鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

カテゴリ: 10 国際政治/経済

NHKの「ニュースの焦点」みたいな番組に佐橋亮さんという方が出られて、なかなか明快な分析をされていた。
文章を探したところ、“nippon.com”というサイトに佐橋さんと川島さんという二人の対談が載っているのを見つけた。
ともに東大の先生で、佐橋さんは米国から、川島さんは中国側から米中問題を研究されているようだ。

ポストコロナの世界 米中対立激化の行方を読む

1.「折り合う余地」がない関係に

米中関係は「大きな転機」にある。

17年末に国家安全保障戦略が出て「中国との競争」が打ち出された。18年3月には中国に対する関税の付与が始まった。

そして決定的な方針転換となったのが、8月に出来たいわゆる「マケイン法」だ。これにより輸出管理・投資規制の枠組みが出来た。

10月には、ペンス副大統領の「対中強硬論」演説があった。

この17年から18年にかけての流れは「米国の覇権維持」という戦略目標に乗った政策化だということができる。

それは19年も続いていくのだが、20年3月にそれは一つの画期を迎える。米中対立はイデオロギー的なものにまで深化した。

経済、安保、技術競争などの政策対決に覆いかぶさるように、イデオロギー対立が対中政策を支配するようになった。

この動きの中で、トランプだけではなく議会右派の動きが無視できず、民主党議員の一部をも巻き込むものになっている。


2.覇権維持戦略はそのまま、イデオロギー対立で補強する

貿易摩擦の問題では両国は「取り引き」できる余地がある。貿易協議で第1段階の合意が出来上ったのもこのためだ。

イデオロギー対立は覇権維持戦略に取って代わるのではない。

それは戦略的競争相手(strategic competitor)との闘いをさらにアピールできる素地を形成している。

政治的な推進力というのはワシントンを越えてはそうそう進まない。戦略的な話にイデオロギー対立をうまく噛ませると、国家的な行動へと進んでいく。

米国が「共産党たたき」を前面に出してきたので、中国としては「折り合う余地」が全くなくなってしまった。これは冷戦と同じ構造だ。

ただし「新冷戦」という言葉は、定義があいまいなところがある。このため、米国ではこの言葉を使わない専門家も多い。


3.逃げ場が狭まった中国

19年までの段階では、中国は「新型大国関係」を掲げていた。米国との間に「交渉の余地はある」と考えていたと思う。

ところが20年になって、米国があまりに強硬になって逃げ道がなくなった。

4月中旬からは公的な場で堂々と米国を批判するようになった。言葉だけではなく、東シナ海、南シナ海における公船の行動なども変わってきた。

問題がこじれたのは中国側にも責任がある。

これまで、中国は米中間の力関係を変えようとじわじわと手を打ってきた。

17年には「2049年には米国に追いつく」と宣言し、海底ケーブルやGPS衛星システムなどの開発にも成功している。

ただそれは「30年計画」であり、露骨なものでも性急なものでもなかった。

今回の対決姿勢の強化は、「米国の強硬姿勢、本格的な攻勢に対応する、中国の弱点をふさぐための防衛的な措置」ととらえることもできる。

いまの中国は経済的に非常に苦しい。国内の経済や就業対策にお金を使わなければならず、対外活動に資金を流す余裕はない。「身を引き締めて、米国の攻勢に耐える」というのが本音だろう。

4.さらに攻勢を強める米国

中国の対抗姿勢の公然化に対し、米国はさらに攻撃のトーンを高めている。

5月にはトランプ大統領が「対中関係を完全に断ち切ることができる」と発言した。ポッティンジャー大統領補佐官は、中国人(華人圏を念頭に置いた)に「立ち上がれ」と呼びかける演説を行っている。

その中で新版マケイン法ともいうべき「中華人民共和国への戦略的アプローチ」という文書が発表され、これに基づくファーウェイ(華為技術)に対する追加措置も実施された。

トランプ政権は、対中対立をいわば政治運動化してきた。この流れがどこまで続くのかはよくわからない。


後半は、今後のバイデンや習近平の話も絡んで、ペナント争いの予想みたいなところがあるので省略する。両者のニュアンスの違いもかなり著名になってくる。
ただ二人は、トランプがもし勝利したとしても、これまでの延長線上で対立を強めるのはかなり厳しいとみている。
貿易戦争が復活すれば、米国の同盟国の間でも、トランプ流の対中アプローチに付いていくことが難しい国が多くでてくるであろう。
ちょっと川島さんの提起がフォーマルなので議論がかみ合わないところがある。できれば佐橋さんの所論をもう少しじっくりと聞きたい感じがする。



口を酸っぱくしていうが今日の世界における主要な対立点は、すべての人々の命を守ろうとする勢力、そのために団結して行動しようとする人々か、産業のために危険を無視する人々、資源をひたすら退蔵し致富にすべての情熱を捧げる富裕層とのの対立である。
選挙勝利のために、病気への一致した取り組みを壊すことをなんとも思わない人も、その一味である。
米中対立が底流にないとは言わない。しかしいまことさらに対立を煽り、郵便ポストが赤いのまで人のせいにする人々は、政治の表舞台から一刻も早く立ち去るべきだ。

6月22日 日本経済新聞
中村亮「米軍トップ、辞任よぎった夜 『親トランプ』の苦悩」

がとても面白い。見てきたような話ではあるが…

6月1日、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、合衆国憲法修正第1条は「表現の自由」を盾に、デモ鎮圧のために米軍動員を求めるトランプ大統領に激しく抵抗した。

激論の末、ひとまず軍動員の回避に成功したが、警官隊がデモ隊を強制排除したあとに、ミリー議長は戦闘服姿でトランプに随行するハメになった。

ミリー

その日の夜、ミリー議長はメディアやネットで、自らの行動が「軍による政治介入」などと集中砲火を浴びるのを目のあたりにした。

批判者の中にはマティス前国防長官などの米軍OBもいた。ミリー議長は周辺に辞任の是非を相談するまでになった。

息をさせて
    ベネズエラ制作のポスター(We hope というのが良い)

話は10日後に飛ぶ。

6月11日、ミリー議長は国防大学の卒業生に向けた祝辞で、「私はあの場にいるべきではなかった」と述べた。

それはホワイトハウス前で軍服を着てトランプ氏に随行したことをさしている。

さらにミリー議長は「みなさんもこの誤りから学んでほしいと私は切に願っている」と言葉を続けた。

しかし、話はこれでおしまいだ。
辞任もしなければ、トランプと決別もしていない。トランプは慰留に入っている。
周辺情報によれば、ミリーはトランプ派の高級将校として軍に送り込まれたらしい。その結果、かなりの特進を経て現職についたようだ。
勘ぐれば、あんな写真がでかでかと出て、軍の反人権派のトップとして扱われたことに対するエクスキューズかとも取れる。
だから、問題はミリーの良心ではなく、統合参謀本部議長さえ一夜にして辞任間近に追い込むほどの民衆の圧力なのだ。
そしてコロナさへなければこれほどにはならなかったろうという、両者の社会心理学的な連結について思いを致すことだ。


6月16日付赤旗の経済面に興味深い記事が載った。
題名は端的に「コロナ禍」
コロナの影響を経済面から位置づけようと図った記事だが、あまりに対象が広く雲を掴むようなところがある。

記事は三人の記者の覆面座談会の形をとっているが、これは焦点が定め難いのを、3つの目に分散することによって、とりあえずカバーしておこうという意向の反映かもしれない。

率直に言って記事につけられた見出しや小見出しは適当とは思えないので、私の方でシャッフルしてグルーピングしたうえで、再度組み立ててみたい。

① マクロ経済の危機

各国際機関のマクロ見通しを列挙。

世銀は20年度世界経済成長をー5.2%と発表した。国別では米国-6、ユーロ圏-9,日本-6、新興+途上国は-2.5%とした。これは過去860年で最悪。

OECDも今年度見通しを発表。世界全体で-6%、第2波の如何によっては-7.6%と試算している。

② 先進国(米国)におけるコロナ禍

先進国におけるコロナ禍は次の3つだ。

第一に雇用の喪失だ。2千万人近くの雇用が失われた。しかも雇用の喪失は長期にわたると予想される。

第二に大量の貧困者の出現だ。これは失業に伴うものだ。低賃金労働者、女性、アフリカ系、ヒスパニック系に集中している。

第三に社会の亀裂の深まりだ。コロナ危機は社会のひずみを浮き彫りにしている。その象徴が白人警官の黒人殺害だ。

「この悲劇的事件は人種差別の痛みに光を再び当てた」(FRBパウエル議長)

③ 新興国・途上国におけるコロナ禍

もっとも激しく影響を受けるのは、次の4つのタイプの国だ。ほぼすべての途上国がそのいずれか、あるいはそのすべてに含まれる。

第一に、社会扶助体系の貧弱な国、ソーシャルネットの失われた都市である。

第二に、観光や仕送りが収入の多くを占める従属性の高い国だ。(観光と仕送りを一緒にするのはいかがか?)

第三に、特定輸出産品に依存し、その輸出産品が特定の品目に偏っているモノカルチャー国だ。

第四に、多国籍企業のグローバル・サプライチェーンに深く組み込まれている下請け国家だ。

④ 新興国・途上国の多重苦

新興国・途上国を苦しめるのはそれだけではない。

世界経済的には、今回のコロナ禍を通じてさらに3つの苦難が襲う。

第一に、一次産品全体が著しい価格下落に襲われる。特に産油国では原油価格の下落が著しい経済困難に襲われる。

第二に、先進国の資金引揚げにより、「投資」が対外債務として積み上がる。

第三に、国家財政では債務超過がもたらされ、格付けの低下と通貨の為替レート下落を招く。

その結果、新興国・途上国の経済が、通貨と資産価格の暴落により底抜けしてしまう。

⑤ 資本コントロールが重要

このように世界のコロナ禍の内容を見ていくと、いま最大の課題が見えてくる。

それは第一に、新興国・途上国に対し緊急支援を行うことである。UNCTADによれば、その額は2.5兆ドルに及ぶと試算されている。

4月のG20は最貧国の公的債務支払いを今年度末まで延期することで合意した。しかしこれで収まるわけではない。支払猶予ではなく債務帳消しに踏み込まなければことは収まらないであろう。

それは第二に、巨大資本の急速な資金引揚げを予防することである。

この津波のような引き潮は、巨大資本による資本の巨大な流れがルールを無視して行われた結果起こる。

それを防ぐためにもっとも必要な手立ては、国境を超えた巨大な資本の動きを、国際協調によりコントロールすることである。

UNCTADはさらに、「必要とされる場合には、資本流出を抑えるための対策」が必要となると踏み込んでいる。

第一の方針も、第二の方針もトランプは反対するだろうが、米国の国内を見ても国外を見ても、それ以外の選択はなくなっていくだろうと思う。

ただし、最後の記者Cの発言、
「コロナ危機は新自由主義の横行を反転させた。そして巨大資本の管理の必要性を浮上させた。これは時代の巨大の変化の現れだ」
というのは流石に言い過ぎではないかと思う。

米中新冷戦の本質

これが本質かどうかは知らないが、面白い分析だ。日経の6月1日付の寄稿記事。R.アームストロングという金融論説家によるもの。

1.米中関係の構図

まず私の米中関係の構図を示しておく。

国家としての米国対中国においては力の差は歴然としている。
リーマンショック以来、米国はドルを刷り続けた。物質的富の数十倍にのぼるドルは、ディスインフレのもとで、すべて富として現象している。そしてそのほとんどはアメリカの資本のもとにある。
中国は絶対に勝てない。だからこれはけんかではなく米国の一方的ないじめである。

ところが国家としての強大さを裏付ける、GAFAMなど成長産業は、その競争力の多くを中国での安定したサプライ網に依存している。

さらに製品の販路としても中国が最大の市場となっていく可能性がある。

したがって、米国はその経済的将来を中国に依存せざるを得ない。

代替国はないわけではない。しかしそれを実行するほどの体力がアメリカにあるとは思えない。

中国でウィンウィンの取引というのは、中国側がウィンウィンすること、つまり二度勝ちすることだという。

製品がハイテク化すればするほど、サプライ部門も高度化せざるを得ない。そして高度化したサプライ部門がいつまでその地位に甘んじているだろうか…?

ファーウェイ問題はそういう性格を内包している。これからも似たような問題は相次いで発生するだろう。

2.米中対立で米国は何を得るのだろう?

ここからアームストロングの所論に入っていく。

彼の提示するアメリカ側のオプションは以下のごとくである。

① 議会・政府はコロナ対応、WHO評価、中国企業の市場締め出しなどの派手なパフォーマンスを続ける。
② 香港に関してこれまで与えてきた特恵的な地位を断絶するとの脅し。具体的には「香港ドル」の否認。
③ 二正面作戦の強制。サプライチェーンを脱中国化する。ただし中国に販売するものについては「現地生産」を続ける。

これを見れば中国バッシングが不可能であることが明らかだ。「香港ドル」の否認はあるいは可能かもしれないが、サプライチェーンの脱中国化は共倒れの試みにしか過ぎない。(香港ドルの将来は正直のところ、私にはよくわからない)


3.中国に国際協調を迫るために

考えてみれば乱暴な話で、中国に国際協調を迫るために、国際協調のルールを無視した干渉を続け、他国へは干渉への協調を迫るというのは無茶だ。

しかし中国側に一部の非もないということではない。

以下の一文は目下私には正否を判断できない。

中国は自由貿易や企業の独立性、国際ルール、知的財産の尊重などで勝手な振る舞いを続けてきた。

ただ、まずはアメリカ自身が「勝手な振る舞い」とやめることが必要だ。ここに来て喧嘩両成敗論を持ち出されるのは、大いに迷惑だ。

2020年5月28日 ニューヨーク 発

ユニセフなどがによれば、新型コロナの影響により、今年末までに「貧困な子ども」が15%増加する。
「貧困な子ども」の総数は、年末までに6億7,200万人に達するだろう。そしてその約3分の2がサハラ以南のアフリカと南アジア(インド)に集中するだろう。

それとは別に、コロナを受けての「貧困な子ども」の増加率は、欧州が最大で44パーセント、ラテンアメリカでは22パーセントに達するだろう。

* 4月はじめにオックスファムが公表した報告書では、新型コロナ感染拡大により、絶対的貧困層が約5億人増えると報告されている。

世界的な経済危機により、2つの事柄が子どもたちに悪影響を及ぼす。
一つは各家庭の収入が減ることだ。これにより食料が得られなくなり、医療や教育の機会が減る。
もう一つは財政の縮小により会的サービスが低下し、ウイルス封じ込めが困難になることである。

ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアの談話
パンデミックは、世界中の家庭を前例のない社会経済危機に巻き込んだ。
家庭への経済的影響は、子どもたちから不可欠なサービスを奪っている。
今連携して行動しなければ、貧困世帯は何十年も前の生活に直面することになる。
*ユニセフの発表は散漫で、その数字は根拠が曖昧で、素直には信じがたい。しかしその旺盛な現地活動がもたらす深刻な危機感は共有すべきものである。

新興国の資金流出が止まらない

3日付の日経新聞によると、2020年に入ってからの100日で、新興国9カ国から1千億ドルが流出した。このスピードはリーマン・ショック時の4倍に相当する。

新興国経済破綻のメカニズム

メカニスムはこういうことだ。コロナで生産活動が低下し医療費が増大→財政収入の低下と財政支出の増加→通貨不安と為替急落→ドル債務の増加。

IMFによれば新興国の財政赤字は前年比1.8倍、GDP比で8.9%になると予想している。

ただし財政支出増の主因はコロナ対策にあるのだから、十分な手当てをすればその分は支出増になる。例えばマレーシアはGDPの18%相当をコロナ対策に出動すると政治決断した。

十分な対策を取ればその後の立ち直りも早いはずなので、この財政状況判断は半年なり1年を経て評価する必要がある。

それで9カ国の財政と債務を示したのが下図。

新興国


見てもわかるように各国がかなり異なる状況にあり、共通傾向を探るのは難しい。

通貨下落を主要な特徴とするのがブラジル、南ア、メキシコの三カ国だ。ただこれはこの100日間でこれだけ下落するだけの「のりしろ」があったとも言える。

トルコとチリは下落率は低いが対外債務はすでに十分積み上がっている。つまり本来は上位三カ国のさらに上位に位置すべき国なのだ。

右側のアジア四カ国についても同様の傾向が見て取れる。

目先の通貨下落率ではなく、債務残高で国力を判断しなくてはならないということがわかる。

結論

コロナショックによる経済収縮はすでに始まっている。

問題は、最後に新興国や貧困国に皺寄せされる病気と貧困の二重苦が、先進国にどう跳ね返ってくるかである。


ジョセフ・スティグリッツ 「大恐慌より困難だーコロナ・ショックの特殊性

1.未曾有x未曾有

アメリカのコロナ感染は未曾有だが、その前に所得格差の程度と労働者の窮状ぶりも未曾有で、災難は未曾有x未曾有になっている。
しかも社会保障制度が欠如しているので、まことに酷いことになっている。

2.コロナ危機は大恐慌よりも大変

大恐慌は深刻とはいえ単なる総需要不足だった。それにニューディールという脱出の道筋が存在した。

ニューディールは需要を創出して経済に刺激を与えるという戦略を設定した。そして実行にあたっての原則と具体策を提示した。

原則というのは財政赤字を過度に心配するなということ、そしてやるときには徹底してやれということだ。

ニューディールは基本的には成功したが、回復したわけではない。計画を徹底できなかったために、第2次大戦まで完全な回復を実現できなかった。

3.コロナ危機はどこが大変か

今回は、事情はもっと複雑だ。

景気の底が抜けて不況になったのではない。総需要が落ち込んで経済が回らなくなったのでもない。

コロナが街を支配し、恐怖を撒き散らし、仕事をできなくさせてしまったのが経済危機の原因だ。

たんに総需要を回復させるという話ではない。たとえ財政出動を存分に行ったとしても、それだけで解決する問題でもない。

4.必要なのは社会的保護だ

社会的支援も必要だし、財政出動も必要だし、景気刺激策も必要だ。

だが肝心なのは、財政出動にあたっての目と構えだ。

今さしあたって必要なのは、景気刺激策ではない。当面する問題が需要不足ではないからだ。むしろ需要過多と言ってもよい。

それ以上に不足しているのは安心と信用だ。だから財政出動の性格は、景気刺激ではなく困窮者への保護を主眼とすべきである。

それには総需要かさ上げに要するほどの資金は必要ない。全体のパイを大きくして、景気回復によるトリクルダウンの再開を待つのでは間に合わない。

必要なのは、罪もなく苦しんでいる人を救済するために再配分を強化することである。それが、結局は経済を回復させる近道となる。

新興国で金融危機の兆し

英「エコノミスト」誌から引用したものらしい。

今年に入ってから、ブラジル・レアル、メキシコ・ペソ、南アフリカ・ランドは対ドル価値が25%近く下落した。

世界の資金は新興国の株式と債券を売って安全資産にシフトしている。
この結果、新興国のあちこちで異常兆候が現れている。

新興国では、コロナにより貿易減少、天然資源価格下落、旅行客訪問中断などが同時に押し寄せている。

そのような中で新興国市場は金融危機と苦闘している。当面の輸入代金とドル建て債券も手当てできない状況だ。

「最後の貸し手」のIMFに支援を要請した国はすでに90カ国を超えた。これは加盟国の半数に当たる。
いまこそ、新興国のためにIMFが行動に出なければならない。

もう一つのドル供給機関 FRB

リーマンショックのとき金融危機からの脱却に大きな役割を果たしたFRBは、今回も一定の動きを示してきた。

最大の行動は通貨スワップだ。基軸通貨国をはじめ、韓国、ブラジル、メキシコ、シンガポールなどの一部新興国と協定を締結した。

締結国はFRBから自国通貨を担保に4千億ドルを借りた。

FRBの発表では、今後さらに、各国の中央銀行が保有する米国債を担保にドルを供給するという臨時の金融計画を明らかにした。

中国や日本は国債を多く保有しているので、これらの国ではより機動的な対応が可能となる。

新興国とFRB

だが新興国では、通貨スワップを結ぶほどの力もなく、米国債保有量も多くないからFRBのチェンネルなどは縁遠い話になる。

それらの国はIMFに頼るほかはないのだ。

しかし無い袖は振れない。IMFにはFRBのような打出の小槌はない。各国の拠出金に依拠する他ないのだ。

その中で打てる手はなんだろう。それは3つある。

第一に、IMF特別引き出し権(SDR)の限度を大幅に増やすことである。
SDRは、ドルという名はついていても中身のない、今どきの言葉で言えば仮想通貨である。拠出国の信任さえあれば、原理的には限度額はない。

