鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

カテゴリ: 10 国際政治/経済

AALA ニューズ No.74 (2021年3月10日)のスマホ版を発行しました。

AALAニューズ74号の内容は以下のとおりです。

★(ミャンマー)3月4日のエンジェルと “Everything will be OK”

★今、開かれる ベネズエラのあらたな未来への扉」=おおさかAALA3月号

★感情的な中国政策はダメだ、死活的利益を優先せよ=グラハム・アリソン

★中国との対決戦略の方が好ましい理由=日本政府当局者

★「AALAニューズ」編集会議の報告=鈴木 頌(編集責任者)


今回はワードから落としたので、改行のずれはありません。
ただし写真のブログへの転載は難しく、今回も挫折しました。
PDF版(正式版)は、日本AALAの AALA ニューズへ行ってください。

課税新時代3: グローバルな課税権力

1.いまいちど「合意課税」について

この号は「合意課税」そのものに焦点を当てている。だからこれまでの2号は、前書きに過ぎないとも言える。

しかしその割には合意課税(単一税)がいかなるものかについて、あまり説明されていない。何か唐突に各論に入っていってしまう。

一応、辞典の記載を紹介しておく(

Financial Dictionary)

①ある国がある法人に対して所得税をかけること。
②ここまでは普通の法人税だが、その際に、企業の全世界所得と該当法人の所得への各国の貢献度により、割当税額が定められる。
③その割当税率は多国間交渉にもとづいて国際的に定められる。
④これにより所得移転や租税回避による節税技法が阻止される。

2.合意課税実現のために必要なこと…情報確保

まずは企業活動に関する国別の情報を集約するという技術的困難。

もちろん企業はできているだろうが、国家は管理できていない。

これについては、2016年の「パナマ文書事件」のあと、相次いで立ち上げられたFATCA・CRSのシステムによってかなりオープンになった。

3.合意課税実現のために必要なこと…国際協調

もう一つの必要条件は国際的な徴税主体を形成することだ。これについては諸富さんが適切に表現されている。
国民国家を超える世界政府を生み出すのではありません。現行の国家徴税主権は維持されます。その上で多国籍企業の全体利益はケーキにナイフを入れるように切り分けられ、各国に配分されます。
このような21世紀型の新しい課税権力を、私は「ネットワーク型課税権力」と呼んでいます。

4.課税権力グローバル化の背景

これまでの話とかなりだぶるところがあるので省略。

5.日本では何が必要か

「消費税を上げなければ社会保障は確保できない」神話を打ち破らなければならない。

社会保障の原則は所得の再配分だが、消費税は所得の再配分ではなく逆進税である。

そうではない道があることを国民に知らせる運動が必要だ。

OECDのタイムスケジュールでは、今年半ばまでに合算課税と最低法人税率導入で最終合意に達することを目指している。

「夜明けは近い」のだ!

課税新時代2: 税逃れ

この号は内容多彩、ちょっととりとめがなくなっていて、見出しの付け方が難しい。

1.租税体系上、無形資産が重要に

これは新しい提起で、とても大事なところだと思う。

普通の資産は当然ながら形がある。地代(土地所有権)も、国家で保障される限り、現物としての価値を持つ。株や証券も時価相当の価値を持つ。

ところがいわゆる知財権、特許や著作権、商標権は、国家の枠を越えて価値を持つようになっている。

しかもこの資産は移動コストがゼロで、租税回避地への移転は容易である。

有形資産があればそれを無形化して海外子会社に集中させれば、法人税負担はほぼゼロとなる。


2.脱税分がそっくり富裕層に

税引後利益の増加は、配当の増額や株価の上昇を通じて株主の資産に反映される。

これまでの資本主義とは異なる株主資本主義が広がり、経済システムを歪めていく。

この歪曲が租税回避の動きを加速している。それは大企業の中でも、国内企業と多国籍企業との間に格差をもたらしている。

こうして一握りのグローバル企業と超富裕層による世界制覇が進行していく。


3.「租税位回避産業」

今や世界経済の一角に「租税回避産業」と呼ばれる産業分野が成長しつつある。

その中心を担うのがデロイト、アーンスト&ヤング、KPMG、プライス・ウォータハウス・クーパースという4大会計事務所である。

彼らは租税のがれの対策を立案し、提示し、支援している。

4つを合わせれば従業員は25万人に登るとされる。それだけの利益が上がっているということだ。


5.OECDの提案した「合算課税」方式

最近、OECDが新しい国際化税方式を提案し話題になっている。それが「合算課税方式」(Unitary Tax
)である。

OECDは無形資産を用いた多国籍企業の税逃れが深刻になったことを受け、国際税制の抜本改正を考えるようになってきた。

それは多国籍企業のグループ全体の利益をまず合算することである。要するに国際機関が多国籍企業めがけて投網をかける。

そして全体利益を切り分けて、各国に配分していくことにする。利益や隠れ利益の評価、無形資産、按分率などについてはこれからの話しだ。


OECDは正式名を経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development)という。もとはマーシャル・プラン受入国の連合で西欧諸国を中心としていた。現在は世界37カ国が加盟しているが、ヨーロッパの影響力が比較的強い。

25日付「赤旗」から、3回連続の「課税新時代」というインタビュー記事が始まった。
語り手は諸富徹さんという人で、兄弟経済の教授。

1回目の主見出しは「画期的な解決策浮上」というキャッチーなもの。

1.経済グローバル化に伴う税体系の激変

この間に経済のグローバル化が進んだ。その結果、20世紀を支えた「応能負担の原則」が消滅した。
そして租税回避策がシステム化された。

2.所得再分配機能の喪失

各国政府は所得税の最高税率と法人税率を引き下げることで、引き止めを狙った。

これが「租税競争」と言われるものである。

また各国政府は税収源として、租税回避しにくい消費税を上げ、社会保険料を引き上げた。

その結果、税制構造はますます逆進的で不平等になった。

税金の本来持つべき所得再分配機能は失われた。

3.税制変化と格差拡大

「グローバル化による格差拡大」の要因は、再分配後要因と前要因に分けられる。

後要因としては、税制が所得再分配機能を果たさなくなったことである。

前要因としては、株主資本主義の広がりがある。

企業内においては、株主への配当が優先されるようになり、買収対抗のため内部留保を積み増す結果、給与その他の割合が減少した。

その結果、企業外においては消費・需要が減退し、それに伴って中間層の没落がもたらされた。

4.国家機能の減退を止める

究極の問題は、企業が国境を超えて活動しているのに、国家は国境を超えられないというギャップにある。

国家の最大機能の一つである徴税機能が毀損されている。

これに対する対処法は「課税能力のグローバル化」、すなわち国際協力しかない。

諸国家の課税能力を結合させてネットワークを形成する必要がある。

これがOECDの国際課税ルール作りはこれを示している。

ということで記事は終わっていて、以下は次号でのお楽しみということになっている。


ただしこれについては、すでにこのブログでもあつかっている。 


日経新聞の「展望 2021年」というお正月特集で「中銀発のデジタル通貨」が取り上げられていた。
本来なら去年がデジタル通貨元年となっていたはずだが、コロナで延期となった感がある。
いまのところは「デジタル人民元」が先行しているが、今年中にはECBが試験運用を開始するはずだ。
しかしその目論見はかなり違ってきていて、もはやビットコインとの共通性はなく、まったく別の通貨だと考えたほうが良さそうだ。

中銀の考えるデジタル通貨は、手っ取り早くいえば中銀が胴元になった電子マネーだ。クレジットカードのように使えるが、支払いは即時に完了している。信用の積み重ねがなく、すべてがキャッシュフローとしてあつかわれることになる。

ただしこれは決済機能のみであり、これを使った信用取引の世界はこれから開拓されていくこととなる。

私たちとしては、これがドル支配体制に風穴を開けるようになるかということだが、それはむしろ逆向きになる可能性が高い。現在はクレジット会社や金融機関で行われている大小の決済取引が、これからは中銀の統制のもとに行われるようになる可能性がある。さらに各国中銀が国際的な金融ネットワークに紐付けられれば、それは唯一の金融大国である米国と米ドルの支配力を強固にするほかないからだ。

一面、各国中銀の支配力は、その範囲ではさらに強まり、国内信用取引のほぼ全てを我が手に掌握することになる。そして国民のプライバシーは徹底的に侵害され、AIの前に丸裸となる。

これを日経では「金融包摂」と読んでいる。

それを民間でやろうというのがフェースブックだったり、モルガン・チェースだったりする。発想は同じで、巨大マネーを担保とする疑似マネーの創造である。

これらとは別に、ピア・トゥ・ピアのウェブ型信用の積み上げで通貨構築を目指すビットコインの行方はどうなるのだろうか。
 

久しぶりに赤旗経済面の勉強

本日から山田博文さんの「経済の潮流」というのが始まった。


1.コロナ不況

20年度の世界経済成長率は、IMF試算で-4.4%となった。これは1930年代の世界大恐慌以来の落ち込みである。


2.深刻な雇用喪失

サービス産業がとりわけ深刻な打撃を受けたため、不況の影響がもろに雇用に及んでいることが特徴だ。

ILOの調べでは世界の労働者の8割が打撃を受け、5億人の雇用に相当する労働時間が失われた。


3.世界の製造業の川上で広がるリストラ

製造業ではサプライチェーンの切断により、サプライサイドの経営困難が深刻化。リストラが進んでいる。


4.各国の財政出動

コロナ開始後の各国の財政支出は総額12兆ドルに達する。

そしてリーマンショック以来の累積債務は、国際金融協会(IIF)によれば、総額277兆ドルに達した。これは経済規模の3倍に当たる。

公的資金は国民生活、民間経済の防衛に貢献するが、実体経済の発展にはつながらず、企業モラルの低下をもたらす。


5.各国中銀の金融緩和に着地点が見えず

金融緩和は満腹となり肥え太った富裕層の口にドルを押し込むようにして行われた。

しかも低金利によって、余剰資金が国債・公債に流れ込むことを阻止した。

これがリーマン・ショック以降10年にわたり続き、コロナ発生後さらに強化された。


6.株高がもたらしたとてつもない富

行き場所を失った資金は、そのほとんどが株式市場に流れ込んだ。

ダウ平均株価は史上最高となり3万ドルを越えた。株式の時価総額はGDPの2倍に達した。

米国の資産上位1%の金融資産は、全資産の半分を超えている。


これらの事実は、現在の経済・金融システムが社会にとってきわめて不合理なものとなっていることを示している。

これに代わるものを、我々は真剣に模索しなくてはならない。


なお、経済面左下の「こちら経済部」は、新春らしく流行り言葉が玉飾りのように連ねられている。
しかしこのスペースにこれだけ突っ込むのは無理。悪くいえば言葉が踊っていて地についていない。
おトソ気分はそろそろ終えて、議論の首根っこを押さえていこう。

山田さんの文章も、だいぶ順序を入れ替えている。
とにかく今後は、米大統領選を期に情勢がガラガラと動くことは間違いない。きのうの議事堂乱入を一昨日、誰が予想し得たであろうか?
経済学は諸パラメータでできているが、諸パラメータに重みづけを行い本質的なものを引き出していくのは歴史的な経験に基づいた叡智である。
筋の通ったわかりやすい実践的な分析が求められていると思う。

2020年 GAFA規制の動き

GAFAと一括するのが便利でついそうしてしまうのだが、一体それは何なのか。
赤旗では「情報技術(IT)巨大企業」と一括している。それはそうなのだが、この4社は、そのなかでもなぜ特別な意味を持っているのかがよくわからない。
たしかにITをプラットフォームにしているけど、アマゾンは通販業者だし、アップルは携帯販売だし。ITそのものを “売り” にしているのはグーグルだけではないか?
ITを前面に出して商売しているマイクロソフトやインテルがなくて、なぜフェイスブックが入るのか…
など、疑問は多々ある。

と言いつつ、今年に入ってからGAFAを対象にした規制の動きが表面化してきているのが気になる。
赤旗(経済四季報)によると下記の通り。

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この中で大きいのは米下院司法委員会が、「4社がそれぞれの分野で競争を阻害している」とする報告書を発表したことである。

これがもっとも包括的で、力のある動きである。これ以外は個別的な規制にとどまり、地域や権限も限定されている。

EUの欧州委員会は、はるかに具体的で現実的な規制案を作成しつつある。

それが12月15日に発表された巨大IT企業規制強化案だ。

これによると、市場競争をゆがめる行為に対し、全世界の売上高の最大10%の制裁金を課す、企業分割を命じるなどの施策を打ち出している。

ただしEUとGAFA、さらに米政府との力関係が現状のままでは、その有効性については疑問符がつく。


格差社会とコロナと民主主義

「回顧」記事が少しづゝ出揃ってきた。
間違いないのは、この10年間続いてきた格差社会と貧困化の進行が、もはや世界の屋台骨をギシギシときしませる程に深刻化してきたことだ。
①トランプ現象や欧州での極右の進出などの警鐘が、今後はコロナ禍を通じて止むことなく乱打されるようになるのではないか。
②「力の信仰」に対抗するための理性の力はどこに赴かなければならないのか。

このふたつの “党派を超えたラディカルな疑問” に対する答えを、我々は探し求めていかなければならない。

1.富裕層の不安

日経新聞の21日(月曜)の一面トップは、これから始まるバイデン政権下での米社会の深刻な問題を描き出した。

取り上げ方そのものは富裕層からの目線であり、「お気楽なものだ」との感想は免れない。しかし、その富裕層の間にすら、社会分断への不安感が広がっているという記述は印象的だ。

記事はまず伝統的なエスタブリッシュメントというものをバイデンらに置く。それは民主と共和を問わず、伝統的な富裕層に階級的基盤を置く20世紀型の支配層だ。

これに対しネオリベラリズムに乗って急成長した新興富裕層は、政治信条としてリバタリアニズム(やり放題自由主義)を打ち出した。

彼らは伝統的エスタブリッシュメントを右から攻撃した(例えばティーパーティー的手法)。それと同時に驚くほどの食欲で世界の富を貪り続けた。


2.コロナの分断社会への影響

しかしそれが伝統的エスタブリッシュメントの衰弱をもたらし、自らがもう一つのエスタブリッシュメントを構築せざるを得なくなった。

しかし彼らにはその能力もなく、そもそも世界を引き受けようという気がない。リバタリアニズムとはそもそも無政府主義なのだからだ。

「政府とか社会とか面倒なものはいらない」と考えてきた新富裕層は、いま社会システムが崩壊の危機に差し掛かったとき、突如として深刻な不安感と恐怖感に苛まされ始めた、というわけだ。

自らの守護神として祭り上げたトランプ政権が、デマとフェイクで暴走し始め、社会的ルールを弊履のごとく投げ捨て、4年間を通して暴走し続けた。

それを無数の中下層白人が盲目的に追従し、ヘイトと暴力を撒き散らす政治が当たり前のものとなって行った。


3.格差社会がもたらしたもの

日経新聞はこう書いている。

20世紀においては、ものの大量生産が社会の発展を支えた。労働者が中間層に成り上がり、平等化が進んだ。
21世紀においてはデータと知識が社会を牽引している。このシステムは中間層を育てず、勝者の「総取り」社会をもたらした。

これにより社会が相互不信を内包するようになり、勝者の社会と敗者の社会に分離し始めた。「大衆は特権階級に、畏怖ではなく憎悪を抱く」(トクヴィル)ようになった。

それは敗者の社会に反エリート主義と大衆迎合主義を横行させ、宗教・人種・世代などの断層を生み、政治を不安定にし、民主主義を危機に追い込む(マディソン)。

ということで、「民主主義の危機に至る社会過程が、格差社会が深刻化していく過程の政治的表現なのだ」という認識を示している。

だからどうしても、緊急に、富裕層の懐に直接手を突っ込むような改革に着手しなければならないのである。それは政治以外の手法では解決できない。政治だけが果たすことのできる役割である。


日経新聞の10月26日号トップは、かなり思い切ったオピニョン記事だ。

パクスなき世界、自由のパラドクス」という題で、連載らしいがその1回目。

書き出しを紹介する。

民主主義が衰えている。
約30年前ソ連は崩壊したが、自由と民主主義の旗手だった米国は、その座を自ら降りた。
かつて自由を希求した国々、例えばハンガリーの首相はこういう。
「民主主義は自由主義でなければならないという教義は崩れた」
発言の背景には民主主義への幻滅がある。いまもハンガリーの賃金水準はEU平均の3分の1、人口は民主化後に7%減った。

民主主義を揺らすのは低成長と富の集中だ。世界のGDP成長率は80年代に3%だったのが2%に減った。一方でトップ1%の所得は16%から21%に高まった。

スエーデンの調査機関によれば、世界の民主主義国は87で非民主主義は92で逆転した。

この後記事は続くが、最後は次のような言葉で結ばれる。
法の支配や言論の自由は…誰かが守ってくれるわけではない。未来を守るカギは私たち一人ひとりの手にある。


ということで、それなりに真面目なのだが、肝心のことはスルーしている。
「民主主義を揺らすのは低成長と富の集中」と書いたが、低成長は富の集中の結果だということが明らかにされない。つまり「不平等が経済を窒息させ、民主主義を危機に追い込んでいる」というアタリマエのことがスルーされている。
不平等は民主主義の責任ではない。不平等そのものが罪なのだ。そして資本主義の原罪なのだ。
不平等は富の独占を生じる。
法のもとでの平等は、経済的不平等が進めば進むほど、格差が拡大すればするほど、富の独占が進めば進むほど、毀損されていく。
格差は最初は相対的増大として現れるが、あるところから絶対的増大に転化する。富裕層が貪ることをやめない限り、世界に絶対的貧困、経済的貧困、社会的貧困、文化的貧困が現れる。
貧困状況の遷延と深刻化は、経済の起動力である欲望の減退をもたらす。それは市場の収縮をもたらし、さらなる生産の減退とGDPの減少をもたらす。それはさらに貨幣的富の一方的増大をもたらす。
不況下のバブルこそが資本主義の未来像である。
このサイクルをどこかで絶たなければならない。
それには個々人の社会的人権を最大の目標とした正義の政策体系、すなわち社会主義が必要なのだ。
サンダースの提唱したこの「新しい社会主義」は、いますでにアメリカの若者の心をとらえ始めている。それは資本主義を排除するのではなく、その上に拠って立つ新しい社会経済モデルとして受け入れられなければならない。
これはアタリマエのことなのだ。


デジタル通貨三原則

三原則というとアシモフのロボット三原則を思わせるが、実際はそれほど崇高なものではなく、デジタル人民元とフェースブックに挟み撃ちされた国際金融トラストが「対応の三本柱」をまとめたものに過ぎない。

