鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

カテゴリ: 15 国際政治/アメリカ(カナダ含む)

伊藤大一さんによる「アメリカ労働運動の新潮流とサンダース現象」という講演の要旨が紹介されていて、面白い。
http://www.minpokyo.org/journal/2017/03/5060/

2 大統領選挙が示したもの
新自由主義路線に対抗する道は、サンダースの社会民主主義路線か、トランプの「ネオ・ナショナリズム」かのふたつの道しかないことが示された。

3 アメリカの労働運動の新潮流
労働組合の組織率は、全体で11%、民間部門は6%で、長期衰退傾向は変わらない。
しかしその内容は大きく変わっている。1980年代に始まり、1995年にAFL―CIOが採択した社会運動的労働運動(Social Movement Unionism:SMU)がその中心となっている。
SMUは、労働組合の目的を、組織維持でなく、「社会正義の実現」とそのための組織の拡大におく。
そのため、組織化の対象を従来顧みられなかった女性、マイノリティ、低賃金労働者などに拡大し、企業だけでなく、NGO、地域コミュニティ、宗教コミュニティとの連帯を重視する。
その先進的な取り組みとして、農業労働組合、ビル清掃労働者の組織化、訪問介護ヘルパーの組織化、ホテル・レストラン従業員国際組合、ファストフード労働者の最低賃金獲得要求などの運動がある。
最低賃金要求のたたかいは、過大な生活負担に苦しむ労働者・国民の切実な要求として多くの支持を得ている。そして多くの州・都市において実現を見つつある。

4 アメリカの労働者の窮状
アメリカの労働者の生活は本当に厳しい。都会のアパートの家賃は1LDKで月額3500ドル(約35万円)である。ほかに過大な学費もある。公立であるニューヨーク州立大学でさえ年間学費約180万円、私立の名門スタンフォード大学では約480万円に達する。また過大な医療保険代・医療費はよく知られている。

5 SMUとサンダース
SMUが掲げる要求はサンダースの政策とよく一致している。

*我々はすでにオキュパイ運動の影にその片鱗を垣間見ている。以下の記事を参照されたい。

「トランプ減税」という赤旗記事が要領よく内容をまとめてくれている。

合田寛さんの談話によるもので、見出しは「財政基盤の掘り崩し」となっている。

まずは中身の紹介。読み込んでいくと、

1.巨大多国籍企業への優遇

2.富裕層への優遇

3.法人税概念の放棄

の3つに分かれるようだ。

1.巨大多国籍企業への優遇

まず、巨大多国籍企業への優遇としては、

A) タックスホリデー構想

タックスヘブンには現在2兆ドルが溜め込まれていると言われる。これを国内に還流させるために、1回限りの低率課税を行うというもの。

税金泥棒に恩赦を与えて、返さなくてもいいよという仕掛けだ。

法の意味は根本的に失われる。

合田さんは、

資金は還流しても、それは自己株の買い取りに向かい、国内投資には向かわない。したがって経済効果はない。

としている。

B) 国外所得免除方式

現在は「全世界所得課税」と言って、会社の全利益に対する課税方式になっているが、この内、海外子会社からの配当には課税しないようにするというもの。

ちょっとややこしいが、海外の子会社の利益をそのまま送金すれば税金を取られるが、タックスヘブンのダミーに送金して、親会社はダミーからの配当を受ける、と言うかたちにすれば税金はかからないということだ。

企業がどうするか、猿でもわかる。これは「国外所得への課税免除」そのものだ。

その結果どうなるか、ますますタックスヘブンに所得を留保することになる。

2.富裕層への優遇

大企業の利益は最終的には個人=富裕層に還元される。直接税中心主義の思想からすれば、そこからしっかり取ればいいという理屈も成り立つ。

しかしトランプ減税はここにもしっかり手を打っている。

A) 個人所得税

個人所得税の税率は、最高税率39%を35%に引き下げる。税率7段階を3段階に「簡素化」するというもの。

「代替ミニマム税」の廃止についても書かれているが、内容がわからないので省略。

B) 遺産税の廃止

日本でいう相続税だ。

これは大きい。直接税思想の根幹に触れるものだ。世襲制が公認され、社会が固定化される。これは社会の自殺行為だ。

アメリカの遺産税の税率は最高で40%、これでも低すぎると思うが…。

3.法人税概念の放棄

トランプは法人税を現在の35%から15%に引き下げると言っている。半分以下だ。これは引き下げというより、そもそも法人税という概念の放棄を意味する。

率直に言って、これは国際問題だ。世界各国が法人税の引き下げ競争をやっている。行き着く先は全世界のタックスヘブン化だ。

もちろん各国は法人税減税以外にも各種の優遇策により企業の税率を抑えている。

トヨタの社長が告白したように、5年間1文の税金も払わないで済ましている会社もある。

それはそれで大問題だが、法人税減税という正面からの攻撃は、税制の根幹に関わってくる大問題だ。

いったい、国家の財政基盤はそれで成り立つのか、国家というものを「夜警国家」に変質させるのか、という根本的な疑問がある。


テレビを見ていたら、「なんとか先生の熱烈討論」とかいうアメリカの討論番組をやっていて、トランプ支持派の人が一生懸命に「アメリカ・ファースト」論を擁護する論陣を張っていた。

司会者のなんとか先生は、かなり意図的にトランプ支持派の意見を引き出し、「アメリカ・ファーストで何が悪い?」みたいな雰囲気を作り出そうとしていた。

不愉快で途中でやめてしまったが、「アメリカ・ファースト」論の擁護者は一つも間違っていないのである。だからそこを論点にしてもしょうがないのだ。

問題は、①アメリカ・ファーストが、アメリカン・ピープル・ファーストにはなっていないことだ。②それはアメリカン・エンタープライズ・ファーストであり、③いますでに世界はアメリカン・エンタープライズ・ファーストであり、そのためにアメリカン・ピープルが苦しめられていることだ。

そしてトランプがやろうとしていることは、アメリカン・ピープルの犠牲の上にアメリカン・エンタープライズ・ファーストの世界をさらに広げようとしていることだ。

ということを、事実を持って具体的に明らかにしていくことだ。おそらくアメリカ・ファーストを支持している人たちは、「99%の人たち」であり、本来我々のもっとも心強い味方の人たちのはずだ。