第二に、SDRにより新興国へドル流動性を供給することである。
とくにFRBの支援対象にならない新興国にクレジットを与えることが重要である。

第三に、とりわけアフリカの最貧国にたいする救済策をまとめることである。
これらの国はどんな金融上のセーフティ・ネットワークにも該当せず、医療支援・経済支援活動のの死角地帯となっている。

14日からIMFの年次総会(テレビ)が開かれている。
ゲオルギエワ総裁は開会演説で、「いまわれわれは過去になかった危機に直面している。我々の行動が経済回復の速度と強度を決めるだろう」と決意を語った。

しかし今回の危機が長期化する場合にIMFが耐えられる十分な能力があるのか、疑問もあげられている。

*SDR 固定相場制の枠組みの中で国際準備資産として創設された。ブレトンウッズ体制が1973年に崩壊すると、SDRへの依存度は低下しました。
しかし流動性を供給し、外貨準備高を補完する上で一定の役割を持っています。例えば、世界金融危機の際には合計で1,826SDRIMF加盟国に配分されました。

コロナと貧困

Diamond On Line にイチロー・カワチさんのインタビューが掲載されている。河内さんはハーバード大学の社会疫学の教授である。

4月5日の発行なので、ある程度最新状況を踏まえていると思われる。


NYの死者が多いのは格差が大きいから

NYでは死亡者の多くが糖尿病や心臓病、ぜんそくといった基礎疾患を持っていた。

感染症のパンデミックは社会格差をあらわにする。このことは1918年のインフルエンザのパンデミックでも確認されている。

アメリカで感染が深刻な都市として、ニューヨークのほかにニューオーリンズも注目されている。どちらもジニ係数が高いことが共通している。

なぜ貧困と死亡率が相関するのか

貧困者はもとの健康状態が悪いだけでなく、他にもいろいろな弱さを抱えている。

まず、感染の可能性そのものが高い。サービス業や製造業で働く人は在宅勤務が出来ない。働き続けるためには、感染するリスクを取り続けるしかない。

社会保険の喪失

またロックダウンで一番失業者を生んでいるのが、貧困者の受け皿となっているサービス業だ。米国では失業は健康保険の喪失をも意味する。

無保険の人は国民の1割に達している。たとえばNYの人口が1千万とすれば、100万人は無保険ということになる。

医療のセーフティーネットはまったく整備されていないと言ってよい。

一方で米国の多くの家庭では、預金が400ドル(4万円)にも達しない。

つまり無保険で貯金もないという経済的に困難な人たちが、ぎりぎりまで病院に行くのを我慢し、病状を悪化させるという経過をとることになる。

これからはコロナの二次被害への対策

パンデミックの長期的な影響は経済的打撃だ。多くの人が失業し、貧困に陥り、貧しさが人々の健康を害していく。いわゆる災害弱者対策だ。

パンデミックへの備えが必要だということは、ビル・ゲイツを始め多くの学者が主張してきた。しかし、パンデミックと社会格差を結び付けて備える考えは普及してこなかった。

社会格差への対応という点では、健康保険制度や雇用制度といった根本的な部分についての政策議論が必要になる。

肩書きに惹かれて読んでみたが、さほどの中身ではない。下記の記事のほうが良い(ワシントンポストからの引用)
貧困ではなく格差が病気を生むという指摘は、すでにウィルキンソンの説得力のあるプレゼンがあるので、そちらを参照されたい。要するに格差の根っこには社会的分業があって、分業を基礎とする社会の仕組みを変更しなければならないという「資本論」の解説みたいなものです。

この記事は「基軸通貨 75年 ドルへの不安」という日経記事の紹介です。筆者は日経新聞国際部長の発田さんです。

大変要領よくまとめられていて、参考になります。しかしこの記事1発でわかるほどデジタル通貨は甘くありません。

少し話の順序を変えて、議論の流れが飲みやすくなるよう工夫してみました。いくつかの部分には補足的説明も折り込みました。

そのため原文よりかえって長くなってしまいました。ご容赦の程をお願いします。


問題意識 デジタル人民元はドルを揺るがすだろうか?

中国が発行するデジタル人民元が普及しつつある。
問題はこれがドルを基軸とする国際金融体制を揺るがすことになるか否かである。

それは2種類の議論を内包している。ドルの単一支配体制が人民元により破綻するのかという問題、もう一つはデジタル通貨が国債決済の主役になっていくのかという問題だ。

1.ブレトンウッズ体制とドル本位制

ブレトン・ウッズ協定以来75年間、ドルは世界の基軸通貨であり続けている。

貿易の半分はドル決済だ。各国の外貨準備、証券発行、新興国の対外債務の3分の2がドル建てだ。新興国の中には、普通にドルが国内流通している国も珍しくない。

もともとのドル支配体制は金本位制を背景としていた。フランスが60年代にドル覇権に挑んだことがある。しかし金の大幅流出にも関わらずドル覇権が揺らぐことはなかった。

73年に、ベトナム戦争と財政破綻によりブレトン・ウッズ体制は崩壊した。ドルは金の裏打ちをなくし、世の中は変動相場制の時代に移行した。

アメリカは双子の赤字を抱え困難に直面した。ドルの価値は大幅に下落した。

このとき「基軸通貨ドルを防衛せよ」という共通認識が形成された。実質的には通貨システムの押し付けであったが、形としては先進諸国の合意による通貨システムの再建であった

その後、ドル基軸体制はそのまま続いている。

理由は単純だ。米国に代わる強国が登場しなかったからだ。世界第二の経済大国にのし上がった日本も、総合力において到底かなうものではなかった。


2.中国もドル覇権から抜け出せない

だが21世紀に入って状況は大きく変わりつつある。中国という強力なライバルの登場だ。

いまや中国のGDPは購買力平価ベースでは米国を逆転している。このまま行けば、2030年には市場実勢ベースでも米国を抜くことになる。

とはいえ、中国もかつての日本同様にドル支配の軛のもとにある。

あらゆる通貨の中でドルは特権的地位にある。その特権はとてつもないものだ。

ドルが貿易の決済通貨である以上、各国はドルを持たなければならない。そのために、日本や中国は1兆ドルを超す米国債を保有している。

外国企業はドル調達や為替差損の調整にコストとをかけざるをえない。

一方、米国は経常収支が赤字でも世界から資金を集めることができる。米企業はドルに関する手当てをまったく必要としない。


3.通貨覇権と軍事覇権

米国以外の多くの国にとって、最大の脅威は通貨覇権が軍事覇権を支えていることだ。

イランはトランプ政権成立後に石油収入の8割が減った。外貨準備はあるのに、その9割にアクセスできない。

どうして米国はこのようなことができるのか。それは送金情報を送る国際銀行間通信協会(SWIFT)が決済網を握っているからだ。

米国が対イラン制裁を発動したとき、それが実効化できたのはSWIFTがイランの銀行を決済網から締め出したからだ。そしてSWIFTの運営を握っているのが米銀だからだ。

同じ手口はベネズエラにも適用された。中国の党幹部はSWIFTなどの国債決済網は「米国の覇権維持ド道具」と見ている。


4.米国第一主義がドルへの信頼を揺るがせている

ドルによる通貨覇権への不安は、中国や途上国だけでなく先進国や、金融中枢からも湧き出ている。

ドルは世界システムとしての安定性を欲するが、トランプの自国第一主義はこの考えと激しく衝突するからだ。

自国第一主義というのは、自分の立ち位置を中心に土俵を作るようなものだ。土俵際まで追い込まれたら自分を中心に土俵を書き直すことにする。

これではルールも何もあったものではない。

先年、米国は「世界の警官は続けられない」と宣言した。安全保障分野と同じように世界経済システムの守り手の役割も放棄するなら、もはやドル支配体制の維持に意味はなくなる。

その不安感を典型的に示したのが、昨年8月のイングランド銀行カーニー総裁の講演だ。

デジタル通貨容認論だけが全面に出る形で報道されたが、最も重要なことはトランプ政権への不信感と、ドル依存体制への危機感である。

カーニー総裁は「経済政策をめぐる不確実性」や「あからさまな保護主義」が、通貨システムを介して世界経済を破壊する危険性があると指摘した。そして世界はドル基軸体制から脱却する必要があると訴えたのである。

その延長線上に代替システムの一つとしてデジタル通貨(中銀主導型)の可能性を示唆したのである。



5.デジタル通貨が切り札となるか?

デジタル通貨には長所と欠点がある。

最大の長所は通貨を介入することから来る為替リスクがないことだ。その他にも銀行を通さないことから、金融介入をシャットアウトできること(公的介入さえも迂回できる可能性がある)、簡素でスピーディな手続きも長所としてあげられる。

一方で、大銀行や政府・中銀のバックアップがないから、外部の干渉に弱い。あまりに投機性が高いためにアメリカでは半ば犯罪扱いされてきた。

大資本がバックアップすれば短所はカバーされる

この欠点はピア・トゥ・ピア評価が安定しないことから生じる。それは各国中銀や大手銀行がシステムに介入し、取引の信頼性を担保すれば克服できる。

特に先行しているのが中国人民銀行だ。

いま、IMFや世銀を先頭に多くの国際的銀行ネットワークは米国の影響下にある。これに対して中国は、ブロック・チェーンを使って銀行を通さない決済を広げようとしている。

このブロック・チェーンの先にビットコインを接続すれば、大手金融網とは関係なくもう一つの経済圏が構築される可能性がある。


6.人民元そのものの弱点はそのまま残っている

そこでデジタル人民元に未来はあるかという話になる。

発田さんの指摘によれば、人民元は個人の両替は年間5万ドル以下、海外投資には事実上使えない、浮遊ペグではあるが完全変動相場制ではない、などの制限が残っている。
その結果外国為替市場での取引シェアは2%にとどまっている。

まずは国際通貨にふさわしく、さまざまな制限を撤廃し、ブラッシュアップしなければならない。どちらにしても、人民元が国際化されなければデジタル人民元も国際的なものにはならないだろう。

ただし、ドルの側から人民元に押し込むようなプッシュ要因が今後出現しないとは限らない。あるいはユーロとの協調のような局面も考えられる。

いずれにせよデジタル通貨元年のような様相を呈している2020年、動向を慎重に見極めていく必要がありそうだ。

SDGs(持続可能な開発目標)について

1.SDGsとはなにか

Sustainable Development Goals の略。“s”は複数形の”s”なのでエスディージーズと読む。恥をかかないよう一言。

2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標です。

17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない」(leave no one behind)ことを誓っています。

2.なぜSDGsが叫ばれるようになったか

20世紀の最後の20年間、ネオリベラリズムに基づくグローバリゼーションが拡大しました。

これは一部の企業(とくに米国の情報産業)の活性化により景気の回復をもたらしましたが、それと引き換えに貧富の格差の拡大と、貧困層の社会的排除という深刻な問題を生み出しました。

その傾向は特に若者層、発展途上国という地球の未来を担う社会集団に顕著に現れました。

そのために社会のひずみと歪んだ風潮が、世界中のいたる所で強まっています。

3.SDGsは何を目指すか

まず、格差→貧困+差別という連鎖をどう断ち切るかというグランド・デザインが必要です。

それが「社会的包摂」という考え方です。

すなわち地球上の誰一人も取り残さないこと、僧いう世界を実現するという構えです。

ヘイトや差別観にもとづく行動が青年の間に広がっていますが、その多くは自らも差別され貧困に追い込まれているのです。

多くの国で、若者の失業率はふた桁に達し、中には半分以上が失業という状態すら生まれています。青年は社会から排除され、貶められているのです。

これらを解消するには個別の対応ではなく、とくに仕事面での保証が必要です。納得の行く仕事と暮らして行ける賃金は、包摂力のある世界を作る上で必須です。

4.企業の社会的責任 CSR

仕事を具体的に保証しているのは企業です。個別企業というのではありませんが、企業全体の社会的任務が問われて然るべきです。

このような企業の社会的責任を求める考えを「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility)とよびます。

これはメセナとか社会貢献というのとはレベルの違う話です。あくまでも自主的な企業活動の一部であるとはいえ、一定の社会的合意をもふくむものです。

5.企業への具体的要請

CSRはイギリスのブレア政権で始められ、欧州金融危機さなかのEUで強化され定式化されました。

企業は2つの側面から規定されています。

出資者による所有と運営という面、そして労働者など生産組織に関わる人々、商品やサービスを利用する消費者などです。後者は「利害関係者」(ステークホルダー)と呼ばれます。

EUはこの2つの側面をすり合わせ、それらの共通価値を拡大していくようもとめました。

たしかに利益をどう分配するかということだけに限れば株主と利害関係者はゼロサムの世界にあります。さらに利害関係者の間でもなにかと衝突はつきものです。

しかし企業というのは社会分業の中で役割をにない社会活動の一部を担っているわけですから、その公共的性格は誰もが了解し受け入れなければなりません。

6.企業は何をなすべきか

企業はビジネスを展開するにあたって、企業活動による負の影響を減らさなければなりません。

そのために、少なくとも長期の企業戦略においてはCSRを組み込まなければなりません。労働安全や福祉に加えて、広範な利害関係者への配慮もなされなければなりません。

これは決してネガティブな課題ではありません。ステークホルダーの多様な要求を満たすことは、そのための革新的なサービスを生み出すことに繋がります。

こうして社会課題に対応しつつ企業価値を向上させるという企業活動スタイルに脱皮して行くことがもとめられていると言えるでしょう。

日経新聞「やさしい経済学」(長谷川直哉さん)より

(SDGsをめぐる連載のうち企業責任の部分を要約したものです)

ビットコインの歴史

2008年 「サトシ・ナカモト」の名前でビットコインに関する論文が発表される。

2009年1月  ビットコインのオープンソース・ソフトウェアが発表され、運用が開始される。

2009年6月 「資金決済に関する法律」が成立。流通性や汎用性を持つ電子的な決済手段を仮想通貨と定義する。

2010年5月 ビットコインによる商取引が初めて成立する。ピザ2枚が1万ビットコインで売られた。

2012年 欧州中央銀行は「未制御だが、特殊なコミュニティで用いられる電子マネー」と定義。

2013年3月 ブロックチェーンの分岐が起こり、激しい売り攻勢に直面する。米国の国土安全保障省はビットコイン取引所を押収し、FBIはSilk Roadのウェブサイトを閉鎖。

10月 中国のIT大手バイドゥがビットコインによる決済を導入。バンクーバーでビットコインのATMが導入される。

11月 中国を拠点とするビットコイン取引所のBTC China、世界最大のビットコイン取引所となる。

12月 中国人民銀行がビットコインの使用を禁止する。ビットコインの価値は暴落。

2013年 米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)、「どの司法組織においても法定通貨としての価値を持たないもの」と定義。半ば犯罪扱いする。

2014年

1月 ビットコインを使ったマネーロンダリングで男が逮捕される。

2月 マウントゴックス、全ての取引を停止。取引IDの改ざんにより送金が繰り返され、480億円相当が引き出された。

6月 エクスペディア、デル、楽天スーパーロジスティクスがビットコイン決済の取扱を開始。時価総額は約8400億円に達する。

2014年 欧州銀行当局、「公的機関の裏づけはないが、支払手段として受け入れられ、電子的に譲渡、保管または取引される」ものとする。
中央銀行によって発行されるデジタル通貨は「中央銀行のデジタル通貨」とされる。

2016年 改正資金決済法が成立。仮想通貨を「弁済や購入・売却、相互交換を行うことができる電子情報上の財産的価値」と再定義。

2017年7月 ロシア人のビーニク、マウント・ゴックスなどから不正に金銭を入手したとして逮捕される。

2018年 資金決済法の再改正。欧米での呼称に従い、「仮想通貨」を「暗号資産」(crypto asset)に変更。

2018年7月 ベネズエラ政府が経済危機への対策として埋蔵原油を裏付けに発行したデジタル通貨「ペトロ」を発行。



世界経済フォーラム(ダボス会議)での仮想通貨・ビットコインに関するトピックス
https://coinpost.jp/?p=128782

ダボス会議でのブロック・チェーンの扱いはトピックスどころではない。ブロック・チェーンのために会議が開かれたというくらいの扱いだ。

上の記事では関連イベントや発表、注目発言をまとめている。

1.6中銀がデジタル通貨研究

共同研究の組織は「CBDC利用可能性評議会」と名づけられた。CBDCは中央銀行デジタル通貨(central bank digital currency)の略称。

今回のフォーラムではフォーラム事務局よりCBDCの枠組み案が提示された。これは全28ページからなり、各国中銀が発行するCBDCが適切かどうかを判定する基準となる。

また、デジタル通貨のガバナンスについても枠組みの設計が必要だとし、国際連合組織の設立を明らかにする。

ガバナンスを構成する要素としては効率性、スピード、相互運用性、金融包摂、透明性の5項目が挙げられている。

2.米ヘッジファンド創業者レイ・ダリオは語る

お金の目的は二つある。交換の手段と富の保存手段だ。現在、ビットコインはどちらにも効果的ではない。

しかしパラダイムシフトの限界が近づいているのも間違いない。国債のマイナス金利化はそのシグナルだ。

3.「大事なのは電子決済」

ヨルダンのデジタル経済相は「大事なのは電子決済で現金取引を排除すること。新たな通貨の発明は必要なし」と語る。

4.時流は逆に金回帰に向かう

イスラエルの歴史学者は、「P to P の信用など空虚だ。トランプの一吹きで吹き飛ぶ」とし、むしろ信頼を内蔵する金への回帰が強まるだろうと主張した。

5.「デジタル・ドル」プロジェクト

米商品先物取引委員会のジアンカルロ前会長が「デジタル・ドル」プロジェクトを発表。
ブロックチェーンを用いて米ドルをデジタル通貨化する。これにより手軽にドルの取引を行う環境の実現を目指す。

6.カリブラCEOが語るリブラ

フェスブック社のザッカーバーグは、仮想通貨「リブラ」の構想を立ち上げ、その関連子会社としてカリブラ社を立ち上げた。カリブラのCEOを務めるデビッド・マーカスが語る。

リブラを小売決済かホールセール型にするかは決まっていない。しかしいずれにせよ、リブラは金融決済を革新し、中央銀行が直面する通貨問題および自国経済の課題を解決する鍵となるだろう。

リブラの銀行からの支持率が低いが、我々の目論見は銀行との競争よりもっと高いところにある。
我々は金融包摂という課題を理解し、リブラをその解決法として試すものだ。

7.リブラ以外のデジタル通貨

Bakkt社は消費者向けの仮想通貨構想を発表した。
仮想通貨だけでなく、バーチャルグッズやデジタル証券、ポイントなどもその対象とするとのことだ。と言われてもなんのことやらわからぬ。

すでに仮想通貨を手掛けているリップル社は、「今後12ヵ月に渡り、仮想通貨企業の自社株発行が続々と行われるだろう」と述べた。

8.「サトシ、ダボスへようこそ」

世界経済フォーラムの会場に大型ポスターが掲示され、人目を引いた。スイス大手金融グループクレディ・スイスが掲示したものである。
satoshi
写真

リブラの台頭や、中国政府によるCBDC発行計画やブロックチェーン戦略などの盛り上がりは、まさに「サトシ・ナカモト」の切り開いた世界が大きく広がりつつあることを示している。

2020年がブロックチェーン元年となる可能性が見えてきた。もし新型ウィルスが鎮火し、トランプが再選されてその無軌道ぶりに拍車が掛かるようなら、一気にドル離れ、中銀離れが進んでいくのかも知れない。

それは金融一極支配の突破口になるのだろうか?

