へ転換。
12月 FRB、ゼロ金利政策を解除し短期金利を利上げ。リーマンショック以降、初めての利上げ。
12月 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が設立される。

2016年

1月 日銀、量的・質的金融緩和を継続。インフレ目標の達成を目指しマイナス金利を導入。
2月 原油安,中国のバブル崩壊,米国の景気減速懸念などから世界同時株安。
3月 中国と欧州中銀が追加緩和。
6月 消費税の10%への引上げを再延期
7月 英国でEU離脱(ブレグジット)の国民投票が可決。英ポンドは大暴落。
7月 日銀が「総括的検証」を行う。
11月 米大統領選でドナルド・トランプが勝利。
12月 FRBが第1回目の利上げ。その後3回にわたり小幅引き上げ。

2017年 米国の成長率は名目で4.1%に回復。
10月 FRBが資産圧縮を開始。
11月 トランプがアメリカ大統領に当選。「アメリカ・ファースト」を掲げる。
12月 ビットコイン、1BTC=約2万ドルとなる。

2018年 
1月 EUが「第2次金融商品市場指令」(MiFID2)を導入。市場の透明性向上を目指し金融・資本市場に規制。
4月 日銀、目標に2%物価目標の達成時期を記載せず。
7月 日銀「強力な金融緩和継続のための枠組み」を導入。
7月 トランプ政府、中国からの鉄鋼やアルミニウムへの関税を強化。
12月 欧州中央銀行、量的緩和政策の終了

2019年 
3月 みずほFG、6800億円の当期損失を計上。


ポピュリズムという言い方はやめよう

一部ジャーナリズムで盛んに使い始めたことから、今ではすっかりポピュリズムという言い方が浸透している。

それは社会学的用語としては正しいかも知れない。(それが社会学の弱点であり限界である)

しかし同じ大衆・庶民を基盤とし、その自発性に依拠し、彼らが抱える不満や怒りを代弁している点は似ているが、似ているのはあくまでそこまでである。

政治的スタンスもその最終目標もまったく逆の政治集団を、社会的同質性を根拠にひとくるめにするのは、政治的対決点がどこにあるのかをあいまいにするためのレトリックでしかない。

さらに悪いことはそれが上から目線であり、彼らの要求に対し冷淡で無関心であることの象徴となっている表現だからである。おそらく彼らの目は我々をもポピュリストとして眺めているだろう。

例えば、共産党と公明党・創価学会が底辺層の声を代表すると主張し支持者を奪い合ってきた状況が日本にある。
それをもって「共産党も公明党も貧困層を土台にしたポピュリスト政党だ」と、一絡げにすることは、まともな政治学者にとって自殺行為であると思われる。

ナチスもファシストもみな「社会主義者」を自称した。現在の言葉の使用法からすれば彼らこそ「ポピュリスト」の名にふさわしい。

政治学はさまざまな政治集団の性格を、その目的から規定し分類し評価しなければならない。それが政治学の使命である。

そしていま国民大衆の運動の進歩性を規定するのは、民主主義、平和主義、人権第一主義、立憲主義の4基準である。一言で言えば「リベラル民主派」である。

この4基準のいずれかに反する政治勢力はたとえ民衆に支えられた組織であろうと、反政府的組織であろうと支持することはできない。
社会学的に見て共感する余地があったとしても、政治学的には一線を画さなければならないし、場合によっては対抗関係に立たなければならないのである。

そう得心したとき、ポピュリズムという言葉がいかに民主派を見下して虚しく響くことか…

結局、リーマンショックのあとの10年間というのは、通貨対策と債務対策の10年であった。
それは目下のところ、成功したとは言えない。通貨は落ち着き危機は去ったように見えるが、見えないところでは、そのすべてが債務となって積み上がっているのである。

1.切り札は「量的緩和」だった
日米欧の金融政策 - JA共済総合研究所
古金さんという方のレポートだが、リーマン後の10年というタイムスパンを念頭に置いて分析されているところが参考になる。
2つの図で時間軸がずれていることに注意。
金融政策推移
いづれのエリアに置いても、量的緩和が最後の切り札になっていることがわかる。
3つのエリアを対照すると、ユーロ圏の特異性が目につく。
ECBの政策スタンスは今なお強力な金融緩和になっている。マネタリーベースの伸び率は高水準で、一方、実質政策金利は日米に比べ低くなっている。
古金さんはやりすぎだというが、10年間のマネタリベースで見れば、むしろ証文の出し遅れという感がある。
ユーロ危機のときにECBのPIGGS対応は遅く、助けること自体を躊躇していた。その結果、対応が遅れ、その分過剰な対応を迫られたのではないか。ドイツでの反対世論が強かったことも関係しているが、寄り合い所帯の弱点が露呈したのではないだろうか。
しかし助けると決めてからの判断は果敢である。守るべきものとしてのEU、ユーロ圏というコンセンサスがそれなりに存在しているものと思う。
日本の対応は当初は無策で、相対的金利高も放置されていた。13年から金利低下と量的緩和が同時に施行され、危機を脱出した形になっている。これがアベノミクスだ。

2.そして債務は残った
以下の図はいずれも東洋経済オンラインから拝借したものである。
債務推移
08年9月を境に世界は変わったと言える。それまでは債務は増えていたが、債務の対GDP比は不変であった。つまり、債務の増加は生産規模の増大の枠内で増加していたのである。
ところがその後の10年はGDPの増加なしに債務だけが増えているのである。
これは富の絶対的増加なしに富の偏在だけが進んだということを意味する。債務の増加は二次的なものだということがわかる。
政府債務の推移
政府債務の動向を見ると3つのことが言える。
①先進国では金融危機への対処のため一気に1.5倍ほどの財政出動をしたということ。
②しかし13年以降はほぼ蛇口を締めたこと。減らすところまでは行っていないが…
③新興国では「無い袖は触れない」から民衆に直接被害をかぶせたこと。
民間債務の推移

というブルームバーグの記事が面白い。
これは Four Big Risks to Watch 10 Years After Lehman: Sony Kapoor 
という文章の抄出・和訳らしい。


リーマン・ショック前夜に比べて、世界経済はもっと危険な世界になっているのか、4つのエリアで検証してみた。

1.過去最高の債務水準と質の劣化
世界の債務は過去最高に積み上がっている。質の劣化もある。
ソブリン・民間合わせた債務総額は237兆ドル(約2京6200兆円)となっている。これはリーマン前を70兆ドル上回る。
米国の公的債務は2008年にGDP比65%だったが、今では105%を超える。ユーロ圏の対GDP債務比率も上昇している。
AAA格付けはソブリン11カ国、米企業2社のみで、信用の質は低下を続けている。
各国の財政には景気を下支えする財政投入の余地がほとんどなくなっている。
今後予想される金融政策の正常化が債務コストを押し上げる可能性もある。

2.狭まる金融政策の対応余地
主要各国で量的緩和政策が取られた。それは中央銀行のバランスシートを前代未聞の水準に膨張させた。
政策金利はいまだ過去最低に近い。
ショック再来の場合、金融政策で積極的に対応する余地は限られている。この間取られた“大胆な金融政策”は、もう繰り返すことはできない。
それどころか、金融政策が波乱の原因になる可能性さえある。

3.政治的な混乱
2008年には強固だった政治的安定は、ほとんどの主要国で著しい混乱に陥った。
失われた10年に実質賃金は伸びず、経済面などで不安が強まった。
これまで脇役だった弱小政党が議会で存在感を増し、極右と極左の両方でポピュリズムが台頭した。

4.弱まる国際秩序と信頼の欠如
この10年間に国際的な秩序が弱まり、信頼が失われつつある。
G7やG20といった仕組みが崩れつつある。トランプ政権は、危機対応の枠組みを積極的に破壊しつつある。
常識ある政治センターの存在感が薄れている。とくにEUの求心力低下は深刻だ。


ということで、きれいにまとめられている。
実体経済への影響、失業率の高止まり、途上国経済の失速などは視野の外に置くのか、ポストリーマンの主役となったユーロ危機と円高不況はどう区分けされていくのか、などさらに検討すべき問題がある。
それと量的緩和が当初からとられていたかのような記述には、若干疑問が残る。オーソドックスな対策が成果をあげず、デレバレッジに歯止めがかからない状況の中で、否応なくQEに移行していったように見えるが…
何れにしてもリーマンショックを機に経済漂流の時代が始まり、それは10年を経た現在も着陸することなく続いている。
いわばリーマンショックは漂流元年となっていると言えるだろう。


スティグリッツがビットコインは匿名性が高いのでだめだと言ったそうだ。そうしたらビットコインの相場が見る間に下がってえらいことになっているらしい。
所詮縁なき世界ではあるが、経済学に倫理学を持ち込むのにもなんとなく違和感を感じる。
勉強もしないで言うのもなんだが、紙幣というのはもともと金の代用みたいなものだが、金はまったく匿名の商品であり、「純度X重さ」はどこの国が発行しようと同じはずだ。
汗水流して獲得したお金であろうと、麻薬を売って稼いだ金であろうと金の色に違いはない、まったくユニバーサルなものだ。
ところが現代における貨幣は不換で、その国の信用いかんにより決まる。さらにその信用は為替相場という形で日夜瀬踏みされる。金に比べればフィクションではあるが、逆に色々な規制に熟されて不自由になっている。
そして米ドルが兌換を停止して、世界のほとんどの国が変動相場制になってからは、むしろ為替相場が貨幣の形と働きを規定するようになっている。
であればいっそのこと、国家信用などというものを一切捨てて、相場にすべてを委ねようということになっても不思議はない。
その延長線上にあるのがビットコインではないか。これにより貨幣は匿名性と普遍性を“回復”することになる。
ただしその場合、貨幣の持つ2つの意味が失われる。一つは一定の機関による信用の裏打ちである。もう一つは金が労働により生み出された商品であるのに対し、生産物としての独自性の喪失である。
ただし後者はすでに失われているのだから、いまさら云々すべきものではない。
前者については少し吟味が必要だろうが、一番の問題は信用の裏打ちがなくても持続可能な流通手段となるだろうか。結局はドルという決済手段とどこかでリンクせざるを得ないのではないだろうか。
それは賭場という場所で通用するコインでしかないのだろうと思うが。

現在、問題となっているのはむしろ、取引のたびに常にドル決済を迫られる現在のシステムにあるのではないだろうか。
とくにトランプのような狂人がアメリカの大統領になると、世界の通商・貿易・投資がアメリカの恣意に翻弄されることになる。
その典型がベネズエラで、なんの罪もないのに経済制裁というペナルティーを科され、ドル決済を禁止された。「ドルを持ってこられても、ベネズエラの方とは取引できません。あしからず」という状況が現出されているのだ。同じようなやり方で1年前にアルゼンチンが攻撃され、おかげで政権が転覆されてしまった。
世界で一番米ドルが信頼できるから、みんなが使っているのに、「あんたは気に入らないから使わせません」ということが平気で行われるようになっては困るのだ。
もちろん国際通貨とビットコインとは目的も性格も違う。
しかしビットコインにはドル支配体制に対する風穴という側面もあるのではないか、こんなことも念頭に置きながら、もう少し勉強してみたい。

2018年1月14-15日、カイロでAAPSOの記念集会が開かれた。

参加者の構成
中東からはバーレーン、イラク、レバノン、モロッコ、パキスタン、パレスチナ、チュニジアの各国代表が参加した。アジアからはインド、ネパール、スリランカが参加しベトナムAALA連帯員会のグエン・ティビン会長がメッセージを寄せた。ヨーロッパからはギリシャとキプロスにとどまった。
ほとんどの国が1,2人の代表であるのに対し、主催国エジプトは書記局含め30人を送り込んだ。ロシアからも4人の代表が送り込まれているのは、会議の性格を予感させるものであった。
中国は代表は送らなかったが駐エジプト中国大使が挨拶を行った。文革時代の経緯を知る者にとっては、それだけでも注目されるものであろうが、内容もかなり踏み込んだものだった(田中)らしい。

議長の開会挨拶
60周年の意義を語るべき主催者挨拶だが、そのような骨太な話はなかったようだ。
一応植民地主義の克服、経済の持続可能な発展、社会正義の実現をあげ、一方で世界経済の危機とともに新たな課題が登場したとする。具体的にはテロと暴力の拡大、地域紛争、国家の解体などが列挙されている。
今後取り組むべきものとして10項目が挙げられたが、そのなかで最後の二項目。⑨組織が消滅した国での委員会の再建と⑩非同盟運動への積極的な参加が組織課題として提起されている。結構泣けるものがある。

中国大使の挨拶
カイロ駐在中国大使の挨拶はバンドン会議以来の中国とAA諸国との連帯の歴史に始まり、中国共産党19回党大会で打ち出されたAA諸国との関係強化の方針で結ぶなど、むしろ主催者挨拶より総括的だったようだ。
なお中国のAA諸国重視の政策は一貫したものであるが、湖錦湯時代には一時弱まった。また南沙問題を巡ってはASEANに対し高圧的な態度で臨むなど方針の揺らぎを感じさせたが、19大会で何らかの修復がなされているのかもしれない。少し勉強してみたい。

書記長の基調報告
「討論資料」が事前配布されていたようだが、これについては省略。
60年間を3つの時期に分けて総括している。
第一は創設以来の反帝、反植民地主義、AA独立運動に中心的役割を果たした時期である。
第二はソ連崩壊後、米国の一国覇権主義の下での闘いの時期とされる。
第三は中国やロシア、BRICSの台頭により新しい情勢が生まれつつある現在ということになる。
そのうえで書記長は現在の課題として、第一にトランプ政権の人種差別的な覇権主義とのたたかいをあげた。国際テロの拡大とエルサレム問題、北朝鮮危機はトランプ覇権主義の象徴とされた。そして無責任なトランプ政権の言動で不測の事態が起こる危険があると警告した。
第二の課題は富の集中と格差の拡大にいかに立ち向かうかということで、世界の人民のたたかいが求められるとした。

