ベートーヴェンを聴くにあたり、壮年期と熟年期の曲のどちらが好きかでかなり違ってくるだろう。
とくにピアノソナタと弦楽四重奏曲でそれが言える。
弦楽四重奏だとその違いは際立っている。私の好みで言えば後期よりラズモフスキーのほうがはるかに良いと思う。
ピアノソナタの場合難しいのは、中期の代表作がひとによって違うからだろう。子供の頃ベートーベンの三大ソナタといえば悲愴、月光、熱情だった。これでLP1枚にちょうど収まる。
しかし中期の代表作はそうではないと思う。例えば運命、ラズモフスキーにあたるのはワルトシュタインとテンペストではないか。
とくにテンペストはピアノソナタとしてわかりやすい。しかしワルトシュタインはどうも後期につながるところもあってわかりにくい。いろいろな演奏の仕方があると思う。
YouTubeで聞けるのは、アシュケナージ、シフ、グリンバーグ、バレンボイム、ツィマーマン…Steven de Grooteというのもある。
どれを聞いても帯に短したすきに長しという具合だ。
とにかくモーツァルトの延長では弾けないから、その上に何を持ってくるかだ。さすがに一流の演奏は音が綺麗だ。汚く弾かれるとげんなりだ。
なかではバレンボイムの演奏が一番しっくり来る。バレンボイムは「ワルトシュタイン交響曲」のピアノエディションを演奏しているようだ。ピアニズムを無視して指揮者のように演奏する。当然のことながら終楽章のコーダは音としては汚くなるが、それも含めて管弦楽の響きだ。その辺は想像しながら聴くしかない。
ツィマーマンはあくまでピアノの響きをもとめているようだが、残念ながら音源が貧弱である。グリンバーグはモーツァルトの延長として捉えようとするが、捉えきれないところにロシア臭さが顔を覗かせる。
シフはいつもの通り無味乾燥な音を聞かせてくれる。意外とアシュケナージが小味にまとめてきれいなワルトシュタインを聞かせてくれる。それにしてもこの遠目のデッカ録音、懐かしいなぁ。
まだバックハウスとゼルキンがあるぞ。アラウは聞く前からごちそうさま、今日はもう限界だ。