ブロックチェーン(Blockchain)とりあえずの感想

メリットやデメリットはどうでも良い

どうも困ったことだが、ビットコインやブロック・チェーンを扱う現場の人達が強調する「メリット」というのがさっぱり実感できないのである。

中央依存性が低い
安全性が高い
追跡可能性が高い

というのは、たしかにブロック・チェーンの特徴ではあるかも知れない。しかしだからといってそれが即「メリット」だと言われると、実のところそれはあまり実感できないのである。

「それをメリットだと思う人がやったら?」ということになる。

どうも記事は、ビットコインの相場に手を出そうとしているコンシューマーに、揉み手をしながら近づいてくるセールスマンのような感じで、油断ならない。



邪道が正道に

そもそもビットコインのそもそもの目的は非営利であった。それは金融独占の打破であり、「持たざるもの」に信用の窓地を開放することであった。しかしその目的はとうに失われた。

いまやそれは「口座を持てない人々」とはそもそも無縁な、高度のテクノロジーを利用した金融バクチとして発展しつつある。2018年のダボス会議でソロスは言った。1日で25%も値動きするような通貨は通貨ではない。誤解にもとづくただの投機だ。

業界2位の暗号通貨である「イーサリアム」は、ブロックチェーンを利用した取引を、一桁も二桁も増やそうとしている。
百鬼夜行の世界には詐欺や不祥事が続発してきた。暗号通貨が「暗号」であるゆえの弱点、強力な守りと利便性の矛盾が攻め込まれる隙間を提供してきた。

また中国では暗号資産の技法だけを盗み出して、P to Pとは真逆の「全展望監視システム」の方向に持っていこうとしてる。

鬼と出るか蛇と出るか

私が問うているのはメリット、デメリットという欲得の世界ではない。それが金融支配体制に風穴を開け、ドルの桎梏から抜け出し、脱一極の世界へ進み出す切符になるかどうかを問うているのである。

本来の分散型、ピア・トゥ・ピアの「民主的」な世界的金融システムが展開できるならこれほど素晴らしいことはない。

いわば政治の世界での一極支配対多国間主義という図式を、金融の世界に投影して行きたいのである。

法定通貨との組み合わせ・まずは決済機能から

暗号通貨は法定通貨の補助的な役割を担うようになっている。それはすでにかなりの程度まで進行している。具体的には送金手段、決済手段、利殖手段だ。

その際、人々が最も期待するのは決済機能であろう。フェアーな決済こそがいま最も求められているものだ。これがないために米国に国内法を発動され、不当な制裁を甘受せざるを得なくなっている。
ここ数年のEU諸国の米国追随ぶりは目を覆うばかりだ。イラン、ベネズエラ、パレスチナなどで米国が横車を押してもフランスもドイツも見て見ぬ振りをする。こんなことはイラク戦争の頃はなかったことだ。



ブロックチェーン(Blockchain)その2


2019-04-27 小俣淳平


#0 ビットコインを知らずしてブロックチェーンは語れず

「いや、ビットコインじゃなくてブロックチェーンが知りたいんですけど」

その気持ちはよくわかります。しかし、ビットコインとブロックチェーンは密接に関わっているものなので、ビットコインを知ることはブロックチェーンを知ることにも繋がります。

ビットコインは2008年にサトシ・ナカモトによって考案されたデジタル通貨です。名前は日本人のようですが、その正体は謎に包まれています。

ビットコインは国家が管理しなくても機能する「お金」として設計されました。これを自律分散型デジタル通貨と呼びます。

そして今まで約10年間一度もそのシステムがダウンしたことがありません。

最近は仮想通貨ではなく「暗号資産」(Cryptoasset)と呼ばれるようになっています。


#1 ブロックチェーンをなんとなくイメージする

世界中のスマホやパソコンが繋がって、蜘蛛の巣のようになって地球を覆っている、皆さんも想像しやすいインターネットのイメージです。

ただその繋がり方が、従来の一般的なインターネットとは違います。
どこかのサーバーにみんなが繋がっているのではなく、個々のパソコン同士が個別に繋がってネットワークを作っているのです。

そのネットワーク上で、正しい取引データを記録した台帳を、みんなで共有し、確認していきます。
そして確認した記録を一区切りにして1ファイルにまとめます。これをブロックといいます。

このブロックはどんどん増えていくので、それを時系列でつなげていきます。みんながその取引の履歴を確認しているので、みんなが安心して取引できるのです。これがブロック・チェーンです。

このようにすると、国や銀行が信用を与えなくても、大勢の人の相互信用で「お金」を作り出すことができます。

#2 ブロックチェーンのメリット

「銀行があるんだから、ブロックチェーンををわざわざ使う必要はない」と思うのは間違いです。

ブロックチェーンにはいろいろメリットがあります。それは銀行などと比べて分散型であることが関係しています。
ブロックチェーンのメリット
          図 ブロックチェーンのメリット

ただし、このメリットの説明は、原理的にはそのとおりであるにせよ、現実にはまだ信じられないところがある。

連載かと思いきや、記事はこれで終わりである。
もう少し関連知識が必要なようだ。



ブロックチェーン(Blockchain)

A. ブロック・チェーン 原理と用語の説明

①「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成する。
一つのブロックにはいくつかの取引の履歴が記録される。これを「トランザクション」と呼び、ハッシュ関数で「暗号化」されている。

②「ブロック」をチェーンのように連結していく。
この方法でデータを保管・蓄積していく。
各ブロックには、「タイムスタンプ」とブロック間のリンクが含まれる。
図 ブロックの内部構造
transaction
一つのブロックを原基として、枝分かれも含めた系統樹が形成される。


ブロックチェーンのデータベースは、対等端末のネットワークで相互管理される。これをP2P(ピアツーピア)方式という。
分散型のタイムスタンプサーバーで管理されるため、「分散型取引台帳」とも呼ばれる

p to p
     取引もWeb型となり、強力なプラットフォーマーが不要となる

B. パブリック型チェーンとプライベート型チェーン

ブロックチェーンの代表的なものにビットコインと イーサリアム がある。ビットコインは通貨の帳簿で、イーサリアムはプログラムの帳簿である。

ビットコインにおいては、やり取りはネットワーク参加者同士で行われ、第三者の参加者により検証される。
検証者は作業の報酬としてビットコインを受け取る。これにより市場でのビットコインの総量は増えていく。そのことでやがて交換・売買の場としてのビットコイン市場が膨らみ、通貨としての機能を発揮するようになる。

誰でもその気になれば、インターネット上でコイン発行作業に参加できる。さらに銀行が特権的におこなってきた検証作業にも参加できる。
これをパブリック型チェーンという。

 運営主体を評価するためにマイニングの市場規模を確保すること、検証に6ブロック(約1時間)程度をかけることがもとめられる。

とりあえずお金の移動を高速化することに特化した通貨をプライベート型チェーンと言う。
このチェーンには管理者がおり、仕組みは簡単だ。難点は、胴元がコケたらすべて一瞬でアウトということだ。

C. ブロックチェーン 使い方の広がり

ブロックチェーンを仮想通貨以外の目的で使う方式が広がっている。それが海外送金だ。
金融機関を経由することで数百円から数千円の手数料が発生するが、ブロックチェーンを利用することで送金が瞬時に可能となり、手数料もタダ同然になる。

ブロックチェーンの一番の魅力は、まだ可能性の段階に過ぎないが、米国の金融支配とドル乱発から離脱できるかも知れないということだ。
商取引もインターネットでピア・トゥ・ピアの正式取引ができるようになれば、大金融資本を介在しない取引が全世界で可能になる。ドルはたんなる「引き出し権」(DSR)の標章に限りなく近づく。

もちろんアメリカはプラットフォーマーを使ってインターネット金融の世界も支配しようと狙っている。しかしいくら支配を強化しようと図ってもネットの世界は原理的には自由で平等だ。

この可能性については、これからもう少し文献レビューを頑張りたいと思っている。

D. ブロックチェーンの発展動向

イングランド銀行、連邦準備制度、日本銀行をふくむ各国中銀も、ブロックチェーンに基づく暗号通貨の発行を研究している。
メガバンクを中心にグローバルな共同開発も急展開している。

今後のブロックチェーンの発展方向としては、暗号通貨の他に取引の自動化、取引や権利の記録への適用などが考えられている。
とりあえず、第1号の完成。

Ⅰ.非同盟首脳会議の概要

第18回非同盟首脳会議が10 月 22 から1週間にわたり開かれた。今回の開催地はアゼルバイジャンの首都バクーであった。慣例により首脳会議の開催国は、次の首脳会議までの間議長国を勤めることになる。

アゼルバイジャンは北海道ほどの面積に人口千万人弱。1991 年崩壊したソ連から独立し、2011 年に非同盟運動に正式加盟した。

今回の首脳会議は、バンドン原則 65 周年(2020 年)と 非同盟運動設立 60 周年(2021 年)にあたり、意義深いものとなった。

会議には120の加盟国と17のオブザー国・組織が参加した。主な首脳としてベネズエラのマドゥーロ大統領、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、イランのロウハニ大統領、キューバのディアスカネイロ大統領、マレーシアのマハティール首相など。

今回の会議のテーマは「バンドン原則を擁護し、現代世界の課題へ一致し適切な対応を確保するために」だった。

各国の代表は、貧困と格差の拡大、地球環境の破壊で世界は大きな挑戦に直面していると強調した。

とりわけトランプ米政権が国際法を無視した一国主義を推し進めていることが、非同盟運動をかつてない困難に直面させているとと指摘した。


Ⅱ.日本AALAの参加にあたっての立場

日本AALAは、この会議にアジア・アフリカ人連帯機構(AAPSO)の代表団の一員として参加した。
そして首脳会議に以下のような要望と提案をおこなった。

A.いかなる干渉にも反対し、主権を守り、人民と連帯する
①トランプ政権による「制裁」は、人民にたいする「集団制裁」であり、国際法、人道法に違反する。
②トランプ政権は各国へ「制裁」への参加を強制している。これに反対し、協同して被害国を支援すべきだ。
③干渉を正当化する理論を認めず、自決権を厳格に遵守するようもとめる。
④多国間協議により平和的に解決する立場を徹底して欲しい。

B.核兵器の廃絶にむけて

核兵器廃絶にむけ、とりわけ核兵器禁止条約の早期発効を目指す。

採択には反核の国際世論とともに非同盟諸国が大きな役割を果たした。賛成122カ国のうち、 105 カ国が非同盟国である。

朝鮮共和国が非核化に動き出している。非核化の枠組みとなるさまざまな合意を支持するよう提案する

C.発達した諸国の人民運動への支援

発達した諸国においても国民の多くは苦しんでいる。日本では日米軍事同盟を強化し、沖縄米軍基地を増強している。

日本AALAは、日本が軍事同盟を脱して非同盟運動に参加するというビジョンをもってたたかっている。
非同盟運動が日本など発達した諸国の人民運動にたいする理解と支援を表明することは意義がある。


3.大会決議(バクー宣言)のあらまし

A.国連重視

国連中心主義と多国間主義を貫き、とりわけ国連総会の活性
化に力を注ぐ。
国連安全保障理事会の開かれた民主的な組織への改革。

B.平和な国際関係

政治的主権、政治的な独立を尊重し、「合法的に構築された政府」に対する不安定化策動を行ってはならない。
相互不可侵と武力不行使の原則を守る。

C.対テロ活動の原則

テロリズムはいかなる宗教、国籍、文明、民族集団とも関連してはいない。そうあってはならないことを、非同盟運動は強調する。

D.核兵器のない世界のために

大量破壊兵器、特に核兵器の存在が人類最大の脅威となっている。非同盟運動は核兵器のない世界を実現するために努力することを決意する。

E.貧困の根絶

極度の貧困を含むすべての形態と次元で貧困を根絶することは、なお重要な要素の 1 つである。

開発途上国には開発の権利があり、それは尊重されなければならない。

先進国における保護主義の高まりは、特に発展途上国の輸出にマイナスの影響を与える。

F.先進国による経済制裁

一方的な強制措置の適用に対する強い非難を表明する。それらの措置は国連憲章および国際法、特に国家の非干渉、自決および独立の原則に違反する。
それらは人々の生存権に影響を与え、完全な経済的および社
会的発展を妨げる。


4.マハティールの重要な指摘

マハティールはマレーシアの首相。なんと92歳という高齢だが、非同盟運動の進むべき方向を鮮やかに示している。

それが今回の会議のテーマにもなっている「バンドン原則に立ち帰れ」という呼びかけだ。

彼は、2003年イラク戦争のさなかに非同盟会議の議長を務め、アメリカの覇権主義を厳しく批判した経験があり、非同盟運動の象徴とも言うべき人だ。

すこし演説の内容を引用する。

イラク戦争のとき、米国は各国に「敵か味方か」を迫ってイラクを破壊した。それがまた特定の国を敵視し、国連の承認なしに、「民主主義」の輸出と政権の転覆を企てている。
…世界はは依然として恐怖の中に生きているにもかかわらず、非同盟側では内部対立が激化して、かつての団結が失われてしまった。

いまやバンドン原則にたちかえり、対話と平和的手段による紛争の解決に徹して、大国の横暴や覇権主義に対抗しよう。


5.不破さんの重要な指摘

非同盟運動に関して、最近行われた共産党大会で不破さんが大変重要な発言を行っているので紹介したい。

A.20世紀論の核心は民族自決にある

20世紀論の核心は植民地国家の独立にあった。民族自決の原則が世界の根本となった。

21世紀のさまざまな出来事は、この歴史認識の正しさを見事に実証した。


B.20世紀の構造変化が核兵器禁止条約を生み出した

この間の平和と社会進歩の最大の変化は、核兵器禁止条約の成立である。

それをもたらした最大の力はアジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々だ。


C.世界政治の主役は交代した

発達した資本主義国の政府は、世界平和を目指す人類的な意思に背を向けている。恥ずかしながら被爆国日本もその一員だ。

発達した資本主義国が政治的反動に向けて歩んでいるという事実は、世界政治の主役が交代したことをはっきりと示している。

D.社会主義への道はさまざまだ
社会主義を目指す動きもさまざまな国で、さまざまな形で起こっている。
そうした運動状況の中で、日本共産党が「発達した資本主義国での社会変革」の運動の最前線に立っているのは間違いない。
しかしそれは世界史的には未だ実現されておらず、開拓者としての使命が課せられている課題である。
我々にとって「大道」は、まず何よりも日本における多数者革命の実践である。この大道を確信を持って前進しよう。



引き続き所得格差に関する記事

1.国連「所得格差に関する報告」

国連が21日に報告した「所得格差に関する報告」の要旨を紹介する。

「過去4半世紀の各国の所得水準の推移」に関する統計が示されている。報告は、「世界の3分の2の国で格差が広がり、社会の不平等が進行している」と指摘している。

そのうえで、報告書は各国政府に対して、国際協力を通じたデジタル格差の解消や、社会環境の変化に対応した職業訓練への投資の拡充、それに誰もが受けられる社会保障制度の構築に取り組むべきだと勧告している。

2.世界食糧計画(WFP)の報告書

21日には国連の世界食糧計画(WFP)の報告書「今年、危機的な飢餓状況に陥ると推測される地域」も発表されている。こちらは危機感満載の報告だ。

アフリカ大陸では今後数カ月で何百万もの人々が食糧危機に陥る可能性がある。
アフガニスタンで干ばつと相なって治安が悪化しており、1100万人(人口の3分の1以上)が深刻な食料不安にさらされている。
イエメンでの支援活動は成功したが、イラクやレバノンで社会不安やマクロ経済の危機が食料不安を拡大させている。
ハイチの370万人(人口の約3分の1)が食料支援を必要としている。

3.ユニセフの「教育危機に関する報告」

ユニセフも「世界教育フォーラム」(ロンドン)とダボスの経済フォーラムに合わせ、『教育危機:最貧困層の子どもたちのための教育資金調達の緊急の必要性』を発表した。

報告では「世界の最貧困層の10代の少女の約3人に1人が学校に1度も行ったことがない」と指摘している。

その学校も、最貧困層を対象とした教育資金が不足しているために、生徒に対し質の高い教育を提供できていない。

低所得国の子どもの半数以上は、小学校を卒業するまでに、簡単な物語すら理解できない。

教育機会を失うことは、貧困の永続を招き、世界的な教育危機の主な原因となる。

オックスファム 年次報告書(2020年版)

例年のごとく、米経済誌フォーブスとスイス金融大手クレディ・スイス・グループのデータを元にしてる。
ただし計算法については異論もある。

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1.超富裕グループ

世界ではわずか62人の富豪が、世界人口の下位半分35億人分と同じだけの富を所有している。(ニューズウィークの独自計算)

62人の昨年の資産残高は1兆7600億ドル。これは下位50%が所有する資産を超える。

2010年には人口の半分と同じ富を保有していたのは、上位388人だった。

もはやこれは所得「階層」とは言えない、ただのグループだ。

2.さらに増大する富裕層の富

ビリオネアはこの10年で倍増し、そのの富は44%も増大した。それはカナダのGDPとほぼ同じ額だ。

それらの富の多くは租税回避地に隠された。その額は推定7兆6000億ドル(800兆円)と言われる。

3.「一生懸命働けば報われる」はもはや虚偽

経済は再び回復しはじめたが、その成果は富裕層にのみ還元されている。

オックスファムは、「このまま進めば世界の富裕層1%の富が残り99%の富を上回ってしまう」と予測している。

4.所得格差が広がる仕掛け

この10年間で、アメリカのCEOたちの報酬は54.3%上昇した。一方で賃金は頭打ちだった。

CEOたちの稼ぎは報酬だけではない。副収入を合わせると、30年前と比べて10倍になった。


5.所得再分配メカニズムが崩壊しつつある

超富裕層は税率の引き下げと租税回避により、支払うべき税の3割を逃れている。

最も裕福な1%の人たち0.5%追加課税するだけで、教育、医療、介護などで1億2千万人の雇用を創設できる。

1月20日にILOの報告(2020版)が発表され、各社が報道している。

ILO駐日事務所のページにその抄録が掲載されている。


1.労働需給のミスマッチ

世界の失業者数は1億8,800万人、失業率は5.4%。
失業者数はこの9年間ほぼ横ばいであったが、今年(2020年)には約250万人増えると予測されている。

不完全就業者が1億6,500万人。労働市場に加わる意思を失っている人が1億2,000万人。
合計で4億7,000万人の労働力が十分に活用されていない。

2.所得格差とその傾向

労働者が受け取る所得の割合(労働分配率)は、この間世界全体で大きく低下した。2004年には54%だったのが、2017年には51%に減少した。

働く貧困層(購買力平価建ての日収が3.20ドル以下)は6億3,000万人である。これは世界の就労人口の5人に1人に当たる。この傾向は途上国でより著明である。

3.青年の失業

多くの一般の人たちにとって、仕事を通して豊かな生活を築くことはより一層難しくなってきている。

とりわけ、青年(15~24歳)の失業問題は深刻である。世界で2億6,700万人(22%)の青年がニート状態(就業も就学も訓練受講もしていない)にある。

それに加えて、多くの若者が低劣な労働条件を耐え忍んでいる。アフリカでは、非正規雇用の比率は95%に達している。

4.保護主義の高まり

保護主義や貿易制限の強化は、雇用に悪い影響を与えている。

経済成長率の低下は、低所得国における労働条件の改善を遅らせ、貧困削減に向けた努力を妨げている。

新春対談「21世紀の世界を変える非同盟運動」を読む

日本AALAの機関紙の新年号に上記の対談が掲載された。話者は西谷修さんとAALA代表理事の吉田万三さん。以下はこの対談を読んでの感想である。


非同盟運動はなぜ「運動」なのか

① 非同盟運動は戦後一斉に独立を勝ち取った新興国が始めた運動である

② 新興国は国連中心主義を掲げ、それによって平和と発展を期待した。

③ しかし、国連軍として参戦した朝鮮戦争が大規模化し、新興国まで巻き込まれた。

④ 新興国は国連にだけ頼っていては安全は守れないことに気づき、平和共存のシステムづくりに乗り出した。

⑤ さらに国連憲章の集団安全保障の理念が大国主導にならないよう、改善を求めた

⑥ さらに軍事同盟そのものが世界の平和の妨げだと考え、同盟をなくすよう主張するようになった。

⑦ さらに現代軍事同盟の中核に核の支配があると考え、核廃絶を運動の中心課題にすえた。

⑧ さらに国際外交を大国主導でなく、個別の取引でなく、集団で交渉するべきという多国間主義を訴えている。

これらはいずれも大変重要で、今日的な課題であり、これらの提起を実践的に担ってきた非同盟運動の役割は大変大きい。

注③ 3年間にわたる朝鮮戦争で両軍合わせ300万人が参戦、うち80万が戦死した。国連憲章の集団自衛権に基づき多くの新興国も参戦している。例えばフォリピン、トルコ、コロンビアなどは数千名を派兵した。朝鮮半島のすべてが戦場となり、民間人150万人が犠牲となった。とくに後半戦は実質的な「米中戦争」で、核兵器以外のすべてが使用された。

