鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

13年4月、ぷらら・Broachより移行しました。 中身が雑多なので、カテゴリー(サイドバー)から入ることをおすめします。 過去記事の一覧表はhttp://www10.plala.or.jp/shosuzki/blogtable001.htm ホームページは http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」です。

カテゴリ:01 国際政治/経済 > F 国際経済/租税回避

ワタシが以前書いた記事で

がだいぶ読まれているようだ。
実は大した記事ではない。誰かのレポートをまとめただけのものだ。ただこの記事以外にも10本くらい記事を書いているので、書いた順にまとめて読んでいただけるとありがたい。最初の方とあとの方では認識レベルが違っているので、あとの記事のほうが正確だ。
言いたいのはFATCAとかCRSの具体的内容なのではなく、租税回避(BEPS)が諸国家の破壊行為であり、このまま進めば世界が崩壊しかねない危険な動きなのだということの認識だ。
そしてそれと対決していく決定的な方途としてはFATCAとかCRSの方向しかないということだ。FATCAは結局は米国本位のシステムであり、場合によっては悪用される危険すらある。しかしFATCAがCRSを産んだということは押さえておかなければならない。
一方でそのような経過も踏まえ、他方で依然として死んだわけではない「金融取引税」(トービン税)も踏まえつつ、グローバル社会の生き残りを目指すこの動きを重視していかなければならないと思う。
しかるに、日本国内では(少なくともネット社会レベルでは)、この動きを世界経済の重要な動きとして捉えようという動きはほとんど見られない。
英語でFATCAとかCRSを取り扱う文献が山ほど出現していることと考え合わせると、日本におけるこの無関心ぶりには唖然とする。
私ごとき素人が偉そうなことを言える立場にはないことは重々承知しているが、グーグル検索で私の書いた記事が上位に登場するような事態はできるだけ早く解消していただきたいものである。

世界の富豪たち

いつも、行き倒れとか介護疲れとか減免とかしけた話ばかりなので、今回は景気良くドーンとお金持ちの話をしましょう。

最初は金持ちが信長とか秀吉のように見えて、他人ごとながら楽しいのですが、そのうち腹が立ってきます。最後にはこんな世の中変えなきゃいけないと思うようになり、どうしたら金持ちをやっつけられるかと考えるようになってくれればと思います。

Ⅰ.世界の富豪たち

最初にフォーブス誌の今年のランキング。このランキングは個人の資産に加え、公的投資や民間企業への投資、不動産、ヨット、美術品、現金や負債も考慮に入れている。


第1位 ビル・ゲイツ(60)
資産額:750億ドル(8兆5680億円)マイクロソフト/米国

 

第2位 アマンシオ・オルテガ(79)
資産額:670億ドル(7兆6541億円)ZARA/スペイン

 
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第3位 ウォーレン・バフェット(85)
資産額:608億ドル(6兆9458億円)バークシャー・ハサウェイ/米国




第4位 カルロス・スリム・ヘル(76)
資産額:500億ドル(5兆7120億円)アメリカ・モービル(通信事業)/メキシコ

第5位 ジェフ・ベゾス(52)
452億ドル(5兆1636億円)アマゾン/米国

第6位 マーク・ザッカーバーグ(31)
446億ドル(5兆951億円)フェイスブック/米国

第7位 ラリー・エリソン(71)
436億ドル(4兆9808億円)オラクル/米国

第8位 マイケル・ブルームバーグ(74)
400億ドル(4兆5696億円)ブルームバーグ/米国

第9位 チャールズ・コック(80)
396億ドル(4兆5239億円)Koch Industries(複合企業)/米国

第9位 デイビット・コック(75)
396億ドル(4兆5239億円)Koch Industries(複合企業)/米国

ご同慶の至り、と、とりあえずは言っておこう。

Ⅱ.日本の富豪たち

順位名前(漢字)関連資産(億円)
1柳井正ファーストリテイリング(ユニクロ)17,930
2孫正義ソフトバンク16,390
3佐治信忠(一族)サントリー12,870
4滝崎武光キーエンス9,130
5三木谷浩史楽天6,270
6森章森トラスト5,280
7高原慶一朗ユニ・チャーム4,620
8毒島邦雄・秀行三共(SANKYO)4,510
9韓昌祐マルハン4,400
10伊藤雅俊セブン&アイ・ホールディングス4,290

Ⅲ.どれだけ増やしているか

と、ここまでは個人資産なので「ああそうですか」ということにしかならない。羨ましいとは思っても憎たらしいとは思わない。

しかし毎年の収入を見ていくとそうは行かない。オックスファム

このグラフを見ると、なんだかんだと言いつつも2010年まではウィン・ウィンの関係でみんな豊かになっている。それがこの5年間というもの、貧乏人の財産は大幅に目減りする一方、超お金持ちの財産は増え続けている。

つまり62人の連中は貧乏人を食い物にして肥え太っているわけだ。

Ⅳ.日本のお金持ちも同じだ

これは政府御用達、NHKの報道によるものだから間違いない。
資産の増加

アベノミクスの始まる前、2012年の8兆円に対し、15年に14兆円で差し引き6兆円増えたことになる。3年で6兆、毎年平均して2兆円が懐が膨らんだ計算だ。
これは財産(残高)であって収入ではない。収入だと、これに使った分(どのくらい使うんだろう?)がさらに上乗せされる。
これは企業の内部留保じゃありませんよ。まったくの個人資産なんです。 この守銭奴連中から14兆円全額巻き上げたって、日本経済にはなんの影響もないんです。ほっときゃまた溜まってくるんです。

ちなみに2014年に消費税が3%アップされた。これにより消費税収入は5兆円上がった。そして15年度にはさらに2兆円増えた。

合わせて12兆円。その半分が40人の超富裕層のポッポに入ったことになる。
消費税
 

むろん、財務省が耳を揃えて差し出したわけではないが、日本経済全体としてはそういうことになる。日本経済にはそういう「吸い込み構造」があるのだ、というしかない。

あとに残されたのは消費税不況と、デフレと、国民生活の悪化しかない。

財務省の責任ではない、と言われればそれまでだが、それでは国民のお財布のことは誰が考え誰が実行するのであろうか。

民主党の財政幹部で消費税の旗振りをした藤井裕久氏はこう言っていた。

消費税を広く浅く積み上げて、これを社会的弱者のために用いる。そうすれば内需は喚起され、結果として財政再建を成し遂げながら、所得の再配分を実現できることになる。

しかし、社会的弱者のためにそれが用いられることはなかった。藤井氏はそれを非難するが、率直に言ってその保証は何ら取り付けられていなかった。

アベノミクスは逆に経済を金融面から揺り動かすことで景気を回復し、もって弱者に滴り落ちる分配を増やし、内需を拡大しようとした。しかしそれも「吸い込み構造」への対応なく、弱者への再配分の保障なく行われ、結果として膨大な国債と膨大な日銀券を残したのみという結果に陥った。

