鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

13年4月、ぷらら・Broachより移行しました。 中身が雑多なので、カテゴリー(サイドバー)から入ることをおすめします。 過去記事の一覧表はhttp://www10.plala.or.jp/shosuzki/blogtable001.htm ホームページは http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」です。

カテゴリ: 08 自然科学

今はもう10時。そろそろまとめに入ろう。

46億年前、太陽とともに地球ができた。最初は火の玉で、とても生命が存在する余地はない。

しかし意外と生命が誕生するのは早い。40億年前には生命の3条件を満たす最初の生命体が誕生した可能性がある。

最初はほとんど酸素がなく、嫌気性代謝を営んでいた。

「共通の祖先」が古細胞と真性細菌に分かれたのは比較的早期とされる。いずれも嫌気性代謝である。

時代を画するものとしてシアノバクテリアが登場した。シアノバクテリアは原核生物でありながら葉緑体(チラコイド)を内包することに成功し、糖(炭化水素)を合成する光合成を営んだ。

シアノバクテリアが葉緑体そのものだという意見があるが、目下のところ承服し難い。葉緑体そのものが明反応装置(を持つ生命体)と暗反応装置(を持つ生命体)との合体であるとされ、さらなる検討が必要であろう。

そして現在の生物と共通するエムデン・マイヤーホフ型の解糖経路でエネルギーを産生した。

その起源は、化石の吟味次第で動揺するが、遅くとも30億年前には活発な活動を開始していた。

彼らは大陸の渚を取り巻くように生育し、地球の酸素量を一気に増やし炭酸ガスを減らした。それは他の生物を酸素毒により死に追いやり、地表の温度を低下させ、オゾンの生成により紫外線量を減らした。

さらに悪いことに、生成される酸素の受け手となっていた地上の還元鉄がほぼ完全に酸化され、酸素の受け手がなくなってしまった。

このままではシアノバクテリアを含めた地球上の生命が死滅するかと思われたとき、真核生物が登場した。20億年前のことである。

真核生物の最大の意義は細胞内のコンパートメント化である。これにより細胞内での他生命との共生が可能となり、みずからをサイボーグ化することに成功した。

最小限確実な異種生命はミトコンドリアと葉緑体であり、ほかについてはさらなる検討が必要であろう。

もっとも重要なことはミトコンドリアの導入であり、これにより極めて効率の良い内燃機関を手に入れたことである。

真核生物はシアノバクテリアの作り出す酸素を利用しエネルギーを産生し、炭酸ガスを排出するようになった。

この結果地球上における酸素と炭酸ガスの動的平衡が保たれるようになり、安定した生物環境が創出された。

真核生物は古細胞から分化発展したとされる。これはRNA解析によるものであり、説得力のある見解ではあるが、他の研究方法によって追認・確立されたとは言い切れない。

その後真核生物のあるもの(植物)はみずから葉緑体のコンパートメント化に成功し、みずから光合成を行うようになった。

そうすると再び酸素の過負荷状態が出現することになるが、そのときにひたすら酸素を消費し炭酸ガスを排出するだけの存在、動物が一気に繁殖することになる。

最近の環境論者の意見に引きずられて、つい酸素=善、炭酸ガス=悪との見解を抱きがちであるが、生命史的にはむしろ逆の見方のほうが適切かもしれない。

動物は酸素を減少させ、炭酸ガスを生成する点において善である。しかも栄養的には植物に対して従属的であるから、動的バランスを越えて増えることはありえない。(はずである)

しかも自ら作った食物連鎖において個体数を自己調節している。実に可愛い存在である。

しかしこの自己調節過程は、人間という特殊な動物の出現によって崩れ始めている。

時々、世界大戦とか民族浄化とかいうナンセンスな集団的自殺行為を繰り返すことによって人口を調節してはいるが、それでも有史以来の人口の増加は凄まじい。

さらに動的バランスを越えた炭酸ガスの異常産生は、もはや植物やシアノバクテリアの酸素産生能力をもってしても追いつかないほどのレベルに達している。

ただし、炭酸ガス産生の増加に比して炭酸ガス分圧の上昇が著名でないこと、酸素が明確な減少傾向にないことは、植物や地衣類の光合成も高まっていることを示唆している可能性がある。

以前、中国の農業問題を勉強したとき感じたのであるが、農業の生産性は生産刺激さえあれば幾何級数的に上昇する可能性があるのだ。そしてその可能性こそが農村の貧困をもたらしているのだ。

農村が苦慮しているのは干ばつよりも雑草であり、漁民が苦慮しているのは乱獲ではなく海水の富栄養化である。

藍藻なくして動物なし


前の記事で、(真核化とミトコンドリア取り込みの順は逆かもしれない)と書いたが、よく考えてみると逆だろう。

真核細胞したからこそ、安んじてミトコンドリアも葉緑体も迎え入れることができたのだろう。

そうでなければ、これらは異物として排撃されるか消化されるかしてしまっただろう。

生化学で見ればたしかにいろいろな代謝経路はあるだろうが、マクロに見れば細胞というのは外部のものを取り込み、消化し、異化していくことで生命を保っているのだから、免疫もへったくれもない。

さびれた田舎の村が観光で村おこしして賑わいを取り戻そうとすれば、まずはそれなりの受け入れ体制を作らなければならない。

それにはまずインフラだ。宿泊施設を作って、街の人が不愉快な思いをしないように安全な居場所を確保しなくてはいけない。

それにはリゾチームが襲わないような居住地区を確保する。同時に細胞質内に浮遊していた原核を核膜で包んで、変な外人テロリストに襲われないようにしなければならない。

庇を貸して母屋を取られては元も子もない。日本の田舎の人はみんな気がいいから、東京資本に全部乗っ取られてしまった。


それではシアノバクテリアの場合、細胞内小器官のような隔壁なしにいかにして葉緑体との合体が可能だったのか、いろいろな説があるようだが、一言で言えば奇跡としか言いようがないのだ。

40億年の間にただ一度の奇跡が起こったのだ、としておこう。

それに比べれば、真核生物の場合、葉緑体の受け入れは法則的だ。おそらくはミトコンドリアを受け入れたのと同じ方法で葉緑体を受け入れたのであろう。とすればこの2つの他にもいろいろな機能を持つ生命体を受け容れた可能性はある。

