鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

カテゴリ: 10 国際政治/経済

この時刻表は前に作ったものの増補版となるものです。

2016年05月09日

日本ではパナマ文書の追及もあまりされず、相変わらず「世界一企業に優しい」政治が続いていますが、海外では租税回避への厳しい対応がどんどん進んでいます。

そこで表題を上のように付けなおしたものです。なおFATCAとCRSの成立過程に的を絞ったものとして、以前の経過表はそのまま残しておきます。




2012年

2月8日 米国と欧州5か国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)が共同声明。欧州5か国の税務当局が米国人口座の個別情報を取得し、まとめて提供することとなる。

6月 OECD 租税委員会、BEPSプロジェクトを立ち上げ。多国籍企業等の租税回避に対応するため、国際課税ルールの抜本的見直しを開始。

10月 ロイターが喫茶店チェーンのスターバックスの租税回避を暴露。2010年以降、英国に一文も払っていないことが明らかになる。

スターバックスは英国で過去30億ポンド以上の売上があったのに対して、わずか860万ポンドほどの税を納税したのみ。ここ3年間においては12億ポンドの売上に対して税を納付していない。
法人税の安いオランダに所得移転し、差し引き8%の“節税”。イギリスは税収をまるまる失い、オランダは濡れ手に粟のぼろ儲けをした。

11月 英議会がスターバックスを呼び公聴会を開催。

12月 不買運動に直面したスターバックス、法人税の自発的納付で英当局と合意。欧州の本社機能を英国に移し、租税回避をやめる。

11月 英・独の財務大臣が租税回避を非難する共同声明を発表。仏の財務大臣も賛同する。


2013年

2月 OECD、「税源浸食と利益移転(BEPS)への対応に関する報告書」を作成。G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(ロシア・モスクワ)に提出。

3月 英国、ドイツ、フランスの3カ国は他のG20諸国に対し、多国籍企業の租税回避を阻止するよう求めた。G20はこれを受け、OECDに租税回避防止に関する研究報告を求めた。

5月 米上院、アップルを呼び租税回避を追及する。

6月 G8首脳会議、課税逃れ対策の支持で合意。

6月 OECD 租税委員会、15 項目からなるBEPS 行動計画を採択。FATCAのモデル1をひな形として、金融口座情報等の「自動的情報交換」を多国間に拡大するもの。

7月 OECD、G20財相会議にBEPS 行動計画を提案。

7月 アメリカの消費者団体(pirg)が米巨大企業の多くが5年間納税ゼロであったと発表。またトップ100社がタックスヘイブンに保有しているお金は、1.2兆ドルに達するとする。

8月 ジェトロ、日本の対外直接投資残高が1兆ドルを超えたと報告。96年に比し4倍となる。ケイマンとオランダへの投資が突出する。

9月 サンクトペテルブルクでG20 サミット。BEPS 行動計画を全面的に支持。次年度末を目途に国内の法整備を進めることで合意。OECDによる国際基準の策定が支持される。

10月1日 OECDの発議した「税務行政執行共助条約」が日本において発効。①締約国における自動的な 情報交換、②租税債権の徴収の支援(徴収共助)、③要請による文書送達(送達共助)を定める。

10月 フランス議会、国内書店の保護を目的とする「反アマゾン法」を可決。

12月 イタリア議会、グーグル法を可決。多国籍企業がネット広告などを掲載する場合、国内事業者を通さなければならないと定める。イタリア政府は税導入を延期する措置。


2014年

1月 OECD租税委員会、自動的情報交換の共通報告基準(CRS)を承認。

2月 OECD、「課税における自動的な情報交換に関する基準」の草案を発表。

3月6日 米国財務省とIRS、最終暫定規則を発表。50以上の修正が加えられる。

4月 アップルのCEOティム・クックが上院で証人喚問を受ける。利益の多くをアイルランドで計上していることについて説明を求められた。

5月 クレディ・スイス、「米国人顧客の脱税を意図的にほう助した」と有罪を認め、米政府などに28 億1,500万ドルの罰金を支払う。

7月1日 FATCAによる規制が日本及び世界で施行される。登録金融機関は世界中で10万以上、日本の金融機関は3,624にのぼる。

日本の金融機関は、米国人対象者を特定し、同意を取得した上で、米国内国歳入庁(IRS)へ直接報告を行う
不同意口座についてはIRSが租税条約に基づく情報交換要請を日本の国税庁にする。国税庁は金融機関から情報を入手し、IRSへ提供する

7月 OECD、CRSのフルバージョンとコメンタリーを公表。金融機関の非居住者口座を政府間で自動交換するためのマニュアルとされる。

この「完全版」は「金融口座の自動情報交換のための新国際基準」(Standard for the Automatic Exchange of Financial Account Information in Tax Matters)と題されている。

9月 G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(ケアンズ)で、BEPS報告書第一弾公表。

11月 ブリスベンのG20サミット、CRSを承認。その後97の国・地域が「税に関する自動的情報交換制度」(OECD制度)への参加を表明。日本の参加は遅れる見通し。アメリカは不参加の意向。

全国銀行協会は「OECD の枠組みは、FATCA よりもさらに負荷が大きい。実務面での配慮が必要」とコメント。

12月 この時点で、欧州各国を中心に112の国・地域が米国とIGAを結ぶ。

14年 イギリスが「UK FATCA」制度を導入。「海外領土」と呼ばれるジャージー、英領バージン諸島、ケイマン諸島、バミューダなど10カ国の金融機関に対し、英国居住者の口座情報の提供を義務付けた。これにより税金上のメリットは失われ、場合によってはHMRC(英歳入関税庁)の調査対象となる。

2015年

1月16日 欧州委員会、ルクセンブルグ政府の優遇税制措置を、EU法に定められた「違法な国家補助」に当たるとの判断。

アマゾンが税率の低いルクセンブルクの子会社にウェブサイト運営のための知的財産権を移し、同社の世界全体の売り上げの5分の1を占めるEUでの売り上げを集めていた問題がきっかけとなる。

3月 欧州委員会、「課税の透明性に対する取り組み」を発表。EU加盟国間の税務情報を、自動的に交換する仕組みを導入するよう提案。

3月31日 FATCAに関する国内法が発効。「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の一部改正(租税条約実施特例法の一部改正)という長たらしい名前。

4月 イギリス政府、Google税(Diverted Profit Tax)を施行。租税回避された広告料所得などに対しても課税。スペインではグーグル社が徴税に対抗してグーグルニュースのスペイン版を閉鎖。

5月 米上院小委員会がアップル社からヒアリング。アメリカの法人税率は35%であるのに、アップル社は、実質2%以下の税率だったことが明らかになる。

6月 欧州委員会、公正かつ効率的な課税を目指す「法人課税に関する行動計画」を発表。

10月 G20アンタルヤ・サミット、「BEPSプロジェクト」の「最終報告書」を支持することで合意。

15年 イギリスは、企業がタックスヘイブンを利用して逃れた利益に25%の税金を課す制度を導入。

15年 イギリスのタックス・ジャスティス・ネットワーク、タックスヘイブン全体で21~32兆ドルの資産が隠されているとの試算を発表。その半分がメガバンクの保有であるとする。


2016年

1月1日 イギリスやドイツなどの早期適用国(56カ国)で、CRSが実施される。2016年の口座情報が2017年9月に交換されることになる。日本2018年適用国(41カ国)となる。

1月 欧州委員会、多国籍企業の租税回避に対する規制方針をまとめた「租税回避対策パッケージ」を提案。

①効果的な課税: 利益が発生した場所で税を支払う原則
②課税の透明性: 課税を確実にするため、加盟国が情報を共有する。具体的には多国籍企業に関する「国別報告書」(CbCR)の提出を義務化。第三国にも実施を求める。
③二重課税のリスクの回避: EU域内市場を活用する企業が二重課税を受けないように保護。

1月22日 イギリス税務当局、米グーグルとの合意に達し、210億円を追加課税した。グーグルはイギリス国内で170億ポンドも稼ぎながら、バミューダ諸島などに利益を移して5200万ポンドしか納税していなかった。

7月12日 EU理事会、「租税回避対策パッケージ」の核となる「租税回避対策指令」(Anti-Tax Avoidance Directive)を採択。利子損金算入制限、出国課税、一般的租税回避防止、外国子会社合算税制、ハイブリッド・ミスマッチの5つの規定で構成される。

8月 欧州委員会、アップルのアイルランドでの事業に対しEUの定める国家補助(state aid)法違反だと認定。アイルランド政府に対し130億ユーロの追徴税を命じる。

アップルはEU諸国での売り上げすべてを、アイルランドのペーパーカンパニーで申告している。アイルランドの法人税率は12.5%と圧倒的に低く、納税回避目的であることは明白とする。

8月 米財務省、欧州委員会が「超国家税当局」になっていると批判。アップルへの追徴金に対し「深い懸念」を示す。

9月 G20首脳会議(杭州)において、BEPSプロジェクトとCRSの進捗状況が報告される。85の国や地域が、BEPSパッケージの実施に賛同。CRS参加国の追加税収は550億ユーロに達する見込み。100の国・地域が「税務上の自動的情報交換」(AEOI)への参加を表明。

9月 オーストリアのケルン首相が「スタバなどの多国籍企業の納税額は屋台より少ない」と批判

9月 デンマーク、パナマ文書の一部を購入。税逃れをした、数百人のデンマーク人についての脱税調査を行うとする。

16年 イタリア政府はアップルがアイルランドに利益を移して不当に法人税を逃れたとして、3億1800万ユーロ(約398億円)の追加課税をした。

2017年



北海道AALA大会

情勢報告 「当面する闘いと国際連帯の課題」


はじめに

第一次議案の討議の中でいろいろ意見が出たので、表現上の修正と若干の補足をした。今回の議案の特徴は題名の通り「当面する闘いと国際連帯の課題」であり、国内課題と連帯課題の関連に焦点を当てたところにある。

これまでは中東・中南米など、ときどきの話題に焦点を当てて情報を提供してきたが、今回はまず私たち自身の闘いを振り返り、それがどのような国際的意義を持つのかを考えてみた。そしてそれとの関連で世界の人々の闘いをとらえ直してみた。そのなかで闘いの目標の共通性、今日的な「連帯」の必要性を検討してみた。

いわば「足元からの連帯」を主要な柱とした課題提起型・行動提起型の文章となっている。これが「情勢討議」の環である。議論のなかで飜えってAALA連帯委員会の固有の役割が浮き彫りになればいいなと思っている。それが「連帯運動ルネッサンス」の土台になっていくのではないかと期待している。


1.反戦・平和構築のための闘争(核廃絶の課題をふくむ)

A) 平和国家から戦争国家への変貌を許さない

この間、日本では「一人も殺さない、殺されない」という平和国家の理念を守る闘争が大きな盛り上がりを見せた。戦後の70年間、日本国民は平和憲法を守り抜き、非戦を貫いてきた。それは「国際社会において名誉ある地位」(憲法前文)を守るという国際的な意味を持つ闘いでもあった。

戦争国家づくりを阻止するためには、憲法9条を守る、戦争法を廃棄するという闘いに加えて、戦争予算の拡大を許さない、武器輸出を許さない、軍学共同を許さないなど具体的な分野の取り組みも必要だ。これらについて世界の現状を学び広げることも大事な課題だ。