集会での討論における注目点
アメリカのベネズエラ干渉について議論になった。討論の議長は、ラテンアメリカが外国干渉に苦しむ事態は、AA諸国の現状と重なるとのべ、連帯を強化しようとのべた。
パレスチナに関しては力のこもった議論が展開されていた。とくにAAPSOがモロッコにパレスチナ人民支援委員会を結成したことが報告され、注目を集めた。

田中さんの発言
1.北朝鮮による挑発と米国による核脅迫の応酬は危険をもたらしている。我々は軍事解決に絶対反対で、対話による解決を求める。
2.憲法9条を守る戦いは北東アジアの平和にとっても重要だと考えている。
3.沖縄における反基地闘争は、いまなお重要な闘争である。
4.平和の課題での提起だが、核兵器禁止条約の批准運動に各国で力を入れるべきだと思う。
5.パレスチナ問題については、なかなか国民の理解が得られず苦戦している。
みたいなことが語られた。(すみません。うまくまとめられません)

AAPSOの最近の動向について

読んだきりにしてあったのですがもったいないので要約して掲載します。

AAPSOの説明をしようと思ったらえらく長くなってしまったので、独立した記事にして掲載します。

AAPSOというのは、アジア・アフリカ人民連帯機構の頭文字をとったもので、非同盟運動を非政府レベルで支える組織です。カイロに本部と書記局が常設されています。
AAPSOはその名のごとくアジア・アフリカ諸国を対象としたもので、ラテンアメリカの組織は加入していません。
別にラテンアメリカを排除したのではなく、第二次大戦後にアジアアフリカ諸国が独立を果たした際にその独立をどう守っていくのかを考えたからです。
ラテンアメリカの諸国はすでに19世紀のはじめにスペインやポルトガルからの独立を果たしており、形式的には民族自決権は問題になりませんでした。
1960年代の後半から、新植民地主義の攻撃が強まり、形式的には独立していても、事実上の植民地に逆戻りする例が多く見られるようになりました。
それはアジア・アフリカの新興独立国ばかりではなく、「アメリカの裏庭」となったラテンアメリカの諸国でも同様でした。
そのためにキューバが音頭を取る形でアジア・アフリカ・ラテンアメリカ人民連帯機構が結成されました。スペイン語の頭文字をとって、OSPAAALと呼ばれます。物品販売のコーヒーを「オスパール」というのはここから来ています。
日本のアジア・アフリカ連帯委員会は、新興国が社会体制の違いを乗り越えて相互に連帯することを謳ったバンドン会議の後に、アジア・アフリカの新興国の運動と連帯するということで結成されました。
日本は新興独立国でもなく、非同盟の国でもないので非同盟運動の参加国ではありませんが、日本のアジア・アフリカ連帯委員会はAAPSOの正式オブザーバーとして、当初より関わっています。
また1966年にOSPAAALが設立されると、連帯委員会はハバナの創立大会に二人の代表を送っています。
つまり日本AALA連帯委員会は、2つの組織を通じて非同盟諸国の運動とつながっていることになります。
ただし、OSPAAALは最近は開店休業状態となっており、日本の連帯委員会は個別に関係国の外交機関や非政府組織と連絡をとって連帯を図っているのが実情です。AAPSOについても事情は似たようなものなのですが、今年の1月に「AAPSO創立60周年記年集会」が開かれ、新しい動きがでてきました。
その集会に参加した田中靖宏さんが報告してくれた文章を、このあと要約していきます。


経済の仕組みとその変化をしっかりと整理している文章がなかなか見当たらない。

というより私がこのところ経済の勉強をサボっているのが一番主要な問題なのだが。

私の勉強がストップしたのは、欧州金融危機の後半のあたり。

スティグリッツらが日本の金融緩和策を支持したあたりから、筋道が見えなくなっている。

そこまでのレベルで一応議論を整理しておくと、

リーマンショックから欧州金融危機への移行というのは、基本的には資金の流動性の低下によるものであった。
1.デレバレッジ(逆テコ)が金融弱者を痛めつけた

これは直接の引き金としてはデレバレッジ(逆テコ)による極度の信用収縮であった。商品経済とは直接の関係がない金融不況だった。

2000年代前半の好況局面を通じて信用が極端に拡大し、通貨供給量を大きく上回る信用が形成された。それは見かけ上膨らまされた金融商品、簿価として計上された含み資産などである。

これら通貨の裏付けのない資金はリーマンの破産後、一気に店じまいをかけたが、通貨への還元力の弱い信用、逃げ足の遅い資金ほど大きな犠牲を受けることになった。

その通貨、決済通貨というのはドルである。とりあえずの金融危機が収束したあと、ドルは各国中央銀行に相対的に集中した。

ドルは札束で持っているのが一番強い。しかしそうはいっても、ハダカでさらすわけにも行かないから、どこかの金庫におさまっていなくてはならない。
2.預金の引き出し権が物を言う

そうすると手持ちの資金量は名目の預金量というよりは、その預金の引き出し権の多寡ということになる。怪しげな銀行の当座預金に100万ドル持っていたとしても、その100万ドルが引き出せないのなら意味がない。

では一番確実な銀行(預金先)はどこか、それは米連邦銀行を置いてほかはない。なぜなら彼らは輪転機を持っているからである。次に確実な銀行はどこか。それは日銀である。米連銀内に大量のドル預金を持っているからである。だから商品経済ではなにも円高になる理由などないのに円高になってしまったのである。

話が脇にそれたが、欧州金融危機は各国財務当局や、中銀の体力コンテストになった。そして弱者が敗者となり、勝者も著しく体力を消耗したのである。
3.量的緩和が決め手

この状況を打開するには、とにかく米連銀の輪転機を回すしかない。失われた信用の何割がドルの裏付けを得て復活すれば、経済がふたたび回り始めるのか、どこに資金を注入すればより効率的な回復が望めるのか、このへんはよく分からない。

とにかくバーナンキはグリーンバックスを刷りまくった。8年の任期のうち6年間、量的緩和QE1~3を続けたのである。

結果的に言えば、これは「流動性の罠」を抜け出すのに有効な方法だった。変な言い方だが、異端であり排斥されてきた方法であるにも関わらず成功したのである。

それは方法的にはサプライサイドの調整策であるが、需要創出という側面からはケインジアン的性格の濃いものである。
4.商品市場とは全く別の論理

私の印象としては、これは商品市場とは全く別の論理で動く、もう一つの市場経済世界である。

どうもこれを一緒にして語ってきたから話が混乱しているのではないだろうか。

我々がこれまで語ってきた市場の需要・供給曲線というのは商品世界のバランスだった。しかし今我々が目の前にしたのは商品を中心として動く世界ではなく、貨幣を中心として形成される需要・供給曲線の世界なのではないか。

このあたりはマルクスが資本論第3部で端緒的に触れたところであるが、彼の時代の信用システムはまだ十分に開花されたものではなかったから、理論も展開されたものではない。

むしろ究極的には商品と貨幣により形成される市場経済に規定されるものだという側面が強調された。

しかし信用制度が発達してくれば貨幣と信用により形成される市場が新たに出来上がり、その経済規模が実体経済の十倍以上に拡大すれば、信用市場を管理するためのノウハウは別個のものとして体系化されなければならないだろう。
5.国際決済通貨(ドル)市場の論理
それに加えてグローバル経済では、信用市場の主役は貨幣一般ではなく「国際決済通貨とその引き出し権」を真の貨幣=供給された決済力として考えていくべきであろう。といっても、どこが違うのか自分には何の答えもないが。
今はそういう時期を迎えているのではないだろうか。



人との待ち合わせのちょっとした隙に本屋に入り、ふらっと買ってしまった本がある。

題名に惹かれての衝動買い。

荻原博子「投資なんかおやめなさい」というものだ。

別に私は株なんかやらないし、どうでも良いみたいなものだが、ふんどしの文句が気になる「銀行・証券・生保 激怒必至」と書いてある。

さほど安い本ではないが、喫茶店でパラパラとめくるには格好のネタかもしれない。

まず「はじめに」から

過激な言葉が並ぶが、ようするに「投資ブーム」が作られたもので、仕掛け人が銀行・証券・生保だということ。こういう儲け話に乗ると大損するからやめときなさい。

ということで、これだけならむかしからのお話。

現代風の味付けはどこにあるかというと、

アベノミクス→金融緩和→金融機関の収益悪化→金融機関の株屋化

ということで、これもさほどの新味はない。

結局、今の「好景気」が金融バブルでありいずれ弾ける。荻原さんは東京オリンピック後にそれが来るだろうと言っている。

その際、「好況局面に入ったにも関わらず、金融緩和を続けているのは日本だけだから、不況になったときに世界のしわ寄せが日本に来るだろう」というのがミソといえばミソ。

それでどうするかというと、荻原さんのご託宣は「タンス預金」だ。

これはどうもいただけない。

年寄りはお金を増やそうとは思っていない。とにかく安全にしたいのだ。ところがいまの世の中安全な方法などというものはないのだ。

まず昔ながらのインフレリスクはある。これだけ金融緩和したのだから、いつ来てもおかしくはない。

もう一つは金融が自由化された以上、為替リスクはいつでもある。

この2つの資産リスクをヘッジしようとすれば、資産を貨幣形態資産と不動産形態資産に分散しなければならない。

もう一つは貨幣資産を邦貨と外貨に分散しなければならない。

この2つのリスク回避は、見た目には投資である。だから投資=資産の形態変化をそのままリスクと考えるのは間違っている。

問題は「儲け気分」をふくらませるかどうかだ。つまリは主観の問題だ。貪らなけければタンス預金よりリスクを回避できる確率は高い。

そういうわけで、20年前なら私は間違いなく荻原さんに全面賛成しただろうが、今は部分賛成にとどまる。

ここまでは結論部分について、その不正確さを指摘したのだが、論立て部分にも相当のあやふやさがある。

とくにインフレとデフレの問題、金融不況と実体経済の不況の問題、通貨問題については混乱状態である。

これらについては、いづれ別に記事を起こして行こうと思う。


いくつかのレビューでも明らかにされているように、ベネズエラの目下の経済的苦境はアメリカの経済封鎖、とりわけ金融封鎖によるものであって、政府の失策とか「社会主義の失敗」によるものではない。
ただ、それだけではなく、石油依存国家で実体経済をどう運営していくかという特殊なノウハウの問題も含んでいる。したがって下記の問題を留意しながら、分析を進めなければならない。
2012年08月12日 エコノミストはベネズエラを評価している より一部引用
何度も強調するのだが、この国の経済運営はオーソドックスな手法ではやっていけない。
この国の実体経済の規模をはるかに上回るすごい勢いでドルが行き来している。
しかもこいつは“オイルダラー”と言って、世の中で最も流動性が最も高く、投機性がもっとも強く、たちの悪い資金だ。いざとなれば瞬きするあいだに目の前から消えてなくなる。
この投機資本と国内経済と実体貿易はどこかで遮断しなければならない。収支は短期の資本収支も合わせて評価しなければならない。サウジのように貧困者を徹底して無視し、反抗者を徹底的に押さえつければ経済は安定する。
しかしチャベスのごとく貧困者の生活水準を引き上げれば、インフレは必至であり、放置すれば経済を破壊する。
さりとて、輸入自由化で物価を安定させようとすれば、たちまち巷には失業者があふれることになる。
こういう中で経済運営をした経験は日本人にはない。だから我々は個々の失敗について四の五の言うのではなく、こうした経験から虚心坦懐に学ぶべきであろう。
私は以前から、連帯運動というのは「学ぶ運動」だと考えている。与える運動ではなく、与えられる運動なのである。

さて、今日から気分を入れ替えて勉強再開しよう。グダグダぐらしにも少々飽きた。
今年はどんな年なのだろうかと、考えてみる。そうだ今年はリーマンから10年なのだ。
たぶん、リーマン・ショックを機に世の中相当変わっていると思う。
一番大きいのは、リーマン・ショックを機に世の中がふるいにかけられ、貧富の差が一段と進行したことだろう。
そしてこの格差がそろそろ究極的な所まで来て、世界中からWin-Winの関係がなくなってしまったことだろう。
世界の経済システムは、1980年のレーガノミクスの出現からネオリベラリズムが席巻し、第二次大戦後の民主的経済システムの崩壊が始まった。それにともなって巨大資本への富の集中が進み、ついに行き着くところまで行き着いた。
次の経済システムへの移行が本格的に求められるようになっている。それを実現するのも実のところ政治システムの変化を通じてしかありえない。
それが経済民主主義ということになるが、その場合、民主主義のあり方が鋭く問われることになってくる。
この間の世界の動きの中で、自由主義と民主主義を二つの柱とする近代政治システムは、二つのチャレンジを受けてきた。一つは権力の側からの「自由」をもとめるネオリベラリズムの動きであり、ひとつは「自由」の基盤の上に立たないポピュリズムの動きである。
これらの動きは、人類史を引き戻そうとする歴史的反動の流れにとって、車の両輪となる危険がある。同時に、これらとの闘いは社会を新たな人類史的段階へと推し進める変革の闘いと直接結びついている。
そういうわけで、今年は以上のような観点から「リーマン後の10年」をあと付け、とりわけ正統リベラリズムの観点から意味づける作業の年にしていきたいと思う。

リーマン・ショック後の10年(主な動き)


経済的出来事

政治的出来事

2008

リーマンショックが発生

オバマが大統領に初当選、変革を唱える。

2009

円高が進行、84円に。

民主党が勝利。鳩山政権が成立する

2010

ギリシャ債務が表面化
アメリカでFATCAが成立(外国口座税務規制)
中国GDPが日本を抜く。

ティーパーティー運動の躍進

2011

東北大震災+原発事故→GDP低下と貿易赤字。円高75円が相殺。

チュニジアから「アラブの春」→シリアで泥沼化
ウォール街占拠運動、2ヶ月にわたる

2012

欧州経済危機がスペイン、イタリアにも波及(PIIGS)、ユーロ95円まで下落

原発稼働ゼロに
英国がスターバックスの租税回避を非難。独・仏も英支援に回る

2013

アベノミクスの実施(異次元緩和)→円安・株高
デトロイト、自動車産業空洞化により財政破綻

習近平が国家主席になり、訪米・会談
米政府機関による盗聴が発覚
中国のPM2.5汚染が日本にも波及

2014

OPEC破綻、バレル100→40ドルへ
アイルランドが「ダブルアイリッシュ」を廃止(20年まで猶予)

消費税が8%となり、ふたたび不況へ

2015

東芝で粉飾決算が発覚
COP21でパリ協定
OECDがFATCAの双方向性を強めたCRSを提示
米財務省、欧州委員会のBEPS対策、とくにアップルへの追徴金課税について非難。
中国が一帯一路やアジアインフラ投資銀行などを打ち出す
日本の貿易収支黒字化

戦争法反対運動+野党共闘
ギリシャ選挙で反緊縮派が勝利。
ポルトガルで社会党を中心とする左派連合が政権に
ヨーロッパで難民問題が顕在化

2016

パナマ文書が暴露される。
ドイツ銀行が住宅ローンで経営危機に

英国民投票でEU離脱を決定
トランプの大統領当選+ポピュリズムの台頭

2017

トランプ、TPPとパリ協定離脱を決定

核兵器禁止条約が採択される。
サンダース・コービン・メランション現象



2000年に書いた金融グローバリゼーションの行方の一部です。北海道AALAの2000年版情勢報告から抜粋しています。
金融危機のもとでは、変動相場制絶対論でヘッジファンドのなすがままにされるのではなく、条件的に固定相場制の採用もありうるという経験です。

マハティールの「勝利」

 おおかたの東アジア諸国がIMFの指導に従うなかで,マレーシアはこれとは逆の方向に出ました.