それがこのグラフに示されている中身だ。
 もご参照ください。

赤旗の記事(時事通信の配信)だけでは、なんとなく背景が曖昧だ。

少しネットであたってみよう。

まずはウィキペディアでHSBC ホールディングスの項目を読む。

HSBC.svg

イギリスに本社を置く世界最大級の金融グループで、商業銀行が主体となっている。

フルネームは“The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited”でその名の通り香港を発祥の地としている(93年にロンドン移転)。

イギリス部門の収益源に占める比率は20%であり、最大の収益源は香港部門(22%)である。

08年にはフォーブスの世界有力企業番付でアメリカ勢をおさえ1位となったこともある。1位全世界の店舗数は2006年末で1万店舗を超えている。2兆米ドルを越える総資産を持つ。


ついでニューズウィークの記事(2月19日)

HSBC秘密口座で世界に激震

脱税幇助の実態を記した機密文書「スイスリークス」が明らかに

1.国際調査報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)が、いわゆる「スイスリークス」に関する調査の結果を発表した。

2.不正が疑われる口座の残高は1200億ドル(約14兆円)。その大半は脱税がらみだった。

3.不正を行ったのは、スイスにあるHSBCのプライベートバンキング部門。国際税法の抜け穴をくぐり抜けるサービスを提供していた。HSBCが脱税指南を行ったのは203ヶ国で10万口座に上るとされる。

4.手口としては、個人の顧客を企業として登録する、オフショアに未申告の「ブラック口座」を開設するなど。顧客側も偽名使用を指示するなど、積極的に関与していた。

5.「スイスリークス」とは、2008年にHSBCの元従業員エルベ・ファルチアニが内部情報をリークした事件。通報を受けたフランス当局は、データを各国に提供し10カ国以上の税務当局が捜査に乗り出した。

6.HSBCは12年にも、メキシコの麻薬カルテルなどのマネーロンダリングに関与した。その額は約20億ドルに上る。この時は米司法省と和解が成立した。

7.顧客リスト上の有名人はティナ・ターナーやデビッド・ボウイ、ラシド元エジプト通産相など。


9日付のWSJは背景をかなり明らかにしている。

1.昨年、スイス検事総局はファルチアニを産業スパイや銀行秘密法違反で起訴した。国際手配に基づきスペインで逮捕されたが、スペインの裁判所は身柄送還を拒否している。

2. 2月7日に、ファルチアニは ICIJ に対し、HSBCによる秘密口座の秘匿法について詳細な報告書を提供した。

3. この報告書は、HSBCが税当局から資産を隠すための効率的な方法として積極的に口座を売り込み、さらに顧客に居住国で税金を払わずに済ます方法を指南したと指摘した。

4.また、HSBCが米国の制裁対象者や「アラブの春」で本国を追放された人々を顧客に抱えていたことも明らかにする。

5.2月9日、HSBCスイスのモッラCEOは、「2008年に大規模な変化に着手し、厳密な法令順守を徹底した。基準に合わない顧客の口座は閉鎖した」とし、過去の問題だと弁論。


その後のニュースを拾っていくと、

* スイスHSBCのオフィスにスイス検事局の数人が入り捜査を行った。検察当局は「HSBCが捜査対象になった。資金洗浄を行った個人に捜査が及ぶ可能性もある」と述べた(18日 ブルームバーグ)

* 昨年11月、フランス検察当局、脱税で得た利益のマネーロンダリングに加担した疑いでHSBCを捜査していることを明らかにする。米司法省も秘密口座を通じて脱税をほう助したとして捜査対象としている。(9日 WSJ)

* 13日、イングランド銀行(英中央銀行)、「HSBC 疑惑は同社の取引について深刻な問題を提起している」と指摘。中銀が調査する可能性を示す。

* HSCBホールディングスのフリント会長が英議会の喚問を受ける。不倫と会長は事件発覚時の財務担当取締役であり、責任が追求される可能性がある。S&Pは危機時に政府が支援する可能性が低下したとし、HSCBの格付けを引き下げる(20日 ブルームバーグ)

これはかなりの大ニュースだ。

イギリスの大手銀行HSBCが多くの富豪の脱税を幇助していたことが明らかになった。

まずはアカハタ報道から。

1.HSBCはイギリスの金融大手である。

2.2007年に流出した顧客名簿の内容が今回明らかにされた。

3.同時に、HSBCがスイスの子会社を通じてこれらの富豪に脱税や資産隠しを“指南”していたことも明らかになった。

4.HSBCは謝罪広告を出し、スイス子会社の口座数を7割削減したことを明らかにした。

5.HSBC会長は、07年当時イギリス政府の貿易投資相の座にあった。このためキャメロン首相の任命責任が問われている。

というのがFacts。

これに顧客の一部が紹介されている。

アサド・シリア大統領のいとこ、李鵬・中国元首相の娘、アフリカの“血のダイアモンド”の輸出業者、アルカイダへの資金提供者など
ほかにもスポーツ選手、俳優、王族といった世界各地のセレブから、テロ組織や紛争の関係者までふくまれている。

…ということである。

この中でもとびきりの衝撃は李鵬の娘だろう。中国はこの情報に感づいていた可能性がある。汚職摘発の手はいまや明確に李鵬を標的としており、その近辺に及んでいる。

李鵬が失脚すれば(畳の上で死なせたくはない)、それは天安門の再評価につながってくる。ということで、こちらも目が離せない状況になってくるようだ。

本日の赤旗経済面 「変貌する経済」の②は「税逃れ」と題されている。
いくつかの数字が挙げられているのでメモしておく。
1.最初は今年1月に出されたオックスファムのレポート
この中での試算では、
人口の1%を占める富裕層の富は110兆ドル。円にすると1京円を超す天文学的数字だ。
その勢いは留まるところを知らず、日々記録は塗り替えられつつある。
2.次はアメリカの民間研究機関グローバル・フィナンシャル・インテグリティーのレポート
“途上国からの不法な資金流出”の額は年間9467億ドル(約100兆円)
これは2011年の数字であるが、流出額はこの10年間、毎年10%以上伸びている。
本レポートは以下のように総括している。
“途上国からの不法な資金流出”の要因は三つある。それは犯罪、汚職、課税逃れである。
これはもっとも衝撃的な経済問題である
3.記事はその金がタックスヘイブンに流れているとし、合田寛氏の言葉で締めくくっている。