B) 平和地帯、「新しい北東アジア」の構想を推進する

日本AALAでは「北東アジア平和協力構想」への賛同署名を行い、大きな成果を上げた。

この「平和構想」は対話の中で諸問題(北朝鮮、尖閣・南沙諸島など)を解決していこうという姿勢であり、ASEAN(東南アジア諸国連合)とCELAC(中南米・カリブ共同体)の経験に学んだものである。またそれは「平和5原則」(1954年)や「バンドン平和10原則」(1955年)など、国際政治の重要な民主的原則を踏まえたものでもある。

引き続き署名活動を推進するとともに、「新しい北東アジア」の構想をさまざまな方法で広げていくことが大事な課題だ。

16年7月、常設仲裁裁判所は、南シナ海問題での中国の主張を、国際法上「根拠がない」と退け、紛争の平和的解決を促す裁定を下した。この裁定を受け、9月のASEAN首脳会談は「法的および外交プロセスの全面尊重」による平和的解決を確認した。これは尖閣問題を考える上でも貴重な教訓である。「法の支配」を貫くためにも裁定の意義を広げていく必要がある。

16年10月、CELACは平和のイニシアチブを発揮し、コロンビア内戦を終わらせた。15年7月に米国とキューバが国交を回復したが、CELACは一貫してキューバ封鎖政策を批判し、国交回復を支援してきた。これらを通じて、ラテンアメリカは「アメリカの裏庭」から脱却しつつある。日米同盟のもとに従属させられている日本が学ぶべき点は多い。

いま、中南米諸国は国際不況のもとで経済不安が広がっており、親米政策への回帰の動きも見られるが、それは決して長続きするものではない。

C) 核禁条約の締結交渉の開始をうながした連帯

16年12月、国連総会で「核兵器禁止条約の締結交渉を開始する決議」が採択された。核兵器禁止条約が締結されれば、核兵器は「違法化」されることになる。世界は新しい段階に入る。核保有国は、法的拘束は受けなくても政治的・道義的拘束を受けることになる。

決議の採択に至ったのは、一つは、圧倒的多数の途上国、先進国の一部を含めた諸政府の共同であり、いま一つは、「核兵器のない世界」を求める世界の反核平和運動…市民社会の運動である。

核廃絶運動こそは国際連帯活動の典型である。世界を動かす二つの流れが連帯したことで決議が成立した、という事実を深く噛みしめる必要がある。

D) 「平和の秩序」を取り戻すための4つの緊急課題

9.11事件とリーマンショックを引き金に、世界の平和の秩序が脅かされている。平和と安定を実現するために、以下の4点が緊急にもとめられている。この方向で国内外の人々と対話を開始し、進める必要がある。

1.国際テロ根絶: このために、①国際的な機構、国際法などを用いて“法による裁き”をくだすことを基本にすえる。②貧困、無知、格差などテロが生まれる根源を除去する。③異なる諸文明間の対話と共存
2.貧困の削減: 「2030年までに極貧や飢餓を根絶」する(15年国連首脳会議)ために、途上国への支援を強める。
3.難民支援: 世界の難民・国内避難民は6530万人に達している。日本をふくむ先進国は積極的にこれを受け入れるべきだ。
4.人道的危機への対応: 国連PKOは変質している。武力を用いる「住民保護」ではなく、非軍事の人道支援を主任務とするべきだ。

より根本的には、国際的な富裕層の横暴を抑え、大小の覇権主義の芽を摘み取り、極右・反動勢力の台頭と闘い、人々の人権を擁護することがもとめられていることは言うまでもない。

2.反格差・反貧困・経済民主主義を目指す闘争

A) 格差問題は世界で深刻化している

格差の問題は、世界的には80年代はじめからの新自由主義的な経済政策(ネオリベラリズム)がもたらした現象である。日本では97年の消費税・金融危機以降顕在化し現在に至っている。

「格差問題」は、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大という3つの状況の複合である。さらに「板子一枚下は地獄」という不安感が社会的緊張(ゆとりのなさ)を招いている。

これは社会と経済の持続可能な発展にとって重大な障害となっており、AALAとしてもこの問題に国際的視点から取り組むことが必要である。

B) 欧米の社会変革の動きとの響き合い

今日、欧米では深刻な経済危機のもとで、移民排斥を主張する右翼排外主義の潮流の台頭という事態も起こっている。イギリスのEU離脱は「EUの崩壊」として大々的に報道された。しかし、あまり報道されないが、格差と貧困の拡大に反対する幅広い市民運動もそれ以上の勢いで発展していることを見逃してはならない。

最近の動きを見てみよう。

米国では、バーニー・サンダース上院議員が、大統領選挙の民主党予備選で大健闘した。サンダースは「人口の1%の最富裕層のための政治ではなく、99%のための政治」を主張し、青年層の大きな支持を集めた。このスローガンは5年前に「ウォール街占拠運動」を展開した若者たちの主張と同じものである。

米国におけるもう一つの重要な前進は、最低賃金引き上げを求める闘いである。サービス産業を主体とする不安定就業者は日本と同じように過酷な労働に追い込まれてきた。国民の多くに支持されたこの闘いで、昨年、ニューヨーク州とカリフォルニア州では「時給15ドル」が実現した。

2015年のギリシャ、ポルトガル、スペインの総選挙では、「反緊縮」をかかげる市民運動・政党が相次いで勝利・躍進し、ギリシャとポルトガルでは新政権樹立につながった。

イギリスでは2015年9月、労働党の党首選挙が行われ、長年「戦争阻止連合」の全国議長を務めたベテラン闘士ジェレミー・コービンが党首に選出された。躍進の基盤は米国のサンダース旋風と共通しており、緊縮政策、失業、格差と貧困の拡大などへの抗議の声が結集されたもの。青年層が積極的に政治参加しコービン勝利の立役者となった。

これらは、いま日本で発展しつつある野党と市民の共闘と響きあうものとなっている。欧米の経験を学び我々の力としていくことがもとめられている。

C) 格差問題是正のために何をなすべきか

深刻な格差をもたらした新自由主義政策は、日本では「構造改革」として進められた。したがって「構造改革」の根本的な見直しが必要であるが、当面必要な施策は以下のようにまとめられるだろう。

1.税制改革: 税制を改革し、所得再配分をすすめる。「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」の原則。①間接税から直接税へのシフト、②大企業優遇税制の抑制、③租税回避を許さない、④世界的な「法人税引き下げ競争」の見直し。
2.財政改革: 積極的な公的社会支出(社会保障、教育・研究、子育て)で格差と貧困を是正する。
3.働き方改革: ①労働規制の強化、②非正規から正規へ、「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を打ち立てる。③大幅賃上げと最賃引き上げなどによりワーキングプアをなくす。

これらの方向は世界の人々とも共通するものであろう。「強固な分厚い中間層」を擁する「格差なき社会」に向けて何が求められるのか、お互い知恵を出し合う対話を進めることが必要だ。

D) 貿易と投資のルール作り

ネオリベラリズムがおしつけたルールではなく、民主的な相互促進的な貿易と投資のルールを作り上げていくことは、

いま問われているのは、「自由貿易か、保護主義か」ではない。

「自由貿易」の名で、多国籍企業の利潤を最大化するためのルールをつくるのか、人々の暮らしを向上させる相互促進的な貿易と投資のルールをつくるのか、という二つの道の選択である。

TPPが破産したいま、それに代わる包括的な貿易と投資のルールを打ち立てることは、これまでにまして重要な課題となっている。とくに途上国との経済関係を考える上での原則を共有する努力がもとめられるであろう。

なお貿易・投資問題で国際的協力を深めるためには、先進国・途上国の双方ともにILO(国際労働機構)を一層重視する必要があることを付け加えておきたい。

3.原発ゼロの世界を日本から

フクシマは日本の体験であるが、世界の体験でもある。

2年近い「稼働原発ゼロ」の体験を通じて、日本社会は原発なしでもやっていけることが国民的認識となった。 この体験はおおいに世界に向かって普及する必要がある。

処理方法のない「核のゴミ」という点からも、原発再稼働路線の行き詰まりは明瞭である。さらに、原発というのは「自主・民主・公開」の原子力三原則どころか、本質的に何重もの軍事機密に守られた暗闇の軍事技術であることを踏まえておく必要がある(東芝事件)。

4.沖縄基地問題は世界の反基地闘争の焦点

今沖縄でやられていることは、沖縄海兵隊基地を世界への「殴り込み」の一大拠点として抜本的に強化・固定化することである。さらに本土でも出撃基地化が進んでいる。

日本は世界最強の「米軍基地国家」となりつつある。これは日本よりも世界にとっての問題である。

反基地闘争はアメリカの軍事支配との闘争の中でも特殊な鋭さを持つ闘いである。一般的には米軍の軍事基地は縮小再編の傾向にある。その中で沖縄だけが突出している意味を見つめていく必要がある。

さらに選挙で明白に示された民意の無視、度重なる制度的手続きの蹂躙という点で、一国の立憲制度に対する最大の脅威ともなっている。

これらの脅威を世界の人々と共有していく必要がある。これは日本AALAの固有の任務であろう。 

5.立憲主義と民主主義を守る闘争(人権尊重の闘い)

A) 立憲主義(法治思想)への攻撃

今日の世界において一つの著しい傾向がある。それはトランプのツィッター政治に示されているように、立憲主義の思想と基本的人権の原則に対する甚だしい侵害である。

日本における憲法改正の動きはまず何よりも「戦争をする国」作りを目標としているが、同時に「緊急事態条項」など立憲主義の無視をもふくんでいる。

それは憲法を改正するだけではなく、「憲法を憲法でなくしてしまう」攻撃となっている。立憲主義と法治思想を擁護する声を世界中で上げなければならない。

B) 憲法で規定された人権

近代国家の憲法ではさまざまな人権が保証されている。さらにそれは「世界人権宣言」としても定式化されている。

基本的人権の柱は、①個人の尊厳とその尊重、②思想及び良心・表現・学問の自由などの自由権、③法の下の平等・両性の平等などの平等権、④生活・教育・勤労などの社会的生存権、④「人身の自由」と公正な手続き、などから構成される。

なおこれらはの人権枠組みは、国際的な議論を通じてさらに豊かなものとする努力が必要であろう。

また人類共通の普遍的権利を掘り崩そうとする動きは、諸国民が一致して阻止しなければならない。

6.ファシズム・反動思想との闘い

A) 反動思想の諸形態との闘い

反動思想は往々にして「復古思想」として登場する。それは必ず「排外思想」を伴う。安倍首相の「美しい日本」も、トランプがメインスローガンに掲げた"Make America Great Again"も同様である。

安倍政権の「戦争する国」への暴走は、過去の侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行の政治と一体のものである。

それは近隣諸国との関係を著しく悪化させる一方、日本の右翼勢力や排外主義勢力を勢いづかせている。

B) 政治にもとめられるもの

これらの流れを断つためには、政治が断固たる立場に立つことが必要である。さらに司法が法的枠組みを厳正に守る必要がある。決定的に重要なのは国民が声を上げ、その力で彼らを孤立に追い込むことである。