進化した生命体の細胞には実にさまざまな細胞内小器官がある。それらの多くがフリーエージェントで入団してきたとしても不思議ではない。

そういう発展の仕方もあるのである。

やっていてふと思いついたのだが、ミトコンドリアの導入に基づくTCA回路の獲得は、古細菌のシアノバクテリアへの逆襲ではないかということだ。
その昔、35億年くらい前のこと、真正細菌と古細菌は覇権を争っていた。
ところがある日、真正細菌は光合成装置を獲得した。
光によって炭酸ガスから炭水化物の合成に成功し、これを解糖することでエネルギーを獲得するという代謝経路が出来上がった。炭酸ガスは当時地球に溢れかえっていたから、増殖の資源は無尽蔵だ。これで一気に生物界の覇権を握る。
これに対し、メタン菌などの嫌気性代謝を営む古細菌は数の上で劣勢に追い込まれる。さらに酸素を嫌う古細菌は増え続ける酸素の中でバッタバッタと討ち死にしていった。(酸素が毒だというのは経験上からも分かる。むかし植物状態で人工呼吸していたヒトの病理解剖を行ったとき、脳がどろどろに溶けていた)
もはやこれまでかと思われたとき、思いもかけぬ救いの手が差し伸べられる。それがミトコンドリアだ。酸素利用型燃焼装置はエムデン・マイヤーホフ型装置に比べ10倍以上の効率を持っている。
燃料となる酸素はシアノバクテリアがバンバン作ってくれる。かつて古細菌にとって毒ガスだった酸素が救いの神になる。
古細菌と真正細菌とのこの新たな関係は、ある意味でウィン・ウィンのところがある。シアノバクテリアはエネルギーの獲得にあたって酸素を消費し炭酸ガスを産生する。しかし代謝にあたっては嫌気性代謝(ピルビン酸生成の直前に多少の酸素を消費する)のままである。好気性代謝を営む古細菌の登場は、炭酸ガス→酸素という一方通行に陥っていた真正細菌にとっても歓迎するところであった。
かくして酸素対二酸化炭素の動的バランスが成立し、ミトコンドリアを獲得した古細菌は真核生物へとモデルチェンジし、動植物界の祖先となっていく。(真核化とミトコンドリア取り込みの順は逆かもしれない)
という筋書きは成り立たないだろうか。
ただし、その後真核生物の一部は光合成装置を体内に取り込み、みずから光合成を営むようになった。この結果、真性細菌は生物界の主役を奪われ、辺縁的・寄生的存在に貶められていくことになる。

本日はシアノバクテリア三昧

何かだんだん浮世離れしてくるなぁ

最初はKen Kanazawa さんの「アメリカ大自然」というページ。シアノバクテリアの本質をものすごく的確にとらえていて、短いけれども大変わかりやすい説明である。

シアノバクテリアの生態

シアノバクテリアは、藍藻の仲間で国立公園に数多く存在する。プランクトンとして、バイオマットをつくって、比較的身近に見られる生物。

スライム状になって砂の表面に付き、バイオマットを形成する。水流で簡単に吹き飛ばせますがすぐ元の位置に現れる。

藍藻というから藍色かと思うが、見かけは赤茶色である。

植物プランクトンで、窒素、光、リンが栄養源ですが、鉄イオンが多いと大繁殖する。

シアノバクテリアのえらいところ

シアノバクテリアは細胞核を持たない植物で、地球の歴史上、光合成による酸素を生産した最初の生物である。

真核細胞の出現までの15~20億年間、酸素を生み出し、地球表層を酸化し、現在も生きているのです。シアノバクテリアが居なかったら、今の我々人類は存在して居ない。

シアノバクテリアとストロマトライト

シアノバクテリアが作るバイオマットに細粒の石灰質の粒子がとらえられ、マットの部分が層状に積み重なってできたのがストロマトライトです。

約35億年前の地層に初めてあらわれ、その後さまざまな時代の地層から見つかっています。

生物の化石では無いが、生物がつくった構造という点で、化石の一種(生痕化石)として扱われます。

というわけで、ついでに写真も拝借する。ユタ州の砂漠で見つけたものらしい。サボテンの周りのモコモコとしたのがシアノバクテリア。全体としての印象は茶褐色だが、よく見るとわずかに緑がかっているみたいだ。


次は千葉大理学部の竹内教室のサイト。雪氷生物の研究に特化した奇特なグループだ。その中の「シアノバクテリア」というページ。

シアノバクテリアは,昔は「藍藻」とよばれ,藍色をした藻のなかまです.普通に池や水たまりなどにみられる微生物です.どこにでもいるこのシアノバクテリア,しかしその正体はとても不思議な生物です.

シアノバクテリアは藻類の仲間といわれてきましたが,今では真核生物の他の藻類とは違うということがわかりました。

シアノバクテリアの本態は細胞内に核がない原核生物、すなわち細菌(バクテリア)です.

バクテリアの仲間といっても,他のバクテリアとちがって葉緑素(クロロフィル)をもち光合成をすることができます.

シアノバクテリアは,数十億年前から浅瀬に珊瑚礁のようなコロニーをつくり,大繁殖していました.それがストロマトライトとよばれる化石によって確かめられています.

シアノバクテリアは光合成によって少しずつ酸素を大気に排出し,現在の大気を作り上げました.

これもわかりやすく中身の詰まった名文だ。

次の文章も面白い。

以前、火星から飛んできた隕石の中にシアノバクテリアの化石のような構造がみつかりました.残念ながら,現在はそれはシアノバクテリアではなく物理的作用でできたものとと考えられています.

ということで、これも古生物スキャンダルの一幕。


次はYahoo知恵袋から

「海水水槽のシノアバクテリアについて」の質問に対するuvcoralさんの回答。

シアノバクテリアはとても原始的な生物で、細かな種類は違えど、どんな水槽にも必ずいます。

シアノが大繁殖するスイッチですが、一番よくあるパターンは、水槽のリン酸カルシウムが急に増えた場合です。

リン酸はカルシウムと結合しやすく、水中のカルシウムと結合し底砂や濾材の奥に沈みます。

リン酸カルシウムの細かい粒子で、底砂や濾材の奥が詰まってきますと、嫌気性バクテリアが活動を始めます。

嫌気性バクテリアはリン酸カルシウムを分解して再びリン酸に戻すので、リン酸量が急増してしまい、シアノの大増殖に繋がります。

私の場合ですが、水流を強く当てたり、オキシドールで落としたりの対応をしていたのですが…オキシドールで落としても、数日で復活するしぶとさでした。

そこで、ZEObakというバクテリア剤を入れてみたところ、効きました(笑) 環境の改善が一番先で、それでも治まらない時に薬品やバクテリア剤…です。

ということで、かなりしぶといようである。そうでなければ30億年も生きのぶることはできないだろう。

本日は道立図書館に顔を出してきた。

むかしは図書館といえば高校生に占領されていて、自習室みたいな雰囲気だったが、最近は様相が異なっていて、濡れ落ち葉族のたまりみたいになっている。

午後からは客層が変わってくるのかもせいれないが、開館から数時間はジジイの天下だ。

開架の本棚はブックオフと代り映えしないような本が並んでいる。

それで今回の目的は古細菌とか共通祖先の話辺りだったが、得られた知識は多くない。

しかし、古生物研究の舞台裏はかなりわかった。

古細菌にせよ共通祖先にせよ、結局化石を見つけなければ実証はできない。

化石を見つけてそれが40億年前の生物だというためには、2つの条件がある。

まずそれが生物化石であることの証明だ。これがけっこうウソだったりする。ちょっと前に横行した旧石器遺物みたいなものだ。

そうすると「権威」だったり押しが強かったりする人間が横行することになる。「世紀のスキャンダル」みたいな事件が往々にして発生する。

そのたびに最初の生命の出現時期が数億年のレベルでさかのぼったり、繰り下がったりするのである。

もう一つの条件は、その「化石」が発見された地層が30億年とか40億年前の地層であることが確認されることである。

しかし45億年前に地球ができて、地殻が形成されるまでには5億年かかったと言われているから、その頃の地層などはおおかた溶け去るか侵食されるかして消滅している。

話によると、西オーストラリア、グリーンランドにかろうじて発見できるらしい。だから研究者は皆そこいらへんで石を叩いて古生物の痕跡を探し求めているのである。

したがって、結論はこういうことである。

研究者の仮説はそれなりに忖度した上で受け入れていくことになるが、ガチガチの生命はシアノバクテリアで十分であり、その起源も30億年を遡って議論する必要はないということだ。