 それまでマレーシアを支配してきたマハティール首相は,腹心のアンワルに(私のパソコンは「案悪」という素晴らしい宛て字を用意した)経済運営を委ねていました.マレーシアを金融危機が襲ったとき、アンワルはIMFの政策を導入して危機の乗り切りを計ろうとしました.
このやり方を不満とするマハティールは,強引にアンワルを更迭し、自ら危機対策に乗り出しました.

 マハティールの対応は「ヘッジファンドの行き過ぎた活動を規制すること」でした.彼は国際投機家ジョージ・ソロスを名指しで批判し、ソロスとアメリカ当局が裏でつながって、アジアを危機におとしめていると主張しました.

 当時,この非難は荒唐無稽と思われましたが,その後ブラジル金融危機に際し,IMFとアメリカ財務省,ソロスが一心同体であることが立証されました.
ブラジルの金融危機に際し,IMFはソロスの大番頭を経済相に就けるよう推薦し,その就任を待って融資を開始したのです.マハティールに言わせれば、「泥棒を金庫番に就けた」ようなものです。

 マハティールはまず為替取引きを停止しました。ついで株式・債権の短期売買を禁止しました.マレーシアの通貨リンギットは国外での取引きを禁止され、海外持ち出しを制限されることになりました.国内では1ドル=3.8リンギットの固定相場となりました.

 これらの政策はIMFの指導と真っ向から対決するものでした.

 マスコミの多くはマハティールのやり方を痛烈に批判しました。そして強引なアンワル下ろしと相まって,その独裁ぶりが書き立てられました.「マハティールはインドネシアのスハルト前大統領と同様、国民の怒りを受けて失脚するだろう」と噂されるようになりました.

 しかし大方の予想を裏切って,98年度のGDPは1%前後のマイナスにとどまりました.さらにその後は大幅なプラス成長に転じたのです.相場師たちはマレーシアを離れましたが,逆に半導体と家電関係の新規投資は急激に増加しました.

 99年9月1日,この措置の1年間の期限が切れました.世界が固唾を呑んで見守りました.マレーシア政府は50億~60億米ドルの流出を覚悟していました。しかし実際に国外に流出した資金は10億ドルに留まったのです.マハティールの大バクチは成功したと見ることができるでしょう.

 その後もマレーシア経済は順調な足どりを続けています.GDPは前年比で二桁を上回る増加を記録しています.外貨準備高は15億ドル前後増え、ビジネスも順調に伸びています。外国からの直接投資にも悪影響はみられません。

 マハティールは「先進国を中心とする国際社会は,経済の混乱がアジア各国の国内に波及するのを食い止めることができなかった」(それができたのは私だけだった)と胸を張りました.

「私の選ぶ今年の十大ニュース」と言いつつそれは一番最後。まず世間の選んだ十大ニュースから紹介する。

what's @DIME

1000人が選んだ「2017年の重大ニュース」ランキング(2017.12.12)

【1】スポーツ編ランキング

2位 横綱・日馬富士が弟子力士に暴行 傷害容疑で捜査(40.3%)

5位 プロ野球 大谷翔平が日本ラスト登板、来年からメジャーへ(22.6%)

7位 プロ野球ドラフト会議 清宮幸太郎内野手との交渉権を日本ハムが獲得(21.7%)

【2】芸能編ランキング

3位 元SMAP 香取、草なぎ、稲垣がジャニーズ退社(47.8%)

4位 松居一代と船越英一郎の泥沼離婚騒動(31.0%)

【3】政治編ランキング

1位 豊田真由子議員による騒動。「このハゲーーーー!!!」(64.4%)

2位 北朝鮮が弾道ミサイル発射、日本上空を通過、Jアラート発令(44.8%)

3位 森友学園、加計学園問題(44.4%)

7位 第48回衆院選、自民党が圧勝(22.5%)

8位 小池都知事が「都民ファーストの会」代表に就任(20.2%)

【4】海外編ランキング

1位 トランプ大統領就任(67.5%)

2位 金正男氏殺害事件(64.9%)

5位 ラスベガスで史上最悪規模の銃乱射事件、死傷者500人以上(31.0%)

6位 朴前大統領を逮捕(24.7%)

9位 カタルーニャ独立騒動(9.8%)

10位 トランプ大統領がメキシコ国境への壁建造の大統領令(8.8%)

【5】明るいニュース編ランキング

1位 将棋 藤井4段が29連勝、最多連勝記録を30年ぶりに更新(56.1%)

5位 「インスタ映え」が流行(19.3%)

【6】悲しいニュース編ランキング

1位 フリーアナウンサー 小林麻央さん 死去(55.3%)

2位 座間市9人バラバラ遺体事件で、白石容疑者逮捕(46.8%)

5位 横綱・日馬富士が弟子力士に暴行 傷害容疑で捜査(24.4%)

7位 九州北部豪雨(23.2%)

【7】怒りのニュース編ランキング

1位 座間市9人バラバラ遺体事件で、白石容疑者逮捕(51.1%)

5位 森友学園、加計学園問題(29.5%)

10位 神戸製鋼でデータ偽装(17.6%)
全部書くと大変なことになるので、私でも知ってそうなニュースだけ選んだ。全文はwhat's @DIMEへ

Yomiuri Online

こちらは読売新聞の「読者が選ぶ10大ニュース」投票のための資料情報なので使いやすい。しかし記事の選択にはいかにも読売新聞的なバイアスがかかっている。(もちろん前川さんのマの字も触れていない)

国内編

【1月】

韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像が設置る。政府は長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山日本総領事を一時帰国させた。

【2月】

安倍首相は10日、トランプ米大統領とワシントンで初の首脳会談を行った。沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障条約5条の適用対象であることなどを共同声明に明記し、同盟強化の方針を確認した。

東芝、連結決算が4999億円の赤字になったと発表。8月に17年3月期の連結決算を公表し、最終赤字が9656億円に達したことが分かった。

【4月】

名護市辺野古沿岸部で埋め立て区域を囲む護岸の建設に着手した。県は7月、移設工事の差し止めを求め、国を相手取って提訴した。

宅配便最大手のヤマト運輸、個人向け宅配便の基本運賃を荷物一つあたり140~180円(税抜き)値上げすると発表。

【5月】

安倍首相、読売新聞紙上のインタビューで、自民党総裁として憲法改正を実現し、2020年の施行を目指す方針を表明した。

【6月】

テロ等準備罪創設を柱とした改正組織犯罪処罰法が15日、参院本会議で可決、成立した。

安倍内閣の支持率が前月比12ポイント減の49%に急落した。学校法人「森友学園」や「加計かけ学園」を巡る問題が響いた。

【7月】

東京都議選、「都民ファーストの会」が55議席を獲得し、都議会第1党となった。自民党は過去最低の23議席となり、歴史的惨敗を喫した。

稲田朋美防衛相、南スーダンPKOに派遣された陸上自衛隊部隊の日報を巡る問題の監督責任を取り、辞任した。

森友学園前理事長と妻を逮捕。補助金詐取容疑

【9月】

日産で無資格社員が検査。その後、スバル、神戸製鋼所、三菱マテリアルの子会社、東レの子会社で検査データの改ざんも次々と明らかになった。

【10月】

原子力規制委員会、柏崎原子力発電所6、7号機が新規制基準に適合していると判断し、事実上の合格証となる「審査書案」を了承した。

衆院選が22日投開票され、自民党が圧勝した。自民、公明の与党では計313議席となり、憲法改正の国会発議に必要な3分の2以上の議席を維持した。解散直前、小池百合子・東京都知事が希望の党を結成し、民進党は希望への合流を決定。小池氏が「排除」しようとした民進党内のリベラル系を中心に立憲民主党が結成され、民進党は分裂した。衆院選で立憲民主が野党第1党となり、小池氏は11月に希望の党代表を辞任した。

神奈川・座間のアパートで切断9遺体

【11月】

トランプ米大統領が初めて来日した。トランプ氏は安倍首相との会談で、北朝鮮への圧力を最大限まで高めることで一致。対日貿易赤字の是正に強い意欲を示した。

内閣府が9月の景気動向指数を発表。2012年12月に始まった景気の拡大期間が58か月になる。これは戦後2番目の「いざなぎ景気」(1965年11月~70年7月)の57か月を抜くもの。

みずほフィナンシャルグループ、26年度末までに従業員数を約1万9000人減らすなどの構造改革案を発表した。三菱東京UFJ銀行や三井住友FGも業務量を減らす方針。



国際編

【1月】

ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任した。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、イスラム圏7か国からの入国制限の大統領令に署名。2月にフリン大統領補佐官が辞任するなど政権幹部の辞任も相次いた。

ニューヨーク株式市場でダウ平均株価(30種)の終値が、史上初めて2万ドルを突破した。

【2月】

北朝鮮の金正恩委員長の異母兄、キムジョンナム氏がクアラルンプール国際空港で、神経剤VXで殺害された。

【3月】

韓国憲法裁判所、朴槿恵大統領の罷免を決定。韓国検察は31日、朴容疑者を収賄などの容疑で逮捕した。朴容疑者側への贈賄容疑などでサムスン電子のイジェヨン副会長が逮捕された。

英政府は欧州連合(EU)離脱を正式通知した。離脱日時は「2019年3月29日午後11時」と発表した。

【5月】

仏大統領選で、中道のエマニュエル・マクロン前経済相が、極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン氏を破り当選。6月の国民議会(下院)選もマクロン新党が圧勝した。

韓国大統領選で左派の最大野党「共に民主党」のムンジェインが勝利した。9年ぶりに保守から左派に政権交代した。

トランプがFBIのコミー長官を解任。コミー氏はトランプからロシア疑惑の捜査中止を指示されたと述べる。米司法省はモラー元連邦捜査局(FBI)長官を特別検察官に任命した。

英中部マンチェスターのコンサート会場で「イスラム国」による自爆テロ。ロンドン中心部では車が歩行者に突っ込むテロが相次ぎ、3月には英議会議事堂付近で5人が死亡、6月にはロンドン橋で8人が犠牲となった。

【6月】

トランプ米大統領は1日、中国などに有利な内容で「不公平」だとして、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱すると表明した。

英国の下院選が8日、投開票され、メイ首相率いる与党・保守党が過半数割れし、事実上の敗北となった。

ロンドン西部の24階建て高層公営住宅で火災が発生し、死者は71人に達した。

【7月】

核兵器の使用や開発などを初めて法的に禁じた「核兵器禁止条約」が採択された。122か国が賛成、米英仏中露の核保有国や日本などは採決に不参加。採択に貢献した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は10月、ノーベル平和賞の受賞が決まった。

【8月】

ベネズエラでマドゥロ政権が新憲法制定に向けて立法機関の制憲議会を発足させた。7月末の制憲議会選は野党勢力が棄権し、マドゥロ氏派が全議席を独占。国会から立法権を奪った

ミャンマー西部ラカイン州で、バングラから流入したロヒンギャ人問題、難民60万人超に達する。ロヒンギャの過激派集団が警察拠点を襲撃したことが発端となる。

【9月】

北朝鮮が6回目の核実験。弾道ミサイル発射も相次ぎ強行

【10月】

米ラスベガスで銃乱射、58人死亡

米がユネスコ脱退方針通知。ユネスコの「反イスラエル的な姿勢」などを理由とする。

米軍が支援するシリアの民兵組織「シリア民主軍」が、「イスラム国」が「首都」とするラッカを完全制圧した。7月10日にはイラク政府軍がモスルの奪還を宣言した。

【11月】

ジンバブエで事実上のクーデター。37年「独裁」を続けたムガペ大統領が辞任
………………………………………………………………………………………………………………………


