鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

AALA関連記事は「aala_newsの編集日記」http://blog.livedoor.jp/aala_news/ に移りました(6Nov.2023) 中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 「ラテンアメリカの政治」(http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ )がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

カテゴリ: 14 国際政治/ヨーロッパ

グーグルで “対ロ制裁 失敗” と入れて検索してみた。
google

画面がこれ。全部は到底表現できないので、以下コピペで並べてみる。


対ロシア経済制裁の失敗を認めよ | フォーリン・アフェアーズ
「対ロシア経済制裁の失敗を認めよ」という題名からして厳しい。内容は有料だが、紹介文が読める。

<まえがき>
「ロシアに政策変更を強いる」という、経済制裁の最大の目的に照らせば、制裁は完全に失敗に終わっている。モスクワはウクライナから手を引いていないし、近く手を引くとも思えない。むしろ制裁は、ヨーロッパの経済利益を傷つけ、アメリカの経済利益や地政学的利益にもダメージを与えている。ターゲットを絞った制裁策も、結局は、ロシアのエリート層よりも、民衆を追い込んでいる。このために、「自分たちの暮らしが大変になったのは欧米諸国のせいだ」と考える市民たちは、プーチンを支持し、社会的連帯を強めている。ウクライナ危機を解決し、ロシアの無謀な行動を抑止したいのなら、欧米の指導者たちは、効果のない制裁中心のアプローチを捨てて、むしろウクライナ経済の支援や、ロシア軍の近代化阻止、ヨーロッパのロシアエネルギーへの依存率を低下させるための措置をとるべきだろう。

<対ロ経済制裁は失敗だった>
2014年3月に、ロシアがクリミアを自国に編入すると、オバマ政権は、いまや主流となりつつある対抗策、つまり、包括的な経済制裁ではなく、ターゲットを絞った限定的な経済制裁策を発動した。ワシントンは、ウラジーミル・プーチン大統領の取り巻きを中心とする、100人超のロシア人の資産を凍結するとともに、彼らのアメリカ入国を禁止した。その後、欧州連合(EU)は、制裁の対象者をさらに約100人追加した。
金額にすると、制裁はかなりのコストをロシアに強いている。プーチン政権に近いロシア銀行は、制裁発動後数カ月で5億7200万ドルの資産を凍結された。2014年7月にマレーシア航空17便がウクライナ東部で、ロシアが支援する武装勢力によって撃墜されると、ワシントンは、製造業、銀行、国営企業など、ロシア経済の主要部門を対象にさらに厳格な制裁を課した。これによって、ロシアの歳入の半分以上を占める石油・天然ガス会社への投資や技術移転は実質的に不可能になり、モスクワにとっては大きな痛手となった。
現在のロシア経済の窮状を考えると、これらの制裁はかなりの効果があるようにも思える。実際、制裁開始以降、ルーブルの価値は対ドルで76%も低下し、2015年だけでも消費財の価格は16%上昇している。国際通貨基金(IMF)は、2015年のロシア経済は3%超のマイナス成長だったとの見方を示している。
だが現実には、欧米の政策当局は運が良かっただけだ。制裁は、世界的な原油安と重なったからこそ、ロシア経済の苦境に追い打ちをかけることができた。制裁が経済的苦境を作り出したわけではない。ルーブル安も、制裁ではなく原油安の副産物だった。

紹介ここまで これで雰囲気は十分味わえる。
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対ロシア制裁がほとんど成果を生んでいない理由
Forbes JAPAN Mar 5, 2023

こちらは短いが全文が読める。ここでは要約のみ紹介する。
西側諸国が導入した一連の経済制裁は、ほとんど効果を上げていない。むしろ、逆効果を生んでさえいる。制裁が何の助けにもなっていないのは極めて無念なことだ。制裁の目的はロシア経済に打撃を与えることではなく、プーチン政権の考えを変えさせることだ。問題は、制裁が課せられると、国民は国への忠誠心が強まることだ。プーチン大統領の支持率は、2023年1月時点で82%となっている。また、ロシアの主要な貿易品目である原油の輸出は若干減っているが、1日当たり1000万バレルを超えている。制裁の目的が単に罰を与えるであれば、効果はある。しかし、ロシア政府に戦争をやめさせることに関しては効果はない。

対ロシア制裁は失敗なのか 2022年08月19日
大和総研
Aug 19, 2022 — 西側諸国による対ロ制裁は、主にロシアの内需に影響を与えている。 ... 
Forbes とほぼ同様の評価


対ロシア制裁、まだ効かないのはなぜ
Wall Street Journal
Jun 17, 2022 — プーチン氏は、西側が仕掛けた経済の電撃戦は失敗したと主張し、制裁の経済的影響を小さく見せようとしている。だが短期的な危機を回避できたのは ...

EUの対ロシア制裁は失敗、新たな戦略必要=ハンガリー首相
Reuters
Jul 24, 2022 — 7月23日、ハンガリーのオルバン首相(写真)は、EUの対ロシア制裁は効果が出ておらず、新たな戦略が必要との考えを示した。

対ロシア制裁は失敗か
nikkei.com
Jul 29, 2022 — 対ロシア制裁は失敗かロシアがパイプラインを通じた天然ガスの供給を減らし、欧州への締め付けを強めています。欧州はウクライナに侵攻したロシアへの ...

限界浮き彫り 抑止効果薄く、戦火やまず―ウクライナ侵攻1年
時事通信
Feb 20, 2023 — 対ロ制裁、限界浮き彫り 抑止効果薄く、戦火やまず―ウクライナ侵攻1年 ... たった一連の対ロシア制裁は、期待通りの効果を発揮したとは言い難い。

対ロシア制裁は失敗なのか
Policy Commons
西側諸国による対ロ制裁は、主にロシアの内需に影響を与えている。ハイテク品などの 輸出規制で、資本財を輸入に依存する製造業が落ち込んでいるほか、前年比二桁のイン ...

米、対ロ制裁を拡大 個人・団体300超を追加
朝日新聞デジタル
May 20, 2023 — 米政府は19日、ロシアによる「制裁逃れ」などを支援しているとして、20カ国以上にまたがる300を超える個人と団体を、対ロシア制裁の対象に新た ...

「制裁は必ず失敗する」 習氏、プーチン氏に
産経ニュース
Dec 30, 2022 — 習氏は「封じ込めや抑圧は人々の支持を得られず、制裁や干渉は必ず失敗する」と述べ、対露制裁を行う米欧などを牽制(けんせい)した。習氏は、中露 ...

次画面

ロシアへの「経済制裁」効いているのかいないのか
Toyo Keizai
ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始してから、4カ月以上が経過した。プーチン大統領の当初の目論見とは裏腹に、彼がいう「特別軍事作戦」は、ロシア軍の総力を挙げた ...

ウクライナ情勢に係る各国・地域の見方 | 特集 - ビジネス短信
ジェトロ
ロシアのウクライナ軍事侵攻に対し、西側諸国は過去最大の対ロ制裁を発動。 ... 官、台湾への「曖昧戦略」維持を明言、ロシアのウクライナ侵攻は「戦略的失敗」(台湾、 ...

EUの対ロシア制裁 ダイヤモンドはなぜ対象外?制裁に限界も?
NHK
Jan 30, 2023 — 制裁を“科すことができない”のはダイヤモンドだけ? ほかにもあるようです。 ベルギー選出のヨーロッパ議会議員、ファンブレムプト議員が挙げたのは一部の ...

なぜアジアでは意見が分かれているのか ウクライナ侵攻
BBC
Mar 11, 2022 — 【解説】 対ロシア制裁、なぜアジアでは意見が分かれているのか ... ウクライナ侵攻を開始してから2週間で、ロシアは世界最多の経済制裁を科される国 ...

世界への影響力を保つロシアの原子力産業:なぜ欧州は制裁 ...
Sasakawa Peace Foundation
May 24, 2023 — これに対し、ドイツのハベック経済・気候保護相は2023年4月、対ロシア制裁の中で原子力産業がまだ優遇されているという事実は正当化できないと述べ、EUの ...

対ロシア制裁 1万件突破 経済戦争は限界か 「次の一手」は
毎日新聞
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Jun 24, 2022 — ロシアに対する経済制裁が1万件を突破した。しかし、ウクライナ侵攻が収束する気配はない。プーチン露大統領は「制裁は失敗した」と言い切る。

国問研戦略コメント(2022-10) 長期化するウクライナ戦争
日本国際問題研究所
Aug 12, 2022 — 1 ロシアによるウクライナ侵略と西側諸国による対ロシア経済制裁の発動 ... キーウ攻略に失敗したロシア軍はその後東部ドンバス地域に戦力を集中 ...

対ロシア経済制裁の効果は限定的か - 一般財団法人 ...
国際貿易投資研究所
May 16, 2022 — 英国のエネルギー調査機関WoodMackenzieによれば、中国の石油精製業者は、あまり多くのロシア産原油を引き取ることができないという。具体的には、制裁 ...

対露制裁 - 。今日の最新ニュースと主な出来事。
スプートニク日本ニュース
対露制裁: プーチン大統領は制裁があるにもかかわらず、ロシアに数十億ドルの投資を誘致=米軍元諜報員, ロシアは ... G7の対露制裁強化は西側諸国の失敗の証=英紙.


対ロシア制裁が失敗に終わる理由 米誌「ナショナル・インタレスト」
スプートニク日本ニュース
Dec 25, 2022 — 制裁はウクライナ紛争を終結できないだけでなく、世界経済に多くの悪影響をもたらしている。米誌「ナショナル・インタレスト」コラムニストのマリア・ ...

ロシア制裁
arabnews.jp
岸田首相、対ロ追加制裁を発表=個人140人の資産凍結. 05 May 2022 ... 対ロ追加制裁を検討=G7首脳と週内協議へ―バイデン米大統領. 04 May 2022 ...

対ロシア経済制裁が「勝利の方程式」になる条件:侵略終結 ...
新潮社 Foresight(フォーサイト)
Apr 18, 2022 — EU(欧州連合)はロシア政府・企業が資金調達できないよう、格付機関に対し、格付けの撤回を求めていた。今後、主要格付機関による正式なデフォルト認定は ...

林外務大臣会見記録|外務省
Ministry of Foreign Affairs of Japan
Apr 19, 2022 — ウクライナ情勢(対露経済制裁) ... 経済制裁について、ロシアの状況が安定していると言って、経済制裁は失敗しているという認識を示しました。

EUの対ロシア制裁は失敗、新たな戦略必要=ハンガリー首相
Twitter
4:45 AM · Jul 25, 2022.

国際経済フォーラムで強気姿勢を崩さなかったプーチン大統領
Nomura Research Institute
Jun 20, 2022 — 先進国の対ロ制裁は失敗と主張. ロシアのプーチン大統領は17日、北西部サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムで、先進国による「対ロ制裁 ...

プーチン大統領「経済制裁は失敗した」は本当か? エコノミスト ...
J-CAST ニュース
Apr 19, 2022 — 資源の争奪が招く「地政学リスク」の高まり懸念 · 中国がロシアへの経済制裁の「抜け穴」に? · 将来、経済制裁に不満な国々がタッグを組む可能性 · 対ロシア ...

中国標的のEU対ロ制裁案、ドイツなどが慎重姿勢=外交筋
Yahoo! JAPAN 2022年5月
[ブリュッセル 11日 ロイター] - 欧州連合(EU)の加盟27カ国は10日、ロシアのウクライナ侵攻に関連して中国に制裁を科す欧州委員会の提案について協議した ...

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まだまだ続くのだが、傾向を見るにはこの程度で十分だ。

最大の特徴は商業メディアは、「制裁、失敗」を禁句としていることである。これに対し大企業のシンクタンクは、ごく初期の段階から「制裁、失敗」の評価を明らかにしている。もちろん決して主流というほどに多くはないし、慎重に“?”マークを付けているものも多い。

これらの発言は、去年4月に制裁を発動して、早くも1ヶ月後に打ち出されている。そもそも西側のウクライナ戦略は軍事支援+経済制裁の二本柱によって成り立っていた。しかも経済制裁の効果は即効性で、1,2ヶ月以内にロシアは音を上げるだろうと見られていた。

とすればその後今日に至るまでの1年間は何だったのか、その意味が問われる。とくに昨年暮れ以降は、軍事的にも良くてそこそこ、悪い予想では総崩れ寸前ということになった。

現在は大規模な軍事支援によってかろうじて戦線は維持されているが、それがいつまでも持つ訳はない。

最近のダム破壊など、どう考えてもウクライナ側の仕事と思われるが、以前の原発攻撃と言い、このような自爆攻撃戦術は、軍事組織としての末期症状だ。

とにかく人道的立場から見ても、一刻も早く停戦に持ち込むべきだ。いたずらに人名・資源を浪費することは許されない。このままではウクライナは向こう20~30年は人も住めない荒れ地になってしまう可能性がある。
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ところで、これらの記事はロシアは我慢できるだろう。だから制裁は成功しないだろうという筋書きになっている。それ自体は正しいのだが、実際にはロシアのやせ我慢だけで話が済むわけではない。
制裁はそのようなレベルのものではなかった。ロシアの息の根が止まってもおかしくないほどの全面的なものだった。
それを耐えることが出来たのはたんなるやせ我慢、「欲しがりません勝つまでは」の精神主義だけではなかった。個別には中国の金融支援、人民元のグローバルサウスへの普及、ブリックスが制裁への防波堤となったこと、インドのロシア産石油への関与、トルコ経由の地下交易ルートなど諸要因が絡んでいる。
そのあたりまで深く分析した報告は、グーグルからは浮かび上がってこない。読者の皆さんは是非、AALAニューズからその辺の情報を汲み取っていただきたいと願う。

Common Dreams
17 May 2023
 
米国国防専門家によるウクライナ和平の呼びかけ
戦争は "問答無用の大災難"
(ニューヨーク・タイムズの全面広告について)

A TIMELY CALL FOR PEACE IN UKRAINE BY US NATIONAL SECURITY EXPERTS

A FULL-PAGE AD IN THE NEW YORK TIMES CALLS THE WAR AN “UNMITIGATED DISASTER”



by Medea Benjamin & Nicolas J.S. Davies


2023年5月16日、ニューヨークタイムズ紙は、ウクライナ戦争についての全面広告を掲載した。そこには米国の国家安全保障の専門家15人が署名していた。
その見出しはこうなっている。
「米国は世界の平和のための力となるべき」
それはアイゼンハワー・メディア・ネットワークの起草になるものである。
NYTimes



ウクライナ戦争とその背景

この声明は、まずロシアの武力侵攻を強く非難する。その一方で、ウクライナ危機を客観的に説明している。米国政府やニューヨーク・タイムズ紙のこれまでの説明よりはるかに正確なものだ。
そこにはNATOがいかに拡大されたか、米国がいかに破滅的な役割を果たしたか、度重なる警告を歴代の米国政権が以下に無視してきたか、最終的な開戦に至る緊張の高まりをいかにアメリカが煽ってきたかなどが触れられている。
声明は、ウクライナ戦争を "問答無用の大災難"と呼び、「外交を通じて戦争を速やかに終わらせるよう」、バイデン大統領と議会に対し、強く要請している。そして早くしないとこの戦争は「制御不能に陥りかねない軍事的エスカレーションの危険性」をはらんでいると警告する。

残された和平の外交的チャンス

米国には、いまならゼレンスキーに外交のチャンスをつかむよう促すことができる。
しかしもし米国がその代わりに、ウクライナの攻撃計画を継続させ、支援することに固執するならば、米国は、平和のチャンスをつかもうとしなかったことの責任を問われ続けることになるだろう。
そして際限なく増えていく、この戦争の恐るべき人的犠牲について、責任を負い続けることになるだろう、
賢明で経験豊富な元インサイダー(外交官、軍人、文官たち)によるこの外交の呼びかけは、それがいつ発表されたとしても貴重なものであっただろう。
しかし戦争が始まって442日、戦争が特に重大な局面を迎えている今、彼らの訴えは必要なのだ。

ゼレンスキーの抱える苦境

5月10日、ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍の「受け入れがたい」損失を避けるため、待望の「春の攻勢」を延期すると発表した。それは重大で意味深長な声明である。
欧米の政策は、ゼレンスキー大統領を繰り返し解決不可能なほどの苦境に追い込んできた。
彼は欧米のさらなる支援と武器供与を求め、それを正当化するために、戦場で前進の兆しを示す必要性に迫られてきた。
一方では、何万人ものウクライナ人が新しい墓地に埋葬されている。戦争の継続は、真新しい墓地に象徴されるような衝撃的な人的犠牲を生んでいる。
ウクライナの反撃が予定より遅れたとして、それがどのくらいまでなら、戦術上許容しうるのか、それは不明である。ただし、その遅れが反撃作戦の縮小・中止という方向に向かうのなら、まったく話は違ってくる。ゼレンスキーは、明白な軍事的成果を示さなければならない。それが欧米の要求を満たす条件だからだ。
ウクライナへの武器と資金の流れを維持するために、軍事的な進展を示すという欧米の要求を満たすために、ゼレンスキーはあと何人犠牲になっても構わないと考えているようだ。しかしその計算には、あと何人自国民を犠牲にできるかという根拠が必要だ。その点で彼は限界に達しているように見える。

元英国首相ボリス・ジョンソンという悪魔

ゼレンスキーの苦境は、ロシアの侵略でもたらされた。そのことは間違いないが、2022年4月に当時の英国首相ボリス・ジョンソンという悪魔と取引したせいでもある。
ジョンソンはゼレンスキーに、イギリスと「オール西欧」が長期の視点で支援すると約束した。ウクライナがロシアとの交渉を拒否すれば、我々はウクライナの旧領土もすべて回復させる、そのために彼を支援する、と約束した。
ジョンソンはそんな約束を果たせるような立場であったことは一度もなかった。
首相を辞任させられて以来、彼は2014年以前の国境線への復帰を語ったことはない。彼が主張するのは2022年2月以降にロシアが侵略した領域からの撤退のみだ。
しかし、その妥協案こそ、2022年4月、戦死者のほとんどがまだこの世で生きていて、トルコでの外交協議で和平合意の枠組みがテーブルの上にあったとき、ジョンソンがゼレンスキーに説得して同意させたものだった。

度重なる軍備投入は事態解決の鍵にはならず、人的犠牲を増やすだけ

ゼレンスキーは、ジョンソンが広げた大風呂敷を、必死になって欧米の支持者に守らせようとした。
しかし西側諸国の兵器がいくら投入されても、この膠着状態を決定的に打開することはできなかった。いまやこう言える。「米国とNATOが直接軍事介入しない限り、戦線の展開は難しい」と。なぜならこの戦争は、もはや、砲撃戦と塹壕戦、市街戦によって行われる残酷な消耗戦に発展してしまったからである。
アメリカの将軍は、西側諸国がウクライナに600種類の武器システムを供給していると自慢している。600種類という多彩性が実は大問題だ。例えば、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカから送られた105ミリ砲は、すべて異なる砲弾を使用している。
また、ウクライナが大損害を受けると生存者を新しい部隊に再編成する。そのたびに、これまで使ったことのない武器や装備を使いこなすために再訓練を受けなければならない。
米国は少なくとも6種類の対空ミサイルを納入している。Stinger、NASAMS、Hawk、Rim-7、Avenger、そしてPatriotミサイル・バッテリーである。

(訳注: Forbes によると、「パトリオット」は、Phased Array Tracking Radar for Intercept on Target の略。Raytheon Missiles & Defenseによって製造されている。各バッテリーには、レーダー、管制ステーション、発電機、5 ~ 8 基の発射装置、支援車両/機器が含まれており、運用には約 90 名の人員が必要である。戦域規模の地対空ミサイル防衛システムと考えられており、移動可能ではあるが、「設置面積の関係で即移動可能というわけではない)

しかしペンタゴンのリーク文書によると、ウクライナが使っているのは、依然としてロシア製のS-300とBuk対空システムである。これがウクライナの主要な防空防御のほぼ90%を占めている。
NATO諸国は、ロシア製ミサイルシステムに使用可能なすべてのミサイルと武器の備蓄を探しだした。 
しかし、ウクライナはそれらの物資をほぼ使い果たし、新たな反撃の準備に入ったところで、ロシアの空爆に対して攻撃部隊が防御対応を取れないことが判明した。それは防空能力力ゼロの脆弱な軍隊になった。

有利な停戦のための軍事作戦

少なくとも昨年年6月以降、バイデン大統領をはじめとする米政府高官は、戦争を外交的解決で終わらせる必要があることを認めた。そしてウクライナを「交渉の席で可能な限り強い立場に置く」ために武装強化していると主張してきた。
彼らは、次々に新しい兵器システムを送ってきた。そしてそのたびに、ウクライナの反撃力は強化され、戦略目標に貢献し、ウクライナの立場をより強いものにしてきたと主張した。
しかし、ペンタゴンのリーク文書や米国とウクライナの当局者の最近の発言から、以下のことが明らかになった。
 ウクライナが計画している「春季攻勢」(すでに中止になっており、夏に延期されている)は、昨年秋の一斉攻撃ほどの成果は期待できないという。たしかに前回は領土の一部を回復したが、これから行われる攻撃には奇襲の要素がなく、ロシアの強力な防御に遭遇することになるだろう。

軍事作戦が成果を上げる見込みは薄い

国防総省のリーク文書は、「ウクライナ軍の訓練や弾薬の供給は不十分なままにとどまるだろう。攻勢の進展は妨げられ、犠牲者は増えるだろう」と警告し、「秋の攻勢よりも領土獲得は少ないだろう」と結論付けている。
目立った結果が期待できず、死傷者も増えるであろう新たな攻勢が、今後登場するかも知れない交渉の席で、ウクライナをいくらかなりと強い立場に立たせることができるだろうか。
もし来るべき攻勢で、西側諸国の膨大な軍事援助でさえも、ウクライナに軍事的優位性を与えることが出来なかった時、あるいは犠牲者を戦闘持続可能なレベルまで抑制することができなかった時、ウクライナはより強い立場ではなく、より弱い立場に立たされることになる、 

もはや和平に条件はつけられない

今やバチカン、中国、ブラジルなど、世界各国から和平交渉の仲介の申し出が相次いでいる。
昨年秋のウクライナの軍事的勝利の後、米国のマーク・ミレー(Mark Milley)統合参謀本部議長は公言した。
「強者の立場から交渉する時が来た。交渉の機会があれば、平和が実現できれば、それをつかめ」
それ以来、既に6カ月が経過している。それは二重、三重に悲劇である。
2022年4月に起きた、和平交渉を台無しにするという外交的失敗の上に、無理やり戦争に持ち込んだ末に、その戦争画失敗に終わったことで、彼らの望んだ外交上のチャンスは失われた。
外交交渉のためにさらに強い交渉力を手に入れるという、ミレー将軍が掴みたかった力はもはや実現不可能である。
米国は、ゼレンスキーに外交のチャンスを与える代わりに、ウクライナの反撃計画を支持し続けた。米国はそのことに大きな責任を負っている。 
この戦争がもたらした驚くべき、そして増え続ける人的犠牲の責任は米国が負わなければならない。

今すぐNATO政策の見直しを

The New York Timesの声明に署名した専門家たちは、次のことを回想している、
1997年、米国の50人の上級外交専門家が、NATOの拡大は「歴史的な政策ミス」であるとクリントン大統領に警告した。しかし残念ながらクリントンはその警告を無視することを選択した。
バイデン大統領は、いまもなおこの戦争を長引かせることで、自らの政策の誤りをさらに追い続けようとしている。それは間違いであり、本日、安全保障政策専門家が提起した助言を受けるべきである。
そしてウクライナ紛争の外交的解決に貢献し、米国の持つ力を世界の平和のための力としていくことである。

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MB & ND


Al Mayadeen
16 Apr 2023

ゼレンスキーは米国民から4億円を横領していた
(ハーシュ・レポートの紹介)

Seymour Hersh: Zelensky embezzled $400 million from US taxpayer money

https://english.almayadeen.net/news/politics/seymour-hersh:-zelensky-embezzled-400-million-from-us-taxpay

はじめに

ピューリッツァー賞受賞者のシーモア・ハーシュが日曜日に最新のレポートを発表した。
「ウクライナのゼレンスキー大統領が、燃料購入用の数億ドルを横領した」というものだ。

seymour-hersh

これによると、ウクライナ政府は米国の税金を使ってロシアのディーゼル燃料を購入し、軍備を増強していた、 
さらに、ウクライナ政府幹部は、国際的な民間武器商人と契約を結ぶために血眼で、(米国からの援助武器を横流しするための)トンネル会社の設立を競い合っているとも言及した。

「中央情報局(CIA)のアナリストによる推定では、横領された資金は、昨年度少なくとも4億ドルであった」
別の専門家は、キエフ政府の腐敗度はかつてのアフガン政府に近づいていると指摘した。それによれば、「多数のウクライナ政府機関が、武器商人に銃や弾薬を輸出するためのフロントビジネスを競って設立している。代行業者にはポーランド、チェコ共和国、イスラエルが含まれている」
ハーシュのレポートはこう付け加えている。『ウクライナからしっかりした監査報告が出ることはないだろうが…』

ウクライナはパキスタン経由で燃料を購入する事になっていたが、実際にはロシアから燃料を購入していた。それを指示したのはなんとゼレンスキー大統領、ロシアがウクライナの領土を侵略したと非難している人物である。
ハーシュはさらに、彼らが米国からディーゼル油のために割り当てられた巨額の資金を横領していた事実を明らかにした。

飽くなき利益追求

ロシアのディーゼルの価格は米国などと比較すると安い。その差額をウクライナ人が懐に入れ、数億ドルを稼いでいる。

最初は、ロシアで生産された石油製品がブルガリアとラトビアを経由してウクライナに運ばれたとの報道だった。
ハーシュの情報筋は、その後キエフでゼレンスキーとCIA長官ウィリアム・バーンズの間で行われた会談の意義を強調した。 
会談は、ウクライナの指導者に「印象的なメッセージ」を伝えた。

"キエフ政府の将官と高官は、ゼレンスキーが多くの利益を取っていることを知りその強欲ぶりに怒っていた。そこでバーンズはウクライナの大統領に言った 。
「私はCIAやアメリカ政府の要人に知られた腐敗分子35人をリストアップしたと告げ、そのリストをゼレンスキーに渡した」

バーンズはまた、キエフ政府をめぐる数々の汚職スキャンダルについて、次のように強調した。 
戒厳令が敷かれ、18歳から60歳までのウクライナ人男性が、政府の許可なくウクライナから出国することを禁止されている。にもかかわらず、元検察官のトップがスペインで休暇をとっていたことが明らかになった。
ゼレンスキーはこのあと1月24日に、さまざまな政府省庁やウクライナの法執行機関内で『人事上の決定』を発表した。
そのなかでゼレンスキーは、国家公務員が公務と無関係な目的で海外渡航することを禁止すると発表した。

背景の物陰に隠されたもの

今年に入って、ハーシュは重要情報を連発している。
2月、ロシア・ドイツ間の天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の破壊工作の背後に米国がいたことを明らかにした。 
それ以来、ウクライナと米国の関係については、有名なジャーナリストから多くのレポートが発表されるようになった。

ハーシュはまた、3月中旬に、米国がウクライナ戦争に踏み込む可能性を検討していると述べた。その条件は、キエフがロシア戦争で防衛線に亀裂が入り、敗北の兆候を見せ始めたら踏み込むというのだ。

重要なのは、ハーシュの情報源がすべて米国政府。軍。情報機関などから流出した内部情報であることだ。今回の場合は明らかにCIA上層部にディープスロートがいると想像できる。
このことは、モスクワに対するウクライナの代理戦争が「うまくいっていない」ことに、政府上層部の中に不満を抱いていることの反映であると見るべきであろう。(訳:SS)

(ということは、今後とも政権内の反ネオコン派がドシドシ、秘密情報の蔵出しをやるだろうということだ)

Al Mayadeen is a pan-Arabist satellite news television channel launched on 11 June 2012 in Beirut, Lebanon. Many of Al Mayadeen's senior staff were former correspondents and editors of Al Jazeera.



The Progressive Magazine
APRIL 26, 2023

"Pentagon Leaks" Punch a Hole in the U.S. Propaganda War

「ペンタゴン漏洩事件」、プロパガンダ戦争に強力パンチ


BY MEDEA BENJAMIN, NICOLAS J S DAVIES 


はじめに

重大事件が発生した。ウクライナ戦争に関するペンタゴンの秘密文書が流出したのだ。
このことに対する米商業メディアの最初の反応は、水面に向かって泥つぶてを投げ込むようなものであった。 彼らは「何も見るべきものはない」と断言し、21歳の空軍州兵が友人の気を引くために秘密文書を公開したと語り、非政治的な犯罪記事として葬り去ろうとした。

ジョー・バイデン大統領は、このリークを「重大な結果をもたらすものではない」と断じた。
Medea_Benjamin_at_2007_State_of_the_Union_protest
Medea Benjamin at 2007 State of the Union protest

文書の意義: 国防総省がウクライナの戦況不利を認めたこと

あらためて事実に注目しよう、これらの文書が明らかにしたのは、戦争がウクライナにとって、政治指導者たちが認めている以上に悪い方向に進んでいるということだ。

…どちらの側も今年中に膠着状態を打破することはできず、文書の1つにあるように、「2023年以降も戦争が長引く」可能性が高い…
と、文書の一つは明かしている。

このようなペンタゴンによる「見通し」が露見したのだから、政府は当然、国民に改めて事情説明する必要がある。

流血を長引かせることで、本当のところ、一体何を実現しようとしているのか? 
そして、2022年4月に米国が阻止した和平交渉の再開をなぜ未だに拒み続けているのか?

私たちは、この和平交渉を妨害したことは、大変な間違いだったと考えている。また英国首相ボリス・ジョンソンの好戦的姿勢に屈服したことも同様である。 
現在の米国の政策は、さらに何万人ものウクライナ人の命と、広大な国土を犠牲にして、この過ちをさらに悪化させている。

戦争当事者は一般に、自分たちに責任がある民間人の犠牲者の報告を過小に見積もり、専門職としての軍は自軍の死傷者数を正確に報告することを基本的な責務としている。

しかし、ウクライナ戦争をめぐっては激しいプロパガンダ合戦が行われている。両国が戦闘犠牲者の数を一種のゲームとして扱っている、 
その結果、敵の死傷者は組織的に誇張され、自国の死傷者は過小評価される。

公開されている米国の推定では、ウクライナ人よりも多くのロシア人が殺されているという考えが支持されている。 
それは国民の間に、「ウクライナは、私たちが武器を送り続ければ、きっと戦争に勝つことができる」という考えを押し付けている。すなわち意図的に世論を歪めている。

リークされた文書は、米軍の内部情報による両軍の死傷者数の評価である。しかしさまざまな文書や、ネット上に出回っている情報では、矛盾した数字が示されていることもある。そのことから、米軍筋の角度の高い情報が明らかになったにもかかわらず、プロパガンダ戦争は相変わらず続いている。  

この点について漏洩文書の記載を紹介する。
米軍情報部は、「部隊の消耗率に関するウクライナ側情報には信頼が置けない」と述べている。
そしてその理由として、「ウクライナ軍側の情報共有には偏りがある。情報源によって死傷者数が変わる」と指摘している。

ようするに、ウクライナ側の方が死者数が多いというペンタゴン文書の記述は、連邦政府当局の否定にもかかわらず、正しいのであろう。

現在の戦闘の主流は、砲弾が飛び交う血みどろの消耗戦である。
そして、ロシアがウクライナの数倍の砲弾を発射していることは、広く報道され知られている。

いくつかの資料では、双方の死者数は10万人に迫り、死傷者を合わせると35万人に上ると推定されている。

また、別の漏洩文書は明らかにしている。
ウクライナはNATO諸国から送られた在庫を使い切った。すでに防空の89%を占めるS-300とBUKシステム用のミサイルが不足しつつある。
そして長距離ミサイル攻撃とドローン攻撃を主な戦術とするロシア軍のに対して耐えきれなくなっている。5月か6月にロシア軍が全力攻撃を開始すると、危機状態に陥るかも知れない。

幻の春季大攻勢

最近の欧米の武器輸送は、次のような予測によって国民に正当化されている。
すなわち「ウクライナはロシアから領土を奪還するために新たな反攻作戦を開始する。それがまもなく可能となる」
この 「春季攻勢」のために、新たに納入された西側の戦車が動員される予定だ。戦車戦の訓練のために、12個旅団、つまり最大6万人の軍隊が編成された。
ウクライナに3個旅団、ポーランド、ルーマニア、スロベニアにさらに9個旅団が作られる予定だ。

しかし、2月末の漏洩文書によると、海外で装備・訓練を受けている9旅団の装備は平均して半分以下だった。訓練も平均して15%程度にとどまっていたことが明らかになった。 
一方、ウクライナはバクムートに援軍を送るか、町から完全に撤退するかという厳しい選択を迫られた。そして迫り来るバクムート陥落を防ぐために「春の攻勢」部隊の一部を戦列から外す道を選択した。

米国とNATOは2015年にドンバスで戦うウクライナ軍の訓練を開始した。ロシアの侵攻が始まってからは他国で訓練を行っている。NATOはウクライナ軍をNATO軍の基本水準まで引き上げるため、6ヶ月間の訓練コースを提供している。
これを踏まえると、「春の攻勢」のために集められている部隊の多くは、実際には夏(7月か8月)までに訓練を終え前線に配備される可能性は低い。

リークされた文書は、春季攻勢計画の結論として「訓練や弾薬の供給におけるウクライナ側の持続的な不足に悩まされるだろう。それが攻撃の進展を妨げ、犠牲者を増やすだろう。最も可能性の高い結果は、わずかな領土の獲得にとどまる」と予想している。

この文書は、ロシア側の深刻な欠陥も明らかにしている。
バクムートでの激戦は数カ月にわたって続いた。双方で何千人もの兵士が倒れ、街は焼け野原になったが、ロシアは未だに100%支配できていない。

私たちは、バイデン大統領の計画がどのようなものなのか、あるいはそもそも彼がなにか計画を持っているのかさえ、疑わざるを得ない。
このような懐疑心は私たちだけではないことが判明した。
商業メディアは無視を決め込んでいるが、今回の漏洩は実は2度目の話だ。 


今やCIAや軍部まで政府の意図を疑っている

米国の情報筋は、ベテランの調査記者シーモア・ハーシュに次のように語っている。
「私たちも同じ質問をした。結果わかったことは、ホワイトハウスと米国情報機関の間が“完全な断絶”を来たしているということだ」
ハーシュの情報源は、「これは2003年に米国がイラクへの侵略を正当化するために取った手段と同じパターンだ」と指摘する。捏造された、あるいは検証されていない情報を組み合わせて偽情報をでっち上げる手法。

情報源によれば、ブリンケン国務長官とサリバン国家安全保障顧問は、通常の情報分析および手続きを迂回し、ウクライナ戦争を自分たちだけの情報のもとで運営していた。
彼らはゼレンスキー大統領に対するすべての批判を「親プーチン」として中傷した。そして米国の情報機関が政策を理解しようとしても、それを無視した。

米国の情報当局が明確に認識しなら、ホワイトハウスが執拗に無視している事実がある。それは次のことだ。
アフガニスタンやイラクと同じように、ウクライナも腐敗が常態化している。この国のトップは米国がこれまでに送った1000億ドルの援助と武器から金をかすめ取り、大儲けしている。
ハーシュの報告によると、CIAはゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府関係者が4億ドルの資金を横領したと評価している その資金はアメリカがウクライナにディーゼル燃料を買わせ、戦費に充てるために供与したものである。それを彼らはロシアから安価で割安な燃料を購入するという手口でせしめた。
ハーシュの独自調査によれば、ウクライナ政府の各省庁は文字通り互いに武器の販売競争をしている。
米国の納税者が国家財政として支負担した国家財政で購入した武器が大量にウクライナに送られる。ウクライナの官僚たちは、それをポーランドやチェコなど世界各地の民間武器商人に転売し、大儲けしている。