10月09日、日経新聞より

日米欧の中銀7行+BISがデジタル通貨の発行に関する三原則を確認した。
デジタル通貨三原則

根底には中国のデジタル人民元発行への対応があるが、それだけではなく各国がデジタル通貨への対応を迫られている現状がある。

早い話がビットコインと人民元の挟み撃ちにあっているのであり、その双方が歴史の必然となっているのである。

ここまでがリード

合意書は「モーゼの十戎」のようなもので、あまり役に立つようなものではないが、それだけ安定性はある。

第一原則 CBDC(中銀発デジタル通貨)が、物価や金融システムを撹乱しないこと。

この項目は、危機にあたって各中銀が物価の安定を中心任務とすること、そして金融システムの安定をまもることを記したものだ。

例えば、デジタル通貨が普及している国では、資金移動が容易だから。銀行預金の引き出しが急激に進む。そうすると銀行の経営リスクは高まる。

さらに長期的には、扱いが手軽なデジタル通貨に資金が流れ、銀行預金が減少する可能性がある。それだと、預金を元に貸し出しを行うという銀行のビジネスモデルが崩壊する。

だから既存システムにこれらの問題を生じさせないような制度設計が必要になる。各国中銀は、まずこのような努力を行わなくてはならない。

第二原則 デジタル通貨が既存の決済システムと共存すること

充電式の機械が普及しても、電池の需要がなくならないように、現金に限りなく近いデジタル通貨でも、大規模災害時、遠隔地などでは現金との併用が避けられない。

第三原則 デジタル通貨が決済過程の効率性上昇やイノベーションをもたらすこと

決済は「交換」という複雑な過程の着地点を形成する。そのシステムのイノベーションは一夕一朝には実現しない。(例えば金融面でのドル決済システム)

そこでは国家間、国内諸分野での競争と協力が不可欠だ。

CBDCをめぐる国際的な動き

日銀、欧州中銀(ECB)など6中銀とBISは原則づくりのための協議を重ねてきた。

とくにこれまで距離をおいてきた米連銀(FRB)が途中参加したことで協議の実効性は飛躍的に高まった。

周知のごとく、これらはすべて中国への対抗意識がもたせたものである。

中国の築いたデジタル通貨の仕組みが、貿易相手の新興国にいち早く普及していけば、先進諸国は大きな貿易上の痛手を被る。それだけではなくドルを基軸とする世界金融システムに大きな穴が空くことになる。

その危機感が第二原則に表現されている。

しかし、それは既得権益層の問題意識であって、世界の将来がかかる主要問題は、むしろ国家と「通貨主権」の関係にある。

巨大化した情報産業がデジタル通貨の発行権を握ることによって、世界を支配するようなことはないだろうか。

藤崎一郎元駐米大使 「米中関係を打開するために」
(9月2日 朱健栄のセミナーでの発言)

米中の力の差は社会理念の差

いまの米中関係は 2 大大国とまでいわれる関係では全然ないのではないか。軍事的にも経済的にも、そして何よりも理念ということです。

経済だけは大きくなってきたが、その前提はそんなにしっかりしたものではない。
社会も、一党独裁ですべてを決めるという立憲的な脆弱性がまだ残っています。


トランプと習近平

トランプさんがあまりにも乱暴なので、習近平は一時期、自分が世界貿易のチャンピオンであると印象づけるのに成功した。それがたとえばダボスでの習近平主席のスピーチのように主張された。

しかし中国はコロナで間違いをしてしまった。武漢の感染が一段落した後、マスク外交で感謝を強要したり、いわゆる「戦狼」外交が強まった。

その印象があまりにも強かったから、イギリス、フランス、オーストラリア、カナダ、インドとの関係などすべて悪くしてしまった。

これが中国の現状だろうと思います。


米大統領選挙を見据えて

まず注目すべきなのが、8 月 6 日の王毅外相の新華社とのインタビューです。ここで王毅は対米 4 原則を打ち出した。対立回避、対話継続、デカップリングせず、ゼロサムゲーム(真剣勝負)はしないというものです。(デカップリングせずの意味は不明)

これに対応してバイデンと民主党は、だいぶトランプとは異なる政策を打ち出しています。

メディアを始め多くの識者(とくに日本国内)はこの点を読み違えています。バイデンの目指すのは強硬化ではなく原則化です。国益ではなく国際的なルールなのです

バイデンは対中で毅然とした態度を取るという立場を出しつつも、「自滅的で一方的な関税戦争はしない」ことを明らかにしています。

なぜなら、その戦略は中国の軍事姿勢を誇大化させ、その反映として米国の軍事肥大を招き、結局は米国の労働者をいためてしまうからです。


事態は中国の受け止めにかかっている

バイデンが勝利することを前提にすれば、アメリカは中国に「原則」をもとめてくる。

原則とは人権と民主主義です。彼らは最初の一年目に「民主サミット」をやるといっている。

そのときに中国がどういう対応をするのか、香港、WHO、台湾問題、ウイグル問題が注目される。あるいは南シナ海、東シナ海でもそうです。

しっかりやらないと、最初の一年目で相当イメージがかわるかもしれません。

その意味でこの前の王毅国務委員の新華社インタビューを大変関心をもってみています。
(いっぽうで、習近平総書記は今月3日に講話を行い、敵対勢力による「5つの企て」を決して承認しないとのべた。習近平は講話で被害者意識を強く押し出し、原理主義的な方向への傾倒を印象づけている)


王毅国務委員・外相の新華社インタビューは以下で閲覧できます。
http://jp.xinhuanet.com/2020-08/07/c_139271507.htm 

感想
誰かが、AALAニュースに転載したのを要約したものである。今後、転載にあたっては転載者の氏名と転載理由を記載していただきたいと思う。
とは言いつつ、なかなか面白い見解ではある。
ただ、立場上言及はできないだろうが、習近平の立場についても理解が必要だろうと思う。
習近平は中国共産党の維持をまっさきに考えるほどケチな男ではないと思う。ただ文革中に泥水も飲んできた人間として、「中間管理層の腐敗とそれを生み出す社会システムは我慢ができない」ということは分かる。そして、ここからが論理が屈曲するのだが、紅衛兵の造反に依拠するのはさらなる愚挙だということも理解する。
となれば、腐敗分子の粛清を思い切ってやるには軍部の力を借りるほかないということだ。
これは実は、多くの「民主政府」がたどる道でもある。民衆の力によって政権についた政府が、その地位を守るために軍部と手を結び、軍の力で強引に困難を乗り切っていくという例は枚挙に暇ない。
棺を覆って初めてその真価が問われることになるのかもしれない。
ただ軍部(人民解放軍)がはしゃぎすぎていることは間違いないので、その動きには厳しい目を注がなければならない。さらに周恩来ー楊潔篪ー王毅の外務担当者の動向にも注意を向け続けなければならないであろう。

「経済制裁」の歴史 年表
杉田弘毅 「アメリカの経済制裁」(岩波新書)より作成

経済制裁: 外交・安全保障上の目的を実現するために他国に課す経済的な強制手段。軍事力を使わない戦争。(杉田氏による定義)

年表と言っても全部を記入するのは、多すぎて不可能。

49 対共産圏輸出統制委員会(ココム)による東側への軍事戦略物資の禁輸措置が発効。

50 米国、朝鮮戦争の敵国となった中国に敵国通商法(TWEA)を適用。通称の禁止を命ずる。違反すれば資産凍結、国内での活動禁止、


79 ソ連のアフガン侵攻。米国など有志連合による制裁。

79 テヘランの米大使館占拠事件。米国は単独制裁で兵器輸出の禁止、金融サービスの停止、在米資産の凍結に踏み切る。

84 ヒズボラがレバノンの海兵隊兵舎に特攻攻撃。米国はイラン制裁を復活。

85 アパルトヘイトを続ける南ア政府に対し、国連安保理による制裁。


89 天安門事件。G7が対中制裁で合意。経済的には武器の禁輸、世銀融資の停止を課す。

90 イラクがクエートを占拠。米国は有志連合を組織しイラクを排除。

92 キューバ民主主義法が成立。米企業だけでなく外国の子会社も貿易を禁止。

96 イラン・リビア制裁法。国外企業もふくめ油田開発を禁止。後にリビアの制裁は解除される。

01 アルカイダによる世界貿易センター爆破。このあと、愛国者法が成立。資産凍結、外為取引の禁止、送金業務の禁止を柱とする。財務省の金融制裁が主流となる。

02 国際銀行間通信協会(SWIFT)が、アルカイダのテロを受け、関連する通信情報の提供に踏み切る。

05 マカオのデルタ・アジア銀行(BDA)、北朝鮮の資金保管先だとして米財務省が「主要懸念先」に指定。BDAは直ちにすべての北朝鮮関連講座を停止。

10 包括的イラン制裁法。これまでの制裁法に金融制裁が追加される。

14 ウクライナ自由支援法。ロシアのエネルギー、国防部門に制裁。

16 IS、国際金融協調により石油売却益の現金化が困難となり、急速に衰退。

16 北朝鮮制裁強化法。金融制裁で第三国をふくめて制裁強化。

18 19年度国防権限法。中国の先端5社の政府調達禁止。

NHKの「ニュースの焦点」みたいな番組に佐橋亮さんという方が出られて、なかなか明快な分析をされていた。
文章を探したところ、“nippon.com”というサイトに佐橋さんと川島さんという二人の対談が載っているのを見つけた。
ともに東大の先生で、佐橋さんは米国から、川島さんは中国側から米中問題を研究されているようだ。

ポストコロナの世界 米中対立激化の行方を読む

1.「折り合う余地」がない関係に

米中関係は「大きな転機」にある。

17年末に国家安全保障戦略が出て「中国との競争」が打ち出された。18年3月には中国に対する関税の付与が始まった。

そして決定的な方針転換となったのが、8月に出来たいわゆる「マケイン法」だ。これにより輸出管理・投資規制の枠組みが出来た。

10月には、ペンス副大統領の「対中強硬論」演説があった。

この17年から18年にかけての流れは「米国の覇権維持」という戦略目標に乗った政策化だということができる。

それは19年も続いていくのだが、20年3月にそれは一つの画期を迎える。米中対立はイデオロギー的なものにまで深化した。

経済、安保、技術競争などの政策対決に覆いかぶさるように、イデオロギー対立が対中政策を支配するようになった。

この動きの中で、トランプだけではなく議会右派の動きが無視できず、民主党議員の一部をも巻き込むものになっている。


2.覇権維持戦略はそのまま、イデオロギー対立で補強する

貿易摩擦の問題では両国は「取り引き」できる余地がある。貿易協議で第1段階の合意が出来上ったのもこのためだ。

イデオロギー対立は覇権維持戦略に取って代わるのではない。

それは戦略的競争相手(strategic competitor)との闘いをさらにアピールできる素地を形成している。

政治的な推進力というのはワシントンを越えてはそうそう進まない。戦略的な話にイデオロギー対立をうまく噛ませると、国家的な行動へと進んでいく。

米国が「共産党たたき」を前面に出してきたので、中国としては「折り合う余地」が全くなくなってしまった。これは冷戦と同じ構造だ。

ただし「新冷戦」という言葉は、定義があいまいなところがある。このため、米国ではこの言葉を使わない専門家も多い。


3.逃げ場が狭まった中国

19年までの段階では、中国は「新型大国関係」を掲げていた。米国との間に「交渉の余地はある」と考えていたと思う。

ところが20年になって、米国があまりに強硬になって逃げ道がなくなった。

4月中旬からは公的な場で堂々と米国を批判するようになった。言葉だけではなく、東シナ海、南シナ海における公船の行動なども変わってきた。

問題がこじれたのは中国側にも責任がある。

これまで、中国は米中間の力関係を変えようとじわじわと手を打ってきた。

17年には「2049年には米国に追いつく」と宣言し、海底ケーブルやGPS衛星システムなどの開発にも成功している。

ただそれは「30年計画」であり、露骨なものでも性急なものでもなかった。

今回の対決姿勢の強化は、「米国の強硬姿勢、本格的な攻勢に対応する、中国の弱点をふさぐための防衛的な措置」ととらえることもできる。

いまの中国は経済的に非常に苦しい。国内の経済や就業対策にお金を使わなければならず、対外活動に資金を流す余裕はない。「身を引き締めて、米国の攻勢に耐える」というのが本音だろう。

4.さらに攻勢を強める米国

中国の対抗姿勢の公然化に対し、米国はさらに攻撃のトーンを高めている。

5月にはトランプ大統領が「対中関係を完全に断ち切ることができる」と発言した。ポッティンジャー大統領補佐官は、中国人(華人圏を念頭に置いた)に「立ち上がれ」と呼びかける演説を行っている。

その中で新版マケイン法ともいうべき「中華人民共和国への戦略的アプローチ」という文書が発表され、これに基づくファーウェイ(華為技術)に対する追加措置も実施された。

トランプ政権は、対中対立をいわば政治運動化してきた。この流れがどこまで続くのかはよくわからない。


後半は、今後のバイデンや習近平の話も絡んで、ペナント争いの予想みたいなところがあるので省略する。両者のニュアンスの違いもかなり著名になってくる。
ただ二人は、トランプがもし勝利したとしても、これまでの延長線上で対立を強めるのはかなり厳しいとみている。
貿易戦争が復活すれば、米国の同盟国の間でも、トランプ流の対中アプローチに付いていくことが難しい国が多くでてくるであろう。
ちょっと川島さんの提起がフォーマルなので議論がかみ合わないところがある。できれば佐橋さんの所論をもう少しじっくりと聞きたい感じがする。



口を酸っぱくしていうが今日の世界における主要な対立点は、すべての人々の命を守ろうとする勢力、そのために団結して行動しようとする人々か、産業のために危険を無視する人々、資源をひたすら退蔵し致富にすべての情熱を捧げる富裕層とのの対立である。
選挙勝利のために、病気への一致した取り組みを壊すことをなんとも思わない人も、その一味である。
米中対立が底流にないとは言わない。しかしいまことさらに対立を煽り、郵便ポストが赤いのまで人のせいにする人々は、政治の表舞台から一刻も早く立ち去るべきだ。

6月22日 日本経済新聞
中村亮「米軍トップ、辞任よぎった夜 『親トランプ』の苦悩」

がとても面白い。見てきたような話ではあるが…

6月1日、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、合衆国憲法修正第1条は「表現の自由」を盾に、デモ鎮圧のために米軍動員を求めるトランプ大統領に激しく抵抗した。

激論の末、ひとまず軍動員の回避に成功したが、警官隊がデモ隊を強制排除したあとに、ミリー議長は戦闘服姿でトランプに随行するハメになった。

ミリー

その日の夜、ミリー議長はメディアやネットで、自らの行動が「軍による政治介入」などと集中砲火を浴びるのを目のあたりにした。

批判者の中にはマティス前国防長官などの米軍OBもいた。ミリー議長は周辺に辞任の是非を相談するまでになった。

息をさせて
    ベネズエラ制作のポスター(We hope というのが良い)

話は10日後に飛ぶ。

6月11日、ミリー議長は国防大学の卒業生に向けた祝辞で、「私はあの場にいるべきではなかった」と述べた。

それはホワイトハウス前で軍服を着てトランプ氏に随行したことをさしている。

さらにミリー議長は「みなさんもこの誤りから学んでほしいと私は切に願っている」と言葉を続けた。

しかし、話はこれでおしまいだ。
辞任もしなければ、トランプと決別もしていない。トランプは慰留に入っている。
周辺情報によれば、ミリーはトランプ派の高級将校として軍に送り込まれたらしい。その結果、かなりの特進を経て現職についたようだ。
勘ぐれば、あんな写真がでかでかと出て、軍の反人権派のトップとして扱われたことに対するエクスキューズかとも取れる。
だから、問題はミリーの良心ではなく、統合参謀本部議長さえ一夜にして辞任間近に追い込むほどの民衆の圧力なのだ。
そしてコロナさへなければこれほどにはならなかったろうという、両者の社会心理学的な連結について思いを致すことだ。


6月16日付赤旗の経済面に興味深い記事が載った。
題名は端的に「コロナ禍」
コロナの影響を経済面から位置づけようと図った記事だが、あまりに対象が広く雲を掴むようなところがある。

記事は三人の記者の覆面座談会の形をとっているが、これは焦点が定め難いのを、3つの目に分散することによって、とりあえずカバーしておこうという意向の反映かもしれない。

率直に言って記事につけられた見出しや小見出しは適当とは思えないので、私の方でシャッフルしてグルーピングしたうえで、再度組み立ててみたい。

① マクロ経済の危機

各国際機関のマクロ見通しを列挙。

世銀は20年度世界経済成長をー5.2%と発表した。国別では米国-6、ユーロ圏-9,日本-6、新興+途上国は-2.5%とした。これは過去860年で最悪。

OECDも今年度見通しを発表。世界全体で-6%、第2波の如何によっては-7.6%と試算している。

② 先進国(米国)におけるコロナ禍

先進国におけるコロナ禍は次の3つだ。

第一に雇用の喪失だ。2千万人近くの雇用が失われた。しかも雇用の喪失は長期にわたると予想される。

第二に大量の貧困者の出現だ。これは失業に伴うものだ。低賃金労働者、女性、アフリカ系、ヒスパニック系に集中している。

第三に社会の亀裂の深まりだ。コロナ危機は社会のひずみを浮き彫りにしている。その象徴が白人警官の黒人殺害だ。

「この悲劇的事件は人種差別の痛みに光を再び当てた」(FRBパウエル議長)

③ 新興国・途上国におけるコロナ禍

もっとも激しく影響を受けるのは、次の4つのタイプの国だ。ほぼすべての途上国がそのいずれか、あるいはそのすべてに含まれる。

第一に、社会扶助体系の貧弱な国、ソーシャルネットの失われた都市である。

第二に、観光や仕送りが収入の多くを占める従属性の高い国だ。(観光と仕送りを一緒にするのはいかがか?)

第三に、特定輸出産品に依存し、その輸出産品が特定の品目に偏っているモノカルチャー国だ。

第四に、多国籍企業のグローバル・サプライチェーンに深く組み込まれている下請け国家だ。

④ 新興国・途上国の多重苦

新興国・途上国を苦しめるのはそれだけではない。

世界経済的には、今回のコロナ禍を通じてさらに3つの苦難が襲う。

第一に、一次産品全体が著しい価格下落に襲われる。特に産油国では原油価格の下落が著しい経済困難に襲われる。

第二に、先進国の資金引揚げにより、「投資」が対外債務として積み上がる。

第三に、国家財政では債務超過がもたらされ、格付けの低下と通貨の為替レート下落を招く。

その結果、新興国・途上国の経済が、通貨と資産価格の暴落により底抜けしてしまう。

⑤ 資本コントロールが重要

このように世界のコロナ禍の内容を見ていくと、いま最大の課題が見えてくる。

それは第一に、新興国・途上国に対し緊急支援を行うことである。UNCTADによれば、その額は2.5兆ドルに及ぶと試算されている。

4月のG20は最貧国の公的債務支払いを今年度末まで延期することで合意した。しかしこれで収まるわけではない。支払猶予ではなく債務帳消しに踏み込まなければことは収まらないであろう。

それは第二に、巨大資本の急速な資金引揚げを予防することである。

この津波のような引き潮は、巨大資本による資本の巨大な流れがルールを無視して行われた結果起こる。

それを防ぐためにもっとも必要な手立ては、国境を超えた巨大な資本の動きを、国際協調によりコントロールすることである。

UNCTADはさらに、「必要とされる場合には、資本流出を抑えるための対策」が必要となると踏み込んでいる。

第一の方針も、第二の方針もトランプは反対するだろうが、米国の国内を見ても国外を見ても、それ以外の選択はなくなっていくだろうと思う。

ただし、最後の記者Cの発言、
「コロナ危機は新自由主義の横行を反転させた。そして巨大資本の管理の必要性を浮上させた。これは時代の巨大の変化の現れだ」
というのは流石に言い過ぎではないかと思う。

米中新冷戦の本質

これが本質かどうかは知らないが、面白い分析だ。日経の6月1日付の寄稿記事。R.アームストロングという金融論説家によるもの。

1.米中関係の構図

まず私の米中関係の構図を示しておく。

国家としての米国対中国においては力の差は歴然としている。
リーマンショック以来、米国はドルを刷り続けた。物質的富の数十倍にのぼるドルは、ディスインフレのもとで、すべて富として現象している。そしてそのほとんどはアメリカの資本のもとにある。
中国は絶対に勝てない。だからこれはけんかではなく米国の一方的ないじめである。

ところが国家としての強大さを裏付ける、GAFAMなど成長産業は、その競争力の多くを中国での安定したサプライ網に依存している。

さらに製品の販路としても中国が最大の市場となっていく可能性がある。

したがって、米国はその経済的将来を中国に依存せざるを得ない。

代替国はないわけではない。しかしそれを実行するほどの体力がアメリカにあるとは思えない。

中国でウィンウィンの取引というのは、中国側がウィンウィンすること、つまり二度勝ちすることだという。

製品がハイテク化すればするほど、サプライ部門も高度化せざるを得ない。そして高度化したサプライ部門がいつまでその地位に甘んじているだろうか…?