タックスヘイブンは、グローバル経済の奥に潜み、世界の富を操り、投機マネーがうごめく場となっている。
そして誰も十分に規制することができないでいる。

窺うところ、この記事は合田さんの論文のなぞりではなかろうか。そのうち合田さんの文章を探してみよう。



去年暮、12月23日にイタリアで「グーグル税」が成立した。

どういう税かというと、
グーグルなどのインターネット広告業がイタリア国内で広告を出す際には、国内企業による仲介を義務化するという方法だ。
こうすると広告料収入はいったん仲介企業を通過することになる。
仲介企業は本来なら手数料を得るだけなので、広告料収入全体に課税されれば大損でやっていけない。
どうするか、
当然、税金分をグーグル本体に付け回しすることになる。

イタリア税務当局としては米国のグーグルにも、アイルランドのグーグルにも指一本触れていないわけだから、アメリカやその他の国からとやかく言われる筋合いはない、ということだ。

まぁしかし、成立はしたものの実際にやれるかどうかは、そう簡単ではないだろう。なにせEUから大量の金融支援を受けている身、EUから「おかしいんじゃない」と言われて押し通せるかどうかだ。

案の定、欧州委員会は「域内市場での差別的取扱いを禁じたEU法に抵触する可能性がある」として「深い疑念」を示したそうだ。

多国籍企業も、「イタリア市場からの撤退」も示唆するなど脅しをかけている。

金融取引税はかなり進行しているが、租税回避に対する対策は遅れている。しかし技術的には、金融取引税よりこちらのほうがはるかに単純で容易だ。額もあまり大したものではないから、抵抗もさほど強くはない

経過次第によっては、あっという間に世界中に広がる可能性もある。


Googleの脱税手口として有名になった言葉だ。

喫茶店のモーニング・サービスのセット・メニューみたいだが、飲めもしないし、食えもしない。強烈な腐臭を放っている。

出処は本庄さんの「導管」論文の最後の部分だ。


グーグルのタックス・スキームは、“ダブル・アイリッシュ&ダッチ・サンドイッチ”と呼ばれる。

それは下記の記事によれば、以下のように要約することができる。

(Jesse Drucker: “The Tax Haven That's Saving Google Billions” Bloomberg Business week 2010 年10 月21 日号)

1. 米国親会社はアイルランド子会社とライセンス契約を結ぶ。この子会社は「グーグル・アイルランド・ホールディング」と呼ばれる。

2. この子会社は、アイルランドで設立された法人であるが、バミューダで支配管理されている。このためアイルランドでは非居住法人となる。

3. 米国親会社は、もう一つのアイルランド子会社を持っている。この子会社は「グーグル・アイルランド」と呼ばれる。

4. 「グーグル・アイルランド」社は、ダブリンの中心に本店を持ち、約2000 人の従業員を雇用している。「グーグル・アイルランド」社は、グーグルの海外営業の88%を担っている。

5. 「グーグル・アイルランド」社は、バミューダにある「グーグル・アイルランド・ホールディング」社に5.4億ドルの使用料を支払っている。このため税引前利益の額は、売上高の1%未満しかない。

6. アイルランド法人税の課税標準税率は12.5%であるが、この「支払使用料」という名目の利益移転により、租税を回避している。

7. アイルランドは、バミューダなどのタックスヘイブンに支払使用料を払うのに際し、源泉徴収税を課している。これを回避するため、使用料はオランダを経由して支払われる。

8. 米国親会社は、上記の目的のためオランダにも子会社を設立している。この子会社は「グーグル・オランダ・ホールディングスBV」と呼ばれる。オランダ子会社には従業員はいない。

9. 「グーグル・オランダ・ホールディングスBV」社は、アイルランド子会社の「グーグル・アイルランド」社から、使用料5.4億ドルを無税で受け取る。そしてその99.8%をバミューダの「グーグル・アイルランド・ホールディング」社に支払っている。

2006 年にグーグルは課税問題で米国内国歳入庁(IRS)と交渉し、ひとつの合意に達した。これはグーグル社の知的財産をめぐる問題であった。知的財産を外国にある子会社に供与することになり、その対価をどう扱うかに焦点が当てられた。

グーグル社が編み出したスキームとは、以下のとおりである。

グーグル社は、自社で開発したオンライン検索の技術、および広告に関する技術のライセンスを保有している。このライセンスを外国子会社に供与する。外国子会社はこのライセンスを用いてサービスを行い使用料を得る。この使用料を開発国(米国)に還流させれば35%の課税対象となるが、実際に入ってくるのはライセンスの供与料のみとなる。

これを「移転価格」(transfer pricing)操作と呼ぶ。

このタックス・スキームは、関係国(アイルランド、オランダ、バミューダ、米国)の税制の規定には抵触しないように仕組まれている。法的にはぎりぎりのところであるが、倫理的には真っ黒である。

グーグルの企業モットーは、“Don’t be evil” であるだけに、“Is Google’s tax strategy evil ?” という疑問や “Google’s evil tax dodge” という批判が出ている。また企米国内国歳入庁(IRS)の合意を獲得したことに対しては、“Google eats the IRS for lunch” と皮肉が囁かれている。

グーグルの広報筋は、「グーグルと似たスキームを多くのグローバル企業が行っている」と主張している。つまり企業努力の一環と言いたいようだ。たしかに「多くのグローバル企業が行っている」ことは間違いない。

開示された企業情報からも、アップル、マイクロソフト、アイビーエムなどテクノロジー関連企業が、似たようなスキームで、海外所得に対する実効税率を4.5%~25.8%に引き下げている。マイクロソフトはグーグルと同様にアイルランドからバミューダへの移転価格操作を行っている。フェイスブックは、アイルランドからケイマン諸島だ。

2009年、財務省は外国子会社に対して課税する提案を行った。内容は、外国収益の海外における移転を許容するループホールを塞ぐこと、外国子会社間の一定の支払に対して課税することである。この提案はジェネラルエレクトリック、ヒューレットパッカードおよびスターバックスなどの企業によるロビー活動によって押しつぶされた。

2010年2月にオバマ政権は多国籍企業に課税する提案を行った。今度の提案は、企業のオフショア所得移転と、外国子会社とタックス・ヘイブンとの移転操作に対する課税を打ち出した。ロビーストがキャピタル・ヒルに群がり、この提案も押しつぶされた。

巨大な多国籍企業の見解として「税負担が5%程度に引き下げられるならば、タックス・ヘイブンの資金を米国に戻してもよい」という言葉が報道されている。

 