注④ 1954年の周恩来・ネルーによる平和5原則(領土、主権の尊重 不侵略 内政不干渉 平等・互恵 平和共存) 当時中国は中共と呼ばれ国連への加盟を認められなかった。

注⑤ 平和共存実現のため、国連憲章の集団的自衛権のしがらみをどう振りほどくかが、バンドン会議の最大の焦点となった。バンドン声明は10項目あるが、そのうちの (5)国連憲章に従い諸国民が個別的、集団的に自国を防衛する権利の尊重 (6)集団的防衛機構を大国の特定の利益に用いず、他国に圧力をかけない (7)領土保全、政治的独立への侵略、脅迫、力の行使をしない (8)国際紛争は国連憲章に従い、関係国が選択する平和的手段で解決 の4項目が、平和共存の内容となっている。
これは非同盟運動が国連中心主義を貫きつつ、どうやって非戦と平和を維持していくのか、どうやって各国の自決と尊厳を守っていくのかという問題に関わる運動であることを意味している。

つまり非同盟運動というのは軍事同盟に入るか入らないかではなく、軍事同盟に反対し軍事同盟をなくしていく運動なのだ。
しかしこれはあくまでも原理的な視点なのであって、実際上は資本主義と社会主義のどちらの世界にも入らないという「第三世界論」が支配的であったことは認める。


社会主義体制の崩壊により非同盟運動が反軍事同盟の原則に立ち帰った

90年のベルリンの壁崩壊により、東西対立という関係は基本的には消失した。これに伴い「第三世界」という概念も根拠を失った。しかし非同盟運動は存続し続けた。

これを当時支えたのは東南アジア諸国のイニシアチブであった。

1992年にジャカルタで開かれた非同盟諸国首脳会議では、改めてバンドン宣言の意義が問い直され、非同盟運動の原点としての国連中心主義と反軍事同盟路線を確認した。90年以降の非同盟運動のスローガンとして押し出されたのが多国間主義である。これは国連中心主義と反軍事同盟路線がもたらす必然的な実践的な帰結である。

多国間主義は東南アジアにおいて反軍事同盟路線と平和共存、さらに共助・共栄のセットとして打ち出され、ASEANとして結実した。それを国際的には国連中心主義として踏み固める方向が打ち出された。その際にバンドン宣言の精神が大いに生かされている。

この多国間主義に示された反軍事同盟路線は、いわば東南アジアに地域を限った「限定版のお試しセット」として打ち出されたために反米色はほとんど感じられない。むしろ注意深く避けられていると言える。「色々事情もあるだろうから軍事同盟は否定しないが、私たちはそういうのには関係なくやってみたいです」という感じだろう。


中立から非同盟へ 国家のあり方としてのスローガン

非同盟という概念は、ラテンアメリカ諸国のように直接アメリカが軍事同盟の網の目を形成している地域では、のんきな話ではない。非同盟を掲げることはアメリカとの関係にイチャモンを付けることになる。

たとえ経済面だけに絞ったメルコスールでも、アメリカは容赦しない。経済的自立を図ったブラジルの労働党政権やアルゼンチンの正義党政権は、ベネズエラと同じような難癖をつけられ潰された。

そういうわけで非同盟運動はなかなか難しい運動である。しかしある意味で言えばむずかしいからこそ「運動」なのであって、たんなる非同盟諸国のなかよし会ではないのである。


非同盟運動はきわめて広い思想をふくんでいる

非同盟運動の核心の一つである「国連中心主義」という考えは、世界のあり方を枠づける究極のユニバーサリズムであると思う。それは超富裕層が提起するグローバリズムの考えに対置される。肝心なことは独立、平和、共存ということであり、思想、文化、宗教の何如を問わない。国際間のルールが国連機関やさまざまな国際法を通じて遵守されるような世界を作ることである。

例えば宗教であるが、進歩勢力は国内レベルでは、非宗教的で理性的な政治をもとめて戦う。しかし国際レベルでは敵対的態度を取らない限り、協調し対話をもとめる。なぜならさまざまな歪んだ形の民衆政治(ポピュリズム)は、つまるところ歪んだ世界への不寛容の表明だからである。私たちは歪んだ世界を正していくことでは協調できると思う。

人権という原理で世界の民衆の運動を裁断するのは、少なくとも今生きているこの社会では賢明な方法ではないと思う。

世界を支配する米国こそ最強の原理主義国だ。「アメリカ第一主義」という原理を押し付けており、その下で先進諸国がグローバリズムという原理を押し付けているから、歪んだ世界が作り出されているである。


非同盟運動は「世界に対する責任」のあり方を示している

アメリカ第一主義ということは、「アメリカは世界に対して権利は持つが、責任は持たない」という宣言である。世界の諸国が仲良く付き合っていこうという際に、こういう国が存在するのはまことに困ったことである。米国は「ない方が良い国」になりつつある。とくに所得の再分配という機能が国際的に働かなるということでは、世界の将来は大変暗いものになる。

そういうことになると、「世界に対する責任をどうやってみんなで分け合っていこうか」と考えたり、議論したり、実行したりできるのは非同盟運動にくわわる国だけになってしまう。同盟国はアメリカと同盟を結んだ瞬間に思考停止に陥ってしまうからだ。日本やEU諸国を見ていると、どんどん従属的になってきているのが分かる。

「世界に対する責任」というのは、これからますます大事になってくる考えだと思う。

吉田万三さんは「世界の新しいあり方として非同盟運動が大事な役割を果たしていく」といっているが、まさにここが一つのポイントになるだろうと思う。

田中靖宏さん(日本AALA連帯員会代表理事)の報告 「核兵器のない平和な世界への展望を示す、第18回非同盟首脳会議に参加して」が発表されました。
何分にも長い文章ですので、感想部分のさわりだけ紹介させてもらいます。私の「抄訳:非同盟首脳会議のバクー宣言」も合わせてお読みください。

と言いつつなかなか端折れなくて、このままでは原文そのままです。このあと各論に入っていきます。ここからは滞在中の感想とかエピソードは全部飛ばします。何時か原文が出ると思うのでそちらを読んでください。


10.制裁措置に反対する

バクー宣言は具体的な政策について31項目にわたって述べています。

国連の重視: 国連、とくに安保理への基本的な立場を明らかにしています。いまの安保理は5大国の拒否権など世界の現実を反映しない非民主的な側面をもっています。しかしそれにも拘らず、安保理の諸決議は国際法として順守する義務がある、たとえ短期的には不利益でも、法を守ってこそ国連中心の国際秩序を構築できるのです。大国の横暴な論理に立ち向かうにはそれしかないのです。

11.経済制裁措置は平和的で積極的か?

バクー宣言は米国の一方的強制措置を国連憲章に違反すると強く非難しています。国連安保理は現在いくつかの国に制裁決議を採択して、加盟国に実施をもとめています。これまで30近い制裁決議が発動されています。

しかし今とりあげられている「一方的な強制措置」は、安保理の承認を得ないで各国が独自に実施しているものです。それは米国やEUなどがイランや北朝鮮、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアなどの非同盟諸国に実施している「制裁」のことです。

「経済制裁」は、武力行使にかわる非暴力的な強制措置として積極的な意味に使われました。しかしいまでは、多くの一般市民の生活に甚大な悪影響を及ぼす「集団懲罰」であり、武力行使とかわらない「戦争」行為と考えられるようになっています。キューバにたいする「制裁」は国際法に違反する措置です。第3国にまで「制裁」を及ぼすのは二重三重の国際法違反です。

ベネズエラ「制裁」は金融取引を停止させ、主要輸出品の石油などの貿易を禁止しました。それはベネズエラ国民へのゆえなき懲罰をもたらし、「4万人以上の死者の増加につながった」と推計されます。

12.首脳会議の白眉…マハティール演説

マレーシアのマハティール首相が、とても説得力ある演説をしました。マハティールは94歳とは思えないしっかりとした口調で諄々と説き、会場は静まりかえりました。

16年前にイラク戦争がありました。ブッシュ米大統領は「米国の味方につくのか敵になるのか」と各国の指導者に選択を迫りました。最後に多国籍軍が侵攻してイラクは破壊されました。しかし大量破壊兵器は見つからなかった。しかし、まともな反省も破壊を修復する努力もないまま、イラクの国富は略奪され分け取りされました。
イジメに反対する国は叩かれ、ズタズタにされました。いまはどうか。世界を「敵か味方か」にわける戦闘状態がまだ続いているのではないか。世界はいまだに恐怖のなかにあるのではないか。
私たちは「民主主義の輸出」を口実にした国家攻撃がいかに国家と文明を消耗させ、崩壊させているかを目のあたりにしています。これに直面し耐えている国もあるが、他の国も将来同じ運命に苦しむかもしれません。そんなことは絶対にあってはならないことです。
大国が並外れた影響力をつかって貿易戦争をしかけています。交易条件をえさに、ブロックをつくって非同盟諸国を分断しようとしています。残念ながらこうした圧力に屈する国があります。このため非同盟運動はかつてのような団結がそこなわれています。みなさん団結しましょう。

13.核問題

ここでは省略せせてもらいます。

14.人権問題

バクー宣言は「人権の問題」の項を起こして、基本的な立場を次のように説明しています。

第一に、すべての人権を守り促進する決意を確認する。それは普遍的で不可分、相互に関連しあった国際的な誓約と国内法にしたがっておこなう。また建設的で強力的な対話と能力構築、技術支援や成果の認定を通じておこなうと述べています。
第二に、開発・発展の権利について述べ、それらが人権の重要な一部だと強調しています。それは平和と持続的な発展を達成するにあたって必要な資産であり、人権を保障するものだからです。
まず食うこと、食えることが平和の出発点、それはアフガンの中村先生の活動を見れば明らかです。

そのうえで「人権は、普遍性、透明性、公平性の基本原則の遵守によって強化されるべきである」と強調しています。特定の政治的な意図をもって取り上げたりするのはダメだ、二重基準は許されないという立場です。

さらに採択された最終文書では、非憲法的手段で政府が権力を握った国での憲法上の合法性回復を呼びかけています。そして非同盟諸国に、運動の創設原則にそって民主主義の理想を掲げ続けるよう奨励しています。


15.日本AALA創立50周年における不破演説

2005年は日本AALA創立とバンドン会議50周年に当たります。このとき日本共産党の不破哲三議長が「アジア・アフリカ・ラテンアメリカ~いまこの世界をどうみるか」と題した記念講演を行っています。
不破講演は、AALA諸国人民との連帯活動の意義と展望に確信をあたえてくれるものでした。

不破さんは、AALA諸国がそれぞれに困難にぶつかりながらも自立的な発展に努力していると述べ、21世紀の世界を動かす展望をもった地域になると強調しました。そして世界でもっとも活力のあるこれらの地域と、平和憲法をもつ日本が合流していくことに大きな未来があると語られました。その際不破さんが大切だと言ったのは、「自分たちの地域で生まれた政治制度や民主主義を、権利の絶対的な基準としない」ことでした。
いまの世界には、自国の基準にあわないことがあると、「あれは独裁国だ」とか「遅れた国だ」とかいって片づけてしまう傾向が強くあります。

アメリカやヨーロッパの国ぐにが、自分たちの地域で生まれた政治制度や民主主義の制度的なあり方を、権利の絶対的な基準として、その他の地域に持ち込み、その地域の国ぐにの状況をそれによってはかる、そしてその基準にあわないことがあると、「あれは独裁国だ」とか「遅れた国だ」とかいって片づけてしまう。あるいは「前進の仕方が遅い」とか「モデルが違う」などと攻撃するという傾向が、かなり強くあります。

不破哲三『アジア・アフリカ・ラテンアメリカ-いまこの世界をどう見るか―』(新日本出版社、2005年)

田中靖宏さん(日本AALA連帯員会代表理事)の報告 「核兵器のない平和な世界への展望を示す、第18回非同盟首脳会議に参加して」が発表されました。
何分にも長い文章ですので、感想部分のさわりだけ紹介させてもらいます。私の「抄訳:非同盟首脳会議のバクー宣言」も合わせてお読みください。

1.バクーの非同盟サミット会議

第18回非同盟首脳会議が10月、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれました。会議には120の加盟国と17のオブザーバ国・組織の首脳らが参加しました。日本AALAは今回は私と清水学さんがAAPSO団員、大村哲、浅尾剛の2人が随員として参加しました。

2.迫力のある首脳たちの討論

会場となったのは大きな会議場でした。なにしろ150カ国ほどの国の代表団が参加するので、広すぎて向こう側の首脳の顔は肉眼では確認できないほどです。しかし、それぞれの首脳たちの肉声はとても力強く、訴えの真剣さはひしひしと迫ってきました。

会議の成果は、採択されたバクー宣言に集約されています。

核兵器のない平和な世界の実現は可能だ、それにむけて力を合わせて頑張ろうという内容です。オブザーバーの中国やブラジルを含めると、世界人口の8割、国の数でいえば7割が反核・平和の課題で一致して声明を発したのです。
残念ながら日本の一般マスコミは、「赤旗」を除いてすべて無視しましたが、非同盟諸国のメディアは一斉にその成果と内容を報じました。

3.会場の模様

首脳会議に先立つ24、25の両日が閣僚会議でした。オバザーバーの席は後部で、AAPSOの席は最後列で全体が見渡せる場所にありました。私たちのすぐ前が中国で、右がプエルトリコ独立党、左がアルゼンチンといった配置でした。日本政府はいつもゲスト国として参加しているので、会場に席はありませんでした。

論議されていたのは閣僚会議に先立って開かれた準備会議がまとめた249ページ1172項目にわたる最終文書案です。

南米での事態をめぐる議論: 直前のボリビアの選挙でエボ・モラレス大統領が当選しました。これを祝福するとの表現にチリが反対をのべ、これにキューバが反論するなど議論がありました。

南シナ海の覇権問題: 中国の覇権主義的な行動に懸念を表明した項目はいわくつきのものでした。3年前にベネズエラで行われた首脳会議で、議長国のベネズエラが中国に配慮して表現をやわらげました。これにASEANを代表したラオスが抗議をして、採択では「留保」を表明しました。
今回の最終文書も前回の表現が引き継がれたため、タイ(ASEAN議長国)が「保留」を表明しました。議長をつとめたアゼルバイジャンの外相の采配はたいしたもので、合意点を提案し、不一致点は首脳会議に委ねることで承認されました。

4. やや低調だが、主役が交代

首脳会議といっても、首脳自身が参加したのは十数カ国しかありませんでした。とくに運動の推進役となってきたインドやインドネシア、エジプトなどが首脳の参加を見送ったことは、運動自体の影響力の現状を反映しているのかも知れません。

その代り、新しい諸国が運動を担う意気込みが感じられました。その象徴が開会総会ではその隣にイラン、ベネズエラ、マレーシアやバングラデシュ、キューバといった首脳が並びました。これらの国の多くは、米政権から敵視されて、さまざまな圧力や干渉をうけています。
それらの国がバンドン精神という国際的な大義をかかげ、世界の秩序と平和を守る姿をアピールしました。その姿勢が色濃く反映された会議だったと言えるでしょう。

5.議長国アゼルバイジャンの面目躍如

そうしたなかで首脳会議の象徴となったのが今回の議長国になったアゼルバイジャンです。非同盟運動に2011年に加盟したばかりです。
この国は旧ソ連の一国でした。北海道ほどの面積に人口1千万弱の小さな国です。90%がイスラム教ですが、第一次大戦後に世俗の民主共和国として独立しました。しかし独立は2年しか続かず、ソ連に組み入れられました。ソ連が崩壊した1991年に独立を回復しました。その後も隣国との争いが絶えず、ナゴルノ・カラバフの民族紛争とその後のアルメニアとの戦争で百万人もの国内難民が出ました。(私の「アルメニア民主化の話」を読んでください)

その国がなぜ非同盟を選んだのか。私が得た印象は、国民がヨーロッパの一員でありながら、東西文明の接点として架け橋になることをとても誇りにしていることでした。

たしかにこの国は十字路の上に位置しています。北のロシアと南のイラン、西のアルメニアとジョージア、さらにその先はトルコにつながっています。それだけにこの地域は古くから文化の融合と対立を繰り返してきました。国内にも民族間の矛盾、宗教間の対立をふくんでいます。

アリエフ大統領は開会の演説のなかで、独立後、国内の民族紛争の克服に努力する一方で、すべての国との友好を促進してきたと述べました。文明間の対話をうながす「バクー・イニシアチブ」を主催し、ロシアと米国・NATOの対話の架け橋になってきたと説明しました。それらの路線は非同盟運動の目標と役割に完全に一致するとし、今回の議長国として承認されたことに感謝しました。

6.会議に押し寄せる電子化の波

いちばん驚いたのは、会議の運営や資料のやり取りがすべて電子メールでおこなわれることでした。一時代前はいつも大きなプレスセンターができて、事務局や各国政府の担当がきて資料を配布し、ブリーフィングしてくれました。記者はその資料をうけとって記事にしていました。

ところがいまは、すべて電子メールで行われるのです。記者や関係者はIDをもらってスマホでアクセスし、そこでダウンロードして資料を入手するのです。スマホの操作に精通していないと話になりません。旧世代のわたしは途方にくれることが一度や二度ではありませんでした。

会場にはいれない随員たちは、控え室や会場の隣にしつらえられた映画館のような大ホールで大きな画面をみながら会議をウオッチするのです。一般メディアの取材陣は車で30分もかかる別のホテルに設けられたメディアセンターでの取材でした。記者たちの間からは制約の多い取材環境に不満がでていましたが、会議の運営という観点からは、国際会議や外交を重視するアゼルバイジャンの面目躍如たるものを感じました。

7.多国間主義と主権の擁護

今度の会議のテーマは「バンドン原則を擁護し、現代世界の課題への一致した適切な対応を確保するために」でした。この「現代世界の課題」は、各国の首脳からいろいろなかたちで言及されました。それらは最終文書の「前書き」に端的にまとめられています。

かいつまんでいうと、
* リーマンショックに象徴される世界経済・金融危機のもとで、世界的に貧困と格差が拡大し、地球環境が破壊され、新しい軍拡競争が始まっている。
* そのしわ寄せを勤労者とりわけ発展途上国の人民が被っている。
* そういう状況の下で、トランプ米政権のような自国優先の単独行動主義が広がり、力を背景に途上国にたいして不平等な交易条件や特定の発展モデルを押し付け、従わない諸国には制裁と称して「一方的な強制措置」がとられている。
* 非同盟諸国はこういう傾向に団結して対応しなければならないというものでした。

8.トランプとユニラテラリズム

とりわけ首脳たちが一様に強調したのが、ユニラテラリズムの動きです。ユニラテラルというのは、一方的なという意味です。ユニラテラリズムというのは単独主義とか一国行動主義という意味になります。

かつては軍備の削減や撤廃を、相手と関係なく自主的にやる意味(例えば一方的停戦とか一方的軍縮)でしたが、今は自分の思い通りに振舞う独善的な行動という否定的な意味で使われています。

端的に言えば、それはトランプ政権による一連の政策と行動です。

米国はもともと、「死活的な利害がかかわる場合には単独で独自に行動する」と宣言してきました。それでいて他の加盟国には国連安保理決議違反を厳しく追及し、場合によっては制裁を課し、武力行使さえ行ってきました。ユーゴースラビア空爆やリビア攻撃、さらにイラク侵攻など、すべて国連安保理決議なしでおこなわれました。つまり単独行動主義は米政権の一貫した政策です。

トランプ政権はそれにとどまらず、「アメリカ・ファースト」を掲げ、パリ協定やTPPからの離脱、核軍備管理協定の破棄、一方的な関税上乗せなどむき出しの自国優先主義をとっています。自国が結んだ国際条約や安保理決議さえも一方的に破棄する点で、一歩も二歩も進んでいます。