ファーウェイ問題はそういう性格を内包している。これからも似たような問題は相次いで発生するだろう。

2.米中対立で米国は何を得るのだろう?

ここからアームストロングの所論に入っていく。

彼の提示するアメリカ側のオプションは以下のごとくである。

① 議会・政府はコロナ対応、WHO評価、中国企業の市場締め出しなどの派手なパフォーマンスを続ける。
② 香港に関してこれまで与えてきた特恵的な地位を断絶するとの脅し。具体的には「香港ドル」の否認。
③ 二正面作戦の強制。サプライチェーンを脱中国化する。ただし中国に販売するものについては「現地生産」を続ける。

これを見れば中国バッシングが不可能であることが明らかだ。「香港ドル」の否認はあるいは可能かもしれないが、サプライチェーンの脱中国化は共倒れの試みにしか過ぎない。(香港ドルの将来は正直のところ、私にはよくわからない)


3.中国に国際協調を迫るために

考えてみれば乱暴な話で、中国に国際協調を迫るために、国際協調のルールを無視した干渉を続け、他国へは干渉への協調を迫るというのは無茶だ。

しかし中国側に一部の非もないということではない。

以下の一文は目下私には正否を判断できない。

中国は自由貿易や企業の独立性、国際ルール、知的財産の尊重などで勝手な振る舞いを続けてきた。

ただ、まずはアメリカ自身が「勝手な振る舞い」とやめることが必要だ。ここに来て喧嘩両成敗論を持ち出されるのは、大いに迷惑だ。

2020年5月28日 ニューヨーク 発

ユニセフなどがによれば、新型コロナの影響により、今年末までに「貧困な子ども」が15%増加する。
「貧困な子ども」の総数は、年末までに6億7,200万人に達するだろう。そしてその約3分の2がサハラ以南のアフリカと南アジア(インド)に集中するだろう。

それとは別に、コロナを受けての「貧困な子ども」の増加率は、欧州が最大で44パーセント、ラテンアメリカでは22パーセントに達するだろう。

* 4月はじめにオックスファムが公表した報告書では、新型コロナ感染拡大により、絶対的貧困層が約5億人増えると報告されている。

世界的な経済危機により、2つの事柄が子どもたちに悪影響を及ぼす。
一つは各家庭の収入が減ることだ。これにより食料が得られなくなり、医療や教育の機会が減る。
もう一つは財政の縮小により会的サービスが低下し、ウイルス封じ込めが困難になることである。

ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアの談話
パンデミックは、世界中の家庭を前例のない社会経済危機に巻き込んだ。
家庭への経済的影響は、子どもたちから不可欠なサービスを奪っている。
今連携して行動しなければ、貧困世帯は何十年も前の生活に直面することになる。
*ユニセフの発表は散漫で、その数字は根拠が曖昧で、素直には信じがたい。しかしその旺盛な現地活動がもたらす深刻な危機感は共有すべきものである。

新興国の資金流出が止まらない

3日付の日経新聞によると、2020年に入ってからの100日で、新興国9カ国から1千億ドルが流出した。このスピードはリーマン・ショック時の4倍に相当する。

新興国経済破綻のメカニズム

メカニスムはこういうことだ。コロナで生産活動が低下し医療費が増大→財政収入の低下と財政支出の増加→通貨不安と為替急落→ドル債務の増加。

IMFによれば新興国の財政赤字は前年比1.8倍、GDP比で8.9%になると予想している。

ただし財政支出増の主因はコロナ対策にあるのだから、十分な手当てをすればその分は支出増になる。例えばマレーシアはGDPの18%相当をコロナ対策に出動すると政治決断した。

十分な対策を取ればその後の立ち直りも早いはずなので、この財政状況判断は半年なり1年を経て評価する必要がある。

それで9カ国の財政と債務を示したのが下図。

新興国


見てもわかるように各国がかなり異なる状況にあり、共通傾向を探るのは難しい。

通貨下落を主要な特徴とするのがブラジル、南ア、メキシコの三カ国だ。ただこれはこの100日間でこれだけ下落するだけの「のりしろ」があったとも言える。

トルコとチリは下落率は低いが対外債務はすでに十分積み上がっている。つまり本来は上位三カ国のさらに上位に位置すべき国なのだ。

右側のアジア四カ国についても同様の傾向が見て取れる。

目先の通貨下落率ではなく、債務残高で国力を判断しなくてはならないということがわかる。

結論

コロナショックによる経済収縮はすでに始まっている。

問題は、最後に新興国や貧困国に皺寄せされる病気と貧困の二重苦が、先進国にどう跳ね返ってくるかである。


ジョセフ・スティグリッツ 「大恐慌より困難だーコロナ・ショックの特殊性

1.未曾有x未曾有

アメリカのコロナ感染は未曾有だが、その前に所得格差の程度と労働者の窮状ぶりも未曾有で、災難は未曾有x未曾有になっている。
しかも社会保障制度が欠如しているので、まことに酷いことになっている。

2.コロナ危機は大恐慌よりも大変

大恐慌は深刻とはいえ単なる総需要不足だった。それにニューディールという脱出の道筋が存在した。

ニューディールは需要を創出して経済に刺激を与えるという戦略を設定した。そして実行にあたっての原則と具体策を提示した。

原則というのは財政赤字を過度に心配するなということ、そしてやるときには徹底してやれということだ。

ニューディールは基本的には成功したが、回復したわけではない。計画を徹底できなかったために、第2次大戦まで完全な回復を実現できなかった。

3.コロナ危機はどこが大変か

今回は、事情はもっと複雑だ。

景気の底が抜けて不況になったのではない。総需要が落ち込んで経済が回らなくなったのでもない。

コロナが街を支配し、恐怖を撒き散らし、仕事をできなくさせてしまったのが経済危機の原因だ。

たんに総需要を回復させるという話ではない。たとえ財政出動を存分に行ったとしても、それだけで解決する問題でもない。

4.必要なのは社会的保護だ

社会的支援も必要だし、財政出動も必要だし、景気刺激策も必要だ。

だが肝心なのは、財政出動にあたっての目と構えだ。

今さしあたって必要なのは、景気刺激策ではない。当面する問題が需要不足ではないからだ。むしろ需要過多と言ってもよい。

それ以上に不足しているのは安心と信用だ。だから財政出動の性格は、景気刺激ではなく困窮者への保護を主眼とすべきである。

それには総需要かさ上げに要するほどの資金は必要ない。全体のパイを大きくして、景気回復によるトリクルダウンの再開を待つのでは間に合わない。

必要なのは、罪もなく苦しんでいる人を救済するために再配分を強化することである。それが、結局は経済を回復させる近道となる。

新興国で金融危機の兆し

英「エコノミスト」誌から引用したものらしい。

今年に入ってから、ブラジル・レアル、メキシコ・ペソ、南アフリカ・ランドは対ドル価値が25%近く下落した。

世界の資金は新興国の株式と債券を売って安全資産にシフトしている。
この結果、新興国のあちこちで異常兆候が現れている。

新興国では、コロナにより貿易減少、天然資源価格下落、旅行客訪問中断などが同時に押し寄せている。

そのような中で新興国市場は金融危機と苦闘している。当面の輸入代金とドル建て債券も手当てできない状況だ。

「最後の貸し手」のIMFに支援を要請した国はすでに90カ国を超えた。これは加盟国の半数に当たる。
いまこそ、新興国のためにIMFが行動に出なければならない。

もう一つのドル供給機関 FRB

リーマンショックのとき金融危機からの脱却に大きな役割を果たしたFRBは、今回も一定の動きを示してきた。

最大の行動は通貨スワップだ。基軸通貨国をはじめ、韓国、ブラジル、メキシコ、シンガポールなどの一部新興国と協定を締結した。

締結国はFRBから自国通貨を担保に4千億ドルを借りた。

FRBの発表では、今後さらに、各国の中央銀行が保有する米国債を担保にドルを供給するという臨時の金融計画を明らかにした。

中国や日本は国債を多く保有しているので、これらの国ではより機動的な対応が可能となる。

新興国とFRB

だが新興国では、通貨スワップを結ぶほどの力もなく、米国債保有量も多くないからFRBのチェンネルなどは縁遠い話になる。

それらの国はIMFに頼るほかはないのだ。

しかし無い袖は振れない。IMFにはFRBのような打出の小槌はない。各国の拠出金に依拠する他ないのだ。

その中で打てる手はなんだろう。それは3つある。

第一に、IMF特別引き出し権(SDR)の限度を大幅に増やすことである。
SDRは、ドルという名はついていても中身のない、今どきの言葉で言えば仮想通貨である。拠出国の信任さえあれば、原理的には限度額はない。

第二に、SDRにより新興国へドル流動性を供給することである。
とくにFRBの支援対象にならない新興国にクレジットを与えることが重要である。

第三に、とりわけアフリカの最貧国にたいする救済策をまとめることである。
これらの国はどんな金融上のセーフティ・ネットワークにも該当せず、医療支援・経済支援活動のの死角地帯となっている。

14日からIMFの年次総会(テレビ)が開かれている。
ゲオルギエワ総裁は開会演説で、「いまわれわれは過去になかった危機に直面している。我々の行動が経済回復の速度と強度を決めるだろう」と決意を語った。

しかし今回の危機が長期化する場合にIMFが耐えられる十分な能力があるのか、疑問もあげられている。

*SDR 固定相場制の枠組みの中で国際準備資産として創設された。ブレトンウッズ体制が1973年に崩壊すると、SDRへの依存度は低下しました。
しかし流動性を供給し、外貨準備高を補完する上で一定の役割を持っています。例えば、世界金融危機の際には合計で1,826SDRIMF加盟国に配分されました。

コロナと貧困

Diamond On Line にイチロー・カワチさんのインタビューが掲載されている。河内さんはハーバード大学の社会疫学の教授である。

4月5日の発行なので、ある程度最新状況を踏まえていると思われる。


NYの死者が多いのは格差が大きいから

NYでは死亡者の多くが糖尿病や心臓病、ぜんそくといった基礎疾患を持っていた。

感染症のパンデミックは社会格差をあらわにする。このことは1918年のインフルエンザのパンデミックでも確認されている。

アメリカで感染が深刻な都市として、ニューヨークのほかにニューオーリンズも注目されている。どちらもジニ係数が高いことが共通している。

なぜ貧困と死亡率が相関するのか

貧困者はもとの健康状態が悪いだけでなく、他にもいろいろな弱さを抱えている。

まず、感染の可能性そのものが高い。サービス業や製造業で働く人は在宅勤務が出来ない。働き続けるためには、感染するリスクを取り続けるしかない。

社会保険の喪失

またロックダウンで一番失業者を生んでいるのが、貧困者の受け皿となっているサービス業だ。米国では失業は健康保険の喪失をも意味する。

無保険の人は国民の1割に達している。たとえばNYの人口が1千万とすれば、100万人は無保険ということになる。

医療のセーフティーネットはまったく整備されていないと言ってよい。

一方で米国の多くの家庭では、預金が400ドル(4万円)にも達しない。

つまり無保険で貯金もないという経済的に困難な人たちが、ぎりぎりまで病院に行くのを我慢し、病状を悪化させるという経過をとることになる。

これからはコロナの二次被害への対策

パンデミックの長期的な影響は経済的打撃だ。多くの人が失業し、貧困に陥り、貧しさが人々の健康を害していく。いわゆる災害弱者対策だ。

パンデミックへの備えが必要だということは、ビル・ゲイツを始め多くの学者が主張してきた。しかし、パンデミックと社会格差を結び付けて備える考えは普及してこなかった。

社会格差への対応という点では、健康保険制度や雇用制度といった根本的な部分についての政策議論が必要になる。

肩書きに惹かれて読んでみたが、さほどの中身ではない。下記の記事のほうが良い(ワシントンポストからの引用)
貧困ではなく格差が病気を生むという指摘は、すでにウィルキンソンの説得力のあるプレゼンがあるので、そちらを参照されたい。要するに格差の根っこには社会的分業があって、分業を基礎とする社会の仕組みを変更しなければならないという「資本論」の解説みたいなものです。

この記事は「基軸通貨 75年 ドルへの不安」という日経記事の紹介です。筆者は日経新聞国際部長の発田さんです。

大変要領よくまとめられていて、参考になります。しかしこの記事1発でわかるほどデジタル通貨は甘くありません。

少し話の順序を変えて、議論の流れが飲みやすくなるよう工夫してみました。いくつかの部分には補足的説明も折り込みました。

そのため原文よりかえって長くなってしまいました。ご容赦の程をお願いします。


問題意識 デジタル人民元はドルを揺るがすだろうか?

中国が発行するデジタル人民元が普及しつつある。
問題はこれがドルを基軸とする国際金融体制を揺るがすことになるか否かである。

それは2種類の議論を内包している。ドルの単一支配体制が人民元により破綻するのかという問題、もう一つはデジタル通貨が国債決済の主役になっていくのかという問題だ。

1.ブレトンウッズ体制とドル本位制

ブレトン・ウッズ協定以来75年間、ドルは世界の基軸通貨であり続けている。

貿易の半分はドル決済だ。各国の外貨準備、証券発行、新興国の対外債務の3分の2がドル建てだ。新興国の中には、普通にドルが国内流通している国も珍しくない。

もともとのドル支配体制は金本位制を背景としていた。フランスが60年代にドル覇権に挑んだことがある。しかし金の大幅流出にも関わらずドル覇権が揺らぐことはなかった。

73年に、ベトナム戦争と財政破綻によりブレトン・ウッズ体制は崩壊した。ドルは金の裏打ちをなくし、世の中は変動相場制の時代に移行した。

アメリカは双子の赤字を抱え困難に直面した。ドルの価値は大幅に下落した。

このとき「基軸通貨ドルを防衛せよ」という共通認識が形成された。実質的には通貨システムの押し付けであったが、形としては先進諸国の合意による通貨システムの再建であった

その後、ドル基軸体制はそのまま続いている。

理由は単純だ。米国に代わる強国が登場しなかったからだ。世界第二の経済大国にのし上がった日本も、総合力において到底かなうものではなかった。


2.中国もドル覇権から抜け出せない

だが21世紀に入って状況は大きく変わりつつある。中国という強力なライバルの登場だ。

いまや中国のGDPは購買力平価ベースでは米国を逆転している。このまま行けば、2030年には市場実勢ベースでも米国を抜くことになる。

とはいえ、中国もかつての日本同様にドル支配の軛のもとにある。

あらゆる通貨の中でドルは特権的地位にある。その特権はとてつもないものだ。

ドルが貿易の決済通貨である以上、各国はドルを持たなければならない。そのために、日本や中国は1兆ドルを超す米国債を保有している。

外国企業はドル調達や為替差損の調整にコストとをかけざるをえない。

一方、米国は経常収支が赤字でも世界から資金を集めることができる。米企業はドルに関する手当てをまったく必要としない。


3.通貨覇権と軍事覇権

米国以外の多くの国にとって、最大の脅威は通貨覇権が軍事覇権を支えていることだ。

イランはトランプ政権成立後に石油収入の8割が減った。外貨準備はあるのに、その9割にアクセスできない。

どうして米国はこのようなことができるのか。それは送金情報を送る国際銀行間通信協会(SWIFT)が決済網を握っているからだ。

米国が対イラン制裁を発動したとき、それが実効化できたのはSWIFTがイランの銀行を決済網から締め出したからだ。そしてSWIFTの運営を握っているのが米銀だからだ。

同じ手口はベネズエラにも適用された。中国の党幹部はSWIFTなどの国債決済網は「米国の覇権維持ド道具」と見ている。


4.米国第一主義がドルへの信頼を揺るがせている

ドルによる通貨覇権への不安は、中国や途上国だけでなく先進国や、金融中枢からも湧き出ている。

ドルは世界システムとしての安定性を欲するが、トランプの自国第一主義はこの考えと激しく衝突するからだ。

自国第一主義というのは、自分の立ち位置を中心に土俵を作るようなものだ。土俵際まで追い込まれたら自分を中心に土俵を書き直すことにする。

これではルールも何もあったものではない。

先年、米国は「世界の警官は続けられない」と宣言した。安全保障分野と同じように世界経済システムの守り手の役割も放棄するなら、もはやドル支配体制の維持に意味はなくなる。

その不安感を典型的に示したのが、昨年8月のイングランド銀行カーニー総裁の講演だ。

デジタル通貨容認論だけが全面に出る形で報道されたが、最も重要なことはトランプ政権への不信感と、ドル依存体制への危機感である。

カーニー総裁は「経済政策をめぐる不確実性」や「あからさまな保護主義」が、通貨システムを介して世界経済を破壊する危険性があると指摘した。そして世界はドル基軸体制から脱却する必要があると訴えたのである。

その延長線上に代替システムの一つとしてデジタル通貨(中銀主導型)の可能性を示唆したのである。



5.デジタル通貨が切り札となるか?