使用料導管と金融導管 導管脱税の二つの手口

かつて「入鉄砲と出女」というシステムがあった。江戸時代の話である。五街道と呼ばれる主要道にはそれぞれ関所があり、江戸に向かうものに対しては鉄砲を持ち込まないか、江戸を離れるものに対しては女(幕府の人質)を連れ出さないかをとくに厳しく吟味したそうだ。(うろ覚えだが…)

この関所を何とかかいくぐろうというのが租税回避であり、導管国というのは、そのための裏街道にあたる。

導管国を使った関所破りのうち「出女」にあたる手口が使用料導管であり、入鉄砲にあたるのが金融導管である。

以下は本庄さんの論文から


親会社はオランダにペーパーカンパニーを立ち上げる。このペーペーカンパニーは法的主体ではあるが、経済的実質はない。

この法的主体が行うのが、トリーティ・ショッピングと呼ばれる「条約」を利用した合法的脱税である。(既述)

これは具体的には、(i) 使用料導管スキームと (ii) ファイナンス導管スキームに分けられる。

オランダ自身はゼロ税率または低税率の管轄でない。各国のタックス・ヘイブン対策税制においても必ずしもタックス・ヘイブンとされていない。

多国籍企業はこの点に着目した。

まず、利子や使用料の導管としてオランダ子会社を使用する。親会社は他国の子会社の所得をオランダ子会社に移転する。そこからオランダ経由でバミューダ等のピュア・タックス・ヘイブンの子会社に移転する。

これによりオランダ子会社の利益は限りなくゼロに近づくから、親会社は課税を免れることができる。

次に、ピュア・タックス・ヘイブンから所得を持ち出すために、金融導管(financing conduits)が用いられる。これを使うと、ピュア・タックスヘイブンに持ちだされた資金が、無税または低税率で手元に入ることになる。

そのからくりを簡単に説明すると、

タックス・ヘイブンに蓄積された利益はそのまま還流させたのではダメだ。たとえば親会社に配当の形で支払われる場合、受取配当は親会社の居住地国で課税されてしまう。それではタックス・ヘイブンに所得移転したメリットがない。

そこで登場するのが再投資というスキームだ。すなわちタックス・ヘイブン子会社に蓄積した利益を、親会社や他国の子会社への出資もしくはローンの形で再投資するというスキームを用いる。

一般にどの国でも投資は歓迎され、優遇される。ほとんどが無税だ。したがって、このスキームにより、タックス・ヘイブンから無税で資金が他国に移転される。

さらに、これがオランダ導管を通じるローンの形をとる場合は、投資や融資に係る利子分が配慮され、当該親会社や他国の子会社等の法人税を減らすことになる。

さらに当該利子に対する源泉徴収税をオランダ租税条約により減免することができる。

「一粒で二度美味しい」というのはグリコの宣伝だが、この再投資スキームは三度美味しいということになる。

(文章がえらく難しいので、誤解があるかもしれません)


トリーティ・ショッピング(既述)と書いたが、このページから入ってくる人も多いと思うので、簡単に解説しておく。

たとえば日本の法人がタックスヘイブンのトンネル会社に、貸付の形で利益を貯めるとします。当然、日本の法人はその利子を受け取ることになります。

日本とタックスヘイブンとの間には租税条約(トリーティ)が存在しないので、トンネル会社が払う利子に対しては、ほぼ無税となります。

しかし利子を受け取る側にも税金が課せられるので、日本で使おうとする限り、あまり意味はありません。

ここまでは当たり前の話です。

そこで、日本の法人がタックスヘイブンと租税条約を締結している第三国(この場合はオランダ)に子会社を作るのです。

この租税条約は、タックスヘイブンから振り込まれた利息への課税について、軽減税率を適用しています。

日本の法人はオランダの子会社あてに利子を振り込ませます。これで日本での税率との差額を手に入れることができます。

このように各国の条約の差を利用した租税回避策を「トリーティ・ショッピング」と呼びます。

第三国は利益を吸い上げるパイプ(導管:Condue)の役割をしているので導管国と呼ばれます。


 「導管国」って?
「導管国」をめぐる問題 その1
「導管国」をめぐる問題 その2
「導管国」をめぐる問題 その3
「導管国」をめぐる問題 その4

第5章 オランダの隙間戦略

オランダの導管戦略の経過

オランダはみずから資本フロー導管国となる道を選択した国である。歴史的に国際貿易・外国投資が重要な役割を占め、最大の産業は金融・流通を中心とするサービス産業である。

「持株会社」を誘致するための税制により、世界市場における隙間戦略を展開し、多国籍企業の租税回避の「導管国」としての評価を確立した。

1970年代に多国籍企業のグループ金融会社の為替規制の自由化を行い、いわゆるmailbox companies を作ることを認めた。

1983 年にはオランダ中央銀行が「特別金融機関」(脱税のためのトンネル会社)の登録を開始した。

カリブ海の旧オランダ領アンティルスを利用した「オランダ領アンティルス・ルート」が盛んに売り込まれた。アンティルス法人のオランダ源泉徴収税はほぼゼロまで軽減された。

もちろんアンティルスはゼロ税率のピュア・タックス・ヘイブンである。(2010 年10 月10 日に解消)

これを利用した租税回避スキームは「ダッチ・サンドイッチ」あるいは「アンティルス・ルート」と呼ばれた。

このルートは欧米からの出口ルートとして広く利用されるようになった。多数の大企業がオランダにヨーロッパ統括会社やグローバル統括会社その他の持株会社を設立するようになった。

第6章 オランダの法人税制の特色

この節は面倒なので省略する。まとめのところだけ。

・利子および使用料については源泉徴収税を課さない

・オランダに籍をおく親会社が外国子会社から受け取るすべての利益は、オランダでは免税となる。

・オランダにおいて短期的に雇用される外国人には免税報酬制度が適用される。

第7章 オランダを導管国とする仕組み

オランダは居住法人に25.5%の税率で全世界所得課税を課している。これでは何の面白みもない。しかし多国籍企業のグループ内部取引にオランダ籍の会社を設立すると、俄然話が変わってくる。

多国籍企業は外国子会社の所得を無税でオランダに持ち込み、これをピュア・タックス・ヘイブンの子会社に無税でチャンネルすることが可能になる。

この「ゼロタックス・スキーム」を可能にするのが、税法体系上の (i)グループ税制、(ii)参加免税、(iii)利子・使用料の非課税、(iv)投資所得に対する源泉徴収税の不適用、(v)租税条約網などの免税・非課税措置群である。