彼らは反ヒラリーであり、反富裕層であった。本来はバーニー・サンダースと心を通わせ合うべき人たちであった。

問題はむしろ、彼らを見る我々の目線の問題にあるのかもしれない。我々はバーニーが彼らを見るように、彼らを見なければならないのだろうと思う。


赤旗のワシントン特派員の遠藤誠二さんが素敵な写真を掲載してくれた。
記事の題は「反トランプで満員」という囲みもの。
週末の午前中、ワシントンに向かう地下鉄はいつもガラガラですが、この日は違いました。
郊外の駅にはピンクのいでたちの人だかりができ、来た電車も満員でした。
利用者はすべて、トランプ政権に抗議して開かれる「女性の行進」参加者。郊外のホテルに宿泊し、「いざ出陣」となった面々です。
…8両編成の車両は「反トランプの貸切列車」といったところか…
女性の行進
クレアモントというネオンがついていますが、これはマンションの広告だと思います。このマンションは市街中心部から北に向かうウェブスター街に沿って散らばっているので、おそらくそちら方面の駅だろうと思います。
間違っていたら教えて下さい。
この集会には50万人が参加して夕方まで続いたといいます。全米では100万人が立ち上がったそうです。ウーマン・パワーはすごいエネルギーですね。男どもは株価の動きにあたふたしているだけです。これからは女性が世界を支えることになるでしょう。(ただし写真を見るとカラード・ピープルの少なさが気になるが)

アントニオ・ネグリ的な「帝国」が姿を現しているのかもしれない。
資本はその本質上祖国を持たない。マルクスは「資本が祖国を持たない以上、労働者も祖国を持たない」と言った。しかし当時は、それは「万国の労働者よ、団結せよ」という呼びかけに終わるしかなかった。
世界資本主義が成立しようとする今、労働者は祖国を失い、砂のように流動化しつつある。それはゴビ砂漠が万里の長城を飲み込むように、いたるところで国境を超え、既成政治を越えて流動化しつつある。これがマルチチュードだ。それはネット世界のヴァーチャルな存在ではない、生贄としての生身のマルチチュードだ。

では国家はそうやって世界資本主義の前に無力化し、消滅し、1%の富裕層による単一市場国家、ネグリのいう「帝国」が誕生するのだろうか。それはありえない。
グローバル資本は、寄生虫が宿主を必要とするように、本質的に国家と国境を必要とするからである。彼らはゲバルトを必要とし、ゲバルトにより囲まれた安全地帯を必要とするからである。
イギリスの移民排斥、その延長線としてのEU離脱は、古き良き時代への懐古に過ぎず、決して庶民本来の要求ではない。
イギリスは移民先進国である。ロンドンの下町に行けば、生粋のイギリス人を探すほうが難しいくらいだ。
イギリスの庶民の苦しみは移民の増加によるものではなく、実体経済の空洞化によるものである。イギリスはあらゆる経済自主権を放棄することによって、「世界一金融資本に優しい国」となり、金融マーケットとしての地位を確保した。
その過程で庶民の暮らしは無視され、その多くが無為徒食の民となることを強いられた。
今そうやって獲得した金融マーケットとしての地位がEUによって侵食されようとしたから、金融資本家は離脱の動きを煽った。彼らには彼らの意のままになる「国家」が必要だったのである。
貧富の差の拡大を基盤として、この金融資本家たちの相矛盾した行動が、社会の混乱を煽っているのである。
トランプには国内産業の保護と、みずからもその一員である金融資本やグローバル企業の保護という政策矛盾がある。同じようにヒラリーについた金融資本家にも矛盾がある。
いま世の中はこうした矛盾に満ち溢れているが、それは1%の超富裕層対99%の貧民という構図がもたらしたものだ。そしてその構図がいまだ多くの人に明示されていないという過渡的状況がもたらしたものだ。
しかし多くの人々がエスタブリッシュメントの支配に耐えきれず、行動に移り始めたという根本的な流れを、我々は見落としてはならない。
「民」を先進国に移転するのではなく、「富」を途上国に移転すべきだ。劣悪な労働条件を先進国に持ち込むのではなく、ディーセントな労働条件を途上国に広げるべきだ。
世界中に膨大な貧困があり、有り余るほどの欲求があり、世界中に未開拓の労働力があるのだから、社会の生産力はまだまだ大幅に向上できるはずだ。
そのために諸国家にはまだし残したことが莫大にあるはずだ。EUの積極的側面を無視するわけではないが、その前に国家が資本から自立し、庶民政治の拠点として再活性化されるべきだ。「死滅する」には早すぎる。
これが2016年から17年にかけての流れだ。たしかに物騒な局面を含んではいるが、この庶民の動きの底流を信じよう。

ネグリ自身について書いた記事もあったはずだが、目下見当たらない。


トランプを押し上げたティーパーティー

トランプとティーパーティーの関係を取り上げた記事は意外に少ない。

中では

2016/09/23 米保守派ティーパーティー、トランプ氏支持を表明 - WSJ を紹介する。

ティーパーティー運動の有力団体である「ティーパーティー・パトリオッツ」が、トランプのために、激戦州に資源を投入すると発表した。

団体代表の発言

ヒラリー・クリントンはティーパーティーが象徴する全てのことと対立している。一方、ドナルド・トランプはわれわれが核としている価値観を守るために戦うと約束した。われわれはトランプを選ぶ。

上下院で共和党が多数派を占め、トランプがホワイトハウスに入れば、ティーパーティーの政策が法制化される可能性がはるかに高まる。

ただしWSJは「今年5月までは、ティーパーティー系はトランプを冷ややかに受け止めていた」とあるが、地下ではいくつかのティーパーティー系組織が動いていたとの報道もある。いずれにしても9月の正式見解発表よりはるかに前からトランプ支持で動いていたことは確実である。


ところで、日本ではティーパーティーは既に過去のものという見方が広がっていた。冷泉彰彦 トランプ「大統領選撤退」に見るティーパーティーの凋落

しかしブームとしてのティーパーティーは終わっても、思想としてのティーパーティーはその勢力を拡大させていた。

思想としてのティーパーティー

ウィキによればTEA は「もう税金はたくさんだ」(Taxed Enough Already)の頭文字だそうだ。彼らの旗には「俺を踏みつけるな」と書かれてる。

ペイリンをアイドルとする組織から、今ではさまざまな潮流に分かれ、それぞれが運動を積み上げている。ただそれが地方で草の根で展開されていたために見逃されていただけだ。