ハーシュは、今年1月、こう書いた。
CIAはウクライナの将軍たちから聞いた。ゼレンスキーが将軍たちよりも多くの利益を得ている。そのことで彼らは腹を立てていると。 
そこでCIA長官のウィリアム・バーンズがキエフに赴き、彼と面会した。そして「君はスキムマネーを取りすぎている」と言った。そして、CIAがこの腐敗した計画に関与していると知っている35人の将軍と高官のリストを手渡した。

Seymour Hersh: Zelensky embezzled $400 million from US taxpayer money
https://english.almayadeen.net/news/politics/seymour-hersh:-zelensky-embezzled-400-million-from-us-taxpay
別途翻訳掲載します。

ベトナム、イラク、アフガニスタン…そしてウクライナ

米国が何十年も関わってきたすべての戦争で起こったように、戦争が長引けば長引くほど、腐敗、嘘、歪曲の亡者たちはは解き放たれる。
米政府は和平交渉を妨害し、ノルド・ストリーム・パイプラインを破壊し、ウクライナ政権幹部の汚職を隠蔽し、死傷者数を偽り、約束を破り、NATO拡大の危険性を隠し、予見的警告を隠蔽してきた。これらはすべて、私たちの指導者がいかに真実を歪めてきたかの例である。
いまやウクライナの若者たちを犬死にさせている勝ち目のない戦争を継続させることが、政府の目的と化している。そのために国民の世論の結集をはかろうとして、ありとあらゆる手段を講じている。

これらのリークや調査報道は、最初でも最後でもない。プロパガンダのベールを破って真実の光を解き放つた作業はこれからも続く。
ロシア、ウクライナ、米国のオリガルヒ(独占資本家)が富と権力を得るために、遠く離れた場所で若者の人生を破壊することを許さないために。

フランシスコ法王は、戦争の利益をむさぼる企業や個人を死の商人と呼んだ。彼らと彼らの言いなりになる政治家を追放するために、より多くの人々が活動することが、これを止める唯一の方法だ。






Peoples Dispatch
2023年 4 月 20 日

時代遅れの冷戦思想がヨーロッパをがんじがらめにしている

Obsolete Cold War attitudes are holding Europe back


by Fiona Edwards


リード

去年1年で米国が約500億ドル、EU加盟国が520億ユーロ、英国が23億ポンドをウクライナに注ぎ込んだ。しかし情勢は悪化の一途だ。
「ヨーロッパには独立した外交政策が必要だ」
この声は経済危機が深まるほど支持を集めるようになっている。

以下本文

米国が欧州に熱い戦争を持ち込んでいる

最も極端な表現から始める。
ウクライナ戦争では、数万人の命が奪われた。国連によれば、1800万人近くが人道支援を必要とし、数百万人が避難生活を送っている。

この悲劇は避けられるものだった。

戦争の根本的な原因は、NATOの前線をロシアの国境まで拡大しようとするアメリカの政策である。そこには、ウクライナがNATO軍事同盟に加盟する案も含まれていた。

その事に対し、ロシアは繰り返し、それが自国の安全保障上の利益に対する「レッドライン」を犯すものだと警告したが無視された。米国はNATOの拡張を強行し続けた。

それらの経過を考えれば、欧州には独立した外交政策が必要だったはずだ。しかしそのようなものは存在しなかった。それはこの1年間で実証された、 欧州諸国の政府は、米国のウクライナ政策に黙々と随き従った。


欧州で政治・経済の軍事化が進行

2022年、それは莫大な費用負担を伴った。2023年、それは軍事援助へと変わりさらにエスカレートしている。アメリカからの圧力で、ドイツはレオパルド戦車の配備を承認した。英国政府は劣化ウラン弾を送り込んでいる。

欧州は明らかに軍事化されつつある。この1年間で、欧州の主要な政府は軒並み軍事費を増加させた。それは米国が長年求めてきたことである。

昨年、ドイツのオラフ・ショルツ首相は1000億ユーロの軍事費を計上した。さらに「今後はGDPの2%を防衛費に充てる」と約束した。
フランスのマクロン大統領は、軍事費を2030年までに約600億ユーロ(2017年の約2倍)に増やすと発表した。これは2017年と比べ約2倍となる。
米国に最も近い同盟国である英国は、すでにGDPの2.2%、年間480億ポンドを軍事費に費やしている。
米国はこれに応えるかのように、10万人の軍隊を欧州に駐留させ、ドイツに119の基地、そのほか多くの軍事基地を有している。

ウクライナの影響は、欧州の経済に深刻な影響を及ぼしている。この状態が続けば、まずウクライナで多くの人が死亡し、さらに多くの人が避難することになる。
戦争をエスカレートするのではなく、ウクライナの平和を交渉する努力が絶対必要だ。

それだけではない。欧州全体では、ロシアへの制裁の反作用としてエネルギー価格が高騰している。
さらに軍事費の増加が政府支出の増大をもたらし社会福祉を圧迫する。生活費逼迫への対応により社会資源が流出する。
この結果、欧州はより危険で貧しくなりつつある。

米国はウクライナ和平の提案を一切支持していない。中国からの和平提案も無視している。それは結局、戦争の長期化をもたらすことになる。

欧州諸国が歩むべき道はこのようなものではない。紛争を終わらせるため別の道を追求し、和平交渉を支援する役割を果たすべきだ。欧州にはそれができるはずだ。


グローバルな協力関係こそ、経済的回復の鍵

経済的には、欧州はおしなべて危機に直面している。
経済成長は鈍化し、インフレは亢進し、政府の緊縮政策は一般市民の生活水準に打撃を与えている。
それに一部の欧州政府による強硬な対ロシア・対中国政策が状況を悪化させている。

欧州は、対ロシア制裁に参加したことで深刻なダメージを受けた。
米国は、パイプラインで運ばれる安価なロシア産ガスに代わって、自国さんの高価な液化ガスを欧州に販売、巨額な利益を得ている。

著明なジャーナリストのシーモア・ハーシュは、ノルド・ストリーム・パイプラインの爆破に関して重大な発言を行っている。アメリカがやったというのだ。
しかし、欧州各国政府は、欧州のエネルギー・インフラに対するこの攻撃について、独立した調査を求める動議を否決してしまった。


米国の反中国を後追い

米国は欧州に対し、米中対決路線についずし、より反中的な姿勢をとるよう促している。このため、最近では欧州と中国との関係が悪化している。
2020年12月に、中国とEUの投資に関する包括協定が原則合意されたが、いまだ署名されていない。それが欧州に経済的な機会をもたらすことは確実なのだが…
欧州はまた、米国の中国のテクノロジー産業攻撃に加わるよう求められている。欧州は最近、TikTokを政府の業務用電話から排除した。そしてより広範囲の禁止を求める圧力をかけようとしている。

このような方向性がもたらす経済的影響は、欧州にとって深刻なものである。中国はEUにとって最大の貿易相手国であり、最も急速に成長している主要経済国である。
IMFの2023年の最新成長予測では、中国の成長率は5.2%でる。ユーロ圏の成長予測は0.8%にすぎない。実に6倍の較差になる。
このことを考えれば、中国とのウィンウィンの経済協力の拡大が欧州にもたらす潜在的なメリットは巨大なものである。


独立した欧州外交をもとめる闘い

米国の新冷戦政策は、欧州に混乱をもたらしている。そのため、欧州の主要な政治家の中には、このままではいけないと考える人が出てきている。

マクロン大統領は、2023年4月の訪中後、台湾について発言し、大きな波紋を呼んだ。
彼は、台湾問題が重大であるからこそ、欧州は米国の "追随者 "になってはならない。欧州独自の "戦略的自律性 "を追求すべきであると述べた。
これは、マクロン訪問中にフランスと中国の間で結ばれた重要な経済取引に続く重要な動きである。
この発言はすぐにワシントンから強烈な反発を受けた。
今後、マクロンがこのような独立した姿勢を貫くかどうか、それだけの政治的強さを持つかどうかは、まだわからない、 

先月、スペインのペドロ・サンチェス首相も、「欧州と中国の関係は対立的である必要はない。ウィンウィンの協力の余地は十分にある」と述べた。


最後に 世界各国に独立外交の動きが

世界的に、独立した外交政策を追求する傾向が強まっている。
アジアでは、多くの国が対立よりも経済発展を重視し、平和を維持してきた。
最近、サウジアラビアとイランの国交回復が、中国の交渉協力のもとで実現したことは、中東のさまざまな紛争を克服する可能性を示している。
ラテンアメリカでは、ブラジルでルーラが復活を果たし、地域の独立と発展を支持する政治的勢力が強化されている。

ヨーロッパでも、地域の将来にとって独立した外交政策が重要であるとする考えが台頭している。それはこのような世界全体の動きと一致している。

著者Fiona Edwards
フィオナ・エドワーズはロンドンを拠点に活動する作家・活動家。No Cold War International委員会の委員を務める。


この長めのコメントは、下記のニュースの解説として書かれたものである。日本では逮捕の瞬間の映像がちらっと流れただけで、詳細はまったく報道されていない。
この解説記事には牽強付会なところもないわけではないが、「いよいよウクライナ戦争も終盤だな」というアメリカ左翼の感想を生々しく伝えている。

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The Associated Press
04/14/2023 12:18 PM EDT
ペンタゴン文書のリーク容疑者、2件の連邦法違反容疑に問われる
Alleged Pentagon leaker hit with 2 federal charges
ダウンロード

金曜日、マサチューセッツ州の連邦地方裁判所は、2件の連邦法違反容疑で、航空州兵のJack Douglas Teixeiraを起訴した。
容疑は"国防情報の無許可保持・送信 "と "機密文書・資料の無許可除去・保持 "である。
彼にはペンタゴンの機密文書を漏洩した疑いがかけられている。
テイシェイラは、ウクライナ戦争その他の国家安全保障問題に関する、極秘情報を漏洩した。彼は木曜日に重武装した戦術捜査官によって逮捕されている。
テイシェイラはソーシャルメディア・プラットフォーム『ディスコード』内の小グループのリーダーであった。彼の漏洩した文書には、ウクライナ戦争や、中国、イラン、ロシアの準軍事組織「ワグネル」などの地政学的な話題について、「Top Secret」と書かれていた。


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April 17, 2023
Consortium News

Leaks Spelling the End for Ukraine
ウクライナの終焉を告げる漏洩情報


By Joe Lauria


リード

ある情報文書により、西側が「ウクライナが戦争に勝利した」という偽情報を流したことが暴露された。
激戦の舞台はいまやワシントンに移りつつある。 

本文

先週のワシントン・ポストの見出しは、ウクライナ戦争についてワシントン・ポストをはじめとする欧米メディアでしか読んでこなかった人間にとって、爆弾のようなものだった。
見出しはこうだ。
"米国は、ウクライナの反攻が大きなゲインになるか疑問符をつける:漏洩文書に記載"

記事は次のような事実を認めている。
*欧米のメディアの視聴者は、戦争の経過について誤解している。
*すなわち、ウクライナは戦争に勝っており、最終的な勝利につながる攻撃を開始する準備が整っていると考えている。
*なぜか? ウクライナについて主要メディアが報じてきたことは、基本的に嘘の塊であったからである。 

記事の第2段落では、ウクライナの攻勢が長い間計画されていたこと、しかしそれは惨めな失敗を遂げる可能性が高いということを明らかにしている。
これは「ウクライナ軍の能力・士気に関するバイデン政権の公式見解」とは著しく異なっている。

つまり、米政府関係者は、国民にたいして、そして、その一言一句を疑うことなく忠実に報じてきた記者に対してウソをつき続けてきたことになる。戦争の状況はそれよりはるかに悪かった。

ポスト紙は、まるで国家的災厄でも起きたかのように、このリークを取り扱っている。
「米国とNATOは紛争の交渉による解決に切り替えるべきだ」と促す連中を勇気づけることになるだろうと述べている。

権力の中枢内に動揺

権力の中枢内に動揺が起こり始めている。権力の移行を反映するフォーリン・アフェアーズには、元国務省のリチャード・ハースと外交問題評議会のシニアフェローであるチャールズ・クプチャンの2人が書いている。 

元国務省のリチャード・ハースと外交問題評議会のシニアフェローであるチャールズ・クプチャンの2人は、"戦争の行方を楽観視することは困難だ"と書いている。

彼らは「欧米はウクライナで新戦略を必要としている: 戦場から交渉のテーブルに着くための計画」という論文の中でこう言っている。

「最善の道は、まずウクライナの軍事力を強化することだ。その後、今年後半に戦闘モードを終え、モスクワとキエフを交渉のテーブルに案内する。こう言った2本立ての戦略である」  

この記事はクリミア陸橋を突破するウクライナの攻勢が失敗した後に公開された記事である。当然、今回明らかになったリークには触れていない。

この記事は、西側諸国の戦略を象徴している:  ウクライナがロシアより優れた "作戦技術 "を持っていて、戦争は "膠着状態 "で終わるといった、いつもの話で埋め尽くされている。

すなわち、交渉の前に、ウクライナが攻勢をかけて領土を奪い返す。そして「ロシアに大きな損失を与え、その軍事オプションを封じ、外交的解決を考えさせる方向へ誘導する」という視点が貫かれている。

しかし、それは難度の高い指令である。
"ロシア軍の数的優位"を認め、ウクライナが "自国のマンパワーと海外からの支援の両方において制約が増している "ことを認めるのなら、モスクワが西側の希望通りに交渉に臨むと考えるのは無理がある。

モスクワはロシアの介入から1カ月後、去年4月初めの時点で、キエフと取引する用意があった。
しかし欧米は、ロシアを弱体化させるために、取引を拒否し、戦争を長引かせる戦略をとった。
いまは、ウクライナが格段に弱く、ロシアが戦場で大きな前進を示している。果たしてモスクワは取引に応じるのだろうか。

フォーリン・アフェアーズの論文は認めている。「この外交的駆け引きは失敗するかもしれない。戦闘が続いて、ロシア化ウクライナかのいずれかが戦闘を続けることを選択するかも知れない。あるいは両者がともにファイティング・ポーズを取るかも知れない」
その上で、「いずれにしてもこの戦闘の季節が終わると、米国と欧州はバイデンが表明した『必要な限り』ウクライナを支援しつづけるという態度表明を放棄する可能性も出てくる」

その場合、次に来るのは?

彼らは語る。
「NATOの同盟国は、軍備管理をふくむより包括的な欧州安全保障構造について、ロシアとの戦略的対話を開始することになるだろう」  

信じられないことだ。これはロシアが2022年2月の介入前に求めていた内容であり、NATOと米国が拒絶した内容だ。
つまりこれはウクライナが戦争に負けたことを示す何よりの証拠だ。

「とにかく攻めの姿勢を貫こう」

ウクライナは、成果が少ないとわかっていながら攻勢に出るという。しかしこの戦略は、キエフの最後のあがきである。
ネオコンの妄想派が奇想天外な策でワシントンの現実主義者を出し抜き続けない限り、この戦略にはいつか終わりがやってくる。

最も重要なことは、このネオコンの最後の試みが失敗することが、西側諸国の唯一の逃げ口だということだ。
ウクライナ戦争は西側諸国が自ら作り出したアリ地獄である。それはロシアに対する経済制裁の逆噴射、非西洋における情報戦争の失敗、そして最終的には戦場での敗北である。  

すでに2月には、この戦略を推し進めてきたフランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相が、ウクライナのゼレンクシー大統領にこう伝えている。
「ゲームオーバーだ」
このニュースは、体制側大表紙のウォール・ストリート・ジャーナルによってもたらされた。

そして、その10日後にアメリカの情報機関はニューヨーク・タイムズにニュースを提供した。
「ノルドストリームパイプラインの破壊の背後には、親ウクライナ・グループ、さらにウクライナ政府そのものが関与していた」

記事そのものはセイモア・ハーシュの暴露に対するカウンター情報に過ぎないが、そこにはキエフから米国を遠ざけようとする意向が透けて見える、何れにせよ「出口ランプが目前に迫ってきている」のだ。

「なぜMSMはリーク情報を掲載したのか?」

NYタイムズ紙やWポスト紙など権威筋メディア(MainStreamMedia)は、なぜ自分たちの信頼性を著しく損なうリーク情報を掲載したのだろうか。それには3つの可能性がある。  
第一は単純に競争である。 彼らは、ライバルがリーク情報を手に入れたら、それに負けじとリーク合戦を挑んだのかもしれない。
編集者にとって、競合他社を「抜き返す」ことは、(ジャーナリズムの卑小な世界では)悪いこととは思われていない。

2つ目の理由は、紙面上のお付き合いである。これらのリークはいずれどこかで出てくるものであり、簡単に無視することはできない。
さらに重要なことは、企業ジャーナリズムは、実際に反権力のポーズを維持する必要があるからだ。そのために自国の政府を悪者にし、場合によっては自らをも悪者にするような記事を時折掲載することになる。生き残るためには、反権力の姿勢を完全に放棄したわけではないと、国民に納得させなければならない。 
2010年にメディアがウィキリークスと提携し、米国の戦争犯罪を暴露するリーク情報を公開したときもそうだった。いつの間にかメディアはアサンジとウィキリークスを敵視し、国家と歩調を合わせるようになった。

「なぜメディアはリーク源を追いかけたのか」

それは、リークに関する派手な記事の後、実際に起こったことだ。
NYタイムズとWポストは、政府系情報機関が支援するBellingcatとチームを組み、リーク犯の発見に力を注ぐようになった。
今日のConsortium NewsにはElizabeth Vosのフォロー記事が掲載されている。これによるとメディアはMSMが反WikiLeaksで歩調を合わせたようだと論じている。

MSMは国民にとって重要なリーク元を守ろうとはしなかった。それどころか、漏洩元とされる21歳の全国防空団(Air National Guardsman)隊員ジャック・テキシエラを追い詰めたのだ。テキシエラはマサチューセッツの自宅前で軍服を着たFBI捜査官に逮捕された。

大手メディアがリークを掲載した3つ目の理由は?

NYタイムズはウクライナ政府がノルドストリーム破壊工作に関与していた可能性があることを明らかにした。それはマクロンやショルツがゼレンスキーに「戦争は負けた」と言った話を掲載したのも同じ理由だろうと思われる。 
つまり、米国とその同盟国がウクライナの負けを認め、ウクライナの冒険から手を引くための下準備の一環だ。
そのため、Texieraは、報道されているように、Discordチャットフォーラムで10代のフォロワーを感動させるという動機で単独で行動したわけではないという憶測もある。

元CIAアナリストのラリー・ジョンソンは、Texieraは、おそらく上級士官によってはめられたと考えている。
 ジョンソン氏がそう考えるのは、Texiera氏が流出させたとされる文書の中に、ジョンソンがかつて勤務していたCIA作戦本部の文書が含まれていたからだ。

ジョンソンは、自身のウェブサイトにこう書いている。
「CIA作戦本部は、午前と午後の2回、日報を作成する。これは『コミュニティ』向けではない。したがって他の情報機関に配布され共有されることはない。(もちろん、国家情報長官には送られる)

TexieraはCIAに勤務していたわけではない。したがって作戦センターの文書にアクセスできるはずはない。では、どうやって手に入れたのだろうか?
ジョンソンは書いている。軍や情報機関には現実主義者がいて、何が何でも戦争を続けようとするネオコンに反対している。そういう連中がテイシエラを漏洩の手段として利用したのではないか。


タカ派のチャンピオン ボルトンの「新たなグランド・ストラテジー」

ネオコンは戦わずして倒れることはない。元安全保障担当補佐官でネオコンのトップであるジョン・ボルトンは、先週、ウォール・ストリート・ジャーナルに絶望的な文章を書いた。それは「ロシアと中国に対抗する米国の新たなグランド・ストラテジー」 と第されている。

ボルトンは、世界が変化していること、そしてそれがアメリカにとって有利でないことを理解している。
だから彼の対応は、失敗した米国の政策を覆すことではなく、米国が世界を支配しようとするのでもなく、世界の一部になることであり、ミシシッピ川の船内賭博でギャンブラーのように一発大勝負をかますことである。 
その「大戦略」とは、軍事費をレーガン時代の水準まで引き上げ、地下核実験を再開し、「北大西洋条約機構を全世界のシステムとし、日本、オーストラリア、イスラエル、その他NATOの防衛費支出目標にコミットしている国を加盟させる」ことである。
ボルトンは、「米国はモスクワと北京を中東から排除しなければならないとうそぶく。中東こそは両国の強調のもとで、ここ数十年で最も劇的な改革が進行している。

しかし、ボルトンはとっておきのジョークをウクライナのために取っておく。
「ウクライナがロシアとの戦争に勝利した後は、ロシア=中国枢軸を分断しなければならない。
モスクワの敗北はプーチン氏の政権を崩壊させるだろう。その次に来る政権はまったく未知数の政権だ。
新しいロシアの指導者たちは、北京よりも西側に目を向けるかもしれないし、向けないかもしれない。
ロシア連邦の分裂、特にウラル以東の分裂も考えられない話ではない」

たとえ精神に異常をきたしたボルトンが排除されても、現実主義者の行く手には大きな障害がある。それがバイデンの再選キャンペーンだ。彼は近々発表するつもりだと言っている。彼はすでにネオコンに身も心も投じている。
青と黄色の旗を振り回してきたバイデンに、選挙勝利を至上命題としつつ、ウクライナの敗戦を受け入れることができるだろうか?

バイデンチームの狙いはロシアを血祭りに上げることだった。しかし、出血しているのはウクライナである。ウクライナと選挙をテンピンにかけたワシントンの政治戦、今度こそついに、現実が妄想に打ち勝つことができるだろうか。

………………………………………………………

Joe Lauria: Consortium News編集長。前国連特派員(Wall Street Journal, Boston Globe)
金融問題評論員(Bloomberg News) 

2023年3月18日

北海道AALA 学習会のためのレジメ

ウクライナ戦争を通じて戦争と平和を考える

ウクライナ政府の対応を中心に


はじめに 私の思想転換の5つのステップ

ウクライナ戦争開始Ⅰ周年を機に、これまでの、私の考えの流れを振り返ってみたいと思います。一つの流れは、言うまでもなくウクライナ戦争そのものの評価の流れです。もう一つは、それが日本と私たちの「戦争と平和をめぐる考え」にどうインパクトを与えているかの分析です。

今まで前者について多く語ってきましたが、後者の問題についてはすっきりと整理できていなかったと思います。とくにウクライナ側の対応についての省察です。この学習会を機に、日本における平和のあり方について、ウクライナ戦争が何を教えてくれたかを考えてみたいと思います。

考え方を整理するために、この1年間を次のように分けて考えてみることにしました。分類の指標は、おもに自分の考え方が大きく変化する変曲点でもあります。

0.戦争開始前の自衛論

1.2月24日 武装侵攻開始の反応。ロシア大国主義への怒り

2.ウクライナ軍の武装抵抗への共感と違和感

3.アメリカの関与が明らかになる。この戦争の複雑さへの理解

4.停戦路線の中断と武力対立路線への固執。続けてはいけない戦争。

5.完全な膠着状態への移行と、果てしない犠牲。無条件平和の呼びかけ。

以下、これを目次としながら考えてみたいと思います。

………………………………………………………

0.我が国における自衛論の柱

この問題は膨大な内容を抱えており、正確な表現はできません。私の個人的な感想になってしまうと思いますが、議論を進めるための踏み台と思って聞いておいてください。

柱は以下の5つです。

*自衛権は民族自決権の一部であり、民族固有の権利である。

*実際には自衛権が発動される場面はない。自衛権は非戦の思想と結びついてこそ生かされる権利。

*他国に防衛を頼む「抑止力切り離し」理論は有害無益。厳密な抑止は存在せず、関係国の意思次第。しかし義務は絶対。

*非武装中立や専守防衛が持つ自己矛盾。大事なのは、「形から入る」のではないということ。あれこれのオプションではなく「非戦」の思想をつらぬくこと。

*近隣諸国と不戦・平和のパートナーシップを結び、東アジアに非核・共栄の多国間連合を構築することが最大の保障となる。
これにはウクライナ体験を踏まえての最近の考え方もふくまれています。おふくみ置きください。

1.侵攻開始への初期反応

A) 私たちはすべて「正義派」だった

報道を受けての最初の感想は、「信じられない、ハンガリー・チェコ侵攻の再現か」というものでした。一瞬のうちに日本国民のほとんどが反ロシア派となりました。反応をまとめると次のようになると思います。

*ロシア・真っ黒、ウクライナ真っ白。

*対ロ経済制裁、全面的なウクライナ支援。事実上の軍事支援承認

*「国連憲章を守れ」という事実上の強硬路線。

B)「なぜ?」の問いかけは省略された

*ロシア人芸術家やスポーツ選手の排除が何の疑問もなく強行されました。これは戦時中の日本人強制収容と同じ発想です。名歌手アンナ・ネトレプコは各地の歌劇場からパージされるに当たりこう述べました。

「私はこの戦争に反対だ。私はロシア人で祖国を愛している。ウクライナにも多くの友人がいて、彼らの苦境に心を痛めている。この戦争の終結と平和が私の望みである。付け加えるなら、芸術家に祖国への糾弾を強制するのは正しいやり方ではない。政治的分断を超えた和合が私の目的だ」

ネトレプコ

*開戦の当初からNATO諸国のウクライナへの軍事支援が行われている。交戦国の一方に対する軍事支援の可否は、戦争そのものとは別問題である。これについて和仁健太郎はこう論じている。

諸国がウクライナに与えている軍事援助について、その交戦国(ウクライナ)が合法的に武力を行使する国である場合には集団的自衛権により正当化されるが、…他方交戦国(ロシア)によって違法な武力行使または武力攻撃とみなされる可能性を排除できない。(https://www2.jiia.or.jp/kokusaimondai_archive/2020/2022-12_003.pdf?noprint)

*「国連憲章を守れ」と言うのは、「撤退なくして交渉なし」と事実上同義語になります。これは現実を考えると無理な話で、「交渉なくして撤退なし」というのが常識でしょう。

ということで、西側勢力によって論理のすり替えが行われていることに、やがて気づいていくことになります。


2.ウクライナ軍の武装抵抗への共感と違和感

当初はロシアへの怒りと、ウクライナへの同情がありました。そこへもってきた圧倒的劣勢と見られたウクライナ軍の予想外の健闘があり、それが「ウクライナ頑張れ」の声援へと広がっていきました。

ここでの違和感はふたつ、

*ウクライナの無条件美化、NATOの “やらせ” は無視。

*「本土決戦」という最悪の反応への疑問

現在では、救世主と呼ばれた対戦車ミサイル「ジャベリン」を始め多くの米国製武器が前線配備されていたことが明らかです。それは、「ウクライナ軍は弱小を顧みず果敢に立ち向かった英雄」というイメージとは異なったものでした。

そのことが分かったのはだいぶあとのことですが、それが分からずとも、ウクライナ政府の「本土決戦」の決意は異様なものでした。

過ぐる世界大戦において沖縄を失い、満州を失い、原爆の被害にあっても、日本はなおかつ戦争を継続しようとします。最後の選択肢となったのが「本土決戦」でした。しかしさまざまな経過の上、最後に和平派が好戦派を押し切って無条件降伏に至ります。ウクライナはまさにその地点をスタートにして戦争をやろうというのです。私からみればそれは「狂気の沙汰」です。敵の砲弾も味方の砲弾も米国からもらった砲弾も、落ち行く先は皆ウクライナの国土と国民の上です。

なんとか避ける方法はなかったのでしょうか。避ける勇気、正気はなかったのでしょうか。


3.アメリカの関与が次第に明らかになる

*この戦争の複雑さへの理解。米国外交主流派がロシアいじめに反対。ネオコンを糾弾。

*「ミンスク合意」に立ち帰る道、それを妨げるもの。
省略された「なぜ」の問いかけにこだわった人たちの疑いは、その後、他でもない米国外交の主流を占めていた人たちの発言によって、深まっていきます。そして「ミンスク合意」の存在を知って、「戦争は避け得た」という確信へと変わっていきます。

国務省旧主流派とはジョージ・ケナン、ヘンリー・キッシンジャー、ミアシャイマーなどです。彼らの活躍した時代は冷戦終結の時代に重なります。彼らはソ連・ロシアと欧州平和の構造を維持することで一致しました。ところが米国外交がネオコン(保守過激派)の方向にぶれていき、ロシアを追い詰めました。つまり米国こそが、ロシアのウクライナ侵攻を招いた真の犯人だとするのが、彼らの共通した見解です。それは子供の頃のいたずらにも似て、大人しくしている近所の犬をいじめて、唸り声をあげて向かってきたら、「わーい」といって逃げる。ところが犬に綱がついてなかったから、「さぁ大変」といったところです。

綱だったはずのものがミンスク合意です。その唯一の利点は、「叩き台」として合意されているということに尽きます。合意なんてものは無きに等しい、むしろ“相違点が合意された”というべきものです。

その後、流産に終わりましたが「4月イスタンブール合意」というものも存在します。報道(22年4月4日日経)によれば

(1)ウクライナの首都キーウ周辺におけるロシア軍の軍事活動の大幅縮小、

(2)ウクライナの「中立化」(NATO非加入)

(3)クリミア半島の主権に関する今後15年間の協議。

というものです。

以上のことから、戦争を速やかに停止に導くことこそが、アメリカの恐怖支配を終わらせる唯一の経路だということが分かります。

米国の本音は、そもそも交渉などさせないということです。そのためには「なんとかの虐殺」やパイプラインの破壊などためらうところがありません。


4.引き裂かれた停戦路線

思い出してほしい。

3月30日には停戦交渉がいったん終了し、ロシアはキエフ周辺の兵力引揚げを通告。自衛隊情報召喚はこのような見通しを語っていた。「ウクライナがロシアの即時撤退まで求めるのか、ロシアによる掌握を認めるのかなど、その取り扱いが焦点だ」(NHKニュース)

4月5日、突如「ブチャの虐殺」キャンペーンが始まりました。「虐殺は非人道的だから、そのような勢力との間に妥協はない」というのがウクライナと西側勢力の言い分でした。これこそ戦争の最大の岐路でした。市民が虐殺されたことも問題ですが、それよりはるかに深刻なのは、和平の道がこれで閉ざされたことです。ついトンキン湾事件(ベトナム戦争のきっかけとなったでっち上げ)を思い出してしまうのは私だけでしょうか。


その後の経過は次のように整理されます。

*武力対立路線への固執。続けてはいけない戦争が続く。

*非西側諸国の離反。西側諸国の独善と二重基準に反感。

*ウクライナ国民は支援しても、ウクライナ政府支援はできない。
押さえて置かなければならないこと、始めてはいけない戦争を始めたのはロシアです。しかし続けてはいけない戦争を続けたのはウクライナ(の側)だということです。我々はウクライナ政府に、これ以上寄り添うことはできません。

もう一つ吟味すべき問題があります。西欧社会が人権を至上の価値としながら、反人権の極致たる戦争を継続しさらに激化させていることです。和平を願う声はかき消され、ひたすら憎しみだけが掻き立てられている状況は異常というほかありません。


5.膠着状態への移行

4月上旬に和平への願いが打ち砕かれ、戦闘が続いています。この間西側の報道は、ウクライナ軍が各地で反撃に出ている。ロシア軍は消耗し戦線維持が困難になっている。ロシア兵の士気は低下し、各地で住民への残虐行為が続発している。という三本立のキャンペーンを続け、戦闘継続を合理化してきました。

しかし昨年暮れ辺りから、戦況は決してウクライナ有利というものではなく、ひいき目に見ても拮抗状態という見方が広がっています。今度は、「このままでは危険、もっと多くの武器を」と叫び始めました。まさに戦時中から末期にかけての大本営発表を思い起こさせます。最後は「一億玉砕」となるのでしょうか。

現段階での政治状況の要点はこうなります。

*果てしない犠牲。さらに武器をつぎ込む西側諸国

*ウクライナの焦土化と荒廃、それはロシアのせいなのか

*和平工作を試みる非西側諸国と、これを敵視する西側諸国

端的に言えば、さまざまな戦争の中でも最悪な経過を取りつつある戦争のひとつと言えます。

6.ウクライナ戦争=本土決戦の日本にとっての意味

*本土決戦の恐ろしさ。あのときもし日本が本土決戦に入っていたら…

*非戦を貫くことの大切さ。どんな事があっても刃は抜かない、戦争は回避するという決意

*抑止力、核の傘概念は無間地獄。軍事同盟は平和同盟ではなく危険同盟。

以下は戦中派・森嶋通夫の有名な「白旗・赤旗」論の一節。当時の“仮想敵国”であるソ連を念頭に置いたものです。

…いずれにせよ最悪の事態が起これば、残念ながら日本には一億玉砕か一億降伏かの手しかない。玉砕が無意味なら降参ということになるが、降参するのなら軍備はゼロで十分だ。

…不幸にして最悪の事態が起これば、白旗と赤旗をもって、平静にソ連軍を迎えるよりほかない。34年前に米軍を迎えたように、である。

凄まじいリアリズムですが、反論の言葉を飲み込まざるを得ない、殺気にも似た迫力があります。


TheGeopolitics
March 10, 2023

非西洋の中堅国家が地政学的重要性を増大

Non-Western Middle Powers and Their Increasing Geopolitical Relevance



by Tridivesh Singh Maini


注目されるアジア三国

昨年始まったロシア・ウクライナ戦争の余波を受け、いくつかの非西洋諸国が米国とロシアの間を綱渡りするような試みを行っている。その代表的な例が、インド、UAE、インドネシアの3カ国である。
G20_議長国の交代
 G20首脳会議 議長国の交代 ジョコ(インドネシア)からモディ(インド)へ

*インド

インドはロシアから石油を購入することを決定し、ロシア・ウクライナ戦争でロシアを真っ向から批判しなかったため、各方面から賞賛を浴びたが、その中立性は厳しい批判にもさらされている。

2023年2月、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する国連総会決議で、インドは32カ国とともに棄権に回った。ウクライナ関連の国連決議を棄権したのは、これが6回目である。この決議は、ロシアとウクライナの戦争が始まってからちょうど1年後に成立したものだ。この決議でロシアはウクライナでの敵対行為を「終了」し、ロシア軍は無条件で直ちに撤退すべきであると明示された。
また、「国際連合憲章の原則に沿ったウクライナの包括的、公正かつ永続的な和平を」求める必要性も強調された。
しかし、インドはロシア・ウクライナ戦争の被害と悲惨さについて懸念を表明し、自らの立場を説明した。またロシア・ウクライナ戦争による世界のサプライチェーンの混乱に対処する必要性を繰り返し主張している。
これは、現在G20の議長国を務め、先日G20外相会合(2023年3月1日~3月2日)を開催したインドが、ロシア・ウクライナ戦争の終結を求めたことに繋がっている。 この要請は実現しなかった。ロシアと西側諸国との対立により、G20外相会合で共同声明を採択することはできなかった。
しかし、先に述べたようにロシアを真っ向から批判する姿勢は一貫している。クアッド外相会議後の声明でも、ロシアによる「核兵器」の使用という脅しは許されないと批判している。