統括会社はペーパー・カンパニーっでなく企業活動の実体を持つことがもとめられる。それなりのテラ銭は払えというわけである。

とはいっても、統括事業の8割は信託事務所が代理している。主たる機能は、オランダの法的主体にこれに「住所」を与え、法的な実体を与え、「経営管理」機能を果たしている。

オランダが導管国となるメリットとデメリット

メリット

(i) 約2万のmailbox companiesにより金融専門家、会計士および法務・税務助言者の専門職が増え、雇用機会の創出に役立つ。

(ii) mailbox companiesからの税収の確保につながる。「利子」の一部がオランダに残る。2001 年統計では12億ユーロが税収として、5 億ユーロが会社の管理費としてオランダに落ちている。

(iii) アムステルダムの「金融センター」としての地位を高める。アムステルダム証券取引所は世界最古の証券取引所である。

(iv) 主たるグループ活動(生産、研究開発および貿易)のオランダへの誘致を刺激する。

デメリット

(i) mailbox companiesの設立を促進することは、多数のダーティ・ビジネスを引き付ける

(ii) 多国籍企業の公害、破産または詐欺に係る訴訟はオランダで行われ、司法コストとなる。

(iii) 利益隠しのシステムは、あらゆる種類の違法活動収益の洗浄を隠す。

第8章 オランダが人気のある理由

第7章で挙げた(i)グループ税制、(ii)参加免税、(iii)利子・使用料の非課税、(iv)投資所得に対する源泉徴収税の不適用、(v)租税条約網などの免税・非課税措置群のうち、参加免税と租税条約網について詳説している。

省略する。

「導管国」って?
「導管国」をめぐる問題 その1
「導管国」をめぐる問題 その2
「導管国」をめぐる問題 その3
「導管国」をめぐる問題 その4

第4章 最近の多国籍企業のグローバル実効税率引下げスキーム

大変長い題名だが、要は多国籍企業の“脱税”の最近の手口ということだ。面倒なので「」をつけないで脱税と書くことにする。

1. 脱税への欲望

多国籍企業の本籍地は先進国だ。先進国は一般に税が高い。途上国が企業を誘致するために税金を安くするからだ。

最近、先進国では国外所得免除でなく全世界所得課税原則を採用している。外国税については控除により救済されるが、国外所得に対して自国の高税率を適用される。

したがって多国籍企業は税負担を最小化するために、税法の抜け穴を探し求めることになる。これをタックス・スキームという。(税の裏ワザというべきだろう)

A 高税率の国内源泉所得に該当すべき所得をタックス・ヘイブンに隠す  「領土主義課税原則」の抜け穴

前の章でも述べたように、「領土主義課税原則」においては、税金の安い国に支店でなく子会社を作れば税金はかからない。海外利益を集中するだけではなく、国内利益もさまざまな方法により移転可能である。

「税金の安い国」と言っても税金はかかる。タックス・ヘイヴンならほとんどただである。どうせならそちらにカネを集中したほうが良い。

しかし外国子会社をタックス・ヘイブンに設立する場合、タックス・ヘイブン対策税制が適用される可能性がある。そうすると合算課税が行われ、かえって高く付く。これを避けるためには、タックス・ヘイブン以外の国に子会社Aを設立し、そこからタックス・ヘイブンに設立した別法人Bへ所得移転を行えばよい。

B ステップ国を経由することで、外国子会社の高税率の適用を避ける

「税金の安い国」と言っても税金はかかる。できれば下げたい。そこで「課税ベース」の縮小を図ったり、種々の租税優遇措置の減免を受ける。名目は支払利子・支払使用料・支払リース料・支払報酬などなんでも良い。

これらの便宜を積極的に提供してくれる国がある。損金控除を容易に認容してくれるので、タックス・ヘイブンへの所得移転のためのステッピング・ストーンとして役立つ。このためこれらの国に、持株会社Cを設立することになる。

利益は進出先の国の事業会社A社から、便宜国の持株会社C社に移り、そこからタックス・ヘイヴンのB社へと移転することになる。これで多国籍企業の本社のある国は手も足も出ない状況に陥る。

C ステップ国の手口

ステップ国の税制上の特徴は、受け取る所得に課税しないこと(ストップ・オーバー)、その所得をピュア・タックス・ヘイブンへ無税で移転できることである。

この二つが可能な国がアイルランド、ストップ・オーバーが可能な国としてオランダが上げられ、この2カ国を利用する手口を「ダブル・アイリッシュ&ダッチ・サンドイッチ・スキーム」と呼ぶ。最近では持株会社の立地条件を整備している英国の法人税改革の動きが目立っている。

このうち、国際的タックス・プランニングの一典型であるオランダに焦点を当て、わが国のタックス・ヘイブン対策税制で挑戦することができるかどうかについて考察する。

「導管国」って?
「導管国」をめぐる問題 その1
「導管国」をめぐる問題 その2
「導管国」をめぐる問題 その3
「導管国」をめぐる問題 その4

ということで、ここまでが長い「はじめに」だ。ここから本文に入る。

第1章 タックス・ヘイブン対策税制の変遷

(はじめの部分省略)

A 1978年特別法と外国法人への課税

わが国の税法では、内国法人については海外支店もふくめ課税している。しかし外国法人(子会社)については国内所得のみに課税している。

したがって外国子会社がタックス・ヘブンに所得を移転しても、それに課税することはできない。

これに対し特別法が導入された。

この特別法は外国法人の収入を、形式的には特定外国会社の所得であるが、実質的には親会社の収入とみなして課税するという論理になる。

この法律の有効性は最高裁で確認された。

これによりタックス・ヘイブン子会社(特定外国子会社)の課税対象金額を、株主である内国法人の擬制収益・擬制配当として課税できるようになった。

B 外国子会社配当益金の不算入制度

2009年の税制改正で、「外国子会社の配当益金不算入制度」が導入された。これは日本企業の国外所得を日本に還流させるための環境整備の一環である。

名前からしてえらく面倒くさい制度だが、中身はそれ以上に面倒だ。原文をそのまま書き写す。

内国法人が外国子会社から受ける剰余金の配当等の額からその剰余金等の配当等の額に相当する額(剰余金の配当等の5%相当額)を控除した金額を益金不算入とすることができる

分かりますか?