同時に「歴史の偽造」に対し徹底的な批判をくわえ、歴史の真実を明らかにする努力がもとめられる。

そのために諸国の進歩勢力とも共同し、歴史の真相を掘り起こし、事実をつき合わせるなどの作業が必要となっている。

7.リベラル・ウィングの形成をめぐる試み

A) 市民と野党の共闘が始まった

アメリカのサンダース現象など、世界の各国で無党派市民の立ち上がりが見られる。

これは一面ではかつて統一戦線を形成した労働組合・社会党・共産党という「既存組織」の衰退の結果であるが、一面では第二次大戦後に世界各国に形成されてきた分厚いリベラル無党派層の活性化でもある。

日本では新しい市民運動による「市民革命」的な動きが沸き起こり、それに背中を押されて国会内外で野党間の共闘が発展し、さらに選挙共闘にまで進んだ。

これを従来型の「統一戦線」という呼称で呼ぶべきかは、検討の余地がある。ここでは「リベラル・ウィングの形成」と呼んでおく。

B) リベラル・ウィング形成のための課題

「リベラル・ウィングの形成」のためには、3つの基本姿勢がもとめられる。

① 「本気の共闘」: 互いに違いを認め合い、互いを信頼し、敬意をもち、心一つにたたかうことの重要性。それは「リスペクト」という言葉に示される。

② 各組織の独自活動の強化: 共闘の一致点をともにしつつも、それ以外ではおおいに独自性を発揮すること、「金太郎アメ」にならないことが、共闘を尻すぼみにさせない保障だ。

③ それぞれの組織が、組織内外の緊張関係を忌避することなく、不断に自己改革をすすめ、唯我独尊になることなく成長していく課題が欠かせない。

これらは日本での「共闘」実践から導き出された教訓であるが、各国でのリベラル・ウィングの形成は、エスニックな要素や宗教的要素などはるかに複雑であり、そこにはさまざまな道筋がある。旧来型「統一戦線」の枠組みにとらわれることなく、事実に即して検討を加え、共通のものを汲み出していかなければならない。

1.反戦・平和構築のための闘争(核廃絶の課題をふくむ)

A) 平和国家から戦争国家への変貌を許さない

日本では「一人も殺さない、殺されない」という平和国家の理念を守る闘争が大きな盛り上がりを見せた。それは「国際社会の中で名誉ある地位」を守るという国際的な意味を持つ闘いでもあった。

戦争国家づくりを阻止するためには、戦争予算の拡大を許さない、武器輸出を許さない、軍学共同を許さないなど具体的な個別の取り組みも必要だ。

B) 平和地帯の構想を推進する

日本AALAでは「北東アジア平和協力構想」への賛同署名を行い、大きな成果を上げた。

これは対話の中で諸問題(北朝鮮、尖閣・南沙諸島など)を解決していこうという姿勢であり、ASEAN(東南アジア諸国連合)とCELAC(中南米・カリブ共同体)の経験に学んだものである。

またそれは「平和5原則」(1954年)や「バンドン平和10原則」(1955年)など、国際政治の重要な民主的原則を踏まえたものでもある。

16年7月、常設仲裁裁判所は、南シナ海問題での中国の主張を、国際法上「根拠がない」と退け、紛争の平和的解決を促す裁定を下した。

この裁定を受け、9月のASEAN首脳会談は「法的および外交プロセスの全面尊重」による平和的解決を確認した。

16年10月、CELACは平和のイニシアチブを発揮し、コロンビア内戦を終わらせた。15年7月に米国とキューバが国交を回復したが、CELACは一貫してキューバ封鎖政策を批判し、国交回復を支援してきた。

C) 核禁条約の締結交渉の開始をうながした連帯

16年12月、国連総会で「核兵器禁止条約の締結交渉を開始する決議」が採択された。核兵器禁止条約が締結されれば、核兵器は「違法化」されることになる。

世界は新しい段階に入る。核保有国は、法的拘束は受けなくても政治的・道義的拘束を受けることになる。

決議の採択に至ったのは、一つは、圧倒的多数の途上国、先進国の一部を含めた諸政府の共同であり、いま一つは、「核兵器のない世界」を求める世界の反核平和運動…市民社会の運動である。

この二つが連帯したことで決議が成立したという事実を深く噛みしめる必要がある。

D) 世界平和実現へ向けた努力

党大会は4項目の提案を行っている。なお共産党の提案には5項目目として環境問題がふくまれているが、これは別項で扱うことにする。この提案の方向で世界の人々と対話を進める。

1.国際テロ根絶: このために、①国際的な機構、国際法などを用いて“法による裁き”をくだすことを基本にすえる。②貧困、無知、格差などテロが生まれる根源を除去する。③異なる諸文明間の対話と共存
2.貧困の削減: 「2030年までに極貧や飢餓を根絶」する(15年国連首脳会議)ために、途上国への支援を強める。
3.難民支援: 世界の難民・国内避難民は6530万人に達している。日本をふくむ先進国は積極的にこれを受け入れるべきだ。
4.人道的危機への対応: 国連PKOは変質している。武力を用いる「住民保護」ではなく、非軍事の人道支援を主任務とするべきだ。

2.反格差・反貧困・経済民主主義を目指す闘争

この節は相当幅広い課題をあつかうため、多くの項に分かれている。第(1)節はアベノミクスの総括なので省略する。

A) 格差問題の深刻化した背景

格差の問題は、90年代後半以降(世界的には80年代はじめから)の新自由主義的な経済政策がもたらした現象である。

それは、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大という3つの状況の複合である。さらに「板子一枚下は地獄」という状況が社会不安を招いている。

社会と経済の持続可能な発展にとって、この問題に真正面から取り組むことが必要である。

B) 欧米の社会変革の動きとの響き合い

今日、欧米では深刻な経済危機のもとで、移民排斥を主張する右翼排外主義の潮流の台頭という事態も起こっている。

同時に、格差と貧困の拡大に反対する幅広い市民運動が発展している。

2015年のギリシャ、ポルトガル、スペインの総選挙では、緊縮政策の転換を求める市民運動と連携した政党が相次いで勝利・躍進し、ギリシャとポルトガルでは新政権樹立につながった。

イギリスでは2015年9月、労働党の党首選挙で、「戦争阻止連合」のジェレミー・コービン全国議長が党首に選出された。緊縮政策、失業、格差と貧困の拡大などに抗議する青年層がコービン勝利の立役者となった。

米国では、「人口の1%の最富裕層のための政治ではなく、99%のための政治」を主張するバーニー・サンダース上院議員が、大統領選挙の民主党予備選で、青年層の大きな支持を集め、大健闘した。

いま一つは「時給15ドル」への最低賃金引き上げを求める運動である。昨年、ニューヨーク州とカリフォルニア州で「時給15ドル」が実現するなど大きな成果を勝ち取った。

これらは、いま日本で発展しつつある野党と市民の共闘と響きあうものとなっている。

C) 格差問題是正のために

共産党は3つの課題を提起している。この提案の方向で世界の人々と対話を進める。なお共産党の提案には4つ目の課題として産業構造の改革が含まれるが、日本の特殊事情がふくまれるため省略する。

1.税制改革: 税制を改革し、所得再配分をすすめる。「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」の原則。①間接税から直接税へのシフト、②大企業優遇税制の抑制、③租税回避を許さない、④世界的な「法人税引き下げ競争」の見直し。
2.財政改革: 積極的な公的社会支出(社会保障、教育・研究、子育て)で格差と貧困を是正する。
3.働き方改革: ①労働規制の強化、②非正規から正規へ、「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を打ち立てる。③大幅賃上げと最賃引き上げなどによりワーキングプアをなくす。

D) 貿易と投資のルール作り

ネオリベラリズムによるルール作りではなく、民主的な相互促進的な貿易と投資のルールを作り上げていくことは、重要な課題である。

今回の大会決議では以下のように記載されている。

いま問われているのは、「自由貿易か、保護主義か」ではない。「自由貿易」の名で、多国籍企業の利潤を最大化するためのルールをつくるのか、各国国民の暮らし、経済主権を互いに尊重する公正・平等な貿易と投資のルールをつくるのかである。

しかし残念ながら具体的内容には触れられておらず、宿題として残されている。

なお貿易・投資問題で国際的協力を深めるためには、ILO(国際労働機構)を一層重視する必要があることを付け加えておきたい。

3.原発ゼロの世界を(地球環境課題もふくむ

以下は日本の体験であるが、世界の体験でもある。

2年近い「稼働原発ゼロ」の体験を通じて、日本社会は原発なしでもやっていけることが国民的認識となった。

処理方法のない「核のゴミ」という点からも、原発再稼働路線の行き詰まりは明瞭である。

この体験はおおいに世界に向かって普及する必要がある。

一方、再生可能エネルギーの普及は国民の生命と安全を守り、エネルギー自給率を向上させ、経済の発展にとっても大きな効果がある。

このへんは、なかなか実証が難しい。リアルな数字に基づく検証と相互の交流が必要である。

大会決議には触れられていないが、原発というのは本質的に何重もの軍事機密に守られた軍事技術であることを踏まえておく必要がある。

4.沖縄基地問題は世界の反基地闘争の焦点

今沖縄でやられていることは、沖縄海兵隊基地を世界への「殴り込み」の一大拠点として抜本的に強化・固定化することである。さらに本土でも出撃基地化が進んでいる。

日本は世界最強の「基地国家」となりつつある。これは日本よりも世界にとっての問題である。

反基地闘争はアメリカの軍事支配との闘争の中でも特殊な鋭さを持つ闘いである。一般的には米軍の軍事基地は縮小再編の傾向にある。その中で沖縄だけが突出している意味を見つめていく必要がある。

さらに選挙を通じた民意の無視、度重なる制度的手続きの蹂躙という点で、一国の立憲制度に対する最大の脅威ともなっている。

これらの脅威を世界の人々と共有していく必要がある。これは日本AALAの固有の任務であろう。 

5.立憲主義と民主主義を守る闘争(人権尊重の闘い)

A) 立憲主義(法治思想)への攻撃

今日の世界において一つの著しい傾向がある。それは立憲主義の思想と基本的人権の原則に対する攻撃である。

日本における憲法改正の動きはまず何よりも「戦争をする国」作りを目標としているが、同時に「緊急事態条項」など立憲主義の無視をもふくんでいる。

それは憲法を改正するだけではなく、「憲法を憲法でなくしてしまう」攻撃となっている。

B) 憲法で規定された人権

近代国家の憲法ではさまざまな人権が保証されている。さらにそれは「世界人権宣言」としても定式化されている。

基本的人権の柱は、①個人の尊厳とその尊重、②思想及び良心・表現・学問の自由などの自由権、③法の下の平等・両性の平等などの平等権、④生活・教育・勤労などの社会的生存権、④「人身の自由」と公正な手続き、などから構成される。

なおこれらはの人権枠組みは、国際的な議論を通じてさらに豊かなものとする努力が必要であろう。

また人類共通の普遍的権利を掘り崩そうとする動きは、諸国民が一致して阻止しなければならない。

6.ファシズム・反動思想との闘い

A) 反動思想の諸形態との闘い

反動思想は往々にして「復古思想」として登場する。それは必ず「排外思想」を伴う。安倍首相の「美しい日本」も、トランプがメインスローガンに掲げた"Make America Great Again"も同様である。