*UAE

UAEもまた、米国とロシア、中国との関係のバランスを取ろうとしている。ワシントンは、UAEが中国との経済的な結びつきを強めていることに不快感を抱いており、米国によれば、その中には安全保障上の強い結びつきがあるものもある。
2023年3月6日の会議で、UAEは「アジアインフラ投資銀行」(資本金1000億ドル)の事務所設立にゴーサインを出した。同時に、UAEはI2U2/「西アジア・クワッド」の重要なステークホルダーでもあり、OPEC+の原油減産決定には納得していなかった。一時はUAEがOPEC+からの脱退を希望しているとの報道さえあったが、UAEはこれを否定した。

I2U2 :経済統合を深めるための新しい地域プラットフォーム、2022年7月、インド、イスラエル、米国、UAEより構成され、西アジアQUADとされる。

*インドネシア

近年、中国と密接な経済関係を共有しているインドネシアも、ロシア・ウクライナ問題ではバランスの取れたアプローチを取ろうとしている。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、2022年にロシアとウクライナの双方を訪問し、仲介を申し出た。ウクライナへの武器供与を拒否し、欧米の反対にもかかわらず、ロシアのプーチン大統領の招聘に踏み切った。 
2022年6月のモスクワ訪問の際、インドネシア大統領は、ロシア・ウクライナ戦争による自国の姿勢や経済的混乱についてコメントしながら、次のように述べた。
"インドネシアは戦争の早期終結を望んでおり、食料、肥料、エネルギーのサプライチェーンは数億、数十億の人々の生活に影響を与えるため、直ちに復旧させる必要がある"。
2022年11月にバリ島で開催されたG20首脳会議の開会式で、ウィドドは次のように述べた。
“責任を持つということは、ゼロサムではなく、戦争を終わらせるということでもある。戦争が終わらなければ、世界が前に進むことは難しいでしょう。"
インドと同様、インドネシアもグローバルサプライチェーンの問題への取り組みの必要性を繰り返し訴えてきた。戦争が始まる前、インドネシアはウクライナから小麦を輸入していた第2位の国だった。 ロシア・ウクライナ戦争について、インドネシアは独自のスタンスを貫いている。

インドネシアは、インド太平洋戦略の重要なステークホルダーとして浮上している。2022年5月のインド太平洋経済枠組み(IPEF)に署名した12カ国のうちの1つでもある。インドネシアは、中国と第2位の輸入国としての経済関係を培う一方で、日本との経済関係の強化も目指している。

まとめ

世界政治における大国や欧米のミドルパワーの重要性の高まりに注目が集まる中、 地政学的な変化を理解し、インド、UAE、インドネシアといった非西洋の中堅国の重要性が増していることを理解することが重要である。
これらの国々は、経済的、地政学的に重要な問題で欧米に迎合しているわけではないが、すべての問題で「反欧米」の姿勢をとっているわけでもない。彼らは自国の国益を重視し、単なるバランサーになるのではなく、グローバルな舞台で重要なプレーヤーになることを目指している。


DIRCO 
26 February 2023

Why we abstained on latest UN vote on Ukraine

https://www.politicsweb.co.za/documents/why-we-abstained-on-latest-un-vote-on-ukraine--dir


南アフリカは、1周年を迎えるウクライナ戦争が、罪のない人々の命や重要なインフラを破壊し続け、何百万人もの人々を避難させていることに深い遺憾の意を表明し続ける。

この戦争は、その影響が世界中に波及し、最も弱い立場の人々の生活に影響を与え、パンデミックにより衰弱した現在の世界の食料、燃料、金融危機を強めている。

南アフリカは、国連憲章の目的および原則に対する揺るぎない信念を強調したい。

我々は、すべての国家の主権と領土保全は神聖視されるべきであり、これはウクライナにも適用されると信じている。

また、戦争を終わらせるために緊急の行動が必要であるとの決意も固まっている。

しかし、私たち国際社会が、そのための条件を整えるための具体的な提案を打ち出すことができないのは、私たちの努力に突きつけられた悲しい現実である。

南アフリカが以前この総会で述べたように、外交と対話こそが、紛争の持続的かつ平和的な解決につながる唯一の道である。

ウクライナ戦争に関するこの決議は、この地域に武器が流入し、より大きな暴力行為と人的被害の拡大を永続化させている中で行われたものである。

このことは、核戦争の脅威と相まって、平和を達成することが難しくなっているように思われます。

昨年、国連総会は、ウクライナに関する一連の決議を採択した。

 以前にも国連総会で質問したように、私たちの言動は平和の維持に重点を置いているのだろうか、それとも即時の平和達成の可能性を低くするようなさらなる分裂を作り出しているのだろうか。

私たちは、今回の決議が憲章と国際法の原則に焦点を当てていることを支持するが、悲しいかな、持続的な平和の基礎を築き、荒廃と破壊に終止符を打つことには何ら近づいていない。

私たちに必要なのは、すべての当事者による、平和への確固たる明確なコミットメントである。

確固たる行動を伴わない平和を求める決議は、空虚なものとなってしまうだろう。

Statement issued by DIRCO, 23 February 2023

Covert Action Magazine
March 6, 2023

With Us or Against Us" Fails in Munich as U.S. Tries ‘Offer They Can’t Refuse’

ミュンヘンの「敵か味方か」作戦が失敗に終わる


By Dee Knight


米国、ドイツ、ウクライナの外相は、2 月 18 日のミュンヘン安全保障会議でグローバル サウス諸国の指導者たちに語った。「あなたは本当に中立でいることはできない」と。

会場前のデモ
ミュンヘン会議の直後、インドのバンガロールで開催された首脳会議で、ジャネット・イエレン米財務長官はこう述べた。
「G20諸国はロシアによるウクライナ侵略を非難しなければならず、ロシアに対する米国の制裁を遵守しなければならない」

しかし、G20 の議長国であるインドは異議を唱えた。
「ロシアに対する既存の制裁は、世界に悪影響を及ぼしてい。したがってインドは、ロシアに対する追加の制裁についての議論を推進することはない」

制裁はEUを孤立に追い込んでいる

アメリカとNATOの制裁はロシアを孤立させる代わりに、西側諸国を世界から孤立させている。

フランスのマクロン大統領はミュンヘンで、「グローバル・サウスの信頼をどれほど失っているかに驚いている」と述べた。「私たち」というのは、NATO諸国、特にG7を指している。彼は「西側はグローバル・サウスを失いつつあり、コロナワクチンでは貧しい国を支援しなかった。二重基準だとの南の告発に対応できていない」

コロンビアの新しい副大統領フランシア・マルケスはこう語った。「戦争の勝者と敗者になるのは誰かという議論を続けたくはない。私たちは皆敗者であり、最終的にすべてを失うのは人間です」

ナミビアのアマディラ首相は語った。
「私たちは紛争の平和的解決を目指しています。私たちは問題を解決したいと望んでいます。大事なのは責任を転嫁することではありません。武器を購入するためにお金が使われています。そのお金は、多くの人々が困難を経験している場所での開発を促進するために、より有効に活用できるはずです」
amadhirashushou
ナミビアのアマディラ首相

注目された王毅の提案

中国の王毅国務委員は、ミュンヘンで主役となった。彼は次のように述べた。
「ミンスク第2次合意にできるだけ早く戻ることが肝要だ。ミンスクIIはこれまでのところ唯一の拘束力のある文書である。なぜなら、それは関係者が交渉し、国連安全保障理事会が承認しているからだ。ロシアもEUもミンスクIIを支持している。
それは、ドンバスの停戦と自治、そしてNATOをウクライナから撤退させることを意味する。
ブリンケン米国務長官も "最近の電話会談で"米国はミンスク合意を支持すると表明した」

そして、合意事項の実施に向けたロードマップとタイムテーブルを作成するため、「関係者が(一緒に)座る」ことを呼びかけた。

王は、ミンスク合意と並行して「ウクライナの平和のための中国の12項目の計画」を発表した。

この計画は、
*すべての当事者は冷戦の考え方を捨て、ブロック対立を防ぎ、平和と安定のために協力すべきだ。
*国連安保理が許可していない一方的な制裁に反対する。
*核拡散を防止し、核危機を回避しなければならない。
としている。

ブリンケンは議論をすり替えた。「中国はロシアに "重大な軍事支援を提供するつもりだ。それは我々の関係において深刻な問題を引き起こすだろう」
そして「王毅の提案はロシア以外に利するものはない」と非難した。

いっぽう、ゼレンスキー大統領は、中国の提案の側面を検討する意向を示したという。
「習近平国家主席と会談する予定だ。それは両国と世界の安全保障にとって「有益」だろう」

ミュンヘン会議の後、王毅はモスクワに飛んだ。
彼はプーチンとの会談でこう述べた。「我々の関係は経済、政治、文化など、非常に強固な基盤を持って降り、不動のものである」

2月21日、中国は「グローバル・セキュリティ・イニシアチブ」コンセプトペーパーを発表しました。(この文書については別途紹介します)

コンセプトは「連帯の精神に基づき、大きく変化する国際情勢に適応するよう各国に呼びかける。
そして、複雑で絡み合った安全保障上の課題に、Win-Winの考え方で対処していく」とされている。

その中核として、次のように書かれている。
「戦争や制裁は紛争の根本的な解決にはならず、対話と協議のみが相違の解決に有効である。
主要国は正義を守り、正当な責任を果たし、対等な立場で協議を支援し、平和のための協議を促進しなければならない」

中国の元駐米大使で、現在は外務大臣を務める秦剛氏がコンセプトペーパーを紹介した。
関係国に対し、火に油を注ぐことを直ちに止め、中国を非難することを止め、『今日はウクライナ、明日は台湾』といった言及で状況を挑発することを止めるよう求める」と述べている。

中国外交部の毛寧報道官は、次のように米国を批判した。
「中国が危機の政治的解決に関するポジションペーパーを発表したのに対し、米国は中国や他の外国企業に制裁を課した。誰が平和と緊張緩和を推進し、誰が緊張を煽り、世界をより不安定にしているのか?その答えは明白だ」


24時間前から「親ウクライナ派がノルドストリーム爆破」というニュースが一斉に流れている。
これはきわめて胡散くさい情報である。

先日NYタイムズを評価したが、あくまで条件つきだった。理由はそれが社としての意見ではなく、寄稿に過ぎず、しかもウクライナ寄りのスタンスは崩していないからである。

しかし今度の記事で、NYタイムズのウクライナ支持はたんなる政治的ポジションの問題ではなく、バイデン政権と国家諜報活動集団と一体化していることが明らかになった。
ハーシュ記者はNYタイムズのかつての花形記者である。南ベトナムにおける海兵隊の住民虐殺事件を報道し、ピュリッツァー賞を獲得した。イラク侵攻作戦ではイラク人捕虜虐待記事をすっぱ抜いた。

しかし今回のノルドストリーム爆破事件では、ハーシュ記者の発表を報道せず、黙殺を続けた。
最初は見識かと思ったが、かなり記事が世界中に拡散されてからは、それが黙殺という構えの表明であることがわかった。そして突如としてウクライナ主犯説の報道に至ったのである。

報道を緊急後追いする形で、ネグレクト仲間のメジャー報道機関が一斉に報道した。
そしてウクライナ政府がそれを否定し、ハーシュ発言には煙幕が張られ、結局真相は闇の中に…
というのがNYタイムスとその背後にいる国務省なり大統領府なりの目論見であろう。

しかし、そうは行くまい。考えれば考えるほど、疑問は膨らむのみで、その分、真の受益者である米国への疑惑も膨らむのみである。

「ウクライナは犯人ではありえない」、というのは、パイプラインが敷設された機雷によって爆破されたからだ。

水雷を投げ込んでも、これだけの精度で爆破することはできない。4本のパイプラインがピンポイントでほぼ同時に爆破されるためには、遠距離発火装置を装着した高性能小型爆弾をベルトでパイプに装着し、数時間ないし数日後に水中無線で誘導発火する以外にない。
これだけでも容易ならざる技術である。

しかもパイプラインは海面下数十メートルの海底に敷設しているのであるから、潜航艇を使ってマジックハンドで作業をするか、特殊な訓練を積んだ潜水夫が水圧への順化を行った上でやるしかない。

たしかにハーシュは証拠を示したとは言えないが、後者の方法しかありえないことを示している。つまりアメリカ海軍の特殊作戦チームでしかなし得ない作戦であることを論証している。

つまり、物的証拠はないが論証は確実にできているのだ。だからハーシュの記事は遅効性の毒のようにじわじわと真綿で首を絞めつけるように効いてくるのである。

ブログ読者の皆さん
AALAニューズ ウクライナ戦争の12弾 ライナーノーツ」出版のお知らせです。
上記表題で、パンフレットを作成しました。
ライナー
A4で24ページです。といっても、A3の用紙を6枚、2つ折りにして両面印刷しただけのものです。ホッチキスも使わないというエコに徹したパンフレットです。
出版した経過について触れておきます。
去年ネット上で発行した「AALAニューズ」で全12回にわたり「ウクライナ特集」を発行しました。これは簡単に言えば、その記事(約100篇)のつかみどころを紹介したものです。
むかし、LPレコードのジャケットに印刷されていた曲紹介をライナーノーツと言っていました。題名はそれを借りたものです。これを読むと、何か分かったような気分にさせるという優れものです。もちろん気分だけですが…
ご希望の方には無料で配布しております。北海道AALA事務所までご連絡ください。

北海道アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(北海道AALA)
〒 001-0013 札幌市北区北13条西3丁目2-1 アルファスクエア北13条1010号室
Tel 011-747-0977 Email aalahokkaido1010@gmail.com


Geopolitical Economy Report
Feb 21 2023

ミュンヘン安全保障会議: 欧米が南に迫る…
あなた方は中立ではいられない。我々の側か敵の側か、どちらかだ

West tells Global South ‘you can’t be neutral’ in Ukraine war: 
You are either with us, or against us

ByBen Norton

リード

国連総会でロシア非難決議に賛成票が141票も集まったことに意外の感を抱いた方もいるでしょう。その背景を示唆するのが、1週間前にミュンヘンで開かれた欧米諸国の安全保障緊急会議です。会議の目玉は米国、ドイツ、ウクライナの外相による公開座談会でした。
三国の外相は声を揃えて、「中立は選択肢にない」と語り、独自の判断を示す「グローバル・サウス」諸国を批判しました。

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写真説明: ミュンヘン安全保障会議。中立国を非難するブリンケン、バーボック、クレバ

以下本文

米国、ドイツ、ウクライナの外相は、この戦争において「中立ではいられない」と圧力を加えた。それはブッシュ大統領の宣言「You are either with us, or against us」を思い起こさせる。

その発言は、地球上の多くの国、つまりウクライナ戦争に対して中立を維持している南半球の国々を暗に批判しているのである。

2月18日の公開ディスカッションでで、ドイツのバーボック外相は「中立という選択肢はない。それでは侵略者の側に立つことになる」と言い放った。

そして、「これは、来週(国連総会で)、世界に対して行う嘆願でもある」と強調した。「平和のため、ウクライナのため、人道的国際法のため味方をしてください。それは、ウクライナが戦うために弾薬を送り届けることも含めます」

ドイツ外相の発言は、米国のブリンケン国務長官にも響いた。
「バーボックが言ったように、中立はありえない。とても中立ではいられない」と彼は強調した。

ウクライナのクレバ外相は、「西側は原則と規範のために立ち上がった」と賞賛する一方で、「南半球は野蛮で無法地帯だ」と批判した。「しかし、世界の他の地域はどちらつかずで、事実上ロシアを支持している」とクレバは吐き捨てた。

バーボック外相は、1月の欧州評議会でも「我々はロシアと戦争をしている」と宣言した。それは西側がロシアに戦争を仕掛けていることを明言したことになる。

これら欧米高官の発言は、ウクライナ戦争に加わることを拒否した「南半球」に、彼らが苛立ち怒っていることを明確に示している。
………………………………………………………

これは流石に、みんなビビりましたね。ただこれからもっと戦況が悪くなると、脅しも効かなくなるでしょう。とくにドイツの跳ねっ返りには、ノルドストリーム絡みで国内から相当批判が出ると思います。
保留の32票はこれだけ脅迫されての保留ですから、「ロシアの味方」と指をさされる覚悟の確信犯です。

Sputnik 日本
2023年2月22日
プーチン大統領の年次教書演説
(AALAニューズ編集部による要約+小見出し)

はじめに

今日、世界において抜本的かつ不可逆的な変化が起き、我が国と我が国民の未来を決定づける重要な歴史的に最も重要な時期になっている。
1年前、我々の歴史的な土地に住む人々を守るため、我が国の安全を保障するため、そしてネオナチ体制による脅威を取り除くため、特殊軍事作戦が実施された。

この間に行われてきたこと

我々はこの問題を平和的手段で解決するために忍耐強く協議を行った。
しかし今、我々は、西側の指導者たちがドンバス(注1)の平和を目指すとした約束が残酷な嘘であったことを理解した。
彼らは時間を引き延ばし、政治的な殺害や迫害に目をつぶり、ドンバスにおけるネオナチのテロ行為を奨励した。
キエフ政権は2014年の時点ですでにドンバスに大砲、戦車、飛行機を投入していた。ドネツクに空爆が行われた。2015年にも彼らは再びドンバスへの直接攻撃を試み、しかも、封鎖、砲撃、民間人に対するテロを続けた。
キエフと西側諸国との間では防空システム、戦闘機、その他の供給交渉が行われた。キエフ政権は核兵器を獲得しようとしていた。彼らは公言していたではないか。
米国とNATOは、我が国の国境付近に自国の軍事基地を展開し、ウクライナの政権に大戦争に向けた準備をさせていた。そして今、彼らはそれを公然と、あからさまに、恥じることなく認めている。
ミンスク合意も「ノルマンディー形式」も外交的なショーではったりだと言ってのけた。名誉、信頼、良識という概念は彼らにはない。

欧米諸国の評価

(欧米諸国の支配者たちは)何世紀にもわたって植民地支配、覇権主義を続ける間に、何でも許されることに慣れ、世界中を無視するようになった。
彼らは自国民も同じように堂々と軽蔑し。騙している。彼らは「平和を模索し、安保理のドンバス決議を順守している」などと作り話を続けてきた。
我々はオープンかつ誠実に西側諸国との対話を行おうとした。すべての国家に平等な安全保障システムが不可欠だと主張してきた。我々が受け取った反応は偽善的なものだった。
ロシアとの国境へのNATOの拡大、軍部隊の展開、核ミサイル防衛拠点の創設である。
米国ほど多くの軍事基地を自国の外に持っている国はない。その数は全世界で数百に及ぶ。
米国は中距離・短距離ミサイル条約をはじめとする、世界の平和を支える基本的な軍事協定を一方的に破棄した。何の理由もない行動を米国がとることはない。

開戦に至る経過

2021年12月、我々は米国とNATOに対し、安全保障条約の草案を正式に送った。だが、最も重要な原則はすべて、真っ向から拒否された。彼らが攻撃的な計画を止めるつもりはないことが最終的に明らかになった。
脅威は日に日に増していた。こうしたすべては、国連安全保障理事会が採択した関連文書や決議に完全に反している。にもかかわらず、皆が何も起きていないふりをしていた。
2022年2月までにドンバスで再び流血の懲罰的な行動を起こすは疑いようがなかった。
繰り返したい。戦争を始めたのは彼らだ。我々はそれを止めるために武力を行使し、今後もこれを行使する。

欧米諸国の非難への反論

西側の目的は無限の権力である。我々が守っているのは人命であり、自分たちの生家だ。
西側はキエフ政権を支援し、武装させるためにすでに1500億ドル(20兆円)以上を費やした。これに対し、世界の最貧国支援にG7諸国が割り当てた額は約600億ドル(9兆円)だ。(OECD 2021年)
実に分かりやすいではないか。
戦争に注ぎ込まれる資金の流れは細らない。他国の混乱やクーデターを助長するための資金もまた、世界中で惜しみなく注がれている。
ウクライナだけではない。2001年以降、米国が始めた戦争による死者数は約90万人に達し、3800万人以上が難民となった。米国はこうした全てを記憶から消し去り、何事もなかったかのように振舞っている。
何兆ドルという大金が動いている。万人から盗み続け、民主主義と自由を装い、ネオリベラル主義の価値観を流布している。
ある国やある民族にレッテルを貼り、指導者を公然と侮辱し、敵のイメージを作り上げる。
こうして経済的、社会的、民族間の問題や矛盾の拡大から逸らさせ、自国内の反対意見を弾圧する。

ネオナチの本質を隠蔽する西側権力者

欧米は2014年のクーデターを支援することで、ウクライナの「反ロシア化」を強行した。
クーデターは血なまぐさく、国家に反し、憲法に反していたにもかかわらず、まるで何もなかったかのように受け止められた。どれだけの金が投じられたのかまで報道された。
その思想的基盤にロシア嫌悪症と極めて攻撃的な民族主義が投入された。
ウクライナ軍の旅団のひとつには、「エーデルワイス」の名が与えられている。
(かつてヒトラーの直属師団だったエーデルワイス師団は、ユーゴスラビア、イタリア、チェコスロバキア、ギリシャのパルチザンを虐殺し、ユダヤ人の国外追放、戦争捕虜の処刑を行った)
他にもウクライナ軍にはナチの師団名がつけられている。特に人気が高いのは、第2SS装甲師団「ダス・ライ」、第3SS装甲師団 トーテンコップ(髑髏師団)、第14SS武装擲弾兵師団「ガリーツィエン」などナチスの親衛隊だ。装甲車にはナチスドイツの時のドイツ国防軍の記章が描かれている。
ネオナチは、自分たちが誰あるかということを隠そうとしない。驚いたことに、西側諸国の権力者は誰もこのことに気づかない。
それは、彼らにとってはどうでもいいことだ。主な目的は我々と戦わせることだから。

ウクライナ政府は国民とは無縁だ

我々はウクライナ国民と戦争しているわけではない。ウクライナの国民は、キエフ政権とその西側の支配者らの人質となっている。
西側は事実上、この国を政治的、軍事的、経済的に占領し、産業を破壊し、その天然資源を略奪した。その論理的帰結が社会の退廃、貧困と不平等の爆発的な増加だ。
そのような状況では、おたがい他人のことなど考えない。人間は破滅のために準備され、最後は消耗品になってしまう。

ウクライナ紛争を煽り、犠牲者を増やした責任は、西側エリートとキエフの現政権にある。
この政権にとってはウクライナ国民は本質的に他人だ。ウクライナの現政権は自国の国益のためではなく、第三国の利益のために奉仕している。

ウクライナはロシア攻撃の突破口

西側諸国は戦況を変え、戦車など軍事供給を増やそうとしている。それについてあれこれ言うつもりはない。
だが、西側の長距離戦闘システムがウクライナに供与されれば、我々は対応せざるを得なくなる。

強力なロシアの建設

西側のエリートは自分たちの目標を隠そうともしていない。彼らははっきりと「ロシアに戦略的敗北」を与えるのが目標だと言っている。
つまり、彼らは局所的な紛争を世界的な対立の局面に転化させるつもりなのだ。この場合、話はすでに我々の国の存続に関わる。
大統領令によって2021年から2025年までの軍の建設および発展に関する計画が承認された。質的潜在力の向上を保証する最先端技術を積極的に導入する。

西側は我々に対して軍事的および情報的な戦線だけでなく、経済戦線も展開した。
ロシアとの経済関係を断ち切り、金融システムを通信チャンネルから断絶し、輸出市場へのアクセスをロシアから奪った。我々の外貨準備を盗み、ルーブルを崩壊させ、破壊的なインフレを扇動しようとした。
その結果どうなったか。
制裁の提唱者たちは自分で自分を罰している。自分たちの国で物価上昇、雇用喪失、事業閉鎖、エネルギー危機を引き起こした。そして国民に「悪いのはすべてロシアだ」と言っている。

ロシアの経済と統治システムは、西側が考えていたよりもはるかに強固であることが明らかとなった。
2022年の国内総生産(GDP)は2.1%減だった。予想は20~25%減、10%減だった。
昨年2~3月には、ロシアの経済は崩壊すると予想されていた。ロシアは補給網を再構築し、責任感があるパートナーとの関係を強化した。
通貨と金融についても前進した。国際決済に占めるロシアルーブルの割合は2021年12月比で倍増して3分の1となった。友好国の通貨(人民元)と合わせるとすでに半分を超えた。
ドルやユーロは、西側の支配者たちがいまのやり方を続ければ、必然的にその普遍的価値を失うだろう。
強力な収支均衡政策をとったために、ロシアは外国で借金をしたり、頭を下げたり、お金をねだったりする必要はない。どのような条件で返すかについて長い間話し合う必要もない。国内銀行は安定かつ着実に営業しており、しっかりとした蓄えを持っている。

次に農業生産について触れる。昨年、農家は記録的な収穫をあげた。1億トン以上の小麦を含む1億5000万トン以上の穀物を収穫した。2023年6月30日までに、ロシアは穀物総輸出量を55億6000万トンまで伸ばすことになるだろう。
農業生産は二桁の成長率を示した。これはまるでおとぎ話のようで、10~15年前には想像もつかない数字だ。

労働市場も成長を遂げた。現代の状況で失業率の低下を成し遂げた。パンデミック前のロシアの失業率は4.7%だったが、現在は3.7%と歴史的な低水準にある。

景気動向について触れる。
昨年は第2四半期のみ景気が後退したが、第3四半期および第4四半期にはふたたび成長と発展が見られた。
成長分野に変化が見られた。これまではアジア太平洋地域の世界市場への進出や、外国への原料供給が主要な成長分野であったが、最近では付加価値の高いモノづくり、ロシア自身の国内市場、科学、テクノロジー、人材の基盤が新たな成長分野として登場している。

ロシア国民の性格についてお話したい。
彼らはいつも誰よりも寛大で心が広く、慈悲深さと思いやりの深さで際立っている。我々は仲良くし、約束を守り、誰も騙すことなどなく、どんな時でも困難な状況にある人を支援し、困っている人がいれば、ためらうことなく助けに行く。
まさにロシアの民こそ、この国の主権の基礎であり、権力の源泉である。

戦略攻撃兵器削減条約をめぐる茶番

今月初め、NATOからロシアに対し、核の国防施設の査察を認めるよう要請が入った。「戦略攻撃兵器削減条約の遵守の精神に立ち戻れ」というのだ。

どこが「条約遵守」というのだ。
過日、キエフ政権がロシアの戦略的航空基地へのドローン攻撃を行った。
この作戦には西側諸国が直接的に関与していた。使用されたドローンは、NATOの協力を受けて装備され、アップグレードされた。
強調したいのは、米国とNATOは、ロシアに戦略的敗北を与えることが自らの目標だと明言していることだ。英国、フランスも核兵器を持ち、改良と開発を続けており、それらは我々、ロシアに対して向けられている。

2010年に発効した条約には安全保障の不可分性、戦略的攻撃兵器と防御兵器の直接的な関連性についての重要な条項が含まれていた。
しかし米国は弾道弾迎撃ミサイル制限条約を脱退しており、すべて過去のことになっている。我々の関係が悪化したのは完全に米国の「功績」だ。

アメリカは世界を作り替えようとしている

ソ連崩壊後、彼らは第二次世界大戦の結果を修正し、米国が唯一支配する世界を築こうとした。そのために、第二次世界大戦後に作られた世界秩序の土台をすべてあからさまに破壊しはじめた。安全保障と軍備管理のシステムを解体し、世界中で一連の戦争を計画し、実行に移したのだ。
もちろん、世界の状況は1945年以降、変化している。発展と影響力の新たな中心が形成され、急速に発展しつつある。これは自然で客観的なプロセスであり受容すべきものだ。しかし、米国が自国の利益のためだけに、世界秩序を作り変えることは、受け入れがたい。
ロシア国防省とロスアトムはロシアの核兵器実験の準備を確実にしなければならない。もちろん、これは我々が最初に行うのではない。米国が実験を行うのであれば、我々も行う。
世界の戦略的均衡が破壊されるような危険な企ては誰も抱いてはならない。

この文章は、1週間前に書いた記事を、その後の情勢や議論に合わせ増補したものです。メディア批判については、情報の整理が必要なので、別記事として投稿します。



ウクライナ戦争 開始一周年を迎えて

1.世界は戦況を知らされていなかった

年末まで、国際報道においてはウクライナ軍の圧倒的優位が伝えられていた。
ウクライナ軍は意気盛んで、ロシア軍を追い込みつつあり、ロシア軍は崩壊しつつあり、ロシア経済は破たんしつつある…という具合だ。この1ヶ月間の報道で、それは誇張(ウソに近い)だったことがわかった。つまり、メディアは長期にわたり戦場の現実を覆い隠していたのである。
最近の軍事情勢については2つの見方がある。一つは両者の力関係が拮抗しており、東部ではロシア優位に傾きつつあるという見方、もう一つはウクライナ軍が総崩れに陥りつつあり、アメリカも戦闘継続を断念する方向という見方である。
真偽は不明だが、ゼレンスキーとバイデンが突然の訪問を繰り返していることからも、事態の深刻さがうかがえる。
ロシア軍はロシア人居住区の確保という戦争目的をほぼ達成した。これ以上戦争を続ける理由はない。
ウクライナ側が戦う理由は何一つなくなっていない。“正義”は実現されていない。
ウクライナ支援の一翼を担う欧州各国は、ますます対米従属を強めつつあり、アリ地獄に陥りつつある。これは勤労者・庶民の強い不満を呼び起こしつつある。
このように、ウクライナをめぐる事情は、客観的にも主観的にもバラバラになっている。

2.世界はウクライナ政府のウソを知らされていなかった

ウクライナ政府は、一貫して正義の味方の役割を演じてきた。2014年のマイダン政変が合法政府を転覆させたクーデターであったこと、成立した政権が東部のロシア系住民を攻撃し、その尖兵となったネオナチが多数の住民を虐殺したこと、ゼレンスキー政権がミンスク合意を蹴り戦闘姿勢を示し続けたこと、開戦後はウクライナ軍が人間の盾方式を主要な戦闘方式として採用したこと、などは報道されなかった。
ウクライナ政府が正義の味方であることは、米国がクーデターを支持し、東部住民弾圧を黙認し、開戦後は軍事支援を惜しまず、第三国の施設(パイプライン)破壊まで敢行したことを弁護する応援となった。
この戦争の主役はウクライナ政府、NATO、米政府だけでなく、欧米主要メディアの仕掛けた戦争でもあった。

3.戦争を終わらせるための前提

この戦争は、黙っていればまだまだ終わりそうにない。戦いが続くということは人の血が流され続けるということだ。一刻も早い停戦が必要である。武器を送るのではなく和平交渉の椅子を用意し、そこに座らせることがもとめられている。
何らかの妥協が必要である。これはウクライナ政府とそれを支援する勢力にとっては辛い選択となるが譲ってもらう他ない。
もう一つは戦後世界の構築だ。それは異なる考えを持つ諸国家が平和的に共存する世界である。そこでは、国連規約に反する軍事同盟の解消と核廃絶が、まさに緊急課題として問われている。そのような戦後を目指す積極型和平が必要だ。
ウクライナ側からはこのような提案はない。しかしそれでは、せっかく交渉の席についても議論は進まない。この議論は未来志向のウィン・ウィンの関係を築くことによってのみ前進する。


4.アメリカの単独制裁に怯える時代が終わろうとしている

この辛い戦争を通じて、一つだけ未来につながる希望が見えた。それは米による一国支配体制のほころびである。
キューバ制裁に始まり、イラク、ベネズエラ、イランと、米国は理屈なし、国際手続きなしの一方的制裁を続けてきた。このやり方が初めてほころびを見せたことだ。
今回、対ロシア制裁の柱は次のごとし。
半導体などの戦略物資のロシアへの輸出停止
②石油、天然ガスなどの輸入制限、停止
個人・企業・銀行(中銀含む)の資産凍結と国際決済網からの排除

フォレイン・アフェアーズ誌によれば、ロシアは3つの手法で貿易・金融制裁に対応している。
①各国通貨建てのスワップ貿易
②人民元建ての国際銀行間決済
③デジタル人民元経由のドル決済
(Foreign Affairs December 27, 2022)

これらの対応は、今のところ基本的に成功している。当初、SWIFTからの排除はロシアにとって絶望的な状況と考えられたが、ほとんど影響なく経過した。通貨は安定し、ハイパーインフレも生じなかった。
実体経済の数字も悪くない。今月の原油生産量は710万トン、過去2年間で最高だ。GDP成長率も5.6%と予想される。ロシアの鼻息は荒く、欧州が原油を買いたくても売らないと宣言した。
このようなパフォーマンスの実現は、中国がロシアに好意的だったことも貢献したであろうが、政治的には、圧倒的な国家数、人口を持つ新興国・途上国が、米国の独りよがりに背を向けたことが大きい。
それは、たんにウクライナ戦争というだけではなく、その後の世界経済構造の変革への足がかりとなる可能性を持つ。


5.非先進国を主体とする新たな秩序の構築

ハバナで開かれた「進歩主義インタナショナル」は2月2日に「新国際経済秩序に関するハバナ宣言」を採択した。ポイントは2点。

① 非同盟のプロジェクトを更新する。1955 年のバンドン会議、1961 年の非同盟会議、1966 年の三大陸会議などで明確にされた主権、平和、協力の原則を発展させる。
②  21 世紀にふさわしい「新しい国際経済秩序」のビジョンを再構築する。デジタル技術の発展を取り込み環境科学の視点を注入し、新たな主権概念に適合した国家間秩序を練り上げる。
そしてこれを国連50周年記念キャンペーンとして提起したいとしている。

日本AALAとしてもこれに賛同し、大いに議論を盛り上げていくべきと思う。

昨日からNHKはウクライナ一色だ。
これだけ見せつけられると、皮膚からジワーッと染み込んでくる論理がある。
ウクライナは被害者だ。みな苦しんでいる。
こんなに苦しんでいるのはロシアが攻撃しているからだ。
ウクライナを苦しみから救うためには、ロシアをやっつける以外にない
この核心となる論理にはゆるぎはない。
実はこの「正義の三段論法」は誤謬だらけの虚構の論理であり、「戦いのチキンレース化」という致命的な欠陥をはらむが、今回は省略する。
百歩譲って「正義の三段論法」が論理の整合性を持つとしても、それは人倫の道に真っ向から反する、殺し合いの正当化論である。
だから純粋に論理の問題としてこの「死の三段論法」を俎上に載せるとしても、殺し合いが正当化されるきわめて僅かな可能性にこのケースが該当するかの吟味が必要だ。洪水のごとく流れるメディア情報には、この視点がまったく欠けている。
なぜか。それはこのウクライナ戦争という戦争には、人倫の原理を保留にし、戦争を合理化できる条件などなにもないからだ。
人倫を基礎とする三段論法では、三段目は「ロシアと話し合う以外にない」という結論になる。話し合う中身は3つある。第一に、戦争を仕掛けたのはロシアであるから反省は求める。第二に、とは言えロシア側にも言い分はあろうから話は聞く。第三に時計の針を戻す。2014年のマイダン政変まで戻すか、ミンスク合意のところまでにするか、戻しようのない話は別の形で償う。

この「死の三段論法」以外にも、いくつかの論理的トリックを指摘して置かなければならない。一つはウクライナ政府「真っ白」論である。これはロシア「真っ黒」論と対になっているのだが、後者を否定するとロシア擁護論のレッテルを貼られて、話がややこしくなる。
ウクライナ政権の最大の問題は武装対決論である。その後の報道を通じて、戦争は決して青天の霹靂ではなかったことがあきらかである。なんとしても回避すべきであったし、民族自決の意思表示は別な方法で行うべきであった。日本の1945年8月15日を想起すればよい。本土決戦は自殺行為であり、悠久の大義に“生きる”というのはレトリックに過ぎない。いまにして思えば開戦は痛恨の極みであり、1年経ったいま「さらに血を流せ」と呼号するのは、国民に対する犯罪としか言いようがない。
(開戦翌日の私の記事を参照されたい。  )