もちろんメタン菌として、あるいは深海に現生する古細菌の素材は確認されており、それがシアノバクテリアよりはるか昔に細菌類と分岐していることは間違いないのだから、理論的にはそれより以前に共通祖先がいたことも確実と見て良いだろう。

しかし、我々が我々につながる生命の系統を探ろうという場合、実体的にはシアノバクテリア辺りから出発すれば十分なのである。

だから我々としてはシアノバクテリアとそのライバルたちをよく勉強し、そこで原始生命がこのレベルでいかなる水準に達していたかを確認できれば十分なのである。

なぜこんな原始生命体のところまで迷い込んだかというと、勢いというか、事のついでである。

シアノバクテリア(藍藻)を勉強した時点で、基本的に目標は達していた。

生物論をはじめたときに、最初から大独断をぶち上げた。

植物なくして動物なし

という「テーゼ」である。

つまりまずは自立栄養でやれる集団がたくさん発生して、そこから従属栄養の動物が発生してくるという発想である。

従属栄養生物である動物は、植物をもとめて移動しなければならないという宿命を背負って登場してくる。

だから動物は発生の当初から神経系と運動系の器官を持っていた。そして特定の器官というわけではないが、主体性というか自己責任をもとめられた。

ついで、動物の中にも食物連鎖が発生する。おそらくそれは縄張り争いが起源で、それが縦関係に変化発展したのだろうと思う。

いずれにしても弱肉強食関係が出現したわけで、そこを生き抜くために動物は第二段階の能力を身に着けなければならない。

それは自分より弱い相手を捕まえ食べる能力と、自分より強い相手から逃れる能力である。

かくして神経系と運動系は感覚系・反射系も具備する形で強化される。

ただこれらの個別的努力だけでは、所詮身を守ることはできない。ここで第三段階の能力が発現する。

これを一つのものにまとめることは難しいが、大型化、多産化、そして集団化である。大型化には多細胞化もふくまれるかもしれない。

これらの獲得された能力が動物の特定の種の発展や衰退を条件付けている。

こういう大枠の中で神経系の発達も捕らえていかなければならない。これが「植物なくして動物なし」というドグマの発展形である。

ずいぶん前書きが長くなってしまったが、そもそも植物の繁栄が動物の繁栄を準備したという歴史的事実がなければ、以上の話はただの大風呂敷である。

はたして生物界の歴史にそのような事実があったのかというと確たる証拠はない。

とすれば単細胞生物・細菌の世界までさかのぼってそのような事実は確認できないだろうかというのが、古生代前の勉強を始めたきっかけであった。

そしてそれはシアノバクテリアの発見で一つの落とし所となったと思える。

2つの事実がある。

一つは単細胞の細菌とはいえ、光合成装置を備え、「植物」的な働きをする生物だということである。

もう一つは30億年前以降、大繁殖を遂げて、地球上の酸素を一気に増やすほどの活躍を行ったことである。

だから「植物なくして動物なし」はこう言い換えたほうが良いのかもしれない。

藍藻なくして動物なし

共通祖先というのは、概念的には全生物の祖先ということであるが、実際には古細菌と真正細菌の共通祖先のことである。

最終普遍共通祖先(Last Universal Common Ancestor)と呼ばれることもある。日本ではコモノートと呼ぶグループもある。

古細菌が遺伝学的にジャンルとして確立したことから、「どこかでその根っこがつながっているだろう」というのは誰でも考えることであるが、方法が未確立であることから今のところは推論に止まっている。

ウィキによれば、共通祖先の特徴として研究者の間でコンセンサスとなっているのが以下の諸点である。

    好熱菌である

    ゲノムサイズは小さい

    遺伝子数は少ない

まぁ、雲をつかむような話である。

えらくあっさりとした結末になったが、共通祖先の話は終わり。

すみません。うろ覚えでやっているとボロが出そうなので、共通祖先に行く前に一度解糖系のおさらいをしておきます。

1.解糖系の定義

解糖系(Glycolysis): グルコースをピルビン酸(有機酸)に分解する過程。

ピルビン酸がATPになっていく過程(TCA回路)は、解糖系にはふくまれない。反応の場も異なっており、解糖が細胞質内で行われるのに対し、TCA回路はミトコンドリア内で営まれる。

ほとんど全ての生物が解糖系を持っており、もっとも原始的な代謝系とされている。TCA回路に比べATP産生効率は低いが、産生速度は100倍に達する。

このため激しい運動時にはTCA回路の処理能力を越えてピルビン酸が産生され、順番待ちになる。このピルビン酸は乳酸(還元型)として保存されることになる。

2.解糖系の経路

ほとんどがエムデン-マイヤーホフ(EM)経路であり、他は覚えなくてもよい。古細菌では不完全形が見られる。

10種類の酵素による10段階の化学変化の連鎖となっている。最終産物はピルビン酸となる。

この過程でグルコース1分子から4分子のATPが産生されるが、ADP2分子が消費されるため、差し引き2分子が獲得される。

古細菌でもほぼ同様の経路をとるが、一部バイパスされるらしい。

3.解糖の過程

A 準備期

10段階のうち最初の5段階が相当する。

グルコースはATP2分子の働きを受け、グリセルアルデヒド 3-リン酸へと変化する。

B 報酬期

後半の5段階ではグリセルアルデヒド 3-リン酸がピルビン酸へと変化していく過程であり、その中で4分子のATPが放出される。

NADの話は面倒なのでパス。(TCA回路では必須)

C 発酵

発生学的にはもともと嫌気性解糖であり、発酵と同じ原理である。

産生されたピルビン酸は乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)により乳酸となり、アルコールデヒドロゲナーゼによりアルコールとなる。

シアノバクテリアから一気に原始生命体へと行ったのは、ゲノム話のややこしいところをバイパスできたという意味では良かったが、結局は共通祖先と原始生命体という2つの概念の絡み合いについて混迷を深めるという点では同じだ。

ここで、原始生命体の概念を一度保留した上で、古細菌と共通祖先の話に戻らなければならない。

まずは古細菌(archaea)から

名前について

ウィキの図を転載させてもらう。

膜につつまれた細胞小器官は存在せず、内容物は混ざっている。細胞質を細胞膜がつつみ、その外側を細胞壁が覆う。

見たところは細菌だが、rRNAの進化的な特徴は細菌とはまったく異なるのだそうだ。そこで最近では古細菌とは呼ばずに原語を音読みしたアーキアと呼ぶようになっているそうだ。

遺伝的には細菌よりは我々真核生物の方に近いということが分かる。意外である。人を見た目で判断してはならないという好例であろう。

名前のいわれであるが、アーキアというのは彫刻の世界で言われる「アーカイック・スマイル」と同じで、古いという意味のギリシャ語である。Archaebacteria(古細菌)の前だけをとったものだ。

アーカイックというと今はもう絶滅した種族のように聞こえるが、今も立派に生物界の一角を占めている。

ドブの中からメタンガスがぷくぷくと湧いてくるのはメタン菌のためだが、このメタン菌も古細菌に属する。「おなら」も腸内古細菌が産生している。(メタノブレヴィ・バクテル)