安倍政権の「戦争する国」への暴走は、過去の侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行の政治と一体のものである。

それは近隣諸国との関係を著しく悪化させる一方、日本の右翼勢力や排外主義勢力を勢いづかせている。

B) 政治にもとめられるもの

これらの流れを断つためには、政治が断固たる立場に立つことが必要である。また国民の力で彼らを孤立に追い込むことが必要である。

同時に「歴史の偽造」に対し、徹底的な批判をくわえ、歴史の真実を明らかにする努力がもとめられる。

そのために諸国の進歩勢力とも共同し、歴史の真相を掘り起こし、事実をつき合わせるなどの作業が必要となっている。

7.リベラル・ウィングの形成をめぐる試み

A) 市民と野党の共闘が始まった

アメリカのサンダース現象など、世界の各国で無党派市民の立ち上がりが見られる。

これは一面ではかつて統一戦線を形成した労働組合・社会党・共産党という「既存組織」の衰退の結果であるが、一面では第二次大戦後に世界各国に形成されてきた分厚いリベラル無党派層の活性化でもある。

日本では新しい市民運動による「市民革命」的な動きが沸き起こり、それに背中を押されて、国会内外で野党間の共闘が発展し、さらに選挙共闘にまで進んだ。

これを従来型の「統一戦線」という呼称で呼ぶべきかは、検討の余地がある。ここでは「リベラル・ウィングの形成」と呼んでおく。

B) リベラル・ウィング形成のための課題

「リベラル・ウィングの形成」のためには、3つの基本姿勢がもとめられる。

① 「本気の共闘」: 互いに違いを認め合い、互いを信頼し、敬意をもち、心一つにたたかうことの重要性。それは「リスペクト」という言葉に示される。

② 各組織の独自活動の強化: 共闘の一致点をともにしつつも、それ以外ではおおいに独自性を発揮すること、「金太郎アメ」にならないことが、共闘を尻すぼみにさせない保障だ。

③ それぞれの組織が、組織内外の緊張関係を忌避することなく、不断に自己改革をすすめ、唯我独尊になることなく成長していく課題が欠かせない。

これらは日本での「共闘」実践から導き出された教訓であるが、各国でのリベラル・ウィングの形成にはさまざまな道筋がある。これらの道筋からは異なった教訓が得られるかもしれない。


今宮謙二さんが赤旗経済面に「経済の劣化示す消費低迷」という短評を書いている。
中身は中身として面白いのだが、この中で下記のような一節が心に残った。
基本は資本主義の行き詰まりです。
第一に、大企業や富裕層が自らに有利な流れを作っています。
第二に、その結果として格差が拡大し、国民の間に不安が広がっています。
第三に、その中でトランプ政権のようなむき出しのナショナリズムが広がっています。
第四に、平和と民主主義の危機に対する市民の運動が広がっています。
これらが世界的な新しい局面です。
たしかにこの4つの流れに分けて考えると、物事が整理されてくるような気がする。
その際に、対立軸が第一の流れと第四の流れとの対抗としてあることも、おさえておくべきだろう。同時にほかの3つの流れは嫌でも目に入ってくるが、第四の流れは調べて掘り起こしていかないと分からない。
この構図を踏まえながら、第四の流れ「平和と民主主義の危機に対する市民の運動」を少し肉付けしてみたいと思う。
その際、共産党の大会決定から国内の闘争の到達状況をピックアップしながら、それらの闘争は世界でどう闘われているかを探ってみたい。読者の共感をより得られるのではないかと考えている。

日本における諸闘争の到達状況

第27回共産党大会の決議では、第3章に諸課題での闘争の状況と課題が展開されている。(13)から(21)までの9節に分けられ記述されている。

(13) 安倍政権の危険と、それを打ち破る可能性

(14) 「戦争する国」づくりを許さない――日本共産党の平和の提案

(15) 格差と貧困をただす経済民主主義の改革を

(16) 原発再稼働を許さず、「原発ゼロの日本」を

(17) 沖縄をはじめとする米軍基地問題――全国の連帯を訴える

(18) 憲法改悪を許さず、憲法を生かした新しい日本を

(19) 侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行、排外主義を許さない

(20) 日米安保条約、自衛隊――日本共産党の立場

(21) 統一戦線の画期的発展と今後の展望について

この内、(13)節は序論部分、(20)節は理論課題となるため、以下のように番号付けしておく。

1.反戦・平和構築のための闘争(核廃絶の課題をふくむ)

2.反貧困・生活防衛と経済民主主義を目指す闘争

3.反原発の闘争(地球環境課題もふくむ)

4.反基地の闘争(アメリカの軍事支配との闘争)

5.立憲主義と民主主義を守る闘争(人権尊重の闘い)

6.反ファシズム・反動思想との闘い

7.リベラル・ウィングの形成をめぐる試み

これらの闘いは現在進行形で、世界の様々な場所で闘われており、それらを知ることが国際連帯運動の第一歩につながるであろう。

ワタシが以前書いた記事で

がだいぶ読まれているようだ。
実は大した記事ではない。誰かのレポートをまとめただけのものだ。ただこの記事以外にも10本くらい記事を書いているので、書いた順にまとめて読んでいただけるとありがたい。最初の方とあとの方では認識レベルが違っているので、あとの記事のほうが正確だ。
言いたいのはFATCAとかCRSの具体的内容なのではなく、租税回避(BEPS)が諸国家の破壊行為であり、このまま進めば世界が崩壊しかねない危険な動きなのだということの認識だ。
そしてそれと対決していく決定的な方途としてはFATCAとかCRSの方向しかないということだ。FATCAは結局は米国本位のシステムであり、場合によっては悪用される危険すらある。しかしFATCAがCRSを産んだということは押さえておかなければならない。
一方でそのような経過も踏まえ、他方で依然として死んだわけではない「金融取引税」(トービン税)も踏まえつつ、グローバル社会の生き残りを目指すこの動きを重視していかなければならないと思う。
しかるに、日本国内では(少なくともネット社会レベルでは)、この動きを世界経済の重要な動きとして捉えようという動きはほとんど見られない。
英語でFATCAとかCRSを取り扱う文献が山ほど出現していることと考え合わせると、日本におけるこの無関心ぶりには唖然とする。
私ごとき素人が偉そうなことを言える立場にはないことは重々承知しているが、グーグル検索で私の書いた記事が上位に登場するような事態はできるだけ早く解消していただきたいものである。

世界の富豪たち

いつも、行き倒れとか介護疲れとか減免とかしけた話ばかりなので、今回は景気良くドーンとお金持ちの話をしましょう。

最初は金持ちが信長とか秀吉のように見えて、他人ごとながら楽しいのですが、そのうち腹が立ってきます。最後にはこんな世の中変えなきゃいけないと思うようになり、どうしたら金持ちをやっつけられるかと考えるようになってくれればと思います。

Ⅰ.世界の富豪たち

最初にフォーブス誌の今年のランキング。このランキングは個人の資産に加え、公的投資や民間企業への投資、不動産、ヨット、美術品、現金や負債も考慮に入れている。


第1位 ビル・ゲイツ(60)
資産額:750億ドル(8兆5680億円)マイクロソフト/米国

 

第2位 アマンシオ・オルテガ(79)
資産額:670億ドル(7兆6541億円)ZARA/スペイン

 
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第3位 ウォーレン・バフェット(85)
資産額:608億ドル(6兆9458億円)バークシャー・ハサウェイ/米国




第4位 カルロス・スリム・ヘル(76)
資産額:500億ドル(5兆7120億円)アメリカ・モービル(通信事業)/メキシコ

第5位 ジェフ・ベゾス(52)
452億ドル(5兆1636億円)アマゾン/米国

第6位 マーク・ザッカーバーグ(31)
446億ドル(5兆951億円)フェイスブック/米国

第7位 ラリー・エリソン(71)
436億ドル(4兆9808億円)オラクル/米国

第8位 マイケル・ブルームバーグ(74)
400億ドル(4兆5696億円)ブルームバーグ/米国

第9位 チャールズ・コック(80)
396億ドル(4兆5239億円)Koch Industries(複合企業)/米国

第9位 デイビット・コック(75)
396億ドル(4兆5239億円)Koch Industries(複合企業)/米国

ご同慶の至り、と、とりあえずは言っておこう。

Ⅱ.日本の富豪たち

順位名前(漢字)関連資産(億円)
1柳井正ファーストリテイリング(ユニクロ)17,930
2孫正義ソフトバンク16,390
3佐治信忠(一族)サントリー12,870
4滝崎武光キーエンス9,130
5三木谷浩史楽天6,270
6森章森トラスト5,280
7高原慶一朗ユニ・チャーム4,620
8毒島邦雄・秀行三共(SANKYO)4,510
9韓昌祐マルハン4,400
10伊藤雅俊セブン&アイ・ホールディングス4,290

Ⅲ.どれだけ増やしているか

と、ここまでは個人資産なので「ああそうですか」ということにしかならない。羨ましいとは思っても憎たらしいとは思わない。

しかし毎年の収入を見ていくとそうは行かない。オックスファム

このグラフを見ると、なんだかんだと言いつつも2010年まではウィン・ウィンの関係でみんな豊かになっている。それがこの5年間というもの、貧乏人の財産は大幅に目減りする一方、超お金持ちの財産は増え続けている。

つまり62人の連中は貧乏人を食い物にして肥え太っているわけだ。

Ⅳ.日本のお金持ちも同じだ

これは政府御用達、NHKの報道によるものだから間違いない。
資産の増加

アベノミクスの始まる前、2012年の8兆円に対し、15年に14兆円で差し引き6兆円増えたことになる。3年で6兆、毎年平均して2兆円が懐が膨らんだ計算だ。
これは財産(残高)であって収入ではない。収入だと、これに使った分(どのくらい使うんだろう?)がさらに上乗せされる。
これは企業の内部留保じゃありませんよ。まったくの個人資産なんです。 この守銭奴連中から14兆円全額巻き上げたって、日本経済にはなんの影響もないんです。ほっときゃまた溜まってくるんです。

ちなみに2014年に消費税が3%アップされた。これにより消費税収入は5兆円上がった。そして15年度にはさらに2兆円増えた。

合わせて12兆円。その半分が40人の超富裕層のポッポに入ったことになる。
消費税
 

むろん、財務省が耳を揃えて差し出したわけではないが、日本経済全体としてはそういうことになる。日本経済にはそういう「吸い込み構造」があるのだ、というしかない。

あとに残されたのは消費税不況と、デフレと、国民生活の悪化しかない。

財務省の責任ではない、と言われればそれまでだが、それでは国民のお財布のことは誰が考え誰が実行するのであろうか。

民主党の財政幹部で消費税の旗振りをした藤井裕久氏はこう言っていた。

消費税を広く浅く積み上げて、これを社会的弱者のために用いる。そうすれば内需は喚起され、結果として財政再建を成し遂げながら、所得の再配分を実現できることになる。

しかし、社会的弱者のためにそれが用いられることはなかった。藤井氏はそれを非難するが、率直に言ってその保証は何ら取り付けられていなかった。

アベノミクスは逆に経済を金融面から揺り動かすことで景気を回復し、もって弱者に滴り落ちる分配を増やし、内需を拡大しようとした。しかしそれも「吸い込み構造」への対応なく、弱者への再配分の保障なく行われ、結果として膨大な国債と膨大な日銀券を残したのみという結果に陥った。