もう一つの問題は思想としての「本土決戦」主義である。それは武装対決路線の必然的な帰結にみえるが、そうではない。人民をモノ、「人間の盾」として利用する非人間的発想に基づく邪悪な戦略である。個別の事例を挙げれば水掛け論になるが、そもそも「本土決戦」の発想がアンチヒューマンな狂気を秘めていることに思いを致さなければならない。
メディアで放映される映像のかなりの部分に、この戦争につきまとう異様な残虐性を感じざるを得ない。それはロシアの残酷さとか、戦争一般の悲惨さとかにとどまらないものだと思う、

メディアがこのような点を踏まえて、後世に恥じないような報道を貫くよう、心から期待するものである。




Global Times
Feb 09, 2023

US urged to explain Nord Stream blasts after Pulitzer winner's probe

米国、ノルドストリーム爆発について説明を求められる:
ピューリッツァー賞受賞者の調査報道を受けて

https://www.globaltimes.cn/page/202302/1285165.shtml


By Wang Qi

gasumore

デンマーク国防軍司令部が公開した、「ノルドストリーム2」のガス漏れを示す写真 
2022年9月27日、デンマークのボーンホルム沖でデンマークの迎撃機F-16から見たもの。
ロシアと欧州を結ぶ2本のガスパイプライン「ノルドストリーム」で原因不明のガス漏れが発生し、妨害工作の疑いが出ている。

以下本文
………………………………………………………

世界に衝撃を与えたガスパイプライン「ノルドストリーム」の爆発事故から約5カ月、米国のベテラン調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュの記事が、爆発事故の犯人は米国であると告発した。

米国は頭ごなしにこの告発を否定したが、ハーシュの記事は直ちに米ロ間の激しい言葉のやり取りを招き、地政学に波紋を広げている。

中国の専門家は、これまでの米国の行動を考えると、ハーシュの報告書は信憑性が高いと考えている。そしてワシントンが否定しても、この報告を手掛かりにもっと証拠を掘り起こそうとする動きが強まるだろう、とりわけロシアの決意は固いものとなると考えている。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、2022年の「ノルドストリーム」パイプラインの爆発事故について米国の役割を説明するよう求めた。

ザハロワはテレグラムのページで、「ホワイトハウスは、ハーシュが指摘したすべての事実について説明しなければならない」と述べた。

これに対し、ホワイトハウスの国家安全保障会議のワトソン報道官は2日、次のように述べた。
「調査記事は "全くの虚偽で完全なフィクション "である」
また、CIAと国防総省も同様の趣旨でこの疑惑を否定した、と報道されている。

85歳のピューリッツァー賞受賞者であるハーシュは、2日、個人サイトで記事を公開した。

そこで彼は、ホワイトハウスの高官が国家安全保障の専門家チームを組織し、9ヶ月間にわたって秘密討議を行ったとする。そしてノルドストリーム・パイプラインを破壊する計画を立案したと述べた。
同記事は、この計画を直接知る情報源を引用し、作戦の多くの詳細を明らかにした。
①NATOの海上演習を隠れ蓑に、米海軍のダイバーが爆発物を仕掛けた。
②NATO加盟国であるノルウェーの偵察機が、起爆装置のボタンを透過した。2022年9月26日のことである。
作戦は6月に連続して行われる予定であったが、バイデンはこの作戦を一旦保留した後許可した。

誰が犯人なのか、最終的な判断はくだされていないが、すでに、アメリカ、NATO、そしてスウェーデンとデンマークの各国調査団は、爆破が"妨害工作の結果 "であることに関しては一致している。

決定的な証拠をつかむ

2022年9月のノルドストリーム爆発事故の直後、一部の米国メディアはロシアが犯人である可能性が高いと非難していた。

しかし、ハーシュは、自国の政治的エリートは、事件前の発言に関して、パイプラインを破壊するインセンティブをより強く持っていると書いている。

2022年2月7日、ジョー・バイデン米大統領は次のように脅した。
 "もしロシアの戦車や軍隊がウクライナの国境を越えたら、Nord Stream 2はもう存在しなくなるだろう"。

2022年9月、西ヨーロッパで深刻化するエネルギー危機の影響について、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は記者会見で、次のように示唆した。

「Nord Streamの停止は、ロシアのエネルギーへの依存をきっぱりと取り除き、ロシアが政治的目的のためにエネルギーを武器として利用するのを阻止する絶好の機会である」

中国社会科学院の米国研究専門家である呂祥氏は2月20日、環球時報にこう語った。
「バイデン氏が一般市民で、誰かに脅しをかけたとしよう、その後に米国のどこかでパイプラインの爆発が起こったとしたら、彼は強い動機があると解釈され、米国検察当局によって法的責任を負うことになるだろう」

ハーシュは、1969年の米軍によるベトナム民間人虐殺や、2003年の米軍侵攻後の米軍によるイラク人捕虜への残虐行為に関する調査で、その信頼性を証明した。

そのことが、呂祥にノースストリームパイプラインの爆発事故に関する最新の調査を信じるようにさせた。

「たとえ100パーセント正確でないとしても、つまり、このような怪しげな活動の暴露が100パーセント正確であることはありえないとしても、どこからともなく作り出されたものでないことは間違いない」と呂祥は指摘した。

ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストを含む米国の主要メディアは、米国新聞の一面を飾るにふさわしいこの件について、報道時点では沈黙を守っている。  

呂氏は、この一貫した沈黙は、米国メディアと米国政府の緊密な連携であり、たとえ決定的な証拠をつかんだとしても、それを否定し、抹消する戦略であると推測している。

中国外交学院国際関係研究所の李海東教授は、米国は天才的な嘘つきであると語った。
ハーシュの勇気は賞賛されるべきだが、アナリストは彼の安全性を懸念している。

破壊されたパイプラインから最も利益を得たのはアメリカであることは明らかである。
 「もし、米国が破壊工作を行ったのなら、米国は間違いなく証拠を隠滅し、国民を欺く方法を慎重に積み上げているだろう」と李は言った。  

李氏は、このような国際的な紛争を担当する法的組織がなければ、法的な立証は難しい、と述べた。
米国が犯人であるという証拠をさらに裏付ける事が出てきたとしてもとしても、ほとんど不可能である。
しかし、この調査報告書は、ロシアがより多くの証拠を掘り起こすという決意を強めるだろう、と彼は言った。

この爆発に対する欧米の指導者たちの反応も、米国への疑惑を深めるものだった。当時の英首相リズ・トラスがブリンケン氏に「終わった」 "it's done" とメールを送り、ポーランドの元外相が「米国に感謝する」"Thank you, USA."
とツイートした。

2023年1月、ロシアはノルドストリーム1、2のパイプラインの穴を調査していたスウェーデンとデンマークが "何か隠している "と非難した。そしてロシアが共同調査に関与できないように妨害した。

「アメリカが犯人であろうとなかろうと、ヨーロッパの振る舞いははあまりにも従順である。
ロシアとウクライナの紛争が激化するにつれ、欧州が安全保障問題で米国と交渉する余地がどんどん少なくなっている。これは悲劇的だ」と李氏は指摘した。

李海東は述べた。欧州の政治家は、米国に盲従することが最終的に欧州に利益をもたらすのか、それともその逆なのかを考えるべきだと。
そして、欧州は自律性を効果的に強化するよう促した。
「さもなければ、ノルドストリームの爆破のような事件が再び起こります。そしてその代償は再び米国ではなく欧州が払うことになるでしょう」


ノルドストリーム事件の続報がだいぶ入ってきました

基本的にはハーシュの記事の後追い+各界反応のレベルですが、少し拾ってみたいと思います。

1.爆破計画の背景

爆破計画の背景はこう説明されている。

「NATOとワシントンから見て、ノルドストリーム1だけでも十分危険だった。もしノルドストリーム2が承認されれば、ドイツと西欧が利用できる安い天然ガスの量は2倍になる。西欧が安い天然ガスのパイプラインに依存する限り、西欧はウクライナに武器や資金を提供するのを嫌がるようになるだろう」

大統領安全保障顧問は対策チームを招集した。海軍は潜水艦を使って、パイプラインを攻撃するよう提案。空軍は遅発性の爆弾を投下する案を提出した。海軍案が採択され、CIAが立案に当たることになった。それが「戦争行為」であることはメンバー全員が承知していた。

素案が固まった時点(昨年2月初め、開戦の3週間前)、バイデンはドイツのショルツと会談し、直後の記者会見で「ロシアが侵攻すれば、ノルドストリーム2はない。我々がそれを終わらせる」と述べた。

2022年6月に、バルト海における合同軍事演習「バルトップス演習」が実施された。これを隠れ蓑にして、米海軍のダイバーが「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」の下に爆発物を設置した。

3か月後の9月26日、ノルウェー海軍のP8偵察機が発信機を投下した。信号は水面下に広がって、数時間後に機雷を爆破させた。

ブログに概要を発表した後、ハーシュは「Berliner Zeitung」の取材に応じ、以下のように語った。
「作戦関係者の多くは計画に反対し、“狂気の沙汰”だと指摘していた。こう言った関係者もいる。「それは、まるで東京の地下に原子爆弾を仕掛けて、日本人にオレたちは爆発させるぞ、と言っているようなものだ」
バイデン大統領は、爆破を当初予定の6月ではなく9月に延期するよう指示したが、最終的には実行命令を下した」

ここまでがハーシュの記事の概要。以下は記事の反響。

2.ハーシュ記事に対する反応

ホワイトハウスの報道官は直ちに記事を否定した。
米国務省のネッド・プライス報道官は、「米国が事件に関与している」という主張は「完全なでたらめ」である、と発言。
ロシアのペスコフ大統領報道官は、「ブログを第一の情報源として扱うことには注意が必要だが、看過するのは「不公平」であり、西側の報道機関が十分に報じていないことに驚いている」と述べた。
中国の環球時報は説明責任を追求する社説を掲載した。気球撃墜事件はこれに対する返礼というか、カモフラージュの可能性が高い。

3.冷ややかな西側メディアの反応

「ワシントン・ポスト」や「ニューヨーク・タイムズ」は、これまでハーシュ氏の報道を取り上げていない。また、「ニューヨーク・ポスト」は記事を引用する形で短く伝えてはいるが、続報は出していない
「南ドイツ新聞」はハーシュ氏の記事について懐疑的に伝えている。英紙「ガーディアン」や「フィナンシャル・タイムズ」は取り上げていない。「タイムズ」はハーシュ氏の記事を引用して伝え、米国政府が否定したことを伝えている。
スペイン、インドのメディアはハーシュの報道を大きくとり扱っている。

日本メディアでは詳細を示したり大きく取り上げている記事はみあたらない。

米国の主要メディアは今のところ沈黙を守っている。しかし例えばハーシュの出身母体NYタイムズであれば、最低でも「バイデン発言との関連で、米政府は説明義務がある」との構えは打ち出すであろう。

以下はスプートニク 通信 2023年2月15日の紹介

【解説】「ノルドストリーム爆破に米関与」への各国反応 日本メディアが伝えない米国に不利な報道
https://sputniknews.jp/20230215/14965932.html
日本語版があるので利用させていただきます。

4.経済的影響 誰が得して誰が損をしたか

フランスのマリアーニ欧州議会議員は、ノルドストリームの破壊から米国がどのように利益を得たかについて語った。

ノルドストリームが稼働を停止した後、米国の石油会社と液化天然ガス(LNG)生産会社は記録的な利益を上げている。
わずか6か月で欧州は米国産LNGを積んだタンカーを230隻以上受け入れた。
利益を得たのは米国だ。最も損をしたのは欧州だ。EUはそれを認めず、産業と家計が被った損失を黙認している。


5.その後に明らかになった事実

スプートニク紙は、航空機の位置を追跡するサービス「Flightradar24」のデータを調査した。その結果、
*発生3ヶ月前の6月に北大西洋条約機構(NATO)の海軍機が現場周辺の海域を定期的に旋回していた。
*爆発から1時間後に米国の哨戒機「P-8A・ポセイドン」が爆発地点の周辺を通過していたことが明らかになった。
*爆発から1ヶ月半後、当該水域を管轄するスウェーデン当局が調査結果を発表した。
「ノルド・ストリームで起こったガス漏れは、工作活動によるものだった可能性が高い。それは“野蛮なサボタージュ”と考えられる」


下記の講演がYou Tubeて視聴できる。1週間続いた便秘がスッキリだが、やや刺激が強い。

「ウクライナ戦争と新自由主義の行き詰まり」 孫崎 享(元外交官・政治学者) 第18回 新社会党新春講演会 2023年1月22日 
孫崎

いまや停戦を掲げないウクライナ論は、アメリカを利する「野蛮な正義論」として退けられる時代になってきてはいるが、依然根強いことは事実で、矢面に立って闘ってこられた孫崎さんであるから、対抗上ちょっぴり外交官らしくないところもある。
論点を整理する上では非常に参考になるのでぜひご視聴をお勧めしたい。


セイモア・ハーシュのノルドストリーム爆破事件の暴露記事が話題を読んでいる。
私も一時訳しかけたが、半分を超えた頃に「ちょっと待てよ」と感じて、作業を中断している。

もともと胡散臭かったノルドストリーム事件

ノルドストリームの事故については当初よりきわめて胡散臭いものを感じていた。
そのタイミングがあまりにも絶妙であり、その規模があまりにも大きく精緻であることで、ネオコンの絡んだ陰謀ではないかという疑いを持った。それは多くの左翼活動家にとって共通の思いであったろうと思う。
しかし、パイプラインはロシアが一方的に敷設したものではなく、ドイツとの共同工事として完成に至ったものである。それを破壊することは、ウクライナの戦いという「正義」によって合理化できるようなものではない。むしろ同盟国への信義も国際法も無視した犯罪行為と断ぜざるを得ない。少なくともアメリカ政府が直接手を下すような代物ではない。これが第一。
そしてその最大の受益者がほかならぬ同盟国ドイツであり、その国民的ライフラインに対する攻撃とみなさざるを得ないのである。それが米独関係にどんな影響を及ぼすだろうと考えれば、正常な神経をした人間に手が出せるような作戦ではない。
それにしては不思議にドイツは文句一ついわず、渋っていた戦車の供出まで申し出た。だとするとドイツはひょっとして米国の脅迫に屈したのだろうか。

セイモア・ハーシュとは誰か

ということでもやもやしたまま、事実が経過していたのであるが、しかし、ロシアとの関係強化を喜ばない勢力による陰謀だったのではないかという感じはますます強くなっていた。
そこへ持ってきてのセイモア・ハーシュの暴露である。
セイモア・ハーシュと言えば我らベトナム世代にはカリスマ的光彩を放つ人物である。彼は従軍記者として現地で取材中に、南ベトナムの農村ミライ村で米軍が行った住民虐殺事件を目撃し、これを新聞で報道した、
そして、その記事がピュリッツァー賞の対象となった。
その彼が2月10日に突然、調査記事を発表。事件は安全保障会議の指揮のもと軍、CIA、国務省などが関わってタスクフォースを結成し、入念な準備の末に昨年9月に機雷攻撃を敢行したものだとかいたのである。

まだ確認情報が現れない

しかしあまりにも大規模な作戦、技術的困難、情報源の信頼性などいくつかの難点があり、少しフォロー記事がないと直ちに信頼するのは困難というのが、目下の心境である。
具体的にいくつかの有力な反論もでており、もう少し事態を見守りたいと思う。ただし、言って置かなければならないが、これはきわめて説得力のあるレポートであり、ジグゾーバズルの最後のピースになる可能性を秘めている。

グーグルで一言の報道もないと書いたところ、
北海道AALAの会員から「赤旗にはしっかり報道されている」と指摘がありました。
2月10日の国際面です。
いわれてみるとなんとなくそんな記憶もありますが、グーグル検索の印象が強烈だったので、消え去ってしまったのだと思います。
nakamitu

コピーを掲載します。内容も薄められず歪められず、しっかりと伝えられています。
考えてみればしっかりと特派員を送っているのですから、もっと有効活用すべきだと思います。

念のため、「中満 安保理」でもう一度グーグル検索をかけてみました。

NHKニュース
2023年2月10日 0時12分
国連安保理 ウクライナ武器供与めぐりロシアと欧米各国が応酬

が拾われました。
国連の安全保障理事会でウクライナ情勢をめぐる会合が開かれました。冒頭、国連の軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長は武器の流入が紛争を激化させる懸念を示すとともに、ロシアがウクライナへの攻撃を続けていることも改めて批判しました。
前回は“中満”が見出しにないためスルーされたのかもしれません。

中満泉さんの安保理発言

2月8日に中満さんの演説が行われた。演説の直後にピンク・フロイドの発言があってこちらは随分話題になったが(私も紹介している)、中満さんの演説の方はほとんど紹介されていない。
まさかと思ったが、グーグル検索で“中満 安保理 報告”で検索したが、1件の記事もヒットしない!

4月の国連総会での演説もふくめ、中満さんの話はととても重要なので、紹介しておく。原文は下記のリンクへ。




武器輸出が増え、重装備化している

2022 年 2 月 24 日にロシア連邦がウクライナで軍事攻撃を行い、ウクライナの人々に計り知れない苦痛を与え、世界中に波及効果をもたらしてから、ほぼ 1 年が経過しました。

これまでも、多くの政府が、防衛上の必要性からウクライナに軍事支援を提供していると発表しています。
歩兵戦闘車、防空能力、大口径砲システム、無人戦闘機、ミサイル システム、小型武器、軽火器など、通常の重火器や軍需品が転送されています。
これに加え、ごく最近、より重く近代的な兵器の転送が発表されています。

武力紛争のあらゆる状況への大規模な武器の流入は、紛争のエスカレーションと転用のリスクに関する懸念を増幅させます。
軍備の透明性は、加盟国間の緊張とあいまいさを軽減するのに役立つ重要な信頼構築手段です。
国際規範に従って、武器と弾薬の譲渡には、譲渡前のリスク評価と、現場検査やエンドユーザーの検証などの出荷後の管理が含まれる必要があります。

民間人への影響が深刻化している

現在の軍事攻撃が始まって以来、人権高等弁務官事務所は 18,657 人の民間人の死傷者を記録しています。この合計には、7,110 人の死亡者と 11,547 人の負傷者が含まれています。実際の数値はおそらくかなり高いです。

民間人の死傷者のほとんどは、重火器、複数のロケット発射システム、ミサイルなど、広範囲に影響を与える爆発兵器によって引き起こされています。

重要な民間インフラへの攻撃が、民間人に直接的な人道的影響をもたらしています。
家、学校、道路、橋が破壊されただけでなく、病院や医療施設も攻撃されています。水、ガス、暖房、電気の混乱は、ウクライナの人道的危機をさらに悲惨な次元に到達させています。

事務総長は、紛争当事者に対し、無差別に危害が及ぶ可能性が高いため、人口密集地域での爆発兵器の使用を控えるよう明確に促しました。

侵攻から 1 周年 さらに訴える

ウクライナ侵攻から 1 周年を迎えるにあたり、私は国連の平和への呼びかけを新たにしたいと思います。過去 12 か月間、計り知れない損失と荒廃が見られました。
残念なことに、現在の軍事的論理が優勢であり続ける限り、紛争の交渉による解決の見通しは現時点では薄いように思われます。

紛争のさらなるエスカレーションと長期化は、耐え難い苦痛をもたらすだけです。ウクライナを支援するための軍事装備の移転は、平和への願望を狂わせてはなりません。
私は、国連憲章の原則に従い、ウクライナの主権と領土保全を尊重しつつ、紛争の平和的解決を支持するという総会の呼びかけを繰り返します。

ありがとうございます。

元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの国連安保理でのスピーチをめぐってはさまざまな報道が飛び交っている。
彼が何を言うかはおよそ察しが付く。西欧メディアが地の文でどのくらい彼の発言を歪めるかも想像できる。
彼の発言を忠実に報道しているニュースを探したが、ろくなものはない。彼はすっかり晒し者にされており、喋った言葉の数倍くらい、彼の言葉へのケチつけと当てこすり
が盛り込まれている。とりあえずアルジャジーラの記事を紹介する。

ALJAZEERA
9 Feb 2023

ウクライナ、ロジャー・ウォーターズの国連安保理での発言を非難
Ukraine slams Roger Waters over UN Security Council speech

https://www.aljazeera.com/news/2023/2/9/ukraine-slams-roger-waters-over-un-security-council-speech

RTRMADP_3_UKRAINE-CRISIS-UN-PINKFLOYD

ロシアは西側諸国によるウクライナへの武器支援について、安保理での議論を要請した。
席上、ロシア側参考人としてピンクフロイドの共同創設者であるロジャー・ウォーターズが発言した。ウクライナは、ウォーターズが「ロシアの侵攻は“故なきもの”(not unprovoked)ではない」と主張したことを糾弾した。

以下本文

79歳のウォーターズは、ロシアの招請で開かれた国連安全保障理事会で、ロシア側のゲストとしてビデオ出演し、スピーチを行った。

彼は、これまでプーチン大統領を賞賛し、ウクライナに武器を供給している欧米を批判してきた経歴があり、どの程度踏み込んだ発言をするかが注目されていた。

かれはまずモスクワの攻撃を非難し「違法」だと述べた。
ついで、キエフとその同盟国にもこの紛争の責任の一端があることを示唆した。

「ロシアのウクライナ侵攻は、“まったくいわれのないもの” というわけではありませんでした。だから私は、挑発者に対しても可能な限り強い言葉で非難します」 

ウォーターズは、ニューヨークの外交官たちにビデオリンクを通じてこう語った。ただし特定の個人、グループ、国に言及することはなかった。

ウォーターズの発言は、ウクライナのセルギー・キシュリツァ国連大使の鋭い非難を浴びた。

大使は「ウォーターズがモスクワの行動を“なかったことにしようとしている”(whitewash)と非難した。

1979年、ピンク・フロイドは『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール』という曲を発表した。
同じ年にソ連がアフガニスタンに侵攻した。そのときもピンク・フロイドは非難された。

ある音楽家はいう。

「それは激辛とまでは行かないがかなりの皮肉だ。彼はロシアの防壁のレンガの役割を引き受けている。それは“偽情報とプロパガンダの壁"だ。
あのときに続いて、今回まで見てみぬふりをするとは…かつてのファンにとっては、悲しいことだ」

ウクライナの最も有力な支援者である米国もウォーターズを糾弾した。
「我々は今日もまた、ロシア弁護の別バージョンを聞くために集められた。彼らは、ロシアの残忍なウクライナ侵攻が、ロシアのせいではないという。実はウクライナやウクライナのパートナーのせいなのだというわけだ。
ウォーターズ氏の言葉を借りれば、ウクライナの友人たちがこの戦争の挑発者だということだ」

米国のリチャード・ミルズ国連副大使は、15人のメンバーからなる安全保障理事会でこう語った。

「私たちは、ウクライナの自衛行動がこの戦争を終わらせる障害になっているという考え方を明確に否定します。それは被害者を非難するものです。
ウクライナ人ほどウクライナの平和を望んでいる人はいない。
侵害されたのはウクライナの主権と領土の一体性であり、ロシアにとっての一体性ではない」

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       ウクライナに軍事援助を与えている国々

昨年9月、ウォーターズは欧米の武器供与に反対した。そしてゼレンスキー大統領が「極端なナショナリズム」の拡散を許していると非難した。

ゼレンスキーの妻、オレナ・ゼレンスカに宛てた公開書簡の中で、ウォーターズはこう書いている。

 「悲しいことに、あなたのご主人は、ウクライナの人々の意志を否定する全体主義的、反民主主義的なものに同意してしまった。
そしてそれ以来、その影で悪意をもって潜んでいた極端なナショナリズムの勢力がいまやウクライナを支配している」

「彼らはロシアが何年にもわたって明確に提示してきたレッドラインを何度も越えてきた。
その結果、彼ら極端な民族主義者は、あなたの国をこの悲惨な戦争への道へと導いたのです」
(ウォーターズの発言はここまで)


ロシアは、ウクライナでの行動を「非軍事化および脱ナチス化」を目的とした「特別軍事作戦」と呼んでいる。

いっぽうウクライナ政府と西側諸国は、「ロシアがウクライナの国土を奪い征服するために侵略戦争を行っている」と主張し、ロシア側の言い分を否定している。


SOURCE: AL JAZEERA AND NEWS AGENCIES

*訳者注 ロジャー・ウォーターズは、米国のベネズエラ攻撃の際も一声上げている。

*ついでに一言: 正義派は時間軸上の一点(武力侵攻)をもってあらゆる判断の出発点としてしまう。正義論が感情論である以上仕方ないのである。しかしそれでがんじがらめになると停戦の提案そのものが許せなくなる。「神州不滅」で固まって、未来志向が働かなくなるのである。




NY Times
Feb. 9, 2023

GUEST ESSAY


By Nicholas Mulder

Dr. Mulder, a historian of twentieth-century European and international history at Cornell University.


2021年12月、バイデン大統領はロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、ウクライナ領土への侵攻は「これまで見たこともないような経済的結末」をもたらすと警告した。

警告にも拘らずプーチンはウクライナに侵攻し、アメリカとヨーロッパの同盟国は、歴史上最大規模の経済制裁を実施した。

それから1年、ロシア経済は予想をはるかに超える衝撃を乗り越えた。

2022年3月、国際金融研究所は、ロシア経済が年末までに15%縮小すると予測した。しかし、ロシア経済の縮小幅は昨年1年間で3%強にとどまった。IMFの見通しでは、ロシア経済は2023年度に0.3%とわずかながら回復するだろう。
一方、EUは0.7%の拡大にとどまり、英国のG.D.P.は0.6%下がると予想されている。

なぜロシア経済は制裁下でも回復力をしめしたのか? 
それは、ロシアの政策対応、経済規模、通商上の地位、非同盟諸国の支持によると考えられる。

政府の迅速な危機対応は、制裁の短期的な影響を鈍らせることができた。
資本規制と積極的な利上げにより、ロシア中央銀行は2022年春の破滅的な金融危機を回避した。
今後しばらくは、政府の保有する金融資産(資源)が緩衝材となるだろう。

やや物足りない結果に見えるが、努力が足りなかったわけではない。

どのような基準で見ても、昨年度の西側諸国の制裁はそのスピードと広がりにおいて強烈なものであった。

侵攻開始から数日のうちに、ロシア中央銀行は3000億ドルもの在外資産を凍結された。
その後、欧米諸国では数週間から数ヶ月の間に、
*外国からの投資がすべて遮断された。
*ロシアの金融セクターの4分の3がSWIFT決済ネットワークから切り離された。
*ハイテク部品の輸出が阻止された。
*ロシアへの航空便、船舶、メンテナンス、保険サービスが停止された。
*そして、欧州諸国はロシアのエネルギー資源から自らを切り離したのである。

1年前、経済のハルマゲドンを予感させるものが世界中に蔓延していた。
国際エネルギー機関(IEA)は、ロシアの原油輸出に対する制裁が「過去数十年で最大の供給危機を引き起こすだろう」と警告した。

2022年末には、ほとんどの西側諸国がロシアの石油、ガス、石炭の輸入を大幅に減らすか、完全にストップした。
しかし先月、ロシアの原油輸出量は6月以来の高水準となった。

モスクワにさらなる衝撃を与えたのは、欧米企業のロシアからの撤退である。

何百もの多国籍企業がロシア市場から撤退し、現地法人を解散させ、あるいは投資プロジェクトを完全に断念したのである。

ロシアの石油輸出に対する先進7カ国の価格上限は、何事もなかったように世界市場に通用しているように見える。

 ロシアのオリガルヒが所有する数百億の資産もまた凍結された。

確かに、制裁措置は深刻な影響を及ぼしている。
それが予想より縮小したとしても、ロシア経済は長期的な成長軌道を大きく下回ることになるだろう。このままでは、よほどの幸運がなければ2021年の所得水準を回復できることはないだろう。

確かに、2022年は一般のロシア人にとって悪い年であった。
しかし、1998年と2008年の金融危機も、2020年のパンデミック不況も、こんなものではなかった。それはかつて「経済版の核爆弾」とまでいわれた措置であった。
実質GDPの成長率は、この1年の制裁措置よりもはるかにひどかった。

経済的なダメージはまだ終わっていない。まだこれからだ。

外国資本、技術、ノウハウの不足は、この国の将来の発展を大幅に阻害することになるだろう。
ロシアの石油・ガス部門は、欧米の専門技術に依存している。それなくしては、現在の生産量を長期的に拡大することはおろか、維持することも困難であろう。
航空部門は、ポンコツ航空機を部品として共食いさせることで、なんとか航空路を維持している。

おそらく、長期的にみて最も不利なのは、才能と教育を受けた膨大な数の専門家が流出したことである。
何十万人ものロシアのIT専門家、教師、学者、エンジニア、科学者が、現在イスタンブールやウズベキスタンのタシケントなどに亡命している。

欧米諸国は、輸出志向の、したがって輸入に依存する中所得国において、経済成長見通しを左右する力を持っている。

先進国のロシアへの制裁は、ロシア経済を掘り崩したり、プーチン大統領の戦争努力を瓦解させるほどではなかった。

昨年、米国と欧州だけではもはや制裁レジームを構築することができないことが明らかになった。
歴史的な経験からわかるのだが、制裁の圧力に耐えることができるのは、それがより大きな国のばあいである。
国土が広ければより多くの自然資源をかかえている可能性があり。国境線が長ければ、切り離すことがより困難だからである。

ロシアの対西側貿易は崩壊したが、アジア、中東、中南米、アフリカ諸国との商業交流は拡大した。
世界がパンデミックから回復し、戦争の衝撃に適応していく中で、ロシアの商品輸出は完全に敬遠するにはあまりに魅力的である。
ロシアからの安価な原材料の誘惑は、かつてない規模で制裁回避に拍車をかけている。

世界各地の海に、保険に加入していない、追跡が困難なタンカーが存在する。ロシアの石油を世界のバイヤーに届けるために、「闇の船団」(dark fleet)が徘徊している。

かつてスイスに拠点を置いていた商品取引業者は、ロシアの石油、ガス、石炭、肥料、穀物などの貨物を扱うために首長国連邦に移ってきた。

 トルコは、ロシアへの販売を目的とするグローバル企業にとって、コーカサスの山道を長いトラック隊が蛇行しながら通過する主要なパイプ役になっている。

インドの製油所やシンガポールの石油貯蔵会社は、割安なロシアの石油をアノニマスで購入し、世界中に販売して多額の利益を得ている。

ロシア製のヘリコプターや巡航ミサイルには、さまざまな仲介業者を介して、欧米製のマイクロチップが搭載され続けている。

アルメニアやキルギスのような小国は、ロシアに出荷されるスマートフォンや洗濯機などの消費財の中継地として忙しい日々を送っている。

もちろん戦争が始まる前に比べれば、この新しい連携は効率も悪く、コストも高く、中断されがちである。とはいえ、そのルートをフル活用することで、ロシアの輸入は戦前の水準に回復した。

制裁の効果が限定的であることから得られる最も緊急の教訓は、このような芝居がかった場面ではない。
むしろ制裁に気取られて私たちが見逃していることである。

それは、戦争によるウクライナの経済的打撃と、国際的な地位の低下であり、それを補うために西側諸国になにができるかということである。
ウクライナにとっては制裁は脇筋であり、ウクライナの将来を決定する主な舞台ではない。

実際、世界の世論は世界第11位の経済大国、ロシアの経済パフォーマンスに集中している。
そのことは戦争がウクライナの小さく弱い経済に与える、より大きな破壊的影響から注意を逸らす結果をもたらしている。
3%縮小した1兆8000億ドルのロシア経済と、GDPの3分の1を失った2000億ドルのウクライナ経済を比べてみよう。どちらがより深刻な問題を抱えているのだろうか?

欧米諸国が何よりも重視すべきなのは、ウクライナに対する持続的な支援である。
最近の議論では、当然ながら軍事支援が最重要視されているが、長期的な課題はウクライナ経済を欧米との完全統合の道へと導くことである。
その一方で、ウクライナ経済が崩壊しないよう、経済的な補強をしなければならない。この課題は、戦争が終わるまで待つことはできない。

ウクライナの経済強化のためには、インフラ、産業、農業に非常に大きな投資が必要である。
また、教育、医療、社会サービス、有能な機関の創設といった分野でも大規模な支援が必要である。
欧州連合(EU)は、東欧諸国を現在の発展水準に引き上げるために、30年の歳月と数兆ユーロの経済構造支援を要した。
繁栄し、自由で民主的なウクライナの建設を支援したいのであれば、同様の課題が西側諸国を待ち受けているのである。

制裁は、ウクライナの防衛戦争に対する支援の表明として重要である。しかし、ロシアへの経済制裁にのみ力を注ぐことは、この紛争で真に重要な経済的闘争からの逸脱である。

………………………………………………………

これは社説ではなくオピニオンである。しかし昨年のクリスマスのオピニオンで制裁強化を煽っていたのに比べると180度の転換と言って良い。あきらかに米国内では戦争継続を叫ぶネオコンへの逆風が吹き始めている。
背景には七つの海を股にかける「ヤミの船団」、コーカサスの山道を往く長いトラック隊、さらに南の非同盟諸国、BRICS諸国がある。いっぽうですべてを失ったウクライナはとんでもないお荷物となる可能性がある。ナポレオン、ヒットラーに次ぎ「冬将軍」に打ち破られる第三の敗者が登場するかもしれない。そして終戦後の欧州には、マーシャル・プランに継ぐ第二の支援計画が必要になるかもしれない。
ハゲタカやハイエナが跋扈するネオリベラリズムの世界が終わり、すべての国の主権が保障される多国間主義の世界への第一歩がふみだされることになるかもしれない。





病状悪化により、診療を休んだ。医局に顔出さないので日経新聞にもお目にかからなくなった。
半年の間、おそらく一人の読者もなく無聊を囲っていたのだろう。
昨日、久しぶりに顔を出して10日分ほどの紙面に目を通した。目を疑うばかりの変化だ。ウクライナ、ロシア関連のニュースはほぼゼロだ。世界がビックリハウスのようにぐるぐる回っているのに、まるでなにもなかったかのようだ。
もちろん国際面には戦車の話やウクライナ国防省の汚職の話は載っている。しかし外信の転載のみだ。一番のミラクル、死んだと思っていたロシアが生き返って、ウクライナ軍が壊滅寸前になって、アメリカ政府がオロオロして、新聞はいままでの報道とまったく別の景色が目の前に広がっているのを、呆然と見つめている。
経済欄に短報で「ロシア経済が破綻状態だ」のという記事がパラパラと載っているが、それと現実の格差について説明しようとさえしない。1945年終戦時の商業新聞だ。これでは極右のウェッジ誌にも及ばない。
こちらは親露系のサイトから少し情報を集めて、日経と付き合わせるつもりでいたが完全な期待外れ。
とりあえず、ためておいた記事を以下に掲げる。

telesur
2023 年 1 月 10 日

Russia’s 2022 Budget Deficit Accounts for 2.3 Pct of GDP: FM

ロシアの 2022 年の財政赤字は GDP の 2.3% を占めた

ロシアのアントン・シルアノフ財務相が発表した。

*金融市場での借り入れを増やした結果、財政赤字は474 億ドルに達した。これはGDP の 2.3% に相当する。

*総予算収入は4,024 億米ドルに達し、当初の計画よりも402 億米ドル多かった。

*地政学的な状況にもかかわらず、制限と制裁にもかかわらず、私たちは計画されたすべての任務を果たした。

………………………………………………………
30 December 2022

Russia and China Strengthen Their Strategic Ties

*プーチン大統領と習近平国家主席がビデオ会議。
*中国とロシアの累積貿易額は、今年の最初の 10 か月で 1,540 億米ドルに達し、前年比で 33% 増加と報告。

………………………………………………………
24 October 2022

Russian Exports Jump Over 25 Pct in Jan.-Sept.