懸念されるのは、ミニ・トランプともいえる指導者が各地に現れて米国の一国主義に追随し、国内の引き締めを強化し国際的緊張を煽っていることです。関連しますが、首脳会議の会場で私の隣にすわっていた難民救援の国際団体の係官と話した際に、「日本と韓国の対立もありますね」といわれたのにはハッとさせられました。世界は日韓対立を同じようなナショナリズムや一国主義の広がりという角度でみているわけです。

9.国家の主権とマルチラテラリズム(多国間主義)の堅持

そのうえで首脳たちが強調したのが「マルチラテラリズムの堅持」という表現でした。それは国連を中心とする多国間の国際システムと、それを尊重する国際協調主義の考えを指しています。

マルチラテラリズムは日本国憲法の精神でもあります。憲法の前文にも「われらは、いずれの国家も自国のみのことに専念してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」と書かれていますが、まさにこれこそがマルチラテラリズの核心なのです。

こうした認識にたって首脳たちが採択したバクー宣言は、前文で国連憲章の目的、原則、規定をしっかりと守るとの決意を示したあと、最初の項で次のように述べています。

世界には違った経済、政治、社会、文化の体制をもつ国があり、国連はそういう違った国の存在を前提に成り立っているのだから、それらはお互いに尊重し、受け入れなければならない。

ここはとても大事なところだと思います。かつて日本共産党の不破哲三議長は、2005年の日本AALA創立50周年の記念講演のなかで、おなじことを強調しています

私たちはAALA諸国が歩んでいる道や状況を、その国がたどった歴史的経過を尊重してみる必要があります。その国が我々と同じ水準の代議制民主主義を実現していないからといって、安易に批判したり干渉したりしてはなりません。

バクー宣言はまずなによりも、各国の主権が尊重されるべきことを強調します。そしてこの各国の独立にたいする武力行使やその威嚇は許されないと訴えます。

そのうえで、
1.非同盟運動は、植民地主義と新植民地主義、人種差別、あらゆる形態の外国の介入、侵略、外国による占領、支配または覇権にたいするたたかいを貫いてきた。
2.非同盟運動は、これらのたたかいを通じて、大国中心の軍事同盟の一員ではなく国際関係のバランス要因になることを目指してきた。
と述べ、それを貫いてきたことが、非同盟運動の有効性と歴史的な発展を特徴づけていると宣言しています。

後編に続く


私たちは基本的には国連中心主義をとっているから、国連で定められたさまざまな取り決めについては尊重していかなければならない。

しかし専門職に携わる多くの人にとっては、国連のさまざまなガイドラインが、しばしば根拠に乏しく恣意的で、あえて言えば非科学的でさえあることを知っている。

そして国連および関連機関に働く人々の利益に沿った偏向をふくんでいることを勘づいている。

彼らは国連ロビイストの圧力のもとにさらされている。そしてその場限りでは正しくても、世の中の全体のバランスからすれば正しいとは言えない立場を表明することがある。

そしてそれがしばしば途上国や後進国に不利益をもたらし、先進国に有利に働くことを知っている。

しかし私たちは「だから国連など無意味だ」と叫ぶ気持ちはサラサラない。

やるべきことは国連と諸機関が提出するさまざまのリコメンデーションに対し、眉にベッタリと唾を付けて臨むべきだということだ。

とくに人権、環境、医療などの「敵なし議論」で、上から目線のかさにかかった言い方をするときには注意を要する、とだけ言っておく。

後進国は「社会主義」を語ってはいけないのか

今回の綱領改定議論で一番イヤな感じがするのが、ここなのだ。志位さんは一生懸命に中国を批判することで後進国革命を否定しようとするが、それとこれとはレベルが違うと思う。
マルクス主義の最も魅力的なのポイントは、どんなに遅れたスタート地点からでも社会主義へのキャッチアップは可能であり、世界の模範となりうるのだという「ユニバーサリズム」であったと思う。
今は先進国の植民地となり支配された後進国だけれども、いつかは民主主義革命を成功させ人民民主主義を実現できると考え、多くの若者が共産主義の理念を支持した。これが20世紀を大きく前進させる原動力となった。
今それをそのままの形で社会主義理論に流し込むのは辛い。それはよく分かる。しかしそれならそれなりの総括はすべきである。「もうあなた方の運動の先に社会主義なんてものはないんだよ」と言い切る無神経さが、昔風活動家としてはいささか辛いのである。

かつて日本共産党の先輩は60年の「80カ国共産党の声明」に当たり、3つの革命勢力の同等性を説いた。そして社会主義諸国の戦いがすべてに優先して革命を推進する力になるのだというソ連・中国と対決した。これは今でもきわめて正しいと思う。

変化する国際的力関係を考慮せずに特定の変革勢力だけを突出させるのは、革命運動の漫画化に等しい。ましてそれが革新勢力の中心概念になるのだとしたら、私としては天を仰ぐ他ない。

資本論の新版が出るのに合わせ、社会主義の未来についても議論が盛んである。しかし先進資本主義国の未来にしか社会主義像がないのだという議論は、あまりに貧しく寒々しい教条主義だ。

そこでは独裁的で反動的な権力を民衆の力で顛覆したロシア革命や中国の解放闘争、さらにアメリカと高い勝利したベトナム解放闘争すらその歴史的意味を消失する。ましてやキューバやニカラグアの戦いなど一時的な民衆の錯乱と受け取られるしかない。

いつの間に、日本の社会主義・共産主義思想は乾燥シイタケのように干乾びたものになってしまったのだろうか。

第18回非同盟運動サミット会議

2019年10月25-26日
アゼルバイジャン共和国のバクー

宣言「バンドンの原則を守り、現代世界の課題への適切な対応を」

BAKU DECLARATION of the 18th Summit of Heads of State and Government of the Non-Aligned Movement (NAM)

抄訳です。公式の引用はご遠慮ください。

前文

2016年9月17〜18日にベネズエラのボリバル共和国マルガリータ島で第17回サミットが開催されました。それは、NAM加盟国および人類全体にとって懸念される主要な問題の解決のために効果的な貢献を目指しました。

それは、バンドン(1955)およびベオグラード(1961)で明確に表現された非同盟運動のビジョン、原則、目的に沿ったものでした。今回のサミットはそれらを引き継いでいます。

私達はすべての人のために平和、平等、協力、幸福の世界を達成することを目指します。私達は世界が豊かな多様性で構成されていることを承認し、国連憲章の目的、原則、規定に対する私たちの強いコミットメントを繰り返します。

人類の政治、経済、社会、文化システムは多様であり、特定のモデルの押し付けはあってはなりません。この点に関して、メンバーの権利と特権を守る決意を表明するものです。私達は主権と政治的独立の原則を守り、対話と寛容の促進へ向けて行動します。

国家の領土保全または政治的独立に対する脅威、武力行使などが、国際的な問題を解決する手段として採用されることはありえません。そのような脅威または武力の行使は、国際法および国連憲章の違反となります。

非同盟政策の具体的な内容とは、植民地主義と新植民地主義、あらゆる形態の外国の介入、攻撃、占領、支配または覇権と戦うということです。

今世界では、武力紛争、拡張主義、テロリズム、分離主義、国境を越えた組織犯罪などの過激な思想が強まっています。それが人権侵害、金融危機、環境悪化をもたらし、世界中の人々に被害を及ぼし続けています。

私達は多国間主義と国際協力の強化をもとめ、そのために非同盟運動の有効性の向上に努めます。私達は国連憲章と「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を支持します。それらは国連の3つの柱である平和と安全、開発、人権を促進するための基本的な戦略です。

章文

(小見出しは私がつけたものです)

私達は以下の目的を達成するために共同で努力します。

A. 非同盟運動の役割強化

*運動の役割を活性化し、現在の政治的現実にふさわしいものにする。

*国際的に平和を支援し、戦争に反対する運動の地位と役割を強化する。

*発展途上国の利益を促進する。公正で、包括的で、透明で効果的な国際システムを構築する。

*正義と公平の原則に基づいて、戦争の脅威、武力紛争、環境ハザード、気候変動、伝染病、極度の貧困などに対処する。

*非同盟諸国への新たな脅威を考慮し、運動内で団結し、国際平和、安全、開発への挑戦をおこなう。

*非同盟運動の有効性を高めるため、加盟国の利益と優先事項を適切かつタイムリーに支援、調整する。ダイナミックで効果的なメカニズムを作り上げる。

B. 国連重視と多国間主義

*国連を核とした多国間主義を支援する。国際秩序の制度的および法的枠組みにおける国連の中心的役割。

*国連の強化と近代化のために、普遍的かつ代表的な組織である国連総会を活性化する。

*国際的な平和と安全の分野をになう国連安全保障理事会の改革。より民主的、効率的で透明性の高いものとする。

C. 国際的な平和と安全

*友好関係と協力に関する国際法の原則を忠実に遵守する。国家が引き受ける義務を国連憲章に従って誠実に履行する。

*内政不干渉の原則をまもる。すべての国の政治的主権、政治的な独立を尊重する。「合法的に構築された政府」に対する不安定化策動を行ってはならない。

*相互不可侵の原則を守る。国家の統一や領土の保全に対する脅威、武力不行使の原則。

*これらの原則を部分的または全体的に混乱させるような、あらゆる試みに反対し続ける。これらの試みに対し、国際社会は必要な措置を講じるべきである。

D. テロへの態度の原則

*あらゆる形態のテロとの闘いにおけるNAMの連帯を強化する。テロを防止し、戦うための協力を強化する。

*テロとの闘いにおいて、非同盟運動は国連憲章・国際法にもとづく義務を積極的に担う。いかなるテロ行為であっても傍観することはない。

*テロリズムはいかなる宗教、国籍、文明、民族集団とも関連してはいない。そうあってはならないことを、非同盟運動は強調する。

*テロリストグループは国家、地域、および国際の平和と安全を危険にさらす。安全な避難所、作戦の自由、移動と徴兵、財政的、物質的または政治的支援を行ってはならない。

*法の正義をもたらすために、適切な場合には引き渡し原則に則って関係者を引き渡す。「適切な場合」にはテロ行為の加害者・支援者、テロ行為の資金調達、計画、準備への参加者が含まれる。

E. 核兵器のない世界のために

*人類にもたらされる脅威を排除するための努力を倍加する。大量破壊兵器、特に核兵器の存在が人類最大の脅威となっている。

*私たちは、核兵器のない世界を実現するために努力することを決意します。

*非核兵器地帯の強化。とくに中東地域での非核兵器地帯の設立をめざす。

*私達は平和的目的のために原子力エネルギーを開発する国の主権を改めて表明し、その独立性と経済発展を考慮に入れる。

F.  航海の自由と資源の自由な流れ

*私たちはホルムズ海峡、オマーン海、紅海などの国際水域での最近の一連の負の事件について懸念を表明する。中東での石油タンカーおよび商業船に対する挑発的な行動を抑制するようもとめ、国際商業航法およびエネルギー供給の安全性と安定性を維持するよう訴える。

*いま中東地域外のすべての人々をふくむ国際社会全体が、航海の自由と石油やその他の資源の自由な流れを維持するようもとめている。

*そのためには、繰り返しますが、国家の主権、領土保全、独立の原則、内政不干渉を尊重し、国連憲章に記されている原則を厳格に遵守して平和維持活動を行うべきである。これは国際平和と安全の促進における共同努力の重要な要素である。

*平和維持活動を成功させるためには、その基本原則を尊重すること、すなわち、当事者の同意、公平性、および武力の不使用が重要である。

G. 持続可能な開発のための2030アジェンダ

*非同盟運動の加盟国はその共同活動により平和の文化を促進しなければなりません。国家間の平和と信頼を促進するため、努力を動員する必要があります。そのための手段を構築しなければなりません。とりわけ持続可能な平和、連帯を構築するための政治対話と相互理解が必要です。

*「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、普遍的かつ変革的であります。多面的かつ統合的なアプローチが必要です。それは最大の世界的課題です。開発途上国には開発の権利があり、それは尊重されなければなりません。それは世界の持続可能な開発に不可欠な要件です。

*極度の貧困を含むすべての形態と次元で貧困を根絶することは、なお重要な要素の1つです。

*2001年のドーハ開発ラウンドは、貿易交渉における開発の側面の中心的な重要性を再確認した重要な会議でした。開発途上国の利益も反映される多国間貿易システムの構築が必要という認識を共有しました。

*しかし先進国における保護主義の高まりは、特に発展途上国の輸出にマイナスの影響を与える。私達は世界の金融・経済危機が世界貿易に及ぼす悪影響について深刻な懸念を表明する。

H. 一部の非同盟諸国への一方的な強制措置

*非同盟運動は一部の加盟国に対する一方的な強制措置の適用に対する強い非難を表明する。それらの措置は著しい不均衡と不平等をもたらしている。

*それらの措置は国連憲章および国際法、特に国家の非干渉、自決および独立の原則に違反する。それらは人々の生存権に影響を与え、完全な経済的および社会的発展を妨げる。わたしたちはそのような措置の廃止を要求し、その決意を繰り返すものである。

I. 気候変動


J. 南南協力


K. 人権問題

*1993年のウィーン宣言と国際的なコミットメントおよび国内法に従って、すべての人権の促進と保護へのコミットメントを再確認する。普遍性、透明性、公平性、非選択性、非政治化、客観性の基本原則を遵守することにより、人権を強化する必要があることを改めて表明する。

*世界的に認められた人権の包括的な部分として、開発の権利が含まれなければならない。持続可能な平和と繁栄を築くことが、すべての人権の完全な享受を確保することにつながる。

L. パレスチナ:外国人支配下にある人々の自己決定権

*東エルサレムを含むパレスチナ領土の、イスラエルによる占領を完全に終わらせるための、真剣な集団的努力を緊急に呼びかける。状況のさらなる危険な悪化と不安定化を回避するために、迅速に行動しなければならない。

*私たちは外国の占領・植民地支配下にある人々の自己決定権に関する、原則的立場の妥当性と関連性を再確認する。

*国際人道法および人権法を含む国際法、および関連する国連決議、安全保障理事会決議が尊重されなければならない。

*国際社会はパレスチナ問題に対する歴史的、政治的、法的、道徳的責任を自覚し、パレスチナ人の譲渡不能の権利の実現を支援しなければなrない。

*東エルサレム、シリア・ゴランを含むパレスチナ領土のイスラエルによる占領を完全に終わらせなければならない。そのための真剣な集団的努力を緊急に呼びかける。

M. 中東難民の処遇について

*武力紛争の状況にある加盟国において、国内避難民のための恒久的解決策を促進する主要な責任が該当国家にあることを認識すべきである。安全で尊厳のある自主的な返還を含むとともに、人権の尊重、保護および履行を確保することがもとめられる。

*国外から流入した難民については、人類に対する共通の課題として対処する。そのために、多様性に対する寛容と尊重を促進し、文明間および文明内で共通の基盤を模索する。共通の価値、普遍的な人権を重んじ、協力、パートナーシップ、包括を通じて、人種差別、外国人嫌い、不寛容との戦いを進めなければならない。

*国、地域、およびグローバルなイニシアチブを評価し、異文化間の対話を促進する。


本日の赤旗国際面はビッグニュースが目白押し。見出しだけ並べても最近の世界の激動ぶりがよく分かる。

1.エクアドル: 政府が燃料費補助廃止を撤回

2.韓国: 検察特捜部を縮小

3.シリア: シリア政府、クルド勢力と連携
米大統領、トルコに制裁

4.ポーランド: 議会選挙 上院で野党が過半数

5.ハンガリー: 野党共同候補がブタペスト市長選挙で当選

6.チュニジア: 無所属の大統領が勝利

7.イラン: タンカー爆発は国家の関与か

8.アメリカ: IMF予測 世界成長を下方修正

9.中国: 対米輸出が前年比22%減となる

これらのニュースの中で、エクアドルがなぜトップ記事になったのかはよくわからない。どうも最近の赤旗国際面はよくわからない。

これらについては、少し背景をふくめて勉強しなければならない。

2004年10月3日(日)「しんぶん赤旗」
ここが知りたい特集 バンドン精神
来年50周年 注目される今日的意義
「バンドン精神」とは
宮崎清明記者

非同盟諸国会議(百十六カ国が加盟)の外相会議は、「バンドン精神」十原則の今日的意義を強調している。

1954年、ネール・インド首相と周恩来・中国首相との共同声明で平和五原則((1)領土、主権の尊重(2)不侵略(3)内政不干渉(4)平等・互恵(5)平和共存)が確認された。それは「バンドン会議」に受け継がれた。

バンドン十原則は、平和共存の諸原則を含んでいる。バンドン会議には米国の干渉もあったが、中国の周首相は、「バンドンに来たのは共通の基盤を探るためで、相違をつくり出すためではない」と一致点追求の重要性を説いた。


バンドン十原則のうち、非同盟主義の組織原則に関わると思われるポイント

1.国連憲章に明記された諸原則

2.国家主権の尊重と内政不干渉

3.「集団的防衛機構」は大国のためではない。他国に圧力をかけない。

4.国際紛争は、関係国が選択する平和的手段で解決する。

1.と2.は平和共存五原則の内容を引き継いでいる。

一方、非同盟主義には運動としての側面もあり、その原則も書き込まれている。

1.人種、諸国民の平等

2.相互協力の増進

3.正義と国際的義務の尊重

これらは「責務条項」であるとともに、運動としての非同盟主義の原則である。

これらの課題については、本来はAAPSOのような連帯組織が担い、発展させるべきものであったが、必ずしも成功しているとは言えない。

バンドン

2006年5月30日(火)「しんぶん赤旗」
先制攻撃論を批判
マレーシア首相 非同盟閣僚会議で演説
【ハノイ=鈴木勝比古】

議長国マレーシアのアブドラ首相の行った基調演説。

諸大国がテロとのたたかいでとっている行動は明らかに国際法と文明社会の行動規範に違反している。

人道介入、防衛責任、先制攻撃戦争などの考えを含む新しい概念と教義がわれわれに押し付けられている。

これらすべては、国連憲章に明記された伝統的、普遍的に受け入れられた概念に対する挑戦である。

今日、国際関係で単独行動に訴える傾向がある。これは国連安保理の承認が得られない時に国連の枠外で行動するものである。

われわれはこうした傾向に反対し、国連憲章に明記された諸原則を擁護する。

ということで、ここでは以下のような状況が非同盟運動の理念に反するものと考えられている。

1.諸大国による人道介入の正当化、防衛責任の拡大解釈、先制攻撃の条件附容認などの考え。

2.国連憲章への挑戦と単独行動主義。

これは明らかに大量破壊兵器を口実としたイラク攻撃を念頭に置いたものである。


を増補しました。ネタは主として「世界的金融危機の構図」(井村喜代子)です。2009年6月までの事項しかないので、さほど内容的には増補になっていません。
もっと本格的な年表がどこかにあったと思いますが…

イングランド銀行カーニー総裁の講演 詳報

8月26日のブルームバーグ報道で、「ドル支配終わらせるデジタル基軸通貨体制を提唱
Carney Urges Libra-Like Reserve Currency to End Dollar Dominance
と題されている。

リードは下記の通り

カーニー総裁はドルを基軸通貨とする世界的金融システムの抜本的改革を求めた。
そして極めて大胆な提言を行った。
最終的には「リブラ」のような仮想通貨が準備通貨としてドルに代わることになるとの考えだ。

以下本文

最初に現状認識

経済政策を巡る不確実性が高まっている。
あからさまな保護主義がはびこり、政策余地は限定的となり、今後は悪影響を打ち消せなくなるかも知れないとの懸念が広がっている。
これらの悲観的観測が組み合わされ、世界経済のディスインフレ傾向を悪化させている

「現状維持」思想は誤り

各国・地域の中銀が短期的にはこうした事態に対応することは必要だ。しかし現状維持の思想は誤りだ。最終的には劇的な措置が必要になる。

「通貨覇権の入れ替え」であってはならない

基軸通貨がドルから中国人民元に代わっても問題は解決しない。「長期的に見て、われわれはゲームを変更する必要がある」

合成覇権通貨(SHC)の構想

世界の準備通貨としてのドルの地位が終わったあと、グローバルなデジタル通貨が登場するだろう。

それはリブラのようなものとなるかも知れない。リブラは各中銀の直接的な管理から外れたものと構想されているが、SHCは各国中銀の「デジタル通貨ネットワーク」を通じて公的セクターによって提供されることになるだろう。