中西部の町はどこも日本の地方都市と同じだ。職がない。商店街はシャッター通りだ。

労働者はいまやいない。残るのは公務員ばかりだ。だから公務員に非難の眼差しが注がれる。

教師、看護婦、警官、消防士エトセトラだ。

彼らは税金泥棒だ。給料を下げろ、年金を下げろ、組合も政治活動も禁止しろ、病院も学校も民営化しろ、黒人やヒスパニックに対する援助などまっぴらだ…という具合に話は進んでいく。

火事や泥棒などは自分で自衛する。スラムは放っとけばよい。当然、社会保障や医療保険など問題外ということになる。

これは本来大金持ちのリバタリアンの主張だ。弱者は共同体の中で助け合わなければならないのだ。

こうやって金持ちにうまいこと乗せられて、自分で自分の首を絞めているということがわからない、自分が弱者だということがわからなくなってしまっているのだ。

一通り、ニュースとしては出回った。
抜けているのは、トランプ当選を支えた地方の保守原理主義運動の実態である。この運動がかつて基幹産業で栄えた北部にも拡大し、力関係を逆転させてきたという経過だ。
これからいろいろ評価が出てくるだろう。
全体としてトランプ見直し色が強まるだろう。
庶民の声を反映しているのだという捉え方も、運動の視点としてはだいじだと思う。
そこまで切羽詰まってしまった世の中の矛盾の表現だ、という見方も出るかもしれない。
経済、外交、軍事では、公約そのままでは到底やっていけないから、何らかの手直しはされるだろう。
それを見て「トランプも案外常識人だ」などと考える向きも出てくるかもしれない。
しかしそれで評価を見誤ってはいけないと思う。
だからこれからの新政権を見ていく上で、評価の基準をはっきりと定めて置かなければならない。
① 白人優位主義と異人種排斥→民族浄化の動き
② 医療保険と最低賃金制度への攻撃→新自由主義のさらなる徹底
③ 反対派への逆襲→言論の自由への攻撃
とくに③については、地方でこれまでもティーパーティにより反リベラル・反労働者行動が展開されてきた。これがオハイオやウィスコンシンなどから全国に拡大し、一層強化される危険がある。国際ニュースにはなかなか載らないので、注意深く見守る必要がある。

下記の記事をご参照ください
2011年11月14日

2011年11月11日

2011年11月10日


トイレの男女別がなくなる?

別に差別主義者ではないと思っている私だが、流石にこのニュースには驚いた。

単独のトイレ、男女の区別は禁止-NYが制度化 2016 年 6 月 22 日のWSJ

というもの。

ニューヨーク市では来年1月1日から、共有スペースのないトイレはすべて「ジェンダーニュートラル(性別不問)」にすることが義務づけられることになった。市議会が21日、共有スペースのないトイレに男女別の表示を禁止する条例を47対2の賛成多数で可決したためだ。

デブラシオ市長は“自己の性認識に基づいた公衆トイレ利用”のため、2200カ所の公衆トイレに対して必要な対応を行うことを義務付けた。

「からだと心の性が一致しないトランスジェンダーの人たちにとって好ましい環境を作る簡単な方法だ」とされているが、ポリティカル・コレクトネス(政治的・社会的に差別や偏見がないこと)が度を超した一例だとの批判の声も出ている。

これだけでは良く分からないが、WSJは相当気合を入れてこの問題を報道している。

例えばノースカロライナ州では、出生証明書に記載された性別に応じて公衆トイレを使うよう義務付けるという「反動」的な法律が、成立している。

何故この法律が成立したかというと、この州法に先立って、同州最大の都市シャーロットの議会が、男性用あるいは女性用を自己の性認識に基づいて利用できるとする条例を可決したからである。

一方で明らかに憲法に違反すると思われるような例も出てきた。

テキサス州ヒューストン市の住民投票では、性別による差別の禁止をゲイ(同性愛者)やトランスジェンダーにも広げる条例を圧倒的多数の反対で否決している。

言い方はややこしいが、つまるところ、ゲイやトランスジェンダーに対する差別は許される、差別しても構わないということだ。この論理を拡大していけばリベラルもムスリムにも差別が許されることになる。

しかしこれは、そもそも住民投票にかけること自身がおかしいので、これでは下からの民主主義破壊になってしまう。

また、いくつかの州では「宗教の自由」法の制定が検討されている。これは宗教の自由を口実にして、企業が宗教上の観点から同性愛者と働くのを拒否することを可能にしようというもので、もはや憲法もへったくれもない。

学生の頃、学校には女子トイレが圧倒的に少なく、女子トイレを作れという女子学生の運動が盛んだった。

トランスジェンダーの選択の自由は、その先の段階にある話なのだろうが、やはりピンと来ないところはある。

むくつけき男が「私は女よ」と言って女子トイレに入ってきたとき、他の女性にはそれを拒む権利はないのか。

答えは「ない」ということだ。そもそも女子トイレという概念がなくなってしまうからだ(ただし共有スペースのないトイレの場合)。

こういう独善と押し付け倫理の傾向はアングロサクソンに特有なもので、かつての禁酒法、いまが盛りの禁煙運動などと軌を一にするものだ。(と、密かに私は思う)


ニューディールの経過を勉強しようと思って、ネットを探したが、まともに取り上げた文章はほぼ皆無である。そのあまりの徹底ぶりに思わず苦笑してしまうほどだ。

ブログ記事はほとんどがフリードマンもどきの懐疑的な見解で埋め尽くされている。学術記事もケインズの業績と関連して刺し身のつま的に扱うだけだ。要するに批判はするが知ろうとはしない。これにはかなり愕然と来た。

国際的には依然ニューディール神話は健在だし、オバマもニューディールを標榜した。安倍首相お気に入りのスティグリッツも現代版のケインズと目されている。

強調しておきたい。ニューディールはあれこれの政策選択ではない。それは大衆運動の圧力のもたらしたものであり、大衆の呻吟を受け止めるポジティブな姿勢の反映である。

大恐慌のときニューディール批判派は何をしていたか。何のオプションも提起せず、大衆を弾圧し、大衆の苦労については、ただ手をこまねいて見ていただけだ。だから、そもそも批判する資格はない。

