ぴっぽ さんという方が、「心に太陽を、くちびるに詩を」という連載を書いている。本日は16回目で、杉山平一「わからない」という詩が紹介されていて、なかなかいい。

ぴっぽ さんはブログを持っていて、そこで全篇が読める。といっても短いものだ。


わからない

お父さんは
お母さんに怒鳴りました
こんなことわからんのか

お母さんは兄さんを叱りました
どうしてわからないの

お兄さんは妹につっかかりました
お前はバカだな

妹は犬の頭をなでて
よしよしといいました

犬の名はジョンといいます


   ―『希望』2011年11月刊 より

ついでに作者の紹介も転載する。

  杉山平一 (大正3―平成24 1914―2012)
福島県会津若松生まれ。詩人・映画評論家。
東京帝大在学時に、詩誌「四季」に投稿開始。
三好達治に見出され、同誌に作品掲載。
1943年、第一詩集『夜学生』刊行。
30代から40代にかけ、生活上では、辛酸を舐める。
1966年(52歳)帝塚山大学専任教授となる。
2003年『戦後関西詩壇回想』で小野十三郎賞特別賞受賞。
2012年、最後の刊行詩集『希望』にて、第30回現代詩人賞受賞。
2012年、5月肺炎にて死去。享年97。

詩集に『夜学生』(1943)、散文詩集『ミラボー橋』(1952)、
『声を限りに』(1967)、『ぜぴゅろす』(1977)、『木の間がくれ』(1987)
『杉山平一全詩集(上下)』(1997)、『青をめざして』(2004)
詩文集『巡航船』、『希望』(2011)等。他、映画評論・詩論集等多数。
ぴっぽ さんは、次のような感想を書いています。

「わからない(わかってくれない)者」に対する、苛立ち。
これは、ある意味、負の連鎖。攻撃の連鎖。

けれど。妹は。
その連鎖を、勇敢に断ち切るのです。
妹は、犬を「いじめない」ことを選びます。
「よしよし」とむしろ、ほめたりします。

悲しみ、苦しみや、憎しみが
この世界に、あることは、百も承知だけれど。
そして。
きみが傷ついていることも、しっているけれど。

ぼくは、きみは、せめて。
それを、連鎖させないで、おこうよ。