カーニー総裁の結語

このアイデアの初期バージョンは試行錯誤を繰り返すことになるだろう。
しかしいくつかの欠陥が立証されたとしても、SHCのコンセプトは魅力的だ。
それは世界貿易における米ドルの支配的影響力を弱めるかもしれない。

結局、現下の経済不安の主因は、トランプの存在そのものだ。
議会も民意もない。彼がツイッターに書き込めば、それが世界を動かしていく。これは民主主義の対極だ。

そういうトランプ現象を生み出したものが2つある。
一つはアメリカの草の根に潜む漠然とした不条理であり、それはいかなる時も40%の不正義への支持を叩き出す。
もう一つはドル基軸通貨体制である。これがあるために、世界の国々はますます米国に逆らえなくなっているし、そのためにトランプの顔を伺うようになっている。

この「構造欠陥」はリーマンショックとその後の欧州金融危機のときにも話題になった。その後大規模な量的緩和の中で話題から外れた形になったが、米中経済摩擦が激化する中で再び深刻な問題として浮上しつつある。

赤旗(金子記者)によると、今回はイングランド銀行のカーニー総裁が口火を切ったらしい。
米ドルという一つの国の通貨が、世界の通貨金融システムの中で優越的地位をしめている。
今やリスクは積み上がり、それらは構造的だ。
多極的な世界経済システムに、単一の通貨体制はふさわしくない。
赤旗もいうように、シティーの主がそう語ったとしても、にわかに信用できるものではない。しかし“シティーでさえも”、という言い方もできる。

今や世界の最大リスクはトランプであり、世界はこの一人の変人の奇行をまったくコントロールできない。
ヒトラーに対してはもう一つの極が形成されたが。しかしトランプに対しては、21世紀の世界は、未だにもう一つの極を形成し得ないでいる。なぜなら単一通貨制だからだ。

ここが問題だ。

下記の記事をご参照ください

2011年10月25日  中国の国際通貨論




1.1970 年代の世界経済

不況の深刻化,失業の増大,インフレの高進という事態が,米国をはじめ,多くの 先進資本主義国を襲っていた。日本だけが例外であった。

2.世界経済における英・米経済の興亡

ポール・ケネディ『大国の興亡』(1987年)
アメリカの衰退は帝国の「過剰拡張」による。それは世界経済の覇権国にいずれは訪れる歴史的運命だ。

3.戦後世界経済とケインズ連合の興亡

マサチューセッツに留学して「戦後世界経済とケインズ連合の興亡」(1996 年)という本を書いた。

その論点は以下の通り

①1970 年代以降のアメリカ資本主義の危機は,戦後形成されたケインズ連合の危機・崩壊であった。

②その要因は企業の多国籍化と、金融自由化と金融機関の強力化である

③帝国の「過剰拡張」は国内での蓄積危機を回避し、世界経済的規模で資本蓄積を継続させる道である。

④そこに金融が再登場し,アメリカの経済システムが金融覇権を軸に回り始める。

しかしこれだけではソ連崩壊後の現代世界経 済そのものの分析には至ることはできない。

4.現代世界経済と金融不安定性の構図

『世界経済と企業行動』(2005 年)で現代世界経済論(ポストケインズ論)の一つのあり方を示せたと考える。

それは2008年リーマン・ショック後の世界経済危機についても分析の視角を提供している。
中心的な視座はミンスキー・モデルを国際的な分析に援用することにある。

この本の骨子は以下の通り。

A) 戦後世界経済システムの本質
①戦後の(西側)世界経済は世界市場志向・資本集約型産業企業を中核とする多国籍化であった。
②多国籍企業の組織的特徴は,多角的事業部門性にある。
③多国籍企業の活動には国際資本取引の自由が保証されることが必要だ。
これらに対応した世界システムが GATT → WTO 体制と呼ばれるものであった。

B)よみがえった米国巨大金融機関
ミンスキーの三分類を持ち出してくるが、少々説明が必要。
不安定撹乱型金融には(1)ヘッジ金融、(2)投機的金融、(3)ポンツィ金融の3つがある。 ポンツィは、1920年代にボストンでねずみ講を組織した詐欺師だ。要するに詐欺まがいの不安定金融。
ようするに米国の金融機関が蘇ったのはこのような悪辣な手法によるということ。
それで、米国の対外金融が投機金融からポンツィ金融に変わったとする。(ただしここでは説明はない)

C)リーマンショック後の世界

「新自由主 義と金融覇権」という視角から見る必要が出てきた。「金融覇権」というキーワードが重要であると考えるが、今後の課題となる。

(ミンスキーについては私の記事も参照されたい。

どうも、いろいろ調べてみると、「為替操作国」はアメリカの世論操作の可能性がある。

理論的には10%の追加関税は10%の通貨安で相殺することが可能である。さては中国側の「奥の手」かと興味を持ったが、中国側には為替を「禁じ手」として行使する意図も能力もなさそうだ。

たしかに下げ幅は大きいが、トレンドから見れば想定内の下げとも思える。

何が起きたのか

まずはニュース情報を総合してみる。

8月1日 トランプ大統領、中国産品に10%の追加関税を課すと発表。9月1日発動の予定。

8月5日 人民元相場が一時1ドル=7元台となる。これは11年ぶりの安値。

8月5日 トランプ大統領がツイート。「これは『為替操作』だ。中国は為替を操作して、米国からビジネスや工場を盗み出している。もう許さないぞ」

8月5日 米財務省、意図的に通貨安を誘導しているとして、中国を「為替操作国」に指定。この措置に伴う新たな経済制裁は無し。

8月6日 クドロー米国家経済会議委員長、「関税の重荷はほぼ全て中国側にかかっている。中国経済はボロボロになっている」と発言。

8月6日 中国人民銀行(中央銀行)は為替操作を否定。

8月6日 オフショア人民元は、7.1元台まで元安が進んだ。海外投機筋が元売りを主導している。


人民元相場: これまでの流れ

2005年7月21日 ドルペグ相場制(1ドル=8.28元)から管理フロート制(03%の変動幅)に移行した。同時に2.1%の切り上げ。

2007年5月21日 変動幅を上下0.5%に拡大。この結果、1ドル=6.83元まで上昇する。

2008年9月 リーマンショックが発生。人民元売り介入により、1ドル=6.83元に固定。

2010年6月 管理フロート制に復帰。1ドル=6.05元まで上昇。

2014年 人民元が下落トレンドに入る。経済成長率の鈍化、国外への資本流出が背景にあるとされる。

2015年8月 チャイナ・ショック。人民元相場が急落し、中国が制御不能な資本流出に見舞われる。

2017年 トランプ大統領の就任に伴い一時的な元高。トランプの元安攻撃に対応した可能性あり。

2018年~現在 長期の元安傾向が再現。米中貿易戦争やドル金利上昇による資金流出が背景となる。

今後の予測

アメリカにはまだまだ「経済・金融戦争」を拡大する余力が残されている。メディアはトランプにエールを送り続けている。

いまのところ中国はサンドバッグ状態に耐えるほかない。隠忍自重がもとめられる。今後は迂廻輸出や現地法人などの経営努力がもとめられることになるだろう。ただしかつての日米経済摩擦と異なり、中国には安保という重荷がない。その分フリーハンドを行使できる。

貿易赤字構造は究極的にはアメリカ自身の責任なのだから、何時までも踏み倒すわけには行かない。いづれツケが回ることになる。そのときアメリカ以外のすべての国がツケの支払いを求めることになるだろう。

とにかく最近のメディアの倫理的頽廃は目を覆うばかりだ。ほぼデマ宣伝みたいなものまで、権力側の情報をなんのためらいもなく垂れ流すから、よほど注意が必要だ。これが今回の出来事の最大の教訓かも知れない。


米財務省の「為替操作国」指定・三基準

(1)対米貿易黒字が年200億ドル以上、(2)為替介入(ドル購入)がGDPの2%以上、
(3)経常黒字がGDP比で2%以上
3つのうち、2つを満たすと「監視対象」に、すべてを満たすと「為替操作国」に指定する。

現在は日本やドイツなど9カ国が「監視対象」に指定されていいる。

チャイナ・ショック

2015年7月、中国で証券バブルが弾け、上海証券取引所は株価の30パーセントを失った。上場銘柄の半数以上が取引を停止した。8月には全世界同時株安がもたらされた。

「ファイナンシャルスター」記事を参考にしました。

赤旗の記事で初めて知ったのだが、
投資ファンドのうち最大手のバンガード・グループはアップル、フェイスブック、アルファベットの筆頭株主となっている。
このバンガードにブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席捲している。
のだそうだ。
初耳だったので調べなければとは思ったが、ついそのままにしていた。
そんなとき「資産運用3巨人」という言葉が日経新聞に載っていたのを発見した。


どうも赤旗記事はこの日経記事の引用のような気がする。とりあえず以下にその要約を載せる。

資産運用の御三家

バンガード、ブラックロック、ステート・ストリートの3社が御三家と呼ばれる。3社の株式運用額は約8兆8千億ドル(990兆円)。これは世界の時価総額(9月末)の10.4%に当たる。

東証1部の最近の時価総額が約600兆円に過ぎないことを考えれば、それがいかに凄まじい額であるかはよく分かる。

sankyotou

たとえいかに控えめな投資家であったとしても、議決権を通じた社会への影響力はもはや無視できない。

インデックス運用 投資方式の特徴
これらの投資会社は、米S&P500や日経平均株価など株価指数に連動するインデックス運用を主力としている。
のが共通の特徴なのだそうだ。

インデックス運用はコストが安いらしい。
例えばトップのバンガード社には「トータル・ストック・マーケットETF」という商品がある。
これは米国株に分散投資する一種の投資信託なのだが、その経費率が年0.04%。つまり100万円投資して、投資家が負担するコストは400円だけ。

と言われてもよくわからない。

一応、インデックス運用をめぐる最近の動きについて引用しておく。
世界の運用資産に占めるインデックス運用の比率は現在17%前後。これが25年には25%まで高まる見通しだ。
コストの最少化を目指すインデックス運用は投資先数の割にアナリストの数が限られるが、新しい運用も登場し、伝統的運用の領域を侵そうとしている。

もの申すファンド

2017年、石油大手の株主総会で異変が起きた。「カリフォルニア州職員退職年金基金」が気候変動に関する対応を求めた。
これに御三家の一つブラックロックが乗った。「企業の長期安定成長を目指し、健全な経営を働きかける」というのがその意向だった。
なぜなら最良のインデックス運用には、企業の誠実な株主対応が不可欠と考えたからだ。
こうして株主提案が続々と可決された。

運用大手三社

ほかにも、ステート・ストリートが「日本企業に女性取締役の登用をもとめる」と発表している。

それが意味するのは、単純な環境とかフェミニズムの問題ではなさそうだ。これはコーポレートガバナンスが空洞化し、ファンドが企業を支配する時代の始まりなのかも知れない。

5Gをめぐる争い  

夏目啓二さんの連載記事の最終回。5Gとファーウェイの話が中心となる。
この辺はほかの記事でも明らかにされていることが多く、新味はないが、よくまとめられているので転載させてもらう。

現状

5Gの通信規格は現行システムの100倍の通信速度を持つ。

この分野でファーウェイが世界をリードしており、世界を支配する可能性がある。

昨年8月、トランプ政権は国防権限法を制定し、政府機関でのファーウェイ製品の使用を禁止した。
さらに同盟国に対してもファーウェイの5G製品を使用しないよう求めた。

ここまでは周知の事実である。

各界の反応

EU

今年3月、欧州委員会は5Gについて協議した。その結果、米国とは一線を画し、ファーウェイ排除を見送った。

西側諸国

日・豪政府は米国に追従。英・独は目下のところ同調せず。

制裁の効果

18年度、ファーウェイは基地局の売上シェアを2%減らし、トップの座を譲った。ライバル社のエリクソン(スエーデン)が僅差でトップとなった。

しかしファーウェイは欧州・中東・アフリカ・アジア太平洋で以前トップの座にあり、しかもシェアを拡大している。

総じて制裁効果は著明とは言えない。

追加制裁

5月15日、米商務省は強力な措置を打ち出した。ファーウェイとの取引の禁止である。

これは昔のココムと同じ思想だ。政府機関ではなくすべての商取引を一網打尽とするものだ。当然同盟国へも同様の措置をもとめて圧力をかけてくると見られる。

特に後者の影響は深刻なものとなる可能性がある。

ファーウェイの年間海外調達額は670億ドルで、この内100億ドルが米国からの調達である。

100億ドルという額は必ずしも大きくはないし、他国への切り替えも不可能ではない。しかし中核的な部品、スマホの基本OSは、グーグルなど米企業の独占となっているもの多い。

これに加え、部品調達の6割を占める東アジア諸国が米国との同盟関係を重視するとなれば、影響は極めて深刻なものとなる。



ここまでが、記事の要約です。

米中摩擦の技術学的背景を知るにはたいへん役に立つ資料だと思います。

ただ、この米中摩擦がどうなるかという問題は、結局は米政府内における政治意思決定過程の問題です。それは短期的には米国の政治的力関係・景気動向に左右されると思われるので、そのへんの分析が大事になっているのだろうと思います。

具体的には大統領選挙に向けた支配層の動き、とりわけトランプ陣営、軍産複合体と並んで政治支配力を持つ金融ファンド(ウォール街)の動きが注目されるのではないでしょうか。

5Gとファーウェイ

米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

GAFAの背後に三大資産運用ファンド

米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

夏目さんの連載記事は本日が(中)で、3回続くことがわかった。

それで本日の話は、ハイテク面での米中摩擦がどういう局面にあるのかという話。ぶっちゃけていえば、中国のハイテクがいかにすごいのかという話だ。

それはそれで面白いのだが、この連載の主題とは少しずれた話になる。

そのことを承知した上で、話を拝聴することとする。

1.ハイテク企業の3つの分野

この記事はスクラップ・ブック並みにファクトがギチギチと詰め込まれている。これを解凍して読みやすくしようとすると、元記事の3倍位に膨らんでしまうだろう。

米中ハイテク産業の比較話に入る前に、私なりに情報を整理しておきたい。

一言でGAFAというが、業態はかなり違っている。

正確な意味でプラットフォームと呼ばれるのは、グーグルとファイスブックだろう。
グーグルは検索エンジンから始まって、アンドロイドでスマートフォンのOSを握り、クロムでメインブラウザーの地位を獲得した。しかしその圧倒的強さは検索エンジンに由来している。ブラウザーの地位は必ずしも強固とは言えない。

これに対し、アマゾンはネット通販会社であり、販売方式の斬新さによりトップの地位を獲得したが、この世界の競争は並み大抵でなく激烈である。

アップルは携帯電話(スマートフォン)で成功したハードウェアメーカーであり、技術的な優秀さよりはアイデアの斬新さとスマートさに成功の要因がある。

このように、ハイテク企業と言っても中身はものづくり、販売、「狭義のプラットフォーム」提供という3つの分野に分けられるだろう。

それぞれで米中の力関係がどうなっているのか、というより中国が如何にGAFAを追い上げているのかを見ていく必要がある。
この記事ではハードウェアに焦点が当てられ、アップルの例が取り上げられている。

2.アップルのライバルたち

4大企業がアップルとライバル関係にある。すなわちファーウェイ、オッポ、ビボ、シャオミである。

10年前、アップルは中国市場で販売1位だった。現在は5位に転落している。

フラッグシップ会社のファーウェイは、スマートフォン販売でアップルを追い越し、世界2位となった(1位はサムスン)。

3.中国企業の4大成長センター

中国には先端企業の集中する成長拠点が4つある。
北京: ハイテク系企業センター
上海: 金融系センター
深圳: スマートフォンなど製造系センター
杭州 : 電子商取引(EC)系センター

深圳のリーダーがファーウェイであるのに対し、杭州 ではアリババ集団が本拠を構える。

4.シリコンバレーと珠江デルタ

広東省の朱江河口域は多くのハードウェア系のスタートアップ企業がひしめいている。企業価値が10億ドルをこすユニコーンはこの3年間に3倍化し、70社に達している。(米国は120社)

とくに深圳市にはファーウェイ、ZTE、トランションが本拠を置き、地域に技術・ノウハウを蓄積している。

5.中国(アジア)先端企業とファンドの投資

2018年度の全世界における投資額は553億ドルであった。このうち54%がアジア太平洋地域へと投資された。これは米国をふくむ北米地域の2倍に当たる。

どこから?

米国のカーライル社がアジアファンドを立ち上げ65億ドルを集めた。ブラックストーン・グループも94億ドルを集めたと言われる。

シンガポールやマレーシアの政府系投資会社、カナダの年金投資委員会も活発に動いている。

どこへ?

アジアの企業別投資額の上位3位は中国が独占している。
1位: アリババ集団の金融部門を受け持つアント・フィナンシャルへ140億ドル
2位: 検索エンジンのバイドゥの金融部門へ43億ドル
3位: ネット金融サービスのルーコムへ13億ドル

となっている。

とりとめのないまとめになってしまったが、時間があれば別資料で補完していきたい。


米中摩擦の技術的背景ー中国はどこまで追い上げたか

GAFAの背後に三大資産運用ファンド

赤旗経済面で注目すべき連載が始まった。
「米中デジタル競争」という題名で、寄稿者は愛知東邦大学教授の夏目啓二さん。本日は(上)でありこの後下になるのか中・下と続くかはわからない。

いづれにしてもインタビューでなく寄稿ということなので、相当力の入った記事であることは間違いない。

本日の見出しは「GAFAの支配と動揺」となっている。「支配」だけでなく「支配と動揺」というのが気に入った。

以下、要旨を紹介していく。

1.はじめに

GAFAはデジタル多国籍企業である。
それは世界のデジタル産業を支配している。
GAFAこそ現代世界経済の支配者である。

GAFAの2つの特徴として、①顧客の囲い込みによる利得拡大、②投資ファンドとの結合が挙げられる。

2.囲い込みで巨利

GAFAはプラットフォーマーと総称され、膨大な顧客を囲い込むことで、巨額な利益と高い利益率を確保する。

GAFAはいづれもデジテル技術開発により規模を拡大した後、投資ファンドの注目をあびるようになった。その後、新規株式公開(IPO)を利用して資本を調達して一気に巨大化をなしとげた。

これにより新たに巨大な顧客集団が創出され、高い売上対利益率をもたらす。

こうしてGAFA経営者と投資ファンドは、高利益率と高株価を一手におさめる一握りの独占者となる。

3.投資ファンドとの結合

投資ファンドはGAFA株の時価が押し上げられることで、さらなる投資家を引きつけるようになった。

新興プラットフォーマーはスタートアップ(二軍)と呼ばれる未公開企業からスタートする。

そのうちIPOにあと一歩というめぼしい企業はユニコーン(次世代GAFA)と呼ばれ、投資ファンドはテコ入れの機会をうかがっている。

投資ファンドはプラットフォーマーに対して、一種のパトロンとしての力を急速に獲得しつつある。

4.投資ファンドの実体

投資ファンドのうち最大手のバンガード・グループはアップル、フェイスブック、アルファベットの筆頭株主となっている。

このバンガードにブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席捲している。

彼らの持ち株総額は990兆円と言われ、そのうち500兆円をGAFAへの投資が占めている。

ここに今日の世界的な所得格差と資産格差の実態が厳然と示されている。

5.GAFAのゆらぎ、それをもたらしたもの

この強固な覇者連合のうち、GAFAの側に揺らぎが出ている。ここに現在の経済覇権をめぐる混乱の原因がある。

GAFAの18年通年利益(税引前)は合計で約15兆円だった。しかし売り上げ対利益率は6年前に26%だったのが20%にまで低下している。
この低下傾向はかなり確実な傾向(超過利潤の低下)であり、GAFAによる世界経済支配が揺らぎつつある兆候である。

「利潤率の低下傾向」は一般的なものであるが、直接的には強力なライバルの出現によりもたらされる。

それは具体的には中国のプラットフォーマーである。彼らはGAFAに倣ってBATHと呼ばれる。
すなわち、バイドゥ(百度)・アリババ・テンセント・ファーウェイの4企業である。