ニューディール評価をケインズに収れんさせるのは、政策イシューにことを矮小化するためのレトリックに過ぎない。

フリードマンの批判は、50年も経ってからの後付け批判に過ぎない。しかもそのフリードマン理論の下で展開された新自由主義は、世界経済を目茶苦茶にした。その経過を我々はリアルタイムで見つめてきた。

何よりも、ニューディールはファシズムが世界を支配しようとする瀬戸際に、それと真正面から立ち向かう姿勢を貫いた。戦後世界の民主的立場を代表した。たとえその政策に瑕疵があったとしても、この歴史的役割を我々はしっかり評価しなければならない。

現在、ニューディール本流の伝統は赤狩りの中で途絶えてしまって久しい。リーマンショック後の世界経済が世界大恐慌と通底している以上、我々はその積極的側面を大いに引き出し、その教訓を改めて確認しなければならないと思う。

サンダースとニューディール政策

サンダースのルーズベルトに寄せる強い親近感については、ピケティも注目している。

朝日新聞の「ピケティコラム@ルモンド」という記事にそのことが触れられている。いずれ消える可能性がある記事なので、要点だけ紹介しておく。

1.ルーズベルトのやったこと

ルーズベルトの時代、米国は不平等の是正のため、野心的な政策を進めた。

高い累進性を兼ね備えた所得税と相続税とを生みだした。

また米国は、30年代にはすでに最低賃金を定めている。現在のドルに換算すると、その額は60年代末に時給10ドルを超えていた。

2.戦後のアメリカ

年収100万ドルを超える層に課された最高税率は、ケネディ大統領までの時代は91%だった。相続税にも70~80%の高い累進税率が課された。

ドイツやフランスで最高税率が30~40%を超えたことはほとんどない。

高い生産性と教育体制のおかげで、失業はほとんど生まれなかった。

南部でまだ合法的に続いていた人種差別に終止符を打ち、新しい社会政策を打ち出したのもこの時期だ。

3.レーガンのやったこと

この一連の政策は白人有権者のうち少数の反動的な人たちと、金融エリートの間で大きな反発を生んだ。

レーガンは、こうしたあらゆる不満の波に乗り、当時すでに神話と化していた原初の資本主義を復活させた。

86年の税制改革では最高税率を28%まで引き下げた。

クリントンやオバマも本当の意味でこの決定を見直さなかった。

格差は爆発的に拡大した。しかも経済成長は低調で、大多数の人たちの所得は停滞した。

レーガンはまた、最低賃金の水準を抑え続けた。80年代以降、最低賃金はゆっくりと、しかし確実に、インフレによって目減りした。69年は時給11ドル近かったが、2016年は7ドル程度だ。

その後の民主党政権も、レーガンのイデオロギー(レーガノミクス)を根本的に変えることはなかった。

4.ピケティの結論

現在のサンダース氏の成功から分かるのは、米国のかなりの数の人たちが、不平等の増大と見せかけの政権交代とにうんざりし、革新的な政策で平等を目指す米国の伝統 と和解しようとしているということだ。


正直のところ、ピケティの上げた数字については、別の資料での確認が必要かと考えている。

また、コラムという性格上踏み込んでいないのだが、何故そのような改革が可能だったのかという背景には踏み込んでいない。しかしそれがないと、何故アメリカ国民はやすやすとレーガノミクスを受け入れてしまったのか、ということも見えてこない。

いずれにしても、時代背景をも踏まえたニューディールの全面的な検討(ケインジアンとの交錯もふくめ)が必要だろう。

それは日本の戦後改革や日本国憲法の形成過程とも関わっているはずだ。従って、日本国民が直面する民主主義と国民生活防衛の運動とも根っこを一つにしているはずだ。

バーニー・サンダースの闘いは我々(日米両国人民)の闘いなのかもしれない。


ということで、ネットでサンダースの演説を探したが、日本語ではろくな記事はない。

仕方ないので赤旗の記事を要約紹介する。これは去年11月19日、ワシントンDCのジョージタウン大学での演説だ。この演説はルモンド・ディプロマティークでも重要演説として引用されている。

1.ルーズベルトの思想と行動

* ルーズベルトの就任演説(1937年1月20日)

ルーズベルトは米国を見渡し、目にしたものを語った。それは国民の悲惨な生活である。

ルーズベルトは行動した。数百万人を職場に戻し、民衆を貧困から救いた。そして政府への信頼を確立した。

当時の支配階級はこれに激しく抵抗した。ルーズベルトは彼らを「経済反動主義」と糾弾した。

それが今日、我々のやらなければならないことだ。

これは彼の2期目の就任演説だ。この時米国は依然として大恐慌の余波の中にあった。しかも欧州ではナチスがひたひたと侵略の歩みを始めていた。

すでに前年7月からスペイン内戦が始まっている。この演説からまもなくの4月にはゲルニカ爆撃が行われている。7月には第二次上海事変が始まり、そのまま泥沼の日中戦争へと移行する。