それがこのグラフに示されている中身だ。
 もご参照ください。

総会準備ご苦労さまです。

民主的に討論するのもなかなか大変なことです。情勢報告というのはどうあるべきか、考えさせられました。

私も長年北海道AALAの総会で、情勢報告を担当していたので分るのですが、これは基本的には会員への情報提供サービスなのだと割り切るほうが良いのではないかと思います。

民医連総会の国際情勢だと、基本的には赤旗の記事のカットアンドペーストです。以前は私もAALAの立場からいろいろと突っ込んだこともありますが、うんざり顔で対応されるのが落ちでした。

しかしAALAの会員はそういう情報が知りたくて加入しているわけですから、要望に沿った構成で“赤旗に載らないけれどもだいじなニュース”を発信していくのが良いのではないでしょうか。

とくに各国人民の闘いの前進をピックアップしていくことが大切だと思います。

* 保守党支配を追い詰めている韓国の運動

* 南沙問題で中国の覇権主義的姿勢を追い詰めているASEAN諸国の協同

* タイの軍部独裁反対の闘い

* ネパールの民主主義の前進

* インドのケララ州での貴重な勝利

* エジプトの民主主義再建の闘い

* イランでの民主派の前進

* 中央アジア非核地帯の前進

* ギリシャ、イタリア、スペインでの左翼勢力の前進

* カナダでのリベラル派大統領の勝利

* アメリカ大統領選挙での画期的前進

* ニカラグアでのサンディニスタの前進

* チリ左翼の前進

もちろん細かく見ればいろいろ問題はあるのでしょうが、全体としてアラブの春からオキュパイ運動、全体としてのリベラル・左翼の前進はこの間の明らかな特徴だろうと思います。

会員の皆さんが期待しているのもそういう情報ではないでしょうか。

「世界政治(資料)」がなくなってから久しくなります。マルクス・レーニン主義の看板はもはや通用しませんが、一種の情報センター的な役割がAALAに要請されているかもしれません。

そんな感じの情報をAALAが発信していけたら良いなと思います。

多分、読者の皆さんより少し前に行き過ぎたようだと思います。

FATCAについてわかりやすく言うと、「外国の銀行の口座の金にも税金をかけますよ」ということだ。

と言っても、これは米国の話。

「アメリカ人が世界中に持っている口座をすべてチェックして、アメリカの財務省が把握します」という法律がFATCA法ということになる。

こういう法律が数年前に可決されて、いろいろ準備した後、14年の7月からすでに実施されている。

これで、世界中どこにも金を隠しておくことはできなくなったわけで、実に画期的なシステムなのである。

ただしこれはアメリカ政府が強引にやったことで、日本がそうしようと思ってもできるものではない。

どこがどう強引か。

米国の法律を諸外国に勝手に適用することはできない。だからアメリカ政府は各国政府と交渉して協定を結ぶことになる。というより否応なしに結ばせるわけだ。

この手の押し付けは、これまでもスーパー301条とか、キューバ禁輸法とかいろいろやってきた。米国というのはそもそも勝手な国なのだ。

これに対して、世界には3つの対応があった。ひとつはこの法律の積極面を受け止め、双方向の情報提供システムとする方向だ。

FATCAを使えば、ドイツ政府は米国にあるドイツ人の口座を知ることができる。他の国とも同じような協定を結べば、すべての外国口座を知ることができる。

FATCAを一つの基準にして、各国がお互いに情報交換をすることで、脱税の抜け道を塞ごうという考え方だ。これはヨーロッパを中心に世界の主流となっている。

ふたつ目は日本だ。報告義務は果たすが、相互主義は要求しない。つまり米国にある日本人口座の情報は頂かなくて結構。変にもらってしまうと、かえってややこしくなるということだ。

そして三つ目が、米国政府の要求を拒否するという態度だ。パナマはこれを選択した。その結果がこの度の「パナマ文書」事件だ。ICIJに悪気があるわけではないが、米国がこれを利用していることも間違いない。

実は、こういう暴露方式はスイスやルクセンブルグでも繰り返されてきた。その結果、両国は屈服し、アメリカに従うようになっている。

これからどうなるか

まずFATCAがこれからの世界基準となることは間違いない。やり方は強引だが、中身自体は間違っていないからだ。

ヨーロッパ諸国は、いまやFATCAの世界基準化に乗り出した。それがOECD(先進国機構)の提唱するCRSだ。

この徴税方式の良い所は、取引とか外形資産への課税ではなく、あくまで所得(現ナマ)への課税であることだ。ブンブン飛び回っているところを捕まえるのではなく、ねぐらを襲うのである。

そのかわり、投機資本とか高速取引などには無力だ。また、ビジネスを行い稼いだ対象国に税が還元されるとは限らない。多国籍企業の本拠の国(すなわち米国)に優しい税金となる可能性がある。

CRSのスキームはそこをなんとかしようとしているが、アメリカはそれには反対だ。「どこの国でどう稼ごうと関係ない。自分の国の会社が稼いだ金だから、その税金は自分のものだ」というのだろう。だからCRSには入ろうとしない。

ここが、これから最大の問題になっていくだろう。日本はFATCAにさえいやいや同意しているくらいで、「世界一企業に優しい国」の面目躍如といったところ。世界標準から見れば周回遅れとなっている。

菅官房長官が「パナマ文書のことなど調べるつもりはない」といったのにはそういう背景があるのだ。

という前の記事の題名は思いつきでつけたんだけど、

どうやらとりあえず、FATCA・CRS以外の道はなさそうだ、というのが現在の感想。


そもそも税というのはなんだろうか、というところから出発しないとならんなぁと、そういう感じです。

というのを作成していて、今回のFATCA年表と、特に後半部分は完全にかぶっています。

つまり、トービン税・金融取引税は失敗して、FATCA・CRSが成功したのです。

なぜかということです。

すごく悲観的に言えば、アメリカがその気になれば話は進むし、アメリカがその気にならなければドンキホーテだということでしょうか。

現象的にはわかりやすい解釈ですが、もっと基本的な問題もあるのではないかと思います。

それは、売上に対して税金を取るのか、利益に対して税金を取るのか、それとも所得に対して税金を取るのかという選択です。

こうやって3つ並べてしまえば、それだけで結論ははっきりしています。所得に対して徴収するべきなのです。

税金というのはそもそも所得の再分配であり、自由競争とか市場経済とは別の論理だからです。これが近代税制の基本理念です。

「消費税」と我々が呼んでいるものは実は売上税です。売上税というのは古代の慣習です。ショバ代みたいなものです。これと対応するのが「関税」で、これは関所代です。これに人頭税が揃えば、三役揃い踏みです。

いずれにしてもヤクザのやり方であり、独裁政治の産物です。たしかに捕捉は簡単ですが、抜け道はたくさんあります。したがって政治的民主主義とはなじまないものです。

以前、シャウプ税制を勉強していて感銘をうけたのですが、近代民主社会においては、税金というのは民主主義を支える拠金だという考えです。

したがって、税金は社会の構成員のポケットマネーから形成されなければならないのです。

その辺りを書いたのが、2012年06月11日の記事  です。

この観点からすれば、ヨーロッパで展開されたトービン税・金融取引税は問題があり、FATCAのほうが合理性があります。

合理性の観点からだけではなく、捕捉可能性の観点から見ても、発生源方式は限界があります。なんとかサンドウィッチという租税回避スキームあたりになると、売上でやっていく徴税はほとんど不可能だろうと思います。

すべてのビジネスが終わって秘密金庫に資金が入る瞬間を狙い撃ちする他ないと思います。虫を殺そうとすれば空中を飛び回っている時ではなく蛹になって羽化を待っている時こそが狙いめです。

問題は、富が金になってどこかの金庫にしまわれた時、その金はほとんどがアメリカ人(正確に言えば米国の大企業と富裕層)の金だということです。

だからこの金をいくら摘発し徴税したとしても、それはアメリカ政府の国庫に入ってしまうことになります。ある意味ではアメリカの思う壺です。

だからこうやって挑発した税金を各国間でどのように分配するのかが次の困難な課題になるでしょう。そのときに発生源の問題も出てくることになると思います。

アメリカはFATCAの言い出しっぺでありながら、CRSには加入しようとしません。そこにはこういう問題があるのです。

いずれにしても、世界は租税回避という自滅的な道から一歩抜けだそうとしています。ここが大事なことです。

2016年04月25日

大和総研の下記のレビューがとても分かりやすい。ご一読をおすすめする。

国際租税回避への対応と 金融証券取引 - 大和総研

国際租税回避への対応と金融証券取引

~金融口座の自動的情報交換とBEPSプロジェクトを中心に~

2015/03/02 
吉井 一洋/是枝 俊悟

1章 国際課税における問題点 (国際的租税回避の観点で)

1.国外における資産秘匿と脱税ほう助

A) UBS事件

UBSはスイスに本拠を置き、世界最大規模の富裕層向けのプライベートバンキング業務を行っていた。

つまり世界有数の脱税コンサルタントである。

2000 年から07年にかけて、米国の顧客獲得キャンペーンを展開した。やり方が少々えげつない。行員が観光旅行を名目としてスイスから米国に送り込まれ、スイス口座を利用した脱税を積極的に提案していたのだ。

やがてこれが発覚し(こんなやり方がばれないわけがない)、UBSは司法取引で7億8,000 万ドルの罰金を支払う羽目になった。

クレディ・スイスでも同様の事件があり、合計で28億1,500万ドルの罰金を支払わされた。

B) スイスの銀行業務見直し

スイスは歴史的に銀行法において、銀行に対し顧客情報の守秘義務が厳しく課されている。このため、かねてよりダーティーマネーの世界最大の保管場所の一つと指摘されていた。(ゴルゴ13の世界です)

二つの事件の後、スイスは、銀行の守秘義務について見直しを行った。この結果、2009 年には銀行の守秘義務を制限し、

3月に閣議決定により見直し、租税詐欺(tax fraud)だけでなく租税回避(tax evasion)の場合でも口座情報を他国の税務当局等に提供できることとした。(しかし日本の税務当局が情報提供を依頼したという話は聞いたことがない)

2.海外事業の納税額を極小化する戦略

上記の事件は明らかに法律を犯す脱税である。しかし脱税すれすれだが違法ではない「節税」法がある。

とくにグローバル企業の海外事業においてそれが甚だしくなっている。(これについては既述のため省略)

3.ハイブリッド金融商品

近年、資本と負債の中間的な性質を持つハイブリッド金融商品の発行が増加している。ハイブリッド金融商品は、ある国の法律では「債券」、他の国の法律では「株式」と定義が分かれる可能性がある。(よく分からないので省略)

2章 クロスボーダーの金融証券取引の把握

1.米国FATCA

A) 米国FATCAの本則

FATCAそのものは外国に対して直接の法的強制力はない。

しかし、口座情報の提供を行わない外国金融機関(FFI)に対しては米国源泉所得について懲罰的源泉課税(税率30%)が課される。このためFFIはFATCAに対応せざるを得ない。