2019年5月

トランプとアメリカ帝国主義

北海道AALA学習会での講演レジメです。とりあえずそのまま載せますが、そのうち手を入れようかと思います。


帝国主義の変貌 1 ケネディー~ニクソン時代の帝国主義

私の世代では、「帝国主義」といえば、評論員論文「ケネディーとアメリカ帝国主義」と「ニクソンとアメリカ帝国主義」だった。

そこでは「帝国主義」は

1.覇権主義(特に軍事的覇権)

2.新植民地主義(民族主義の抑圧)

3.資本主義体制の盟主としての秩序強制

のセットとして描かれていた



帝国主義の変貌 2 レーニンの時代の帝国主義

私の世代では、「帝国主義論」といえばレーニンだった。

100年前の帝国主義は

1.多くの国が皇帝・王を擁する文字通りの帝国

2.銀行を頂点とする独占資本の寡占支配

3.世界を植民地として分割し非均衡貿易を強いる

という特徴を持っていた。そして帝国間で覇権を覗っていた

アメリカは独立を勝ち取った「自由の国」であり、特殊な「帝国」だった。
それは非帝国的な帝国主義という概念をもたらした。



帝国主義の変貌 3  唯一の超大国としてのアメリカ

ソ連・東欧諸国の崩壊により、アメリカが自動的に唯一の超大国となった。

しかしアメリカ自身も深刻な弱点あり、完全な一極化ではなく1.5極化にとどまる
(0.5としてEU、中国、ロシアなど)


しかしその後アメリカは次のような手段で覇権を強化した。

1.金融工学開発と米ドルの基軸化

2.新興国への新自由主義(為替・資本自由化)の押しつけ

3.国連を軽視する単独行動主義

により唯一の覇権国=「帝国主義国」への道を歩む




帝国主義の変貌 4  「唯一の超大国」が覇権を求める

イラク侵攻時に世界で起きた抗議行動など、アメリカの覇者への道は決して平坦ではなかった。それが一気に全面的な覇者の地位に上り詰める。そのきっかけはリーマン・ショックであった。

アメリカは大規模な量的緩和を繰り返すことによって、世界に対する金融支配力を強化した。対応が遅れたEUは一気に弱体化し、新興国は深刻な債務危機に陥った。

こうして次のような帝国主義の新段階が登場した。

1.ドルが唯一の決済通貨に。ドルによる世界支配

2.ドルを持つ1%の人が世界を支配する体制

3.軍事力と金融力による世界支配

これに情報分野での高い競争力を加えることにより、アメリカの世界支配が完成した。

一方で国内・国外に矛盾と不満・敵意が蓄積し、世界が急速に不安定化しつつある。



帝国主義の変貌は何をもたらすか

これが「トランプとアメリカ帝国主義」という提示に対する私なりの回答になる。

「デマゴーグ政治と軍産複合体の癒着」というのがトランプ政権の特徴であろうと考えている。
なぜそのような政権が登場したのか、その基礎となる社会的状況と歴史的段階を考えてみたい。
それは「アメリカ帝国主義の変貌」という性格を持っていると思う。


1.人類史上最強・最悪の帝国主義の出現(倫理観の欠如)

2.金融不安の増幅(常に金融恐慌の可能性が存在)

3.憎悪の共振がもたらす戦争への不安

しかし国内外の抵抗を前に支配層の不安定性もまた増強する。
国内的には例えばオバマ前政権である。オバマ評価にはいろいろ意見もあろうが、政権の姿勢次第で投資銀行への規制、銀行預金の国際規制、医療保険制度の前進など、政権次第では1%への有効な打撃を加えることもできることを示した。
またかつてのイラク侵攻反対キャンペーンのように、多国間主義(国連中心主義)に基づいてアメリカを包囲していくならば、歴史を前向きに回転させていくことも可能だ。
新興国の発展していくエネルギーはあらゆる困難を押し切って、人類の発展を保証していくものとなるだろう。

そのためにも多くの人々がアメリカ帝国主義に対する見方を一致させ、変革の展望を共有することが望まれる。

下記の記事が大変優れているので、その要約を上げておきます。一部私の見解も混じっているので、記事の責任は私にあります。興味のある方は本文をご参照ください。

東洋経済オンライン 2018/09

岩崎 博充 「リーマン破綻から10年で世界は変わったのか…今も続く恐怖と後遺症、次に来るリスク

はじめに

リーマン・ショックから10年、世界は様変わりした。
世界はアメリカを筆頭に景気回復を遂げつつある。
日本は相変わらず日銀による異次元の量的緩和を続けている。

リーマン・ショック以前には存在しなかった極右政権が数多く誕生した。とりわけトランプ大統領の出現は世界の様相を一変させた。彼らは一見、グローバリズム・自由貿易主義とは真逆の政策をとっているように見える。

一方で、リーマン・ショック後に湧き起こった「ウォール街の占拠」運動は、ウォール街の強欲主義を厳しく糾弾し、格差社会を糾弾する運動となった。

リーマン・ショックが人類にもたらしたもの

リーマン・ショックがこの世界に残したものは何だったのか。それを列挙しておきたい。

<金融市場にもたらされた影響>

Ⅰ.作り出された「過剰流動性」

① 流動性の枯渇

リーマン・ショックは、急激な流動性の枯渇が引き金となった。

アメリカでリーマン・ショックが終熄した後も、欧州の通貨危機は長期にわたった。実体経済も足を引っ張られた。

その対策として取られたのが大規模な金融緩和、とりわけ量的緩和政策だった。

② 量的緩和(QE)

米連銀のバーナンキ議長は流動性の枯渇に対応するために、量的緩和政策を導入した。長期国債などを購入することでマネーを大量投入した。

ベース・マネーは、約8720億ドル(2008年8月)から2兆6480億ドル(2012年1月)となった。4年間で3倍となったことになる。

ヘリコプターからお金をばらまくようだということから、「ヘリコプター・ベン」と呼ばれた。

欧州中央銀行や日本銀行なども、これに追随した。異次元の量的緩和によって、世界経済は平常に復した。金融危機は過剰流動性によって避けられたといえる。

③ 過剰流動性のツケ

日本銀行だけがいまも依然として量的緩和を続けているが、FRBやECBは緩和縮小(テーパリング)に入っている。

しかし世界にはマネーがあふれている。過剰流動性は至るところでバブルを引き起こしている。世界は、今後大きなツケを払わなくてはならないかもしれない。

Ⅱ.金融モラルの崩壊

投資銀行などの自己勘定による金融取引はリーマン・ショックの原因の一つとなった。

このためボルカールールが定められ、投資銀行の閉鎖と銀行の市場取引の規制が導入された。

しかしトランプ政権によりボルカー・ルールは骨抜きにされつつある。投資銀行は復活し、CEOなどの責任はほとんど問われなかった。

金融業界にとって何よりも大切なモラルが崩壊し、結局は「やった者勝ち」の世界が生み出されつつある。

<政治、国民生活への影響>

Ⅰ.格差社会の拡大

「ウォール街の占拠」運動は、世界が保有する資産の半分を1%の富裕層が独占している現実を明らかにした。

しかしそれから10年近く、格差社会は一向に縮小せず、ますます拡大している。

Ⅱ.極右勢力の台頭

デマ宣伝を運動形態とする極右の運動が広がっている。その背景には、100年に一度の金融危機があったと考えるのが自然だ。

リーマン・ショックの発生直後にオバマ政権が誕生し、8年間の苦闘の末に金融危機を抑え込んだ。しかしその間に膨らんだ大衆の不満はオバマの目指したものとは逆の方向に向かった。

ヨーロッパでは、長引く不況を背景に移民排斥を唱える人々が勢いを増している。

<リーマン・ショックは終わったのか>

過剰流動性を是正する過程が、大きな矛盾を生み出す可能性がある。

Ⅰ.資金量の減少

まず金融市場から資金が消えていく。

FRBはすでに2520億ドル(28兆円)の保有資産を減らした。FRBやECB、日本銀行の3行を合わせた買い入れ額は、この1年でゼロになる見込みだ。

Ⅱ.ドル金利の引き上げ

資金の減少は金利の上昇と投資の減少を招く。

金利の上昇は
①ドル高(円安)
②株価の下落
③新興国資金の逆流(新興国通貨安)
をもたらす

とくに新興国市場からの資金引き上げは、新興国通貨安をもたらし、ドル債務の増加となる。トルコ、南アフリカ、イラン、ベネズエラの悲劇は、明日のすべての新興国の悲劇となるかもしれない。

一方における貧困の蓄積は、他方における富の蓄積をもたらす。世界的な格差の拡大に拍車が掛かる。
強いドルを背景としたアメリカの金融支配力は格段に強化される。

アメリカの金融力が強化された理由は、リーマンショックで焼け太りしたことだ。 
FRB資産の推移
          2019年4月27日 日本経済新聞
まず連銀はこの10年間で4.5兆ドルのドルを発行した。500兆円、日本の5年分の予算と匹敵する。
これだけドルを乱発すればインフレになるのが普通なのに、まったくそのようなそぶりもない。
結果として米連銀は大金持ちになってしまったわけだ。
見えないインフレ
これは世界経済にとって何を意味するか。換金可能な現金・有価証券が世界に溢れ、その結果、物質財に対してアメリカ以外の国の持つドルは目減りしたことになる。見えないインフレだ。
不況に加えてインフレが襲えば、経済困難はますます耐え難いものとなる。

実体経済の正常化を阻害
金融構造の正常化は始まったが、実体経済の正常化は進んでいない。
下振れ圧力は軽減されないままで、なかば構造化されている。
企業が長期にわたり設備投資を手控えてきた結果、生産性が低下して経済全体の活力が落ちている。
成長率の低下により、低金利が構造化されている。
労働市場は完全雇用に近づいたにもかかわらず、賃金上昇率は低いままである。この結果インフレ率も上がらないままで推移している。

ドルは実体経済にとって「麻薬」
つまりドルは溢れているが、ユーザーサイドでは欠乏感が支配している。ドルなしでは生きていけないのに、「もっと多くのドルを」と望めば、それはますます自分の首を締めることになる。
まさにドルが麻薬化しているのである。こうなるとドルの需要は底なしとなり、アメリカのドル支配は絶対的なものとなる。
魔法使いの弟子がホウキに水くみを命じて、それが止まらなくなってしまったような恐怖感を感じる。

国債決済通貨とドルの切り離し
ドルの麻薬化は資本主義経済と国際金融システムにとってなかば宿命である。これまでは実体経済における決定力と、覇者としての節度によって金融秩序がかろうじて保たれてきたが、10年間で500兆円という巨額のドルが垂れ流されたのでは溜まったものではない。コカインを通貨代わりに使うようなものである。
かってケインズが夢見て果たせなかった国際決済通貨「オーロ」の実現に向けて一歩を踏み出す以外にはないだろう。


米中通商戦争はエネルギー戦争

米中通商戦争はエネルギー戦争としての側面も持っている。

中国が今後発展していく上で最大のネックとなっているのがエネルギーである。
20世紀末までは時代遅れの石炭でしのいできたが、それはPM5となって自分の首を絞めるようになった。
中国エネルギー
       中国における一次エネルギー消費量の推移
中国は原油の確保をめぐって悪戦苦闘を続けてきた。南シナ海の海底油田はその一つだ。
米国は逆に原油供給先を潰しにかかってきた。イラン、リビア、ベネズエラへの干渉は中国に対する兵糧攻めだ。

石油からどこへ?

一方で、フクシマ以来原子力への芽が絶たれたことから、「石油に代わる未来のエネルギーは何なのか?」が問われるようになっている。

私がこの間勉強してきた感じでは、それは自然エネルギーをベースロードとし、LNGで増減を調整するミックス電源となるだろう。

自然エネルギーは、あれもこれもの夢物語ではない。広大な大陸では風力、人口密集帯では太陽光だ。これに揚水発電・省エネが組み合わされることになる。

蓄電池や液体水素などの話はその次の世代の話となる可能性が高い。

いずれにせよLNGの確保が死活問題

原油と違ってエネルギーの全てではないが、LNGの重要性は死活的なものとなる。
しかしパイプラインをふくめるとLNGの初期コストは相当なものとなる。EUに対するロシアの恫喝を考えると、政治コストも高価なものとなる。
そして今後LNG最大の供給先となりそうなのが、半ば無尽蔵のシェールガスをかかえる米国だ。これに対して最大の輸入国となりそうなのが中国という構図になる。

どうやっても中国はエネルギー不足という呪縛から逃れられそうにないのである。

米朝破談、ファーウェイ事件、ベネズエラ攻撃は一連だ

この間ファーウェイ事件を取り上げたばかりなのに今回は米朝破談だ。

1.何が起きたのか

昼のニュースで米朝破談が報じられた。その背景に本日午前の複数会談の映像が流れた。
その絵を見た途端にすべての疑問が氷解した。ちゃぶ台返しの犯人はボルトンだ。

そもそも昨日の複数会談に出ていないことが奇妙な話だ。ハノイまで来ていて出ないということは考えられなない。
出ろと言われて出ない、出るなと言われて出る、まさに傍若無人である。
前回の米朝会談のときには、シンガポールには行かずに、せっせと会談つぶしに精力をつぎ込んでいた。

今回は会談にあわせてコーエンの公聴会が行われた。これがボルトンが繰り出した「奥の手」だ。彼が何をしゃべるか(ボルトンが何をしゃべらせるか)はトランプの政治的運命に関わる。
だからトランプはボルトンの言うことを聞かざるを得なかった。これがすべてだ。
ボルトンは前回会談のときも会談つぶしに動いた。下記を参照されたい。
2.ボルトンの背後に米軍産複合体

ボルトン個人にそれほどの力があるわけではない。その背後に大統領すらあごで使うような巨大な権力が存在している。彼らがボルトンを政権内に押し込んだのであって、その逆ではない。

かつてその露頭となったのが、イラク戦争のときのチェイニー元副大統領を先頭とするグループである。(いまは誰か知らない)

それは恐ろしく野蛮な勢力であり、イラクに侵攻してフセインを暗殺したり、リビアでカダフィを虐殺したりしてきた。

それが最近息を吹き返して、ファーウエイのトップレディを誘拐したり、ベネズエラの合法政府をねじ伏せたり(まだ死なずに頑張っているが…)と傍若無人ぶりを遺憾なく発揮しているのだ。

いまやトランプの乱暴ぶりは、この軍産グループのたんなるベールに過ぎなくなり、それさえも場合によってはかなぐり捨てんばかりとなっている。

3.世界は束になってもかなわなくなっている

彼らがここ数年で急速に息を吹き返したのには3つの理由がある。

一つは米国の金融力である。リーマン・ショック後世界はとてつもない不況に見舞われた。このとき苦境をともかく救ったのは米国の三次にわたる量的金融緩和(QE)である。
各国は当面の苦境から救われたものの、米国の金融支配に全面的に屈服した。

二つ目は米国の経済制裁力である。とくに輸出入制限に加え金融制裁が課せられた場合、どの国でも致命的影響力を被ることになる。
中国でさえもそうである、そのことが明らかになった。

三つ目は、米国企業の利益力である。現在米国籍の世界企業による租税回避が大きな問題になっているが、問題はそこではない。
問題は脱税額が巨額になるほどそれらの企業が膨大な利潤(超過利潤)を上げていることである。GAFAを始めとする米国籍の巨大企業の競争力は群を抜いている。


4.米軍産複合体は世界の人々の共通の敵

彼らは利益をむさぼることを何ら躊躇しない。
彼らはそのために暴力や不当な制裁、理由のない攻撃をかけること、いわれなく人を脅したり貶めることを何ら躊躇しない。

敵はトランプではなく、その背後にいる人々だ。

米軍産複合体に抗議する世界の人々が、今やお互いに赤い糸で結ばれ、連帯を強めなければならない。

そしてその一つ一つの表れを警戒し注視し警告しあわなければならないだろう。

「5G」について
がとてもわかり易い。なぜかというと、記事そのものが“PRESENTED BY ファーウェイ・ジャパン”だということ。記事の書かれたのが事件発生後の2018年12月07日だからだ。
これを読むと、5Gが何なのかだけでなく、なぜそれがファーウェイで、なぜファーウェイが狙われたかまで全部分かるからだ。

ICTというのは情報・通信技術のこと。以前はITといったが、情報インフラである通信が重視されるようになった。TVでいうと、番組のコンテンツが情報で、受像機がインフラだ。番組を作るのはヤクザな虚業だが、受像機を作るのはカタギの実業だ。どちらが偉いかは子供でも分かる。

5Gというのは第5世代の意味。
1G:アナログ携帯電話
2G:デジタル化
3G:高速データ通信 (光ケーブル)
4G:スマートフォン用通信 (電波)
5G:1平方キロメートルあたり100万台以上のデバイスの同時接続が可能となる。
ということでキャパの容量が桁違いということらしい。それ以上のことはわからない。

5Gの経済効果については様々な研究所で試算が行われており、2023年には30兆円とも予測されている。
5Gの最先端市場は中国で、基地局数がアメリカの10倍ともされている。牽引するのは、ファーウェイだ。その売り上げの約50%は通信事業。研究開発への積極投資を続け、毎年売上高の10%以上を投資している。

1月20日、オックスファムが定例となった世界での不平等の実態に関する年間報告「公共の利益か、個人の富か?」を発表した。

(Ⅰ) 骨子は以下の通り。

1.26人の大富豪が世界の貧困層38億人分の富を所有している。17年の時点では43人だった。

2.貧困層の資産は1年で11%も縮小した。大富豪の資産は12%も拡大。1日に25億ドルずつ増えている。

3.08年の経済危機以来、大富豪の数が倍増した。近年における彼らの納税額は最低額である。

*「大富豪」は資産10億ドル以上のビリオネアを指す。
*「貧困層」は中央値以下のボトム・ハーフ(貧しい半数)を指す。

(Ⅱ) 格差の年次推移

格差が過去10年間でどう変化しているかを示したのが次の図である。

図 大富豪の数

大富豪の数
リーマン・ショック後の一時的な収入低下は、早くも1年後に底を打つ。その後は一本調子に懐ろが膨らんでくる。
ビリオネアの数は10年間で2.8倍に、その総資産は3.2倍に増えている。平均年率で30%だ。これは少なく見積もってGDP成長率の10倍に相当する。このような寄生虫に取り憑かれたら一刻も早く駆除しなければ、確実に宿主は死亡する。

(Ⅲ) 格差の理由: オックスファムのコメント

以下のような要因の複合によると考える。

1.「情報通信技術」(ICT)による生産手段の寡占

2.「企業買収」による資本の集中

3.グローバル企業による悪質な租税回避

4.法人税の過剰な引き下げと「底辺への競争」

5.医療や教育予算の削減

6.富裕層への優遇税制

* 世界経済フォーラムの推計では、世界中で生産プロセスがAI制御されると,今後10年間で100兆ドルの経済価値が生まれる。
* 米国の労働生産性は、2000年を挟む10年間の好況期で2.3%伸びた。しかし下位90%層の所得成長率はマイナス0.2%だった。

私の感想として、これらの「格差の背景」は、民主主義だけでは片付かないものがふくまれている。「民主主義的な社会主義」が必要だ。それとともに国連中心主義を軸とした多国間主義も必要。


時代を読む3つのキーワード: 格差社会・超帝国主義・民主的社会主義

これが、北海道AALAの2月号に載る予定の、ちょっと遅めの、ちょっと先走った年頭の辞です。

この間、かなり根を詰めて勉強してきて、感じたのが格差社会、超帝国主義、そして民主的社会主義という3つのキーワードだ。

1.格差社会
格差社会は現在の世界をもっとも強烈に形作っている特徴だ。これが社会の歪みを生んでいるし、その歪みがますます格差社会を助長している。貧困が問題なのは可哀相だからだが、格差が問題なのは不正義であるからだ。
今日の世界の政治問題のほとんどは格差社会のなせるものとして説明できる。なぜなら格差が大きいほど政治は容易に買えるようになるからだ。これはある程度まで真実である。1%の人々は票や世論を金で集め、“民主的に”政治を支配することができる。
この歪みの深化の過程、人々の抱く怒りと無力感の構造、社会意識の液状化メカニズムをもっと鮮明に把握しなければならない。
この格差社会は決して自然に生じたものではない。それは「ネオリベラリズム」がもたらした災厄である。それはアメリカ政府とその手先の機関が世界に押し付けたものである。それは血まみれの姿で歴史に登場したのである。