結論からいうと、

この税制改正により外国子会社からの配当は実質非課税となった。特定外国子会社にも制度が適用されることになった。

ということだそうだ。

要するに、「タックス・ヘイヴンに貯めておいたら税金とるけど、国内に戻すなら税金ただにしますよ」、ということだ。

企業にとっては実に至れり尽くせりだが、変な話だ。タックス・ヘイヴンの隠し金への課税をもっと厳しくすれば済む話ではないか。

著者も、この「不算入制度」を婉曲に批判している。

外国子会社配当を非課税とした結果、外国子会社の利益留保も課税繰延に該当しなくなった。(1978年の)タックス・ヘイブン対策税制は、課税繰延を利用した租税回避の防止で (あったはずなのに、非課税にしてしまったら)説明することができなくなる のではないか。

タックス・ヘイブン対策税制の趣旨が変質したと解する説もみられる

それで税務当局の目下の苦し紛れの言い分はこういうことだ。

わが国企業が国際競争力を維持するため実効税率の引下げのためにタックス・ヘイブンを利用する健全な企業活動を阻害せず、租税回避のみのためにタックス・ヘイブンを利用する行為計算を否認する

そう言っている本人の苦虫を噛み潰したような顔が思い浮かばれる。


第2章、第3章は技術的な問題についての説明なので、省略し、第4章 「最近の多国籍企業のグローバル実効税率引下げスキーム」に移る。

「導管国」って?
「導管国」をめぐる問題 その1
「導管国」をめぐる問題 その2
「導管国」をめぐる問題 その3
「導管国」をめぐる問題 その4

オフショア事業・投資拠点とオフショア・タックス・ヘイブンとの間に介在する「導管国(a conduit country)」をめぐる国際課税

-実効税率引下げ競争に利用されるサンドイッチ・スキーム-

名古屋経済大学大学院教授

本 庄 資

税大ジャーナル 17 2011. 10

という長い題名の論文があって、文章も相当長い。44頁もある。多分素人で読む人は殆どいないだろう。

なんとか抄読を作ってみようと思う。

◆SUMMARY◆

1.先進諸国では2000年以降、法人税の減税を中心とする「有害な税の競争」(a harmful tax competition)が行われた。

2.欧州ではさらに、多国籍企業の租税対策に対応して「税金ゼロ」をオファーする競争が始まっている。

3.持株会社誘致を目的とする「魅力ある税制」の典型がオランダである。オランダはいまや事業拠点とタックス・ヘイヴンを結ぶ「導管国」(a conduit country)となっている。イギリスもその後を追っている。

4.このような「導管国」を利用した実効税率引下げ法はダッチ・サンドイッチ・スキームと呼ばれる。(ダッチはダッチワイフのダッチ)

はじめに

1.日本のタックス・ヘイブン対策

1978年の税制改革: 海外会社を通じて稼得する国外所得は二つある。このうち外国支店の利益には日本で課税される。いっぽう外国子会社の利益は日本に配当として還流されない限り、日本では課税されない。後者を「課税繰延」(tax deferral)と呼ぶ。

この時の政府税調答申では「近年、いわゆるタックス・ヘイブンに子会社等を設立し、税負担の不当な軽減を図る事例が見受けられる。このような事例は、税負担の公平の見地から問題のあるところであり、…所要の立法措置を講ずることが適当である」とされる。

2.米国のタックス・ヘイブン対策 「サブパート F」

進出形態にかかわらず、課税は国内投資と同様に行うべきである。国外所得の課税繰延は原則として認められない。

これはケネディ大統領の時代に確立したものである。ケネディは「世界中のタックス・ヘイブンに設立した外国子会社に課税繰り延べの特典を与える必要はない」と主張した。

これを受けた議会は、タックス・ヘイブンにおける外国子会社の国外所得を「汚れた所得」(tainted income)とし、合算課税を行う「サブパートF所得」制度を創設した。

これが世界初のタックス・ヘイブン対策税制といわれる。

サブパートF は、ブラック・リスト等による地域限定方式を採らず、「議決権または株式の50%以上を米国人が所有する外国法人」と定義された。

そして所得限定方式により「汚れた所得」(tainted income)を算出し、該当米国人の総所得に算入する。

3.租税回避の定義

その後、多くの国がタックス・ヘイブン対策税制を導入したが、制度の趣旨・目的、内容はさまざまである

外国子会社がその所得を親会社に配当するか否かは各企業に委ねられている。配当しなければ、租税効果としては親会社に対する課税は繰り延べられることになる。そのすべてを「租税回避」だとはいえない。

私的自治の原則から世界のどの国・地域に子会社を設立することも合法的に認められている。そこでの税負担が日本に比して著しく低い国・地域に子会社を設立したという理由だけで、懲罰的税制を課すこともできない

では、タックス・ヘイブンに設立した外国子会社に所得を移転し留保するにあたって、どのような場合に租税回避となるのか。

日本の税制(旧措法66の6④)は、①子会社が独立企業としての実体を備えていない場合、②該当国において事業を展開する経済的合理性が認められない場合、など5つの場合について合算課税を行うこととなっている。


ということで、ここまでが長い「はじめに」だ。ここから本文に入る。

「導管国」って?
という解説が載っていた。
初耳だ。
赤旗「けいざいQ&A」によると
多国籍企業が所得をタックスヘイブンに移転させる際、資金を経由させる国のことです。
とある。
具体的には、スターバックスの“節税”で有名になったオランダがそれに該当するらしい。
1.オランダに「親会社」を作る。
2.他国の子会社の利益を集約する。
ここまでは分かるが、
3.オランダの「親会社」は、さらにタックスヘイブンに資金を移動する。
という。
つまり抜け穴の奥にもう一つの抜け穴があるという寸法だ。金沢の忍者寺並みの、手の込んだ手法だ。

この場合、オランダは“節税”の最終地ではなく、“脱税”の出発地なのだ。闇の世界へとつながる「導管」なのだ。

たしかに、スターバックスの脱税事件のとき、オランダは低税率だからとは思ったが、最終的にその利益をどうするのだろうと思ってはいた。

その奥にもう一つのからくりがあったのだ。

しかしいかんせん、このコラムの説明は簡略に過ぎて良くわからないところもある。

もう少し、そのからくりを洗ってみるとするか。
また宿題が増えた。
「導管国」って?
「導管国」をめぐる問題 その1
「導管国」をめぐる問題 その2
「導管国」をめぐる問題 その3
「導管国」をめぐる問題 その4

金子記者の署名入りコラムで、サンクトペテルブルクG20の首脳宣言を紹介してくれた。

1.厳しい財政や社会的困難の中で、すべての納税者が応分の税を払うことはかつてないほどの優先課題となっている。(応能負担の原則)
2.経済活動が行われ、価値が創出される場所で、利益が課税されるべきである。(発生源主義)
3.多国籍企業は、低税率の国に利益を移転することによって税額を削減している。これを国際的課税ルールは許容もしないし奨励もしない。(租税回避への不寛容)
4.足の早い所得への効果的な課税は主要な課題の一つである。(金融取引税など)