海洋においては、微生物の約20%を古細菌が占めるという。

他の生物の住まないような過酷な環境に生きていることが多いが、追いやられてそこに行ったのか、地球の過酷な始原環境の中で生まれ、そこに残ったのかは分からない。

遺伝子解析について

ヒトY染色体をねちっこく勉強してきたワタシにとって、rRNAの塩基配列を唯一の基準とする系統図は割りと馴染み深い。

いまではrRNAのみならず全ゲノムの解読も行われている。ウィキによれば

代謝系の遺伝子は真正細菌にやや類似、転写・複製・翻訳に関連する遺伝子は真核生物に類似するが、半分以上の遺伝子はどちらにも見つからない新規の遺伝子であった。

代謝経路について

一言で言えば、不完全なエムデン・マイヤーホフ型の解糖過程を取るものが多い。

正直のところ、ウィキペディアの記事はかなり読みにくく、とりあえずこのくらいにしておく。(このくらい真面目に読む素人もあまりいないだろう)

それにしてもオパーリンとは懐かしい名前だ。北大薬学部の石本真さんが翻訳したのだ。石本さんの講義をひたすらありがたく聞いた覚えはあるが、「コアセルベート」という言葉を除いて中身はさっぱり覚えていない。

あの頃は、「社会主義」の優越性を示す科学が大々的に宣伝されていた。医学部にも「ソ医研」というサークルがあって、西洋医学とは異なる医学のあり方が語られていた。

朝鮮人民民主主義共和国のキムボンハン先生の血管系、神経系に次ぐ第三の「経絡系」説も、「これがツボだ」という不鮮明な光顕写真を見ながら、かしこまって拝聴したものだ。

武谷・坂田の三段階論、パブロフ・ミチューリン・ルイセンコの心理学…それらが毛沢東の矛盾論とごたまぜになって語られた。そういう時代があった。一体あれは何だったのだろう。

 

1.原始生命体(Protobiont)の規定

最初の生命は原始生命体(Protobiont)と呼ばれる。遺伝子的さかのぼると古細菌および真正細菌の共通祖先が最初の生命となるが、それ以前にも生命体が存在した可能性があり、これをふくめて原始生命体の名で一括する。

生命体の基準は、①代謝系を有する。②細胞という形状を有する。③自己複製が可能である。という三条件である。

ただしこれは「完全な生命体」の三条件であり、3つを満たさない「不完全な生命体」も存在しうる。(例えばウィルス)

そうすると①代謝系を有する。というのが不完全であろうと生きている最低限の証かもしれない。

人間で言えば「息をしている」ことが、生きていることの最低の証であるようなものであろう。

2.原始生命体(Protobiont)の代謝

代謝系は古い順に次のような順序で積み重なっていると考えられる。

①発酵: 解糖系を含めた最もコンパクトな代謝系、成立年代も早いと考えられる

②嫌気呼吸: 酸素呼吸の祖先型であるとされている

③酸素呼吸: 光合成よりも古い時代に成立(35億年前に成立していたと考えられる)

④光合成: 約27億年前に成立

ということで、当然ながら原始生命体における代謝の基本は解糖である。解糖の基本はエムデン・マイヤーホフ回路で、ATPの産生であるが、これには異型もあるようである。

3.原始生命体(Protobiont)の栄養

おそらく「生命とは隊白質の存在のあり方だ」というエンゲルスのドグマの一番の弱点はここにある。

たしかに解糖系のキーロールを握っているのは酵素でありまさに蛋白という形で生命は存在している。

しかしこの酵素を回してやるには外からエネルギーを取り込んでそれを酵素が働きやすい形で解糖経路に突っ込んでやらなければならない。

蒸気機関には釜炊きが必要なのである。そしてこの釜炊きこそが生命なのである。

この釜炊きプロメテウスは、おそらくは海底に噴出する熱水からエネルギーをもってくる。そしてリン酸化回路に火をくべるのである。

初期の酵素は相当熱効率が悪かったろうから、数百度の熱水のエネルギーなしでは回らなかったろう。

命をかけた釜炊きプロメテウスの行動があって初めて生命の維持が可能だったのではないか。

オパーリンは、おそらくはエンゲルスの影響を受けて、蛋白始原説に立っていたと思われる。彼は「最初の生命は原始海洋中に既に存在していた有機物を代謝する従属栄養を営んでいた」とする。

原始海洋中に既にアミノ酸をふくむ有機物が存在していたことは事実である。だから構造的観点からはオパーリンの仮説は成立しうる。

しかし肝心なことは「構造」ではなくそれを動かす動力である。

年表を作っていて、どうもシアノバクテリアに関する記載がまちまちなのに困ってしまう。

とりあえず太古代の年表は置いておいて、シアノバクテリアの勉強に移る。

1.なぜ、細菌が藻なのか

シアノバクテリアでグーグル検索すると、「藍藻」が引っかかってくる。

藍藻(blue-green algae)は、藍色細菌(cyanobacteria)の旧名である。

と出てくる。のっけからややこしい。

ふつう「藻」と言えば目に見える草みたいなものだ。目に見えるから色の名前で呼ばれるわけで、細菌ではない。

こちらは細菌としてのシアノバクテリアを調べたいのだがどうなっているのだろう。説明を見ると、細菌は細菌なのだが、少数細胞の集団を作るもの、糸状に細胞が並んだ構造を持つものなどがあって、それが藻のように見えるらしい。

したがって藍藻と言っても藻ではないということになる。

2.どんな細菌なのか

どんな細菌と一口に言えない。地球とほぼ同じ寿命を持つ生物であるから、さまざまな変種がある。

発生学的に見ると、まずは単細胞から出発し、後から糸状体としてつながるようになったらしい。

一番原始的なものでは細胞内にチラコイド(葉緑体)が存在しない。もう少し進化したものでは、窒素固定を行うようになり、さらに多糖類を分泌するものも現れる。

多糖類が増えてくれば糸状体を形成するようになる。さらに糸状体の中で任務分担も生じるようになる。

地上で暮らす種類もあるようで、乾燥耐性が強く、何十年も乾燥状態で休眠できる。

温泉には、70度でも増殖できる好熱性の種が生息している。これが先祖なのだろうか。

3.たった一度の合体体験

地球の歴史の中で細胞と葉緑体が合体したのは、シアノバクテリアでの体験がたった一度きりだということだ。そしてたった一度合体したシアノバクテリアがすべての植物の先祖となったということだ。

この合体の仕方であるが、完成した葉緑体と完成した細菌が正常位で合体したわけではないようだ。

ウィキによると

藍色細菌の2種の光化学系は、2種類の酸素非発生型光合成細菌の融合(もしくは遺伝子の水平移動)によって生じた

とされる。

どういうことかというと、シアノバクテリアの祖先の光合成装置に二種類あって、ひとつは「光化学系Ⅰ」に似た構造をしていて、もう一つは「光化学系Ⅱ」に似た構造をしていて、これが合体したということだ。

葉緑体の構造については以前勉強したことがあって、うっすらと憶えている。

「光化学系Ⅰ」というのは光を感受してそれを電位に変える「明反応」装置で、「光化学系Ⅱ」というのはその活動電位で加水分解して酸素とATPを生成する「暗反応」装置みたいな感じだったかな。

それで、明反応系の方は「鉄硫黄クラスター型」と言い、暗反応系の方は「キノン型」と言う。

紅色光合成細菌は、発生史的にシアノバクテリアに先行していたとみられる。光合成を行っているのに酸素を発生しないのは、電子獲得の材料に水を使わないからである。 (2015年05月16日 より)