2.アメリカ帝国主義の再活性化
アメリカこそが軍事・政治上の覇権を握り続けてきたのだが、それが名実ともに帝国主義の名にふさわしい相貌を呈してきたのは、じつはこの10年のことではなかったのか。
それがGAFAなどに象徴される、情報産業分野での圧倒的な優位の獲得であり、それにもとづく金融支配と経済覇権の掌握であったと考えられる。
これまでの覇権に加え、独占的な経済・金融手段を獲得したアメリカ帝国主義は、有力なライバルと目されていた中国に突如コブシを振り上げ、一撃で打ちのめした。

3.「超帝国主義」の出現
あまりにも巨大な「超帝国主義」の登場に思わず足がすくんでしまうが、逆に言えば戦いの相手がはっきりと姿を現したことで、世界の99%の人が団結して戦うべき目標が定まってきたとも言える。
ではこの「超帝国主義」とどう戦うのか。99%の人々が団結して、1%の人間の支配するディストピアの実現をどう阻止するのか?
それが方向づけされ、共同目標が明らかにされなければならない。それは怒りと抗議、正義と公正の要求にとどまってはいられない。
その作業は世界中で取り組まれることになると思うが、いくつかのクライテリアが提出されている。例えば人間的尊厳の無差別な尊重、人として生きていく権利の平等、コミュニティーの自生する権利などが挙げられると思う。

4.民主主義的社会主義の旗印
これらの権利を超帝国主義に対し主張していく際に、念頭に置かなければならない点が一つある。
それは、この格差社会と超帝国主義が第二次大戦後の戦後民主主義の中から育ってきたということである。レトリカルに言えば、超帝国主義は戦後民主主義の申し子なのであり、一般的に民主主義のスローガンを対置するだけでは解決できない問題をふくんでいる。すなわち社会主義の観点が必要なのである。
バーニー・サンダースは今、「それを民主主義的社会主義と呼ぼうじゃないか」と呼びかけている。アメリカ帝国主義の胃袋の中で闘いつづけてきた彼には、あえてみずからを民主的社会主義者と呼ぶしかなかったのだろう。
たぶん「社会主義論」は議論の多い課題にはなるだろうが、運動の性格付けをする上で避けて通れない課題だと思う。オカシオ・コルテスのような若手活動家は何のためらいもなく民主的社会主義を叫んでいる。
時代は変わりつつあるのだ。

ハードディスクの書庫を引っ掻き回していたら、以下のような文章(の断片)が出てきました。おそらく、AALAの総会方針を書いたときのものだと思います。
我ながら、20世紀末の状況を的確に把握しているなぁと思い、再掲することにしました。

20年経ってますます明らかになっていることは、この間の「グローバリゼーション」が、本質的にアメリカ帝国主義の一極支配の確立プロセスだということです。
だから我々は、「アメリカ帝国主義は衰退しつつあるのではないか」とか、「超国家企業の前に国家は消滅するのではないか」などという考えを捨てなければなりません。


21世紀を迎えようとする今,世界の情勢は極めて混乱した状況を迎えています.もちろん第三世界における人種,宗教,国家間の紛争も相変わらず続いています.その大本となる,先進国による途上国の収奪の体制も強められています.

しかし一方において,米国を中心とする情報産業の発展.金融ネットワークの広がりにも目を向けられます.その善悪はともかく,情報化によって世界が根本から変わってしまうのではないか,19世紀の産業革命が世界を変えたのと同じように,インターネットを中心とする「情報革命」がまったくあらたな時代を作るのではないか,そんな感想もあります.

グローバリゼーション,あるいはグローバリズムという言葉は,そのような思いを代弁するかのような姿で登場してきました.とくに好況にわき返るアメリカでは,情報にかかわる技術革新のおかげで,世界中の富が集まってきた,失業率も最低になった,ということでグローバリゼーション万歳の声が強まっています.

グローバリゼーションという思想の結論は,国家の消滅です.ボーダーレスの時代の到来とかいわれます.電話回線(衛星通信とか光ファイバーとかディジタル通信網とかいろいろ並べますが)ですべてがつながり,情報がすべての人間の共有するものとなれば,国家の意味はなくなる,というわけです.そして国家に代わるあらたな主人公は国際金融市場です.そして投機的色彩の強い資本です.ボーダーというのは国境という意味ですが,「見境いない」という意味もあります.

それは19世紀のパックス・ブリタニカ,20世紀のパックス・アメリカーナに続く,パックス・マネタリカの時代です.ロンドンのユーロ市場,ニューヨークの証券取引所,シカゴの穀物取引所こそ,21世紀の覇者になるわけです.

 

こうしたグローバリズム万歳論は,おそらくアメリカの好況が終焉を迎えると同時に消滅するでしょう.ユーロ市場は,ドルの過剰流動性に根拠があるのであって,それ自体は世界経済の撹乱者,破壊者の役割しかもっていません.そもそもの成立が,オイル・ショック後のオイルダラーであり,70年代後半には中南米の経済をずたずたにし,90年代にはアジア経済に大きな痛手を与えました.それが今アメリカに集中しているだけのことです.

この連中は芯からの無政府主義者であり,グローバリズムは彼らの無頼思想の反映に過ぎません.

 

グローバリズムを主導する勢力にはもう一つあります.いわば保守本流,先進諸国を支配している勢力です.彼らの狙いは世界の全面支配にあり,そのために徹底した自由化を要求しています.この自由化の動きは,別に目新しいものではありません.80年代からのウルグアイ・ラウンド,そして93年のWTO創設の流れの延長線上にあります.

 

それではグローバリズムと名づけるような変化が何処にあったのか?

それは一言でいえば,先進国資本の,一段と深い浸透にあります.その典型がラテンアメリカ諸国における自由化・民営化です.

 

ラテンアメリカにとって80年代は「失われた10年」とよばれています.投機的資本に経済をずたずたにされ,残されたのは膨大な借金=対外債務でした.80年代末にアメリカのブレイディー財務長官が「救済案」を提示し,これに先進国の金融界を代表する勢力,いわゆるパリ・クラブが賛同して,経済再建への動きが始まりました.

 

フジモリだけではなく,すべての国の大統領が自由化,民営化を推し進めました.ウルグアイでは売るものがなくなって,飛行場まで「自由化」しようとしました.

民営化といえば聞こえはいいのですが,要するに公営企業の身売りです.しかも身売り先のほとんどは先進国の大企業ですから,売るというよりは借金のカタに没収され国際競売にかけられたという方があたっているかも知れません.

 

途上国政府にとっては,まさに「国家の消滅」という言葉が実感を持って迫ってきます.先進国からすれば,国家の基幹とも言えるインフラストラクチャー部門まで自らの手におさめてしまうのですから,「ボーダーレス」としかいいようがありません.

 

この場合,注意しなければならないことがあります.「国家の消滅」の危機に瀕しているのは途上国の政府であって,先進国ではないということです.先進国の政府の国際的機能は一連の経過のなかで逆に強化されています.アメリカ連邦銀行総裁のグリーンスパンの名をとって「グリーンスパン帝国」の出現とする論評もあります.

 

いま日本の政府も盛んに民営化をいっていますが,これが「国家の消滅」につながるものでは決してありません.むしろグローバル国家としての機能の再編強化を目指す「国家リストラ」というべきでしょう. 

不破さんが現綱領を作成して、その後現役を引退してから、もうずいぶんになる。
退役後、ずいぶん本を書いた。最初はこちらもお付き合いしたが、だんだんずるけるようになってしまった。
しかし未だに日本の革新運動史上最高の理論家であると思っている。

それはともかくとして、
「資本論はどのようにして形成されたか」(2011年)という本があって、その中の一節が大変印象的なので紹介しておく。
マルクスー不破

これは「リーマンショックから10年」という年がまもなく終わるにあたって、なかなかふさわしい一文ではないかと思う。

といっても、不破さん自身の発言ではなくマルクスの引用なのだが、不破さんの博識ぶりに感嘆したという話だ。ついで不破さんによる背景説明というかウンチク。
これは、1857年恐慌の終結後の58年10月、マルクスがアメリカの新聞『ニューヨーク・デイリー・トリビューン』に掲載した経済論説「イギリスの商業と金触」のなかの一節です。
イギリス議会下院委貝会の恐慌問題の報告書が、恐慌の原因は「過度の投機および信用の濫用」にあったと結論したのを読んで、マルクスが、問題はそんなところにあるのではない、「過度の投機および信用の濫用」がなぜ10年ごとに繰り返されるのか、その原因を究明するところに恐慌問題で探究すべき中心問題がある、こういう痛烈な批判の言葉を校げつけたのでした.
それから160年も経って、いまなお先進国の国民が、「きわめて見え透いた幻想に惑わされて、周期的に自分の財産を手放す発作」にとらえられるのはなぜか。しかも10年毎に繰り返されるこっぴどい警告にもかかわらずやられるのは、いったいなぜか。
自己幻惑、過度投機と架空信用を10年おきに再生産する社会的事情ってなんなのだろう。
ということで、マルクスはそれをマインドの面から説明し、しかもそれに合理的な経済的説明を継ぎ足そうとしている。
マルクスの言につづいて、これを引用した不破さんの読解と解釈。
この文章を読んで、私が求めていた問題は、まさにここにあったと直感しました。資本主義的生産はどうして恐慌という破局を周期的な必然とする運動形態をとるのか、恐慌論でいう恐慌の「根拠」――生産と消費との矛盾――が周期的な恐慌を伴う産業循環を生み出すのは、資本主義経済のどういう仕組みによってなのか。
マルクスは、“問題はここにあるのだ”と言って、核心を避けて常識的な一般論に終始したイギリス議会に批判の言集を投げつけたのです。
“そうである以上、この問題にたいするマルクス自身の回答にこそ、マルクスの恐慌論の核心があるはずだ”、私はこう考えて、マルクスが経済論説で提起した問題を「恐慌の運動論」と呼び、その探究を志したのです。
ということで、さらに文章は続いていくのだが、とりあえずは
1.恐慌は投資家のマインドの問題である
2.マインド形成には資本主義のメカニズムの必然性が反映されている
という2段構えの論理を、マルクスが準備していることが分かればよい。
「資本主義システムが直接に恐慌を生み出すメカニズムを内包しているわけではない」、というのはマルクスの成長の証であろう。

国際銀行間通信協会 「SWIFT」(Society for the Worldwide Interbank Financial Telecommunication)
はこの間のハッカーの主要な攻撃対象となっている。

SWIFTの問題点と今後

一番問題なのは、SWIFT自身がハッキングを抑える手段はないと言っていることだ。これは民間の協同組合みたいなものだから強制力は持てない。
もう一つの問題は、信用状をやり取りして然る後に、人手を介した銀行業務を開始するというシステムの問題がある。本質的に偽メッセージが潜り込む危険性を秘めているシステムだ。「支払いのメッセージング」と「決済完了」の間にタイムラグが生じることも深刻な問題だ。
第三に、そもそもこのようなきわめてアナログ的な業務スタイルが、はたして今日の世界においていかがなものかという素朴な疑問がある。
ただこれらの問題が解決され、システム的に洗練された場合は、一種の「国際商業決済銀行」として巨大な力を発揮する可能性もある。それは国際決済銀行(BIS 中銀のみ)もIMF(各国通貨の監視)も果たしえない機能だ。
さまざまな問題にもかかわらず、現に世界の200以上の国で、1万以上の金融機関が加入しているのはその反映なのだろう。
ここに国際的な基金をプールして、その資金を運用することになればアメリカの最大の武器であるドル決済体制を揺るがすことになる可能性もある。だから米NSAがSWIFTの金融取引への監視を強めているのだろう。

この間の経過

1973年 国際銀行間通信協会 「SWIFT」が発足。当初は通信ネットワークサービスを運営するための国際協同組織。ベルギーに本部を置く。15ヶ国の239銀行が参加。

1977年5月 サービスの運用が開始される。金融機関同士のネット通信。暗号化と端末の差別化により守秘性を向上。

1986年 付加価値サービスとして国際決済銀行と提携し欧州通貨単位の決済を手がける

2004年 スイフトネットへの移行を完了。202の国と地域の7800を超える金融機関が接続。

2006年6月23日 ニューヨーク・タイムズ、スイフトのクラウド情報が、中央情報局などにより利用されていたと報道。セキュリティの脆弱性が暴露される。

2013年9月 スノーデンの内部告発。米NSAがSWIFTの金融取引を監視。広範囲の銀行取引とクレジットカード決済をモニターしていることが暴露される。

2015年1月12日 サンフランシスコのウェルズ・ファーゴ銀行、「BDAからの送金依頼」に応じ、1200万ドル(約13.4億円)を送金。この事件は1年以上秘匿される。

2016年
2月5日 バングラデシュ中央銀行で約8100万ドル(約90億円)の不正送金事件が発覚。「銀行を襲った史上最大級の盗難の事例」となる。
ハッカーはニューヨーク連邦準備銀行内のバングラ銀行口座にアクセスし、不正送金させた。犯人が些細なミス(誤字)をしていなければ、約9億5000ドル(約1000億円)に達していたと推測されている。

4月 SWIFTはシステムの包括的なセキュリティ強化を行う。加入者にもソフトウェアのアップデートを促す。

5月 ニューヨーク・タイムズ、「SWIFTに関連した第二のサイバー攻撃」を報道。SWIFTはこれを否定せず。

5月15日 ベトナムの銀行でハッカー攻撃が起きたと報道される。送金は未然に防がれたとされる。NYT報道と同一ケースか。

5月後半 エクアドルの銀行から4つの銀行に約1200万ドルが不正送金されたことが発覚。その後もフィリピン、ウクライナ銀行で不正送金が次々に発覚する。

2017年

11月4日 ネパールの銀行、6ヵ国へ約4億6000万ルピー(約5億円)を不正送金。SWIFTを利用したハッキングとされる。早期発見で4億の回収に成功。

2018年

2月 インドシティユニオン銀行、2億円超のSWIFTハッキングによる流出。

2月16日 ロシア中銀、SWIFTを使って約600万ドルが不正送金されたと発表。事件が起きたのは昨年であり、詳細は発表できないとする。

10月 FireEye(米セキュリティ企業)、北朝鮮のハッカー集団「APT38」が、サイバー攻撃で1億ドルを不正に取得したと発表。これによると4年間で11カ国、16以上の金融機関を攻撃したとされる。

11月5日 SWIFTが国際送金網から、イランの複数銀行を除外する措置。トランプによる追加経済制裁を受けてのもの。イランの銀行は国際間送金ができなくなる。通貨の代替案として自国中銀発行の仮想通貨が注目を集める。

追加: SWIFTはトランプのイラン追加制裁を受けて、国際送金網からイランの銀行を排除した。とんだ腰抜けだ。CIAやNSAにいくら盗聴されてもなんにも言えない。このようなへなちょこに世界経済の将来は到底託せない。こうなれば最後はビットコインだろうか。

そんなこと威張っても仕方ないが、習近平が詫びを入れた。私の言った通りになった。
経済通や中国通はみな不思議がっているが、そんなこと当たり前だろう。読めなかったアンタ方の程度が低いということだ。
だいたい、赤旗から日経まで、みんな中国を買いかぶりすぎている。



貿易は決済を以って完了する。決済は決済通貨なしに不可能である。中国が貿易を盛んに行えば行うほどドルの縛りを強く受けることになる。中国がドルという外貨をいくらたくさん持っていようと、それはドル決済システムを補強するだけの話でしかない。
これまで常に、中国の最大の弱点は通貨で、この弱点はまったく克服できていない。それどころかますますドルの罠に絡みとられているように見える。
かつて日本はプラザ合意でドルで累積した外貨を半分に減価された。さらに不均衡の是正ということでいいようにむしられた。ドルを決済通貨にするというのはそういうことだ。
中国にとって最後の手段は、ドル建て債務を踏み倒すかどうかだ。それはありうると見ている。ただしそれは日本とEUをふくめ、世界中で一斉に踏み倒すことができるかどうかにかかっている。その旗振りができるのは中国以外にないだろう。


情勢分析をするときに、つねに念頭に置かなければならないのは、リーマンショック以来の10年間で何が変わったのだろうか、それが政治の世界にどう反映されていくのかという視点であろう。
私はこの10年の力関係の変化を決めたのは、大量の通貨・ドルであろうと思っている。
QE、QE2、QE3という三次にわたる量的緩和策が世界のあり方を変えてしまった。
世界は身の丈に余るぜい肉をつけてしまった。ベッドから動けなくなってしまった超肥満者の状態にある。きわめて不健康な状態であり生命にも関わる。
量的緩和は窮余の策として必要であったに違いない。重病人に点滴をするのと同じである。治ったらやめればよい。しかしやめられなくなったら、どうなるのか。そのことは誰にもわからない。
とにかくそうなってしまっている体にいきなり根治療法をしても、体力が持たないから、できるところから少しづつ手を付けていく以外にはない。
何れにしても世界の通貨の99%を握る1%の人々に、これ以上金が回らないようにすることが一番肝心なことである。米中経済摩擦もその観点から見ていかなければならない。








米国・欧州における進歩派の前進 その2 ヨーロッパ

A) イギリス 「コービン現象」の現在
ブレグジット(EU離脱:ブリテン+エグジット)の着地点は見えない。なぜならそれは英国政治の真の焦点ではないからだ。
問題は長い間に蓄積されてきた社会的危機と、それを進めてきた保守党の政治に対する民衆の拒絶感である。ブレグジットはそれを逸らすための偽りの争点だ。

8年間の保守党政治のもたらしたもの
医療サービス(NHS)や各種行政サービスの切り詰め。公務部門労働者への厳しい賃金抑制。
これらが経済成長を急落へと押しやり、税収を急速に低落させる悪循環を招いた。

これらはミレニアル世代で特に深刻だ。公的住宅が不足し住居費は収入の50%に及んでいる。賃金と労働条件は低劣で、しかもそれらについての保証もない。
交通費、光熱費、娯楽費も高い。その結果多くの若者がローン漬け、カード漬けになっている。

社会的不公平の象徴となったのが、17年7月のグレンフェルタワー火災だ。この火災で70人以上が犠牲となったがその多くは低賃金の移民労働者だった。燃え上がる新建材の炎は、この国の貧困者への態度をあからさまに示すものだった。
musurimタワー住人
        住民の多くはムスリムだった

民衆の心をつかんだ生活改善の訴え
保守党政権はNHSの設備を売り払い、民営化を推進している。
NHSの民営化をやめる。保守党のやりかたにノーといおう。必要に応じて税金を適切に支出する。

政府のケチで、多くの命が犠牲になり、健康の不平等が拡大している。
富裕層が貧困層より26年も長生きしてるなんて受け入れられないよ。
我々は皆の医療、教育、住宅にきちんとお金が使われる社会に住みたい。
英国では123,000人の子供たちに家がない。保守党政権になって路上生活者が2倍以上になった。
10万戸の公的住宅を建設しよう、誰もが自分の住まいを持てるようにしよう。
最低賃金£10を実現する。従業員を正規の労働契約にする。
コービン演説
    ロイターより

17年6月選挙とその後の動き
保守党強化の予想は覆された。自由民主党は議席を激減させ、極右の英国独立党は唯一の議席を失った。
若者たちは、労働党史上もっとも左派の指導者、ジェレミー・コービンの下に結集した。23歳以下の青年の3分の2が労働党に投票した。
労働党の党員数は、ブレア時代の12万から60万以上に跳ね上がり、西欧最大の政党となった。
コービン派の中核組織「モメンタム」グループの組織員も10万を越える。
一方、保守・右翼の反撃も強まりつつある。
ロイター通信は論説で、右のトランプ、極左のコービンを2つの「おろか者政治」(ポピュリズム)と呼びその危険性を訴えてる。

今後、ブレグジットが暗礁に乗り上げた時どうするか。コービンは今年2月「EU離脱・関税同盟維持」の方針を出した。事実上は残留に近い。これで合意が形成されれば、保守党政権は吹っ飛ぶ。その先に「皆の医療、教育、住宅にきちんとお金が使われる社会」というもう一つの社会が作られる展望が開けている。

B) ドイツ左翼党の前進
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