デジタル通貨には長所と欠点がある。

最大の長所は通貨を介入することから来る為替リスクがないことだ。その他にも銀行を通さないことから、金融介入をシャットアウトできること(公的介入さえも迂回できる可能性がある)、簡素でスピーディな手続きも長所としてあげられる。

一方で、大銀行や政府・中銀のバックアップがないから、外部の干渉に弱い。あまりに投機性が高いためにアメリカでは半ば犯罪扱いされてきた。

大資本がバックアップすれば短所はカバーされる

この欠点はピア・トゥ・ピア評価が安定しないことから生じる。それは各国中銀や大手銀行がシステムに介入し、取引の信頼性を担保すれば克服できる。

特に先行しているのが中国人民銀行だ。

いま、IMFや世銀を先頭に多くの国際的銀行ネットワークは米国の影響下にある。これに対して中国は、ブロック・チェーンを使って銀行を通さない決済を広げようとしている。

このブロック・チェーンの先にビットコインを接続すれば、大手金融網とは関係なくもう一つの経済圏が構築される可能性がある。


6.人民元そのものの弱点はそのまま残っている

そこでデジタル人民元に未来はあるかという話になる。

発田さんの指摘によれば、人民元は個人の両替は年間5万ドル以下、海外投資には事実上使えない、浮遊ペグではあるが完全変動相場制ではない、などの制限が残っている。
その結果外国為替市場での取引シェアは2%にとどまっている。

まずは国際通貨にふさわしく、さまざまな制限を撤廃し、ブラッシュアップしなければならない。どちらにしても、人民元が国際化されなければデジタル人民元も国際的なものにはならないだろう。

ただし、ドルの側から人民元に押し込むようなプッシュ要因が今後出現しないとは限らない。あるいはユーロとの協調のような局面も考えられる。

いずれにせよデジタル通貨元年のような様相を呈している2020年、動向を慎重に見極めていく必要がありそうだ。

SDGs(持続可能な開発目標)について

1.SDGsとはなにか

Sustainable Development Goals の略。“s”は複数形の”s”なのでエスディージーズと読む。恥をかかないよう一言。

2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標です。

17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない」(leave no one behind)ことを誓っています。

2.なぜSDGsが叫ばれるようになったか

20世紀の最後の20年間、ネオリベラリズムに基づくグローバリゼーションが拡大しました。

これは一部の企業(とくに米国の情報産業)の活性化により景気の回復をもたらしましたが、それと引き換えに貧富の格差の拡大と、貧困層の社会的排除という深刻な問題を生み出しました。

その傾向は特に若者層、発展途上国という地球の未来を担う社会集団に顕著に現れました。

そのために社会のひずみと歪んだ風潮が、世界中のいたる所で強まっています。

3.SDGsは何を目指すか

まず、格差→貧困+差別という連鎖をどう断ち切るかというグランド・デザインが必要です。

それが「社会的包摂」という考え方です。

すなわち地球上の誰一人も取り残さないこと、僧いう世界を実現するという構えです。

ヘイトや差別観にもとづく行動が青年の間に広がっていますが、その多くは自らも差別され貧困に追い込まれているのです。

多くの国で、若者の失業率はふた桁に達し、中には半分以上が失業という状態すら生まれています。青年は社会から排除され、貶められているのです。

これらを解消するには個別の対応ではなく、とくに仕事面での保証が必要です。納得の行く仕事と暮らして行ける賃金は、包摂力のある世界を作る上で必須です。

4.企業の社会的責任 CSR

仕事を具体的に保証しているのは企業です。個別企業というのではありませんが、企業全体の社会的任務が問われて然るべきです。

このような企業の社会的責任を求める考えを「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility)とよびます。

これはメセナとか社会貢献というのとはレベルの違う話です。あくまでも自主的な企業活動の一部であるとはいえ、一定の社会的合意をもふくむものです。

5.企業への具体的要請

CSRはイギリスのブレア政権で始められ、欧州金融危機さなかのEUで強化され定式化されました。

企業は2つの側面から規定されています。

出資者による所有と運営という面、そして労働者など生産組織に関わる人々、商品やサービスを利用する消費者などです。後者は「利害関係者」(ステークホルダー)と呼ばれます。

EUはこの2つの側面をすり合わせ、それらの共通価値を拡大していくようもとめました。

たしかに利益をどう分配するかということだけに限れば株主と利害関係者はゼロサムの世界にあります。さらに利害関係者の間でもなにかと衝突はつきものです。

しかし企業というのは社会分業の中で役割をにない社会活動の一部を担っているわけですから、その公共的性格は誰もが了解し受け入れなければなりません。

6.企業は何をなすべきか

企業はビジネスを展開するにあたって、企業活動による負の影響を減らさなければなりません。

そのために、少なくとも長期の企業戦略においてはCSRを組み込まなければなりません。労働安全や福祉に加えて、広範な利害関係者への配慮もなされなければなりません。

これは決してネガティブな課題ではありません。ステークホルダーの多様な要求を満たすことは、そのための革新的なサービスを生み出すことに繋がります。

こうして社会課題に対応しつつ企業価値を向上させるという企業活動スタイルに脱皮して行くことがもとめられていると言えるでしょう。

日経新聞「やさしい経済学」(長谷川直哉さん)より

(SDGsをめぐる連載のうち企業責任の部分を要約したものです)

ビットコインの歴史

2008年 「サトシ・ナカモト」の名前でビットコインに関する論文が発表される。

2009年1月  ビットコインのオープンソース・ソフトウェアが発表され、運用が開始される。

2009年6月 「資金決済に関する法律」が成立。流通性や汎用性を持つ電子的な決済手段を仮想通貨と定義する。

2010年5月 ビットコインによる商取引が初めて成立する。ピザ2枚が1万ビットコインで売られた。

2012年 欧州中央銀行は「未制御だが、特殊なコミュニティで用いられる電子マネー」と定義。

2013年3月 ブロックチェーンの分岐が起こり、激しい売り攻勢に直面する。米国の国土安全保障省はビットコイン取引所を押収し、FBIはSilk Roadのウェブサイトを閉鎖。

10月 中国のIT大手バイドゥがビットコインによる決済を導入。バンクーバーでビットコインのATMが導入される。

11月 中国を拠点とするビットコイン取引所のBTC China、世界最大のビットコイン取引所となる。

12月 中国人民銀行がビットコインの使用を禁止する。ビットコインの価値は暴落。

2013年 米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)、「どの司法組織においても法定通貨としての価値を持たないもの」と定義。半ば犯罪扱いする。

2014年

1月 ビットコインを使ったマネーロンダリングで男が逮捕される。

2月 マウントゴックス、全ての取引を停止。取引IDの改ざんにより送金が繰り返され、480億円相当が引き出された。

6月 エクスペディア、デル、楽天スーパーロジスティクスがビットコイン決済の取扱を開始。時価総額は約8400億円に達する。

2014年 欧州銀行当局、「公的機関の裏づけはないが、支払手段として受け入れられ、電子的に譲渡、保管または取引される」ものとする。
中央銀行によって発行されるデジタル通貨は「中央銀行のデジタル通貨」とされる。

2016年 改正資金決済法が成立。仮想通貨を「弁済や購入・売却、相互交換を行うことができる電子情報上の財産的価値」と再定義。

2017年7月 ロシア人のビーニク、マウント・ゴックスなどから不正に金銭を入手したとして逮捕される。

2018年 資金決済法の再改正。欧米での呼称に従い、「仮想通貨」を「暗号資産」(crypto asset)に変更。

2018年7月 ベネズエラ政府が経済危機への対策として埋蔵原油を裏付けに発行したデジタル通貨「ペトロ」を発行。



世界経済フォーラム(ダボス会議)での仮想通貨・ビットコインに関するトピックス
https://coinpost.jp/?p=128782

ダボス会議でのブロック・チェーンの扱いはトピックスどころではない。ブロック・チェーンのために会議が開かれたというくらいの扱いだ。

上の記事では関連イベントや発表、注目発言をまとめている。

1.6中銀がデジタル通貨研究

共同研究の組織は「CBDC利用可能性評議会」と名づけられた。CBDCは中央銀行デジタル通貨(central bank digital currency)の略称。

今回のフォーラムではフォーラム事務局よりCBDCの枠組み案が提示された。これは全28ページからなり、各国中銀が発行するCBDCが適切かどうかを判定する基準となる。

また、デジタル通貨のガバナンスについても枠組みの設計が必要だとし、国際連合組織の設立を明らかにする。

ガバナンスを構成する要素としては効率性、スピード、相互運用性、金融包摂、透明性の5項目が挙げられている。

2.米ヘッジファンド創業者レイ・ダリオは語る

お金の目的は二つある。交換の手段と富の保存手段だ。現在、ビットコインはどちらにも効果的ではない。

しかしパラダイムシフトの限界が近づいているのも間違いない。国債のマイナス金利化はそのシグナルだ。

3.「大事なのは電子決済」

ヨルダンのデジタル経済相は「大事なのは電子決済で現金取引を排除すること。新たな通貨の発明は必要なし」と語る。

4.時流は逆に金回帰に向かう

イスラエルの歴史学者は、「P to P の信用など空虚だ。トランプの一吹きで吹き飛ぶ」とし、むしろ信頼を内蔵する金への回帰が強まるだろうと主張した。

5.「デジタル・ドル」プロジェクト

米商品先物取引委員会のジアンカルロ前会長が「デジタル・ドル」プロジェクトを発表。
ブロックチェーンを用いて米ドルをデジタル通貨化する。これにより手軽にドルの取引を行う環境の実現を目指す。

6.カリブラCEOが語るリブラ

フェスブック社のザッカーバーグは、仮想通貨「リブラ」の構想を立ち上げ、その関連子会社としてカリブラ社を立ち上げた。カリブラのCEOを務めるデビッド・マーカスが語る。

リブラを小売決済かホールセール型にするかは決まっていない。しかしいずれにせよ、リブラは金融決済を革新し、中央銀行が直面する通貨問題および自国経済の課題を解決する鍵となるだろう。

リブラの銀行からの支持率が低いが、我々の目論見は銀行との競争よりもっと高いところにある。
我々は金融包摂という課題を理解し、リブラをその解決法として試すものだ。

7.リブラ以外のデジタル通貨

Bakkt社は消費者向けの仮想通貨構想を発表した。
仮想通貨だけでなく、バーチャルグッズやデジタル証券、ポイントなどもその対象とするとのことだ。と言われてもなんのことやらわからぬ。

すでに仮想通貨を手掛けているリップル社は、「今後12ヵ月に渡り、仮想通貨企業の自社株発行が続々と行われるだろう」と述べた。

8.「サトシ、ダボスへようこそ」

世界経済フォーラムの会場に大型ポスターが掲示され、人目を引いた。スイス大手金融グループクレディ・スイスが掲示したものである。
satoshi
写真

リブラの台頭や、中国政府によるCBDC発行計画やブロックチェーン戦略などの盛り上がりは、まさに「サトシ・ナカモト」の切り開いた世界が大きく広がりつつあることを示している。

2020年がブロックチェーン元年となる可能性が見えてきた。もし新型ウィルスが鎮火し、トランプが再選されてその無軌道ぶりに拍車が掛かるようなら、一気にドル離れ、中銀離れが進んでいくのかも知れない。

それは金融一極支配の突破口になるのだろうか?

ブロックチェーン(Blockchain)とりあえずの感想

メリットやデメリットはどうでも良い

どうも困ったことだが、ビットコインやブロック・チェーンを扱う現場の人達が強調する「メリット」というのがさっぱり実感できないのである。

中央依存性が低い
安全性が高い
追跡可能性が高い

というのは、たしかにブロック・チェーンの特徴ではあるかも知れない。しかしだからといってそれが即「メリット」だと言われると、実のところそれはあまり実感できないのである。

「それをメリットだと思う人がやったら?」ということになる。

どうも記事は、ビットコインの相場に手を出そうとしているコンシューマーに、揉み手をしながら近づいてくるセールスマンのような感じで、油断ならない。



邪道が正道に

そもそもビットコインのそもそもの目的は非営利であった。それは金融独占の打破であり、「持たざるもの」に信用の窓地を開放することであった。しかしその目的はとうに失われた。

いまやそれは「口座を持てない人々」とはそもそも無縁な、高度のテクノロジーを利用した金融バクチとして発展しつつある。2018年のダボス会議でソロスは言った。1日で25%も値動きするような通貨は通貨ではない。誤解にもとづくただの投機だ。

業界2位の暗号通貨である「イーサリアム」は、ブロックチェーンを利用した取引を、一桁も二桁も増やそうとしている。
百鬼夜行の世界には詐欺や不祥事が続発してきた。暗号通貨が「暗号」であるゆえの弱点、強力な守りと利便性の矛盾が攻め込まれる隙間を提供してきた。

また中国では暗号資産の技法だけを盗み出して、P to Pとは真逆の「全展望監視システム」の方向に持っていこうとしてる。

鬼と出るか蛇と出るか

私が問うているのはメリット、デメリットという欲得の世界ではない。それが金融支配体制に風穴を開け、ドルの桎梏から抜け出し、脱一極の世界へ進み出す切符になるかどうかを問うているのである。

本来の分散型、ピア・トゥ・ピアの「民主的」な世界的金融システムが展開できるならこれほど素晴らしいことはない。

いわば政治の世界での一極支配対多国間主義という図式を、金融の世界に投影して行きたいのである。

法定通貨との組み合わせ・まずは決済機能から

暗号通貨は法定通貨の補助的な役割を担うようになっている。それはすでにかなりの程度まで進行している。具体的には送金手段、決済手段、利殖手段だ。

その際、人々が最も期待するのは決済機能であろう。フェアーな決済こそがいま最も求められているものだ。これがないために米国に国内法を発動され、不当な制裁を甘受せざるを得なくなっている。
ここ数年のEU諸国の米国追随ぶりは目を覆うばかりだ。イラン、ベネズエラ、パレスチナなどで米国が横車を押してもフランスもドイツも見て見ぬ振りをする。こんなことはイラク戦争の頃はなかったことだ。



ブロックチェーン(Blockchain)その2


2019-04-27 小俣淳平


#0 ビットコインを知らずしてブロックチェーンは語れず

「いや、ビットコインじゃなくてブロックチェーンが知りたいんですけど」

その気持ちはよくわかります。しかし、ビットコインとブロックチェーンは密接に関わっているものなので、ビットコインを知ることはブロックチェーンを知ることにも繋がります。

ビットコインは2008年にサトシ・ナカモトによって考案されたデジタル通貨です。名前は日本人のようですが、その正体は謎に包まれています。

ビットコインは国家が管理しなくても機能する「お金」として設計されました。これを自律分散型デジタル通貨と呼びます。

そして今まで約10年間一度もそのシステムがダウンしたことがありません。

最近は仮想通貨ではなく「暗号資産」(Cryptoasset)と呼ばれるようになっています。


#1 ブロックチェーンをなんとなくイメージする

世界中のスマホやパソコンが繋がって、蜘蛛の巣のようになって地球を覆っている、皆さんも想像しやすいインターネットのイメージです。

ただその繋がり方が、従来の一般的なインターネットとは違います。
どこかのサーバーにみんなが繋がっているのではなく、個々のパソコン同士が個別に繋がってネットワークを作っているのです。

そのネットワーク上で、正しい取引データを記録した台帳を、みんなで共有し、確認していきます。
そして確認した記録を一区切りにして1ファイルにまとめます。これをブロックといいます。

このブロックはどんどん増えていくので、それを時系列でつなげていきます。みんながその取引の履歴を確認しているので、みんなが安心して取引できるのです。これがブロック・チェーンです。

このようにすると、国や銀行が信用を与えなくても、大勢の人の相互信用で「お金」を作り出すことができます。

#2 ブロックチェーンのメリット

「銀行があるんだから、ブロックチェーンををわざわざ使う必要はない」と思うのは間違いです。

ブロックチェーンにはいろいろメリットがあります。それは銀行などと比べて分散型であることが関係しています。
ブロックチェーンのメリット
          図 ブロックチェーンのメリット

ただし、このメリットの説明は、原理的にはそのとおりであるにせよ、現実にはまだ信じられないところがある。

連載かと思いきや、記事はこれで終わりである。
もう少し関連知識が必要なようだ。



ブロックチェーン(Blockchain)

A. ブロック・チェーン 原理と用語の説明

①「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成する。
一つのブロックにはいくつかの取引の履歴が記録される。これを「トランザクション」と呼び、ハッシュ関数で「暗号化」されている。

②「ブロック」をチェーンのように連結していく。
この方法でデータを保管・蓄積していく。
各ブロックには、「タイムスタンプ」とブロック間のリンクが含まれる。
図 ブロックの内部構造
transaction
一つのブロックを原基として、枝分かれも含めた系統樹が形成される。


ブロックチェーンのデータベースは、対等端末のネットワークで相互管理される。これをP2P(ピアツーピア)方式という。
分散型のタイムスタンプサーバーで管理されるため、「分散型取引台帳」とも呼ばれる

p to p
     取引もWeb型となり、強力なプラットフォーマーが不要となる

B. パブリック型チェーンとプライベート型チェーン

ブロックチェーンの代表的なものにビットコインと イーサリアム がある。ビットコインは通貨の帳簿で、イーサリアムはプログラムの帳簿である。

ビットコインにおいては、やり取りはネットワーク参加者同士で行われ、第三者の参加者により検証される。
検証者は作業の報酬としてビットコインを受け取る。これにより市場でのビットコインの総量は増えていく。そのことでやがて交換・売買の場としてのビットコイン市場が膨らみ、通貨としての機能を発揮するようになる。

誰でもその気になれば、インターネット上でコイン発行作業に参加できる。さらに銀行が特権的におこなってきた検証作業にも参加できる。
これをパブリック型チェーンという。

 運営主体を評価するためにマイニングの市場規模を確保すること、検証に6ブロック(約1時間)程度をかけることがもとめられる。

とりあえずお金の移動を高速化することに特化した通貨をプライベート型チェーンと言う。
このチェーンには管理者がおり、仕組みは簡単だ。難点は、胴元がコケたらすべて一瞬でアウトということだ。

C. ブロックチェーン 使い方の広がり

ブロックチェーンを仮想通貨以外の目的で使う方式が広がっている。それが海外送金だ。
金融機関を経由することで数百円から数千円の手数料が発生するが、ブロックチェーンを利用することで送金が瞬時に可能となり、手数料もタダ同然になる。

ブロックチェーンの一番の魅力は、まだ可能性の段階に過ぎないが、米国の金融支配とドル乱発から離脱できるかも知れないということだ。
商取引もインターネットでピア・トゥ・ピアの正式取引ができるようになれば、大金融資本を介在しない取引が全世界で可能になる。ドルはたんなる「引き出し権」(DSR)の標章に限りなく近づく。

もちろんアメリカはプラットフォーマーを使ってインターネット金融の世界も支配しようと狙っている。しかしいくら支配を強化しようと図ってもネットの世界は原理的には自由で平等だ。

この可能性については、これからもう少し文献レビューを頑張りたいと思っている。

D. ブロックチェーンの発展動向

イングランド銀行、連邦準備制度、日本銀行をふくむ各国中銀も、ブロックチェーンに基づく暗号通貨の発行を研究している。
メガバンクを中心にグローバルな共同開発も急展開している。

今後のブロックチェーンの発展方向としては、暗号通貨の他に取引の自動化、取引や権利の記録への適用などが考えられている。
とりあえず、第1号の完成。

Ⅰ.非同盟首脳会議の概要

第18回非同盟首脳会議が10 月 22 から1週間にわたり開かれた。今回の開催地はアゼルバイジャンの首都バクーであった。慣例により首脳会議の開催国は、次の首脳会議までの間議長国を勤めることになる。