* ルーズベルトの「社会主義」

その頃、ルーズベルトの提案したことのほとんどは「社会主義的」と非難された。

社会保障年金、最低賃金制、失業保険、児童労働の廃止、週40時間労働、団体交渉権、強力な金融規制、預金保証などはすべて「社会主義的」と称された。

しかしこれらの事業こそが米国を形作り、中産階級の基礎となっている。

2.支配階級に挑む運動を

* 「覚悟のある運動」が生み出されなければならない

いま、現実の米国は過去40年の間に偉大な中産階級は没落した。そして政治制度への信頼はきわめて低い。

米国を本気で変えようと思うなら、政治活動を生み出す必要がある。私たちの国を破壊する貪欲な支配階級に挑み、打ち負かす覚悟のある運動だ。

* 不平等を維持する権力構造

今日、米国には巨大な富と所得の不平等がある。しかし肝心なことは、それだけではない。米国にはその不平等を維持する権力構造があるということだ。

だから我々は、今の政府を変えるだけではなくこの国の階級制度を変えなければならない。それが民主的社会主義だ。

3.民主的社会主義とは何か

* 新たな経済の仕組みを生み出すこと、そのために政治制度そのものを変えること

民主的社会主義とは何か。それは富裕者だけではなく、全ての人に役立つ経済の仕組みを生み出すということだ。

ウォール街や億万長者、大企業だけでなく、労働者世帯のために民主的社会主義を実現すべき時だ。

第二に、そのためには今日の米国の政治制度そのものを改革せねばならないということだ。

それは全体として不公平なだけでなく、多くの面で腐敗している。

* 社会主義者は国営化も私企業の収奪もしない

私は政府が生産手段を所有すべきだとは考えていない。しかし米国の富を生み出す中産階級と労働者には相応の配分をすべきだ。

私は私企業を収奪するつもりはない。しかし雇用を海外に移出し利益を上げる企業は信じない。米国内で努力し、投資し、成長するような私企業を信じる。

私が大統領に立候補しているのは、一部の人ではなくなく、すべての人に希望とチャンスがある、そういう国に住む私たちすべての出番だからだ。


この主張は、この間勉強したばかりのジェームズ・ミルの主張と瓜二つです。これは社会主義どころか、ベンサム、ジェームズ・ミル、リカードウと続く初期資本主義の本流の考えでしょう。

赤旗にバーニー・サンダースの演説の要旨が掲載されていて、いくつか分かったことがあった。
とくに、彼がなぜあえて、自らを民主的社会主義者と呼び、その立場を貫いて来たかという理由が見えてきた。
彼はフランクリン・D・ルーズベルト(以下FDR)の崇拝者だ。FDRの採用した個々の施策というより、FDRが勤労者・中間層を擁護すべく、大企業やそのイデオローグと対決する姿勢を貫いたことに共感している。
いわば、「遅れてきたニューディーラー」なのだ。
FDRは最低賃金制や、独占資本の規制策により「社会主義」のレッテルを貼られ攻撃された。しかし今ではその基本構想は米国社会に根付いている。それをもう一度無きものにしようとするのが今の支配層だ。
であれば、今あえて、自らを社会主義者と呼ぼうではないか、というのが彼の一貫した思いだ。
別に旧ソ連や中国型の国家づくりを目指すわけではない。むしろFDRとニューディーラーが思い描いた「良き社会」を取り戻そうと言うのが、彼の目指す方向だ。それが資本主義であるか否かは問わない。
彼が社会主義者を標榜するのは、それによって退路を自ら絶とうという決意の現れなのだろう。
かつてFDRが社会主義者呼ばわりにひるまずに、改革を成し遂げたように、バーニーも社会改革を目指す。
「それを社会主義というなら、よかろう。俺はまぎれもなく社会主義者だ!」

BuzzFeed News というサイトに

「社会主義者がアメリカ大統領候補に? バーニー・サンダースってこんな人――大統領選の注目は、ドナルド・トランプだけじゃない」

という記事があった。溝呂木佐季さんという方が書いたものだ。

非常に親切な記事なので一読をおすすめする。

そこにリンクされたChicago Tribuneをたどると、下記の写真(63年)があった。直接あたってもらえれば良いと思うが、著作権を無視して転載する。クレームあればただちに消します。

ct-bernie-sanders-arrested-20160219
63年にシカゴ南部の黒人地区で公民権を要求して座り込み、警官に排除される髪ふさふさのバーニー。


ルモンド・ディプロマティーク国際版に簡単なバイオがある。

1941年 ブルックリンの生まれ。両親はポーランドからのユダヤ系移民。

1960年ころ、バーニーはシカゴ大学で社会主義青年同盟(YPSL)に参加し、公民権運動、ベトナム反戦運動を担っている。

その後バーモント州で小さな政治結社「自由統一党」の候補として活動を続け、80年に州都バーリントンの市長に当選。市街地の再開発に敏腕を発揮した。

地元週刊紙ヴァーモント・ヴァンガー ド・プレスは、「バーリントン人民共和国」という特別号を発行して敬意を表した。

90年に連邦下院議員に当選。唯一の無所属議員として活動。2006年には上院議員に当選。2010年には高所得者層への減税措置に反対し、8時間にわたるフィリバスター演説を敢行した。

1年前に民主党に入党。大統領候補になるためだ。気楽に受けた民主党幹部はさぞかし臍を噛んでいることだろう。

ルモンドによれば、彼は革命の信奉者ではないし、英国労働党左派のジェレミー・コービンのような急進派でもない。サンダースが重視しているのは、所有と支配ではなく、再分配をめぐる闘いだ。



日航争議団長の山口宏弥さんには申し訳ないが、やはりパンナムは潰れるべくして潰れたと思う。
反論するからには、財務内容の経過とか示さないとダメなのだろうが、そこまでやらなくともパンナムの経営悪化の原因は明らかである。パイロットやスチュワーデスはハリウッド・スターではないのだ。
パンナムを狙い撃ちしたテロは確かにあったし、そのためにパンナムが大きな被害を被ったことも間違いない。しかしそれがなくてもパンナムはダメだっただろう。テロは崖っぷちに立ったパンナムの背中をひと押ししたにすぎない。かつてパンナムに乗った乗客の一人としてそう思う。
航空業界の競争はたしかに熾烈だ。しかしそれは、業界全体としては空前の規模拡大を遂げていることと表裏一体だ。平たく言えば、儲かるからどんどん新規参入があるし、そのために競争が厳しくなるのだ。
パンナムという偉大なノレンがあるのだから、棲み分けして、ニッチ化すれば生きる道はある。帝国ホテルになるかビジネスホテルに徹するかだ。
日航争議団としては、パンナムと串刺しにされて議論されては困るだろう。それは分かる。だからといってパンナムを弁護する必要はない。日航はちゃんと黒字を出し優良経営に転化している。パンナムとは違うのだ。
その辺は、乗っている客にはちゃんと分かるのだ。
ただ住み分けは必ず必要だ。高価格路線を取るなら、それなりの根拠を示さなければならない。有機野菜と同じで、納得すれば乗客は必ず日航を選ぶはずだ。