2)協定の3類型と締結国

FATCAは原則的には個別のFFIと対応するが、米国と協定(声明)を結んだ国については政府による代行が許される。国内のFFIは懲罰的課税を免れることとなっている。

協定のモデルには大きく分けて3種類がある。

Model 1協定 各国が国内法を整備し、FFIが各国税務当局を通じてIRSに間接的に米国口座情報を提供する。

Model 1協定はさらに2種類がある。

a 米国から各税務当局に対する情報提供も行うもの(互恵あり)

b 米国から各税務当局に対する情報提供は行わないもの(互恵なし)

Model 2協定 FFIは「協力米国人」(情報提供について同意した人物)の口座情報をIRSに直接提供する。非協力口座)の情報についてはその総件数・総額をIRSに提供する。

OECD加盟国(米国を除く33 カ国)のうち、29 カ国はModel 1協定を締結した。そのすべてが「互恵あり」である。Model 2協定を締結したのは日本、オーストリア、チリ、スイスの4カ国だけである。(日本がModel 2協定となったのは、銀行業界の強い圧力によるものである)

3)二つのモデルがある理由

もっとも大きな違いは、「非協力口座」の情報の扱いである。Model 1では、「非協力口座」の情報も、FFIから自国の税務当局に提供する。

この場合、個人情報の保護に反するおそれがあるので、この種の情報を提供させる根拠法を整備する必要がある。

Model 2では、米国要請があった時のみ、各国の税務当局が口座情報を入手し、IRSに提供する形をとる。

私の感想だが、これは「互恵」関係を結んだ時に大問題となる。日本人の米国口座に関する情報を、日本政府は受け取らずに済むのである。アメリカにとっては、それはどうでもいいことだから、「いいよ」といったのだろうし、日本の富裕層は胸をなでおろしたのだろう。
「知りたくないの」という歌の文句そのままである。

2.自動的情報交換

1)わが国のこれまでの取り組み

2013 年10 月に改正が発効された税務行政執行共助条約では、締結国が自動的情報交換を行う旨が明確に定められた。

2)OECDのCRS(共通報告基準)への発展

他国の口座を利用した脱税の防止のため、OECDが金融口座情報の自動的情報交換を行う共通報告基準(Common Reporting Standard:CRS)を策定した。

2014年11月までに52の国・地域がCRS導入に署名。この時点で日本および米国は未署名のまま。

(中略)

3章 OECDのBEPS(税源浸食と利益移転)対応PJ

1.経緯

多国籍企業などが、合法的な法的技術を駆使し、二重非課税の状況などを作り出し、租税回避を図る例が増えてきた。

他方で、各国の財政状況の悪化と所得格差の拡大が見られる中で、各国ともより公平で適正な課税を実現する要請が高まって来た。

これを背景にOECDの租税委員会では、2012 年6月にBEPSプロジェクトを立ち上げた。

(以下、かなり専門的になるので略)

いろいろあるにしても、FATCAはすごいと思う。
初めて富裕層に網がかかった、そんな気がする。
これから見れば、「金融取引税」などちゃちなものだ。
やはりアメリカがやってもらわなければ困る。
CRSもアメリカが言い出しっぺだからこそ迫力がある。
もちろんアメリカは自分がかけた網に自分がかかってしまっては元も子もないから、いろいろ策動はしてくるだろう。これを機会にアングラマネーまで含めて自分が一括管理したいという願いもあるだろう。
しかし事態はそういう一国の願望を超えて進んでいる。
オバマは核兵器の究極的廃絶を叫んでノーベル賞をもらった。しかしそれはかなわなかった。
その代わりに、苦し紛れの法律が、意外に富裕層の急所を突いた可能性はある。
「パナマ文書」もいずれアメリカ(そして日本)の支配層に向かう突風となるだろう。
アメリカが自縄自縛に陥ってくれればこれ以上の僥倖はない。
それにしても日本のメディアの沈滞、目を覆わんばかりである。

FATCA(米国外国口座税務コンプライアンス法)とCRS(OECD自動的情報交換の共通報告基準)の経過

主として重田正美さんの「米国の外国口座税務コンプライアンス法と我が国の対応」を参考にさせていただきました。

2009年10月 Foreign Account Tax Compliance Act(外国口座税務コンプライアンス法)が成立。

2010年3月18日 「追加雇用対策法」(HIRE法)が成立。FATCAはHIRE法の一部として組み込まれる。

米国外の金融機関(FFI)が内国歳入庁(IRS)と契約(FFI 契約)を結ぶことで、当該FFI の米国人口座情報をIRS に提供することを規定

2012年2月8日 米国と欧州5か国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)が共同声明。欧州5か国の税務当局が米国人口座の個別情報を取得し、まとめて提供することとなる。

2012年6月 OECD 租税委員会、BEPSプロジェクトを立ち上げ。多国籍企業等の租税回避に対応するため、国際課税ルールの抜本的見直しを開始。

BEPS: 多国籍企業や富裕層の租税回避行為(Base Erosion and Profit Shifting )を指す。
スターバックス、グーグル、アマゾン、アップルなどの租税回避が政治問題化したのを受けたもの。

2012年11月 英・独の財務大臣が租税回避を非難する共同声明を発表。仏の財務大臣も賛同する。

2013年

2013年1月17日 米国財務省規則が公表される。「特定保険会社」もFFI の対象とされることが明らかとなる。

財務省規則: ①米国人口座を特定する。②IRSが定める手続に従い、米国当局に毎年報告する。③非協力口座保有者などへの支払に30%の源泉徴収課税を行い、その額をIRS に納付する。

2013年2月 OECD、「BEPS」問題報告書を作成。G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(ロシア・
モスクワ)に提出。

2013年6月 「国際的な税務コンプライアンスの向上及びFATCA実施の円滑化のための米国財務省と日本当局の間の相互協力及び理解に関する声明」が発表される。

FFAとして米財務省の直接監査を受けるのは煩雑なため、米国と各国が政府間協定(IGA)を締結する動きが広がった。
IGAには自動型のⅠと要請時型のⅡがあり、日本はスイス、オーストリア、バミューダ諸島、香港とともにⅡを選択した。
全国銀行協会は、Ⅱを許してもらったことに「強く賛意を表明」し感謝している。

2013年7月 OECD 租税委員会、15 項目からなるBEPS 行動計画を採択。FATCAのモデル1をひな形として、金融口座情報等の「自動的情報交換」を多国間に拡大するもの。

2013年9月 サンクトペテルブルクでG20 サミット。BEPS 行動計画をうけ、2015 年末を目途に国内の法整備を進めることで合意。OECDによる国際基準の策定が支持される。

2013年10月1日 OECDの発議した「税務行政執行共助条約」が日本において発効。①締約国における自動的な 情報交換、②租税債権の徴収の支援(徴収共助)、③要請による文書送達(送達共助)を定める。

2014年

2014年1月 OECD租税委員会、自動的情報交換の共通報告基準(CRS)を承認。

2014年2月 OECD、「課税における自動的な情報交換に関する基準」の草案を発表。

2014 年3月6日 米国財務省とIRS、最終暫定規則を発表。50以上の修正が加えられる。

2014年5月 クレディ・スイス、「米国人顧客の脱税を意図的にほう助した」と有罪を認め、米政府などに28 億1,500万ドルの罰金を支払う。

2014年7月1日 FATCAによる規制が日本及び世界で施行される。登録金融機関は世界中で10万以上、日本の金融機関は3,624にのぼる。

日本の金融機関は、米国人対象者を特定し、同意を取得した上で、米国内国歳入庁(IRS)へ直接報告を行う
不同意口座についてはIRSが租税条約に基づく情報交換要請を日本の国税庁にする。国税庁は金融機関から情報を入手し、IRSへ提供する

2014年7月 OECD、CRSのフルバージョンとコメンタリーを公表。金融機関の非居住者口座を政府間で自動交換するためのマニュアルとされる。

この「完全版」は「金融口座の自動情報交換のための新国際基準」(Standard for the Automatic Exchange of Financial Account Information in Tax Matters)と題されている。

2014年9月 G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(ケアンズ)で、BEPS報告書第一弾公表。

2014年11月 ブリスベンのG20サミット、CRSを承認。その後97の国・地域が「税に関する自動的情報交換制度」(OECD制度)への参加を表明。日本の参加は遅れる見通し。アメリカは不参加の意向。

全国銀行協会は「OECD の枠組みは、FATCA よりもさらに負荷が大きい。実務面での配慮が必要」とコメント。

2014年12月 この時点で、欧州各国を中心に112の国・地域が米国とIGAを結ぶ。



パナマ文書問題で一番衝撃的だったのは、実は菅官房長官の「調査する意思はない」発言ではなかったろうか。
世界中の政府が真剣に考え、調査に着手するとの発言を繰り返す中で、菅官房長官の発言は国際的に見ても、いかにも奇異で唐突だった。
しかしそこをつく報道はほぼ皆無である。ネット世界の口さがない連中が罵詈雑言を浴びせてはいるが、すべて感情的なものでしかない。
しかしこれは、日本政府の首尾一貫した態度であり、それはOECDとG20の合意とはまったく逆の方向であることを見なくてはならない。
これを理解するにはFATCAと、各国の対応スキームであるIGAを知らなくてはならない。
話は長くなるので省略するが、結論としては、日本は預金者(大口の)保護を最大の眼目においており、そのためには租税回避の黙認をも厭わない態度を貫いている。情けないほどに、骨の髄から階級的だ。
「世界で最も金持ちに優しい国」が彼らのスローガンである。そしてそのために「個人情報保護法」が最大限に利用されているのである。
アメリカとの二国間交渉で、日本はFATCAに関するアメリカの要求を丸呑みにした。「アメリカ人の情報はそっくりそのまま提供します。しかし日本人のアメリカ資産については公表しないでください。なぜなら、そんなことは知りたくないからです」
これが日米共同声明(2012年)の精神だ。これが受け入れられると、日本銀行協会は随喜の涙を流して感激した。そして「日本政府よ、よくやった!」と褒め称えた。
私から言わせれば、「日本政府よ、なんてことをしてくれたんだ!」である。
超富裕層の蓄財は税金逃れによって加速されている。ここを突っ込まなければ税収は出てこない。超富裕層の手先になって資産隠しと税金逃れに血道をあげる国、それが日本だ。
個人情報法保護法についてはいろいろ考えもお有りでしょうが、超富裕層の財産隠しの隠れ蓑になっては行けない。泥棒の金の隠し場所は摘発こそすれ、保護されてはならないのだ。このことだけははっきりさせて置かなければならないだろう。


JBプレスの2011年6月の記事で、下記のものがあった。

FATCAの危険な賭け 谷口 智彦

法成立前後のもので、「うまく行きっこない」というニュアンスの、やや醒めた見方となっている。

その中に、「The Banker 5月1日号」の「FATCA法案の解説」が紹介されている。

1.FATCAの法的構造

FATCAは単体の法律として存在しているわけではなく、「雇用促進法」(the Hiring Incentives to Restore Employment Act)の一部として法制化されている(11年3月成立)