肝心なのは「鉄硫黄クラスター型」細菌と「キノン型」細菌はそもそも別系統のものだということだ。

だから葉緑体の合体には二つの偶然が関わっていることになる。まず二つのタイプの細菌が合体する。次いで二つの装置が合体して葉緑体を作るという経過だ。

シモネタ話になるが、男と女が「合体」する。正常位かどうかはどうでも良い。そうして射精すると、精子が泳いで行って卵子と合体する。と考えると分かりやすい(かな?)。

だから説明は(もしくは)ではなく、(そして、遺伝子の水平移動)と書くべきだろうと思う。

4.シアノバクテリアはいつ発生したのか

上の話は大変良くできた話だが、しばらくすると「あれれ?」と思わせるところがたくさん出てくる。

プレ・シアノの細菌は基本的にはシアノと同じで、葉緑体があるかどうかの違いだけだ。葉緑体がなくても「鉄硫黄クラスター型」装置や「キノン型」装置でそれなりのなりわいを立てている。

だから酸素発生はしないが光合成を行う菌や、何をエネルギーにしているかは分からないが酸素とATPを産生する機能を持つ菌がいるということだ。

その辺をどう分別するのかがよく分からない。

それがシアノバクテリアの発生時期をめぐり記載が混乱している原因だろう。

ウィキではこう書いている。

しばらく前には、35億年前の化石とされるものが藍色細菌に似ていることから最古の光合成生物といわれたこともあったが、現在ではこれは認められていない。

これは当たり前の話で、葉緑体をもっているかどうかを別にすれば、そもそも同じ細菌なのだ。「妊婦は人にあらず」と言うに同じだ。

シアノバクテリアの存在を実証するには、その頃の化石を調べる以外にない。その化石がストロマトライトというものだ。西オーストラリアなどに露頭していると言う。

そこでの確かなシアノバクテリアの化石は27億年前のものだそうだ。だからこれからは27億年で統一していくことにする。

あとの面倒な話は省略する。

葉緑体については以下をご参照ください

2015年05月16日

原生代 原始生命の登場

面倒なのと、画面がごちゃごちゃすることから「…億年前」の表記を省くことにする。45と書いてあれば45億年前のこととする。
地学的情報は最小限にとどめ、生物の進化を中心に展開する。年代は文献により異同がある。適当にあしらっている。

原始地球
     「生物の起源~細胞生命の起源~」より転載

 

138 ビッグバン

冥王代(46~40)

46 太陽系の形成が開始。星間物質が再結集し太陽系の誕生、小惑星の集合(衝突)により原始地球が誕生。表面から千kmの深さまでは溶けた状態で、マグマ・オーシャンを形成、重い金属は地球の中心部に沈み核を形成する。

46 原始大気が形成される。気圧は100気圧に達した。二酸化炭素や窒素,水蒸気を主成分とし、微量成分としては一酸化炭素や水素などを含んでいた。酸素は反応性が高いため,分子状の酸素はほとんど存在しなかった。

45.4 原始地球ができて4000万年後に「ジャイアント・インパクト」が発生。火星並みの惑星が衝突し、地球と月が分離する。その他にも頻回に天体衝突。

43 地殻構造が安定する(地殻-マントル-外核-内核)。

41 大気温の低下により多量の降雨がもたらされる。原始海洋が形成され、地球のほぼ全表面を覆う。海洋の拡大に伴い地表が出現する。

原始海洋: 原始大気に含まれていた水蒸気が温度低下によって凝結したもの。初期は亜硫酸や塩酸のため酸性、陸地の金属イオンが雨とともに流れ込んで中和される。

「月による潮の満ち干の中で元素が混合され、生命の素材となるタンパク質や核酸が生まれた」という“見てきたような”講釈があるが、とりあえず保留。

太古代(40~27) 

40 原始生命が誕生。海底火口に好高温性のメタン資化菌やイオウ資化菌が登場する。真正細菌と古細菌の共通祖先(LUCA)となる。(これも見てきたような話だが、とりあえず置いておく)

38 真正細菌(バクテリア)と古細菌(アーキア)の出現。細菌類の多様化が進む。 (これも見てきたような話だが、とりあえず置いておく)

38 40億年前から続いた後期重爆撃期(Late Heavy Bombardment: LHB)が終了。これに伴い安定した海洋が出現。

37 グリーンランドで生命の最古の痕跡(濃縮12C)が確認されている。この発見には多くの異論あり。

12Cは炭素(13C)の同位体で、生物が無機炭素を固定して有機物を合成する際には12Cをより選択的に取り込む。したがって岩石(堆積岩)の12Cが多ければ、その岩石の中に生物が含まれていることになる。

35 地表温度が 57 ℃以下まで低下。

35 硫黄の同位体化石が確認されている。硫黄還元菌が出現したものと推定される。

34.6 西オーストラリアのストロマトライトがこのころ形成されたといわれる。この中から最古の化石が確認されている。

ストロマトライト: 光合成細菌などが浅海域に層状に積み重なって形成された化石とされる。メタン生成代謝によりエネルギーを発生した痕跡があり、古細菌(原核生物)の一種と推定されている。

34.2 南アフリカで酸素非発生型の光合成を行う微生物のマット状構造が確認される。真正細菌の一種Chloroflexus の仲間と想定される。

34 最古のシアノバクテリアの化石が発見される。

32 光合成生物が発生。光合成をする最初の生物。シアノバクテリアとは別種と考えられている(水を使わず硫化水素等を用いるため酸素は発生しない)

28 地球に強い磁場が出来る。太陽風のバリアとなり、有害な粒子をさえぎるようになる

原生代 (27~7)

27 火成活動が活発化し大陸が形成される。

27 藍藻(シアノバクテリア)が大量発生する。酸素発生型光合成を行い、海中および大気中に酸素を供給する。酸素は紫外線と反応しオゾン層を形成。

酸素が増えるのにはもう一つの理由があった。海中の鉄が三価鉄化を完了し、鉄イオンの酸化のために消耗される酸素が減ったためである。

27 好気性細菌が登場。酸素の持つ高エネルギーを活用した肉食性バクテリアの起源となる。

25 最初の氷河期が到来。

22 マクガニン氷河時代。全球が凍結。全球凍結は、この他に7億年前、6億年前の少なくとも3回生じている。

20 細胞核を持つ真核生物が出現。真核生物がシアノバテリアを取り込んだとの説もある。この頃の酸素濃度は現代の1%程度。

真核生物の合体の本質: ミトコンドリアと葉緑体はそれらを持つ真正細菌が細胞質内共生したもの。ミトコンドリアはプロテオバクテリア門アルファプロテオバクテリア綱に属し、その起源は真核生物より古い。

19 激しい火山活動により、最初の超大陸(ヌーナ大陸)が出現する。その後、大陸は数億年程度の周期で離散集合を繰り返す。

10 最古の多細胞動物(カイメン)が登場する。襟鞭毛虫(原生動物)が多細胞化したものとされる。原口の形成により強力な捕食能を獲得。このころ酸素濃度が現代の水準に近づく。

7 2回め(7億年前)と3回目(6億年前)の全球凍結

6 地上が現在と同程度の酸素濃度になる


ここまでが、生物の「前史」。先カンブリア紀と一括されることもある。

古生代(6~2.5)

6 オゾン層が形成され、有害な紫外線を遮断

6 超大陸が分裂して新しい海洋が形成される。

5.7 エディアカラ生物群(①軟体性である。②捕食性がない。③眼がない)である大型多細胞生物(クラゲ、イソギンチャク)が出現する。骨格を持つ生物も現れる。

5 カンブリア紀の大爆発

 