アゼルバイジャンは北海道ほどの面積に人口千万人弱。1991 年崩壊したソ連から独立し、2011 年に非同盟運動に正式加盟した。

今回の首脳会議は、バンドン原則 65 周年(2020 年)と 非同盟運動設立 60 周年(2021 年)にあたり、意義深いものとなった。

会議には120の加盟国と17のオブザー国・組織が参加した。主な首脳としてベネズエラのマドゥーロ大統領、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、イランのロウハニ大統領、キューバのディアスカネイロ大統領、マレーシアのマハティール首相など。

今回の会議のテーマは「バンドン原則を擁護し、現代世界の課題へ一致し適切な対応を確保するために」だった。

各国の代表は、貧困と格差の拡大、地球環境の破壊で世界は大きな挑戦に直面していると強調した。

とりわけトランプ米政権が国際法を無視した一国主義を推し進めていることが、非同盟運動をかつてない困難に直面させているとと指摘した。


Ⅱ.日本AALAの参加にあたっての立場

日本AALAは、この会議にアジア・アフリカ人連帯機構(AAPSO)の代表団の一員として参加した。
そして首脳会議に以下のような要望と提案をおこなった。

A.いかなる干渉にも反対し、主権を守り、人民と連帯する
①トランプ政権による「制裁」は、人民にたいする「集団制裁」であり、国際法、人道法に違反する。
②トランプ政権は各国へ「制裁」への参加を強制している。これに反対し、協同して被害国を支援すべきだ。
③干渉を正当化する理論を認めず、自決権を厳格に遵守するようもとめる。
④多国間協議により平和的に解決する立場を徹底して欲しい。

B.核兵器の廃絶にむけて

核兵器廃絶にむけ、とりわけ核兵器禁止条約の早期発効を目指す。

採択には反核の国際世論とともに非同盟諸国が大きな役割を果たした。賛成122カ国のうち、 105 カ国が非同盟国である。

朝鮮共和国が非核化に動き出している。非核化の枠組みとなるさまざまな合意を支持するよう提案する

C.発達した諸国の人民運動への支援

発達した諸国においても国民の多くは苦しんでいる。日本では日米軍事同盟を強化し、沖縄米軍基地を増強している。

日本AALAは、日本が軍事同盟を脱して非同盟運動に参加するというビジョンをもってたたかっている。
非同盟運動が日本など発達した諸国の人民運動にたいする理解と支援を表明することは意義がある。


3.大会決議(バクー宣言)のあらまし

A.国連重視

国連中心主義と多国間主義を貫き、とりわけ国連総会の活性
化に力を注ぐ。
国連安全保障理事会の開かれた民主的な組織への改革。

B.平和な国際関係

政治的主権、政治的な独立を尊重し、「合法的に構築された政府」に対する不安定化策動を行ってはならない。
相互不可侵と武力不行使の原則を守る。

C.対テロ活動の原則

テロリズムはいかなる宗教、国籍、文明、民族集団とも関連してはいない。そうあってはならないことを、非同盟運動は強調する。

D.核兵器のない世界のために

大量破壊兵器、特に核兵器の存在が人類最大の脅威となっている。非同盟運動は核兵器のない世界を実現するために努力することを決意する。

E.貧困の根絶

極度の貧困を含むすべての形態と次元で貧困を根絶することは、なお重要な要素の 1 つである。

開発途上国には開発の権利があり、それは尊重されなければならない。

先進国における保護主義の高まりは、特に発展途上国の輸出にマイナスの影響を与える。

F.先進国による経済制裁

一方的な強制措置の適用に対する強い非難を表明する。それらの措置は国連憲章および国際法、特に国家の非干渉、自決および独立の原則に違反する。
それらは人々の生存権に影響を与え、完全な経済的および社
会的発展を妨げる。


4.マハティールの重要な指摘

マハティールはマレーシアの首相。なんと92歳という高齢だが、非同盟運動の進むべき方向を鮮やかに示している。

それが今回の会議のテーマにもなっている「バンドン原則に立ち帰れ」という呼びかけだ。

彼は、2003年イラク戦争のさなかに非同盟会議の議長を務め、アメリカの覇権主義を厳しく批判した経験があり、非同盟運動の象徴とも言うべき人だ。

すこし演説の内容を引用する。

イラク戦争のとき、米国は各国に「敵か味方か」を迫ってイラクを破壊した。それがまた特定の国を敵視し、国連の承認なしに、「民主主義」の輸出と政権の転覆を企てている。
…世界はは依然として恐怖の中に生きているにもかかわらず、非同盟側では内部対立が激化して、かつての団結が失われてしまった。

いまやバンドン原則にたちかえり、対話と平和的手段による紛争の解決に徹して、大国の横暴や覇権主義に対抗しよう。


5.不破さんの重要な指摘

非同盟運動に関して、最近行われた共産党大会で不破さんが大変重要な発言を行っているので紹介したい。

A.20世紀論の核心は民族自決にある

20世紀論の核心は植民地国家の独立にあった。民族自決の原則が世界の根本となった。

21世紀のさまざまな出来事は、この歴史認識の正しさを見事に実証した。


B.20世紀の構造変化が核兵器禁止条約を生み出した

この間の平和と社会進歩の最大の変化は、核兵器禁止条約の成立である。

それをもたらした最大の力はアジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々だ。


C.世界政治の主役は交代した

発達した資本主義国の政府は、世界平和を目指す人類的な意思に背を向けている。恥ずかしながら被爆国日本もその一員だ。

発達した資本主義国が政治的反動に向けて歩んでいるという事実は、世界政治の主役が交代したことをはっきりと示している。

D.社会主義への道はさまざまだ
社会主義を目指す動きもさまざまな国で、さまざまな形で起こっている。
そうした運動状況の中で、日本共産党が「発達した資本主義国での社会変革」の運動の最前線に立っているのは間違いない。
しかしそれは世界史的には未だ実現されておらず、開拓者としての使命が課せられている課題である。
我々にとって「大道」は、まず何よりも日本における多数者革命の実践である。この大道を確信を持って前進しよう。



引き続き所得格差に関する記事

1.国連「所得格差に関する報告」

国連が21日に報告した「所得格差に関する報告」の要旨を紹介する。

「過去4半世紀の各国の所得水準の推移」に関する統計が示されている。報告は、「世界の3分の2の国で格差が広がり、社会の不平等が進行している」と指摘している。

そのうえで、報告書は各国政府に対して、国際協力を通じたデジタル格差の解消や、社会環境の変化に対応した職業訓練への投資の拡充、それに誰もが受けられる社会保障制度の構築に取り組むべきだと勧告している。

2.世界食糧計画(WFP)の報告書

21日には国連の世界食糧計画(WFP)の報告書「今年、危機的な飢餓状況に陥ると推測される地域」も発表されている。こちらは危機感満載の報告だ。

アフリカ大陸では今後数カ月で何百万もの人々が食糧危機に陥る可能性がある。
アフガニスタンで干ばつと相なって治安が悪化しており、1100万人(人口の3分の1以上)が深刻な食料不安にさらされている。
イエメンでの支援活動は成功したが、イラクやレバノンで社会不安やマクロ経済の危機が食料不安を拡大させている。
ハイチの370万人(人口の約3分の1)が食料支援を必要としている。

3.ユニセフの「教育危機に関する報告」

ユニセフも「世界教育フォーラム」(ロンドン)とダボスの経済フォーラムに合わせ、『教育危機:最貧困層の子どもたちのための教育資金調達の緊急の必要性』を発表した。

報告では「世界の最貧困層の10代の少女の約3人に1人が学校に1度も行ったことがない」と指摘している。

その学校も、最貧困層を対象とした教育資金が不足しているために、生徒に対し質の高い教育を提供できていない。

低所得国の子どもの半数以上は、小学校を卒業するまでに、簡単な物語すら理解できない。

教育機会を失うことは、貧困の永続を招き、世界的な教育危機の主な原因となる。

オックスファム 年次報告書(2020年版)

例年のごとく、米経済誌フォーブスとスイス金融大手クレディ・スイス・グループのデータを元にしてる。
ただし計算法については異論もある。

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1.超富裕グループ

世界ではわずか62人の富豪が、世界人口の下位半分35億人分と同じだけの富を所有している。(ニューズウィークの独自計算)

62人の昨年の資産残高は1兆7600億ドル。これは下位50%が所有する資産を超える。

2010年には人口の半分と同じ富を保有していたのは、上位388人だった。

もはやこれは所得「階層」とは言えない、ただのグループだ。

2.さらに増大する富裕層の富

ビリオネアはこの10年で倍増し、そのの富は44%も増大した。それはカナダのGDPとほぼ同じ額だ。

それらの富の多くは租税回避地に隠された。その額は推定7兆6000億ドル(800兆円)と言われる。

3.「一生懸命働けば報われる」はもはや虚偽

経済は再び回復しはじめたが、その成果は富裕層にのみ還元されている。

オックスファムは、「このまま進めば世界の富裕層1%の富が残り99%の富を上回ってしまう」と予測している。

4.所得格差が広がる仕掛け

この10年間で、アメリカのCEOたちの報酬は54.3%上昇した。一方で賃金は頭打ちだった。

CEOたちの稼ぎは報酬だけではない。副収入を合わせると、30年前と比べて10倍になった。


5.所得再分配メカニズムが崩壊しつつある

超富裕層は税率の引き下げと租税回避により、支払うべき税の3割を逃れている。

最も裕福な1%の人たち0.5%追加課税するだけで、教育、医療、介護などで1億2千万人の雇用を創設できる。

1月20日にILOの報告(2020版)が発表され、各社が報道している。

ILO駐日事務所のページにその抄録が掲載されている。


1.労働需給のミスマッチ

世界の失業者数は1億8,800万人、失業率は5.4%。
失業者数はこの9年間ほぼ横ばいであったが、今年(2020年)には約250万人増えると予測されている。

不完全就業者が1億6,500万人。労働市場に加わる意思を失っている人が1億2,000万人。
合計で4億7,000万人の労働力が十分に活用されていない。

2.所得格差とその傾向

労働者が受け取る所得の割合(労働分配率)は、この間世界全体で大きく低下した。2004年には54%だったのが、2017年には51%に減少した。

働く貧困層(購買力平価建ての日収が3.20ドル以下)は6億3,000万人である。これは世界の就労人口の5人に1人に当たる。この傾向は途上国でより著明である。

3.青年の失業

多くの一般の人たちにとって、仕事を通して豊かな生活を築くことはより一層難しくなってきている。

とりわけ、青年(15~24歳)の失業問題は深刻である。世界で2億6,700万人(22%)の青年がニート状態(就業も就学も訓練受講もしていない)にある。

それに加えて、多くの若者が低劣な労働条件を耐え忍んでいる。アフリカでは、非正規雇用の比率は95%に達している。

4.保護主義の高まり

保護主義や貿易制限の強化は、雇用に悪い影響を与えている。

経済成長率の低下は、低所得国における労働条件の改善を遅らせ、貧困削減に向けた努力を妨げている。

新春対談「21世紀の世界を変える非同盟運動」を読む

日本AALAの機関紙の新年号に上記の対談が掲載された。話者は西谷修さんとAALA代表理事の吉田万三さん。以下はこの対談を読んでの感想である。


非同盟運動はなぜ「運動」なのか

① 非同盟運動は戦後一斉に独立を勝ち取った新興国が始めた運動である

② 新興国は国連中心主義を掲げ、それによって平和と発展を期待した。

③ しかし、国連軍として参戦した朝鮮戦争が大規模化し、新興国まで巻き込まれた。

④ 新興国は国連にだけ頼っていては安全は守れないことに気づき、平和共存のシステムづくりに乗り出した。

⑤ さらに国連憲章の集団安全保障の理念が大国主導にならないよう、改善を求めた

⑥ さらに軍事同盟そのものが世界の平和の妨げだと考え、同盟をなくすよう主張するようになった。

⑦ さらに現代軍事同盟の中核に核の支配があると考え、核廃絶を運動の中心課題にすえた。

⑧ さらに国際外交を大国主導でなく、個別の取引でなく、集団で交渉するべきという多国間主義を訴えている。

これらはいずれも大変重要で、今日的な課題であり、これらの提起を実践的に担ってきた非同盟運動の役割は大変大きい。

注③ 3年間にわたる朝鮮戦争で両軍合わせ300万人が参戦、うち80万が戦死した。国連憲章の集団自衛権に基づき多くの新興国も参戦している。例えばフォリピン、トルコ、コロンビアなどは数千名を派兵した。朝鮮半島のすべてが戦場となり、民間人150万人が犠牲となった。とくに後半戦は実質的な「米中戦争」で、核兵器以外のすべてが使用された。

注④ 1954年の周恩来・ネルーによる平和5原則(領土、主権の尊重 不侵略 内政不干渉 平等・互恵 平和共存) 当時中国は中共と呼ばれ国連への加盟を認められなかった。

注⑤ 平和共存実現のため、国連憲章の集団的自衛権のしがらみをどう振りほどくかが、バンドン会議の最大の焦点となった。バンドン声明は10項目あるが、そのうちの (5)国連憲章に従い諸国民が個別的、集団的に自国を防衛する権利の尊重 (6)集団的防衛機構を大国の特定の利益に用いず、他国に圧力をかけない (7)領土保全、政治的独立への侵略、脅迫、力の行使をしない (8)国際紛争は国連憲章に従い、関係国が選択する平和的手段で解決 の4項目が、平和共存の内容となっている。
これは非同盟運動が国連中心主義を貫きつつ、どうやって非戦と平和を維持していくのか、どうやって各国の自決と尊厳を守っていくのかという問題に関わる運動であることを意味している。

つまり非同盟運動というのは軍事同盟に入るか入らないかではなく、軍事同盟に反対し軍事同盟をなくしていく運動なのだ。
しかしこれはあくまでも原理的な視点なのであって、実際上は資本主義と社会主義のどちらの世界にも入らないという「第三世界論」が支配的であったことは認める。


社会主義体制の崩壊により非同盟運動が反軍事同盟の原則に立ち帰った

90年のベルリンの壁崩壊により、東西対立という関係は基本的には消失した。これに伴い「第三世界」という概念も根拠を失った。しかし非同盟運動は存続し続けた。

これを当時支えたのは東南アジア諸国のイニシアチブであった。

1992年にジャカルタで開かれた非同盟諸国首脳会議では、改めてバンドン宣言の意義が問い直され、非同盟運動の原点としての国連中心主義と反軍事同盟路線を確認した。90年以降の非同盟運動のスローガンとして押し出されたのが多国間主義である。これは国連中心主義と反軍事同盟路線がもたらす必然的な実践的な帰結である。

多国間主義は東南アジアにおいて反軍事同盟路線と平和共存、さらに共助・共栄のセットとして打ち出され、ASEANとして結実した。それを国際的には国連中心主義として踏み固める方向が打ち出された。その際にバンドン宣言の精神が大いに生かされている。

この多国間主義に示された反軍事同盟路線は、いわば東南アジアに地域を限った「限定版のお試しセット」として打ち出されたために反米色はほとんど感じられない。むしろ注意深く避けられていると言える。「色々事情もあるだろうから軍事同盟は否定しないが、私たちはそういうのには関係なくやってみたいです」という感じだろう。


中立から非同盟へ 国家のあり方としてのスローガン

非同盟という概念は、ラテンアメリカ諸国のように直接アメリカが軍事同盟の網の目を形成している地域では、のんきな話ではない。非同盟を掲げることはアメリカとの関係にイチャモンを付けることになる。

たとえ経済面だけに絞ったメルコスールでも、アメリカは容赦しない。経済的自立を図ったブラジルの労働党政権やアルゼンチンの正義党政権は、ベネズエラと同じような難癖をつけられ潰された。

そういうわけで非同盟運動はなかなか難しい運動である。しかしある意味で言えばむずかしいからこそ「運動」なのであって、たんなる非同盟諸国のなかよし会ではないのである。


非同盟運動はきわめて広い思想をふくんでいる

非同盟運動の核心の一つである「国連中心主義」という考えは、世界のあり方を枠づける究極のユニバーサリズムであると思う。それは超富裕層が提起するグローバリズムの考えに対置される。肝心なことは独立、平和、共存ということであり、思想、文化、宗教の何如を問わない。国際間のルールが国連機関やさまざまな国際法を通じて遵守されるような世界を作ることである。

例えば宗教であるが、進歩勢力は国内レベルでは、非宗教的で理性的な政治をもとめて戦う。しかし国際レベルでは敵対的態度を取らない限り、協調し対話をもとめる。なぜならさまざまな歪んだ形の民衆政治(ポピュリズム)は、つまるところ歪んだ世界への不寛容の表明だからである。私たちは歪んだ世界を正していくことでは協調できると思う。

人権という原理で世界の民衆の運動を裁断するのは、少なくとも今生きているこの社会では賢明な方法ではないと思う。

世界を支配する米国こそ最強の原理主義国だ。「アメリカ第一主義」という原理を押し付けており、その下で先進諸国がグローバリズムという原理を押し付けているから、歪んだ世界が作り出されているである。


非同盟運動は「世界に対する責任」のあり方を示している

アメリカ第一主義ということは、「アメリカは世界に対して権利は持つが、責任は持たない」という宣言である。世界の諸国が仲良く付き合っていこうという際に、こういう国が存在するのはまことに困ったことである。米国は「ない方が良い国」になりつつある。とくに所得の再分配という機能が国際的に働かなるということでは、世界の将来は大変暗いものになる。

そういうことになると、「世界に対する責任をどうやってみんなで分け合っていこうか」と考えたり、議論したり、実行したりできるのは非同盟運動にくわわる国だけになってしまう。同盟国はアメリカと同盟を結んだ瞬間に思考停止に陥ってしまうからだ。日本やEU諸国を見ていると、どんどん従属的になってきているのが分かる。

「世界に対する責任」というのは、これからますます大事になってくる考えだと思う。

吉田万三さんは「世界の新しいあり方として非同盟運動が大事な役割を果たしていく」といっているが、まさにここが一つのポイントになるだろうと思う。

田中靖宏さん(日本AALA連帯員会代表理事)の報告 「核兵器のない平和な世界への展望を示す、第18回非同盟首脳会議に参加して」が発表されました。
何分にも長い文章ですので、感想部分のさわりだけ紹介させてもらいます。私の「抄訳:非同盟首脳会議のバクー宣言」も合わせてお読みください。

と言いつつなかなか端折れなくて、このままでは原文そのままです。このあと各論に入っていきます。ここからは滞在中の感想とかエピソードは全部飛ばします。何時か原文が出ると思うのでそちらを読んでください。


10.制裁措置に反対する

バクー宣言は具体的な政策について31項目にわたって述べています。

国連の重視: 国連、とくに安保理への基本的な立場を明らかにしています。いまの安保理は5大国の拒否権など世界の現実を反映しない非民主的な側面をもっています。しかしそれにも拘らず、安保理の諸決議は国際法として順守する義務がある、たとえ短期的には不利益でも、法を守ってこそ国連中心の国際秩序を構築できるのです。大国の横暴な論理に立ち向かうにはそれしかないのです。

11.経済制裁措置は平和的で積極的か?