()内はわたしのつけた見出し


このG20宣言を踏まえるならば、「世界で一番企業が活動しやすい国を目指す」という安倍首相の言葉は、一種の世界に向けた「抜け駆け宣言」ではないかと疑われる。

記事の本筋は、経団連がG20宣言にクレームをつけたことに話を持って行くが、これだけ調べたのなら、そのまえにG20宣言の方向性をきちっと確認したほうが良いと思う。

「シリーズ 現代の視点」というシリーズを学芸面でやっていて、今回は横浜市大の上村さんという経済学者のインタビュー。
いくつかの数字が載っているので紹介する。

1.2006年のデータで、金融取引が実体経済の13倍に膨れ上がっている。

2.世界のたった1%の人が、すべての富の40%を握っている。

3.タックスヘイブンなどの「影の経済」に秘匿されているおかねは、08年のデータで、世界全体で1150兆円となっている。それにきちんと課税すれば65兆円の税収になる。

4.EUの金融取引税は、株式や債券取引に0.1%、デリバティブ取引に0.01%を課そうとしている。これにより4兆円前後の税収が見込まれる。

これらの数字のいくつかは、これまでもブログで取り上げてきたし、金融取引税についても触れてきた。

ただ、こうやって4つの数字にまとめることで話がわかりやすくなるかもしれない。


日本の財政は税収その他で46兆円、新規国債44兆円という形で賄われている。
そして「財源がない、ない」と騒いでいる。
どころで、ケイマン諸島への投資残高は55兆円だ。長年かけて積もってきたというならまだ分かるが、10年前は19兆円だから毎年4兆円づつ増えている。これらの資産が税金としてきちっと収められていれば、消費税は引き上げなくて済む計算だ。
嬉しい事に、この金は死に金だから実体経済にダメージが出る恐れはない。つまり日本経済へのマイナス影響はないのだ。
悲しいことに、この金を吸い上げる法的手段は今のところない。客観的に見て明らかに不正行為ではあるが、違法行為ではない。それが「規制緩和」ということだ。
だから「脱税ではなく節税だ」と、彼らはうそぶくのである。

赤旗を5日間もためてしまった。本日はその作業から。

最初は対外直接投資残高が1兆ドルを超えたというジェトロのレポート。

96年の同残高が2590億ドルだから4倍に増えた計算。

これには二つの意味がある、一つは海外進出であり、もうひとつは租税回避である。

投資先を地域別に見るとそれがはっきりする。

北米29%、アジア28%は海外進出の加速の表現であろう。

しかし、投資元を産業別にみると、08年のリーマン・ショックを境にして、非製造業の投資残高が製造業を上回るようになっている。

ここには商業施設等の海外進出もふくまれるが、投資という名の資金逃避の色彩が濃厚となってくる。

その象徴が中南米への投資残高の異常な伸びである。対中南米向け投資は96年に比べ10倍の1200億ドルに急増している。

中南米と言ってもピンとこないだろうが、ケイマン諸島である。対ケイマン投資が半分以上を占めているのだ。

同じことが対ヨーロッパ投資にも言える。2500億ドルの対欧州投資の4割近くをオランダが占めている。

オランダといえば、英国スターバックスの脱税の舞台となった国である。多国籍企業を呼び込むために子会社を作らせ、海外からの送金に優遇措置をとっている。いわば大企業の脱税(綺麗に言えば租税回避)を国を上げて奨励している国である。

大企業の優遇が日本のためにはならないことが、ますますはっきりしてきた。国民としての立場をはっきりさせなければならない。そのためにはまずTPPをぶっ潰すことだ。

と言った舌の根も乾かぬうちに、すぐ訂正。

Hashigozakuraさんが良い情報を提供してくれていた。 このブログは参議院土壇場のバタバタを巡る情報でもお世話になった。

アップル、アイルランド使った節税 

事実上の「二重非課税」

(日経 2013/6/3)

という八十島綾平記者の署名記事だ。以下、記事の要旨。

ポイントは大きく3つある。

1つめは、税率を下げて企業を誘致してきたアイルランドに、海外の利益を集めることだ。

アップルのアイルランド子会社(ASI)が、元卸業者となる。これを高めの価格で欧州、アジアなど海外拠点に販売する。そうすると利益のほとんどがアイルランドに集まり、他の海外拠点はほとんど利益が出なくなる。

2つめは本社とASIが知的財産の研究開発コストを分担することだ。ASIは本社よりも多くコストを負担する。それに見あって利益の取り分も増える。知財が生む付加価値が大きいほど海外に利益がたまる。

3つめは、子会社を税法上の無国籍に近い状態としたことだ。
米国は設立地が国内の会社に課税し、アイルランドは国内に経営機能がある会社に課税する。
そこでアイルランドに設立した子会社は、米国に経営実態を置く形にすれば、どちらの国からも基本的に課税されなくなる。
つまり「二重非課税」に近い状態となる。

米上院が特に問題視したのはこの三つ目のポイントだ。たしかに多国籍企業が、無国籍企業になるというのは由々しい問題だ。

しかし、この文章、何か見たことがある文章だ。

チェック・ザ・ボックス規則

米国には、こうした課税逃れに網をかける「タックスヘイブン対策税制」がある。アップルはこの対策として別の抜け穴を組み合わせた。通称「チェック・ザ・ボックス規則」の活用だ。

ということで、以下は「チェック・ザ・ボックス規則」を使った税金逃れの説明。(チェックザ・ボックスの説明は文末にあり)

①アイルランドにASIの“親会社”を設立。これを海外統括会社(AOI)と称する。

②ASIはAOIの子会社となる。そうすると「チェック・ザ・ボックス規則」の下では子会社は課税対象外となる。

③AOIも、税制の例外規定によって米国からは課税されない。(ここは「タックスヘイブン対策税制」がどういう規制で、何故、親会社を作るとそれをスルーできるのか、という知識がないとわからない)

