セロトニン受容体が賦活されるとどうなるのか


1.SSRIの薬理作用

ウィキペディアから

Selective Serotonin Reuptake Inhibitors、SSRI

というきわめて七面倒くさい名前が付いているが、要はセロトニン賦活薬である。

うつ病は神経伝達物質セロトニンが不足する病気だという考えから、じゃあ増やしましょうという発想である。

セロトニンが不足する原因は二つ考えられる。一つは一次ニューロンでのセロトニン産生の低下、もうひとつは二次ニューロンの受容体の感受性低下だ。

どちらにしても、セロトニンを全身投与してもどうにもならない。神経末端で効いてもらわなければならない。

そこで注目したのが一次ニューロンの末端にあるセロトニン・トランスポーターという装置だ。

220px-SSRIの作用

上は神経末端の模式図で、赤丸のセロトニンが遊出し、接続するニューロンの受容体に結合する過程を示している。

セロトニンは無制限に作られるわけではなく、生産スピードにも限りがあるから、再利用したい、そこで神経末端には回収装置が付いている。これが「セロトニン・トランスポーター」と名付けられている。(あまりいい命名ではない。リサイクラーとでもしてくれれば分かりやすいのだが)

本来はそういうことだが、うつ病ではそれが悪い方向に左右してしまう。分泌したセロトニンがレセプターと結合する前にそれを吸い取ってしまうのである。

だからこのリサイクル装置を一時停止すれば、シナプス間隙のセロトニン濃度を上げてやることができるだろうということだ。

そこでSSRIが登場する。彼はリサイクル工場の入り口のところに行って、そこを閉鎖してしまう。

ただ、言っては何だが、この手の絵はたいてい薬屋さんが描いていて、医者向けの宣伝に利用するので、本当にそうなのか?、それだけなのか?は疑っておいたほうが良い。

 

セロトニン受容体が賦活されるとどうなるのか

ということで、つまりは二次ニューロンのセロトニン受容体が賦活されるとどうなるのか、ということになる。

これは副作用とかいう以前の問題だ。またホルモン物質としてのセロトニンが増多するセロトニン症候群とも違う。

ところが、ここに的を絞った文章があまり見当たらないのだ。

仕方ないので副作用のページをめくりながら、それらしき記載を探していくことにする。

1.躁病の出現

SSRI服用中に躁状態になる人は実際にいる。理由については、薬が誘発したのだという説と元々躁うつ病だったから、自然経過で躁状態に移行したのだという説がある。

これは薬を止めてみれば分かる話なので、たいていは薬をやめても躁状態が続くようだ。

実際にはうつ病でない人にSSRIが投与されている場合がある。背景が多彩であれば症状も多彩となるだろう。

2.賦活症候群

副作用というより、これが薬理作用の本態かもしれない。

SSRIの投与初期や増量期に起こりやすく、セロトニンが一時的に急激に活性化され、刺激を受けることで起こると言われている。

ウィキペディアによれば、これは基本的には中枢神経刺激症状であり、不安焦燥感、衝動性、不眠、ムズムズ脚、敵意、衝動性、易刺激性、パニック発作、軽躁、躁状態を主徴とする。

悪化すると自傷、自殺企図に至ることがある。

これはセロトニンによる精神的薬理効果を、ネガティブな側面から評価すればそうなるということであろう。

しかし仲人口と同じで、ものはいいようだ。反応が素早く、頭の回転が早く、感受性が鋭く、決断力と行動力にとみ、いささかの逡巡もない。会議でも居眠りせず、問題があればゆるがせにせず、戦闘的で、しかも、朗らかだということになる。言うことなしだ。

「一般に賦活は副作用として見られているが、効果が過剰に出過ぎたという観点からもとらえられる」(青山メンタルクリニックのHP

最近、プラシーボを用いた「ランダム化比較」の臨床試験が行われるようになり、原病の徴候か、薬の投与によるものかの鑑別ができるようになった。

18歳以下の若年者では、SSRIによる自殺念慮、自殺企図、凶暴化が確認されている。18~24歳でも同様の傾向が確認された。

(ただしクスリ=悪者論を展開する論者には、とくに小児科領域では、しばしば極論を主張する傾向がある。我々もしばしば振り回された記憶がある)

これを受け米国FDAは18歳未満への使用を警告したが、それ以降に若年者の自殺死者数が増加している。


賦活症候群をめぐる社会問題

うつ病の薬を販売するために製薬会社のキャンペーンが行われ、SSRIの導入後、6年間でうつ病の患者が2倍に増えている。

日本においては、服用後に突然他人に暴力を振るうなど攻撃性を増したり激高するなどの症例が42件報告されている(2008年現在)

うつ病も賦活症候群も、社会的に見れば「困った人たち」だが、SSRIで賦活症候群となったうつ病の人は、「困ったX困った人たち」ということになる。

境界性人格など人格障害傾向を合併する一群で賦活が起き易いという報告もある。

賦活された状態になると衝動性のコントロールが不良となり、対人関係や社会生活上の様々な問題が生じて、病状も不安定になるため、あたかも人格障害のよう な行動異常が目立つようになる。

これは元来の性格傾向が賦活効果で修飾され、性格特徴の一部が強調されているのではないかと考えられる。(青山メンタルクリニックのHP

1999年のコロンバイン高校銃乱射事件では、犯行少年2人が大量のSSRIを服用していた。

(統合失調の初期像はうつ病と紛らわしい。統合失調の患者が経過中にうつを併発することもある。こういうケースにSSRIを投与するとどうなるか)


さて安倍晋三氏はいかがであろうか