それで私の選ぶ十大ニュース(というよりトレンド)は

1.トランプの大統領就任 イギリスのEU離脱などポピュリズムの伸長

2.サンダース・コービン・メランション現象

3.耐え抜いた野党共闘路線 連合の策動の失敗

4.東京都議選での怒り 政治劣化の進行 

5.「好景気」の下、相対的貧困化と絶対的貧困化の同時進行

6.神戸製鋼などものづくり産業のモラル低下

7.内部留保の際限のない積み上げと租税回避への怒り

8.資源価格の低下と途上国の苦境

9.原子力規制委員会の堕落

10.核兵器禁止条約の採択






の作成中に、何度か国際人権規約の条文に関連して発言してきた。「三つの権利」に即した運動として世界の流れを把握する以上、その拠り所としての世界人権宣言と国際人権規約にも触れなければならない。
まずはその形成過程を具体的に振り返ることから、その分析を開始したい。そして国際連帯の中心的理論課題に据えた日本国憲法、すなわち憲法25条の形成過程とその歴史的意義、国際的貢献の可能性についても探っていきたい。

まず年表であるが、主として下記論文により作成した。
まず、あらあらのターミノロジー
国連で定められた人権に関する法体系は国際人権章典(International Bill of Human Rights)とよばれる。これは世界人権宣言2つの国際人権規約、市民的、政治的権利に関する国際規約への第一及び二選択議定書より構成する。
さらに人種差別撤廃条約、国際人権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約など23の人権関連条約が人権体系を構成する


1941年 ルーズベルト大統領、年頭教書で「4つの自由」を主張。言論の自由・信教の自由・欠乏からの自由・恐怖からの自由の四つ。大西洋憲章・国際連合憲章の基礎となった。第2次大戦に参戦するための論理建てとなる。
1944 大西洋憲章が締結される。1.全体主義国家における人権の抑圧が戦争に繋がったとの反省に立ち、2.「恐怖及び欠乏からの解放」と「生命を全うできる平和の確立」をうたう。
1945  国際連合が発足。同時に発効した国連憲章は、前文と第1条で基本的人権および基本的自由をうたう。

前文: 「われらの一生のうちに二度までの言語に絶する悲哀」を前提に、基本的人権と人間の尊厳及び価値と、男女の同権…をあらためて確認

第1条: 人種、性、言語、宗教による差別なく、すべての者の人権および基本的自由を尊重する
1946 国連経済社会理事会内に人権委員会が設立される。国連憲章の具体化のため、単一の国際人権章典の作成を目指す。
1947年 第 4 回経済社会理事会、国際人権章典起草のための委員会を設け、5大国+豪、チリ、蘭を委員国に選出。
1948.12.10 国連第3回総会で「世界人権宣言」(Universal Declaration of Human Rights)が先行・採択される。条約ではなく,「人権に関し諸国家が達成すべき共通の基準」を示したもので、法的拘束力を持たない。東側諸国とサウジ、南アが棄権。

 「すべての人間は、生まれながらにして尊厳と権利とについて平等である」(第1条)

「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、門地その他の地位によるいかなる差別」も認められない(第2条)
3条~21条: 市民的、政治的権利
22条~27条: 経済的、社会的、文化的権利

1950年 第5回国連総会、規約草案には市民的及び政治的権利に加え社会権と男女平等の規定を含めることを決定する。また「世界人権宣言」の発表された12月10日を国際人権デーに指定する。
1951年 第6回国連総会、人権規約内容の膨大化に対応するため、A規約(経済的、社会的及び文化的権利)とB規約(自由権)に分割することで合意。ソ連などの諸国は、社会権と自由権に分けず1つの条約とするよう主張。
1954 第10回人権委員会、A、B両規約からなる第一次案の起草を終える。草案は国連第10回総会に提出される。その後国連総会第3委員会での逐条審議が続く。
1959年 児童の権利宣言が採択される。
1961年 世界人権宣言の趣旨を広げる国際民間団体としてアムネスティ・インタナショナルが結成される。
1965年 「人種差別撤廃条約」が締結される。
1966年12.16 第21回国連総会、国際人権規約を採択。

規約は

(1) 経済的社会的及び文化的権利に関する国際規約,
(2) 市民的及び政治的権利に関する国際規約,
からなる。
(1) はA規約、あるいは社会権規約と略される。
(2) はB規約、あるいは自由権規約と略される。
第1条は両規約共通で「人民の自決権」規定を置く。
自由権規約に関連する選択議定書がある。
1976年 国際人権規約が発効。
1979年 女性差別撤廃条約が締結される。
1979年 日本、国際人権規約を批准。ただしA規約中、公休日の給与支払い、スト権、高等教育の無償化の3点を留保。自由権規約の個人通報制度を定めた第1議定書を先進国で唯一批准していない。
1989年 子どもの権利条約が採択される。

第6条: すべての子どもは、生きる権利をもっています。国はその権利を守るために、できるかぎりのことをしなければなりません。

1989年 死刑廃止を目指す第2選択議定書が採択される。
2006年 国連人権委員会が人権理事会に改組される。
2012年 社会権規約第13条「中等教育及び高等教育の漸進的無償化について」の留保の撤回を閣議決定。(この時点で留保国は日本、マダガスカル、ルワンダの3カ国)


参考
1) 人権宣言(1948)の社会権(第22条から27条まで)の一覧
社会保障を受ける権利
働く権利、同等の勤労に対し同等の報酬を受ける権利、労働組合を組織し、これに参加する権利
休息および余暇を持つ権利
健康と福祉に十分な生活水準を保持する権利
教育を受ける権利
社会の文化生活に参加する権利
2) A規約(社会権)の第6条から15条
①労働に関する権利 第6条~第8条
②社会保障などに関する権利 第9条~12条
③教育・文化に関する権利 第13条~15条
この中の第11条が「相当な生活水準の享受に関する権利」となっている。
社会権には生存権(より基本的な)はふくまれない。市民的権利(自由権)のトップに「生存、自由、身体の安全に対する権利」が掲げられているが、ここでは生存権は自由権としてあつかわれる。

3) ワイマール憲法第151条第1項(1919年)「経済生活の秩序、経済的自由」
経済生活の秩序は、すべての人に、人たるに値する生存を保障することを目指す正義の諸原則に適合するものでなければならない。各人の経済的自由は、この限界内においてこれを確保するものとする。
4)憲法草案 GHQ案(46年2月)第24条 
法律は、生活のすべての面につき、社会の福祉並びに自由、正義および民主主義の増進と伸張を目指すべきである
5)憲法草案 政府案 第23条
法律は、すべての生活部面について、社会の福祉、生活の保障、及び公衆衛生の向上及び増進のために立案されなければならない

 

スライド1
チラシ

  

本日は発言の機会をいただきまことにありがとうございます。

この講演会の主催は「憲法を考える札幌市民集会実行委員会」です。その連続講演会の4回目の会議として本日の話が位置づけられております。」

これが本日の講演会のチラシです。立派なものを作っていただきありがとうございます。


スライド2

チラシの文脈では

Ⅰ 世界の平和の流れと憲法9条

Ⅱ 北朝鮮の核開発をどう見るか

Ⅲ 平和と安全に関する法体系のあり方

Ⅳ ラテンアメリカの平和への動き

…北朝鮮問題への国際的な視点を考察し、平和と安全の問題を考える…

 


 

チラシの文句を並べるとこういうことになります。

チラシの中味だとけっこう話が拡散しています。

どうしたら聴衆の皆さんの興味を拡散させずに話をまとめることができるかどうか、考えあぐねているところもあります。

とりあえずは、国際情勢をめぐるさまざまな話題を、究極的には日本国憲法に引きつけて、整理して行くようにと考えています。

これでは広すぎる、とりあえず一点に絞る


国際的な連帯運動の到達を踏まえ、憲法(とりわけ9条)の意味を考える

一応、このような方向で話しさせていただくということで、あらかじめご承知の上で聞いていただけるとありがたいと思います。

これはある意味で学ぶ活動だといえます。

もう一つだいじなのは、日本の護憲平和の運動を国際的に意味づけし、世界につなげる活動ですが、これは後で考えていきます。

皆さんのご期待と少し外れるかもしれませんが、ご容赦願います。

 


スライド3

21世紀型連帯運動の特徴

「国際的な連帯運動の到達」の意味するもの

1.すべての国際連帯の課題が、わたしたち自身の闘いと分かちがたく結びついている

中東・アフリカの平和の問題は、日本の憲法改悪の問題と結びついている。

わたしたちの運動は世界の運動と結びついたときに大きく発展する。

2.平和の課題だけではなくすべての闘いが連帯抜きに語れなくなっている

反TPP・反原発の闘い、超国家企業・投機資本との闘い、反共ポピュリズムとの闘い

響き合う各国の闘い(特にこの問題に触れたい)

 


 

スライド4

003年 イラク反戦ウエーブ

 

 2月14日~15日の24時間で世界で1千万人がデモに参加した。その多くはインターネットによるものだった。

オーストラリア(人口1千8百万人)では、2月14日にメルボルンで25万人、16日にシドニーで25万人のほか、アデレイド、ブリスベンでそれぞれ10万人など、総計75万人がイラク反戦集会・デモに参加した。

翌15日、ヨーロッパ諸国で空前の巨大な規模の闘いが爆発した。イタリアのローマでは300万人、1都市としては最大の反戦デモが行われた。
スペインでは全国で総計4百万とも5百万とも言われる人びとが街頭を埋め尽くした。マドリードで200万人、バルセロナで150万人、全スペイン国民の10人に1人が反戦闘争に参加したのだ。
ロンドンで200万人、パリで80万人、ベルリンで50万人など、かつてない規模の反戦集会・デモが開催された。

最後の大ウエーブは戒厳態勢下のニューヨークで巻き起こった。デモが禁止されたが75万人が参加した。最後のサンフランシスコでは25万人、市民の3分の1が参加した。

 

写真省略

 


 

スライド5

21世紀型連帯運動の三つの分野

21世紀型連帯運動は3つの分野に広がっている

Ⅰ 反軍事主義・平和構築のための闘争と連帯

Ⅱ 反貧困・反格差・経済民主主義を目指す闘争と連帯

Ⅲ 反ファシズム・立憲主義と民主主義を守る闘いと連帯

この3つの課題は

Ⅰ 平和に生きる権利

Ⅱ 人間らしく生きる権利

Ⅲ 自由に生きる権利

をめぐる課題、と言いかえることもできる。

(これは私の自慢の表です) 

 


スライド6

第Ⅰ分野 反軍事主義・平和構築のための闘争と連帯

21世紀の戦争は、大小の覇権思想とこれに対する報復が軍事主義の悪循環を形成して拡大してきた。

軍事主義とは何か

紛争の解決を国際法・国際的道義と国際機関を通じた合意によらず、軍事力(脅迫)で解決しようとする政治手法である。

覇権思想と軍事主義の2つを食い止める。とくに軍事主義の手を縛ることで平和の構築に向けて歩みださなければならない。

A) 中東における大小の覇権思想と軍事主義

B) 「新しい北東アジア」の構想を推進する

C) ラテンアメリカにおけるアメリカ覇権主義の危険な動向

D) 核兵器禁止条約の締結がもたらしたもの

E) 日本の平和主義国家から軍事主義国家への変貌を許さない

A) ~ E) それぞれが広範な内容をふくんでいるので、ここでは触れない。(「新しい北東アジア」の構想は後で触れる)

 


スライド7

国際テロリズムとの闘い

21世紀の戦争は、大小の覇権思想とこれに対する報復が軍事主義の悪循環を形成して拡大してきた。

国際テロリズムとは何か

大量破壊、暗殺、略取誘拐により政府の行動に影響を与える行動。とくに民間人(ソフトターゲット)に対する無差別攻撃が問題となる。

多くの場合、民族的迫害に対する歪んだ(絶望的)報復行動となっていることが多く、異端的宗教活動を背景とする狂信に支えられている。

土台となる闘い

軍事的報復思想の発生母体を崩し、平和の構築に向けて歩みださなければならない。この課題は反貧困・反格差の課題と、ある程度重複することになるだろう。

1.資源問題などでの富裕層の国際的な横暴を抑えること

2.領土問題などを利用する大小の覇権主義の芽を摘み取ること

3.民族差別を煽る極右・反動勢力の台頭と闘うこと

当面の対応

当面、国連などの国際協力を通じて、

1.異文化理解の強化 

2.貧困の削減と飢餓の根絶 

3.難民の受け入れと支援 

4.非軍事支援の強化

を推進していかなければならない


スライド8

第Ⅱ分野 反貧困・反格差・経済民主主義を目指す闘争と連帯

A) グローバリズムと経済問題の深刻化

1.ビッグバン 金融自由化: 投機資本の市場撹乱

2.リーマンショック: レバレッジの仕掛けが世界を壊す

3.租税侵食: 超国家企業の出現と国家財政の破綻

基層をなすのは先進国における産業空洞化、労働の不安定化、マーケットの狭小化

B) 格差問題は世界で深刻化している

1.アントニオ・ネグリ「帝国」 2003年

途上国国民の貧困化と流民化

2.ピケティ「21世紀の資本」 2013年

先進国の空洞化と格差拡大。

C) 人間らしく生きる権利が侵害されている

生存権とは、もっとも簡潔に言うと、人間が人間らしく生きる権利のことである。それは「人間らしく生きる」ことを可能にする国家の義務である。

国際的には、国際人権規約のうち、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(A規約)が相当する。(A規約については別途検討)