2.FATCAの内容

外国金融機関に対し米国人預金の実態を報告するようもとめる。

具体的には、米国人の口座に関わる情報を、年に1度ずつ米内国歳入庁(IRS、日本でいう国税庁)へ報告せよというもの。

もちろん法的に強制する訳にはいかないから、もし順守しなければ制裁措置を発動することになる。

制裁対象となった金融機関に対しては、ドル建て金融商品へ投資して得た所得に対し、一律30%の源泉税を課す。

(3割もピンはねされてはやっていけないから、外国金融機関は従わざるをえない。基軸通貨の強みである)

3.FATCAの適用範囲

外国金融機関の定義は広く、投資顧問会社や保険会社が含まれるのはもちろん、異業種企業がもつ金融子会社も対象となる。

4.「米国人」の定義

一番きついのは「外国系企業」だ。まず、米国でドル建て商品に投資し収益を得ている企業がすべて対象となる。

この中で10%以上の持ち株比率を持つ米国人株主がいれば報告の対象となる。しかもそれについて「具体的な説明」がもとめられる。

とにかく抜け穴がない。


後は有料だそうで読めない。まぁここまで分かればよいか。

谷口さんはうまくいかないだろうと考えており、その理由をいくつか上げている。

* 外国金融機関に膨大な実務を強いることになり、外国金融機関を米国離れへ追い込む。

* 米国内にも反対は根強く、「外国資本を遠ざける規制は経済的自殺だ」という意見もある。

どうもFATCA外国口座税務コンプライアンス法)が分からないと、事件としての「パナマ文書」の意義はわからないようだ。

そこでFATCAと入れてグーグル検索をかけてみる。

出てくる出てくる。すさまじいほどのファイルが引っかかってくる。上の方に出てくるのはほとんどが銀行のサイトだ。半分は問い合わせに対するお知らせだが、抜け目なくFATCAをクリアーする貯蓄法の指南とか、自社商品の売り込みが取り混ぜられている。

察するところ、国内外の富裕層はFATCAに慌てふためいているようだ。

一応代表的な文例を幾つか示しておく。

最初に出てくるのが「生命保険協会」のお知らせ。

2014年7月から、米国法「FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)」による確認手続きが開始されています。

FATCAは、米国への納税義務を持つ者が 米国外の金融口座を利用して租税回避を図るのを防ぐ目的で制定されました。

この法律は、米国外の金融機関に対し、顧客が米国納税義務者かどうか確認するよう求めています。

日本政府は、国際的な税務コンプライアンスの向上を理解し、FATCAを円滑に実施するため相互に協力することで合意しています。

日本の生命保険会社では、米国財務省と日本当局との合意に基づき、お客さまが米国納税義務者であるかを確認します。

もし米国納税義務者である場合は、米国内国歳入庁宛にご契約情報等の報告を行っております。

対象となる米国納税義務者

①特定米国人 (これは要するに米国人ということ)

②米国人所有の外国事業体

実質的米国人所有者が一人以上いる外国法人・事業体をいいます。例えば、特定米国人が25%を超える議決権を有する場合をいいます。

(以下いろいろ但し書きや例外規定があるが省略)

脅し

新規の場合: 報告に同意いただけない場合、生命保険会社は、生命保険契約の締結を行いません。

継続の場合: 契約締結後において、確認手続きに応じていただけない場合には、米国内国歳入庁の要請に基づき、該当のご契約情報等を日米当局間で交換することになります。

ということで、いわば超法規的な条項であり、合衆国憲法で保障された財産権の実質的侵害となっている。

FATCAは基本的に米国人が対象であるが、米国はこれを各国が互いに合意しあうように求めている。すると日本政府も日本人に対して同様の措置をもとめることになる。

はたしてそれがどうなるか。少し勉強してみないと結論は出せない。

パナマ文書の重大性はどこにあるか

今回、最初に書いた「パナマ文書を打ち上げ花火に終わらせないために」の冒頭にこう書いた。

最初にこのニュースを聞いたとき、正直、またかという感想で見ていた。

これまでもウィキリークスで何回かのスッパ抜きがあって、脱税の規模・手口についてはおおよその見当がついていたからだ。

それで調べてみて、今もなおその感想が払拭されたとはいえない。

それはそれなりに、分からないけど分からないなりに、どうも「問題はそういうところにはないのではないか」という感覚が芽生えてきた。

「そういうところ」というのは、タックス・ヘイブンとか租税回避という分野である。

1.巨大かつ匿名性の高い資金プール

それでいま感じているのは、むしろこれだけの金が匿名で動いているという事実である。さらに言えば匿名性のもとにこれだけの金が貯蔵され、いつでも引き出し可能な形態で積み上げられつつあるという事実である。

それは投機性の高い金融市場のための一つのアセットとして存在している。そしてその市場とタックスヘイブンをつなぐ「導管」(Conduit)の役割を持っている。

租税回避とか節税という場合は、もっぱら関心は秘匿することにある。もちろんどこかの独裁者や麻薬王や超富裕層などはそういう目的で利用するのであろう。

しかしタックスヘイブンを使った資金プールの形成は、むしろ集めた資金の再利用にあるのではないか。だからこそ問題が深刻になっているのではないか。

2.ユーロ市場との強い関連

この点で、AFPの「租税回避の中心はロンドン」という記事は面白い。世界中のオフショア・ネットワークはロンドンを中心に形成されているというのだ。

モサック・フォンセカ社はロンドンから資金を受け入れ、それを英国領バージン諸島を中心に秘匿し、さらにロンドン市内の不動産へ投資している。

つまりシティーのユーロマネーを中心とする投機的市場のファシリティーとして存在しているものと思われるのだ。

ご承知のようにユーロマネーの市場は非常に匿名性の高い、無国籍的なオフショア市場だ。だから匿名性の高いマネーであっても、自由に市場に参加し、捌くことができる。

泥棒に故買屋が必要なように、匿名マネーには投資できる市場が必要だ。逆に言えばユーロ市場には金を自由に、しかも秘密裏に出し入れできるヤミ金庫が必要なのだ。

つまり匿名ネットワークはユーロ市場と表裏一体のシステムだということになる。

それがオフショアマネーの本質なのではないか。

3.金融市場の主導権を握りたいアメリカ

2,3年前にLIBOR事件というのがあった。私も調べて記事にしたことがある。しかしさっぱり思い出せない。

たしかユーロ市場の標準金利を決めるコール金利で、イギリスの大銀行が談合して決めている。これに世界のドル運用が規定されている。

それが不正をやって、それがバレて大問題になったが、どうも火付け役はアメリカ財務省ではないかということだったように記憶する。

あのモルガンでさえ、シティーの一角を借りて店子商売しているくらいだ。ドルはアメリカの通貨だというのに、その金利をイギリスが決めるというのは気に入らないに違いない。

そこでユーロ市場つぶしにいろいろ策を弄していることは間違いない。

此処から先は想像だが、いろいろ実情を調べていくうちに、ユーロ市場に流れ込む資金の出処が分かってきた。

それがスイスやルクセンブルグの信託銀行の匿名口座であり、あるいはシティーからパナマのエージェントを経由したバージン諸島などの裏口座である。

であれば、この流れを締めあげてやれば良いという理屈になる。口実は後からいくらでもつく。ある時は麻薬カルテルの資金洗浄だったり、ある時は中国やロシアなどの独裁者だったり、アラブのテロリストだったり種はゴマンとあるし、なければでっち上げるだけの話だ。

またタックスヘイブンを使った脱税への世論の反発も追い風になる。今回などその典型だろう。

4.アメリカは自らタックスヘイブンになるつもり?

こうやってタックスヘイブンを炙りだすと、巨大な秘匿マネーは居所がなくなる。この巨大金融資産を管理したくなるのも人情だろう。

ただ、これを積極的に呼び寄せようとしているかというと、私にはまだ確信が持てない。

状況証拠としては、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)を成立させ各国にそのスキームを押し付けたにもかかわらず、自らはOECD合意に加入しようとしないこと、国内の幾つかの州に「タックスヘイブン特区」を設け、そこでの匿名口座の設置を容認していることがあげられる。

ブルームバーグの記事によれば、いままさに、カリブ海からネバダ州への顧客資金の地滑り的大移動が起きているという。

こういう流れの中で今回の「パナマ文書」問題を考えれば、告発者の思いは別として、それがどういう結末をたどるかはある程度予想がつこうというものだ。

どうやら少し事情が飲み込めてきた。

租税回避について、結局アメリカが本気になり始めて、タックスヘイブンつぶしに本腰を入れ始めたこと。

それはテロリスト対策や麻薬カルテルの資金洗浄対策を名目として行われていること。したがって超法規的なやばいやり口をとっている可能性があること。

そして、違法に入手した情報を“ディープ・スロート”として垂れ流している可能性があること。

同じやり方でスイスとルクセンブルクの脱税エージェントを潰してきて、今度はそれがパナマだった、という可能性もあること。

プーチンと習近平を狙い撃ちしている裏側に、政治的意図も感じられること。

ICIJがナンボのものかは知らないが、「10日午前3時に史上最大の発表をする」という胡散臭さが少々鼻につくこと。(これについてはWSJも繰り返し指摘している)

したがって、情報の全面可視化がいま何よりも求められていること。正確なコメントはそれ以降の話になるだろう。

無論、パナマ文書が暴露された事自体は悪いことではないし、大いに評価するものであるが、一定の警戒心も持っておく必要があるだろう。

肝心なことは、富裕層による租税回避の動きが今や世界の指弾の的となり、富裕層が世界経済を破壊することに警戒の目が強まっていることである。

おそらくトービン税や金融取引税などの立法以前に解決すべき問題であろう。

「パナマ文書」、何が重要か?

ニューディールをやっているうちに、「パナマ文書」に関わる材料を消してしまったようだ。

この種のネタはスピードが命だ。ニュース記事は日にちが経つとどんどん消えていく。とくに日本の新聞はスピードが早い。まだ間に合うか?