本日の赤旗に日航争議団長の山口宏弥さんが談話を寄せている。
見出しは「航空機がテロの対象に」というのだが、パンナム破産についての話が面白い。というより、初めて知った。
そのまま引用させてもらう。
米国のパンアメリカン航空(通称・パンナム)はかつて世界の航空界のリーダーとして、世界中に路線網を巡らせていました。
しかし、1991年に運航停止。その後、98年にふたたび経営破綻をして、会社そのものが消滅してしまいました。
米国の象徴として、軍事報復テロの標的となったことが原因の一つです。
82年、パンナム機内で爆弾が爆発する事件がありました。86年にはテログループにハイジャックされ、機内で銃撃戦となり、乗員乗客20人が死亡しました。
88年、イギリスのスコットランド上空でリビアのテロに爆破されて、乗客乗員259人が死亡し、墜落現場の住民11人も巻き添えとなりました。
パンナムは「テロの標的」というイメージが定着しました。利用客が激減し、遺族への補償金支払いなど致命的な打撃を受けました。
(以下略)
まあ、それだけではないのだろうが、少し調べてみるか。

共和党は長期低落しつつある。
赤旗に掲載された米国の政党支持率の推移。
ピューリッツァー・リサーチ・センターの調査を元に赤旗がグラフ化したもの。
米世論調査
共和党、民主党、無党派が1/3づつという構成、それがえんえん4半世紀にわたり続くという事実は、想像の範囲を超えるが、そうなんだから受け入れるしかない。
このなかで共和党のアップダウンが目につく。ブッシュ二世の時は景気はいいし対テロで狂っていた時代だから共和党が伸びた。それがブッシュ政権の末期から落ち始め、91年に比べ8%も支持を落としている。
だとすると、威勢のよいティーパーティー組はどうなっているのだ。選挙では常に共和党の圧勝だが理由は一体何なのか。この投票行動の乖離は民主党支持者の選挙離れということになるが、どんな理由なのか。
民主党はオバマ人気で浮かび上がったものの、その後は漸減状態だ。
面白いのは無党派の内訳で、どちらかと言えば民主党というのが48%で、どちらかといえば共和党というのは35%を占める。
だから純粋な無党派ではない。
グラフを見ると、共和党の減少に合わせて無党派が増えているように見えるが、実は民主党から無党派への移動が多いわけだ。
そうなると結論は二段構えになる。共和党支持者が民主党にシフトし、民主党支持者が無党派にシフトしていることになる。その結果民主党はプラマイゼロとなる。
ただこの長期傾向は投票行動と結びついていない。いつそれが明らかになるのか、もうしばらく辛抱が必要なようだ。


2月19日、ウォルマート・ストアーズが、時間給の従業員約50万人に賃上げを約束した。しかもかなりの引き上げ幅である。

時給を年内に少なくとも9ドル(約1070円)、来年2月1日までに10ドルに引き上げると言うのだ。このために新たに10億ドルを投資するそうだ.

対象は、ウォルマートとサムズクラブ(会員制倉庫型店舗)の約50万人の従業員。米国で雇用する140万人の従業員の約3分の1に相当する。

波及効果は少なくないと予想される。最低賃金に近い水準で労働者を雇用している小売業や外食業などが対応を迫られるだろう。

とくに最賃が低い地方では一般企業との格差が広がる。

ウォルマートは業績好調

ウォルマートの米国内従業員は約130万人にのぼり、民間企業としては全米最大の雇用主だが、これまで従業員の賃金水準をめぐり長らく批判されてきていた。従業員の調査によれば、その多くが公的支援に頼らなければ生活できない状況だったという。

第4四半期ではガソリン価格安を追い風に消費が拡大し、利益が予算に対し12%上回った。

しかし賃上げを発表した日、年間配当を1株当たり4セント引き上げたにもかかわらず、ウォルマートの株価は約2.7%下落した。

浅野秀二のアメリカ寄稿」にはこう書かれている。
 ウォルマートの年間利益は1兆6000億円。そのほとんどは株主配当されている。創業者であるサム・ウォルトンの富は、アメリカの労働者すべての富を上回っている。赤旗報道では、創業者一族の総資産は18兆円に達しているという。利率2%として、利子だけで年間3600億円だ。どうやっても使い切れない。

米国の最賃事情

この1年間で小売業の労働者の平均時給はすでに3%上昇している。同じく低賃金セクターである介護・外食業では3.4%上昇した。

とは言うものの、民間セクターの労働者の平均時給が24.75ドルなのにたいし、小売業の労働者は17.29ドルにとどまっている。

背景にあるのは労働力不足だ。1月の失業率は5.7%で前年同月比マイナス0.9%となっている。このため企業間の労働者獲得競争は厳しさを増している。スターバックスは、全従業員の賃金が最低水準を上回ることを宣伝している。

アパレル大手ギャップは勤務開始時の時給を10ドルに引き上げた。一方で通常店舗を200店閉鎖するなど、人件費高騰に対応し戦線整理を図っている。

「アパレル大手ギャップ」の画像検索結果

政府・自治体の対応

連邦法の下での最低賃金は時給7.25ドル。これは2009年以降、変わっていない。

しかし半数を超える州政府が、独自に最賃水準を定めている。カリフォルニアやコネティカット、マサチューセッツを含む7州の最低賃金が時給9ドルを越えている。

オバマ米大統領はこの動きを歓迎しさらに加速せようと動いている.

前に、赤旗の記事を転載したが、詳細が不明だった(2014年09月08日)。本日の記事でグラフが載せられ一目瞭然なので再掲する。


FRBの「消費者の所得・資産・債務などに関する調査」の結果である。
beikakusa

真ん中のカラムの「階層」というのが所得階層別の人口分布だろう。
1.年間所得の推移
これが左の「所得」カラムだ。総所得の分け前別分布だ。
トップ3%の高所得世帯の年間所得は、13年度で30.5%(2.8%増)に達した。
2.「富」の推移
これが右側の「資産」カラムだ
トップ3%の保有する「富」は、54.4%(9.6%増)に達した。
これと逆に、低位90%の「富」は24.7%(9.5%減)に低下した。
図で示されると、あらためて90%の人々の没落ぶりが実感される。
3.平均所得と中央値の乖離
平均所得は4%増加したが、所得中央値は5%減少した。