*ロシア連邦関税局の第一次官 Ruslan Davydov が記者会見。
*第1~第3四半期のロシアの輸出は、前年比で 25.4% 増加し、4,310 億米ドルに達した。
*輸入はこの期間に 15.7% 急落して 1800 億ドルにとどまった。
*この結果、2510億ドルという「記録的な」貿易黒字が発生した。

NYタイムズにかなり衝撃的な記事が掲載されたので、そちらの翻訳に回る。とりあえず閉める。

The Unz Review
 FEBRUARY 1, 2023

ウクライナは沈没しつつある
西側諸国は逃げ出すのだろうか?

Ukraine Is Sinking,
Are Western Elites Bailing Out?


by MIKE WHITNEY

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      ウクライナはタイタニック号となりつつある


抄録

ランド研究所が発表したウクライナに関する最新の報告書(以下ランド報告)の重要な点は、分析のあれこれのクオリティではない。
重要なのは、米国で最も権威ある国家安全保障シンクタンクが、この戦争について、ワシントンの政治家やネオコンたちとは反対の立場を取ったという事実である。
これは非常に大きな問題だ。
 覚えておいてほしいのは、戦争は国民が反対するから終わるのではない、ということである。それは神話である。戦争が終わるのは、支配層の間に決定的な分裂が生じ、それが最終的に政策の変更につながったときである。
支配層の分裂を象徴しているのがランド報告、「長期戦の回避: 米国の政策とロシア・ウクライナ紛争の軌跡」である。
rand
ランド社のウクライナ報告 ( このページに行くと、そこからPDFファイルを入手できます
(2月5日、読者のご指摘を受け訂正しました)

これは、支配層の有力な一部が、「現在の政策は米国に損害を与える」と考え、多数派(ネオコン派)と決別したことを示すものだ。
彼らは現在の政策が米国を苦しめていると考える。この立ち位置の転換は、今後さらに勢いを増し 、交渉開始を求める引き金となるだろうと考える。つまり、ランド報告は、戦争終結への第一歩なのである。

報告書の前文にあるこの部分を少し考えてみよう。:

“ウクライナでの長期戦争のコストとリスクは大きく、そのようなやり方が米国にもたらすだろう利益見込みを上回る。”

この言葉は、この文書全体を効果的に要約している。
考えてみよう:

この11ヶ月間、私たちは繰り返し、アメリカは "必要な限り "ウクライナを支援すると聞かされてきた。
上記の引用文は、「そんなことはありえない」と裏書きしている。
米国は、ロシアをウクライナから追い出すという達成不可能な夢を追求するために、自国の利益を損なうつもりはないのだ。 「タカ派」と呼ばれる人たちでさえ、もはや、それが可能だとは思っていない。

外交当局の現実派は、ウクライナが成功する確率を計算し、逆に紛争が予期せぬ形で暴走する確率と比較検討しているはずだ。
後者の場合は誰の利益にもならず、ロシアと米国の直接の衝突を引き起こしかねない。米国の政策立案者は、ウクライナ作戦で膨れ上がる巻き添え被害が、成功した場合の利益に見合うかどうかを判断することになる。
具体的には、破断したサプライチェーン、激化するインフレ、深刻化するエネルギー・食糧不足、兵器備蓄の減少などだ。それらは、「ロシア弱体化」に見合ったトレードオフなのだろうか? 多くの人は、"No "と言うだろう。

ランド研究所が発表した報告書は、ドミノ倒しの長い列の最初の一歩に過ぎない。
今後ウクライナの戦場での領土的損失は拡大するだろう。ロシアがドニエプル川以東の全領土を支配することが明らかになるにつれ、ワシントンの戦略の欠陥がより明瞭になるだろう。

経済制裁は最も親しい同盟国を傷つける一方で、ロシアに致命的影響は及んでいない。その意味を人々は問い始めるだろう。ドル離れ、米国債離れを加速させるような政策を、なぜ米国がとっているのか?
そして、ウクライナの勝利の可能性がほぼゼロであるにもかかわらず、なぜ米国は3月の和平交渉を意図的に妨害したのか、と考えるだろう。

ランド・リポートは、こうした疑問のすべてと、それが生み出す「ムードの変化」を予期しているようだ。だからこそ、著者は交渉と紛争の迅速な終結を後押ししているのである。
以下はRTの記事からの抜粋である。
ランド研究所は、国防総省から直接資金提供を受けているエリート国家安全保障シンクタンクである。そこが画期的な報告書を発表した。
「代理戦争を長引かせることは、米国とその同盟国に甚大な損害を与えることになる。したがってウクライナでの「紛争の長期化」を避けるべきだ」との警告である。
(報告書は)まず、こう述べる。「ウクライナ紛争はここ数十年で最も重要な国家間紛争であり、その進展はワシントンにとって大きな結果をもたらすだろう」
その中には具体的に、米国の「利益」が影響を受けていることも記載されている。
 この報告書は明言する。
「ウクライナ人は戦闘を続けてきた。彼らの都市は平らになり(flattened)、「経済が衰退」したが、「これらの損害はキエフの損害とは意味が違う」(these “interests” are “not synonymous” with Kiev’s.)という。("Rand calls for swift end to war", RT)

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図 NATO Expansion

報告書は「米国の利益が損なわれている」とは明言していないが、事実上そのように受け取れる。
報告書はワシントンの対ロシア戦争による巻き添え被害には一切触れていない。
結局のところ、米国に多大な損害を与えているのは、1000億ドルの援助資金でも、強力兵器の提供でもないのだ。国連やその他の国際機関が、次々に登場してきていることが、アメリカ帝国を窮地に追い込んでいるのだ。
ランド研究所のアナリストは、他のすべての常識的な人々と同じものを見ている。すなわちワシントンとモスクワとの誤った対立は「遠すぎた橋」となってしまった。その反作用はとんでもなく耐え難いものだ。それゆえ、戦争を早く終わらせることが急務なのだ。

以下は、本文の途中に太字で掲載された報告書の抜粋である。
まず状況悪化のリスクを最小限にまで抑えること、その次に重要なのは長期戦を回避することだ。それは最優先事項である。
米国は中期的な紛争終結の方向性を高めるべきである。
報告書は主なエスカレーション・リスクを詳述している。主なリスクとしては、NATOとのより全面的な戦争、他のEU諸国への紛争の波及、核戦争などがあげられる。
一方で、興味深いのは、「長い戦争」がなぜ米国に大きな損害を与えるのかについては、具体的に説明していないことである。
この省略は意図的なものであろう。彼らは制裁の反作用により、米国の横暴に反感を持つ諸国連合が形成される危険性を感じている。
それはグローバルパワーを維持しようとする米国の計画を明らかに損なうことになるだろう。彼らはそのことを認めたくないのだと思われる。エリートたちの間では、このような話は禁句なのだ。 

Consortium Newsに掲載されたChris Hedgesの記事を要約すると、こうなる。
ロシアを衰退させることによってヨーロッパと世界のパワーバランスを再構築するこの度の計画は、失敗した20年前の中東再構築計画に似ている。
ウクライナ計画は、世界的な食糧危機を煽り、ヨーロッパを二桁近いインフレで荒廃させている。それは、米国の無力さと、その支配者である超富裕層の政策的破産を再び露呈するものである。
“米国に対抗して、中国、ロシア、インド、ブラジル、イランなどの国々が、世界の基軸通貨であるドルの専制政治から脱却しようとしている。
この動きは、米国の経済的、社会的破局を引き起こすだろう。. ”カッコ内強調
米国はウクライナを救うために、より高性能な兵器システムと何十億もの援助を与えているが、大事なのはそのようなことではない。
重要なのは、ウクライナを戦火から救い出すことである。



Daily News
February 02 2023

Sending tanks not element for solution in Ukraine-Russia war: Erdoğan

エルドアン、「戦車の派遣はウクライナ戦争解決には役立たない」



この間の和平の動きの中で、明確な成果を上げているのはトルコのみです。もっと注目すべきではないでしょうか。以下はエルドアンのTRT放送インタビュー(2月2日)での談話大要。

erudoan

1.米独の戦車供与は紛争解決に役立つのか?

そうは言えない。これらは時間稼ぎの狙いに過ぎない。この選択はまったく的外れで、危険そのものであり、武器商人を利するだけだ。

2.トルコの果たしてきた役割

トルコ政府は穀物回廊、囚人交換、ザポリジャー原子力発電所の安全確保、人道支援に関して、常に解決の一翼を担ってきた。交渉には、限定的な停戦宣言と公正な解決策のビジョンが必要である。

3.平和への見通し

私は常に平和への希望を持ち続けている。もしこの希望を失っていたら、穀物回廊は開かれなかっただろうし、囚人交換もなかっただろう。今後ともロシアとウクライナの指導者と協議を続け、恒久的な平和を確保する方法を見つけていく。

4.ヨーロッパの危険な動き

ヨーロッパには危険な動きもある。特にスカンジナビア諸国における反イスラム的な暴言と不当な行動の増大に懸念を抱いている。イスラム恐怖症との戦いにおいて、スウェーデンが誠実な措置をとることを期待している。

4.平和と交渉の呼びかけに対する支援を

トルコ政府は常に永続的な平和のための調停者の役割を担う用意がある。平和と交渉の呼びかけに対する欧州と世界からの支援を期待する。


Global Research
January 31, 2023

なぜ、今もなお、人類は戦争の悲劇を許容するのか?
ー21世紀の全体像ー

Why Does Humanity Still Tolerate the Tragedy of Wars in the 21st Century? The Big Picture

https://www.globalresearch.ca/why-does-humanity-still-tolerate-tragedy-wars-21st-century-big-picture/5804347

Prof Rodrigue Tremblay
torenbure-

           英語版ウィキより

リード

アントニオ・グテーレス国連事務総長が国連総会を招集することは有益かつ望ましいことである。
ウクライナ戦争の悪化が激化する現在、それが人類にもたらす大きな危害を考慮し、世界の平和の問題を議論することが今ほど必要なときはない。

***
第二次世界大戦(1939-1945)終結後、多くの内戦があった。2カ国以上によるいくつかの重要な地域的軍事紛争も発生した。
最も深刻な地域戦争は、朝鮮戦争(1950-1953)、ベトナム戦争(1955-1975)、イラク戦争(2003-2011)、シリア戦争(2011- )、そしてウクライナ戦争(2022- )である。
しかし、高度な軍事力を持つ国同士が向き合うような世界的大戦争に発展したものはない。



本文

* 人間の本性。戦争の基礎となる好戦的本能

人間の基本的な本能である支配、征服、支配、搾取への欲望は、しばしば国家間の紛争や戦争の背景そのものであった。
先進国でも、暴力を用いて権力を獲得し、拡大しようとする人間がいて、長い時間をかけて支配しているかもしれない。それが王、皇帝、独裁者、強権主義者たちである。
戦争が人間の本質に属するものであるならば、その運命から逃れるために、文明はより抑制的にならなければならない。
すなわち、文化的原則と民主的ルールと法律に基づいて、独裁政権や寡頭制を防ぎ、他民族への支配欲を抑制する必要がある。


* 倫理的諸原則、あるいは国際協力によって戦争を防ぐ試み

1.「正義の戦争」論

ヒッポのアウグスティヌス(354-430)やトマス・アクィナス(1225-1274)が、「正義の戦争」論(jus ad bellum)について最初の哲学的著作を表した。彼らは国家間の組織的・軍事的暴力の実行に、「正義」とまではいかなくとも、ある程度の道徳と公正さを導入しようと試みた。
「正義の戦争理論」の思想家たちによれば、戦争は先制的であってはならず、防衛的でなければならない。戦争は自衛のためのものでなければならない。その目的は、国家の平和を重大な損害から守ることであり、
その実行は、あらゆる外交的選択肢が尽くされた後でなければならず、その悪質性は、想定される限りにおいてもっとも小さなものでなければならない。

そのためには、戦争は、正当な理由が求められる。例えば、罪のない人命を守るなどである。
その理由に基づき、長期的な平和を追求すること、その力は正当な権威の支配下において、用いられること、
その行使においては、いくつかの手段が先行し、その後に最後の手段として行われるというような、いくつかの基準が提示された。
(訳注: この辺はかなり怪しいので、不明な点があれば原文をあたってください)

言うまでもないことだが、現実的には侵略戦争を防ぐ手段はない。このため、正義の戦争理論は、その創設以来、侵略戦争や征服戦争の発生を防げたことがない。
実のところは、無節操で傲慢な指導者が国際関係において弱肉強食の法則にのみ従い行動すれば、「Might makes right」という野蛮なルールが適用されることになる。


2.国際連盟の時代 (1920-1946)

国際連盟は、20世紀初頭の1920年1月10日、スイスのジュネーブで、世界人口の7割を占める41カ国の加盟をもって創設された。それは、第一次世界大戦の再発を防ぎ、「国際平和と安全の達成」を目的とした多国間の試みであった。

第一次世界大戦以前、平和と安定を維持するための国際システムは、非常に原始的なものだった。それは、いくつかの国を束ねた軍事同盟に基づくものであった。

軍事同盟の目的は、いわゆる「力の均衡」によって戦争の抑止力となることだった。しかし、同盟制度は非常に不安定であった。なにか重大な軍事事件があれば、それは容易にエスカレートする。
そしてまもなく大規模な戦争の引き金になってしまう。なぜなら一国が宣戦布告をすれば、その同盟国も参戦してくるからだ。

第一次世界大戦前には、大陸の中央にドイツ、オーストリア・ハンガリー、イタリアを中核都市、のちにブルガリア、オスマン帝国を加えた「中央国家」(the Central Powers)が形成された。
一方、フランス、イギリス、ロシアに、のちに日本、アメリカを加えた「連合国」(Allies)という軍事同盟が形成された。これらは互いに牽制し合いながら存在していた。

1914年6月28日、ボスニアのサラエボで、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子フランツ・フェルディナントが、セルビアの民族主義者ガヴリロ・プリンツィプによって、妻のソフィーとともに射殺された。オーストリアは直ちにセルビアに宣戦布告した。これが発端となり、軍事同盟が発動した。

軍事同盟がなければ、フランツ・フェルディナント大公の暗殺はセルビアとオーストリア・ハンガリーの間で地域戦争が起こるだけであっただろう。
しかし、同盟関係があったために、ロシアがセルビアを支援するようになり、その結果、オーストリアと同盟を結んだドイツは、自動的にロシアに宣戦布告することになった。

ここで問いかけが必要だ。「軍事同盟は大きな戦争を引き起こす火薬庫(powder kegs)なのか?

第一次世界大戦後、国際連盟はこのような同盟間の戦争を防ぐために作られた。しかし国家間の軍拡競争を防ぎ、軍縮協定を実施するにはあまりにも弱かった。
国際紛争が起こった場合、交渉や仲裁によって紛争を解決するためには、あまりにも脆弱であった。

3.国際連合の時代 (1945~)

第二次世界大戦(1939-1946)は、第一次世界大戦の遺産(続き)と言われている。
この戦争にも二つの対立する軍事同盟が関わっていた。一方は枢軸国(ドイツ、イタリア、日本)、もう一方は連合国(フランス、イギリス、カナダ、アメリカ、ソビエト連邦、中国)である。

大戦の直接的な引き金は、1939年9月1日、ドイツ軍が隣国ポーランドに侵攻したことである。その後、イギリスとフランスは、ポーランドと結んだ防衛条約に基づき、1939年9月3日にドイツに対して宣戦布告を行った。

しかし、歴史家はその責任の多くを、国際連盟が地域戦争を防ぐことができなかったことに求めている。
1919年6月のヴェルサイユ条約は、ドイツ(ワイマール共和国)とその経済に厳しい戦争賠償を課し、ドイツからいくつかの領土を奪い、その他の徴発も行った。
このような国家全体に対する厳しい屈辱は、ドイツだけでなく、イタリアや日本でもナチス運動や軍国主義の台頭を促した。

1945年6月26日、サンフランシスコで誕生した国際連合は、国際連盟の失敗を受け「侵略戦争」を禁止するための試みである。実際、国際連合憲章には、その主な目的は「戦争の惨禍から後世の人々を救う」ことであると記されている。

しかし、国連憲章が侵略戦争を違法としているにもかかわらず、強国は侵略戦争を続けている。
彼らは、自衛権51条の乱用的解釈に頼りながら、他の弱国に対して、その暴力的侵略が「必要な対応」であったと主張するが、それは口実に過ぎない。

だから、第二次世界大戦後の世界は、第一次世界大戦の前と比べて侵略戦争を回避するための環境が改善したとは到底言えない。 "所変われど品変わらず" (The more things change, the more they stay the same)である。


* 地政学的要因と軍事同盟の危険性

4.第一次冷戦 (1945-1991)

第二次世界大戦中、アメリカとソビエト連邦は同盟国であった。しかし、戦争が終わると、彼らは2つの強力な対立する「防衛的」軍事同盟を構築することになった。

一方、1949年、米国政府は北大西洋条約機構(NATO)の創設に力を尽くした。中・東欧に駐留するソ連軍に対抗するのが正式な目的だった。
現在、30カ国が加盟し、さらに多くの国々が加盟を待っている(スウェーデン、フィンランド、ウクライナ)。

NATO規約の第5条には、次のように規定されている。

「欧州又は北米におけるこれらの者の一人又は数人に対する武力攻撃は、これらの者全員に対する攻撃とみなす。

従って、このような武力攻撃が行われた場合には、各当事者は、国際連合憲章第51条により認められる個別的又は集団的自衛の権利を行使して、攻撃を受けた当事国を支援することに同意する。

締約国は、北大西洋地域の安全を回復し維持するために、個別的及び他の締約国と共同して、武力の行使を含む必要な行動をとり、攻撃を受けた締約国を支援する。

(何やら良く分かりませんので、原典から引用しておきます。

Article 5

The Parties agree that an armed attack against one or more of them in Europe or North America shall be considered an attack against them all and consequently they agree that, if such an armed attack occurs, each of them, in exercise of the right of individual or collective self-defence recognised by Article 51 of the Charter of the United Nations, will assist the Party or Parties so attacked by taking forthwith, individually and in concert with the other Parties, such action as it deems necessary, including the use of armed force, to restore and maintain the security of the North Atlantic area.

Any such armed attack and all measures taken as a result thereof shall immediately be reported to the Security Council. Such measures shall be terminated when the Security Council has taken the measures necessary to restore and maintain international peace and security .    以上 訳者)


一方、ソ連はNATOに対抗するため、1955年にワルシャワ条約機構を結成した。ソ連と東欧8カ国を加盟国とした。ワルシャワ条約は、加盟国に、外部勢力から攻撃された加盟国を防衛することを求め、統一的な軍事司令部を設置するものだった。

30年以上にわたって、西側ブロックと東側ブロックという二つの軍事同盟は、ヨーロッパのパワーバランスを形成した。

ワルシャワ条約機構は、ソ連が深刻な政治危機を迎えた1991年12月25日、正式に解体されることになった。ソ連はロシア連邦と15の新しい国家に取って代わられ、これで36年間続いた冷戦は終結した。

その結果、西側諸国連合であるNATOは、対抗する潜在的な敵を失ってしまった。

NATOの推進者である米国政府は、西側軍事同盟を解体するか、その目的を再調整して新たなミッションを開発するか、2つの選択を迫られることになった。
アメリカはその時、ヨーロッパにおける影響力を維持するために、NATOを解体しないという選択をした。

この決定は、ロシア政府にとって多くの疑念を抱かせるものであった。ロシア政府は、好戦的なNATOと対峙することを恐れていたのである。このような懸念を払拭するために、ブッシュ米政権はベーカー国務長官を通じて次のような確約をした。

「NATOは東欧には進出しない。したがって、ロシアにとって軍事的な脅威とはならない」

その交換条件として、ロシア政府は、東ドイツと西ドイツが一つの主権国家として統一され、NATOの同盟国となることを認めるよう求められた。しかし、1994年、さらに1999年になると状況は一変する。


5.第二次冷戦 (1999- )

1994年から1996年にかけては、共和党からの圧力もあったがそれだけではなかった。さらに一方的な新帝国主義外交を支持するネオコン派の台頭も影響した。クリントン大統領は演説で、父ブッシュがロシアに与えた保証、「NATOはもう1インチも東へ拡大しない」という原則をもはや尊重しないと匂わせた。

このときネオコンは、「米政府は市場経済への移行に失敗したロシアの極端な経済的弱点を利用し、ロシアを軍事的にも弱体化させ包囲すべきだ」と説得したのである。

1996年10月、クリントン大統領は、旧ワルシャワ条約機構諸国とポストソビエト共和国にNATO加盟を公然と呼びかけた。それだけではなく、NATO拡大が米国の外交政策の一環であることを公式に表明した。

1999年3月に東欧3カ国(ハンガリー、ポーランド、チェコ)がNATOに正式加盟した。これを皮切りに、旧東欧諸国(セルビアを除く)のNATOへの全面的組み込みが実施された。

1999年3月、クリントン政権はさらに一歩踏み込んだ。侵略行為を禁じた国連憲章を無視し、NATOを盾にユーゴスラビア内戦に干渉した。そしてセルビア軍に対する空爆作戦を開始したのである。

そのとき、米国政府は、国連を事実上無力化し、侵略戦争を防ぐことも止めることもできなくなした。
それ以来、米国政府は軍事介入を正当化するために、NATOを盾代わりに使ってきた。


* 戦争を始めるための口実、挑発、デマ、その他の諜報作戦について

国家間戦争を引き起こすには、直接爆撃したり、軍隊を派遣して外国を侵略したりしなくても、間接的な宣伝や裏切りなどいくらでもある

例えば、戦争の意図を持つ国は、戦争の前段階として挑発や脅迫を行う。あるいは、敵の憎しみを煽る。また、侵略者は、軍事演習や秘密作戦を通じて軍事攻撃の可能性を演出し、相手の国を混乱させ、苛立たせることもある。ニセ旗作戦(秘密に戦争行為を行い、その責任を他国になすりつける)もしばしば行われている。

非友好的な国を傷つけるもう一つの方法は、代理戦争に頼ることである。代理戦争においては、標的とする敵国に対して行う戦争だが、第三国が資金と武力を提供する。代理戦争と偽旗作戦の組み合わせは、紛争を公開戦争に発展させる計画の一部となり得る。

侵略者側の戦争計画は、秘密工作によって外国の施設を破壊することまで可能である。また、正式な宣戦布告なしに、被害国を包囲して脅威を与えることも可能である。

戦争を始めるときによく使われる戦術の一つは、嘘やデマ宣伝によって、敵国の“隠された意図”を作り出し、相手を誹謗し悪者に仕立てることである。

対象となる国を戦争に追い込むもう一つの方法は、その国が輸入しなければならない石油などの必需品の貿易禁輸を課すことである。ある国に対して一方的に経済・金融制裁を行い、その国の経済に打撃を与えることも、戦争につながりかねない敵対行為である。

以上見てきたように、強国が他国に対して戦争を仕掛けようとするとき、その手段は無限にある。対象国が法的、外交的手段、あるいは調停によってのみ戦争を防ぐことは、実際には非常に困難だ。国際連盟も国際連合も、覇権を狙う強国が、さまざまな手段で弱小国を挑発し、戦争を誘発することを違法としたわけではない。

以上のことは、侵略戦争という忌まわしい行いを、完全に時代遅れのものとすることが、いかに複雑で困難なものであるかを示している。とはいえ、核兵器の破壊力を持つようになった侵略戦争は、人類がこの地球上で生き残るためには、防がなければならない。

最後に付け加えておくことがある。あまり嬉しくない事実だが、最近の研究では、民主主義国の方が独裁政権よりも戦争を始める可能性が高いという結論が出ている。


結論

現在、戦争を防止し、あるいは終わらせるための国際的な政治的、法的枠組みは崩壊している。
国連は余計者となり、国連憲章に規定された軍事紛争の裁定者としての権威は覆された。
自分勝手なむき出しの「力の政治」が復権し、国際的調停に取って代ってしまったのである。

100年前の栄光が復活するように軍事同盟が再構築されつつある。「力の均衡」への信頼が、世界的な軍事衝突に対する唯一の防波堤となった。

侵略戦争と代理戦争は、野蛮な人類の制度として、きっぱりと排除されるべきである。より文明化された世界は、原始的な軍事同盟の罠から自らを解放するだろう。そして戦争が絶えない真の理由を根絶するだろう。それは歴史的に証明されている。財政赤字と公的債務、持続的なインフレだ。

……………………………………………………
Dr. Rodrigue Tremblay :

International economist.
He holds a Ph.D. in international finance from Stanford University.
He is a Research Associate of the Centre for Research on Globalization (CRG). 

teleSUR
27 January 2023

ロシア、NATOの対ロシア対決姿勢に警告

Russia Warns of NATO Confrontation With Russia



Russian Foreign Ministry spokeswoman Maria Zakharova

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国がロシアとの対立を激化させていると述べ、ウクライナへの武器供給について警告を発した。

ザハロワは、「NATO諸国の人々は、NATOがわが国と全面的に対決していること、そしてこの対決がエスカレートしていることを知るべきだ」と述べた。

彼女は、ドイツと米国が最近戦車の派遣を決定したことなどについて、NATOの関与を指摘した。

「ウクライナに到着した西側兵器はすべて、当然、ロシア軍の標的となる。戦車が供給されたとしても、もちろんそれはキエフ政権にとって状況の改善にはつながらないだろう。しかし西側諸国は、我が国と国民に対して新たな対立を引き起こしたことになる。それを忘れてはいけない」

ザハロワの発言は、今週開催された欧州評議会(PACE)議会で、ドイツのベルボック外相が「欧州諸国はロシアに対して戦争を仕掛けている」と発言したことを受けてのものである。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、この発言に対し、「NATOは紛争の当事者ではなく、今後も当事者にはならず、軍隊や航空機を派遣することもないだろう」と述べた。
ザハロワはストルテンベルクの発言を "犯罪的な偽善 "と非難した。

ベルリンは今週水曜日、ウクライナに14台のレオパルド戦車を送ることを確認し、同時に他国からのこれらの戦車の再供与を許可した。
ドイツは、「ウクライナを支援しても、ドイツが紛争の当事者になることはない」としている。

米国は今後数カ月以内に合計31台のM1エイブラムス戦闘戦車を供給すると発表している。


countercurrents.org
30/01/2023

今年の「終末時計」はなぜ問題なのか?

Why the Doomsday Clock Statement This Year Should be Questioned Widely


 by Bharat Dogra


今日、私たちが直面している最も大きな問題は、この世界がすでに深刻な生存の危機の真っ只中にあるということである。

原子科学者協会(Bulletin of Atomic Scientists)は、このことに繰り返し注意を促してきた。その最も強力なシンボルが「終末時計」である。この時計は、人類が世界を破滅させるような出来事にどれだけ近づいているかを示す象徴的な時計である。
筆者もこの問題について幅広く検討してきた。そして次の10年を「地球を救う10年」とする世界宣言を目指している。筆者の考えも Bulletin of Atomic Scientists が提起する懸念に非常に近いものがある。
そのような立場から、著書や論文の中で、「終末時計」のコンセプトの創造的活用について繰り返し言及し、賛同と評価を示してきた。

残念ながら、この賛同と評価は、今年の「終末の時計」発言にはあてはまらない。その理由は主に2つある。

希薄な危機意識

まず最初に、今回の声明では、終末への象徴的な時計が100秒から90秒にさらに近づいた。しかしこの10%減は、2022年に起きた非常に深刻な悪化、中でもウクライナ戦争によるものを全くとらえていない。
Doomsday-Clock-1

何人かの有識者がすでに指摘しているように、いま世界はおそらくかつてないほど深刻な事態に近づいている。それは以下のような要素からなる。

(1) ロシアとアメリカ・NATOとの間の直接対決。
(2) 核戦争の可能性
(3)第三次世界大戦、

この3つの状況が重なり合っているのが現在の状況である。

この代理戦争はすでに長引きすぎている。その戦争にはまだ終わりが見えない。そしてさらなに、とても不幸で恐ろしいエスカレートの兆ししかない。それらがこの戦争に悲惨な彩りを添えている。

ウクライナ戦争の他にも、米国と中国の関係など、他の危険な状況も進行している。環境問題もかなり悲観的である。
飢餓の極限状態(ステージ4、5)にある人々の数が、非常に速いペースで増加している。
アフリカの角などで飢饉による死者が出ている。異常気象や災害の発生は、枚挙に暇ないほどである。

 以上のことを考えると、現状を正しく把握するためには、「破滅の100秒」ではなく「破滅の50〜60秒」あたりに時計を移動させる方がはるかに適切ではないだろうか。


ウクライナ戦争を見る目の偏り

第二に、ウクライナ紛争の分析の傾向である。それはアメリカ/西側/NATOに有利で、ロシアに不利なように行われていて、非常に偏っているように見える。

この紛争は、少なくとも10年前から、アメリカ、その親密な同盟国、NATOによって、ロシアを搾取する代理戦争として計画されていた。そのことは、基本的な事実を無視しない限り、誰にとっても澄みわたった空のように明らかである。

その第一歩は、ウクライナの民主的に選ばれた政府を排除することでった。
ついで、新政権が反ロシア的な方向を示すようにさまざまな影響を与えることである。
それから、極右や人種差別主義者のグループを持ち上げ、彼らやウクライナ軍がウクライナ国内のロシア系住民への攻撃を強めるよう煽った。
7年ほどの間に14,000人近くが殺害された。
彼らは、他の方法でもロシアの攻撃を誘発した。

「終末時計」の声明は、これらすべての厳しい現状を無視しているように見える。声明は、世界の平和状況を急速に悪化させている真の原因から世界の関心を遠ざけている。

最大の脅威はアメリカにある

対弾道ミサイル条約や中距離核戦力条約のやり直しであれ、新戦略兵器協議の延長であれ、主な責任は米国にあるのだ。そのことをはっきりとさせる必要がある。

生存の危機を悪化させた近年の最大の脅威は、他のどの国よりもアメリカからもたらされたものである。それは言うまでもないことだ。

生存の危機を監視するという仕事は、危機に瀕した私たちの世界が直面する最も重要な問題であり課題である。それには非常に大きな責任が伴う。

勇気と誠実さを持ち、完全に真実で公平であり、あらゆる身内主義や党派主義から自由である者だけが、この大きな責任に応じることができる。

残念ながら、Bulletin of Atomic Scientistsは、その最新のDoomsday Clock声明において、この高い基準を満たすことができなかった。

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bharat-dogra

バラット・ドグラ
は、フリーランスのジャーナリスト、作家、研究者。50年にわたり、主に平和、環境保護、正義の問題について執筆し、その著作は教育プログラムや社会運動で広く利用されている。

ショルツの歯噛みする音が聞こえてきそうです。
非戦の国是を破り、レオパードを送った悔しさよりも、四面楚歌の中で反ロシアを強制させられ、第三次世界大戦への一歩を歩まされた苦渋への怒りです。
米国もエイブラハム戦車を派遣するということでお付き合いはしたが、こちらは何年先かも分からぬ約束手形。陰に回ればせせら笑っているはずです。
NATOは安保条約のヨーロッパ版ですが、いざとなれば国是より憲法より米国の意向が優先するのは同じこと、まさに巻き込まれ型の「危険保障条約」です。
もっと怖いのは、戦闘継続の口実が嘘っぱちだったこと。「安全ですよ。お買い得ですよ。ウクライナの勝利間違いなし」と、煽られて買ったウクライナが飛んだ食わせ物。
いまや「買い足しで下支えしなければ、潰れますよ。潰れたらあなたも破産ですよ」とさらに買わされる。
こうして世界中が戦争に巻き込まれてこうとしているのに、一部の進歩派は、先の見通しもなく「ロシア憎し」の大合唱に加わり、戦争を後押しする始末。終末時計が聞いて呆れる。

かたみに人の血を流し
獣の道で死ねよとは
死ぬるを人のほまれとは
旅順の城はほろぶとも
ほろびずとても何事ぞ

「君死にたもうことなかれ: 旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて」より(これで三度目の引用)


ドイツ左翼党の議員は、インタビューで米国の進歩派の人々の著しいブレに危機感を表明しています。
それを示すものが下記の声明文です。

Opinion:
The Doomsday Clock is ticking
– clock’s hands move closest ever to midnight and catastrophe

https://edition.cnn.com/2023/01/24/opinions/doomsday-clock-90-seconds-to-midnight-brown/index.html
Updated 11:02 AM EST, Tue January 24, 2023

これは終末時計の運営を担当するAtomic Sc​​ientists' Science and Security Board の3人の共同議長の連名よりなる個人意見です。
個人意見を発表しなければならないほど、内部で意見が割れていることの表明ですが、それは(ドイツ左翼党から見て)ダメな方の代表的意見だろうと思います。
ジェリー・ブラウンはBoard の執行委員長を務めており、組織のトップだろうと思われます。彼は 4 期にわたってカリフォルニア州知事を務めた政界の大物でもあります。
ということで、本来は統一声明にしたかったのが強力な反対者がいたために、有志声明になったという経過なのでしょう。
おそらく有志声明の内、下線が引かれた部分が、異論があった部分と思われます。そこだけ選んで紹介します。
①今日、主にロシアの無謀なウクライナ侵略拡大の危険が高まっている。これが時計の針を進めた主な理由である。
②ウクライナでの戦争が 2 年目に突入する中、多くの罪のない民間人が殺されました。紛争の明確な解決策は見えていません。
③ロシアは、2014 年に東ウクライナに侵攻し、クリミアを併合した。さらにプーチン大統領が核兵器の使用を脅かしている。
④これらの脅威は、残忍で予測不可能な戦争の文脈上にあり、偶然、またはプーチンの意図によって現実化する可能性があります。
⑤ロシアはチェルノブイリとザポリージャの原子炉サイトにまで戦争を持ちかけています。国際原子力機関による発電所の安全を確保するための努力は、これまでのところ拒絶されています。
これらの事実問題については、たっぷり異論がありますが、ここでは当面争いません。

もっとも肝心な点は、「紛争の明確な解決策は見えていません」というところにあります。
血を血で洗うような戦いを1年も続けて、それで解決策が見えないのなら、「そんな戦いはやめろよ!」となぜ言えないのか。両軍がさらに軍備を強化し、これからさらに戦闘が大規模化し、犠牲者が増えるというときに、「紛争の明確な解決策は見えていません」という言葉が、どうしてこんなに簡単に出てくるのでしょうか。「見えない」のなら目をつぶって想像力を働かせるべきです。

そもそも、なぜ解決策がないか? それは米国も西欧も明確な解決策を示していないからです。「世界は最も危険な時期に直面して」いるはずなのにどうして解決策が示せないのでしょう?
交渉すべき点ははっきりしています。ロシア語系ウクライナ人およびウクライナ在住ロシア人の居住権と基本的人権です。
もともとウクライナは多民族の混住地で、それが国家ができたときからナショナリティー(国籍)としてはウクライナ人になったのです。ウクライナは多民族共生国家であり、それが嫌だと言うなら分離するしかありません。それだけの話しです。

「紛争の明確な解決策は見えていません」というとき、実は彼にとっては「解決策」は明確なのです。1年もすれば経済制裁でロシアを弱らせ、武力でロシアを追い出し、紛争を解決できると考えていたからです。メディアは1週間前までそうやって宣伝してきました。それが「大本営発表」であったことがはからずも明らかになったのです。今回のロシアの攻勢により、戦闘の長期化は必至になりました。

とにかく停戦、とにかく交渉開始、とにかくすべての住民の安全です。それができれば、核の危機はおのずから遠ざかるでしょう。

democracy now
JANUARY 25, 2023

ドイツと米国がウクライナへの戦車提供で合意
ベルリンは代理戦争に追い込まれる

As Germany & U.S. Agree on Tanks for Ukraine,
German MP Accuses U.S. of Pushing Berlin into Proxy War

https://www.deepl.com/ja/translator#en/ja/As%20Germany%20%26%20U.S.%20Agree%20on%20Tanks%20for%20Ukraine%2C%20German%20MP%20Accuses%20U.S.%20of%20Pushing%20Berlin%20into%20Proxy%20War


ゲスト
SEVIM DAĞDELEN(ドイツ左翼党幹部、ドイツ国会議員、クルド系ドイツ人)

聞き手
AMY GOODMAN+JUAN GONZÁLEZ
面倒なので一括して“聞き手”とする。

リード

NATO諸国の数週間に及ぶ圧力を受け、ドイツはウクライナにレオパード2戦車14台を送り、NATO諸国がドイツ製戦車を送ることを認めると発表した。

ドイツ左翼党の国会議員セビム・ダーデレン(Dağdelen)に話を聞いた。彼女によれば、ドイツ国民の大多数が紛争終結のための外交努力を望んでいるという。

バイデン政権はドイツをますますこの代理戦争に追い込もうとしています。米国の“進歩的”と言われる人々の多くが、その路線を支持しています。そのことに、私は大いに懸念を抱いています」とダーデレン議員は語った。
daguderenn


聞き手(この間の経過説明)

* ドイツは、ウクライナにドイツ製戦車14台を送ることを決定したと発表した。さらに同盟国がキエフを支援するために、レオパード戦車を送ることを認めることも明らかにした。
この発表は、米国がウクライナにエイブラムス戦車30台を送ると報じられた後に行われた。
ショルツ首相は、声明で次のように述べた。 「この決定は、ウクライナを可能な限り支援するという路線に沿ったものだ。我々は国際的に緊密に連携して行動する」
ドイツは戦車の訓練と弾薬提供も行う予定である。

* ショルツはここ数週間、ポーランド、アメリカ、その他のヨーロッパ諸国から、戦車を承認するよう強い圧力を受けていた。いっぽうドイツ国内では、ウクライナ戦争の激化とロシアによる報復につながるという懸念も強まっていた。
ドイツ左翼党は警告を発した。「この動きはヨーロッパの平和の方向を向いていない。それどころか第三次世界大戦に近づく可能性がある

この決定の支持者には、NATO加盟国に対してウクライナへの重火器納入の迅速化を繰り返し求めてきたイェンス・ストルテンベルグNATO事務総長も含まれている。

...ドイツのセビム・ダーデレン国会議員にお越しいただきました。ダーデレンさんは左翼党の議員で、2005年に国会議員に選出され、外交委員会の委員を務めています。彼女はまたNATO議会のメンバーでもあります。

デモクラシー・ナウ!へようこそ。おいでいただきありがとうございます。

アメリカの人々にとって、この論争が何なのか、特に理解できない人もいるかもしれません。今日の決定、発表が何を意味するのかお話いただけますか。

ウクライナにレオパルド戦車を送るということ、それからポーランドやスカンジナビア諸国など、これらの戦車を持っている他の国もウクライナに送ることができるようになりました。それはドイツから調達するのと同じように可能なのですか?