前の記事の地球史年表は地球の歴史を博物学的に俯瞰するには便利な年表であるが、生物の発生と進化を見るには不充分であることがわかった。

古生代と一括された時代には、実は冥王代、始生代が先行しており、まとめて先カンブリア時代と呼ぶ。

さらに始生代が4つの小区分に分かれ、それに続く原生代も古原生代、中原生代、新原生代に分かたれることがわかった。

1.冥王代(Hadean eon

仕方ないので、まず冥王代から始めることにする。

冥王代というのは天文学的に推定された想像上の世界である。地質時代の一つとして位置づけられるが、化石どころが岩石すらも特定できない。

地球の岩石をウラン・鉛年代測定法で調査して45億年から46億年という数値が出ている。

しかしこの時代の最後に、早くも最初の生命が誕生している。

2.始生代(Archean eon)

つぎに始生代である。これは原核生物から真核単細胞生物が現れるまでの時代ということで、生物学的な時代区分と言える。

なぜ生物学的な時代区分になったかというと、地質学的には明確なものが残っていないため、生物学的スケールを借りたものらしい。

地質学的な事項は省略するとして、この間における生物の進歩はかなり本質的である。

始生代は40億年前に始まる。このとき全生物の共通祖先が現れる。それは現在生きている生物の遺伝子配列の共通因子を持っている。

地球生命の祖先は高温適性を有した細菌であった。それは熱水活動が活発で温度の高い中央海嶺であった。

この共通祖先は、始生代に多様化が進む。そして古細菌と真正細菌の門の多くがこの時期に出そろう。

まさしく生命にとってシュトルム・ウント・ドランクの時代だ。そこには生命機構のあらゆるエレメントが一気に出揃っていく。

3.始生代は4つの生代に区分される。

原始生代 (Eoarchean)    始生代初期。40億年前(または38億年前)から36億年前。

古始生代 (Paleoarchean)    始生代前期。36億年前から32億年前。

中始生代 (Mesoarchean)    始生代中期。32億年前から28億年前。

新始生代 (Neoarchean)    始生代後期。28億年前から25億年前。

ウィキの記載はここまでだ。バスに乗ったら、無人の野原で「ここが終点だ」と降ろされてしまった気分だ。

どうも地層学に邪魔されて、生物発生から発展開始までの道のりが見えてこない。

とりあえず、ウィキペディアの地球史年表を、生物の発生に焦点を当てて自分なりに整理してみた。


と書いてみたが、原生代はとても古生代と一緒に書き込むような性格のものではなさそうだ。

原生代以前の経過については、別の年表にまとめることにする。


古生代(約5億7000万 - 約2億5000万年前)

5億4千万年前 カンブリア爆発が発生。約1000万年の間に突如として生物が多様化。今日見られる動物界のほとんどの門が出そろった。

5億3000万年前 三葉虫が出現。

4億2000年万前 植物の上陸

4億年前 節足動物の上陸

4億年前 アンモナイトが現れる

3億6000万年前 温暖期に入る。氷河が消滅し大森林が形成される。樹木を分解する菌類が存在せず、石炭の原料が地表に積もる。

3億6000万年前 脊椎動物(両生類)の上陸

3億年前 酸素濃度が最高の35%となる。二酸化炭素濃度は現代の程度まで低下する。樹木の分解菌類が増殖し、酸素濃度は徐々に減少する。

3億年前 昆虫が増大する。

3億年前 爬虫類の出現

2億5000万年前 諸大陸の衝突によってパンゲア大陸が誕生する。

2億5000万年前 ベルム期の大量絶滅。生物種の90% - 95%が絶滅した。メタンハイドレートが気化し、酸素濃度が低下したことが原因とされる。

数日経ってからあらためて考えると、浦野さんの論説は、総説の形を取ってはいるが、いろいろな意味でかなりバイアスの掛かったクセのある主張ではないかと思い始めている。

海綿の特定の部位の細胞(ニューロイド細胞)を指して、モノアミン(神経伝達物質)の顆粒があるから神経細胞の芽だという主張だが、それは内分泌細胞の芽というべきではないか。

例えば神経細胞のクライテリアを考えてみる。先に触れたようにいくつかの基準がある。それと同様に内分泌細胞のクライテリアを考えてみる。

そうすると、神経細胞とは到底言えないが、内分泌細胞の基準にはかなり当てはまるところがある。

ここから言えることは、内分泌細胞と神経細胞が共通の祖型から分化したというよりは、内分泌細胞、とくにモノアミンを産生する内分泌細胞が先に存在して、その特殊系として神経細胞が分化・発達したと考えるほうが素直なような気がする。

この先後関係は、とりあえずはどうでも良い話であるが、ただ活動電位という形に一度エネルギー転換することを神経細胞の決定的基準だとすれば、やはり「海綿には神経はない」というべきではないかと思う。

もちろん活動電位を生じる細胞はあまたあるわけで、循環器専門医として心臓の電気生理や心筋のダイナミックスを勉強してきた私にとっては、ある意味おなじみの世界である。

内分泌系と神経系をひっくるめて動物の情報伝達系とするならば、その中で神経系は活動電位を介在するお陰で飛躍的な多様性を獲得した内分泌細胞として捉えるべきではないか。

さらにいうならば、動物は神経系という特殊な内分泌系の形態を獲得したことによって、初めて真の動物足り得たのではないかと思う。

そして他の内分泌細胞とは形を変え、樹状突起という受け口と軸索という長い延長コードを獲得し得たのではないか。

ただそれはあくまでも内分泌細胞であって、液性の刺激により情報を受け取り、液性の神経伝達物質の分泌という形で情報を発信するのである。

もう一つ神経系の発達をめぐる議論の中で明らかにしておかなければならない点がある。

それは海綿動物→刺胞動物というかたちで動物が発達してきたとは必ずしも言えないことである。そこにはかなり「退化的進化」が入り込んでいると思う。

苦労しなくても食料が手に入るとなれば、誰でもぐーたらになる。歩かなくてもいいなら足は退化し、口を開けていれば食い物が飛び込んでくるなら手も退化する。

だから一つの機能に着目して「どちらがより進化している」という言い方には、慎重であるべきだろう。

最近はゲノム解析が発達しているので、意外なやつが実は偉かったりする。そのへんもふくめて、長い目で見ていくこともだいじだろう。

まず論文の出処を示す。

Web TOKAI というサイトに、「細胞社会のコミュニケーション」(全12回)という連載シリーズがあって、その中の7本目の論文ということになる。

題名が「ニューロンの祖先と神経分泌」で、著者は浦野明央さんという方。北海道大学名誉教授である。

題名からも分かるように、多細胞生物の情報システムを全体として扱い、そのための情報伝達ツールの一つとして神経系を位置づけている。これは神経系を総括的に扱う上で非常に大切な視点だろうと思う。

そしてこの論文で、浦野さんは神経系と内分泌系の同根性を明らかにしている。これは「シナプス」というものを理解する上でだいじな指摘だと思う。

シナプス間で生じるタイムラグが「記憶」の根源ではないか、というアイデアもあわせて考えていきたい。

パラニューロンあるいは神経分泌細胞

一般的なコミュニケーションの進化は生体制御系の出現を促す。

生体制御系は,環境変動を検出し,個体として調和の取れた反応をするための重要なシステムである。

その起源はパラニューロン(神経内分泌細胞)である。分泌機能を持つパラニューロン型の細胞は、最も原始的な海綿動物をふくめすべての多細胞動物に存在している。

パラニューロンは神経系と内分泌細胞の共通の祖先

純粋なニューロンがより高次な動物に出現するのと同様、純粋な内分泌組織も高等な左右相称動物にならないと見られない。

内分泌細胞から神経細胞が分化するのではなく、両者が共通の祖先=パラニューロンから進化するということになる。

多くの専門書ではパラニューロンはニューロンの祖先として認知されていない。そこには活動電位が存在していないからである。

しかし、刺激を感受して化学的な情報分子を放出する双方向性が神経の本質であとするならば、活動電位が介在するか否かは、その後の分化・発展過程の問題でしかないのではないか。