ウィキリークスに始まって、タックスヘイブンのリーク情報はこれまでも繰り返し報道されてきた。有名人や政治家の名がチラチラと浮かんでは消えていく。たしかに情報量としては膨大だが、どこがこれまでのリーク情報より重要なのかがよく分からない。

少なくとも日本での報道では、まったく差が見えて来ない。率直に言って、日本の新聞は、この手の情報では、あまり役に立たないことが多い。

幸いなことに、最近では海外紙の日本語サイトがかなり充実していて、そこである程度の感触はつかめる。日本の有力紙と違って、情報の出し惜しみはしない。



WSJ

4月6日 「パナマ文書」とは何か

パナマは長年、オフショア会社の設立場所となってきた。以前のスイスの銀行による脱税幇助も、パナマ企業を使うスキームが多く用いられてきた。

パナマを代表する法律事務所モサック・フォンセカは、富裕な依頼人がペーパーカンパニーを設立する手助けをしていた。パナマはいまだに銀行をめぐる機密のとりでである。

その「モサック・フォンセカ」の内部資料が流出した。それは最初、南ドイツ新聞に流出した。

南ドイツ新聞は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に協力を仰ぎ、文書の解析に取り組んだ。

ICIJはこれを分析して、4月3日、一連の記事を発表した。

今回のリークを受けて(日本を除く)各国政府が調査に乗り出している。G20会議でも注目が集まる公算が大きい。


4月7日 「パナマ文書」が示す資金隠しビジネスの衰退

2月初め、スイスの検察は、マレーシアの複数の国有企業から40億ドルもの資金が不正流用された可能性があると発表した。

かつてスイス当局は、「スーツケースの中の現金が正当な手段で得られたものか、それとも不当なものかを判断するのは難しい」と考えていた。

スイスの司法長官がこの件を公表したこと自体が時代の流れを表している。

世界の規制当局は、オフショア租税回避地や資金洗浄を厳しく取り締まるようになった。

モサック・フォンセカのようなオフショア会社の利用は急激に減っている。米政府が巨額の罰金を科すようになったからだ。また内国歳入庁(IRS)の調査も厳しくなり、資産を隠すのは一層困難になっている。

モサック・フォンセカは無記名株式を利用することで儲けていた。この制度のもとでは、株券の所有者が企業の保有者となり、企業は登録名義人なしで存在することが可能になる。

人々はプライバシーのためや課税を逃れるため、不正利得を隠すためにこの業務を利用してきた。

米同時多発テロが起きた後、米国政府はテロ組織への資金供与を絶つための取り組みを強めた。一連の内部告発を受けて租税回避の取り締まりが強化された。これに(日本を除く)各国も追随した。

OECDによると、金融取引に関する情報交換や共通の報告基準の採用に今や96カ国が合意している。

モサック・フォンセカは、2005年には1万3287ものオフショア会社の設立をサポートし、企業6000社近くの代理人を務めた。これまで設立したオフショア企業は約24万に達する。

しかし15年には新規設立数が3分の1以下の4341社にまで減少し、代理する企業数は170社にまで減少した。


4月7日 租税回避の取り締まり、もぐらたたきの様相

課税逃れとマネーロンダリング(資金洗浄)を取り締まるための国際的な取り組みが強まっている。

(日本を除く)先進諸国政府は、2008年の金融危機と世界同時不況を受け、課税逃れの取り締まりを強化した。

2010年、米政府は外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)を成立させた。

これは「外国の金融機関に米国人顧客の身元とその保有資産に関する報告を義務付ける」というかなり乱暴な法律だ。これでスイスの各銀行がビビった。

EU もこれに追随し、スイスやルクセンブルクなどに圧力をかけた。その結果、EU市民が保有する口座の情報を共有できるようになった。

ここ数年で、HSBCホールディングス傘下のスイスのプライベートバンクによる課税逃れ、ルクセンブルク政府による多国籍企業の節税対策支援がリークされた。

その結果、利用者は伝統的なタックスヘイブン(租税回避地)から、より「エキゾチックな場所」に向かっている。それがパナマであり、バヌアツである。

OECD加盟国ではないパナマは、何とかして秘密性の高い管轄地域にとどまることを決意している。例えば、銀行口座情報を各国当局がやりとりすることや、税務問題での相互協力などを拒否することである。

(したがって今回のパナマ文書の暴露は、パナマ当局への脅しという側面を持っている)


ル・モンド=朝日

ウォール・ストリート・ジャーナルのあまりにも楽観的な見通しには、ピケティが異議を唱えている。

各国間で金融資産情報を自動的に交換することは悪いことではない。

しかしそれが始まるのは2018年からのことだ。財団などの保有株には適用されないし、違反へのペナルティーも一切設定されていない。

貿易制裁と金融制裁を科すことなしに、「お行儀よくしてください」と頼むだけのことだ。

そして真の問題は、経済危機に対して中央銀行が十分な貨幣を発行することで乗り切ったという経過から、そしてその後も金融緩和を続けているという経過から、世界が完全な金余り状況に陥っているということだ。

公的セクターと民間とが持っている金融資産は全体で、GDPのおよそ10倍に達している。

そして、とりわけ民間部門のバランスシートが膨張し続けており、システム全体が極めて脆弱なものになっているということだ。


以下はAFPから

4月8日AFP 米国の著名人なぜ少ない?

さすがはAFP(L'Agence France-Presse)、この疑問に切り込んでいる。ただ「米情報機関関与説」までは踏み込めていない。

要旨を紹介しておく。

理由の第一は、資産隠しやオフショア取引をしたい米国民にとって、スペイン語圏のパナマはタックスヘイブンとして魅力的ではないからだ。

米国人は、資産隠しや匿名で会社のために外国に行く必要はない。いくつかの州では、数百ドルでペーパーカンパニーを設立できる。

第二に、アメリカ政府の取り締まり強化だ。例えばクレディ・スイスは、米市民の資産隠しに協力したために26億ドルの罰金を科された。これは企業の生死に関わる。

このため、タックスヘイブンは米国人顧客を非常に恐れている。

と書いたうえで、「これは噂だが」として、ロシアなど他国の不安定化を狙うCIAによるもの、とするリーク陰謀説を紹介している。

4月7日AFP 「パナマ文書」が暴いた租税回避の中心はロンドン

「パナマ文書」問題で、ロンドンが世界中のオフショア・ネットワークを結びつける「心臓」の役割を果たしていたことが明らかになった。

ロンドンの金融街シティーの英法律事務所、英会計事務所、英金融機関がモサック・フォンセカのような会社を操作している。

英国は海外領内にあるモサック・フォンセカの仲介企業数で世界第3位を占め、3万2682人の顧問を有する。

カリブ海の英領バージン諸島には、モサック・フォンセカの顧客企業が11万社も存在していた。

モサック・フォンセカは、世界各地のタックスヘイブンに設立された数千の企業をつうじて、英国と何らかのつながりを持っていた。

その多くが英国内、特にロンドン市内の不動産に投資されていた。

4月7日AFP 流出元の法律事務所、最大市場は中国

内部文書流出元のモサック・フォンセカの活動の3分の1近くが、中国本土と香港に置かれている同事務所の支所で行われていた。

現在活動中のペーパーカンパニー1万6300社以上が、同事務所の香港と中国本土の支所を通じて設立されていた。

中国共産党の最高指導部に当たる政治局常務委員会のうち、現職または元委員少なくとも8人の親族が、オフショア企業の利用に関与していた。

複数のメディアの報じたもの。

アジアの大国中国が、腐敗と資本逃避問題で大きく揺れている。

フォンセカ中国

                          モサック・フォンセカの上海事務所(AFP)

4月12日AFP 各国のスパイも利用 独紙報道

南ドイツ新聞は、複数の国の情報員がモサック・フォンセカを情報活動の「隠れみの」として利用していたと報じた。

事務所の顧客には、1980年代のイラン・コントラ事件に際して、CIAの「仲介役」として密接に協力していた人物も複数含まれていた。


世界一のタックスヘイブンはアメリカ

パナマ文書の発表前の記事ですが、1月27日のブルームバーグの「世界一のタックスヘイブンはアメリカ」というのが面白い。

ロスチャイルド銀行やトライデント信託は、ネバダ州のリノに信託銀行を開き、バミューダなどのタックスヘブンに隠し持っていた海外顧客の資金を移動させています。

これは、OECDによる新しい情報交換基準に対抗するためと言われます。

なぜリノの信託銀行に資金を移せば安全なのか、それはアメリカがOECDの新しい情報交換基準が適用外となる地域なためです。

ロスチャイルド社の代表は、「顧客の資金をアメリカに移動させれば良い。そうすれば無課税となり、政府からも隠すことができる」と語っている。

現在多くの富裕層がアメリカの口座が最も安全と感じているというわけです。

2,010年にアメリカで、外国金融機関を利用した租税回避行為を防止するため、FATCAが施行されました。

OECDはこれに刺激されて新しい情報交換基準を作り、2014年に97の加盟地域が賛同する形で合意に至りました。

しかしこの基準を受け入ない国が3っつあります。バーレーン・ナウル共和国・バヌアツ共和国、そしてアメリカです。

財務省は「OECDの新基準はFATCAをベースに作られたものであるので同意する必要はない」と述べている。

しかしアメリカの金融アドバイザーは、「アメリカがOECDの新基準に同意しなかったことは、我々のビジネスを強く支持することにつながるのは明らかだ」と語っている。

バヌアツは初耳だったので調べてみた。

呆れたサイトがあった。

バヌアツ

というのが、サイトの見出し。「オチンチンむき出し」で不道徳そのもの、まるで「泥棒の宣伝」だ。

最初の数行をそのまま転載する。

豊かな観光資源と陽気な人々で知られるバヌアツは、租税回避国(タックスヘブン)としても世界的に有名です。

SPT VILAではバヌアツでビジネス等をお考えのお客様に以下のサポート業務を行っています。
 

タックスヘイブン(租税回避国)のバヌアツ共和国で法人設立!

この国には、所得税や法人税ばかりでなく、固定資産税や贈与税、為替管理法は一切存在しません。

更に、バヌアツ政府は他国政府との間に 情報開示協定を締結していないため、完全にプライバシーが保護されています。

パナマ文書の重大性はどこにあるか

最初にこのニュースを聞いたとき、正直、またかという感想で見ていた。

これまでもウィキリークスで何回かのスッパ抜きがあって、脱税の規模・手口についてはおおよその見当がついていたからだ。

これについては以下の記事を参照されたい。

それでパナマ文書は、①このニュースに新たな質的重要性をふくむのか、②個の事件を基に新たな動きが出てくる可能性があるのか、が分からないと、評価できない。

ということで、その新規性に的を絞って、ニュースを漁ってみたい。

まずは「パナマ文書」とは何かというあたり。これについてはウィキペディアがいち早くレビューしている。

1.「パナマ文書」の名の由来: 

オフショア金融センターを利用する企業の詳細な情報が書かれた機密文書である。

パナマのモサック・フォンセカ (Mossack Fonseca) 法律事務所が作成したもので、これが漏洩したことから名づけられた。正確にはフォンセカ文書と呼ぶべきだろう。

2.漏洩の規模

このファイルは合計2.6テラバイト、私の外付けハードディスクが3テラだからすっぽり収まる。ただここに文字情報として2.6テラ入ると相当な情報だ。

ここに過去40年分、1150万件の情報が記載されていた。そこには21万4千社の企業情報がふくまれている。

まずはこの規模がウィキリークスの情報よりケタ違いに多い。

2010年のアメリカ外交公電の流出が1.7ギガ、2013年のオフショア・リークスが260ギガとされている。

3.権威ある機関による検討と公表

ウィキリークスの漏洩も、ほとんどが真実として受け止められているが、基本的には匿名である。

今回は、ソースは秘匿されているものの、その検討には権威ある国際機関、「国際調査報道ジャーナリスト連合」 (ICIJ) があたっている。

80か国107社の報道機関、約400名のジャーナリストが、1年にわたり文書の分析を行ったとされる

この権威性がパナマ文書をより重要なものとしている。

ただし、この機関はすでに13年のHSBCホールディングスのスイス文書の時にすでに登場しているから、あまり新味はない。

はっきり言えば、規模が大きくて、権威のある研究であろうと中身が大したものでなければしようがない。そこはどうなのだろうか。

私としては、今回公表された脱税が総額でいくらになるか、脱税者は処罰しうるのかが最大の興味だが、ここらへんが明らかにされないと、前回のオフショアリークスの二番煎じに終わるような気がする。

オフショアによる脱税に関しては下記の記事を参照されたい。

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