バクー宣言は米国の一方的強制措置を国連憲章に違反すると強く非難しています。国連安保理は現在いくつかの国に制裁決議を採択して、加盟国に実施をもとめています。これまで30近い制裁決議が発動されています。

しかし今とりあげられている「一方的な強制措置」は、安保理の承認を得ないで各国が独自に実施しているものです。それは米国やEUなどがイランや北朝鮮、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアなどの非同盟諸国に実施している「制裁」のことです。

「経済制裁」は、武力行使にかわる非暴力的な強制措置として積極的な意味に使われました。しかしいまでは、多くの一般市民の生活に甚大な悪影響を及ぼす「集団懲罰」であり、武力行使とかわらない「戦争」行為と考えられるようになっています。キューバにたいする「制裁」は国際法に違反する措置です。第3国にまで「制裁」を及ぼすのは二重三重の国際法違反です。

ベネズエラ「制裁」は金融取引を停止させ、主要輸出品の石油などの貿易を禁止しました。それはベネズエラ国民へのゆえなき懲罰をもたらし、「4万人以上の死者の増加につながった」と推計されます。

12.首脳会議の白眉…マハティール演説

マレーシアのマハティール首相が、とても説得力ある演説をしました。マハティールは94歳とは思えないしっかりとした口調で諄々と説き、会場は静まりかえりました。

16年前にイラク戦争がありました。ブッシュ米大統領は「米国の味方につくのか敵になるのか」と各国の指導者に選択を迫りました。最後に多国籍軍が侵攻してイラクは破壊されました。しかし大量破壊兵器は見つからなかった。しかし、まともな反省も破壊を修復する努力もないまま、イラクの国富は略奪され分け取りされました。
イジメに反対する国は叩かれ、ズタズタにされました。いまはどうか。世界を「敵か味方か」にわける戦闘状態がまだ続いているのではないか。世界はいまだに恐怖のなかにあるのではないか。
私たちは「民主主義の輸出」を口実にした国家攻撃がいかに国家と文明を消耗させ、崩壊させているかを目のあたりにしています。これに直面し耐えている国もあるが、他の国も将来同じ運命に苦しむかもしれません。そんなことは絶対にあってはならないことです。
大国が並外れた影響力をつかって貿易戦争をしかけています。交易条件をえさに、ブロックをつくって非同盟諸国を分断しようとしています。残念ながらこうした圧力に屈する国があります。このため非同盟運動はかつてのような団結がそこなわれています。みなさん団結しましょう。

13.核問題

ここでは省略せせてもらいます。

14.人権問題

バクー宣言は「人権の問題」の項を起こして、基本的な立場を次のように説明しています。

第一に、すべての人権を守り促進する決意を確認する。それは普遍的で不可分、相互に関連しあった国際的な誓約と国内法にしたがっておこなう。また建設的で強力的な対話と能力構築、技術支援や成果の認定を通じておこなうと述べています。
第二に、開発・発展の権利について述べ、それらが人権の重要な一部だと強調しています。それは平和と持続的な発展を達成するにあたって必要な資産であり、人権を保障するものだからです。
まず食うこと、食えることが平和の出発点、それはアフガンの中村先生の活動を見れば明らかです。

そのうえで「人権は、普遍性、透明性、公平性の基本原則の遵守によって強化されるべきである」と強調しています。特定の政治的な意図をもって取り上げたりするのはダメだ、二重基準は許されないという立場です。

さらに採択された最終文書では、非憲法的手段で政府が権力を握った国での憲法上の合法性回復を呼びかけています。そして非同盟諸国に、運動の創設原則にそって民主主義の理想を掲げ続けるよう奨励しています。


15.日本AALA創立50周年における不破演説

2005年は日本AALA創立とバンドン会議50周年に当たります。このとき日本共産党の不破哲三議長が「アジア・アフリカ・ラテンアメリカ~いまこの世界をどうみるか」と題した記念講演を行っています。
不破講演は、AALA諸国人民との連帯活動の意義と展望に確信をあたえてくれるものでした。

不破さんは、AALA諸国がそれぞれに困難にぶつかりながらも自立的な発展に努力していると述べ、21世紀の世界を動かす展望をもった地域になると強調しました。そして世界でもっとも活力のあるこれらの地域と、平和憲法をもつ日本が合流していくことに大きな未来があると語られました。その際不破さんが大切だと言ったのは、「自分たちの地域で生まれた政治制度や民主主義を、権利の絶対的な基準としない」ことでした。
いまの世界には、自国の基準にあわないことがあると、「あれは独裁国だ」とか「遅れた国だ」とかいって片づけてしまう傾向が強くあります。

アメリカやヨーロッパの国ぐにが、自分たちの地域で生まれた政治制度や民主主義の制度的なあり方を、権利の絶対的な基準として、その他の地域に持ち込み、その地域の国ぐにの状況をそれによってはかる、そしてその基準にあわないことがあると、「あれは独裁国だ」とか「遅れた国だ」とかいって片づけてしまう。あるいは「前進の仕方が遅い」とか「モデルが違う」などと攻撃するという傾向が、かなり強くあります。

不破哲三『アジア・アフリカ・ラテンアメリカ-いまこの世界をどう見るか―』(新日本出版社、2005年)

田中靖宏さん(日本AALA連帯員会代表理事)の報告 「核兵器のない平和な世界への展望を示す、第18回非同盟首脳会議に参加して」が発表されました。
何分にも長い文章ですので、感想部分のさわりだけ紹介させてもらいます。私の「抄訳:非同盟首脳会議のバクー宣言」も合わせてお読みください。

1.バクーの非同盟サミット会議

第18回非同盟首脳会議が10月、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれました。会議には120の加盟国と17のオブザーバ国・組織の首脳らが参加しました。日本AALAは今回は私と清水学さんがAAPSO団員、大村哲、浅尾剛の2人が随員として参加しました。

2.迫力のある首脳たちの討論

会場となったのは大きな会議場でした。なにしろ150カ国ほどの国の代表団が参加するので、広すぎて向こう側の首脳の顔は肉眼では確認できないほどです。しかし、それぞれの首脳たちの肉声はとても力強く、訴えの真剣さはひしひしと迫ってきました。

会議の成果は、採択されたバクー宣言に集約されています。

核兵器のない平和な世界の実現は可能だ、それにむけて力を合わせて頑張ろうという内容です。オブザーバーの中国やブラジルを含めると、世界人口の8割、国の数でいえば7割が反核・平和の課題で一致して声明を発したのです。
残念ながら日本の一般マスコミは、「赤旗」を除いてすべて無視しましたが、非同盟諸国のメディアは一斉にその成果と内容を報じました。

3.会場の模様

首脳会議に先立つ24、25の両日が閣僚会議でした。オバザーバーの席は後部で、AAPSOの席は最後列で全体が見渡せる場所にありました。私たちのすぐ前が中国で、右がプエルトリコ独立党、左がアルゼンチンといった配置でした。日本政府はいつもゲスト国として参加しているので、会場に席はありませんでした。

論議されていたのは閣僚会議に先立って開かれた準備会議がまとめた249ページ1172項目にわたる最終文書案です。

南米での事態をめぐる議論: 直前のボリビアの選挙でエボ・モラレス大統領が当選しました。これを祝福するとの表現にチリが反対をのべ、これにキューバが反論するなど議論がありました。

南シナ海の覇権問題: 中国の覇権主義的な行動に懸念を表明した項目はいわくつきのものでした。3年前にベネズエラで行われた首脳会議で、議長国のベネズエラが中国に配慮して表現をやわらげました。これにASEANを代表したラオスが抗議をして、採択では「留保」を表明しました。
今回の最終文書も前回の表現が引き継がれたため、タイ(ASEAN議長国)が「保留」を表明しました。議長をつとめたアゼルバイジャンの外相の采配はたいしたもので、合意点を提案し、不一致点は首脳会議に委ねることで承認されました。

4. やや低調だが、主役が交代

首脳会議といっても、首脳自身が参加したのは十数カ国しかありませんでした。とくに運動の推進役となってきたインドやインドネシア、エジプトなどが首脳の参加を見送ったことは、運動自体の影響力の現状を反映しているのかも知れません。

その代り、新しい諸国が運動を担う意気込みが感じられました。その象徴が開会総会ではその隣にイラン、ベネズエラ、マレーシアやバングラデシュ、キューバといった首脳が並びました。これらの国の多くは、米政権から敵視されて、さまざまな圧力や干渉をうけています。
それらの国がバンドン精神という国際的な大義をかかげ、世界の秩序と平和を守る姿をアピールしました。その姿勢が色濃く反映された会議だったと言えるでしょう。

5.議長国アゼルバイジャンの面目躍如

そうしたなかで首脳会議の象徴となったのが今回の議長国になったアゼルバイジャンです。非同盟運動に2011年に加盟したばかりです。
この国は旧ソ連の一国でした。北海道ほどの面積に人口1千万弱の小さな国です。90%がイスラム教ですが、第一次大戦後に世俗の民主共和国として独立しました。しかし独立は2年しか続かず、ソ連に組み入れられました。ソ連が崩壊した1991年に独立を回復しました。その後も隣国との争いが絶えず、ナゴルノ・カラバフの民族紛争とその後のアルメニアとの戦争で百万人もの国内難民が出ました。(私の「アルメニア民主化の話」を読んでください)

その国がなぜ非同盟を選んだのか。私が得た印象は、国民がヨーロッパの一員でありながら、東西文明の接点として架け橋になることをとても誇りにしていることでした。

たしかにこの国は十字路の上に位置しています。北のロシアと南のイラン、西のアルメニアとジョージア、さらにその先はトルコにつながっています。それだけにこの地域は古くから文化の融合と対立を繰り返してきました。国内にも民族間の矛盾、宗教間の対立をふくんでいます。

アリエフ大統領は開会の演説のなかで、独立後、国内の民族紛争の克服に努力する一方で、すべての国との友好を促進してきたと述べました。文明間の対話をうながす「バクー・イニシアチブ」を主催し、ロシアと米国・NATOの対話の架け橋になってきたと説明しました。それらの路線は非同盟運動の目標と役割に完全に一致するとし、今回の議長国として承認されたことに感謝しました。

6.会議に押し寄せる電子化の波

いちばん驚いたのは、会議の運営や資料のやり取りがすべて電子メールでおこなわれることでした。一時代前はいつも大きなプレスセンターができて、事務局や各国政府の担当がきて資料を配布し、ブリーフィングしてくれました。記者はその資料をうけとって記事にしていました。

ところがいまは、すべて電子メールで行われるのです。記者や関係者はIDをもらってスマホでアクセスし、そこでダウンロードして資料を入手するのです。スマホの操作に精通していないと話になりません。旧世代のわたしは途方にくれることが一度や二度ではありませんでした。

会場にはいれない随員たちは、控え室や会場の隣にしつらえられた映画館のような大ホールで大きな画面をみながら会議をウオッチするのです。一般メディアの取材陣は車で30分もかかる別のホテルに設けられたメディアセンターでの取材でした。記者たちの間からは制約の多い取材環境に不満がでていましたが、会議の運営という観点からは、国際会議や外交を重視するアゼルバイジャンの面目躍如たるものを感じました。

7.多国間主義と主権の擁護

今度の会議のテーマは「バンドン原則を擁護し、現代世界の課題への一致した適切な対応を確保するために」でした。この「現代世界の課題」は、各国の首脳からいろいろなかたちで言及されました。それらは最終文書の「前書き」に端的にまとめられています。

かいつまんでいうと、
* リーマンショックに象徴される世界経済・金融危機のもとで、世界的に貧困と格差が拡大し、地球環境が破壊され、新しい軍拡競争が始まっている。
* そのしわ寄せを勤労者とりわけ発展途上国の人民が被っている。
* そういう状況の下で、トランプ米政権のような自国優先の単独行動主義が広がり、力を背景に途上国にたいして不平等な交易条件や特定の発展モデルを押し付け、従わない諸国には制裁と称して「一方的な強制措置」がとられている。
* 非同盟諸国はこういう傾向に団結して対応しなければならないというものでした。

8.トランプとユニラテラリズム

とりわけ首脳たちが一様に強調したのが、ユニラテラリズムの動きです。ユニラテラルというのは、一方的なという意味です。ユニラテラリズムというのは単独主義とか一国行動主義という意味になります。

かつては軍備の削減や撤廃を、相手と関係なく自主的にやる意味(例えば一方的停戦とか一方的軍縮)でしたが、今は自分の思い通りに振舞う独善的な行動という否定的な意味で使われています。

端的に言えば、それはトランプ政権による一連の政策と行動です。

米国はもともと、「死活的な利害がかかわる場合には単独で独自に行動する」と宣言してきました。それでいて他の加盟国には国連安保理決議違反を厳しく追及し、場合によっては制裁を課し、武力行使さえ行ってきました。ユーゴースラビア空爆やリビア攻撃、さらにイラク侵攻など、すべて国連安保理決議なしでおこなわれました。つまり単独行動主義は米政権の一貫した政策です。

トランプ政権はそれにとどまらず、「アメリカ・ファースト」を掲げ、パリ協定やTPPからの離脱、核軍備管理協定の破棄、一方的な関税上乗せなどむき出しの自国優先主義をとっています。自国が結んだ国際条約や安保理決議さえも一方的に破棄する点で、一歩も二歩も進んでいます。

懸念されるのは、ミニ・トランプともいえる指導者が各地に現れて米国の一国主義に追随し、国内の引き締めを強化し国際的緊張を煽っていることです。関連しますが、首脳会議の会場で私の隣にすわっていた難民救援の国際団体の係官と話した際に、「日本と韓国の対立もありますね」といわれたのにはハッとさせられました。世界は日韓対立を同じようなナショナリズムや一国主義の広がりという角度でみているわけです。

9.国家の主権とマルチラテラリズム(多国間主義)の堅持

そのうえで首脳たちが強調したのが「マルチラテラリズムの堅持」という表現でした。それは国連を中心とする多国間の国際システムと、それを尊重する国際協調主義の考えを指しています。

マルチラテラリズムは日本国憲法の精神でもあります。憲法の前文にも「われらは、いずれの国家も自国のみのことに専念してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」と書かれていますが、まさにこれこそがマルチラテラリズの核心なのです。

こうした認識にたって首脳たちが採択したバクー宣言は、前文で国連憲章の目的、原則、規定をしっかりと守るとの決意を示したあと、最初の項で次のように述べています。

世界には違った経済、政治、社会、文化の体制をもつ国があり、国連はそういう違った国の存在を前提に成り立っているのだから、それらはお互いに尊重し、受け入れなければならない。

ここはとても大事なところだと思います。かつて日本共産党の不破哲三議長は、2005年の日本AALA創立50周年の記念講演のなかで、おなじことを強調しています

私たちはAALA諸国が歩んでいる道や状況を、その国がたどった歴史的経過を尊重してみる必要があります。その国が我々と同じ水準の代議制民主主義を実現していないからといって、安易に批判したり干渉したりしてはなりません。

バクー宣言はまずなによりも、各国の主権が尊重されるべきことを強調します。そしてこの各国の独立にたいする武力行使やその威嚇は許されないと訴えます。

そのうえで、
1.非同盟運動は、植民地主義と新植民地主義、人種差別、あらゆる形態の外国の介入、侵略、外国による占領、支配または覇権にたいするたたかいを貫いてきた。
2.非同盟運動は、これらのたたかいを通じて、大国中心の軍事同盟の一員ではなく国際関係のバランス要因になることを目指してきた。
と述べ、それを貫いてきたことが、非同盟運動の有効性と歴史的な発展を特徴づけていると宣言しています。

後編に続く


私たちは基本的には国連中心主義をとっているから、国連で定められたさまざまな取り決めについては尊重していかなければならない。

しかし専門職に携わる多くの人にとっては、国連のさまざまなガイドラインが、しばしば根拠に乏しく恣意的で、あえて言えば非科学的でさえあることを知っている。

そして国連および関連機関に働く人々の利益に沿った偏向をふくんでいることを勘づいている。

彼らは国連ロビイストの圧力のもとにさらされている。そしてその場限りでは正しくても、世の中の全体のバランスからすれば正しいとは言えない立場を表明することがある。

そしてそれがしばしば途上国や後進国に不利益をもたらし、先進国に有利に働くことを知っている。

しかし私たちは「だから国連など無意味だ」と叫ぶ気持ちはサラサラない。

やるべきことは国連と諸機関が提出するさまざまのリコメンデーションに対し、眉にベッタリと唾を付けて臨むべきだということだ。

とくに人権、環境、医療などの「敵なし議論」で、上から目線のかさにかかった言い方をするときには注意を要する、とだけ言っておく。

後進国は「社会主義」を語ってはいけないのか

今回の綱領改定議論で一番イヤな感じがするのが、ここなのだ。志位さんは一生懸命に中国を批判することで後進国革命を否定しようとするが、それとこれとはレベルが違うと思う。
マルクス主義の最も魅力的なのポイントは、どんなに遅れたスタート地点からでも社会主義へのキャッチアップは可能であり、世界の模範となりうるのだという「ユニバーサリズム」であったと思う。
今は先進国の植民地となり支配された後進国だけれども、いつかは民主主義革命を成功させ人民民主主義を実現できると考え、多くの若者が共産主義の理念を支持した。これが20世紀を大きく前進させる原動力となった。
今それをそのままの形で社会主義理論に流し込むのは辛い。それはよく分かる。しかしそれならそれなりの総括はすべきである。「もうあなた方の運動の先に社会主義なんてものはないんだよ」と言い切る無神経さが、昔風活動家としてはいささか辛いのである。

かつて日本共産党の先輩は60年の「80カ国共産党の声明」に当たり、3つの革命勢力の同等性を説いた。そして社会主義諸国の戦いがすべてに優先して革命を推進する力になるのだというソ連・中国と対決した。これは今でもきわめて正しいと思う。

変化する国際的力関係を考慮せずに特定の変革勢力だけを突出させるのは、革命運動の漫画化に等しい。ましてそれが革新勢力の中心概念になるのだとしたら、私としては天を仰ぐ他ない。

資本論の新版が出るのに合わせ、社会主義の未来についても議論が盛んである。しかし先進資本主義国の未来にしか社会主義像がないのだという議論は、あまりに貧しく寒々しい教条主義だ。

そこでは独裁的で反動的な権力を民衆の力で顛覆したロシア革命や中国の解放闘争、さらにアメリカと高い勝利したベトナム解放闘争すらその歴史的意味を消失する。ましてやキューバやニカラグアの戦いなど一時的な民衆の錯乱と受け取られるしかない。

いつの間に、日本の社会主義・共産主義思想は乾燥シイタケのように干乾びたものになってしまったのだろうか。

第18回非同盟運動サミット会議

2019年10月25-26日
アゼルバイジャン共和国のバクー

宣言「バンドンの原則を守り、現代世界の課題への適切な対応を」

BAKU DECLARATION of the 18th Summit of Heads of State and Government of the Non-Aligned Movement (NAM)

抄訳です。公式の引用はご遠慮ください。

前文

2016年9月17〜18日にベネズエラのボリバル共和国マルガリータ島で第17回サミットが開催されました。それは、NAM加盟国および人類全体にとって懸念される主要な問題の解決のために効果的な貢献を目指しました。

それは、バンドン(1955)およびベオグラード(1961)で明確に表現された非同盟運動のビジョン、原則、目的に沿ったものでした。今回のサミットはそれらを引き継いでいます。