と浦野さんは主張する。おおいに同感するところである。

神経系、ニューロンの三段階

これを私なりに敷衍すると、

1.双方向性の獲得: 刺激を感受し、それを化学的情報として出力する段階。これを順序を逆にすれば、まさにシナプスの原理である。

2.活動電位の利用: 感受部と出力部を活動電位の流れとしてつなぐ。これにより伝導速度は大幅にアップするので、長い軸索を伸ばすことも可能になる。

3.ネットワークの形成: 軸索が伸びることで遠位の細胞との情報のやり取りが可能になり、ネットワークが作られるようになる。

ということで、まずはシナプスありき。シナプスと、シナプスによる細胞間のペアリングこそが神経の始原的本質なのである。

海綿動物のプロトニューロン

ケツボカイメンの中膠内には紡錘型の双極細胞および多極細胞が散在する。そこにはアセチルコリンエステラーゼ、モノアミンオキシダーゼ、モノアミン類の神経分泌物質が局在する。鍍銀法や電顕像でも、分泌細胞に特徴的なゴルジ装置と分泌顆粒が存在する。

これらの形態学的な所見は、それらがパラニューロンであることを示唆する。

と浦野さんは指摘するが、私にはなんとも言えない。図を見ていただくしかない。

paraneuron

ここからあとは第8回の一部です。

プロトニューロンに欠けているもの

前回、海綿においてニューロンのタネとも呼ぶべき「プロトニューロン」が存在していることを示した。

しかしそこには「真正ニューロン」と呼ぶべき決定的な条件が欠けていることも間違いない。

なぜなら、①刺激によって活動電位を生じることが確認できず,②シナプスの存在が確認できず、③それを介した情報伝達が確認できないからである。

ただし、もっとねちっこく電顕像を検討すれば、「シナプスもどき」の構造はあるはずだし、モノアミンのやり取りの現場も発見できるはずだと、わたしは思う。したがって②と③については「今のところ観察できていない」というにとどまるのではないか。

クラゲがニューロンの最初の持ち主

シナプスの存在とそれを介した活動電位の発生が確認されているのはクラゲ(刺胞動物)よりあとの動物である。

刺胞動物の神経系は,散在するニューロンが網状の構造を作っている。このことから網状神経系と呼ばれる。

このあとはかなり専門的な話になるので省略する。

大隅さんのノーベル賞受賞のニュースで、初めて『オートファジー』という言葉を知った。

自動的にファジー(Fuzzy)になるということで、カメラの効果のことかと思ったが、マクロファージのファージということで、「それならオートファージと言ってくれよ」と思う。

しかしこの研究、どうも今までの知識と整合していない。

私が研修医になりたての頃、世は免疫学だらけだった。そして免疫反応の出発点をなすのがファーゴサイト

体に異物が入ってくるとまず貪食細胞というのが対応して、その異物を食ってしまうのだ。白血球も食細胞ではあるが、大抵はマクロファージというもう少し大型の細胞を指す。

この細胞にはライソゾームという顆粒があってそこで異物を消化し解毒する。

ところがこの食細胞は異物を食ったからと言って殺せるとは限らない。そうすると食細胞は細胞膜に旗を立てて、「俺を撃て」と宣言する。

そうすると細胞性免疫が出動して、この食細胞を殺そうとする。

この過程は液性免疫の応答と違って、ゆっくり進むが、しつこくていつまでも終わらない。それどころか食細胞という自分の細胞を攻撃するので、自己免疫疾患に移行することもある。

というのが私の理解だ。多分いろいろ間違っていると思うが…

もう一つは細胞が老化すると、自殺遺伝子が働いて、活動をやめて蛋白やアミノ酸に分解されていくという過程がある。

不勉強のため、知識は40年位前で止まってしまっている(しかもほとんど忘れている)が、だいたいこれで細胞死と分解については説明できたつもりでいた。

だから「オートファジー」と呼ばれても、これまでの話との接穂が見つからないのである。

おそらくそれは老廃物の清掃とリサイクルという出来事を、免疫学という色眼鏡を通して見ていたからであろう。

考えてみれば老廃物の除去というのも生命にとって本質的な営みであり、体を異物から防衛するという免疫の働きとは別のものである。

多分免疫は華々しく闘うのに忙しい軍人さんだから、清掃などいうのは二の次で、屑屋か汚穢屋なみに見下していたに違いない。

しかしどちらが生命にとってより本質的かといえば、排泄のほうだ。老人施設で働くスタッフの一人としては、「食う・寝る・出す」が生活の三要素だ。免疫はそれを軍事用に転用しているにすぎないのだ。

オートファジーには病的意味はなく、我が家の毎日のお掃除みたいなものだろうと思う。リサイクルなどというのは派生的なものだ。そういう洒落たことを言う前にこのゴミ屋敷なんとかしろよ。断捨離、断捨離、


今後の課題(私の)だが、医学用語ではなく生物学の文脈の中で、系統発生的に理解し直さなくてはならないのではないか。

ということまでは理解できたが、各論はいずれまた

 

ということで、おそらくは体液を介した内分泌系の情報伝達から、神経伝導系が分化発展したのではないかという推理が成り立ちうる。
そうすると、それを学問的に裏打ちできるかどうかという話に進む。それには系統発生学の世界に飛び込むしかない。
その前に、論理として整理して置かなければならないことがある。
1.内分泌系と神経系に前後の時間差があるかどうか
2.有線化によって得られるメリットは何か。内分泌系と神経系の本質的差異はネットワークの形成にあるのだろうが。
3.それは動物の進化にとってどんな意味があったのか、神経系の発達は動物系をいかに進歩させたか
4.神経系に一本化されずに、古い内分泌系も残って、共存関係になった理由は
5.シナプスという前時代的な装置が残されたのはなぜか。コンデンサー(蓄電体→記憶体)としての役割?
6.化学的エネルギーから電気的エネルギー(活動電位)への転換というエネルギー形態の転化(物理的転換)はいかにもたらされたか
とりあえず以上のような事項が念頭に浮かんでくる。

なかでも最大の哲学的課題は3.にある。
A 生命の始まり(エンゲルスとヘーゲルのテーゼ)
生命とは蛋白体の存在の仕方である。そして、この存在の仕方で本質的に重要なところは、この蛋白体の化学成分が絶えず自己更新を行なっている、ということである
有名なエンゲルスのテーゼだが、この人は他人の考えをスルッと小奇麗にあしらう名人だから、きっと何か元ネタがあるのだろうと思う。
ただ、このテーゼの後段で「代謝過程が本質だ」というのは一面的である。
正確に言うのなら「生命は二重の過程の複合である」と言うべきだろう。生命を実体として捉えるのなら、たしかに代謝過程そのものだ。しかし何よりもそれはヘーゲルの言う「対自有」なのだ。自然の一部ではあるが、自然一般に解消されない「おのれ」というものがそこにはある。
自然において疎外されていた個体(ヘーゲルの言う「理念」)は、その展開において、「その直接性と外面性を脱して、自らの内へと帰り、まず生きたものとして現われる」
この独自性を紡ぎ出し、自然に対して独立性を主張し、自然の流れに抗うことに生命の本質がある(ここを指摘しないから、ヘーゲルは逆立ち人間になるのだ)。代謝過程はそのための必須のアイテムなのだ。この観点は、しばしばエンゲルスから抜け落ちることがあるので要注意だ。