スライド9

欧米の社会変革の動きとの響き合い

A) 2011年 反失業青年行動 

リーマンショック→欧州金融危機→PIGSの債務危機→財政引き締め

チュニジア青年失業者の自殺→アラブの春→スペイン、ギリシャの青年行動→ウォール街占拠闘争→アメリカでの最低賃金引き上げ運動

日本では東北大震災のため連動しなかったが、反原発闘争、非正規就業反対・ブラック企業告発で盛り上がる。

B) 2016年 各種選挙での躍進

ギリシャでの反緊縮政党(元共産党)の勝利→スペインでのPODEMOSの前進→サンダース現象→イギリス総選挙でのコービン現象→フランスでのメランション現象

日本でも野党共闘が大いに盛り上がった。さらに揺るぎないものにするためには、青年・学生・若ママ・非正規の要求を組み上げることがだいじだ。


スライド10

格差問題是正のために何をなすべきか

1.税制改革、財政改革、働き方改革の「3つの矢」

1.税制改革: 税制を改革し、所得再配分をすすめる。「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」の原則。

①間接税から直接税へのシフト、②大企業優遇税制の抑制、③租税回避を許さない、④世界的な「法人税引き下げ競争」の見直し。

2.財政改革: 積極的な公的社会支出(社会保障、教育・研究、子育て)で格差と貧困を是正する。

3.働き方改革: ①労働規制の強化、②非正規から正規へ、「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を打ち立てる。③大幅賃上げと最賃引き上げなどによりワーキングプアをなくす。


2. 富裕層は強大だ

わずか1%で99%の人たちを支配できる。そのくらい富裕層は強力なのだ。だから99%が本当に力を合わせなければ、この仕組みを打ち破ることはできない



スライド11

21世紀型連帯運動の三つの分野

そのⅢ 自由に生きる権利を守る闘いと連帯

1.立憲制とリベラリズム

政治的自由は、国家における民主主義の根幹をなすものである。政治的自由を支えるものとしての「立憲主義」の根幹性は、この間の運動の中で明らかになっている。

1.支配者の恣意による専制支配: 人治政治

2.法による支配: 法治主義(法定主義)

3.立憲主義政治: 国家原則(憲法)に権原を由来する政治

4.共和制国家による支配: 主権在民を前提とした民主主義のシステム

1→4の順に国民の自由度は高まる。これは人間の歴史の中で築き上げられてきたものである。

2.民主主義はリベラルでなければならない

シェリ・バーマンはポピュリズムは反リベラルではあるが、反民主主義ではないという。

これは明らかに誤りだ。ポピュリズムには多数決主義はあっても、自由権(批判的・異端的)を恣意に委ねない保障はない。それは近代的民主主義ではない。

3.立憲政治を民主主義の基礎としたのは戦争法反対闘争の成果

まだいろいろ議論が必要だが、「立憲主義」とリベラリズムを民主主義の前提条件と位置づけたのは、日本の護憲闘争の理論的成果である。

  


スライド12

国際的な連帯運動の到達を踏まえ、憲法(とりわけ9条)の意味を考える

Ⅰ 反軍事主義・平和構築のための闘争

憲法前文と憲法9条 非戦条項の実効性を証明した功績

平和国家としてのプレステージ(まったく生かされていないが)

Ⅱ 反貧困・反格差・経済民主主義を目指す闘争

憲法25条の先進性

Ⅲ 反ファシズム・立憲主義と民主主義を守る闘い

「憲法は、個人の尊重が目的とされ、人間らしい生活を保障するもの」という教訓

憲法擁護はリベラリズムの核心であり、近代民主主義の第一歩

 

最後にもう一度

「国際的な連帯運動の到達」の意味するもの

1.すべての国際連帯の課題が、わたしたち自身の闘いと分かちがたく結びついている

中東・アフリカの平和の問題は、日本の憲法改悪の問題と結びついている。

わたしたちの運動は世界の運動と結びついたときに大きく発展する。

2.平和の課題だけではなく、すべての闘いが連帯抜きに語れなくなっている

反TPP・反原発の闘い、超国家企業・投機資本との闘い、反共ポピュリズムとの闘い

響き合う各国の闘い(特にこの問題に触れたい) 

前の記事
2017年11月18日 

 とあわせお読みください。



を書き始めたのだが、どうにもまとまらない。書くための材料が何か決定的に欠けているような気がして仕方がない。

1週間悩みに悩んで得た結論が二つある。
A)憲法25条の「生存権」は、胸を張って生きていく権利
一つは「生存権」が意味のある生き方をおくる権利だとすれば、それが拒否するのは貧困一般ではなく貧富の差であり、貧富の差が生み出す「差別を伴う格差」だということだ。
貧富の差そのものが差別を生み出す。これは倫理を介在するものではない。月給10万の人は、誇りを傷つけられずに月給100万の人とともに暮らすことは不可能であろう。
格差そのものが生存権の侵害であり、これは慈善ではいかんともしがたいことだ。そういうものとして「生存権」を捉えなければならないということだ。
それで、そこまで踏み込んで条文化したのが日本国憲法の25条だということだ。これは「人を餓死させてはならない」という条文ではない。人口の少なくとも過半数を占めているのは相対的な貧困層なのだから、その人達が胸を張って生きていける社会を作らなくてはならないというのが法律の趣旨だ。
少し調べてみたが、ここまで明確に人間が人間らしく生きていく権利の権利性を文章化した条文はないように思える。国連人権規約が登場するまでは、世界でもっとも進歩的な条文ではなかったか、と思っている。

B) 日本型立憲主義の主張と「自由主義思想」の再評価
もう一つは、近代民主主義の基層をなすものとしての自由主義思想の受け止めである。
これは、一昨年の戦争法反対運動の中でにわかに巻き起こり、いわば「民主主義的立憲主義」という形で民主運動の中に定着しつつある。
この立憲主義の思想的裏付けとなっているのが自由主義思想(リベラリズム)である。リベラリズムは産業資本主義のバックボーンとなってきた思想である。ところがこれが冷戦体制の中で資本主義諸国のブランドマークとして利用され、反動政策を覆い隠すために利用されてきたため、進歩的運動野では比較的軽視されてきた。
冷戦体制が崩壊し、資本主義対社会主義、民主主義対自由主義というレッテルの張り合いが無意味になったいま、もう一度自由主義思想を民主主義の基層に位置づけ直すことが運動論の形成の上で不可欠になっている。
それは安倍政権の対米依存強化と軍事力主義への傾斜を食い止める上でも不可欠の思想となっている。またトランプを筆頭とするデマと民衆扇動によるポピュリズム(ニセ民主主義)の論理を打碎くためにも必須の論理である。
率直に言えば、諸外国では日本ほど徹底したソ連型政治システムへの批判が行われていない。したがってリベラリズムを偉大な正統な歴史遺産として受け止める雰囲気は形成されていない。
しかしリベラリズムの伝統の上にデモクラシーを構築しなければ、近代民主主義は語れないのである。逆説的に言えば、日本の憲法を守る運動はそういう理論的地平を切り開いたのであり、このことは大いに確信を持つべきだろうと思う。

この2つは、憲法9条を守る運動に勝るとも劣らない、日本の民主運動の世界的功績であろうと思う。

国際連帯の課題と現状

数年前から痛感しているのだが、あれこれの闘いを取り上げてもそれだけで連帯の課題は見えてこない。

すべての国際連帯の課題が、わたしたち自身の闘いと分かちがたく結びついている

これが21世紀型連帯運動の特徴なのではないか。

そう思って書いたのが、今年2月の総会への情勢報告だった。


国際連帯の三つの課題

(国際連帯の課題と現状  続き)

報告の構成は以下のようになっている。

Ⅰ 反軍事主義・平和構築のための闘争と連帯

Ⅱ 反貧困・反格差・経済民主主義を目指す闘争と連帯

Ⅲ 反ファシズム・立憲主義と民主主義を守る闘いと連帯

この3つの課題は

Ⅰ 平和に生きる権利

Ⅱ 人間らしく生きる権利

Ⅲ 自由に生きる権利

をめぐる課題、と言いかえることもできる。

 


Ⅰ 反軍事主義・平和構築のための闘争と連帯

21世紀の戦争は、大小の軍事主義とこれに対する報復が悪循環を形成して拡大してきた。

この2つを食い止める、とくに軍事主義の足を縛ることで平和の構築に向けて歩みださなければならない。

A) 日本の平和主義国家から軍事主義国家への変貌を許さない

B) 「新しい北東アジア」の構想を推進する

C) 核兵器禁止条約の締結がもたらしたもの

D) 平和のための4つの方向と4つの実践課題 

A) B) C) それぞれが広範な内容をふくんでいるので、ここでは触れない。

D) についてのみ、触れておく。


Ⅰ 反軍事主義・平和構築のための闘争と連帯

(続き)

A) 日本の平和主義国家から軍事主義国家への変貌を許さない

B) 「新しい北東アジア」の構想を推進する

C) 核兵器禁止条約の締結がもたらしたもの

D) 平和のための4つの方向と4つの実践課題 それぞれが広範な内容をふくんでいるので、ここでは触れない。

A) B) C)

D) についてのみ、触れておく。

 


 

反軍事・平和擁護の闘い(続きの続き)

21世紀の戦争は、大小の軍事主義とこれに対する報復が悪循環を形成して拡大してきた。

この2つを食い止める、とくに軍事主義の発生母体を崩し、足を縛ることで平和の構築に向けて歩みださなければならない。

この課題は反貧困・反格差の課題と、ある程度重複することになるだろう。

1.資源問題などでの富裕層の国際的な横暴を抑えること

2.領土問題などを利用する大小の覇権主義の芽を摘み取ること

3.民族差別を煽る極右・反動勢力の台頭と闘うこと

を土台としつつ

当面、国連などの国際協力を通じて、

1.異文化理解の強化 

2.貧困の削減と飢餓の根絶 

3.難民の受け入れと支援 

4.非軍事支援の強化

を推進していかなければならない

 


Ⅱ 反貧困・反格差・経済民主主義を目指す闘争と連帯

A) 格差問題は世界で深刻化している

B) 欧米の社会変革の動きとの響き合い

C) 格差問題是正のために何をなすべきか

1.税制改革: 税制を改革し、所得再配分をすすめる。「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」の原則。①間接税から直接税へのシフト、②大企業優遇税制の抑制、③租税回避を許さない、④世界的な「法人税引き下げ競争」の見直し。

2.財政改革: 積極的な公的社会支出(社会保障、教育・研究、子育て)で格差と貧困を是正する。

3.働き方改革: ①労働規制の強化、②非正規から正規へ、「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を打ち立てる。③大幅賃上げと最賃引き上げなどによりワーキングプアをなくす。

D) 貿易と投資のルール作り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Ⅰ 三人の老政治家が注目される理由

この1年の間にアメリカ大統領選挙、イギリス総選挙、フランス大統領選挙という注目すべき選挙戦が展開された。

この3つの選挙で、3人の老政治家が大活躍して注目を受けた。それはアメリカのサンダース、イギリスのコービン、そしてフランスのメランションである。

それぞれの個別の特徴は別にして、眼につく共通点は、彼らが一貫して左派リベラルの立場を守ってきたこと、彼ら自身は老人であるにも関わらず、若者の熱狂的支持を受けたことである。

彼らを支えたのは左派連合であると同時に老青連合でもあった。とくに青年のイニシアチブが際立っている。

青年層が老政治家を支えて立ち上がった理由には大きく言って3つあると思う。

A) 貧困化と格差拡大

「格差問題」は、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大という3つの状況の複合である。さらに「板子一枚下は地獄」という不安感が社会的緊張(ゆとりのなさ)を招いている。

これは決して昔からのものではない。80年代にレーガン大統領が独占資本優位の経済政策を取り始めたからだ。最高税率を28%まで引き下げられた。最低賃金を抑え続けた。最低賃金はインフレによって目減りした。「69年は時給11ドル近かったが、2016年は7ドルだ」(ピケティ)

新自由主義は決して経済の必然ではない。アメリカの独占資本が利益を上げるために、国内外の人々に押し付けたルールの結果なのだ。だから変更することは可能なのだ。

B) 青少年の未来の喪失

格差問題が政治化する最大の理由は、中間層の疲弊と没落である。それは能力がある多くの青少年から未来を奪っている。

高すぎる奨学金、高学歴でも就職できない悩みが青年のあいだに広がっている。

「人口の1%の最富裕層のための政治ではなく、99%のための政治」はウォール街占拠運動のスローガンであるが、いまや世界の青年の共通のスローガンとなっている。

C) 民主主義の危機

格差の拡大の中で、政治的平等、法のもとでの平等の原則は大きく揺らぎつつある。その結果、民主主義に対する信頼が損なわれ、言論に訴えるよりも一過性の情緒に流される傾向が強まっている。

ヨーロッパでは深刻な経済危機のもとで、移民排斥を主張する極右派の台頭という事態も起こっている。

これに対し、民主主義を守る闘いが格差問題と結びつ来つつある。それは今回のフランス大統領選挙でもっとも典型的に示された。メランションは言う。「どんな問題でも解決策はある。それは民主主義だ」

すなわち格差問題も貧困問題も、「民主主義」を通じてしか解決できない。だから民主主義は何よりも大切なのだということを示している。

これらの論点について、三人の老政治家の認識は共通すると言ってよい。


Ⅱ なぜ老政治家が若者の心を捉えたか

A) 今の世の間違いが分かる世代

とはいえ、若者の心を政治に反映させるのには、若者自身が立候補するのが一番良いはずだ。なぜ老いぼれ政治家に自分たちの夢を託すのか。

率直に言えばよく分からない。例えばスペインやギリシャではみずからの世代の代表を議会や政府に送り込んでいるからだ。

ただ若者たちだけで戦えば、勢いだけで行けるあいだはいいが、高齢者や組織労働者などへの食い込みは難しい。ただ戦闘的なだけでなく安心感を与えることも必要だ。
選挙戦が白熱すれば、他党派との切り結びや戦略的思考が不可欠となるが、若者にはそれだけの修羅場経験がない。