これは経済面ではなく、外信面の記事。
FRBの「消費者の所得・資産・債務などに関する調査」の結果である。
きじをそのまま書くと、
1.年間所得の推移
トップ3%の高所得世帯の年間所得は、13年度で30.5%(2.8%増)に達した。
2.「富」の推移
トップ3%の保有する「富」は、54.4%(9.6%増)に達した。
これと逆に、低位90%の「富」は24.7%(9.5%減)に低下した。
3.平均所得と中央値の乖離
平均所得は4%増加したが、所得中央値は5%減少した。
ただし
1.2.3.はそれぞれ比較対象が異なっている。
1.と3.は3年前との比較、2.は14年前との比較となっている。
「富」の中身が分からないが、おそらく「資産」をベースとした数字であろう。

ただし、この「富」というのは、そのほとんどが商品流通や生産的投資に回されないデッド・ストックであろう。大幅金融緩和で発行されたマネーが、そのままデッドストックとなって積み上がっていく構造は、いかなる観点から見ても健全とはいえない。
ここまで行くと、直接税の捕捉もさることながら、資産課税の議論が避けて通れなくなるのではないだろうか。

国際政治/アメリカ のアーカイブ 一覧表 (全42本)

米マックは賃金泥棒 2014-04-04 10:50:15

エドワード・スノーデンからみなさんへ 2013-11-29 00:01:47

失業率より就労率 2013-09-17 11:25:19

ガーディアン紙のハードディスクを破壊 2013-08-26 11:28:11

米国人は議会を信じない 2013-06-18 14:27:29

米多国籍企業は自国経済の足を引っ張っている 2013-06-05 17:53:15

シティズンズ・ユナイテッド判決を打破せよ 2012-11-14 15:46:21

財政の崖は富裕層の崖 2012-11-12 16:51:10

シティズンズ・ユナイテッド判決への反撃が始まった 2012-11-12 13:36:03

「接戦」はマスコミの陰謀 2012-11-07 09:07:04

共和党大会はどんな会議だったのか 2012-09-03 13:48:38

CNN黒人女性カメラマンのコメント 2012-09-01 12:18:06

共和党大会での黒人女性侮辱事件 2012-09-01 11:38:48

9.11ヒステリーは依然残っている 2012-07-27 10:21:51

米兵が毎日1人自殺 2012-06-25 11:14:06

モンローとエラ・フィッツジェラルド 2012-05-14 16:45:58

胸のすくオバマ演説 2012-01-26 10:57:37

キリスト教国アメリカ 2011-11-22 17:38:45

"occupy"は「乗っ取る」こと 2011-11-15 09:59:02

オハイオ: 現場の教師たちの勝利 2011-11-14 17:43:58

オハイオ州公務員法の要点 2011-11-14 15:07:04

大阪はオハイオに学べ 2011-11-11 12:18:01

オハイオ州民投票で労働者の勝利 2011-11-10 12:28:16

オークランド、市民ゼネストの詳報 2011-11-07 22:41:45

オークランドで1万人デモ 2011-11-04 17:43:52

米下院への支持が失われつつある 2011-11-04 16:08:25

占拠運動の最初の成果 2011-11-04 13:40:54

ロスの労・青連帯がすごい 2011-10-27 10:15:17

ウォール街行動1ヶ月 2011-10-21 10:37:58

ウォール街占拠闘争を考える 2011-10-13 23:09:13

ウォール街占拠闘争 その3 2011-10-13 17:11:42

ウォール街占拠闘争 その2 2011-10-13 17:10:23

ウォール街占拠闘争 その1 2011-10-13 17:07:49

「階級闘争」って素敵だ 2011-10-05 13:00:02

垣内亮さんの計算 2011-09-24 11:44:12

オバマが「階級闘争」を始めた 2011-09-21 17:41:46

バフェット発言の背景 2011-09-18 20:56:25

アメリカの飢餓社会化が進む 2011-09-16 10:41:12

9月8日 オバマ大統領の議会演説 2011-09-10 11:49:12

ウォールストリート・ジャーナルがオバマ非難 2011-08-11 17:21:54

フードスタンプ受給者が15%に達した 2011-08-09 16:49:31

アメリカは未だやれる。しかし… 2011-08-03 12:40:02


米政府は大学卒業後の奨学金返済軽減策を打ち出した。
具体的には、月々の返済額の上限を収入の10%以下とするということで、これまではかなり制限されていた枠を拡大するということだ。これで500万人が対象になる。

話はそこではなく、署名後の演説でオバマが語った言葉だ。
中間層は身動きがとれない。貧困層は多くの困難に直面している。一部の大金持ちは“税の抜け穴”の恩恵に浴している。
なぜみなさんはもっと憤慨しないのか。


オーディエンスの多くが学生であったこともあるのだろうが、米国大統領としては信じられない激しい口調だ。ほとんどアジ演説だ。
あと人気の残りが2年半ということで、焦りもあるのだろうが、彼がますます旗幟を鮮明にしていることも間違いないようだ。

「リーマン・ブラザーズ」という会社

もう潰れた会社だし、悪いことばかりした会社だから、別に憶えておかなくてもいいのだが、メモ程度に説明しておこう。と言っても、ウィキペディアの抜き書きみたいなものだが。

1.この企業かなりデカイ

ウィキペディアによれば

資本金 224億9000万ドル
売上高 590億0300万ドル
総資産 6910億6300万ドル

倒産時の負債総額

6,130億ドル

円に換算すると、総資産70兆円ということになる。

銀行の信用というと総資産勝負みたいなところがある。日本の銀行は無理やり3つに統合したが、リーマンはその三大銀行に次ぐ位置に来る。

三菱UFJフィナンシャル・グループ 218.8兆円
みずほフィナンシャルグループ 160.8兆円
三井住友フィナンシャルグループ 143兆円
りそなホールディングス 42.7兆円
三井住友トラスト・ホールディングス 34.3兆円
ふくおかフィナンシャルグループ 12.9兆円
横浜銀行 12.8兆円
千葉銀行 10.9兆円
ほくほくフィナンシャルグループ 10.5兆円
静岡銀行 9.6兆円

ちなみに日本の大企業の総資産は、トップのトヨタ自動車で35兆円だから半分にすぎない。

会社名 総資産額
(百万円)
業種
1 トヨタ 35,483,317 自動車
2 NTT 19,653,689 通信
3 東電 14,989,130 電力
4 三菱商 14,410,665 商社
5 ソニー 14,206,292 電気機器
6 ホンダ 13,635,357 自動車
7 日産自 12,805,170 自動車
8 三井物 10,324,581 商社
9 日立 9,809,230 電気機器
10 オリックス 8,439,710