B 単細胞生物から動物と植物への分化

以前、生物は植物と動物から構成されると書いたが、訂正する。生物は微生物(単細胞生物)と植物、動物から構成される。
ウィルスは「生命と無生命のあいだ」に位置するが、これは無生命から生命が生まれる過程に存在するのではなく、微生物が「退化的進化」を遂げたものであり、グータラの極みだ。
初期の単細胞はまったく風まかせの生活を送っており、日々絶滅の危機に晒されつつ、それを旺盛な繁殖力で補っている。中には「タンパク質の存在の仕方」を中断して、代謝過程もストップして、死んだふりをして生き続ける強者もいる。
そのうちに葉緑体を細胞内に取り込んで、光合成を行い、栄養を自賄いする単細胞生物が現れる。(厳密に言うと代謝はエネルギー源としての炭水化物の摂取と、体成分としての窒素化合物の摂取からなるが、後者は省略する) これが多細胞化し植物の先祖になっていく。厳密に言うと葉緑体に寄生する生物ということになるのかもしれない。
植物系の生物が増えてくると、これを食することによって栄養を賄おうという生き物が出てくる。これが多細胞化することによって動物が生まれてくる。
植物は光と水のあるところどこでも原理的には生存可能である。しかし動物は植物なしでは生きていけない。従属栄養生物である。
然るがゆえに、動物は絶えず植物をもとめてさまよう。これが動物の「本質的な存在の仕方」である。
初期の動物である海綿やサンゴには神経はない。だから、海底の何処かに根を張って「お客さんいらっしゃい」とっ口を開けて待っているのみである。プランクトンも(多くはもっと高等な動物の幼生であるが)水中を漂いながら偶然に口に入る栄養を獲得するのみである。
ところが生物界がさらに発展すると、植物ばかりでなく動物も多種多様に発展する。そうすると植物より遥かに効率の良い肉食に転化する動物も現れるようになる。それはやがて、食物連鎖と呼ばれる弱肉強食の世界を形成することになる。

C 食物連鎖を生きるためのアイテム

食物連鎖の世界を生き抜くということは、まず捕まえることであり逃げることである。これから派生する能力は餌を求めて移動することであり、ライバルとの競争に打ち勝つことである。
これらすべてのことには瞬発力、集中力、判断力が必要だ。「人間は考える葦だ」と言うが、動物はみんな考えている。言葉にしないだけだ。「本能だけで動いている」というが、それは過去の考えの蓄積がDNA化(?)されただけの話だろう。運動神経がだめな人間は、過去の祖先が学習しなかったからだ。祖先を恨め。
とにかく、この世界に生き抜くためには本格的な神経回路が必要になる。そして本格的な神経回路の条件とは瞬発力、集中力、判断力、持続力だ。
餌をもとめるさすらいの旅、餌を待ち伏せる我慢が長期にわたることもある。その際は上の4つに加えて記憶力が求められる。持続力も判断力も記憶力に裏打ちされてのものだから、それらの代わりに記憶力を加えた方が適当かもしれない。

3.の説明が長くなったが、とにかく神経系に関する6つの論点をあげてみた。
さてそれでは系統発生学の世界に飛び込むとするか。

*ついでに、肉食動物と草食動物について
肉食動物と書いたが、いま世間で言う肉食系、草食系の意味ではない。
この世に存在する高等動物(少なくとも脊椎動物以上)はすべて雑食系と見るべきであろう。
野生のライオンは草食動物の肉しか食わない。しかしそれは適応であろう。その土地の食物連鎖の中のどこに自らを位置づけるかという選択があり、それに付随した身体的変化が起きただけだろうと思う。
猫も犬もいまやペットとして缶詰付けになっているが、その昔は家族の食べ残し(いわゆる猫まんま)で暮らしていた。さらにその昔は山猫なり狼なりとしてブイブイいわせていたに相違ない。


シナプスの勉強が完全にストップしている。

もともと赤旗の家庭欄に載った「ストレス→ステロイド過剰が脳を壊す」という福井大学の女医さんの発言が「ちょっと待てよ」ということになって、

うつ病とは何かということになって、私は脳の「やる気中枢」の異常だと考えた。海馬がやられたり、前頭葉がやられたりというのは二次的な結果にすぎないと考えた。

したがって、病気の首座は視床+視床下部にあり、病態生理学的には神経伝達物質の枯渇、あるいはシナプスでの情報の受け渡しが失調に陥ることが本態であると考えた。

うつ病の本態は未だに明らかとはいえない。しかし治療薬はあって、三環系抗うつ剤、セロトニン再取り込み阻害薬(ただしこのお話は“見てきたようなウソ”の可能性あり)が奏功する。逆にレセルピンやβ遮断薬が明らかにうつ病を誘発し増悪因子となる。

だからモノアミン類をシラミ潰しにしていけば見えてくるのかな、うつ病はシナプス病なのかなと思っていた。

しかし神経伝達物質やシナプスでのやり取りを具体的に調べていくと、どうもそんなに話はかんたんではない。

まず刺激を送る側の事情は、シナプス連絡に限って言えば、どうでも良いことがわかった。

神経線維を伝わってきた電気刺激(活動電位)は、末端に達してそこに蓄えられた神経伝達物質を放出させるのであるが、向こうがどう受けるかには関係なくひたすらドバっと放出するのである。

ドバっと出した伝達物質が何にどのくらい使われるのかは、知ったことではない。彼らにとって重要なのは放出した物質をいかに効率よく回収してリサイクルして、次の放出に備えるかである。

シモネタになるが、男はペニスを突っ込んで射精すればそれで終わりだ。どの精子が卵と接合するかは知ったことではない。女性の営みはそこから始まるのである。

もう一つは神経伝達物質と呼ばれるもののいい加減さである。率直に言えば厳密な意味での神経伝達物質と呼ばれるものはない。生体内ホルモンやアミノ酸が代用されるのである。

窒素酸化物さえ伝達物質になるというのだから、もうなんでも良いのである。結局、受け手の神経細胞の膜レセプター(ホルモン受容体 a/o 化学受容体)が反応するかどうかが問題なのだ。


つらつらと考えてみれば、神経伝達物質を介した情報の受け渡しというのは、シナプスという密接な関係を除けば、生体内の標的臓器のレセプターがホルモン受容体を通じて体液を介した情報を受け取るのと全く変わりない行為である。それが電話か手紙かというだけの話だ。原理的には意外と原始的な代物である。


結局シナプスを介して送り手のニューロンと受け手のニューロンの関係はこういうことになる。

選ぶ主体はあくまで受け手の側にある。しかし送り手は手練手管を使って自分以外の情報が送れないようにしている。とすれば受け手の選択は送り手を受け入れるか、それとも拒否するかの選択しかない。

そこで「イヤよイヤよ」という受け手の神経細胞(細胞膜)にステロイドを突っ込んで抵抗力を奪う、という犯罪的手法が登場する。そうなれば最後は自死する他ない。

現実にそういうメカニズムが存在するかどうかは分からないが、検討する必要はありそうである。

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