そういう色々なことがあって戦略的に判断したのではないかと思われる。逆に言えば、青年の政治意識がそこまで熟度を増しているということだと思う。

その際の最大の選択基準が「ぶれない政治家」ということだろう。

B) 老青連合がお互い必要という事情

その他にも特徴がある。非エリートであること、党派性が薄いことなど、いずれも若者にとって「お神輿として担ぎやすい」要素を持っている。コービンの場合は2大政党の一つである労働党の党首ではあるが、議会内では少数派であり、一般労働党員の力のみが頼りである。これは逆に言えば政策的フリーハンドを握りやすいという利点にもなっている。

こういった戦略はおそらくサンダース陣営に乗り込んだ若者たちの発想であろうと思われる。しかしそれは巧まずして、世の中の空気にぴったりマッチした。

老青連合路線は教訓化され、それがイギリスにも持ち込まれた。そしてコービンの成功は、教訓としてフランスにも持ち込まれたのであろう。

日本においても、老青連合の凄まじい推進力とc破壊力はこの間試されずみの教訓となっている。


最近ポピュリストないしポピュリスムという言葉をよく耳にする。
ルペンまでふくめてポピュリストと一括する表現は、ラテンアメリカの歴史をやってきた人間としては、ひどい違和感を覚える。
20世紀の前半、ラテンアメリカをポプリスモが席巻した。それはカリスマによって歪められているとは言え、民衆の要求と抗議を反映したものだった。そこには激しい階級闘争があった。それがドイツ、イタリアではニセのポピュリスト=ファシストによって騙し取られたのだ。
その違いは言っていることにあるのではなく、「やっていること」にある。というより「やろうとしないこと」にある。それは、激しい言葉を使えば、「収奪者を収奪すること」である。
所得の再分配なしに財源を生み出すことはできない。内需が拡大しなければ再投資→経済成長へのインセンティブも生まれない。それを行わずにばら撒き経済を行えば、やがて財政は破綻し経済成長は停滞し雇用は失われる。
その時彼らは、海外市場への強引な進出と経済の軍事化(浪費の構造化)へとスイッチを入れ替えるのである。
ポピュリズムは、個別には破綻すればそれで一巻の終わりだが、ファシズムには財界がついている。必要とあれば暴力を使ってでも反抗勢力を押さえ込む。ファシズムにとっては独裁制が必然の帰結となる。
ポピュリスムは空文句で煽るだけだが、ファシズムは思想を押し付ける。カラ文句にだまされない人を排除し抹殺する。こうしてファシズムは愛国思想と選良思想、好戦思想を柱とする「原理主義」となる。

これがファシズムである。

なぜファシストをファシストと呼ばないのか。なぜ「極左」と並列するのか。そこには民主主義への軽蔑と、ファシズムへの警戒感の鈍化があるのではないか。自戒せよ。

フランスの大統領選挙は、結局白か黒かの決着なので、その意味を探るのは難しい。だからポピュリスト対リベラルみたいな括りも出てきてしまうのだが、議会選挙の結果と合わせて読むともう少し分かってくる。
フランス議会選挙の総括はもう少し勉強してからのことにして、アメリカ、イギリス、フランスの選挙を通じて見えてくる世界の動きについて、感想を述べておきたい。
1.“国栄え、民栄える”思考の後退
最大のトレンドは、“国栄え、民栄える”思考の明らかな後退だ。
19世紀後半から、世界中が“国栄え、民栄える”思考の中にズッポリはまってきた。その結果として二度にわたる世界大戦がもたらされ、その副産物として原水爆という悪魔的兵器が生み出された。
第二次大戦後に作られた自由貿易体制は、本来は世界は平等なひとつの家族という考えを表現したものである。
そこで“世界栄え、民栄える”という画期的な考えが初めて打ち出された。
しかしそれはアメリカの圧倒的な経済的・軍事的な優位を背景にもたらされたものであった。だから表面的には世界平等主義であっても、アメリカの許す範囲での世界主義であった。
この矛盾は当初より緊張をはらんだものであったが、ベトナム戦争を経てアメリカの全一的支配が破綻すると、複雑でぎくしゃくとしたものとなった。
アメリカ自身が「強いアメリカ」を主張するようになると各国もそれに倣い、“国栄え、民栄える”思考が復活しつつあるようにみえる。
2.“国栄え、民栄える”思考のもたらしたもの
しかしこの時代遅れの思考は、それを主張する国家(アメリカをふくめ)にとって利益を生み出さなかった。そしてますますその弊害が誰の眼にも明らかになっている。国が栄えて栄えるのは超富裕層であり、民はますます衰えるのが現実の姿だからだ。
“世界栄え、民栄える”という考えが、あらためて見直されている。
世界中の人々は国がどうであろうと、世界がどうであろうと、民が栄えることを望んでいる。同時に民を不幸におとしいれるような国も、世界も望んでいない。
人々は、国が栄えることを前提とした民の繁栄という路線に疑問をいだき始めている。そして民が栄えるような国の、別のあり方を求めている。それは“世界栄え、民栄える”型の国家への移行だ。
3.“超富裕層栄えて民栄える”か?
いま超国家的な超富裕層が国を屈服させ、民を不幸へと追いやっている。国家はかつての植民地の現地機構のように、超富裕層に隷属し国民収奪の道具となっている。
「強いアメリカ」、「強いイギリス」、「強いフランス」のスローガンはもはや人々の心に響かない。それらは、国家よりもっと強い超国家企業・超富裕層をどうするかという問題に答えていないからである。
この21世紀的枠組みに立ち向かっていく政府が、民を栄えさせる政府(いまは可能態にすぎないが)である。それが世界で同時多発的に立ち上げられる必要がある。
そしてその可能性がこの3つの選挙でしめされた。ここに最大の意義があると、私は思う。

今世紀の初頭、世界の人々が高らかに宣言した「もう一つの世界は可能だ」のスローガンを、我々は想起すべきだ。そして共通する目標として、“世界栄え、民栄える”を掲げるべきだ 

この時刻表は前に作ったものの増補版となるものです。

2016年05月09日

日本ではパナマ文書の追及もあまりされず、相変わらず「世界一企業に優しい」政治が続いていますが、海外では租税回避への厳しい対応がどんどん進んでいます。

そこで表題を上のように付けなおしたものです。なおFATCAとCRSの成立過程に的を絞ったものとして、以前の経過表はそのまま残しておきます。


2012年

2月8日 米国と欧州5か国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)が共同声明。欧州5か国の税務当局が米国人口座の個別情報を取得し、まとめて提供することとなる。

6月 OECD 租税委員会、BEPSプロジェクトを立ち上げ。多国籍企業等の租税回避に対応するため、国際課税ルールの抜本的見直しを開始。

10月 ロイターが喫茶店チェーンのスターバックスの租税回避を暴露。2010年以降、英国に一文も払っていないことが明らかになる。

スターバックスは英国で過去30億ポンド以上の売上があったのに対して、わずか860万ポンドほどの税を納税したのみ。ここ3年間においては12億ポンドの売上に対して税を納付していない。
法人税の安いオランダに所得移転し、差し引き8%の“節税”。イギリスは税収をまるまる失い、オランダは濡れ手に粟のぼろ儲けをした。

11月 英議会がスターバックスを呼び公聴会を開催。

12月 不買運動に直面したスターバックス、法人税の自発的納付で英当局と合意。欧州の本社機能を英国に移し、租税回避をやめる。

11月 英・独の財務大臣が租税回避を非難する共同声明を発表。仏の財務大臣も賛同する。


2013年

2月 OECD、「税源浸食と利益移転(BEPS)への対応に関する報告書」を作成。G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(ロシア・モスクワ)に提出。

3月 英国、ドイツ、フランスの3カ国は他のG20諸国に対し、多国籍企業の租税回避を阻止するよう求めた。G20はこれを受け、OECDに租税回避防止に関する研究報告を求めた。

5月 米上院、アップルを呼び租税回避を追及する。

6月 G8首脳会議、課税逃れ対策の支持で合意。

6月 OECD 租税委員会、15 項目からなるBEPS 行動計画を採択。FATCAのモデル1をひな形として、金融口座情報等の「自動的情報交換」を多国間に拡大するもの。

7月 OECD、G20財相会議にBEPS 行動計画を提案。

7月 アメリカの消費者団体(pirg)が米巨大企業の多くが5年間納税ゼロであったと発表。またトップ100社がタックスヘイブンに保有しているお金は、1.2兆ドルに達するとする。

8月 ジェトロ、日本の対外直接投資残高が1兆ドルを超えたと報告。96年に比し4倍となる。ケイマンとオランダへの投資が突出する。

9月 サンクトペテルブルクでG20 サミット。BEPS 行動計画を全面的に支持。次年度末を目途に国内の法整備を進めることで合意。OECDによる国際基準の策定が支持される。

10月1日 OECDの発議した「税務行政執行共助条約」が日本において発効。①締約国における自動的な 情報交換、②租税債権の徴収の支援(徴収共助)、③要請による文書送達(送達共助)を定める。

10月 フランス議会、国内書店の保護を目的とする「反アマゾン法」を可決。

12月 イタリア議会、グーグル法を可決。多国籍企業がネット広告などを掲載する場合、国内事業者を通さなければならないと定める。イタリア政府は税導入を延期する措置。


2014年

1月 OECD租税委員会、自動的情報交換の共通報告基準(CRS)を承認。

2月 OECD、「課税における自動的な情報交換に関する基準」の草案を発表。

3月6日 米国財務省とIRS、最終暫定規則を発表。50以上の修正が加えられる。

4月 アップルのCEOティム・クックが上院で証人喚問を受ける。利益の多くをアイルランドで計上していることについて説明を求められた。

5月 クレディ・スイス、「米国人顧客の脱税を意図的にほう助した」と有罪を認め、米政府などに28 億1,500万ドルの罰金を支払う。

7月1日 FATCAによる規制が日本及び世界で施行される。登録金融機関は世界中で10万以上、日本の金融機関は3,624にのぼる。

日本の金融機関は、米国人対象者を特定し、同意を取得した上で、米国内国歳入庁(IRS)へ直接報告を行う
不同意口座についてはIRSが租税条約に基づく情報交換要請を日本の国税庁にする。国税庁は金融機関から情報を入手し、IRSへ提供する

7月 OECD、CRSのフルバージョンとコメンタリーを公表。金融機関の非居住者口座を政府間で自動交換するためのマニュアルとされる。

この「完全版」は「金融口座の自動情報交換のための新国際基準」(Standard for the Automatic Exchange of Financial Account Information in Tax Matters)と題されている。

9月 G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(ケアンズ)で、BEPS報告書第一弾公表。

11月 ブリスベンのG20サミット、CRSを承認。その後97の国・地域が「税に関する自動的情報交換制度」(OECD制度)への参加を表明。日本の参加は遅れる見通し。アメリカは不参加の意向。

全国銀行協会は「OECD の枠組みは、FATCA よりもさらに負荷が大きい。実務面での配慮が必要」とコメント。

12月 この時点で、欧州各国を中心に112の国・地域が米国とIGAを結ぶ。

14年 イギリスが「UK FATCA」制度を導入。「海外領土」と呼ばれるジャージー、英領バージン諸島、ケイマン諸島、バミューダなど10カ国の金融機関に対し、英国居住者の口座情報の提供を義務付けた。これにより税金上のメリットは失われ、場合によってはHMRC(英歳入関税庁)の調査対象となる。

2015年

1月16日 欧州委員会、ルクセンブルグ政府の優遇税制措置を、EU法に定められた「違法な国家補助」に当たるとの判断。

アマゾンが税率の低いルクセンブルクの子会社にウェブサイト運営のための知的財産権を移し、同社の世界全体の売り上げの5分の1を占めるEUでの売り上げを集めていた問題がきっかけとなる。

3月 欧州委員会、「課税の透明性に対する取り組み」を発表。EU加盟国間の税務情報を、自動的に交換する仕組みを導入するよう提案。

3月31日 FATCAに関する国内法が発効。「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の一部改正(租税条約実施特例法の一部改正)という長たらしい名前。

4月 イギリス政府、Google税(Diverted Profit Tax)を施行。租税回避された広告料所得などに対しても課税。スペインではグーグル社が徴税に対抗してグーグルニュースのスペイン版を閉鎖。

5月 米上院小委員会がアップル社からヒアリング。アメリカの法人税率は35%であるのに、アップル社は、実質2%以下の税率だったことが明らかになる。

6月 欧州委員会、公正かつ効率的な課税を目指す「法人課税に関する行動計画」を発表。

10月 G20アンタルヤ・サミット、「BEPSプロジェクト」の「最終報告書」を支持することで合意。

15年 イギリスは、企業がタックスヘイブンを利用して逃れた利益に25%の税金を課す制度を導入。

15年 イギリスのタックス・ジャスティス・ネットワーク、タックスヘイブン全体で21~32兆ドルの資産が隠されているとの試算を発表。その半分がメガバンクの保有であるとする。


2016年

1月1日 イギリスやドイツなどの早期適用国(56カ国)で、CRSが実施される。2016年の口座情報が2017年9月に交換されることになる。日本2018年適用国(41カ国)となる。

1月 欧州委員会、多国籍企業の租税回避に対する規制方針をまとめた「租税回避対策パッケージ」を提案。

①効果的な課税: 利益が発生した場所で税を支払う原則
②課税の透明性: 課税を確実にするため、加盟国が情報を共有する。具体的には多国籍企業に関する「国別報告書」(CbCR)の提出を義務化。第三国にも実施を求める。
③二重課税のリスクの回避: EU域内市場を活用する企業が二重課税を受けないように保護。

1月22日 イギリス税務当局、米グーグルとの合意に達し、210億円を追加課税した。グーグルはイギリス国内で170億ポンドも稼ぎながら、バミューダ諸島などに利益を移して5200万ポンドしか納税していなかった。

7月12日 EU理事会、「租税回避対策パッケージ」の核となる「租税回避対策指令」(Anti-Tax Avoidance Directive)を採択。利子損金算入制限、出国課税、一般的租税回避防止、外国子会社合算税制、ハイブリッド・ミスマッチの5つの規定で構成される。