当局との交渉でさらに切り下げ

アップルはさらにエグいことをやっている。

アイルランド課税当局との交渉で、公式税率(12.5%)をさらにまけさせ、実質2%以下に抑制した。

こうしてアップルは、グループ全体の実効税率を約25%まで抑えることに成功した。

日経新聞には、上記の説明をわかりやすくするために図表が載っているが、正直の所、もっとわかりにくい。

課税逃れ、OECDやG8も対策検討

これまでもケイマン諸島などのタックスヘイブンや、アイルランドなどの低税率国に利益や知的財産を集める節税策への対応は議論されてきた。

最近は、複数の制度を組み合わせることで生じる「当局が予期しない節税策」が重視されるようになり、これらは「税源侵食と利益移転(BEPS)」と呼ばれている。

また「チェック・ザ・ボックス規則」が問題の一端となっていることも認識されつつある。米国では数度にわたり規則を見直そうとしたが、反発を受けて頓挫している。

世界統一の課税ルールの実現が求められていることは間違いないが、話が進めば「取り分」をめぐる新興国勢との争いに発展する可能性もある。

OECDと国連は別々の国際課税ルールを提案しており、国連は源泉地国を重視している。

「かつては植民地として、今は知的財産権で搾取されている。税は現代の南北問題だ」。インドの税務当局者が日本の当局者にこう強調したという。


おなじHashigozakuraさんのページで、チェック・ザ・ボックスの説明もつけられている。日経「チェック・ザ・ボックス規則とは」からの転載のようだ。

チェック・ザ・ボックス規則とは  

米財務省規則の通称で、米国企業が海外に持つ拠点の税務上の扱いを二つのうちから選べるという、いかにもアメリカ的なルール。

(1)法人(課税対象)にするか(2)支店(課税対象外)にするかを質問シートに沿ってチェックを入れると自動的に判断される。

子会社であれば一般に米タックスヘイブン対策税制(CFC税制)により課税される。
しかし別の持ち株会社を設立して孫会社にしてしまえば、課税対象外となる。

この規則はタックスヘイブンにある孫会社まで対象にしており、問題と なっている。


アップル社の租税回避(Tax Avoidance)

率直に言って、日本語のネット情報は皆無である。新聞報道にちょっとした感想をつけただけの情報ばかり。

LIBOR 報道といい、ロンドン鯨といい、日本のネット評論家は本当に勉強しない人ばかりだ。

情報の範囲では、

①上院の調査委員会がアップルの租税回避のテクニックを調べ、レポートを発表した。

②そして、アップルの社長を呼んで公聴会を開いた。

③アップルの社長はどこが悪いと開き直った。そしてもっと税金を下げろと逆襲した。

④上院も倫理的責任以外には攻め手がなかった。中にはアップルをいじめると米企業の国際競争力が下がり、結局、米国のためにならないと主張する議員も出てくる始末だ.

なおNYタイムズによると、アップル社はそれ以前から州法の違いを利用して、租税回避作戦を展開しており、アイルランドはその延長上のオプションでしかなかったことが分かる。


2012年

5.10 NYタイムズ、米ップル社の11年度節税額が24億ドルに上ると報道。

①法人税率ゼロのネバダ州に金融管理会社を設立し、カリフォルニア州の法人税率8.84%を免れている。
②フロリダ、ニュージャージー、ニューメキシコなどでは州外業務を主とする企業は減税措置があり、これも利用している。
③利益を知財権へのロイヤリティーに集約し、利益の転移を容易にしている。

2013年

5.20 米上院の行政監察小委員会アップル社が海外子会社を使って、巨額の課税逃れを行っていたとする調査報告書を公表。 

報告書によると、アップルはアイルランドの子会社を活用し、2009年からの3年間に、740億ドルの利益を移転した。そのうち440億ドル分について課税を逃れた。
アイルランドはアップルの法人税率を2%に設定していた。通常は12.5%である。

5.21 米上院、公聴会にティム・クックCEOを呼び追及。

クックの証言: 「支払う義務がある税金は1ドルも欠けることなく支払っている」とした上で、「現行制度は、海外の利益を米国に持ち帰る企業にとって不利だ」と主張。「米国のグローバルな競争力強化」のため、税制改正と法人税の減税を促す。

5.21 ランド・ポール上院議員、アップル擁護の発言。「多くの米国市民がApple株を保有している。Mr. Appleを痛めつけることは、自分たちを痛めつけることだ」

5.21 マケイン上院議員はアップルを非難。「アップルは米国最大の納税者と称しているが、米国最大の脱税者でもある。米国国民の収入を意図的に剥奪している」

本日から3日間にわたり経済面に連載「タックス・ヘイブン 実像と対策」という記事が載る。筆者は政治経済研究所の合田さんという人。

1973年 神戸大学大学院経済学研究科博士課程修了。
同年、衆・参両議院公設秘書、政策秘書を務め、2004年退職。
2004年 (財)政治経済研究所主任研究員

という経歴の方である。

雑誌「経済」に発表された論文の要約らしい。

1回目の見出しは「税逃れ本丸、多国籍企業」というもの。

まず7月のG20でのBEPS対策、OECDの行動計画の解説から入る。

BEPS とは「税源侵食・利益移転」の意味で、タックスヘイブンを利用した租税回避の手法の体系を表す。

7月のG20の特徴は

1.明確に多国籍企業に焦点を当てた政策であること

2.多国籍企業の「悪意」を事実認識としていること

合田さんはこれをもって「やっと本丸を目指すたたかいが始まった」と表現している。

ここまでが序論で、以下タックスヘイブンを利用した租税回避の手口を紹介する。

1.知的財産権をタックスヘイブンの子会社に移し、特許使用料という名目で利益を送り込む。

2.移転価格を利用する方法。これは説明がよくわわからないが、スターバックスにおけるスイスの子会社を考えればよいのではないか。

英スターバックス社は、スイスのローザンヌにある子会社を通してコーヒー豆を購入し、その代金を支払っている。また買った豆をオランダの会社で焙煎し、その代金も払っている。これらの方法で費用を増大させ、納税を回避していた。

オランダの税率は約16%で、イギリスの法人税率は24%である。またスイスの法人税率は12%である。これによりスターバック社はイギリスでの営業によって得た利益について、差し引き8%の“節税”に成功したのである。(スターバックスの脱税

3.二重非課税: アップル社は低税率のアイルランドに子会社を置き、利益を集中している。

アメリカは課税に際し「居住地原則」をとっているので、アイルランドの子会社に課税できない。一方、アイルランドでは、実質的に経営している国が課税権を持ち、アイルランド政府に課税権はない。

以上三つの手口の中でも、三つ目が「最も悪質」だとしている。

と、ここまでが第1回分だ。

アップルの租税回避は、まさに奇跡のようなものだ。しかし、これはだれでもできてしまう手段だ。

これが認められるなら、世界中のすべての企業が同様の手段を取りうることになる。

なのに、生き馬の目を抜くようなこの社会で、そうなっては来なかったのは、なにか理由があるに違いない。何か障壁があって、そのために他社がためらっている中で、アップル社だけが秘密の抜け道を探しだしたのではないだろうか。

この件については少し自力であたってみたい。

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