ダーデレン議員: 

本日はお招きいただきありがとうございます。

* ドイツからウクライナに戦車を送り、ポーランドなどがドイツから購入したレオパルド戦車をウクライナに送るという決定は、歴史的に間違った決定です。この決定は、バイデン政権の重圧によってもたらされたと言わざるを得ません。

* 数ヶ月前、ショルツ首相はドイツ議会の外交委員会で、戦車の売却は「レッドライン」だと言いました。ドイツからウクライナに戦車を送ることは、軍事干渉のエスカレーションです。そしてこれ以上エスカレートしてはならないレッドラインを越えることになります。
ショルツ

* しかしバイデン政権からの圧力はあまりにも強力でした。中でも最強の圧力は、連立政権のパートナーである緑の党と自由党からのものでした。連立政権の中で、この2党は実はネオコンである人たちの圧力でした。
彼らは、もしショルツ首相がレオパルド戦車をウクライナに送らないのなら、連立を解消すると圧力をかけました。

* 私たちは今、非常に悪い状況に置かれています。なぜなら、それは間違った決定、歴史的に間違った決定だと思うからです。 なぜなら、それはドイツの大多数の意見に反しているからです。
ここ数日の世論調査によると、ドイツ国民の大多数はウクライナに戦車を送ることに反対しています。
ウクライナの交渉による平和のために、もっと外交努力をという人が大多数です。

* もうひとつは、1月31日がスターリングラードの戦いの記念日、80周年に当たるということです。
ロシアのすべての家族は、このスターリングラードの戦いで愛する人を失いました。
アメリカの代理戦争でロシアにドイツの戦車を送り込めば、この戦争でロシアの人々と社会がさらに動員されることは、予言者でなくてもわかるでしょう。
つまり、戦車を送るということは、この戦争に対してロシアの人々が望んでいるものとは逆の影響を与えることになります。だから、戦車を送るのは “歴史的に考えても” 間違っているのです。


聞き手

お聞きしたいのですが 、ここ米国では、マスメディアは政府以上に戦争好きです。バイデン政権に、ウクライナへの援助と殺傷能力の高い援助の提供を執拗に迫っています。私は疑問に思っています。
ドイツでは、メディアが政府指導者に与える影響はどのような状況なのでしょうか?
ウクライナに対するさらなる軍備の必要性をどのように描いているのか、あるいは描き出しているのでしょうか。


SEVIM DAĞDELEN: 

ドイツでは、メディア、とくに主流メディアによって、本当に極端に好戦主義(warmongering)な雰囲気が漂っているんです。これは興味深いことです。

私は昨年の3月か4月に、アメリカのワシントンD.C.にいました。国務省、国防総省、国家安全保障会議の代表者たちが、口を揃えて言いました。

「ドイツのメディアは、ドイツの新政権を“転換点” に向かわせるために、ものすごく大きな仕事をした。メディアの主張があったから、1000億ユーロを軍備強化に注ぎ込み、ウクライナに武器や兵器を送ることができた」

(訳注 転換点:ウクライナ侵攻が始まった3日後、ショルツ新首相は「時代の転換点」(Zeitenwende)を宣言した。それは戦後ドイツの平和主義への決別を示唆するものだった。

それに、アメリカ政権の幹部が「ドイツの報道はうまくいっている」と言うからには、何か問題があるに違いないと思うのです。

問題は、ドイツの主要な報道機関が、「大西洋評議会」(Atlantic Council)など米・西欧横断型シンクタンクなどに深く関わっていることです。つまり、何らかのアメリカの人的交流と便宜供与があるのです。アメリカ国民の知らないことでしょう。

アメリカのネオコンと呼ばれるエリートが、欧州でも肩で風を切っています。
ヨーロッパはいまや、70年代のアメリカにとってのラテンアメリカのようなものです。自分たちの好き勝手なことができる大陸なのです。これは本当に問題です。

* そして明らかに、アメリカの石油採掘業やアメリカの軍産複合体にとって、ヨーロッパで戦争をすることは良いビジネスなのです。

これは具体的にウクライナに戦車を送るという例についても言えます。ドイツから戦車を送ること、レオパルド2を送ることも、アメリカの軍産複合体の利益になっています。
なぜなら、戦車システムにおいて、ヨーロッパで最も近代的な兵器システムであるレオパルド2が損傷した場合、アメリカのメーカーは自分たちの戦車を供給することができるからです。

もうひとつは、ショルツが失敗したことです。エイミー・グッドマンは、ショルツが米国にたいし戦車の対ウクライナ援助を要求したが、了解を取れなかったと発表しました。ワシントンポスト紙によると、米国の戦車を製作して送り出すためには数年かかるからです。(ところが米国がエイブラムス戦車の提供を決めたのは御承知の通り)

そうやって、彼らは我々ドイツ人をこの火の中に押し込もうとしています。アメリカがドイツに軍産品を供給し、ドイツとロシアが永久に全く関係を持たないという状況を作ろうとしているのです。それは過去から一貫した話です。

ブレジンスキーの本や、アメリカの多くのシンクタンクの本を見ると、それは常にアメリカの目標でした。アメリカのエリートは常にドイツとロシアの関係を破壊することを目的としていたのです。

* そして昨晩、これが私の懸念なのですが、ドイツの緑の党所属の外務大臣アナレーナ・バーボックが、「我々はロシアと戦争をしている」と公言し始めたのです。つまり、私たちはすでにロシアと戦争をしているというのです。このことは私に大きな懸念を抱かせます。

そして、もう一つ心配なことがあります。それはアメリカの進歩的と呼ばれる人々の多くが、ドイツをますます戦争に追い込もうとするバイデンの路線を支持していることです。その人たちは、ドイツをますますこの代理戦争に追い込み、第三次世界大戦にまで発展させようとしているのです。


聞き手

この代理戦争では、フラッキング(天然ガスと石油の採掘)産業についても言及されましたね。ほとんどのアメリカ人は、この戦争の結果、米国の天然ガス会社が莫大な利益を得ていることに気づいていません。

この戦争の結果、アメリカの天然ガス会社が莫大な利益を得ていること、そしてそれがヨーロッパのエネルギー需要に影響を及ぼしていることを、ほとんどのアメリカ人は知りません。 ドイツで起きているガス価格と暖房の必要性について話していただけますか?


SEVIM DAĞDELEN: 

ドイツのいくつかの経済研究所の新しい発表によると、実質的な賃金の損失は4.7%です。これは1945年以降のドイツ連邦共和国の歴史の中で、最大の実質賃金の損失となります。人々は家賃を払う余裕もなく、ガス料金やエネルギー料金、ガソリンを支払う余裕もありません。食料を買う余裕さえないのです。それが問題なのです。

昨年、ドイツでは史上初めて、200万人が食料を調達するために公的な食料配給機関に行かなければなりませんでした。つまり、国民の大多数が本当に収入を減らしているのです。

一方、企業側には莫大な利益があります。エネルギー産業、石油会社、その他すべての大企業が1000億以上の利益を上げています。アメリカの石油採掘産業は、この危機と制裁によって大きな利益を得ています。

すべてはロシアに対する制裁、このエネルギー制裁が原因です。ロシアに害を与えているわけではありません。ロシアのガスプロム社は、2022年上半期に400億ドル以上の利益をあげました。利益だけです。年末も同様です。

つまり、彼らはこの戦争で利益を得ているのです。制裁のせいで苦しんでいるのはヨーロッパの人々だけです。制裁は自国の人々に対する経済戦争に変わりつつあります。

そして、米国の採掘産業は、米国から汚れたガスをタンクで送ってきますが、これは気候変動にも反しています。タンク1つで、2億ユーロ、3億ユーロの利益を得ることができます。アメリカからヨーロッパに向かう途中、価格が上昇することがあるからです。

ドイツで必要なガスは、およそ年間1,100タンク以上必要です。そして、ロシアからの安価で汚れの少ないガスと比較して、これを米国に支払う余裕があるとは思えません。

聞き手

この放送が始まる直前、ドイツの新国防大臣ボリス・ピストリウスの声明がありました。これについてについてお聞きしたいのですが、まず声明を紹介しましょう。

BORIS PISTORIUS: [translated] 
「この決定は歴史的なものだと思います。なぜなら、激変するウクライナの状況の中で、すべての関係者が再び協調してなされたものだからである。だからこそ、この決断は尊敬に値する。
もちろん、この戦争がこのまま続くことを懸念している人々がいることも承知している。しかし、ひとつだけはっきりしていることがある。それは、私たちはこの戦争の当事者にはならないということだ。私たちはそのことを確認する」

一方には「軍産複合体に餌を与えるな」と言う人たちがいます。他方には 、「ウクライナがこの重火器を手に入れなければ、ロシアはもっと多くの土地を奪うことに成功するだろう」と言う人がいます。
この論争についてお話いただくと同時に、アメリカからドイツまで、進歩的な人々の分裂にどう対応すべきかを教えていただきたいと思います。


SEVIM DAĞDELEN: 

そう、私は本当に警告しなければなりません。ロシアに対する勝利を空想している幻想家たちは、かつてナポレオンやヒトラーがしたように、ロシアを過小評価しているのです。ロシアは世界最強の核保有国なのです。このような核保有国に対して、通常戦争で勝つことは不可能です。

この議論の危険な点は、一方では、「ロシアのプーチン大統領は狂っている、怪物だ」などと言い、彼を悪魔化しようとしていることです。彼らはプーチンは狂っていると言っています。
しかし、その一方で、「これはハッタリだ」とも言っています。「プーチンが核兵器を使うほど非合理的だとは思っていない」と。

「いい加減にしろ」、と私は言いたい。(I mean, come on!)

なぜなら、核兵器が一度使用されれば、少なくともヨーロッパでは、アメリカはともかく、ヨーロッパでは間違いなく、人類の文明が終焉を迎えるからです。だから、私はこの議論の行方を本当に心配しているんです。

* もう一つは、クリスティン・ランブレヒト前国防相のことです。彼女はドイツのネオコン、緑の党、リベラル派、マスメディアから非常に大きな圧力を受けていました。

戦争屋たちは彼女を辞任させるために多くの圧力をかけました。なぜなら、彼らはもっと決然とした「北大西洋の戦争挑発者」(transatlantic warmongerer)と交代させたかったからです。彼女は戦争挑発者としては物足りなかったのです。

そして、新国防相ピストリウスは、意外にも、ショルツ首相が決断したのですが、彼もまた失望されています。戦車を送るよりも交渉による平和のための外交を、というドイツ国民の大多数の意志に従って行動していないからです。だから、彼はいま結局、「同盟国と協力して戦車を送る」と言っているのです。

* 率直に申し上げて、アメリカには真の意味での同盟国はありません。アメリカは自国の利益にしか興味がなく、そのための道具にしか興味がないのです。そこがポイントです。ポーランドなど東欧諸国は、ドイツとショルツ首相にレオパルド戦車の提供を迫ったのですが、彼らもまた、米国が望むことをそのまま行っているにすぎません。

これが問題なのです。アメリカはドイツを前線に押し出し、「こうしてください」と依頼します。そして同時にドイツ政府に圧力をかけ、好戦的な雰囲気を作り出しています。

 ドイツから始まった2つの世界大戦は、それぞれロシアやソビエト連邦に対する攻撃から始まりました。そして今、私たちは再びロシア、モスクワに対して戦車を送り込もうとしています。

新外務大臣は 「ピストリウスは間違っている」と言いました。実際に彼女が言った言葉はこうです。「いまや我々はロシアと戦争状態にある」  つまり彼女は文字通りの事実を言った似すぎないんです。

つまり、これが最後の決断ではないことを、私は非常に懸念しているのです。第三次世界大戦へとつながっていく一連の決断のスタートかも知れないのです。なぜなら、レオパルド2戦車を派遣しても、ゲームチェンジャーにはならないからです。長期的にも中期的にも、戦車はウクライナの現場を何も変えることはないでしょう。

ウクライナの民族主義政府が、ドイツやNATO諸国に対して、大規模な戦闘機システム、ヘリコプター、トルネード、ユーロファイターをすでに要求していることです。これはウクライナ政府からすれば、当然のことです。自分たちが生き残るためにNATOをこの戦争にどんどん巻き込もうというのは理解できることです。

しかし、戦車を送ることは軍事的なゲームチェンジャーではありませんが、ドイツのようなNATO諸国をロシアとの戦いにどんどん参加させるきっかけとしては、政治的なゲームチェンジャーになると思います。

しかし、この無分別な殺戮を終わらせるためには、もっと外交的な取り組みが必要です。ウクライナにもっと武器を送りたいという人は、ウクライナでの殺戮をもっと増やすことに賛成しているのだということを理解すべきです。


聞き手

お話しいただき、ありがとうございました。

ダグデレンさんはドイツの野党「左翼党」の幹部で、クルド人の国会議員です。NATO議会のメンバーでもあります。












Global Research
January 19, 2023


ポーランド政府指導部は警告する
「ウクライナは敗けるかも知れない
そのとき、第三次世界大戦が始まるかも知れない」

The Polish Leadership’s Warnings About Ukraine’s Potential Defeat Should be Taken Seriously. 
“Might become Prelude to World War III”

By Andrew Korybko
(
訳者注: 著者の肩書きはこう記されている。「アメリカのモスクワ在住の政治アナリストGlobal Researchに頻繁に寄稿している」。内容はおそらくモスクワで流されている情報をそのまま送っているのだろう。文章もとくに後半は乱れていtて、ロシア語からの機械訳ではないかと思われる。ご承知おきを…)

lead

*メディアの公式見解の180度転換

メディアの世界ではウクライナの勝利を早々と喧伝する「公式シナリオ」が流布されている。
これを、必然的と思われる敗北への警告へと覆す役割は、ポーランドの指導者が最もふさわしいだろう。
 今週までのウクライナ紛争に関する「公式見解」は、キエフが「必然的に勝利する」というものであった。
 しかし、ポーランドの首相と大統領が共に「ウクライナはまもなく敗北に直面するだろう」と警告した。このため予測は突然ひっくり返された。
モラヴィエツキ首相は、ベルリンを訪問した際、「ウクライナの敗北は第三次世界大戦の前奏曲となるかもしれない」と発言した。
一方、ドゥダ大統領はダボス会議で、「ウクライナは生き残れるかどうか」と率直に疑問を投げかけた。

本文

* あのポーランド政府が「ウクライナ優先」を否定

この二人が「ロシアの宣伝マン」だと推測するのは無茶だろう。ましてや両方揃ってなんてありえない。彼らは世界でも折り紙付きのロシア嫌いである。
 彼らの国は、米国を除けば他のどのNATO加盟国よりも多く、ウクライナの支援活動を行ってきた。
昨年5月のキエフ訪問で事実上のポーランド・ウクライナ連合を発表したのはドゥダ大統領自身だった。この事を見ても、ワルシャワが隣国の勝利を本当に望んでいることは明らかだ。

つまりポーランドの指導者ほど、ウクライナの勝利は必然だという「公式シナリオ」をひっくり返すのにふさわしい人物はいないということだ。
彼らのせいで、いままで皆がウクライナの勝利は必然だと勘違いしていたが、敗北こそが必然だと考えるようになったのだ。
もちろん、週明けのニュースで長々と説明されたように、アメリカの描くシナリオは別だ。
事実はこうだ。主要メディアは懸命に打ち消そうとしているが、ロシアによる東部ウクライナのソレダル市(Soledar)の解放は重大な軍事的変化だった。


* 「ソレダルの戦闘」が優劣を決定づけた

結局のところ、紛争に関する主要メディアの「公式シナリオ」は不可逆的に書き換えられることになった。その理由となったのがソレダルの戦闘だった。
CNNもこの流れに乗り、情勢に追いつこうとした。CNNの情報管理のトップの一人スティーブン・コリンソン氏は、バイデン政権のあり方が問われる「重要な折返し点」に達したと語った。
 ドゥダは、「ウクライナは大丈夫なのか?」と発言し、メディアの曖昧な表現に終止符を打った。
彼は「ウクライナが生き残れるかどうか?」を明確に疑問視した。そのことで、あれこれの言い逃れを終わらせた。

soledar

* このままではウクライナの敗北は決定的

この三者、すなわちポーランド大統領、首相、CNNは、政治的な理由で軍事的・戦略的な現状を誇張したことは間違いない。
しかし、だとしても、彼らの警告は真剣に受け止めなければならない。なぜならキエフが敗北の瀬戸際にあることはまちがいのない事実なのだから。
このシナリオを回避する唯一の方法は、最新の戦車のような前例のない援助ができるだけ早く輸送されるか、またはキエフが新たな攻撃を開始するか、どちらかである。
前者は政治的に危険であり、後者は軍事的に危険である。

 いずれにせよ、ドンバスの戦いはキエフの敗北で終わることはほぼ間違いない。
ロシアが不可解な「親善ジェスチャー」によって攻勢を中断しなければ、
そうなったとき、最も直接的に影響を受けるのはポーランドだろう。ポーランドは先に述べたようにウクライナと事実上の連邦関係にある。
ダボス会議でドゥダ大統領は認めた。すでにポーランドは、自国のT-72戦車をなんと260台も、隣国ウクライナに与えているのである。

* ウクライナが敗ければポーランド政府も崩壊する

キエフがドンバスの戦いに負ければ、ポーランドの指導者は大恥をかくことになる。なぜならそれはワルシャワの敗北に等しいからだ。
ポーランドはすでにあり余るほど軍事的・政治的な投資をしている。ポーランドは今週まで、ウクライナの「必勝」を信じ予言していた。
ポーランドがいま、軍事バランスを維持し「面目を保つ」ためには、自軍を西ウクライナに介入させる以外にないかも知れない。それはかなりの軍事的・政治的リスクを伴う。ひょっとすると与党は今秋の再選挙で落選するかもしれない。

ポーランド与党の「法と正義」党は、ポーランド語の頭文字でPiSと表記される。その支持層は、「保守派」と、いわゆる「穏健派」からなる。
「保守派」の実体は民族極右であり、「穏健派」は、愛国的な言辞に引き寄せられ、ウクライナの大量移民を支援しようと結集した人々である。
ポーランド政府は昨年末まで、ウクライナの勝利のために最大限の努力をすると豪語していたが、最近は全体として歯切れが悪くなっている。
ウクライナ情勢が悪化すれば、特に「穏健派」の人々の目には、政府に対する何の信頼性も残らないだろう。
そして、この地域をみずからの「勢力圏」にしようとしたポーランド政府の構想は打ち砕かれることになる。

* EU諸国はウクライナの敗北を予想し始めている

* 米国が主導する西側の「黄金の十億」(EU諸国の人口)は、その一部であるキエフの敗北を予想している。
彼らは、その責任をなすりつけ非難するスケープゴートを探しもとめるだろう。その際、ピウス(ポーランド政権与党)が格好なターゲットとなるだろう。ピウスは、この事実上の新冷戦軍事同盟を支えるリベラル・グローバリズムのイデオロギーに、他の多くのメンバーほど忠実でないためである。
したがって、ドイツは、最近絆を強めたアメリカの支配者との協力の下に、ポーランドに対するハイブリッド戦争を再開し、秋の選挙でピウスを政権から追い出そうとすることが予想される。

* ポーランドの植民地化を狙うドイツ

米・独がポーランドの政権交代を、名目上のパートナーに対して、表面的には「民主的」に行うならば、ショルツ首相は覇権主義の野心を具体的に前進させることになるだろう。
ワルシャワに真の意味での親ドイツの、ネオリベラル政権が誕生すれば、それはベルリンにとって史上最大の代理国家となる。そしてEUの事実上の指導者はヨーロッパで真の覇権を獲得したことになるのだ。
 モラヴィエツキとドゥダはともに、このことを強く意識している。すなわち、いまこのロシアの特殊作戦が正念場を迎えているとき、欧米大国にウクライナへの支援拡大を説得できなければ、彼らの政権は崩壊しかねないことを。
このような利己的な動機が、紛争に関する「公式シナリオ」をバラ色から暗灰色に、より事実に近いものに書き換えた理由である。
しかし、西側諸国がキエフの存続を助け、ポーランド政府の2人を助けるために行動するかどうかはまだ不明である。

(訳者より: この記事を翻訳中にニュースが流れ始めた。ドイツの首相がレオパルド戦車のウクライナ供与を議会で発表した。同時にアメリカも大量の戦車投入を発表した。メディアの戦況判断が180度変わった。
この記事の予想は覆された。NATOはウクライナの全土戦場化を決意した。ヨーロッパに狂気が漂い始めた! ヨーロッパはブラックホールに吸い込まれつつあり、核戦争の危機は間近に迫りつつある)


Global Research
January 23, 2023

Situation for Kiev Is “Very, Very Difficult”. 
US Joint Chiefs of Staff, Mark Milley

米統参議長マーク・ミレーが語る
「キーウの状況は最悪だ」

By Lucas Leiroz de Almeida
(Stuff researcher in Social Sciences at the Rural Federal University of Rio de Janeiro; geopolitical consultant)

リード

欧米のメディアは「ウクライナが勝利しつつある」と主張している。しかし経験豊富な軍人や評論家は、明白な事実を元に、ロシアがそう簡単に敗北するわけがないと指摘し続けている。
米国のある将軍は最近のインタビューでこうのべた。
「ウクライナ側にとって状況は非常に複雑だ。ウクライナが、すでにモスクワに帰属している領土を奪還し、ロシア軍を「追放する」という約束を果たすには、多くの困難が伴うだろう」
 の続編みたいな記事です(元記事の掲載は11月14日)。要するに11月の時点ですでに戦況は悪化していたが、現在ではさらに絶望的になっているということで、特にウクライナ軍の内部崩壊が深刻なようです。

本文

*軍事的解決はもう無理だ

米国統合参謀本部のマーク・ミリー議長は、「現在の対ロシア紛争において、ウクライナは軍事的目的を達成するために多くの問題に直面している」と述べた。
彼は次のように指摘する。
「西側の指導者たち、そしてゼレンスキー大統領でさえも、その好戦的な演説にもかかわらず 、こう考えている。この紛争は武力ではなく、外交的な交渉によって解決されるだろうと」
ミリー議長は軍事作戦によってウクライナが勝利する可能性には低いと考えているようだ。

* 「独立」した東部諸州はもはや取り返せない

ミリー議長はまた、戦闘状態を終わらせる見通しについてもコメントした。
ウクライナや西側の政治家の中には、できるだけ早くロシア軍を追放する計画を主張する人もいるが、彼はこの考えには否定的だ。
彼はこのプロセスが2023年までに完了する可能性はないと考えている。
ロシア連邦に新たに統合された地域では、すでにロシア軍が堅固な地位を維持している。このことから、よほどの急速かつ強力な軍事作戦を立てない限り、東部地域の支配をキエフにとりもどすのは困難だ。

*侵入したロシア軍を追い出すことはできない

ミリー議長はインタビューにこう答えている。
「バイデン大統領、ゼレンスキー大統領、そしてヨーロッパの指導者のほとんどが、この戦争は交渉によって終わらせることになるだろう…
軍事的な観点からは、この戦争はとんでもなく困難な戦いである(this is a very, very difficult fight)…
今も私は考えている。ロシアが占領しているウクライナ領土から、ロシア軍を軍事的に追い出すことは、とてもとても困難であると…
もちろん、だからといって、実現できないわけでも、諦めたわけでもない。でもとても難しいことだ…

*1千億ドル以上の援助もロシア優位を崩せなかった

ミリー議長の見方は現実的である。
キーウ政府には本質的な弱点がある。欧米の援助があるとはいえ、ウクライナの弱点はそう簡単には克服できない。そのことを彼は明言している。
米国はすでにキエフに1100億ドル以上の軍事支援を送った。重火器、戦闘車両、対空システム、100万発以上の砲弾を含むパッケージを提供した。
ヨーロッパとNATOの同盟国も、ウクライナのネオナチ政権を全力で援助している。
しかしそれにも関わらず、ロシアの軍事的優位は明らかだ。モスクワは最近ソレダーとクレシェフカの奪取など、ますます重要な勝利を飾っている。


*ロシアの補給線へのミサイル攻撃が奏功している

欧米の強力な支援にもかかわらずロシアが成功しているのには、多くの要因がある。
モスクワの作戦の要諦は、ロシアの兵士や民間人を不必要に殺すような消耗戦を避けることである。
そのために、ウクライナ軍の補給線を形成する重要地域への重点的攻撃を行っている。これがロシア軍の戦略的な方向付けである。
ロシアの重火器・ミサイルは大規模な軍事地帯やインフラ施設に集中している。
民間軍事会社「ワグネル・グループ」などの並列部隊はこの射撃部隊を保護するため、主に都市部で歩兵部隊の役割を果たしている。

*ウクライナ軍は無秩序で腐敗している

一方、キエフは紛争を戦略的に管理することが困難となっているように見える。
現場の複数の情報提供者がすでに報告しているように、ウクライナ軍は無秩序と腐敗が目立っている。NATOの支援も役立っているとは言えない。
西側諸国の兵器のほとんどはウクライナ兵にとって全く新しいものであり、兵はその正しい操作方法を知らず、しばしばオウンゴールをもたらしている。

*ウクライナ軍は無駄死にを繰り返し、消耗している

さらに悪い事情がある。ウクライナ軍指揮官はロシア軍と異なり、人命よりも領土を優先する傾向がある。
モスクワはしばしば、人命救助のために戦略的撤退を促すが。これに対しキエフ軍は戦いが事実上敗北していても塹壕に兵を留める。その結果、何千人もの兵士が不必要な戦闘で死亡している。
これらの死んだ兵士の穴埋めは、十分な訓練を受けておらず、軍事的な経験もない新しい戦闘員で代替される。
その結果、ルーキーたちは戦略的なミスを犯し、さらに多くの死者を出すことになる。


*ウクライナ軍の最新兵器はロシア系市民殺害に用いられている

さらに、2014年以降、キエフ軍が意図的に民間人を攻撃していることを指摘して置かなければなrに。その傾向は、欧米から殺傷力の高い重火器が国内に到着するにつれて、ますます悪化している。
ウクライナ軍に配備された装備は、その多くがドンバスの非武装化地域で、ロシア系市民を殺害するために、それだけのために使用されている。
欧米の軍事援助がウクライナ紛争に負の影響を与えていることが、この紛争をさらに複雑にしている。


*NATOの直接介入は核戦争をもたらすだろう

実際、ミレー統幕議長の発言は、軍事専門家の間ですでに一定の結論となっていることを追認するものだ。
キエフはロシアに勝つことができない。
なぜなら、モスクワは軍事的により強力でり、ウクライナ側に戦闘を続けるための組織的・管理的能力がないためである。
もし軍事的な逆転の可能性があるとすれば、それはNATOがより直接的に介入するシナリオの場合のみである。
しかし、この場合、戦争は確実に核兵器レベルまでエスカレートし、戦いは勝者なしに終わることになるだろう。


*ロシアの停戦条件を全面的に受け入れるほかない

近い将来の可能性としては、ロシアの勝利だけが現実的なシナリオに見える。ベストなのは、キエフがロシアの停戦条件を全面的に受け入れて、協議を再開することである。
ミレー議長がそれを示唆したが、同じように西側の政治家たちも考えている。
しかし彼らは、ウクライナがずたずたになるまでは、あらゆる形の援助を続けようとしている。紛争を通じて、ロシアの戦略的環境をできるだけ不安定にするためである。
たとえそのために、ウクライナ人の命が犠牲になっても、そんなことは気にしない。



Global Times
 Jan 18, 2023

ウクライナ紛争、さらに激化の様相
米国/NATOは調停よりも武器供給強化を選択

Russia-Ukraine conflict eyes more intensity
as US-led NATO meeting focuses on supplying weapons rather than mediation


By Yang Sheng


米国/NATOの指導者会議

米国/NATOの指導者は11、12日に直接会談を行った。これに先立ち米国とウクライナの軍司令部がポーランドで会談を行った。

これは、ロシアが「ウクライナ特別軍事作戦」の新司令官を任命したこと、またウクライナ東部のソレダーの戦で軍事的勝利を上げたと宣言したことを受けてのものである。

1.ラブロフ外相の年明け定例記者会見

ロシアのラブロフ外相は、11日に行われた定例の記者会見で次のように語った。

ウクライナにおけるモスクワの「特別軍事作戦」の目標は「ロシアの核となる正当な利益によって決定され」るだろう。そしてその目標は達成されることになるだろう。

中核的利益とは、ウクライナはわが国を直接脅かすような軍事能力があってはならないということ、またウクライナに在住するロシア系民族の権利が守られなければならないということだ。


「もはやゼレンスキーとの会談はありえない」

ラブロフ外相は、ウクライナのゼレンスキー大統領が言及した、ロシアのウクライナからの完全撤退の要求を退けた。
また戦争損害賠償の支払いや戦争犯罪人の訴追についても協議しないとの姿勢を明らかにした。

そして「もはやゼレンスキーとの会談はありえない」と述べた。

ラブロフは西側諸国についても言及した。

NATO加盟国はウクライナに多額の軍事援助を提供し続けている。西側諸国は、ロシアを疲弊させるために紛争を利用しようとしている。それがウクライナ政策のすべての判断基準となっている。

そして次のように付け加えた。

ロシアは紛争終結に向けた西側のいかなる構想も「真剣に検討する」用意がある。しかし我々はまだ真剣な提案を目にしていない。

ロシアと中国の「封じ込め」は成功しないだろう

ラブロフはさらにロシアと中国を「封じ込め」(contain)ようとする米国の戦略にも言及した。

アメリカは他の国の助けを借りてロシアと中国を「封じ込め」ようとしている。さらにロシアと中国の関係に不和をもたらそうとしている。しかし我々にはすべてわかっている。モスクワと北京の関係は未だかつてないほど強固になっている。

2.NATO最高司令部の構想

専門家の見るところ、今年、さらに戦闘は激化するだろうとされる。

ロシアは軍事的、外交的に2023年までに紛争を終わらせようと考え、一方、西側諸国は調停よりも武器供給に力を入れ、長期戦に持ちこむ構えだからだ。

NATOの軍事最高機関である軍事委員会は、11,12日にベルギーのブリュッセルで直接会合を開く。NATOのウェブサイトによると、軍事委員会の議長であるロブ・バウアー提督が会議を主宰し、加盟国国防相と招待国であるフィンランド・スウェーデンの国防相も出席する予定となっている。

会議では、NATO加盟国によるウクライナへの継続的な軍事支援について話し合われる予定である。

NATO会議に先立ち、米軍トップのマーク・ミリー陸軍大将は、ウクライナとポーランドの国境付近を訪れ、ウクライナ側と初めて直接対話を行った。

AP通信によると、この会談は、ロシアとウクライナの戦争が1年になろうとしている重要な時期に行われ、両軍の絆が深まったと強調している。

統合参謀本部議長のミレー大将は、ポーランド南東部の非公開の場所で、ウクライナ軍最高司令官のヴァレリー・ザルジニ将軍と数時間会談した。

両首脳はこれまでの1年間、ウクライナの軍事的要請や戦況について頻繁に話し合ってきたが、直接会談は初めてだった。

欧米社会がウクライナへの軍事支援を強化する中、今回の会談が行われた。

米国によるウクライナ軍への訓練拡大、米国と欧州諸国によるパトリオットミサイル、戦車、防空システムなどの提供などの軍事支援が強化されている。

ロシア側のあらたな動き

ロシア側では、参謀総長のヴァレリー・ゲラシモフ陸軍大将が11日、ウクライナでの特別軍事作戦の統合部隊の司令官に就任した。

中国の軍事専門家は、この人事はモスクワが "特別軍事作戦 "を "戦争 "に格上げしようとしていることを意味すると指摘した。

ロシア国軍、チェチェン軍、民間軍事請負会社ワグナーグループが行う共同作戦を調整するためには、国の最高軍事司令官が統制する必要があるからだ。


ウクライナの消耗が鮮明に

華東師範大学ロシア研究センターの崔恒研究員補は2日、環球時報に次のように語った。

2022年12月以降、ウクライナは戦場において、自軍の損失が拡大し、欧州諸国は高価な兵器や装備を送り続けることにますます消極的になっており、戦闘は困難に直面している。

戦場の困難な状況に加え、ウクライナは高官を失い、ヘリコプターの墜落による民間人の犠牲者にも悩まされている。

ロイター通信によると、水曜日の朝、キエフ郊外の保育園の近くにヘリコプターが墜落し、ウクライナ内相を始め政府高官多数が死亡した、犠牲者の中には保育園児3人もふくまれていた。