8月 欧州委員会、アップルのアイルランドでの事業に対しEUの定める国家補助(state aid)法違反だと認定。アイルランド政府に対し130億ユーロの追徴税を命じる。

アップルはEU諸国での売り上げすべてを、アイルランドのペーパーカンパニーで申告している。アイルランドの法人税率は12.5%と圧倒的に低く、納税回避目的であることは明白とする。

8月 米財務省、欧州委員会が「超国家税当局」になっていると批判。アップルへの追徴金に対し「深い懸念」を示す。

9月 G20首脳会議(杭州)において、BEPSプロジェクトとCRSの進捗状況が報告される。85の国や地域が、BEPSパッケージの実施に賛同。CRS参加国の追加税収は550億ユーロに達する見込み。100の国・地域が「税務上の自動的情報交換」(AEOI)への参加を表明。

9月 オーストリアのケルン首相が「スタバなどの多国籍企業の納税額は屋台より少ない」と批判

9月 デンマーク、パナマ文書の一部を購入。税逃れをした、数百人のデンマーク人についての脱税調査を行うとする。

16年 イタリア政府はアップルがアイルランドに利益を移して不当に法人税を逃れたとして、3億1800万ユーロ(約398億円)の追加課税をした。

2017年



北海道AALA大会

情勢報告 「当面する闘いと国際連帯の課題」


はじめに

第一次議案の討議の中でいろいろ意見が出たので、表現上の修正と若干の補足をした。今回の議案の特徴は題名の通り「当面する闘いと国際連帯の課題」であり、国内課題と連帯課題の関連に焦点を当てたところにある。

これまでは中東・中南米など、ときどきの話題に焦点を当てて情報を提供してきたが、今回はまず私たち自身の闘いを振り返り、それがどのような国際的意義を持つのかを考えてみた。そしてそれとの関連で世界の人々の闘いをとらえ直してみた。そのなかで闘いの目標の共通性、今日的な「連帯」の必要性を検討してみた。

いわば「足元からの連帯」を主要な柱とした課題提起型・行動提起型の文章となっている。これが「情勢討議」の環である。議論のなかで飜えってAALA連帯委員会の固有の役割が浮き彫りになればいいなと思っている。それが「連帯運動ルネッサンス」の土台になっていくのではないかと期待している。


1.反戦・平和構築のための闘争(核廃絶の課題をふくむ)

A) 平和国家から戦争国家への変貌を許さない

この間、日本では「一人も殺さない、殺されない」という平和国家の理念を守る闘争が大きな盛り上がりを見せた。戦後の70年間、日本国民は平和憲法を守り抜き、非戦を貫いてきた。それは「国際社会において名誉ある地位」(憲法前文)を守るという国際的な意味を持つ闘いでもあった。

戦争国家づくりを阻止するためには、憲法9条を守る、戦争法を廃棄するという闘いに加えて、戦争予算の拡大を許さない、武器輸出を許さない、軍学共同を許さないなど具体的な分野の取り組みも必要だ。これらについて世界の現状を学び広げることも大事な課題だ。

B) 平和地帯、「新しい北東アジア」の構想を推進する

日本AALAでは「北東アジア平和協力構想」への賛同署名を行い、大きな成果を上げた。

この「平和構想」は対話の中で諸問題(北朝鮮、尖閣・南沙諸島など)を解決していこうという姿勢であり、ASEAN(東南アジア諸国連合)とCELAC(中南米・カリブ共同体)の経験に学んだものである。またそれは「平和5原則」(1954年)や「バンドン平和10原則」(1955年)など、国際政治の重要な民主的原則を踏まえたものでもある。

引き続き署名活動を推進するとともに、「新しい北東アジア」の構想をさまざまな方法で広げていくことが大事な課題だ。

16年7月、常設仲裁裁判所は、南シナ海問題での中国の主張を、国際法上「根拠がない」と退け、紛争の平和的解決を促す裁定を下した。この裁定を受け、9月のASEAN首脳会談は「法的および外交プロセスの全面尊重」による平和的解決を確認した。これは尖閣問題を考える上でも貴重な教訓である。「法の支配」を貫くためにも裁定の意義を広げていく必要がある。

16年10月、CELACは平和のイニシアチブを発揮し、コロンビア内戦を終わらせた。15年7月に米国とキューバが国交を回復したが、CELACは一貫してキューバ封鎖政策を批判し、国交回復を支援してきた。これらを通じて、ラテンアメリカは「アメリカの裏庭」から脱却しつつある。日米同盟のもとに従属させられている日本が学ぶべき点は多い。

いま、中南米諸国は国際不況のもとで経済不安が広がっており、親米政策への回帰の動きも見られるが、それは決して長続きするものではない。

C) 核禁条約の締結交渉の開始をうながした連帯

16年12月、国連総会で「核兵器禁止条約の締結交渉を開始する決議」が採択された。核兵器禁止条約が締結されれば、核兵器は「違法化」されることになる。世界は新しい段階に入る。核保有国は、法的拘束は受けなくても政治的・道義的拘束を受けることになる。

決議の採択に至ったのは、一つは、圧倒的多数の途上国、先進国の一部を含めた諸政府の共同であり、いま一つは、「核兵器のない世界」を求める世界の反核平和運動…市民社会の運動である。

核廃絶運動こそは国際連帯活動の典型である。世界を動かす二つの流れが連帯したことで決議が成立した、という事実を深く噛みしめる必要がある。

D) 「平和の秩序」を取り戻すための4つの緊急課題

9.11事件とリーマンショックを引き金に、世界の平和の秩序が脅かされている。平和と安定を実現するために、以下の4点が緊急にもとめられている。この方向で国内外の人々と対話を開始し、進める必要がある。

1.国際テロ根絶: このために、①国際的な機構、国際法などを用いて“法による裁き”をくだすことを基本にすえる。②貧困、無知、格差などテロが生まれる根源を除去する。③異なる諸文明間の対話と共存
2.貧困の削減: 「2030年までに極貧や飢餓を根絶」する(15年国連首脳会議)ために、途上国への支援を強める。
3.難民支援: 世界の難民・国内避難民は6530万人に達している。日本をふくむ先進国は積極的にこれを受け入れるべきだ。
4.人道的危機への対応: 国連PKOは変質している。武力を用いる「住民保護」ではなく、非軍事の人道支援を主任務とするべきだ。

より根本的には、国際的な富裕層の横暴を抑え、大小の覇権主義の芽を摘み取り、極右・反動勢力の台頭と闘い、人々の人権を擁護することがもとめられていることは言うまでもない。

2.反格差・反貧困・経済民主主義を目指す闘争

A) 格差問題は世界で深刻化している

格差の問題は、世界的には80年代はじめからの新自由主義的な経済政策(ネオリベラリズム)がもたらした現象である。日本では97年の消費税・金融危機以降顕在化し現在に至っている。

「格差問題」は、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大という3つの状況の複合である。さらに「板子一枚下は地獄」という不安感が社会的緊張(ゆとりのなさ)を招いている。

これは社会と経済の持続可能な発展にとって重大な障害となっており、AALAとしてもこの問題に国際的視点から取り組むことが必要である。

B) 欧米の社会変革の動きとの響き合い

今日、欧米では深刻な経済危機のもとで、移民排斥を主張する右翼排外主義の潮流の台頭という事態も起こっている。イギリスのEU離脱は「EUの崩壊」として大々的に報道された。しかし、あまり報道されないが、格差と貧困の拡大に反対する幅広い市民運動もそれ以上の勢いで発展していることを見逃してはならない。

最近の動きを見てみよう。

米国では、バーニー・サンダース上院議員が、大統領選挙の民主党予備選で大健闘した。サンダースは「人口の1%の最富裕層のための政治ではなく、99%のための政治」を主張し、青年層の大きな支持を集めた。このスローガンは5年前に「ウォール街占拠運動」を展開した若者たちの主張と同じものである。

米国におけるもう一つの重要な前進は、最低賃金引き上げを求める闘いである。サービス産業を主体とする不安定就業者は日本と同じように過酷な労働に追い込まれてきた。国民の多くに支持されたこの闘いで、昨年、ニューヨーク州とカリフォルニア州では「時給15ドル」が実現した。

2015年のギリシャ、ポルトガル、スペインの総選挙では、「反緊縮」をかかげる市民運動・政党が相次いで勝利・躍進し、ギリシャとポルトガルでは新政権樹立につながった。

イギリスでは2015年9月、労働党の党首選挙が行われ、長年「戦争阻止連合」の全国議長を務めたベテラン闘士ジェレミー・コービンが党首に選出された。躍進の基盤は米国のサンダース旋風と共通しており、緊縮政策、失業、格差と貧困の拡大などへの抗議の声が結集されたもの。青年層が積極的に政治参加しコービン勝利の立役者となった。

これらは、いま日本で発展しつつある野党と市民の共闘と響きあうものとなっている。欧米の経験を学び我々の力としていくことがもとめられている。

C) 格差問題是正のために何をなすべきか

深刻な格差をもたらした新自由主義政策は、日本では「構造改革」として進められた。したがって「構造改革」の根本的な見直しが必要であるが、当面必要な施策は以下のようにまとめられるだろう。

1.税制改革: 税制を改革し、所得再配分をすすめる。「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」の原則。①間接税から直接税へのシフト、②大企業優遇税制の抑制、③租税回避を許さない、④世界的な「法人税引き下げ競争」の見直し。
2.財政改革: 積極的な公的社会支出(社会保障、教育・研究、子育て)で格差と貧困を是正する。
3.働き方改革: ①労働規制の強化、②非正規から正規へ、「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を打ち立てる。③大幅賃上げと最賃引き上げなどによりワーキングプアをなくす。

これらの方向は世界の人々とも共通するものであろう。「強固な分厚い中間層」を擁する「格差なき社会」に向けて何が求められるのか、お互い知恵を出し合う対話を進めることが必要だ。

D) 貿易と投資のルール作り

ネオリベラリズムがおしつけたルールではなく、民主的な相互促進的な貿易と投資のルールを作り上げていくことは、

いま問われているのは、「自由貿易か、保護主義か」ではない。

「自由貿易」の名で、多国籍企業の利潤を最大化するためのルールをつくるのか、人々の暮らしを向上させる相互促進的な貿易と投資のルールをつくるのか、という二つの道の選択である。

TPPが破産したいま、それに代わる包括的な貿易と投資のルールを打ち立てることは、これまでにまして重要な課題となっている。とくに途上国との経済関係を考える上での原則を共有する努力がもとめられるであろう。

なお貿易・投資問題で国際的協力を深めるためには、先進国・途上国の双方ともにILO(国際労働機構)を一層重視する必要があることを付け加えておきたい。

3.原発ゼロの世界を日本から

フクシマは日本の体験であるが、世界の体験でもある。

2年近い「稼働原発ゼロ」の体験を通じて、日本社会は原発なしでもやっていけることが国民的認識となった。 この体験はおおいに世界に向かって普及する必要がある。

処理方法のない「核のゴミ」という点からも、原発再稼働路線の行き詰まりは明瞭である。さらに、原発というのは「自主・民主・公開」の原子力三原則どころか、本質的に何重もの軍事機密に守られた暗闇の軍事技術であることを踏まえておく必要がある(東芝事件)。

4.沖縄基地問題は世界の反基地闘争の焦点

今沖縄でやられていることは、沖縄海兵隊基地を世界への「殴り込み」の一大拠点として抜本的に強化・固定化することである。さらに本土でも出撃基地化が進んでいる。

日本は世界最強の「米軍基地国家」となりつつある。これは日本よりも世界にとっての問題である。

反基地闘争はアメリカの軍事支配との闘争の中でも特殊な鋭さを持つ闘いである。一般的には米軍の軍事基地は縮小再編の傾向にある。その中で沖縄だけが突出している意味を見つめていく必要がある。

さらに選挙で明白に示された民意の無視、度重なる制度的手続きの蹂躙という点で、一国の立憲制度に対する最大の脅威ともなっている。

これらの脅威を世界の人々と共有していく必要がある。これは日本AALAの固有の任務であろう。 

5.立憲主義と民主主義を守る闘争(人権尊重の闘い)

A) 立憲主義(法治思想)への攻撃

今日の世界において一つの著しい傾向がある。それはトランプのツィッター政治に示されているように、立憲主義の思想と基本的人権の原則に対する甚だしい侵害である。

日本における憲法改正の動きはまず何よりも「戦争をする国」作りを目標としているが、同時に「緊急事態条項」など立憲主義の無視をもふくんでいる。

それは憲法を改正するだけではなく、「憲法を憲法でなくしてしまう」攻撃となっている。立憲主義と法治思想を擁護する声を世界中で上げなければならない。

B) 憲法で規定された人権

近代国家の憲法ではさまざまな人権が保証されている。さらにそれは「世界人権宣言」としても定式化されている。

基本的人権の柱は、①個人の尊厳とその尊重、②思想及び良心・表現・学問の自由などの自由権、③法の下の平等・両性の平等などの平等権、④生活・教育・勤労などの社会的生存権、④「人身の自由」と公正な手続き、などから構成される。

なおこれらはの人権枠組みは、国際的な議論を通じてさらに豊かなものとする努力が必要であろう。

また人類共通の普遍的権利を掘り崩そうとする動きは、諸国民が一致して阻止しなければならない。

6.ファシズム・反動思想との闘い

A) 反動思想の諸形態との闘い

反動思想は往々にして「復古思想」として登場する。それは必ず「排外思想」を伴う。安倍首相の「美しい日本」も、トランプがメインスローガンに掲げた"Make America Great Again"も同様である。

安倍政権の「戦争する国」への暴走は、過去の侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行の政治と一体のものである。