私達はすべての人のために平和、平等、協力、幸福の世界を達成することを目指します。私達は世界が豊かな多様性で構成されていることを承認し、国連憲章の目的、原則、規定に対する私たちの強いコミットメントを繰り返します。

人類の政治、経済、社会、文化システムは多様であり、特定のモデルの押し付けはあってはなりません。この点に関して、メンバーの権利と特権を守る決意を表明するものです。私達は主権と政治的独立の原則を守り、対話と寛容の促進へ向けて行動します。

国家の領土保全または政治的独立に対する脅威、武力行使などが、国際的な問題を解決する手段として採用されることはありえません。そのような脅威または武力の行使は、国際法および国連憲章の違反となります。

非同盟政策の具体的な内容とは、植民地主義と新植民地主義、あらゆる形態の外国の介入、攻撃、占領、支配または覇権と戦うということです。

今世界では、武力紛争、拡張主義、テロリズム、分離主義、国境を越えた組織犯罪などの過激な思想が強まっています。それが人権侵害、金融危機、環境悪化をもたらし、世界中の人々に被害を及ぼし続けています。

私達は多国間主義と国際協力の強化をもとめ、そのために非同盟運動の有効性の向上に努めます。私達は国連憲章と「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を支持します。それらは国連の3つの柱である平和と安全、開発、人権を促進するための基本的な戦略です。

章文

(小見出しは私がつけたものです)

私達は以下の目的を達成するために共同で努力します。

A. 非同盟運動の役割強化

*運動の役割を活性化し、現在の政治的現実にふさわしいものにする。

*国際的に平和を支援し、戦争に反対する運動の地位と役割を強化する。

*発展途上国の利益を促進する。公正で、包括的で、透明で効果的な国際システムを構築する。

*正義と公平の原則に基づいて、戦争の脅威、武力紛争、環境ハザード、気候変動、伝染病、極度の貧困などに対処する。

*非同盟諸国への新たな脅威を考慮し、運動内で団結し、国際平和、安全、開発への挑戦をおこなう。

*非同盟運動の有効性を高めるため、加盟国の利益と優先事項を適切かつタイムリーに支援、調整する。ダイナミックで効果的なメカニズムを作り上げる。

B. 国連重視と多国間主義

*国連を核とした多国間主義を支援する。国際秩序の制度的および法的枠組みにおける国連の中心的役割。

*国連の強化と近代化のために、普遍的かつ代表的な組織である国連総会を活性化する。

*国際的な平和と安全の分野をになう国連安全保障理事会の改革。より民主的、効率的で透明性の高いものとする。

C. 国際的な平和と安全

*友好関係と協力に関する国際法の原則を忠実に遵守する。国家が引き受ける義務を国連憲章に従って誠実に履行する。

*内政不干渉の原則をまもる。すべての国の政治的主権、政治的な独立を尊重する。「合法的に構築された政府」に対する不安定化策動を行ってはならない。

*相互不可侵の原則を守る。国家の統一や領土の保全に対する脅威、武力不行使の原則。

*これらの原則を部分的または全体的に混乱させるような、あらゆる試みに反対し続ける。これらの試みに対し、国際社会は必要な措置を講じるべきである。

D. テロへの態度の原則

*あらゆる形態のテロとの闘いにおけるNAMの連帯を強化する。テロを防止し、戦うための協力を強化する。

*テロとの闘いにおいて、非同盟運動は国連憲章・国際法にもとづく義務を積極的に担う。いかなるテロ行為であっても傍観することはない。

*テロリズムはいかなる宗教、国籍、文明、民族集団とも関連してはいない。そうあってはならないことを、非同盟運動は強調する。

*テロリストグループは国家、地域、および国際の平和と安全を危険にさらす。安全な避難所、作戦の自由、移動と徴兵、財政的、物質的または政治的支援を行ってはならない。

*法の正義をもたらすために、適切な場合には引き渡し原則に則って関係者を引き渡す。「適切な場合」にはテロ行為の加害者・支援者、テロ行為の資金調達、計画、準備への参加者が含まれる。

E. 核兵器のない世界のために

*人類にもたらされる脅威を排除するための努力を倍加する。大量破壊兵器、特に核兵器の存在が人類最大の脅威となっている。

*私たちは、核兵器のない世界を実現するために努力することを決意します。

*非核兵器地帯の強化。とくに中東地域での非核兵器地帯の設立をめざす。

*私達は平和的目的のために原子力エネルギーを開発する国の主権を改めて表明し、その独立性と経済発展を考慮に入れる。

F.  航海の自由と資源の自由な流れ

*私たちはホルムズ海峡、オマーン海、紅海などの国際水域での最近の一連の負の事件について懸念を表明する。中東での石油タンカーおよび商業船に対する挑発的な行動を抑制するようもとめ、国際商業航法およびエネルギー供給の安全性と安定性を維持するよう訴える。

*いま中東地域外のすべての人々をふくむ国際社会全体が、航海の自由と石油やその他の資源の自由な流れを維持するようもとめている。

*そのためには、繰り返しますが、国家の主権、領土保全、独立の原則、内政不干渉を尊重し、国連憲章に記されている原則を厳格に遵守して平和維持活動を行うべきである。これは国際平和と安全の促進における共同努力の重要な要素である。

*平和維持活動を成功させるためには、その基本原則を尊重すること、すなわち、当事者の同意、公平性、および武力の不使用が重要である。

G. 持続可能な開発のための2030アジェンダ

*非同盟運動の加盟国はその共同活動により平和の文化を促進しなければなりません。国家間の平和と信頼を促進するため、努力を動員する必要があります。そのための手段を構築しなければなりません。とりわけ持続可能な平和、連帯を構築するための政治対話と相互理解が必要です。

*「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、普遍的かつ変革的であります。多面的かつ統合的なアプローチが必要です。それは最大の世界的課題です。開発途上国には開発の権利があり、それは尊重されなければなりません。それは世界の持続可能な開発に不可欠な要件です。

*極度の貧困を含むすべての形態と次元で貧困を根絶することは、なお重要な要素の1つです。

*2001年のドーハ開発ラウンドは、貿易交渉における開発の側面の中心的な重要性を再確認した重要な会議でした。開発途上国の利益も反映される多国間貿易システムの構築が必要という認識を共有しました。

*しかし先進国における保護主義の高まりは、特に発展途上国の輸出にマイナスの影響を与える。私達は世界の金融・経済危機が世界貿易に及ぼす悪影響について深刻な懸念を表明する。

H. 一部の非同盟諸国への一方的な強制措置

*非同盟運動は一部の加盟国に対する一方的な強制措置の適用に対する強い非難を表明する。それらの措置は著しい不均衡と不平等をもたらしている。

*それらの措置は国連憲章および国際法、特に国家の非干渉、自決および独立の原則に違反する。それらは人々の生存権に影響を与え、完全な経済的および社会的発展を妨げる。わたしたちはそのような措置の廃止を要求し、その決意を繰り返すものである。

I. 気候変動


J. 南南協力


K. 人権問題

*1993年のウィーン宣言と国際的なコミットメントおよび国内法に従って、すべての人権の促進と保護へのコミットメントを再確認する。普遍性、透明性、公平性、非選択性、非政治化、客観性の基本原則を遵守することにより、人権を強化する必要があることを改めて表明する。

*世界的に認められた人権の包括的な部分として、開発の権利が含まれなければならない。持続可能な平和と繁栄を築くことが、すべての人権の完全な享受を確保することにつながる。

L. パレスチナ:外国人支配下にある人々の自己決定権

*東エルサレムを含むパレスチナ領土の、イスラエルによる占領を完全に終わらせるための、真剣な集団的努力を緊急に呼びかける。状況のさらなる危険な悪化と不安定化を回避するために、迅速に行動しなければならない。

*私たちは外国の占領・植民地支配下にある人々の自己決定権に関する、原則的立場の妥当性と関連性を再確認する。

*国際人道法および人権法を含む国際法、および関連する国連決議、安全保障理事会決議が尊重されなければならない。

*国際社会はパレスチナ問題に対する歴史的、政治的、法的、道徳的責任を自覚し、パレスチナ人の譲渡不能の権利の実現を支援しなければなrない。

*東エルサレム、シリア・ゴランを含むパレスチナ領土のイスラエルによる占領を完全に終わらせなければならない。そのための真剣な集団的努力を緊急に呼びかける。

M. 中東難民の処遇について

*武力紛争の状況にある加盟国において、国内避難民のための恒久的解決策を促進する主要な責任が該当国家にあることを認識すべきである。安全で尊厳のある自主的な返還を含むとともに、人権の尊重、保護および履行を確保することがもとめられる。

*国外から流入した難民については、人類に対する共通の課題として対処する。そのために、多様性に対する寛容と尊重を促進し、文明間および文明内で共通の基盤を模索する。共通の価値、普遍的な人権を重んじ、協力、パートナーシップ、包括を通じて、人種差別、外国人嫌い、不寛容との戦いを進めなければならない。

*国、地域、およびグローバルなイニシアチブを評価し、異文化間の対話を促進する。


本日の赤旗国際面はビッグニュースが目白押し。見出しだけ並べても最近の世界の激動ぶりがよく分かる。

1.エクアドル: 政府が燃料費補助廃止を撤回

2.韓国: 検察特捜部を縮小

3.シリア: シリア政府、クルド勢力と連携
米大統領、トルコに制裁

4.ポーランド: 議会選挙 上院で野党が過半数

5.ハンガリー: 野党共同候補がブタペスト市長選挙で当選

6.チュニジア: 無所属の大統領が勝利

7.イラン: タンカー爆発は国家の関与か

8.アメリカ: IMF予測 世界成長を下方修正

9.中国: 対米輸出が前年比22%減となる

これらのニュースの中で、エクアドルがなぜトップ記事になったのかはよくわからない。どうも最近の赤旗国際面はよくわからない。

これらについては、少し背景をふくめて勉強しなければならない。

2004年10月3日(日)「しんぶん赤旗」
ここが知りたい特集 バンドン精神
来年50周年 注目される今日的意義
「バンドン精神」とは
宮崎清明記者

非同盟諸国会議(百十六カ国が加盟)の外相会議は、「バンドン精神」十原則の今日的意義を強調している。

1954年、ネール・インド首相と周恩来・中国首相との共同声明で平和五原則((1)領土、主権の尊重(2)不侵略(3)内政不干渉(4)平等・互恵(5)平和共存)が確認された。それは「バンドン会議」に受け継がれた。

バンドン十原則は、平和共存の諸原則を含んでいる。バンドン会議には米国の干渉もあったが、中国の周首相は、「バンドンに来たのは共通の基盤を探るためで、相違をつくり出すためではない」と一致点追求の重要性を説いた。


バンドン十原則のうち、非同盟主義の組織原則に関わると思われるポイント

1.国連憲章に明記された諸原則

2.国家主権の尊重と内政不干渉

3.「集団的防衛機構」は大国のためではない。他国に圧力をかけない。

4.国際紛争は、関係国が選択する平和的手段で解決する。

1.と2.は平和共存五原則の内容を引き継いでいる。

一方、非同盟主義には運動としての側面もあり、その原則も書き込まれている。

1.人種、諸国民の平等

2.相互協力の増進

3.正義と国際的義務の尊重

これらは「責務条項」であるとともに、運動としての非同盟主義の原則である。

これらの課題については、本来はAAPSOのような連帯組織が担い、発展させるべきものであったが、必ずしも成功しているとは言えない。

バンドン

2006年5月30日(火)「しんぶん赤旗」
先制攻撃論を批判
マレーシア首相 非同盟閣僚会議で演説
【ハノイ=鈴木勝比古】

議長国マレーシアのアブドラ首相の行った基調演説。

諸大国がテロとのたたかいでとっている行動は明らかに国際法と文明社会の行動規範に違反している。

人道介入、防衛責任、先制攻撃戦争などの考えを含む新しい概念と教義がわれわれに押し付けられている。

これらすべては、国連憲章に明記された伝統的、普遍的に受け入れられた概念に対する挑戦である。

今日、国際関係で単独行動に訴える傾向がある。これは国連安保理の承認が得られない時に国連の枠外で行動するものである。

われわれはこうした傾向に反対し、国連憲章に明記された諸原則を擁護する。

ということで、ここでは以下のような状況が非同盟運動の理念に反するものと考えられている。

1.諸大国による人道介入の正当化、防衛責任の拡大解釈、先制攻撃の条件附容認などの考え。

2.国連憲章への挑戦と単独行動主義。

これは明らかに大量破壊兵器を口実としたイラク攻撃を念頭に置いたものである。


を増補しました。ネタは主として「世界的金融危機の構図」(井村喜代子)です。2009年6月までの事項しかないので、さほど内容的には増補になっていません。
もっと本格的な年表がどこかにあったと思いますが…

イングランド銀行カーニー総裁の講演 詳報

8月26日のブルームバーグ報道で、「ドル支配終わらせるデジタル基軸通貨体制を提唱
Carney Urges Libra-Like Reserve Currency to End Dollar Dominance
と題されている。

リードは下記の通り

カーニー総裁はドルを基軸通貨とする世界的金融システムの抜本的改革を求めた。
そして極めて大胆な提言を行った。
最終的には「リブラ」のような仮想通貨が準備通貨としてドルに代わることになるとの考えだ。

以下本文

最初に現状認識

経済政策を巡る不確実性が高まっている。
あからさまな保護主義がはびこり、政策余地は限定的となり、今後は悪影響を打ち消せなくなるかも知れないとの懸念が広がっている。
これらの悲観的観測が組み合わされ、世界経済のディスインフレ傾向を悪化させている

「現状維持」思想は誤り

各国・地域の中銀が短期的にはこうした事態に対応することは必要だ。しかし現状維持の思想は誤りだ。最終的には劇的な措置が必要になる。

「通貨覇権の入れ替え」であってはならない

基軸通貨がドルから中国人民元に代わっても問題は解決しない。「長期的に見て、われわれはゲームを変更する必要がある」

合成覇権通貨(SHC)の構想

世界の準備通貨としてのドルの地位が終わったあと、グローバルなデジタル通貨が登場するだろう。

それはリブラのようなものとなるかも知れない。リブラは各中銀の直接的な管理から外れたものと構想されているが、SHCは各国中銀の「デジタル通貨ネットワーク」を通じて公的セクターによって提供されることになるだろう。

カーニー総裁の結語

このアイデアの初期バージョンは試行錯誤を繰り返すことになるだろう。
しかしいくつかの欠陥が立証されたとしても、SHCのコンセプトは魅力的だ。
それは世界貿易における米ドルの支配的影響力を弱めるかもしれない。

結局、現下の経済不安の主因は、トランプの存在そのものだ。
議会も民意もない。彼がツイッターに書き込めば、それが世界を動かしていく。これは民主主義の対極だ。

そういうトランプ現象を生み出したものが2つある。
一つはアメリカの草の根に潜む漠然とした不条理であり、それはいかなる時も40%の不正義への支持を叩き出す。
もう一つはドル基軸通貨体制である。これがあるために、世界の国々はますます米国に逆らえなくなっているし、そのためにトランプの顔を伺うようになっている。

この「構造欠陥」はリーマンショックとその後の欧州金融危機のときにも話題になった。その後大規模な量的緩和の中で話題から外れた形になったが、米中経済摩擦が激化する中で再び深刻な問題として浮上しつつある。

赤旗(金子記者)によると、今回はイングランド銀行のカーニー総裁が口火を切ったらしい。
米ドルという一つの国の通貨が、世界の通貨金融システムの中で優越的地位をしめている。
今やリスクは積み上がり、それらは構造的だ。
多極的な世界経済システムに、単一の通貨体制はふさわしくない。
赤旗もいうように、シティーの主がそう語ったとしても、にわかに信用できるものではない。しかし“シティーでさえも”、という言い方もできる。

今や世界の最大リスクはトランプであり、世界はこの一人の変人の奇行をまったくコントロールできない。
ヒトラーに対してはもう一つの極が形成されたが。しかしトランプに対しては、21世紀の世界は、未だにもう一つの極を形成し得ないでいる。なぜなら単一通貨制だからだ。

ここが問題だ。

下記の記事をご参照ください

2011年10月25日  中国の国際通貨論




1.1970 年代の世界経済

不況の深刻化,失業の増大,インフレの高進という事態が,米国をはじめ,多くの 先進資本主義国を襲っていた。日本だけが例外であった。

2.世界経済における英・米経済の興亡

ポール・ケネディ『大国の興亡』(1987年)
アメリカの衰退は帝国の「過剰拡張」による。それは世界経済の覇権国にいずれは訪れる歴史的運命だ。

3.戦後世界経済とケインズ連合の興亡

マサチューセッツに留学して「戦後世界経済とケインズ連合の興亡」(1996 年)という本を書いた。

その論点は以下の通り

①1970 年代以降のアメリカ資本主義の危機は,戦後形成されたケインズ連合の危機・崩壊であった。

②その要因は企業の多国籍化と、金融自由化と金融機関の強力化である

③帝国の「過剰拡張」は国内での蓄積危機を回避し、世界経済的規模で資本蓄積を継続させる道である。

④そこに金融が再登場し,アメリカの経済システムが金融覇権を軸に回り始める。

しかしこれだけではソ連崩壊後の現代世界経 済そのものの分析には至ることはできない。

4.現代世界経済と金融不安定性の構図

『世界経済と企業行動』(2005 年)で現代世界経済論(ポストケインズ論)の一つのあり方を示せたと考える。

それは2008年リーマン・ショック後の世界経済危機についても分析の視角を提供している。
中心的な視座はミンスキー・モデルを国際的な分析に援用することにある。

この本の骨子は以下の通り。

A) 戦後世界経済システムの本質
①戦後の(西側)世界経済は世界市場志向・資本集約型産業企業を中核とする多国籍化であった。
②多国籍企業の組織的特徴は,多角的事業部門性にある。
③多国籍企業の活動には国際資本取引の自由が保証されることが必要だ。
これらに対応した世界システムが GATT → WTO 体制と呼ばれるものであった。

B)よみがえった米国巨大金融機関
ミンスキーの三分類を持ち出してくるが、少々説明が必要。
不安定撹乱型金融には(1)ヘッジ金融、(2)投機的金融、(3)ポンツィ金融の3つがある。 ポンツィは、1920年代にボストンでねずみ講を組織した詐欺師だ。要するに詐欺まがいの不安定金融。
ようするに米国の金融機関が蘇ったのはこのような悪辣な手法によるということ。
それで、米国の対外金融が投機金融からポンツィ金融に変わったとする。(ただしここでは説明はない)

C)リーマンショック後の世界

「新自由主 義と金融覇権」という視角から見る必要が出てきた。「金融覇権」というキーワードが重要であると考えるが、今後の課題となる。

(ミンスキーについては私の記事も参照されたい。

どうも、いろいろ調べてみると、「為替操作国」はアメリカの世論操作の可能性がある。

理論的には10%の追加関税は10%の通貨安で相殺することが可能である。さては中国側の「奥の手」かと興味を持ったが、中国側には為替を「禁じ手」として行使する意図も能力もなさそうだ。