現在、キエフは外交的にも厳しい状況に直面している。西側諸国のイメージを強化するために一刻も早い軍事的勝利が必要である。

特にNATOが将来の軍事支援を議論する会議を開催している今がその時期だ。

対するロシア側は、ゲラシモフの指揮の下でロシア軍のパフォーマンスが向上し、火力も強化された。

このままでは年内停戦は困難

ロシアでの2024年の大統領選挙は、国の将来にとって非常に重要なものとなっている。政府は、2023年までに軍事作戦を終了させたいと考えている。

外交で停戦を求める試みが続けられるだろうが、それがウクライナや欧米にはねつけられたときには戦場で勝利するという選択肢が浮上する。

中国の軍事専門家でテレビ解説者の宋中平氏は次のように総括した。

ロシアとウクライナの紛争が勃発して以来、NATOの加盟国の中で調停に力を入れているのはトルコだけだ。

他のNATO加盟国はみな軍事物資の供給に力を入れている。双方が外交てき駆け引きに熱中し、とにかくまずは軍事的勝利をと願っている以上は停戦の可能性はない。


またもやロシア非難の大合唱だ。
ウクライナ迎撃ミサイルによるポーランド誤爆事件からまだ1ヶ月も経っていなのに、メディアには何の反省もない。まかり間違えれば大戦突入という危うい誤報であったにもかかわらず、メディア側の誤爆報道についての総括は聞いたことがない。

赤旗の主要見出しはこうなっている。
ウクライナ集合住宅攻撃: 戦争犯罪として裁け
国連各国から非難相次ぐ
死者40人に 住人 依然30人不明

この悪罵満載の記事で唯一確からしい記事は最後の行のみ。
ロシアのペスコフ大統領報道官は「ウクライナ軍に迎撃されたミサイルが落下したことによる被害だ」と主張しました。
ロシアが直接攻撃を否定してるというのは確かなようだ。ロシアは「ポーランド誤爆事件と同じく戦闘に伴う偶発事態だ」と主張していることになる。こういう場合はまずは裏取りを経た正確な評価が大事であろう。
戦争災害の悲惨さを訴えるのはとても大事だが、それは「このような戦争は一刻も早くやめよう」という方向で報道されるべきであり、何でもかんでもロシア非難に結びつけて、和解の方向を閉ざすような報道は容易に首肯できるものではない。
とりわけBBCとロイターは非欧米勢力を攻撃する姿勢が目立ち、中立性と正確性が疑われている報道機関である。今度の事件がまたもロシア側の言い分通りの経過だとすれば、今度はBBC、ロイターを無批判に受け入れる各国メディアも報道責任を問われることになる。
私は親ロ派でもなく、金をもらっているわけでもない。平和を愛し、戦火の拡大を心から憂慮する一人の市民である。憎しみの炎が燃え広がり、世界大戦の瀬戸際にある現在、軽率な一方的報道だけは避けていただきたいと心から願わずにはいられない。


AALAニューズ「ウクライナ戦争の12弾」

ライナーノート

鈴木頌

 

私儀、しばらく病気療養中ですが、編集担当時に読ませてもらった多くの論文が記憶に残っており、これをまとめてみたくなりました。
2022年2月、「
AALAニュース」が100号になり、記念号を考えていた矢先、「ウクライナ戦争」が勃発しました。最初は2、3号の特集のつもりでいたのですが、問題の重要性、複雑性に鑑みて、「ウクライナ特集」は第1弾(ニュース第100号)から第12弾(ニュース第111号)まで連続発行されました。全体として非常に充実したニュースが作れたと自負しています。

新年を迎えるに当たり、自分を振り返るために、私家版の解説集を編集しました。「お気に入り論文」の自分流紹介と感想集です。レコードのジャケットの曲紹介(ライナーノーツ)みたいなものだと思ってください。「意見」というほどのものではなく、「これ、すごいぜ!」みたいな雑文です。気楽にお読みいただければ有り難いと思います。

 

 

AALAニューズウクライナ特集概要

 

32日第1弾(ニュース第100号)

 

38日第2弾(ニュース第101号)

 

319日第3弾(ニュース第102号)

 

327日第4弾(ニュース第103号)

 

47日第5弾(ニュース第104号)

 

426日第6弾(ニュース第105号)

 

51日第7弾(ニュース第106号)

 

511日第8弾(ニュース第107号)

 

526日第9弾(ニュース第108号)

 

69日第10弾(ニュース第109号)

 

624日第11弾(ニュース第110号)

 

76日第12弾(ニュース第111号)

 

このあともニュースは発行され続け、最近のニュースは1223日発行の122号です。特集号とは銘打っていませんが、ウクライナ関連ニュースもたくさん流されています。
AALAニューズに変わらぬご贔屓賜りますようよろしくお願いいたします。

 

 

   99号以前のAALAニューズを読む方法

99号以前のAALAニューズはかなり難度の高い手法でしか接触できません。以下にその方法を記載するので、リンク先のhttpを「旧サイト」と名付けてデスクトップに付箋保存し、さらにグーグルの「お気に入り」に登録しておくことをお勧めします。

画像1

まず、日本AALAのトップページ(https://www.japan-aala.org/)に行く。

画面を下方にスクロールし「旧サイトはこちら」のアイコンを探す。

「旧サイトはこちら」のアイコンを押すと、2月まで使っていた旧トップページ(https://www.japan-aala.org/old/)が出てくる。

画面がパソコンからはみ出しているので、画面下のスライド・バーを右端まで引っ張る。

それから画面右端のスライドバーを最後までスクロールすると、「AALAニューズ」のアイコンが出てくる。これを押すと99号以前のニューズが見られます。バブルの頃の鬼怒川温泉ホテル第一別館みたいです。

直接サイトに直行したいときは下記のURLを入力してください。

 https://www.japan-aala.org/old/aala-news/

 

 

以下本文


 32

ウクライナ特集第1弾

AALA ニューズ 100号

 

 

最初の号には9本の記事が掲載されていますが、その前の99号にすでに2本のウクライナ関連記事が掲載されているので、攻撃開始から数日の間に10本以上の記事をアップしたことになります。ここではそのうちのいくつかをピックアップして紹介します。

 


1.⽇本AALA連帯委員会声明(3月1日)

 

読み直してみて、とても深い意味を持った文章だと思います。まず声明は単純に国連憲章違反だからだめという立場はとりません。ここ10年間のロシアとウクライナ、NATOとの対立を踏まえて、問題の真の解決を願う立場から、下記のごとく指摘しています。

*ロシアの軍事力行使はウクライナ問題の解決につながらないだけでなく、事態を一層複雑にして危機を深めるだけです。

また日本にとっての意味、非同盟運動にとっての意味を問い直し、非核・平和への道を指し示しています。

*危機の背景となった軍事同盟・ブロックの解消を求めます。そして日本が一日も早く日米軍事同盟のくびきから脱し、自主的な立場にたって非核・非同盟・中立の日本となるよう、その実現を目指し奮闘するものです。

 


2.ウクライナ平和主義運動「ウクライナからの平和メッセージ」

 

最初はウクライナの市⺠勢⼒からの発信です。ウクライナ「平和主義運動」のユリ・シェリアジェンコ事務局⻑のインタビューです。現地で良識を保っている⼈々の証⾔です。

 

*ウクライナ政府は⻄欧の側につきましたが、これは無謀です。私たちは中⽴であるべきだと思っています。

*世界の指導者たちが責任を他になすりつけ、ウクライナでの権⼒争いを暴⼒的に解決させようとしています。

 

これがシュリアジェンコの侵攻直前の意見です。国内が「本土決戦」で固まっていたと考えるのはあまりに短絡的です。

 

3.インド共産党M「ウクライナ_優先すべきは平和」

 

インド共産党(M)の主張は、個別のウクライナ問題だけではなく、NATOなど「軍事同盟で世界を支配する」という制度設計への問題提起を含んでいます。

 

ロシアは我が⾝の安全を懸念している。そして、ウクライナが NATOに加盟しないことをもとめている。軍事⾏動をとったのは残念なことだが、その要求は正当である。

 

編集部は下記の注釈をつけて掲載しました。

NATO 日米安保 リオ条約 は戦後の三大軍事同盟であり、非同盟運動が真正面から向き合わなければならないシステムです。

 

4.⽶国共産党(CPUSA)「戦争という時代” はいらない

 

非同盟諸国の声明ではありませんが、迫りくる「戦争という時代」への拒否が、左翼の基本的なスタンスだ、という呼びかけが新鮮でした。

ウクライナの戦争をやめよ、ロシアは戦争するな、戦争という時代” はいらない

 

 

5.南アフリカ外務省「ウクライナの事態に関する声明」

 

この時期、南アの言論の基調は一貫しています。その一貫ぶりは驚くほどです。

 

紛争が勃発してしまってからでも遅くはない。 外交の扉は決して閉ざされてはならない。

南アは異なる勢⼒の話し合いによって成⽴した国家だ。だから南アは、危機を回避し紛争を緩和するために対話がだいじだと信じている。そして対話が持つ偉⼤な可能性を常に信じている。

 

このような当たり前の主張すら、当時はロシアを利するものだと警戒されていました。

 

次の2本の論文は外交専門雑誌に掲載されたものです。いずれも侵攻の1~2ヶ月前に発表されたものです。とくに侵攻の背景としてNATOと欧米諸国の政治圧力と軍事挑発に言及しています。

 

ある意味で、NATOとウクライナがこれらの警告に耳を貸そうとしなかったのが侵攻の原因だという主張です。もちろん侵攻してしまったらもうそのような理屈は成り立ちません。

 

ただ、私には、「ロシアのウクライナ侵攻の要因が、プーチンの覇権主義の野望にあった」という一部の議論は不正確だとの認識を持ちました。

さすがに「植民地主義的侵略」論は最近はありませんが、「ソ連は情勢が不利になれば引き揚げるだろう」という楽観論として、底流に根強く存在していると思います。

 

6.エイブリー「NATO の違法性を検証する」

 

ジョン・スケイルズ・エイブリーの論⽂です。

今回の事態の影の主役は NATO であり、NATO なしにこの事件はなかったことを論証しています。

 

1999年にユーゴスラビアを崩壊させたNATOは、新ドクトリンを採用し、①発動は国連憲章に規定されない、②地域は欧州西部に限定されない、と変質した。その時から旧東欧のみならず、旧ソ連領も念頭にあった。

 

すなわちNATOのユーゴ解体以来、今回の事態は既定の路線であったということになります。

 

 

7.サックス「ウクライナの主権をどう守るか」

 

著者は⽶コロンビア⼤学教授のジェフリー・D・サックスです。彼もエイブリー同様、NATOの変質が今回の事態の出発点だと主張します。彼はジョージ・ケナンが98年に語った「予言」を紹介します。

 

「私はこれ(NATO の拡⼤)が新しい冷戦の始まりだと思う。最終的にはロシ ア⼈がかなり反発して、その政策に影響を与えると思う。痛恨の極みだ」

 

サックスの提起した着地点は大事なポイントです。

 

今⽇、私たちが最も関⼼を持つべきことは、ウクライナの主権とヨーロッパおよび世界の平和である。

NATOがウクライナに駐留するかどうかではない。もちろん、新たな(ベルリンの)壁を建設することでもない。

 

 


38

ウクライナ特集第2弾

AALA ニューズ 101号

 

 

前号に続いてウクライナ特集号となります。ウクライナの事態は、ロシアが武⼒によりウクライナに侵攻し、制圧を図っていることが核⼼的事実です。

同時に背景的事実として、NATOの変質とロシアに対するろこつな覇権主義があります。

また攻撃の過程で、ロシアが核兵器のボタンに⼿を伸ばそうとしていること も極めて危険です。ウクライナの⼈々に⼼寄せ、⼀刻も早い「平和と安全の 確保」をもとめて⾏きましょう。

 

事態の報道に偏りが目立ち始めました。最近ではBBCCNN・ロイターを一次情報として使用せず(当然日本のマスメディア情報は排除)、それ以外の多彩な情報源を駆使することで、読者の期待に答えられるようになったかと考えています。

 

このメディア御三家の一方的報道については、既に数年前、ベネズエラ非難報道のころから感じていました。それは偏りというレベルではなく、ネガフィルムのように白黒を反転させるほどの情報操作です。

この号では権威ある外交誌「フォーリン・アフェアーズ」の記事を紹介することで、情報の客観性保持に努力しました。それがトレニン論文です。

 

 

1.ICAN ロシアの核脅迫についての共同声明

 

2017 年にノーベル平和賞を受賞した国際反核組織「ICAN」が 5 ⽇に発表したアピールです。

ICAN のサイトから直接ダウンロードしたので間違いないとは思いますが、今読み返してみると、その反応はかなり単純なものです。当初のメディア・ストームに翻弄されています。例えば下記の一文など読むと、そこには「事実」に対する慎重さがありません。

 

いまや核をめぐる緊張はもっとも危険な水準にまで高まっています。 ウラジーミル・プーチンは、核攻撃を開始するぞと脅迫し、「攻撃・防御における核兵器動員警報」をソ連解体以来の最高レベルに引き上げました。…それは国連憲章を含む国際法に違反した決定です。

 

 

2.ヘルファンド「ウクライナと核戦争のリスク」

 

これは1.より古い、開戦前の記事です。ヘルファンド(Ira Helfand)は国際反核医師の会の前会⻑です。

プーチンがヨーロッパに核脅迫をかけていると非難されましたが。ヘルファンドは、その非難が必ずしもあたっ

ていない、むしろ核の脅威を煽っているのはNATO側ではないかとし、プーチンの記者会見での言葉を正確に引用しています。

 

...もう1度だけ強調したいことがあります。何度も言っていることだが、最後に私の言葉を聞いてほしい。私の話を聞いて、紙面、テレビ、オンラインの視聴者に伝えてほしい。

ウクライナがNATOに加盟し、軍事的手段でクリミアを奪還すると決めたら、欧州諸国は自動的にロシアとの軍事衝突に巻き込まれる。つまり欧州諸国との戦争が始まってしまう。そうしたら勝者など存在しないのです。

 

 

3.国連緊急総会でのキューバ演説

 

この演説からは裂帛の気合が伝わってきます。明白に火中の栗を拾いに行っています。

キューバはまず、今回の事態が「武⼒⾏使や法の諸原則・国際規範の不遵守」であることを認めます。そのうえでその要因を慎重に評価するよう求めます。なぜならその慎重さは、「特に⼩国にとって、覇権主義、権⼒の乱⽤、不正義と戦うために不可⽋な基準となる」からです。ここがキューバの主張のキモです。

今回の事態において、時系列的にも地政学的にも追い込まれているのは、“相対的な小国”としてのロシアなのだ、そういう国が「国際規範の不遵守」を犯した場合は、その理由を十分に吟味しなくてはならない、というのがキューバの言い分です。

 

 

4.トレニン「ウクライナにおけるプーチンの真の狙い」

 

ちょっと古いのですが、昨年末の「フォーリン・アフェアーズ」に掲載され た記事で、副題には「もとめているのは NATO の拡⼤阻⽌で、領⼟の拡張で はない」というものです。

もう一つ、プーチン(というよりロシア)の抱く危機感は深刻なものであり、それは西欧とのあいだに⼤きな⾮対称性があることです。

 

プーチンは 4 度にわたる NATO 拡⼤ を耐え忍び、ABM や中距離核戦⼒、⾮武装偵察機などを規制する条約から⽶国 が脱退するのを受け⼊れなければならなかったことを忘れてはならない。彼にとってウクライナは最後の砦なのだ。

 

今回の事態をプーチンの個人的資質に帰す論者は、それだけでも無知をさらけ出していると言えます。

 

 

5.ウクライナ侵攻に思う_会員からのメール

 

会員の影⼭さん(映像作家・AALA全国理事)から寄せられたメッセージを紹介します。

 

戦争を始めた責任はロシアにあります。同時に、「アメリカやヨーロッパは戦争を本当に終わらせるつもりがあるのかと感じています。

侵攻前に外交努⼒が尽くされたとは思えず、その後も「ウクライナの皆さん、頑張ってください」と欧⽶諸国が武器や軍事費を注ぎ込み続けています。

「戦争・戦闘を煽るな ⼀刻も早く戦闘を終わらせる外交努⼒を尽くせ」と アメリカや EU にもいう必要があるのではないでしょうか。

 

私の意見を付け足すと、影山さんの意見はごく普通の日本人の感想だと思います。これが普通に感じられない日本の状況に危なさを感じてしまいます。

 

 


319

ウクライナ特集 第3弾

AALAニュース 第102号

 

一方的に手を出したのはプーチンであり、最初から徹頭徹尾悪いのはプーチンです。それは間違いないのですが、ウクライナ政府に問題はないのでしょうか。国⺠にこれだけの犠牲が出ているのに、なぜ戦闘を続けるのか、これも問題ではないでしょうか。

彼我の⼒の差を⾒れば、「出てこいニミッツ、マッカーサー」という挑発は指導者としてあるまじき⾔動です。第⼀、いますぐNATOに加盟しようと⾔っているのはウクライナ政府だけなのだから、そんなことにこだわるのは無責任でしょう。

前号のトレニン論文の中ではゼレンスキーに対して厳しい評価がくだされています。

 

和平候補として出⾺して地滑り的に⼤統領の座を獲得したゼレンスキーは、きわめて⼀貫性のないリーダーである。

 

ニュース記事ではないのでブログに書き込んでおいたのですが、この頃の私の気持ちはこんな感じでした。

 

愚かなゼレンスキーよ
お前には国のトップを担う資格はない。
闘う正義がウクライナにあろうとも、だからといって、
国民に竹槍突撃を命令して良いわけがない。
耐えられないのなら、お前から真っ先切って突っ込め、
そして「バンザイ攻撃」が無意味であることを 身を以って国民に示せ。


少しづつ落とし所が⾒えてきました。これは「武装自爆」であって、断じて「武装自衛」ではありません。不満が残るにしても、いま⼤事なのは⼈間の命です。後に防衛費倍増論と絡んで問題になるのですが、このような「本土決戦」は専守防衛の議論とは相容れません。専守防衛論は本土決戦型オプションを本質的に排除するということを肝に銘じるべきです。

 

 

1. 浅井基⽂「ロシアのウクライナ侵攻_問題の所在と解決の道筋」

 

はそのためのツールになると考えました。浅井さんは以下の点が死活的に重要だとします。

 

1999 年イスタンブール⾸脳宣⾔での「不可分の安全保障原則」

すなわち、「⾃国の安全と他国の安全は不可分に結びついていることを認め、他国の安全を犠牲にする形で⾃国の安全を追求してはならない」という原則。

②条約等で成文化した合意。すなわちウクライナの NATO 加盟を認めず、軍事⼒を駐留させず、攻撃型のミサイルを配備せず。

 

もう一つの交渉の柱がクリミアと東部地区の扱いです。浅井さんは、これは「中⽴化」確約を取り付けるための、交渉開始時の「掛け値」だとみます。

その上で浅井さんは以下の点を強調します。

 

私たちとしてはロシア糾弾に終始するのは本末転倒だ。⻄側論調に振り回されることなく、ロシアがウクライナ軍事侵攻を余儀なくされた原因をしっかり⾒てとる必要がある。

 

これは開戦後1ヶ月の時点での評価ですが、すでにグローバルな視点を持つ内外の識者の間では、このような「NATO主犯説」が広がっていたことがわかります。

 

 

2.シリル・ラマポーザ 南アは平和の側にしっかりと⽴つ

 

ラマポーザ南ア⼤統領のインタビュー記事です。特集第一弾で掲載した南ア外務省声明の説明となるものです。

 

ウクライナでのロシアの軍事作戦を⾮難する投票を棄権することで、「南アフリカは歴史の間違った側に⾝を置いた」と⾔う⼈もいます。それは違います。

…紛争の勃発以来、私たちは、戦争は紛争の解決策ではないと信じてきました。私たちが⼀貫して懸念を表明し続けてきた理由は、戦争が⼈間の深い苦しみにつながっていると信じるからです

 

説得的で感動的な言葉が連ねられます。ぜひ全文をお読みください。

 

 

3. 環球時報「カラー⾰命と⽶帝国主義」

 

環球時報の編集部が特別チームを作って書いた記事です。前世紀末からのNATOの東方進出ぶりをわかりやすく解説しています。バラ⾰命、オレンジ⾰命、チューリップ⾰命、世界に広がった「カラー⾰命」を⼀覧できる、いま格好の読み物です。

私たちがウクライナへの侵攻に驚いているのは、これまでアメリカが仕組んできたクーデターの流れを知らなかっただけということがわかります。流行りの言葉で言えば「違った景色」が見えてきます。

 

この数⼗年、アメリカは「カラー⾰命」という名の、「⽕薬を使わない戦争 を世界各地で計画・実⾏してきた。直接軍事⾏動を起こすのではなく、他国の内政に介⼊して政府を転覆させてきた。それが世界⽀配を強化するための⼿段とし て、より効率的かつ経済的だと判断し、カラー⾰命を好んで使うようになった。

…⾰命が残したものは、平和でも⻄欧⾵の⺠主主義でもなく、対象国の⼤混乱、破壊、カオスであった。それが今⽇の世界の不安定の原点である。ユーラシアの国々はカラー⾰命の最悪のターゲットとなっている。

 

4.キエフから⻄側左翼の⼈びとへの⼿紙

 

ウクライナ左翼内の「祖国防衛派」の意見です。次の論文、平和主義者シェリアシェンコの声と対比して聞くべきでしょう。とても考えさせられる文章だ。筆者のタラス・ビルスはウクライナの歴史家で社会主義者。

 

私は NATO の熱烈な⽀持者ではない。冷戦終結後、NATO が攻撃的な政策をとっていることは知っている。NATO の東⽅拡⼤が、核軍縮や共同安全保障システムの形成に向けた努⼒を台無しにしたことも知っている。

もはや妥協はありえない。この闘いは、ロシアがウクライナから撤退し、すべての犠牲者とすべての破壊の代償を払うまで続くだろう。

 

今では逆の言い方をするほかない。もはや徹底抗戦はありえない。これ以上の犠牲者を出し続けてはならない。戦いの代償を戦う相手に求めてはならない。お互いに被害者なのだから。加害者は他にいるのだから。

 

 

5. Truth Out「ウクライナ_戦時下の左派の⼈々」

 

シェリアジェンコは平和主義者というより⾼僧の雰囲気を漂わせています。反戦活動が厳しくなったとき、最後の選択として⾮戦を貫くという覚悟はズシンと⼼に響きます。 私は、この⼈はドゥホボール教の⾮戦思想を引き継いでいるのではないかと、密かに思っています。これについては「ドゥホボール教の⾮戦思想」を御覧ください。

 

ドゥホボール教は、18世紀にウクライナ地方に起こった。原始キリスト教を思わせるような素朴な信仰である。教会も聖書も儀式も一切認めない。原罪を否定しイエスの神性までも否定する。

ただ、汝殺すなかれ、己を愛するように隣人を愛せよ、暴力に対するに暴力でもって抵抗するな、この三か条だけ伝えてきた。トルストイが感動し支援したことで有名になった。

 

 

327
      ウクライナ特集 第4弾
     AALAニュース第103号

不抜の「平和派」であるべき

 

今回もウクライナ特集(第4弾)です。過⽇の国連総会決議では、圧倒的多数でロシアへの糾弾・⾮難決議が採択されました。

決議は当然ですが、棄権票を投じた国に⾮難が集中したことについては、よく考えてみるべきです。

逆に強硬派に⽀持が集中していますが、強硬であるがゆえに指示されるという傾向は健康的ではありません。

暴⼒の応酬は不⽑かつ危険です。なぜならロシアとウクライナは、そもそも戦うべき相⼿ではないからです。なにも戦う理由などないのです。どこかにボタンの掛け違えがあるような気がします。私たちは国際社会の⼀員として、不抜の「平和派」であるべきだと思い ます。

 

1.ミャシアイマー「ウクライナ危機の責任は NATO にある」

侵攻開始の10日前、2月15日に行われたインタビュー(YouTube)からの⽂字起こしです。奇跡の80分というか、中⾝てんこ盛りの話です。記事に起こしたら 6600 字、A4 で9ページになりました。アメリカだけでなく世界中で評判になったスピーチです。

 

⼀応、編集部で⼩⾒出しを付けましたが、それでもなお難しい。⼩⾒出しを 並べて⽬次もどきを作りました。こんな流れで話しているということを頭に おいてから読み始めてください。

はじめに

 危機の起源と歴史

ウクライナを⻄側の防壁に

NATO は⼀線を越えた

反撃を開始したロシア

2014 年のウクライナ危機

 ロシア政治の基本_「リアルポリティーク」

「今後はもう許さない」

⽶国はロシアの善良な隣⼈であったのか

 2021 年に起こったこと

「ウクライナは味⽅」はただのレトリック

危機を鎮静化させるべき希望とは

 

 

シェリアジェンコ「紛争激化阻⽌へ⾮暴⼒の抵抗を」

 

これは3月1日のデモクラシー・ナウのインタビュー記事です。「ウクライナからの平和メッセージ」(AALA ニューズ 100 号)、前号の「戦時下の左派の人々」に続くものとなっています。あわせてお読みいただけると、侵攻開始によって「平和主義運動」の⽴場がどう変わったかが明らかになります。

 

名⽂句が珠⽟のごとく散りばめられていて、⼈を感動させる不思議な⼒を持 っています。

 

この紛争は東⻄間の軍事化、政治化が⾏き過ぎたための現象です。それはプーチンを外交から戦争へと追い込んでいます。

とても残念なことは、⻄側諸国でのウクライナ⽀援が、主に軍事⽀援とロシアへの痛みを伴う経済制裁の発動に偏っていることです。また紛争に関する報道は戦闘に焦点があてられていて、戦争への⾮暴⼒的抵抗がほとんど無視されていることです。

組織的な暴⼒や戦争が神業のような万能薬で、すべての社会問題を解決するという考えは、独りよがりな誤りです。怒りにまかせて⼈類の最後の絆を断ち切るのではなく、地球上のすべての⼈々のコミュニケーションと協⼒の場を維持しなければなりません。

 

 

. Daily Maveric「南ア決議案のてん末」

 

 “Daily Maveric” という南アフリカのネットニュースの記事(25 Mar 2022 )です。南アが独⾃の決議案を国連総会に提出し、否決されるに⾄った経過を詳 らかにしています。

 

異例のことに、国連総会はウクライナの提出した決議を採択した後、南ア案を採決した。それはウクライナ案からロシアへの言及を一切排除して独自の決議案として提出された。総会は南ア案にも採決をおこない、賛成 50、反対 67 で否決された。

 

これは、内容的には修正動議です。投票数が少ないのは、多くの国が知らずに退席してしまったためです。(ウクライナ決議採択への参加国が183カ国であるのに、南ア決議案採択時の参加国は117カ国)

ウクライナ案をゴリ押しした先進国は、さぞや肝を冷やしたことでしょう。経過を知って改めて、南アの提案は今後の交渉を占う上で⼤事な提案だと思われます。

 

. D・アドラー「なぜ南の世界はどちらの側にもつかないのか」

 

英ガーディアン紙に掲載された評論。アドラーはバーニー・サンダースの外 交政策顧問をつとめた政治経済学者です。

 

ここ数⽇、先進国メディアは国連決議の世界地図を見せて、プーチン政権に対する世界の結束を示している。

しかしこれらの地図は、これ以上ないほど先進国とそれ以外の国の差を映し出している。

制裁についての地図は、本当の⻲裂は右と左の間でも、東と⻄の間でもなく、先進国と発展途上国との間にあることを示している。

 

しかしアドラーが真に問うているのは南に対してではなく、「西側の左翼」です。

 

多くの記事、ツイッターが「⻄側の左翼」を取り上げ、プーチン政権に対抗する気がないように⾒える といっている。そして、⻄側の努⼒を⼒と信念を持って⽀持することができないのは「疑似左翼」であると非難している。

 

「そうなのだろうか?」と、アドラーは先進国の左翼に問いかけています。

私たちの選択は南と同じく「中立」という選択ではないか。

アドラーは、その中立というのは「中道」(中間)という形では実現せず、「非同盟主義」とカップリングしなければならないと訴えています。

今世界で最も選択を迫られているのは、先進国の左翼だと言えるのかも知れません。

 

 

 

202247

ウクライナ特集 第5弾

AALA ニューズ 104号

 

今号はウクライナ特集第5弾として、10本の記事が掲載されます。ミアシャイマーの記事に続き、国務省高級官僚出身者の主張する、いわゆる「リアル・ポリティーク」の視点を考えてみたいと思います。諸論文からは中身の濃さがグイグイと伝わってきます。

トルコの調停のもとに和平交渉が進み、停戦に向けてかすかな灯りが見えてきたようにも見えます。とにかく因縁浅からぬ隣人同士の殺し合いはやりきれません。一日も早く収まるよう祈るばかりです。

 

1. キッシンジャーの予言「ウクライナ危機を解決するために」

このところキッシンジャーのウクライナ関連発言がしばしば伝えられています。

ここで少し経過を個条書きしておきたい。

2016年 トランプが大統領に就任。キッシンジャーは過去の人脈により非公式の外交顧問になった。
20176月 ロシアを訪問しプーチンと会談。その後米ロ関係の修復を図った。北朝鮮との関係改善についても影で動いたとされる。

2022523日、世界経済フォーラム(ダボス会議)にオンラインで参加。ウクライナ情勢について「東部は分割すべし。今後2カ月以内に和平交渉を再開」との見解を示す。

ご承知のようにキッシンジャーは決して善人ではなく、勢力均衡論に立って実現可能な妥協形態を考えようというのが持論です。そして欧米が考えるウクライナ構想は非現実的だから、いつか(かなり近いうちに)破たんするということです。

今回紹介する記事は、2014 のマイダン政変の時、ワシントン・ポストに寄稿したものです。

 

2. トマス・グラハム他「プーチンと和解する方法」

 

「フォーリン・アフェアーズ」の3月21日号に掲載されたものです。シニカルなタッチで「リアル・ポリティーク」 の世界の論理を展開しています。

 

ロシアの不当な戦争を終わらせるために、ウクライナはどのような条件を受け 入れるべきなのだろうか。不謹慎な質問だと思う人もいるかもしれないが、現実には、今のところ、満足のいく勝利は手の届かないところにある。

死者の数、破壊 の規模、そして紛争拡大のリスクが高まる中、優先されるべきは苦しみを終わらせることであろう。これは、政治的解決をもたらす外交的関与によってのみ達成 されうる。

まず、最も緊急な課題は、停戦を仲介し、ウクライナ内外の難民に人道支援を提供することである。次に、戦争の終結を交渉することである。

 

ゲーム感覚で外交的解決の道すじを切り開いていくところは、ある種の小気味よさを感じます。

「正義派」にとってはしゃくにさわるかも知れないが、必要な議論です。

 

. ウェス・ミッチェル「ウクライナ中立化の条件」

 

「フォーリン・アフェアーズ」の3月17日号に掲載された論文です。ウクライナは NATO 非加盟で行くしかないことを、「ロシアとプーチンが信用出来ない」ことを根拠にして主張しています。

 

この文章はあくまで3月中旬の政治的・軍事的状況を背景にして書かれたもので、現在ではもう少し突き放して読むべきかも知れません。

 

ウクライナにとって中立化が死刑宣告になるわけではない。むしろそれが最善の成果かもしれない。このような成果が可能になるのは、ウクライナの頑強な軍事⼒がゼレンスキー に交渉のテーブルで与える影響⼒のおかげである。

 

開戦当初の「意外な」健闘によりウクライナの生き残りの可能性は大きく開きました。「ここで手を打ったら?」というのがミッチェルの提案です。

それにしてもキッシンジャーやグラハムも指摘した「最後のチャンス」を、西側メディアは「ブチャの虐殺」で潰してしまいました。ここから先は「CNNの戦争」になっていくのです。愚かなことだと思います。

 

4.環球時報「ウクライナ危機と悪役アンクルサム」

 

環球時報は、時々変化球を投げてきます。この記事はキッシンジャーから始まり、ミアシャイマーへと続き、最後はジョージ・ケナンの予言で締めてい ます。

米国のリアル・ポリティークの系譜を知る上では格好の材料でしょう。

 

. 吉川顯麿「戦争を泥沼化する武器供与の拡大」

会員の紹介を得て掲載された論文です。ロシアの側にも気配りしており、事態の安定的解決のためにはNATOのウクライナ進出を止めることで欧米諸国とロシアが合意することが必要だと強調しています。

 

6.鈴木頌「ウクライナ:緊急課題と長期課題」

この特集には私の発言も潜り込ませてあります。それについては私のブログの方でご参照願います。その最後に書いた「中長期の課題」の要旨のみ再掲します。

ウクライナ紛争はロシアと NATO の対立がもたらした代理戦争でもあります。この2つの軍事ブロックの対立が解消しない限り、ロシアの不安と苛立ちは残り、第二の紛争(たとえばベラルーシやジョージア)が起きる危険はつのります。したがって、軍事的中立化を軸とする平和構築の課題は必須です。

1.国際間の「ウクライナ協約」を

ロシア、NATO のみならず、周辺諸国でウクライナの平和を保証する協約を結ぶことが必要です。ウクライナはその保証の下で中立・自衛・非同盟の国造りを行うことになるで しょう。

2.周辺諸国が互いに安全を保証する

ロシアと NATO は相互に敵視することを止め、相互不可侵とパートナーシップ の関係を確定することが必要です。

さらに長期課題としてはNATOの改組・廃止、一切の軍事同盟の廃止を射程に置くべきです。

 

 

4月26日

AALA ニューズ105
ウクライナ特集第6弾

 


105号内容紹介の出だしにこう書きました。

「ブチャの虐殺」以来、すっかり時計の針が逆戻りしたようです。ロシアは⾃分がしていることが無法だということをすっかり忘れてしまったようです。ロシア軍が発射したすべての砲弾がウクライナの地に落ちていることについて⾃覚しなければなりません。

ただ⼀連の経過の中で、「ロシアが悪いとしても、それでもやはり和解以外の道なし」の実感も強まっているように思えます。

今考えると、この号は精一杯という所です。明らかにこの事件を回転軸として、ウクライナ戦争の性格はガラッと変わってしまったようです。これ以後、戦争の残虐化、欧州市民の熱狂的支援、AALA諸国の“興ざめ”が同時に急速に展開されていきます。

「何があったのか」は今もって闇の中ですが、それより「どう報道されたのか」の方は明らかです。度を越えた幾多の情緒的表現を確認しておきます。

①西側メディアの報道によると、キエフ近郊のブチャから、ロシア軍撤退後に数百⼈の⺠間⼈が路上や集団墓地で遺体で発⾒された。何⼈かは、両⼿を縛られたまま頭を撃たれたようだ。

②ウクライナ政府の国連大使はこう語った。

ブチャをはじめとする数⼗のウクライナの都市や村では、平和に暮らす数千の住⺠がロシア軍によって殺され、拷問され、レイプされ、拉致され、強奪された。

 

「第6弾」は4⽉7⽇に⾏われた3回⽬の国連総会の動きに焦点を合わせて紹介しています。

 

1. シンガポールはウクライナ⼈権侵害の精査をもとめる

東南アジア諸国はブチャの虐殺を機に明らかに欧米諸国と距離を取り始めました。おそらく上記の如き報道に不実の匂いを嗅ぎ取ったのでしょう。

シンガポールはASEAN 加盟国の中でロシアに直接制裁を課している唯⼀の国です。このことを考えると今回棄権に回った決断の重みを感じます。

このほか、ASEAN ではマレーシア、インドネシア、カンボジアが棄権しました。ベトナムは反対票を投じました。

マレーシアの国連代表団は、投票に棄権した理由について、次のように説明しています。

 