一企業の倒産にすぎないと書いたが、。それだけでも相当の余波があって当然なくらいの巨大さではある。

創業からの経過

1850年、ドイツ南部からアラバマ州モンゴメリーに移住したヘンリー、エマニュエル、マイヤーのリーマン3兄弟が店を開いたのが始まりだ。リーマン3兄弟は“Lehman”という名の通りユダヤ系だ。

2月革命の直後だから、ドイツでは住みにくかったのだろう。マルクスもこの頃亡命し、パリ、ベルギー、ロンドンと転々としている。その後ドイツには帰っていない。

その頃のアラバマといったらど田舎だ。北部では工業が発展し、黒船に乗って日本まで出向いていたが、南部は辺境地帯で、インディアン刈りで名を馳せた「将軍」たちが綿花農場主とグルになってボス支配していた時代だ。

彼らの開いた日用品店「H.リーマン商店」は農場主たちの御用達となった。彼らは現金で払う代わりに綿花を持ち込んだ。リーマン兄弟は綿花取引に経営の重点を移し大成功した。南北戦争を経て、1870年にはニューヨーク綿花取引所が開設された。リーマンもニューヨークに拠点を移した。何かと人種差別のある南部よりユダヤ人の一大集積地であるニューヨークのほうがはるかに商売はしやすかっただろう。

リーマン兄弟社はゴールドマン・サックスの支援を受けてニューヨーク証券取引所の会員にまで上りつめる。ここまでが成功のレジェンドだ。

リーマン兄弟社は綿花取引ばかりしていたわけではない。第一次大戦後のブームに乗って信用取引や投資コンサルティングにも進出していった。そして29年、大恐慌のさなかに投資業務を分社化し、リーマン・コーポレーションを設立した。後にこれが斜陽の綿花取引に代わりリーマン・ブラザーズ本体を担うようになる。

1984年になって、リーマン・ブラザーズに試練の時が訪れる。会社の内紛から営業不振に陥り、アメリカン・エキスプレスに吸収合併されてしまった。その後の10年間、アメリカン・エキスプレスの一部として存続したが、94年にふたたびリーマン・ブラザーズ・ホールディングスとして独立をはたした。

サブプライムローンの大ヒット

とはいうものの営業基盤は脆弱で、放置すればいずれふたたびM&Aの荒波に飲み込まれてしまう。そこで社運をかけたのがサブプライム・ローンの証券化だ。

ここがミソなので少し詳しく説明する。少し面倒くさいので、順番に説明していく。

アメリカでの住宅ローンは住宅ローン会社が行う。住宅ローン会社には二種類あって、ひとつは純民間、もう一つは政府が援助するローン会社だ。民間会社には違いないが住宅金融公庫と多少似ているところもある。

民間の住宅ローン会社は、日本のように銀行ローンを又貸しするだけの存在ではない。独自に融資資金を集めてくる。それが「モーゲージ証券」というものだ。住宅ローン会社が優良なローンから怪しげなローンまで多数のローンを束ねて、「証券」という形で商品化する。投資家は一定のリスクを取る形でその証券を購入することになる。もちろんその「投資家」の中に銀行もふくまれる。

 「モーゲージ証券」を組織したのは住宅ローン会社だが、機関投資家やヘッジファンドなども、その高い利回りを求めて、その「モーゲージ証券市場」に参加してきた。ここまではわかりやすい話で、リーマンに限らずどの銀行もやっていたことだ。

リーマンのすごいところは2つある。一つは一般の投資信託の中に 「モーゲージ証券」を混ぜあわせた金融商品を開発したことだ。「モーゲージ証券」は別名「ジャンク(屑)債」といって素人は決して手を出さない仕掛けのものだ。それを混ぜた上で「多少リスクが高い投資信託」のような装いを凝らして発売したわけで、これだけでも立派な詐欺だ。

(ジャンク債を利用したもう一つの利殖手段が、97年にLMTCの編み出した方法だ。これは高度な知的技術を駆使した本格派だが、リーマンの方は知性などおよそ感じられないチンピラ詐欺師の手法である。案外そちらのほうが騙しやすいのかもしれない)

もう一つ、さらにすごいのは、「モーゲージ証券」でもとびっきり危険なサブプライム層へのローンまでも組み込んだことだ。「サブプライム」という言葉自体が詐欺的な用語である。サブというのは、ふつうは“副”とか“準じる”とかいう意味だ。プライムというのは“優良”ということだから、すごく優良ではなないが、まずまずという意味にしか採れない。

ところがサブプライムの定義を具体的に見てみると

①所得に対する借り入れが50パーセント以上、

②過去1年間に30日間の延滞が2回以上、

③過去5年以内に破産経験

となっている。「準優良」どころではない、「最悪」だ。日本なら間違いなく自己破産だ。まさにJunkyとしか言いようがない。これならサラ金会社に投資したほうがまだましだ。

こんな連中にカネを貸したらどうなるか。それが下の表だ。

サブプライムローンの延滞率

04年第4Q

05年第4Q

06年第4Q

07年第1Q

08年第2Q

9.83%

11.61%

14.44%

15.75%

18.67%

そんなもの要らないという人の口にドル札を突っ込めば、結果はこうなる。

リーマンはこのような毒饅頭を混ぜ込んだ金融商品をハイリターン商品として売りだしたわけだ。それをスタンダード&プアーズやムーディーズが優良商品として保証したから、全世界で売れまくった。

破産の道へまっしぐら

起死回生を狙った詐欺まがいの戦略は大成功。リーマンは全米屈指の大銀行へと成長をとげる。しかしそれもつかの間、住宅需要がしぼむとあっという間に坂道を転げ落ちていく。

08年の第二Qには純損失が39億ドルに上った。株価は4ドル台にまで急落した。最後は韓国政府系の韓国産業銀行に身売りしようとしたがそれもかなわず、15日の破産・解体へと突き進んでいく。誰もそれを止めることは出来なかった。

最後にファルドCEOは個人のリーマン株をすべて売り抜けて逃げ去った。160年の歴史を持つ巨大金融機関がこの世から姿を消した。

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