たしかに下げ幅は大きいが、トレンドから見れば想定内の下げとも思える。

何が起きたのか

まずはニュース情報を総合してみる。

8月1日 トランプ大統領、中国産品に10%の追加関税を課すと発表。9月1日発動の予定。

8月5日 人民元相場が一時1ドル=7元台となる。これは11年ぶりの安値。

8月5日 トランプ大統領がツイート。「これは『為替操作』だ。中国は為替を操作して、米国からビジネスや工場を盗み出している。もう許さないぞ」

8月5日 米財務省、意図的に通貨安を誘導しているとして、中国を「為替操作国」に指定。この措置に伴う新たな経済制裁は無し。

8月6日 クドロー米国家経済会議委員長、「関税の重荷はほぼ全て中国側にかかっている。中国経済はボロボロになっている」と発言。

8月6日 中国人民銀行(中央銀行)は為替操作を否定。

8月6日 オフショア人民元は、7.1元台まで元安が進んだ。海外投機筋が元売りを主導している。


人民元相場: これまでの流れ

2005年7月21日 ドルペグ相場制(1ドル=8.28元)から管理フロート制(03%の変動幅)に移行した。同時に2.1%の切り上げ。

2007年5月21日 変動幅を上下0.5%に拡大。この結果、1ドル=6.83元まで上昇する。

2008年9月 リーマンショックが発生。人民元売り介入により、1ドル=6.83元に固定。

2010年6月 管理フロート制に復帰。1ドル=6.05元まで上昇。

2014年 人民元が下落トレンドに入る。経済成長率の鈍化、国外への資本流出が背景にあるとされる。

2015年8月 チャイナ・ショック。人民元相場が急落し、中国が制御不能な資本流出に見舞われる。

2017年 トランプ大統領の就任に伴い一時的な元高。トランプの元安攻撃に対応した可能性あり。

2018年~現在 長期の元安傾向が再現。米中貿易戦争やドル金利上昇による資金流出が背景となる。

今後の予測

アメリカにはまだまだ「経済・金融戦争」を拡大する余力が残されている。メディアはトランプにエールを送り続けている。

いまのところ中国はサンドバッグ状態に耐えるほかない。隠忍自重がもとめられる。今後は迂廻輸出や現地法人などの経営努力がもとめられることになるだろう。ただしかつての日米経済摩擦と異なり、中国には安保という重荷がない。その分フリーハンドを行使できる。

貿易赤字構造は究極的にはアメリカ自身の責任なのだから、何時までも踏み倒すわけには行かない。いづれツケが回ることになる。そのときアメリカ以外のすべての国がツケの支払いを求めることになるだろう。

とにかく最近のメディアの倫理的頽廃は目を覆うばかりだ。ほぼデマ宣伝みたいなものまで、権力側の情報をなんのためらいもなく垂れ流すから、よほど注意が必要だ。これが今回の出来事の最大の教訓かも知れない。


米財務省の「為替操作国」指定・三基準

(1)対米貿易黒字が年200億ドル以上、(2)為替介入(ドル購入)がGDPの2%以上、
(3)経常黒字がGDP比で2%以上
3つのうち、2つを満たすと「監視対象」に、すべてを満たすと「為替操作国」に指定する。

現在は日本やドイツなど9カ国が「監視対象」に指定されていいる。

チャイナ・ショック

2015年7月、中国で証券バブルが弾け、上海証券取引所は株価の30パーセントを失った。上場銘柄の半数以上が取引を停止した。8月には全世界同時株安がもたらされた。

「ファイナンシャルスター」記事を参考にしました。

赤旗の記事で初めて知ったのだが、
投資ファンドのうち最大手のバンガード・グループはアップル、フェイスブック、アルファベットの筆頭株主となっている。
このバンガードにブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席捲している。
のだそうだ。
初耳だったので調べなければとは思ったが、ついそのままにしていた。
そんなとき「資産運用3巨人」という言葉が日経新聞に載っていたのを発見した。


どうも赤旗記事はこの日経記事の引用のような気がする。とりあえず以下にその要約を載せる。

資産運用の御三家

バンガード、ブラックロック、ステート・ストリートの3社が御三家と呼ばれる。3社の株式運用額は約8兆8千億ドル(990兆円)。これは世界の時価総額(9月末)の10.4%に当たる。

東証1部の最近の時価総額が約600兆円に過ぎないことを考えれば、それがいかに凄まじい額であるかはよく分かる。

sankyotou

たとえいかに控えめな投資家であったとしても、議決権を通じた社会への影響力はもはや無視できない。

インデックス運用 投資方式の特徴
これらの投資会社は、米S&P500や日経平均株価など株価指数に連動するインデックス運用を主力としている。
のが共通の特徴なのだそうだ。

インデックス運用はコストが安いらしい。
例えばトップのバンガード社には「トータル・ストック・マーケットETF」という商品がある。
これは米国株に分散投資する一種の投資信託なのだが、その経費率が年0.04%。つまり100万円投資して、投資家が負担するコストは400円だけ。

と言われてもよくわからない。

一応、インデックス運用をめぐる最近の動きについて引用しておく。
世界の運用資産に占めるインデックス運用の比率は現在17%前後。これが25年には25%まで高まる見通しだ。
コストの最少化を目指すインデックス運用は投資先数の割にアナリストの数が限られるが、新しい運用も登場し、伝統的運用の領域を侵そうとしている。

もの申すファンド

2017年、石油大手の株主総会で異変が起きた。「カリフォルニア州職員退職年金基金」が気候変動に関する対応を求めた。
これに御三家の一つブラックロックが乗った。「企業の長期安定成長を目指し、健全な経営を働きかける」というのがその意向だった。
なぜなら最良のインデックス運用には、企業の誠実な株主対応が不可欠と考えたからだ。
こうして株主提案が続々と可決された。

運用大手三社

ほかにも、ステート・ストリートが「日本企業に女性取締役の登用をもとめる」と発表している。

それが意味するのは、単純な環境とかフェミニズムの問題ではなさそうだ。これはコーポレートガバナンスが空洞化し、ファンドが企業を支配する時代の始まりなのかも知れない。

5Gをめぐる争い  

夏目啓二さんの連載記事の最終回。5Gとファーウェイの話が中心となる。
この辺はほかの記事でも明らかにされていることが多く、新味はないが、よくまとめられているので転載させてもらう。

現状

5Gの通信規格は現行システムの100倍の通信速度を持つ。

この分野でファーウェイが世界をリードしており、世界を支配する可能性がある。

昨年8月、トランプ政権は国防権限法を制定し、政府機関でのファーウェイ製品の使用を禁止した。
さらに同盟国に対してもファーウェイの5G製品を使用しないよう求めた。

ここまでは周知の事実である。

各界の反応

EU

今年3月、欧州委員会は5Gについて協議した。その結果、米国とは一線を画し、ファーウェイ排除を見送った。

西側諸国

日・豪政府は米国に追従。英・独は目下のところ同調せず。

制裁の効果

18年度、ファーウェイは基地局の売上シェアを2%減らし、トップの座を譲った。ライバル社のエリクソン(スエーデン)が僅差でトップとなった。

しかしファーウェイは欧州・中東・アフリカ・アジア太平洋で以前トップの座にあり、しかもシェアを拡大している。

総じて制裁効果は著明とは言えない。

追加制裁

5月15日、米商務省は強力な措置を打ち出した。ファーウェイとの取引の禁止である。

これは昔のココムと同じ思想だ。政府機関ではなくすべての商取引を一網打尽とするものだ。当然同盟国へも同様の措置をもとめて圧力をかけてくると見られる。

特に後者の影響は深刻なものとなる可能性がある。

ファーウェイの年間海外調達額は670億ドルで、この内100億ドルが米国からの調達である。

100億ドルという額は必ずしも大きくはないし、他国への切り替えも不可能ではない。しかし中核的な部品、スマホの基本OSは、グーグルなど米企業の独占となっているもの多い。

これに加え、部品調達の6割を占める東アジア諸国が米国との同盟関係を重視するとなれば、影響は極めて深刻なものとなる。



ここまでが、記事の要約です。

米中摩擦の技術学的背景を知るにはたいへん役に立つ資料だと思います。

ただ、この米中摩擦がどうなるかという問題は、結局は米政府内における政治意思決定過程の問題です。それは短期的には米国の政治的力関係・景気動向に左右されると思われるので、そのへんの分析が大事になっているのだろうと思います。

具体的には大統領選挙に向けた支配層の動き、とりわけトランプ陣営、軍産複合体と並んで政治支配力を持つ金融ファンド(ウォール街)の動きが注目されるのではないでしょうか。

5Gとファーウェイ

米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

GAFAの背後に三大資産運用ファンド

米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

夏目さんの連載記事は本日が(中)で、3回続くことがわかった。

それで本日の話は、ハイテク面での米中摩擦がどういう局面にあるのかという話。ぶっちゃけていえば、中国のハイテクがいかにすごいのかという話だ。

それはそれで面白いのだが、この連載の主題とは少しずれた話になる。

そのことを承知した上で、話を拝聴することとする。

1.ハイテク企業の3つの分野

この記事はスクラップ・ブック並みにファクトがギチギチと詰め込まれている。これを解凍して読みやすくしようとすると、元記事の3倍位に膨らんでしまうだろう。

米中ハイテク産業の比較話に入る前に、私なりに情報を整理しておきたい。

一言でGAFAというが、業態はかなり違っている。

正確な意味でプラットフォームと呼ばれるのは、グーグルとファイスブックだろう。
グーグルは検索エンジンから始まって、アンドロイドでスマートフォンのOSを握り、クロムでメインブラウザーの地位を獲得した。しかしその圧倒的強さは検索エンジンに由来している。ブラウザーの地位は必ずしも強固とは言えない。

これに対し、アマゾンはネット通販会社であり、販売方式の斬新さによりトップの地位を獲得したが、この世界の競争は並み大抵でなく激烈である。

アップルは携帯電話(スマートフォン)で成功したハードウェアメーカーであり、技術的な優秀さよりはアイデアの斬新さとスマートさに成功の要因がある。

このように、ハイテク企業と言っても中身はものづくり、販売、「狭義のプラットフォーム」提供という3つの分野に分けられるだろう。

それぞれで米中の力関係がどうなっているのか、というより中国が如何にGAFAを追い上げているのかを見ていく必要がある。
この記事ではハードウェアに焦点が当てられ、アップルの例が取り上げられている。

2.アップルのライバルたち

4大企業がアップルとライバル関係にある。すなわちファーウェイ、オッポ、ビボ、シャオミである。

10年前、アップルは中国市場で販売1位だった。現在は5位に転落している。

フラッグシップ会社のファーウェイは、スマートフォン販売でアップルを追い越し、世界2位となった(1位はサムスン)。

3.中国企業の4大成長センター

中国には先端企業の集中する成長拠点が4つある。
北京: ハイテク系企業センター
上海: 金融系センター
深圳: スマートフォンなど製造系センター
杭州 : 電子商取引(EC)系センター

深圳のリーダーがファーウェイであるのに対し、杭州 ではアリババ集団が本拠を構える。

4.シリコンバレーと珠江デルタ

広東省の朱江河口域は多くのハードウェア系のスタートアップ企業がひしめいている。企業価値が10億ドルをこすユニコーンはこの3年間に3倍化し、70社に達している。(米国は120社)

とくに深圳市にはファーウェイ、ZTE、トランションが本拠を置き、地域に技術・ノウハウを蓄積している。

5.中国(アジア)先端企業とファンドの投資

2018年度の全世界における投資額は553億ドルであった。このうち54%がアジア太平洋地域へと投資された。これは米国をふくむ北米地域の2倍に当たる。

どこから?

米国のカーライル社がアジアファンドを立ち上げ65億ドルを集めた。ブラックストーン・グループも94億ドルを集めたと言われる。

シンガポールやマレーシアの政府系投資会社、カナダの年金投資委員会も活発に動いている。

どこへ?

アジアの企業別投資額の上位3位は中国が独占している。
1位: アリババ集団の金融部門を受け持つアント・フィナンシャルへ140億ドル
2位: 検索エンジンのバイドゥの金融部門へ43億ドル
3位: ネット金融サービスのルーコムへ13億ドル

となっている。

とりとめのないまとめになってしまったが、時間があれば別資料で補完していきたい。


米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

GAFAの背後に三大資産運用ファンド

赤旗経済面で注目すべき連載が始まった。
「米中デジタル競争」という題名で、寄稿者は愛知東邦大学教授の夏目啓二さん。本日は(上)でありこの後下になるのか中・下と続くかはわからない。

いづれにしてもインタビューでなく寄稿ということなので、相当力の入った記事であることは間違いない。

本日の見出しは「GAFAの支配と動揺」となっている。「支配」だけでなく「支配と動揺」というのが気に入った。

以下、要旨を紹介していく。

1.はじめに

GAFAはデジタル多国籍企業である。
それは世界のデジタル産業を支配している。
GAFAこそ現代世界経済の支配者である。

GAFAの2つの特徴として、①顧客の囲い込みによる利得拡大、②投資ファンドとの結合が挙げられる。

2.囲い込みで巨利

GAFAはプラットフォーマーと総称され、膨大な顧客を囲い込むことで、巨額な利益と高い利益率を確保する。

GAFAはいづれもデジテル技術開発により規模を拡大した後、投資ファンドの注目をあびるようになった。その後、新規株式公開(IPO)を利用して資本を調達して一気に巨大化をなしとげた。

これにより新たに巨大な顧客集団が創出され、高い売上対利益率をもたらす。

こうしてGAFA経営者と投資ファンドは、高利益率と高株価を一手におさめる一握りの独占者となる。

3.投資ファンドとの結合

投資ファンドはGAFA株の時価が押し上げられることで、さらなる投資家を引きつけるようになった。

新興プラットフォーマーはスタートアップ(二軍)と呼ばれる未公開企業からスタートする。

そのうちIPOにあと一歩というめぼしい企業はユニコーン(次世代GAFA)と呼ばれ、投資ファンドはテコ入れの機会をうかがっている。

投資ファンドはプラットフォーマーに対して、一種のパトロンとしての力を急速に獲得しつつある。

4.投資ファンドの実体

投資ファンドのうち最大手のバンガード・グループはアップル、フェイスブック、アルファベットの筆頭株主となっている。

このバンガードにブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席捲している。

彼らの持ち株総額は990兆円と言われ、そのうち500兆円をGAFAへの投資が占めている。

ここに今日の世界的な所得格差と資産格差の実態が厳然と示されている。

5.GAFAのゆらぎ、それをもたらしたもの

この強固な覇者連合のうち、GAFAの側に揺らぎが出ている。ここに現在の経済覇権をめぐる混乱の原因がある。

GAFAの18年通年利益(税引前)は合計で約15兆円だった。しかし売り上げ対利益率は6年前に26%だったのが20%にまで低下している。
この低下傾向はかなり確実な傾向(超過利潤の低下)であり、GAFAによる世界経済支配が揺らぎつつある兆候である。

「利潤率の低下傾向」は一般的なものであるが、直接的には強力なライバルの出現によりもたらされる。

それは具体的には中国のプラットフォーマーである。彼らはGAFAに倣ってBATHと呼ばれる。
すなわち、バイドゥ(百度)・アリババ・テンセント・ファーウェイの4企業である。




2019年5月

トランプとアメリカ帝国主義

北海道AALA学習会での講演レジメです。とりあえずそのまま載せますが、そのうち手を入れようかと思います。


帝国主義の変貌 1 ケネディー~ニクソン時代の帝国主義

私の世代では、「帝国主義」といえば、評論員論文「ケネディーとアメリカ帝国主義」と「ニクソンとアメリカ帝国主義」だった。

そこでは「帝国主義」は

1.覇権主義(特に軍事的覇権)

2.新植民地主義(民族主義の抑圧)

3.資本主義体制の盟主としての秩序強制

のセットとして描かれていた



帝国主義の変貌 2 レーニンの時代の帝国主義

私の世代では、「帝国主義論」といえばレーニンだった。

100年前の帝国主義は

1.多くの国が皇帝・王を擁する文字通りの帝国

2.銀行を頂点とする独占資本の寡占支配

3.世界を植民地として分割し非均衡貿易を強いる

という特徴を持っていた。そして帝国間で覇権を覗っていた

アメリカは独立を勝ち取った「自由の国」であり、特殊な「帝国」だった。
それは非帝国的な帝国主義という概念をもたらした。



帝国主義の変貌 3  唯一の超大国としてのアメリカ

ソ連・東欧諸国の崩壊により、アメリカが自動的に唯一の超大国となった。

しかしアメリカ自身も深刻な弱点あり、完全な一極化ではなく1.5極化にとどまる
(0.5としてEU、中国、ロシアなど)


しかしその後アメリカは次のような手段で覇権を強化した。

1.金融工学開発と米ドルの基軸化

2.新興国への新自由主義(為替・資本自由化)の押しつけ

3.国連を軽視する単独行動主義

により唯一の覇権国=「帝国主義国」への道を歩む




帝国主義の変貌 4  「唯一の超大国」が覇権を求める

イラク侵攻時に世界で起きた抗議行動など、アメリカの覇者への道は決して平坦ではなかった。それが一気に全面的な覇者の地位に上り詰める。そのきっかけはリーマン・ショックであった。

アメリカは大規模な量的緩和を繰り返すことによって、世界に対する金融支配力を強化した。対応が遅れたEUは一気に弱体化し、新興国は深刻な債務危機に陥った。

こうして次のような帝国主義の新段階が登場した。

1.ドルが唯一の決済通貨に。ドルによる世界支配

2.ドルを持つ1%の人が世界を支配する体制

3.軍事力と金融力による世界支配

これに情報分野での高い競争力を加えることにより、アメリカの世界支配が完成した。

一方で国内・国外に矛盾と不満・敵意が蓄積し、世界が急速に不安定化しつつある。



帝国主義の変貌は何をもたらすか

これが「トランプとアメリカ帝国主義」という提示に対する私なりの回答になる。

「デマゴーグ政治と軍産複合体の癒着」というのがトランプ政権の特徴であろうと考えている。
なぜそのような政権が登場したのか、その基礎となる社会的状況と歴史的段階を考えてみたい。
それは「アメリカ帝国主義の変貌」という性格を持っていると思う。


1.人類史上最強・最悪の帝国主義の出現(倫理観の欠如)

2.金融不安の増幅(常に金融恐慌の可能性が存在)

3.憎悪の共振がもたらす戦争への不安

しかし国内外の抵抗を前に支配層の不安定性もまた増強する。
国内的には例えばオバマ前政権である。オバマ評価にはいろいろ意見もあろうが、政権の姿勢次第で投資銀行への規制、銀行預金の国際規制、医療保険制度の前進など、政権次第では1%への有効な打撃を加えることもできることを示した。
またかつてのイラク侵攻反対キャンペーンのように、多国間主義(国連中心主義)に基づいてアメリカを包囲していくならば、歴史を前向きに回転させていくことも可能だ。
新興国の発展していくエネルギーはあらゆる困難を押し切って、人類の発展を保証していくものとなるだろう。

そのためにも多くの人々がアメリカ帝国主義に対する見方を一致させ、変革の展望を共有することが望まれる。

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