⼈権理事会メンバーの資格停⽌のような重要な決定は、性急に⾏われるべきではありません。また、そのようなかたちで、調査の結果に予断を与えるべきではありません。 このような重要な問題は、決議 60/251(⼈権理事会の設⽴に関する)の完全な精神と⽂⾔の下で、過去と同様の平等な扱いと正当な⼿続きを踏んだうえで、 決定されなければなりません。

 

2. 国連総会でのベネズエラとキューバの発⾔(4 7 ⽇)

新藤さんの紹介を得て掲載します。ベネズエラは過去数年間、米国による経済封鎖と反政府宣伝で苦しめられてきましたから、その手口は見抜いています。
ベネズエラは煽りで政治を動かしてはならない、煽りの手段として人権を弄ぶようなことはするな、と先進国を批判します。

⼈権の促進と擁護は、公平性、客観性、透明性、⾮選択性、⾮政治化、 ⾮対⽴の原則に従い、対話と協⼒を基礎として、公正かつ建設的に議論されるべきであると考えます。⼈権は主権国家を攻撃するための道具とされてはなりませ ん。そのような議論は、⼈権の普遍的体系の本質を損ないます。

キューバは発⾔の最後で「あなた⽅は⽶国の⼈権侵害を告発できるだろうか」と厳しく切り替えしています。

 

3.南ア 「対話と調停が紛争を終わらせる唯⼀の道」

 前回の国連総会で独⾃案を提出して話題を呼んだ南アフリカの、ブチャ問題に関する報道です。よりいっそう提案の趣旨が鮮明となっています。

 

4.G20の議長国、インドネシアが調停に積極的

 

今年の G20 サミットの開催国インドネシアがウクライナ停戦へと動いていることの論評です。驚くのは次のごとき記載です。あらためてASEANにおけるインドネシアの重みについて実感しました。

1988 年から 1991 年にかけて、カンボジアの武⼒紛争を停⽌させ、 ベトナムのカンボジア占領を終わらせた。

1993 年、インドネシアはイスラム会議機構の議⻑を務め、フィリピン政府のイスラム武装集団との和解に乗り出した。これが1996 のフィリピン政府とモロ⺠族解放戦線との和平協定に結びついた。

 

5.⽇経「ロシア追放で⻲裂露呈」を読む

いまやフィナンシャル・タイムズと並んで、貴重な報道機関となった日経新聞。その49⽇三⾯のトップ記事。国連総会で「ロシアの⼈権理事会からの排除をもとめる決議」が行われました。国連総会の前回決議(324⽇)と対⽐されています。

キーウ周辺での⺠間⼈殺害を受け、ロシアの⼈権理事会理事国の資格停⽌をもとめる決議が、国連総会に提出された。投票参加国は 175 カ国、うち「⾮賛成国」は 100 カ国・過半数に達した。

この記事は事実報道あけでなく反対理由を分析しています。少し長めに引用します。

 

国連の役割を問う

ロシアが悪いのはわかるが、国連は裁判所ではない。1 ヶ⽉の間に 3 回も採決を⾏い、そのたびに加盟国に政治的踏み絵をふませることが、事態の解決に結びつくとは思えない。

事実は未解明処分は急ぎすぎ

独⾃調査を⾏い真相を明らかにすべきだ。当事者が責任を否定している以上、事件の解明を先行すべきだ。

⼈権侵害の疑いがあれば理事国になれないのか

⼈権侵害の疑いをかけられている国は日本をふくめ相当数ある。⼈権問題をことさらに強調するのはNATO諸国のご都合主義だ。

と、その切っ先には鋭いものがあります。

 

この号には、ブチャの虐殺とマリウポリ劇場爆破事件についても掲載していますが、体裁上この号では重すぎるので、次号分に回します。

5月1日 

ウクライナ特集 第7
AALAニューズ106


今号は大幅ページ増で、通常号の2倍以上あります。

この頃は、総じて言えば「鬼畜ロシア、断じて許すまじ」の主戦論が欧米・日本を席巻している時代でした。

今考えると、「ブチャの虐殺」が全面戦争へのノロシでした。それまでの和平ムードは吹き飛び、主戦論がウクライナを含む西側の主流となりました。ウクライナ当局の情報が無批判に事実認定され、BBCなど西側メディアを通じて垂れ流されるようになりました。
ロシア側の言い分は無視され、プーチンとロシアは人類の敵とみなされるようになりました。「国連憲章に基づく解決以外なし」との主張が広がり、停戦と話し合いによる和平を望む人までロシアの味方だと非難されるようになりました。

このとき、ブチャからマリウポリへと続く西側キャンペーンに対し、基礎事実の曖昧さを指摘することは大変困難でしたが、あえて「非人道的な行い」について何点か言及しました。

 

以下の2本の記事は前回号(105号)所収のものですが、文章の体裁上、こちらで紹介させていただきます。

 後半のいくつかの論文は、いずれも「困難なときだからこそ頭を上げて、世界史の発展方向を見据えて進もう」という論調になっています。

 

1.ブルメンソール「BBC マリウポリ劇場の爆撃報道はでっち上げ

“ブチャの虐殺” のあと、ロシア軍の非道を非難する報道が相次ぎました。その中でマリウポリ劇場の爆撃報道は、本来なら誰が見ても“危うい”ニュースでした。巨大な建物が押しつぶされるように崩壊する画面が繰り返し流されましたが、住民の避難場所だったにしては、いつまでも死傷者の数が発表されません。

これについてネットマガジン「グレイゾーン」を主宰するブリュメンソールがレビューしています。

報告は二部に分かれ、A4で17ページとなっています。原題は「BBC のウクライナ戦争報道を担当する通信員・フィクサーは、" 戦争情報組織 "に関わる宣伝⼯作員だ」と、これも長い。

題名でもわかるように、この記事はマリウポリだけを取り出しているのではなく、BBCが英国情報組織に従って系統的にニセ情報を流しているという、かなりどぎついものです。

かなり躊躇しましたが、商業メディアがこのまま偏向報道を続けるのなら、一石を投じなければならないと決意しました。

内容紹介はしませんが、とりあえず見出しだけでも追ってみてください。

 

2.ブチャの虐殺は偽旗作戦

グローバルリサーチというネットマガジンの署名入り記事でJens Bernert記者が投稿しています。

まずは「偽旗(False Flags)とは何か」から

"偽旗 "とは、相⼿のせいにする⽬的で⾏われる政治的・軍事的でっち上げのことである。 ⾃国に対する攻撃シミュレーションを⾏い、敵がそれを⾏ったと主張することで戦争に突⼊するための⼝実とすること。「ブチャの悲劇」は "偽旗" 作戦の可能性がある。

 

これより少し前、ロシアとの第1回停戦交渉がはじまったとき、ウクライナ交渉団のトップであったデニス・キレフ氏が、キエフで白昼堂々殺害されました。キレフ氏はその後、"反逆罪"と非難されました。ゼレンスキー大統領の「分裂を目的とした政治活動は許されず、対ロ協力者は厳しい対応を受けることになるだろう」と発言しました。ゼレンスキー個人に強い圧力がかかったことは容易に見て取れます。

虐殺事件の発覚後現地を訪れたゼレンスキーはこう宣言しました。「もし我々が文明的な方法を見つけなければ、結果は自明だ。国民は非文明的な方法を見つけるだろう」(ブルメンソール論文)

ネオナチの記者ジュリアン・レプケのツィッターは、(本当だとしたら)恐ろしい内容を含んでいます。

3.グレイゾーン「ウクライナ政府とネオナチ」

こちらは106号所収の記事です。「マリウポリ」の記事と同じくA4で18ページの大作です。我ながら、よくもこれだけ翻訳したものだと感心します。

内容はブルメンソールをアンカーとする調査報道で、原題はもっと毒々しい。

"裏切り者を一人でも減らす" ゼレンスキーは 暗殺、誘拐、拷問を監視する」

ウクライナ軍の中でネオナチが幅を利かせているのは周知の事実ですが、その名に恥じず悪辣な行為を働いていることも、徐々に明らかになってきました。

彼らはSNS等を通じて残虐ぶりを誇り、「成果」を吹聴しているようです。閲覧にはご注意ください。

以上の3本を読むと、信じようと信じまいと「違った景色」が見えてくるでしょう。こんなことで第三次世界大戦、世界核戦争に巻き込まれるのはまっぴらです。

 

4.バチカン・ニュース「復活祭のローマ法王、平和の呼びかけ」

この間、ローマ法王が和平を呼びかけました。法王の呼びかけは明快で鮮烈です。平和は可能である。平和は義務である。平和はすべての人の第一の責任である!
それは煽られた主戦論とは一線を画し、グテイレス国連事務総長の思いとも共通するようです。

 

5.英モーニングスター「今こそ非同盟と平和のために」

文章はこういう書き出しで始まります。

私たちは最近ますます現実離れしていくものに確実に圧倒されている。それはロシアによるウクライナ戦争が続く限りは交渉は無駄という不可解な見方である。

そして“圧倒されている私たち”に、もう一つの見方が提示されます。

ウクライナ戦争を北の世界と南の世界という構図から見ていくと、まったく違ったものになる。そこに非同盟と平和という思想が浮かび上がってくる。

鮮烈な印象を与える文章です。乱暴にならずに丹念に議論をしていくと、大きな方向が見えてきそうです。

 

6.ALAI「世界の周縁へ回帰するヨーロッパ」

ALAIThe Latin American Information Agencyの略。国連の外郭団体で、日刊で情報を提供しています。
この論文は定期寄稿者のドス・サントスの筆になるもの。欧州近代史を踏まえた重厚な論理構築は、読むものをうならせる力があります。実にスッキリした読後感で、「正義派」の人にも受け入れられるだけの説得力を持っていると思います。

…欧州のレンズを通して見ると、ヨーロッパ人はかつてなく強固で親密になっていると感じ、歴史の正しい側にたっていると確信する。 地球全体が「自由主義秩序」の世界によって運営されており、世界はようやく、中国の主要パートナーであるロシアを破壊し、その後、近いうちに出かけて行って中国を征服するか、少なくとも無力化するだけの力があると感じている。

しかし一方、ヨーロッパ以外のレンズを通して見ると、ヨーロッパとアメリカはごう慢になって孤立同然となっており、おそらく一つの戦には勝つことができても、歴史の戦争では確実に敗北する途上にある。

 

7.ワシントン・ポスト「ウクライナと、勢力圏をめぐる米国の偽善」

ブリンケン国務長官はロシアのウクライナ侵攻は、もはや古臭くなった「勢力圏構想」に基づくものだと批判した。しかしアメリカも西半球を死活的勢力圏としているではないか…

という問いかけです。

そして勢力圏の枠組みを設定しているのは、米国民全体ではなく、ブリンケンを先頭とするネオコンの人々だと、指摘しています。

 

ワシントン・ポストの記事というのが面白い。ただこれはコラムであり、その著者は筋金入りのリベラルであるカトリーナ・ヒューベル(ネーション誌の編集長)だから、社の意見を代表しているとは言い難い。だからワシントンポストも安心して彼女の記事を載せるのでしょう。

 

8.テレスール「ウクライナ紛争とアフリカ経済」

「アフリカの角」地帯では、すでにウクライナ紛争の影響で食料不足が出現している。それは小麦輸入の減少もあるが、むしろ肥料供給大国であるロシアからの供給不足の影響が深刻だというもの。この肥料不足問題は米国の農家にも影響しているようです。

 

 

510 

ウクライナ特集 第8
AALAニューズ No.107


 内容紹介

戦いが憎しみの応酬へと変質させられる中で、ウクライナの「正義」だけが強調され、解決への道すじが失われてしまいました。

私たちの行動は、残念ながらこの(でっち上げられた)憎しみの回路を断ち切ることに集中するほかなくなりました。そのなかで真っ当な意見も出されるようになってきました。


1.
チョムスキー「ウクライナ戦争とアメリカの巨大な欺瞞」:要約

https://www.youtube.com/watch?v=yw5DvUgJlZA

 

田中靖宏さんが翻訳・要約しています。まず出だしが良い。言うべきことを言い尽くしている。チョムスキーさん、すでに相当の高齢だが、やる気が伝わってきます。

ウクライナの自衛努力への支援は正当なものだと思いますが、支援の規模は慎重に決めなければなりません。でないと実際にウクライナの状況の改善にならないし、いたずらに紛争をエスカレートさせて、ウクライナの破壊につながりかねません。

これは次のような質問に対する答えであり、いまでも正当だと思います。

アメリカの左派の反戦活動家たちの間で、プーチンによるウクライナ侵攻と大量殺戮にどう対応するかで議論が行われています。…あなたが賛成する点はありますか。

正義はわかりやすいが、真理はにがくて飲み込みにくいということでしょうか

 

 

2. Stop The War「戦争が変質しつつある_早く終わらさなくては」

 

原題はちょっと長い。「ウクライナの戦争はすごいスピードでNATOとロシアの直接戦争になりつつある。その先は地獄だ!」というもの。

Stop The War は英国コード・ピンクを中心にイギリスの女性団体が立ち上げた、ウクライナ戦争終結を目指すネットワークです。
codepink
メインスローガンが「ウクライナの戦争をやめろ」

サブスローガンが2つ。「ロシア軍は出てゆけ」と「NATOはこれ以上拡大するな!」です。

いかにも婦人団体らしくおしゃれなポスター。平易な表現で、非常に筋の通ったスローガンを提起しています。いまでも十分通用します。

逆に言うと、いまでも通用してしまうところに、主体形成の厳しさを感じてしまうのですが、今後の教訓とするためにも学んでいく必要があるでしょう。

 

3. ウクライナ平和主義運動「戦争継続に反対する声明422日」

この写真(略)は「ウクライナ平和主義運動」が16日に行った集会の模様です。フェースブックからの転載です。これはある意味で祈りの集会です。

残虐行為の結果が憎悪を煽り、新たに残虐行為を正当化するために用いられてはなりません。私たちの行動は恐怖心ではなく、平和と幸福への希望によってもたらされるべきものです。
主よ、暴力に終止符を打ってください。主よ、私たちをお赦しください。ウクライナ人のイリーナとロシア人のアルビナが、なぜ一緒に十字架を背負って平和を祈っているのかを理解しようとせず、怒っている人たちを許してあげてください。


 

4. ヴォリネン「フィンランドのNATO加盟問題を問う」

 

フィンランドでウクライナ紛争を機にNATO加盟の是非が取り沙汰されています。またこれと裏表の関係でウクライナへの人道援助・武器援助も検討され、すでに一部では実施されています。

政権は中道左派系ですが、左派同盟は政権の一翼を担っていて、基本的に同調姿勢をとっています。これらの政治状況について「左翼青年」(左派同盟)の青年組織代表がインタビューに答えています。

最大の問題は、ウクライナをきっかけとした国民の国防への熱狂で、左翼は今のところこれに対応しきれていません。長い間、国民のほとんどが NATO 加盟を拒否してきましたが、ウクライナ戦争が始まるとわずか数週間のうちに、国民の大半がNATO を支持するようになりました。
安全保障問題には無関心だった「緑の党」も、NATO 支持を明確にしています。それは戦争に対するショック的な反応なのかとも考えられますが、まだ答えは出せません。


一方でフィンランドはウクライナへの軍事援助を開始しました。左翼同盟も連立政権の一員としてこれに合意しています。左翼同盟はNATO 加盟に反対の立場をとっています。そのためロシア贔 屓とみなされて不条理な扱いを受けています。(大要)

 

欧州の左翼が、市民のショック反応の大きさに耐えきれず大揺れしている状況が見て取れます。他人事ではありませんが、ここはどっしり構えていくほかないでしょう。

 

 

 

 

526
AALAニューズ  No.108

ウクライナ特集 第9


「ロシア、断じて許すまじ」の主戦論が欧米・日本を席巻しています。しかし「血を流せと煽るのは、なにかおかしい」という声も広がってきているようです。

この間LNGや原油の国際価格は暴騰し、物価をお仕上げ、世界経済の悪化をもたらしています。それは国際企業のボロ儲けの手段としてウクライナ戦争が利用されていることを示唆しています。ウクライナ戦争のこのような側面も見逃してはなりません。階級闘争が必要です。

 


1.
ルーラ「なぜ各国は平和構築の支援をしないのか」

 

ルーラ元ブラジル大統領は、この秋に予定される大統領選挙の最有力候補です。タイムズ紙とのインタビュー Lula Talks to TIME About Ukraine, Bolsonaro, and Brazil's Fragile Democracy”で、さまざまな問題について語っていますが、この内ウクライナ問題について抜粋しています。


悪いのはプーチンだけではありません。アメリカや
EU も悪い。ウクライナ侵攻の理由は何だったのでしょうか。NATO でしょう。 それなら、アメリかと欧州は「ウクライナは NATO に加盟しない」というべきでした。

対話はほとんどありませんでした。平和を望むなら、忍耐が必要です。

このインタビューで面白いのは質問者が途中で突然怒りだすのです。


(質問)ゼレンスキーにむかってそんなことが言えるのですか。彼は戦争を望んでいたわけではない、仕掛けられたのです。国境に
10 万人ものロシア軍が迫っていても、プーチンと話すべきだったというのですか。


これにたいしてルーラはさらに煽ります。


この男(ゼレンスキー)は嬉しいオマケをもらったといい気になっています。私たちは真剣にいうべきです。「わかった。確かに君は素敵なコメディアンだが、テレビに出るために戦争をするのはやめましょう」とね。

このケンカがどうなるかは、本文をご参照ください。


さらに、最後の一言はなぜルーラが人気なのかがわかる決め台詞です。


もし私がブラジ
ルの大統領で、「ブラジルは NATO に加盟できる」と言われたとしても、 断ると思います。 (質問)なぜですか。 (答え)理由は、私が戦争ではなく、平和のことしか考えていない男だか らです。

 


2.
CAP
「ウクライナ紛争とビッグ・オイルのボロ儲け」


「アメリカ進歩センター」(
CAP)は米国内 NGO で、国内の暮らしと経済問題を主要イシューとしています。

原題はThese Top 5 Oil Companies Just Raked In $35 Billion While Americans Pay More at the Pump

 

意訳すると、「石油会社上位5社は350億ドルを稼いだ。その一方で、産油国アメリカの市民は割増料金を支払わされている」

 

トップ5社が、コロナでボロ儲けした上に、ウクライナでまた溜め込むという悪辣な稼ぎを行ってい ることを告発しています。

2021年、企業はすでにガス価格の高騰による利益を得ている。COVID-19 の大流行による操業停止から経済が回復したことで、上位 25 社は 2050 億ドル以上の利益を上げている。だが、最近発表された 2022 年の第 1 四半期の利益はさらに驚異的である。

上位 5 社(シェル、エクソンモービル、BP、シェブロン、コノコ フィリップス)だけで、2021 年の第 1 四半期と比べて 300%以上の利益がもたらされた。

ウクライナ戦争とそれによる経済的痛手は、石油会社の経営者にとってはどれほど有益であったことか

 

 

3.環球時報「ウクライナは米軍産複合体の新たな稼ぎ先」

 

 環球時報は、中国共産党系の国際情報誌。記事は、ウクライナ戦争の本質を 米軍産複合体のマーケット拡大活動と見ています。

多分、かなりわかっている人を対象に書かれたのでしょう。流麗かつ大変格調の高い文章ですが、言葉を詰め込みすぎていて歯が立ちません。もう少し的を絞って論証に注力してもらえれば、と思います。

 


.
PeoplesWorld「スエーデン、フィンランドの NATO 加盟反対」

 

ピープルズ・ワールドはアメリカ共産党の準機関紙で、スエーデン、フィンラ ンドのNATO 加盟決定を批判しています。

原題は「スエーデンでもフィンランドでも、 共産党は NATO 加盟に反対している」というもので、スウェーデン共産党(SKP)と「フィンランドの平和と社会主義のための共産主義労働者党」(KTP)の主張を紹介しています。

 

5.大西廣「気になって仕方がないウクライナ報道」

会員による投稿です。ウクライナ報道の盲点について論及したものです。

それは本文をご覧いただくとして、「ところで」論として以下の問題が提起されています。


この事態に及んで日本で出されている議論に「日本が攻め
られたらどうするのか?」というものがある。多くの平和 人士に対して私が言いたいのは、これは今回の事態の理解を深めるうえで非常 に良い、絶好の機会を提供してくれているということである。

日本がロシアや中国に攻められ、ゼレンスキーのような人物に「戦え」と 命令されたらどうするかということである。

これは、未消化に終わったかつての「森島vs関」論争を再開すべきだという議論へと繋がります。

根本的には憲法の思想として非戦平和をとるか、専守防衛をとるかの選択かも知れません。(日本の現政権はそのいずれでもありませんが)

ウクライナ侵攻については、とくに西側主張に多くのフェイクがふくまれ、そのままでは論じられないのですが、それはそれとして、いわば「平和学のミクロ理論」のモデルとして語るべきかと思われます。

  

6月09日 

AALA ニューズ 109号

ウクライナ特集 10

 

引き続きウクライナ危機が中心の情報提供です。さすがの欧州にもウクライナ対応で亀裂が入り始めた感があります。

ロシアの無条件撤退を和平の前提とするのは、事実上無限の戦いを進めることになります。それまでウクライナ国民はバタバタと倒れていくことになります。彼我の力関係はそうなっています。

また西側諸国の国民も無限の犠牲を求められることになります。世界経済にとっても良いことは一つもありません。

これはたんなる算盤勘定ではありません。「それでも、それが正義なのか」という問い掛けです。

 


1.クレステス
FT
「欧州に迫る平和党と正義党の選択」

 

英フィナンシャル・タイムズに掲載された論文です。原題は「ロシアを孤立させることは、西側のためにならない」となっています。

平和等と正義党という政治的立場の分類は揺れ動く西欧の市民のあいだでかなりの話題になりました。

 

ひとつは、「平和の党」だ。平和党は西側が優先すべきは、できるだけ早く 敵対行為を停止することだ」と考える。 そして「ウクライナの大幅な譲歩を代償にしてでも、一刻も早く敵対行為を 止めるべきであり、それを西側の優先事項とするべきだ」と主張する。

もう一つは「正義の党」だ。こちらは「たとえ戦争が長期化したとしても、 ウクライナ領内からロシア軍を追い出すことが大事だ」とかんがえる。 そして「戦いと勝利」を優先事項だと主張する。 これから、この二者択一を欧州世論は迫られることになる。

 

. ボーテス 「南アフリカの立場は中立ではなく非同盟」

 

アルヴィン・ボーテス(南ア共和国、国際関係・協力担当副大臣)が南アの 新聞デイリーマーベリック紙へ寄稿したものです。

冒頭につけられたリードにすべてが表わされています。

戦争を防ぐことができるのは無条件の対話のみであり、いったん戦争が始まれば、それを終わらせるには交渉しかないという明確な立場を私たちは維持してきた。

 

もう一つ、欧米(の好戦派)を抑え込み、この戦争を終らせるイニシアチブは彼らにはなく、新興国にあると予測しています。だから南の諸国の標榜するのはたんなる中立ではなく、非同盟主義なのだと主張しています。

 

3.安斎育郞「ウクライナ戦争論集」

 

3月から5月にかけて書かれたウクライナ危機の背景についての論考です。A4で20ページ、そのまま本にしてよいほどの膨大な分量です。筆者の了解を得て転載します。

 

一読して、安斎さんの博覧強記ぶりに唖然とします。開戦当初から周囲のチャンネルと交信する中で、「プーチン憎しで固まってはだめだ、それで終わってはだめだ」という認識に達していること感服です。

 

 

. 木村知義「ウクライナから吹く逆風に抗して」

 

他誌に掲載されたものを、会員の紹介を得て転載します。

冒頭に「ウクライナでの戦火に向き合う際の原則」というものが提示されています。

 

(一)戦火を一刻も早く止めることが、何よりも優先されなければならない。 (二)そのためには軍事衝突の起源について誤りなく捉えることが不可欠。 (三)他国を武力によって侵し、支配することは許されるものではない。 (四)何よりも命が大切にされなければならない。
最低限これだけのことは前提として確認しておく必要があると思います。

 

5.大西広「アメリカの冷戦型覇権戦略と中国の経済的覇権戦略…ウクライナ問題の性格規定とも関わって…」

 

会員の大西広先生からの投稿です。

難しい論文ですが、アメリカの目指す新冷戦体制は、虚構に過ぎなくなる。第3世界は、つねに誰かを敵視し排除する欧米中心システムから離れ、早晩、相互に包摂する別の世界体制(中国をも含む)を形成し始めるだろうということかと思います。

 

624

AALA ニューズ 110号

ウクライナ特集 第11弾

 

引き続きウクライナ特集です。日本人論者の著作が3本、一気掲載です。心の襞まで分け入って「正義論」者の心を解きほぐそうと試みています。

 

1. 吉原功「ウクライナ̲日本メディアは何を見ていないか」

原題は「ロシアのウクライナ侵攻――日本メディアは何を見ていないか」です。「放送レポート」(大月書店)297号に掲載されたものを、著者のご承 諾を得て転載しています。

吉原さんは、明治学院大学社会学部名誉教授で、同大学国際平和研究所の客員研究員を兼任されています。日本ジャーナリスト会議(JCJ)代表委員で、日本 AALA 国際部員としてもご協力いただいています。

本論はジャック・ボーの「ウクライナの軍事情勢」にも触れながら、マイダン以降の経過と開戦に至る背景を丹念に解明していきます

 

2. Anatol Lieven「ウクライナ戦争を終らせる方法」その1

 

ネット雑誌 Current Affairs に掲載されたインタビュー記事です。Anatol Lieven は英国人政治ジャーナリストで、長年ロシアで現地取材をしてきた人です。

ウクライナ戦争を終わらせるには話し合いしかありません。問題はどのような態度で交渉に臨むかです。リーベンの冒頭発言は教訓的です。

モーゲンソーは、「政治家の基本的な任務の 1 つは、研究を通じて相手の立場に立つ能力を養うことである」と言いました。つまり「それが彼らの死活的利益であるなら、わが国の死活的利益は何か、どこで妥協できるのか」ということを考えることです。

このあと、かなり専門的な話が続くがちょっと我慢して読み進んでください。次号の続編を読むとき大事になります。

 

3. 安斎育郞「ウクライナ問題について」 その2

 

前号の続きです。

記事の中で面白い情報がありました。 

アメリカの保守系ウェブサイトが、「アメリカはウクライナ戦争の停戦を邪魔している。ワシントンはウクライナ人が最後の一人になるまでロシアと戦わせる」という見出しで、バイデン政権の好戦性を批判しています。

副題には「キーウは選択を迫られている。国民のために平和をつくり出すのか、それとも仮想の友人のために戦い続けるのか?」とありますが、アメリカを指すことはいうまでもありません。

 

4. 山崎洋「セルビアからみたウクライナ戦争」

山崎さんは、ベオグラードに在住する翻訳家、ユーゴスラビア研究者です。ご尊父はユーゴスラビアのジャーナリストであるヴケリッチさん。田中代表理事の紹介で、筆者の了解を得て掲載させていただきました。

これまであまり書かれてこなかった経過がしるされています。

問題の平和的解決のため、彼らの安全と自治を定めたミンスク議定書が成立したが、その取り決めは準軍事組織の妨害と、交渉から除け者にされて憤慨したアメリカの反対によって、実現しなかった。

ゼレンスキー大統領は和平を公約として立候補し、ロシア系住民の票も集めて当選した。就任後すぐドンバス視察に赴いたが、過激派の武装集団に追い返され、対話は実現できなかった。

 

5. 海老坂武「ウクライナの戦争に思うこと」

 

海老坂さんは昭和九年生まれで、フランス文学者・評論家。サルトル、フランツ・ファノンなどの研究者です。ここでは戦争体験に基づいた鋭い指摘がされています。アフリカ研究者の福田邦夫さん(明大)から中南米研究者の新藤さんを経て紹介があり、掲載します。

一言一言が叫びのように響きます。

NHKはそのゼレンスキーを英雄に仕立て上げた番組を流し た。国外亡命は拒否し「国民と一丸となって最後まで戦う」と語る「勇気」を称えている。しかし、「国民」を戦わせているのは大統領ではないのか。

自分は安全地帯に身を置きながら、戦えと命ずる政治指導者には吐き気を覚える。

こういう狂信的指導者に武器を供与する 欧米の指導者をどう考えるか。送り込んだ武器の効力が検証できる、ロシア軍の実力が測定できる、うまくいけばロシア軍の戦力を弱体化できると、さらには兵器ビジネスのチャンスだと 目論んでいるのかもしれぬが、それは戦争を長期化させるだけだ。

海老坂さんは返す刀で “情けない護憲派” をも鋭く批判する。中身は読んでのお楽しみ。

 


6.
「インドネシアはなぜ非同盟を選択するのか」

シンガポールで 6 1013 日に開催された第 19 回アジア安全保障会議に おける、インドネシアのプラボウォ国防相の発言全文です。

大国も参加する会議の性格上、かなり抑えられた表現ですが、

インドネシアは非同盟を選択しました。いかなる軍事同盟にも加わらないことを選択したのです。私たちは防衛を強化することを決意しています。私たちの展望は防衛的なものです。

と断言しています。

 

 

7月6日

AALA ニューズ  111

ウクライナ特集 第12弾

 


ウクライナ特集と名付けた最後のナンバーになります。もちろんこの後もウクライナ関連ニュースは続発していきますが、本来の
AALA地域関連のニュースをそろそろとりあげるべきだと判断しました。

今号のトップ記事はファイナンシャルタイムの記事(JUNE 23 2022)です。
欧米の対ロシア強攻策を煽っているのは英米メディアですが、それをヨーロッパ民衆の対ウクライナ連帯精神、言葉を変えれば果てしない対ロ憎悪が心情的に支えているという構図が続いています。それでは西欧民衆の対ロ憎悪がいつまで続くのかというのが、戦争の今後を占う上での一つのポイントとなっています。

 

1.FTEU は団結を保ち続けられるのだろうか」

ウルリケ・フランケ氏 が情報を提供しています。 原題は「ヨーロッパのウクライナ連帯は依然強力だが、果たして民衆は それを支え続けられるのだろうか?」 European solidarity with Ukraine has been impressive but can public support last となっています。

ヨー ロッパの 10 カ国で世論調査をしたのですが、そのデータは興味深い。

「戦争の主な原因は誰ですか?」という質問です。もちろん、大多 数のヨーロッパ人は、ロシアに責任があると答えます。しかし、イタリアや ルーマニアではほぼ 3 分の 1(イタリアは 27%、ルーマニアは 21%)が、 「戦争の責任は EU やアメリカ、ウクライナにある」と答えている。平和への最大の障害も、イタリアやフランスなどの国々では、「平和への最大の障害は実は西側だ」と答える人がかなりいるのです。だから、 もともとそんなに統一されていない。

ご承知の通りFT社は基本的にはもっとたたかえという立場だから、このような結果を憂慮しています。しかしメディアが金や太鼓で戦争を煽る割には市民の間には冷めた目があり、そのために各国政府は、今後板挟みになる可能性があることを示しています。

 

2.アナトール・リーヴェン「ウクライナ戦争を終らせる方法 2

前回の続きです。後半では具体的な提案が行われています。リーヴェンは、イギリスの著作家、ジャーナリスト、政策アナ リスト。ニュー・アメリカ財団上級研究員、キングス・カレッジ・ロンドン の国際関係論・テロリズム研究担当研究員です。(ウィキによる)

戦闘の今後として、最も危険な状況を予想しています。

もしウクライナが攻勢に出れば、ロシアは既存の陣地を守ることになり、ウクライナ人ははるかに大量の死傷者を出すだろう。

ウクライナがクリミアの奪還に乗り出せば、それは核兵器が使われるときだ。

ウクライナ港湾が封鎖されれば、エネルギー価格と世界的な食糧価格の上昇により、米国と世界は深刻な危機に見舞われる。

 

そのあと、質問者とのあいだに一問一答がかわされますが、主戦論者をねじり伏せるような論理が次々に展開されています。

そして最後が次のようなセリフです。

要は、ウクライナ国内に極度の政治的分裂があり、ゼレンスキーの裁量がきわめて限られていることであり、もう一つはヨーロッパ諸国は正直言ってもはや耐用年数が過ぎており、アメリカの召使いとして生きていくしかないと いう事実です。

そして、アメリカは、ウクライナでのロシアとの戦いにのめり込むことで、世界経済 の後退をもたらし、アメリカの同盟国の食糧価格高騰をもたらし、それに対 する国民の反乱をもたらし、世界中の地域を危険にさらしているのです。

ここにウクライナ戦争の本質があります、ここだけでもぜひ読んでほしいです。

 

 

3.浅井基文「ロシア・ウクライナ問題を見る視点」

「市民の意見」191 号からの転載です。会員からの紹介により掲載します。 PDF ファイルからの起こしのため、体裁の崩れが残っているかも知れませんが、ご容赦願います。

浅井先生からは転載のご承諾頂きましたが、“6 1 日発行の文章のため、多少、情勢に遅れているかも知れない” とのコメントを頂いております。おふくみ置きください。

 

ただし、“情勢に対する遅れ” というのは謙遜で、これまでの経過が簡潔に総括されていますが、まことに的確で、奇しくも最後の結論は前記の リーヴェン論文と軌を一にしています。

ロシア・ウクライナ戦争は泥沼化の様相を呈している。しかし、今も事態打 開・問題解決の可能性・道筋は存在する。ゼレンスキー政権が国民・国家の 安全と平和を最優先すること、アメリカ・NATO諸国がロシアの弱体化に 執着せず、ウクライナの中立性(NATO非加盟)を保障すること、この二 つを最優先する方針に切り替えてロシアとの外交的問題解決に本腰を入れれ ば、ウクライナ侵攻に伴う重い負担にあえぐロシアは必ずや積極的に呼応す る。問題の平和的解決のカギはアメリカが握っている。

 

. K.Hudson「平和・非武装が非同盟運動の核心」

The Bullet からの紹介です。もともとはイギリスの左翼紙「モーニングスター」Web 版に掲載されたもののようです。 核兵器禁止条約(TPNW)の成立への道すじが簡潔に描かれています。そし て非同盟運動がその推進力だと強調されています。

著者 Kate Hudson は、核軍縮キャンペーン(CND)の事務局長で、反核・ 反戦キャンペーンの第一人者です。

 

この論文の注目されるのは、今後このような戦争を起こさないようにする条件として、非同盟・中立に加え、非戦・非武装の考えを打ち出していることです。これは憲法9条をいだく日本国民にとっても真剣に考えなければならない課題だろうと思います。

ここでは、軍備一般ではなく核兵器保持問題に絞ってろんじられますが、当然その論理は軍備一般にも拡張できるものでしょう。

非武装運動は具体的な動きとしてはまだ見られませんが、論理としては非核地帯運動が相当します。それは互いの信頼と国際法遵守の立場にのみ依拠して地域の非核化を実現していっています。

それは非核運動の一環であると同時に非同盟運動の実践でもあります。さらに言えば日本国憲法前文の精神でもあります。

これらの運動の相互関係、発展様式についてはこれから議論が必要でしょうが、ぜひ定式化していきたいものです。それについては今回の12号にわたるウクライナ特集の記事が貴重な材料を提供してくれるのではないでしょうか。

ウクライナ紛争は未だ続いており、AALAニューズにも引き続き多くの論考が発表されています。以上のことを考えつつ、これからもご愛読をお願いいたします。

 

 

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