それは近隣諸国との関係を著しく悪化させる一方、日本の右翼勢力や排外主義勢力を勢いづかせている。

B) 政治にもとめられるもの

これらの流れを断つためには、政治が断固たる立場に立つことが必要である。さらに司法が法的枠組みを厳正に守る必要がある。決定的に重要なのは国民が声を上げ、その力で彼らを孤立に追い込むことである。

同時に「歴史の偽造」に対し徹底的な批判をくわえ、歴史の真実を明らかにする努力がもとめられる。

そのために諸国の進歩勢力とも共同し、歴史の真相を掘り起こし、事実をつき合わせるなどの作業が必要となっている。

7.リベラル・ウィングの形成をめぐる試み

A) 市民と野党の共闘が始まった

アメリカのサンダース現象など、世界の各国で無党派市民の立ち上がりが見られる。

これは一面ではかつて統一戦線を形成した労働組合・社会党・共産党という「既存組織」の衰退の結果であるが、一面では第二次大戦後に世界各国に形成されてきた分厚いリベラル無党派層の活性化でもある。

日本では新しい市民運動による「市民革命」的な動きが沸き起こり、それに背中を押されて国会内外で野党間の共闘が発展し、さらに選挙共闘にまで進んだ。

これを従来型の「統一戦線」という呼称で呼ぶべきかは、検討の余地がある。ここでは「リベラル・ウィングの形成」と呼んでおく。

B) リベラル・ウィング形成のための課題

「リベラル・ウィングの形成」のためには、3つの基本姿勢がもとめられる。

① 「本気の共闘」: 互いに違いを認め合い、互いを信頼し、敬意をもち、心一つにたたかうことの重要性。それは「リスペクト」という言葉に示される。

② 各組織の独自活動の強化: 共闘の一致点をともにしつつも、それ以外ではおおいに独自性を発揮すること、「金太郎アメ」にならないことが、共闘を尻すぼみにさせない保障だ。

③ それぞれの組織が、組織内外の緊張関係を忌避することなく、不断に自己改革をすすめ、唯我独尊になることなく成長していく課題が欠かせない。

これらは日本での「共闘」実践から導き出された教訓であるが、各国でのリベラル・ウィングの形成は、エスニックな要素や宗教的要素などはるかに複雑であり、そこにはさまざまな道筋がある。旧来型「統一戦線」の枠組みにとらわれることなく、事実に即して検討を加え、共通のものを汲み出していかなければならない。

1.反戦・平和構築のための闘争(核廃絶の課題をふくむ)

A) 平和国家から戦争国家への変貌を許さない

日本では「一人も殺さない、殺されない」という平和国家の理念を守る闘争が大きな盛り上がりを見せた。それは「国際社会の中で名誉ある地位」を守るという国際的な意味を持つ闘いでもあった。

戦争国家づくりを阻止するためには、戦争予算の拡大を許さない、武器輸出を許さない、軍学共同を許さないなど具体的な個別の取り組みも必要だ。

B) 平和地帯の構想を推進する

日本AALAでは「北東アジア平和協力構想」への賛同署名を行い、大きな成果を上げた。

これは対話の中で諸問題(北朝鮮、尖閣・南沙諸島など)を解決していこうという姿勢であり、ASEAN(東南アジア諸国連合)とCELAC(中南米・カリブ共同体)の経験に学んだものである。

またそれは「平和5原則」(1954年)や「バンドン平和10原則」(1955年)など、国際政治の重要な民主的原則を踏まえたものでもある。

16年7月、常設仲裁裁判所は、南シナ海問題での中国の主張を、国際法上「根拠がない」と退け、紛争の平和的解決を促す裁定を下した。

この裁定を受け、9月のASEAN首脳会談は「法的および外交プロセスの全面尊重」による平和的解決を確認した。

16年10月、CELACは平和のイニシアチブを発揮し、コロンビア内戦を終わらせた。15年7月に米国とキューバが国交を回復したが、CELACは一貫してキューバ封鎖政策を批判し、国交回復を支援してきた。

C) 核禁条約の締結交渉の開始をうながした連帯

16年12月、国連総会で「核兵器禁止条約の締結交渉を開始する決議」が採択された。核兵器禁止条約が締結されれば、核兵器は「違法化」されることになる。

世界は新しい段階に入る。核保有国は、法的拘束は受けなくても政治的・道義的拘束を受けることになる。

決議の採択に至ったのは、一つは、圧倒的多数の途上国、先進国の一部を含めた諸政府の共同であり、いま一つは、「核兵器のない世界」を求める世界の反核平和運動…市民社会の運動である。

この二つが連帯したことで決議が成立したという事実を深く噛みしめる必要がある。

D) 世界平和実現へ向けた努力

党大会は4項目の提案を行っている。なお共産党の提案には5項目目として環境問題がふくまれているが、これは別項で扱うことにする。この提案の方向で世界の人々と対話を進める。

1.国際テロ根絶: このために、①国際的な機構、国際法などを用いて“法による裁き”をくだすことを基本にすえる。②貧困、無知、格差などテロが生まれる根源を除去する。③異なる諸文明間の対話と共存
2.貧困の削減: 「2030年までに極貧や飢餓を根絶」する(15年国連首脳会議)ために、途上国への支援を強める。
3.難民支援: 世界の難民・国内避難民は6530万人に達している。日本をふくむ先進国は積極的にこれを受け入れるべきだ。
4.人道的危機への対応: 国連PKOは変質している。武力を用いる「住民保護」ではなく、非軍事の人道支援を主任務とするべきだ。

2.反格差・反貧困・経済民主主義を目指す闘争

この節は相当幅広い課題をあつかうため、多くの項に分かれている。第(1)節はアベノミクスの総括なので省略する。

A) 格差問題の深刻化した背景

格差の問題は、90年代後半以降(世界的には80年代はじめから)の新自由主義的な経済政策がもたらした現象である。

それは、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大という3つの状況の複合である。さらに「板子一枚下は地獄」という状況が社会不安を招いている。

社会と経済の持続可能な発展にとって、この問題に真正面から取り組むことが必要である。

B) 欧米の社会変革の動きとの響き合い

今日、欧米では深刻な経済危機のもとで、移民排斥を主張する右翼排外主義の潮流の台頭という事態も起こっている。

同時に、格差と貧困の拡大に反対する幅広い市民運動が発展している。

2015年のギリシャ、ポルトガル、スペインの総選挙では、緊縮政策の転換を求める市民運動と連携した政党が相次いで勝利・躍進し、ギリシャとポルトガルでは新政権樹立につながった。

イギリスでは2015年9月、労働党の党首選挙で、「戦争阻止連合」のジェレミー・コービン全国議長が党首に選出された。緊縮政策、失業、格差と貧困の拡大などに抗議する青年層がコービン勝利の立役者となった。

米国では、「人口の1%の最富裕層のための政治ではなく、99%のための政治」を主張するバーニー・サンダース上院議員が、大統領選挙の民主党予備選で、青年層の大きな支持を集め、大健闘した。

いま一つは「時給15ドル」への最低賃金引き上げを求める運動である。昨年、ニューヨーク州とカリフォルニア州で「時給15ドル」が実現するなど大きな成果を勝ち取った。

これらは、いま日本で発展しつつある野党と市民の共闘と響きあうものとなっている。

C) 格差問題是正のために

共産党は3つの課題を提起している。この提案の方向で世界の人々と対話を進める。なお共産党の提案には4つ目の課題として産業構造の改革が含まれるが、日本の特殊事情がふくまれるため省略する。

1.税制改革: 税制を改革し、所得再配分をすすめる。「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」の原則。①間接税から直接税へのシフト、②大企業優遇税制の抑制、③租税回避を許さない、④世界的な「法人税引き下げ競争」の見直し。
2.財政改革: 積極的な公的社会支出(社会保障、教育・研究、子育て)で格差と貧困を是正する。
3.働き方改革: ①労働規制の強化、②非正規から正規へ、「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を打ち立てる。③大幅賃上げと最賃引き上げなどによりワーキングプアをなくす。

D) 貿易と投資のルール作り

ネオリベラリズムによるルール作りではなく、民主的な相互促進的な貿易と投資のルールを作り上げていくことは、重要な課題である。

今回の大会決議では以下のように記載されている。

いま問われているのは、「自由貿易か、保護主義か」ではない。「自由貿易」の名で、多国籍企業の利潤を最大化するためのルールをつくるのか、各国国民の暮らし、経済主権を互いに尊重する公正・平等な貿易と投資のルールをつくるのかである。

しかし残念ながら具体的内容には触れられておらず、宿題として残されている。

なお貿易・投資問題で国際的協力を深めるためには、ILO(国際労働機構)を一層重視する必要があることを付け加えておきたい。

3.原発ゼロの世界を(地球環境課題もふくむ

以下は日本の体験であるが、世界の体験でもある。

2年近い「稼働原発ゼロ」の体験を通じて、日本社会は原発なしでもやっていけることが国民的認識となった。

処理方法のない「核のゴミ」という点からも、原発再稼働路線の行き詰まりは明瞭である。

この体験はおおいに世界に向かって普及する必要がある。

一方、再生可能エネルギーの普及は国民の生命と安全を守り、エネルギー自給率を向上させ、経済の発展にとっても大きな効果がある。

このへんは、なかなか実証が難しい。リアルな数字に基づく検証と相互の交流が必要である。

大会決議には触れられていないが、原発というのは本質的に何重もの軍事機密に守られた軍事技術であることを踏まえておく必要がある。

4.沖縄基地問題は世界の反基地闘争の焦点

今沖縄でやられていることは、沖縄海兵隊基地を世界への「殴り込み」の一大拠点として抜本的に強化・固定化することである。さらに本土でも出撃基地化が進んでいる。

日本は世界最強の「基地国家」となりつつある。これは日本よりも世界にとっての問題である。

反基地闘争はアメリカの軍事支配との闘争の中でも特殊な鋭さを持つ闘いである。一般的には米軍の軍事基地は縮小再編の傾向にある。その中で沖縄だけが突出している意味を見つめていく必要がある。

さらに選挙を通じた民意の無視、度重なる制度的手続きの蹂躙という点で、一国の立憲制度に対する最大の脅威ともなっている。

これらの脅威を世界の人々と共有していく必要がある。これは日本AALAの固有の任務であろう。 

5.立憲主義と民主主義を守る闘争(人権尊重の闘い)

A) 立憲主義(法治思想)への攻撃

今日の世界において一つの著しい傾向がある。それは立憲主義の思想と基本的人権の原則に対する攻撃である。

日本における憲法改正の動きはまず何よりも「戦争をする国」作りを目標としているが、同時に「緊急事態条項」など立憲主義の無視をもふくんでいる。

それは憲法を改正するだけではなく、「憲法を憲法でなくしてしまう」攻撃となっている。

B) 憲法で規定された人権

近代国家の憲法ではさまざまな人権が保証されている。さらにそれは「世界人権宣言」としても定式化されている。

基本的人権の柱は、①個人の尊厳とその尊重、②思想及び良心・表現・学問の自由などの自由権、③法の下の平等・両性の平等などの平等権、④生活・教育・勤労などの社会的生存権、④「人身の自由」と公正な手続き、などから構成される。

なおこれらはの人権枠組みは、国際的な議論を通じてさらに豊かなものとする努力が必要であろう。

また人類共通の普遍的権利を掘り崩そうとする動きは、諸国民が一致して阻止しなければならない。

6.ファシズム・反動思想との闘い

A) 反動思想の諸形態との闘い

反動思想は往々にして「復古思想」として登場する。それは必ず「排外思想」を伴う。安倍首相の「美しい日本」も、トランプがメインスローガンに掲げた"Make America Great Again"も同様である。

安倍政権の「戦争する国」への暴走は、過去の侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行の政治と一体のものである。

それは近隣諸国との関係を著しく悪化させる一方、日本の右翼勢力や排外主義勢力を勢いづかせている。

B) 政治にもとめられるもの

これらの流れを断つためには、政治が断固たる立場に立つことが必要である。また国民の力で彼らを孤立に追い込むことが必要である。

同時に「歴史の偽造」に対し、徹底的な批判をくわえ、歴史の真実を明らかにする努力がもとめられる。

そのために諸国の進歩勢力とも共同し、歴史の真相を掘り起こし、事実をつき合わせるなどの作業が必要となっている。

7.リベラル・ウィングの形成をめぐる試み

A) 市民と野党の共闘が始まった

アメリカのサンダース現象など、世界の各国で無党派市民の立ち上がりが見られる。

これは一面ではかつて統一戦線を形成した労働組合・社会党・共産党という「既存組織」の衰退の結果であるが、一面では第二次大戦後に世界各国に形成されてきた分厚いリベラル無党派層の活性化でもある。

日本では新しい市民運動による「市民革命」的な動きが沸き起こり、それに背中を押されて、国会内外で野党間の共闘が発展し、さらに選挙共闘にまで進んだ。

これを従来型の「統一戦線」という呼称で呼ぶべきかは、検討の余地がある。ここでは「リベラル・ウィングの形成」と呼んでおく。

B) リベラル・ウィング形成のための課題

「リベラル・ウィングの形成」のためには、3つの基本姿勢がもとめられる。

① 「本気の共闘」: 互いに違いを認め合い、互いを信頼し、敬意をもち、心一つにたたかうことの重要性。それは「リスペクト」という言葉に示される。

② 各組織の独自活動の強化: 共闘の一致点をともにしつつも、それ以外ではおおいに独自性を発揮すること、「金太郎アメ」にならないことが、共闘を尻すぼみにさせない保障だ。

③ それぞれの組織が、組織内外の緊張関係を忌避することなく、不断に自己改革をすすめ、唯我独尊になることなく成長していく課題が欠かせない。

これらは日本での「共闘」実践から導き出された教訓であるが、各国でのリベラル・ウィングの形成にはさまざまな道筋がある。これらの道筋からは異なった教訓が得られるかもしれない。


↑このページのトップヘ