田園洞人のDNA

4万年前の人骨で、東アジアの最も古い現生人類化石である。

精密な石器、埋葬儀礼、獣の牙の穴をあけたビーズなどの装飾品をもっていた。

Y染色体はハプログループK2b、ミトコンドリアDNAはハプログループBに属する。

というのが検討材料である。


Y染色体ハプロの検討: K2bの由来


1.ハプロKの由来

Y染色体ハプログループ(型集団)の分類で、N、O、Q、Rなどの祖先に当たる。47,000年前にアフガニスタン周辺でハプログループIJKから誕生した。

ハプログループKは比較的若い系統であるにも関わらず、非常に多くの人々の共通祖先となっている。全男性の50%以上がハプログループKの子系統に属すると言われている。


2.ハプロK2bの由来

KのうちK2aがNとOに分かれ、アジアに広がっている。現在の分布から遡ると、Nが北方、Oが南方から東アジアに進出していると考えられる。

もう一つの大グループがK2bである。本グループの主体はPに引き継がれ、PはQとRに分かれ大きく拡散している。

Qは中央アジアからシベリアに分布、Rはいわゆる印欧語系民族の分布と概ね一致する。これらの共通祖先と考えると、4万年前に中央アジアを起点に東西に一気に拡散したと考えられる。そして北京のK2b人はやがてP→Q人へと分岐していくポテンシャルを持った人々ではないかと考える。

K2にはほかにc,d,e があるがとりあえず傍流として無視する。

K
LT(K1)

L: パキスタンインド西部、アフガニスタン

T: エチオピアソマリランドアルプス地域エーゲ諸島で比較的高頻度。

K2
K2a

N: ヤクートフィン系民族で高頻度。古代のサンプルでは仰韶文化紅山文化、古代ハンガリー人支配層、匈奴、そして(O2と混合した形で)夏家店下層文化で観察される。日本人にも一定の頻度で存在。

O: 東ユーラシア最大系統。内容略

K2b
P

Q: トルクメン人, アルタイ人, シベリア極東 , アメリカ先住民。古代サンプルではモンタナAnzick、古グリーンランド人、西戎モンゴル地方

R: 西ユーラシア最大系統。インド・ヨーロッパ語族と関連。ヨーロッパ全域で一般的に見られる。

MS

M: パプアポリネシアメラネシアでみられ、オーストラリアでは非常に低頻度

S: パプア、メラネシア、オーストラリアでみられ、ポリネシアでは稀。

ウィキペディアより


ミトコンドリア
DNA
ハプロの検討: ハプロBの由来

ハプログループNの子系統 “R11'B” を祖先に持ち、B4、B5、B7などに分岐する。

約4~5万年前にアジアで分岐し、東南アジアやポリネシアなどといった南方に広まったとされる。

B5系統は華南を中心に分布している。B4系統は台湾、フィリピン、太平洋島嶼を中心に分布。アメリカ大陸の先住民族からも検出されている。その拡散形式はオーストロネシア語族の拡散と関連している。

東アジアにも高頻度で分布し、日本人に占める割合はB4(9.1%)、B5(4.3%)である。縄文人骨の解析などからも確認される。


以上から得られる推論

田園洞人は、男性側が北方ルートで中央アジアから西域経由で進出したグループで、先住した南方系のグループを支配し、その女性たちと交雑し混血したと考えられる。

征服されたハプロB グループは、Y染色体ハプロではC1グループに相当する。

ただ、征服したK2bグループもふくめ、田園洞人はその後増殖することなく絶えていったと考えられる。

その代わりに進出したのが、南方経由のO1、O2人である。これにより、女性のハプロBも中国本土からは消滅した。

本来のミトコンドリアDNAハプロと照応する男性集団ハプロC1は、女性のハプロBとほぼ同程度の頻度(1割弱くらい?)で日本人の中に残存している。このことからK2bグループは日本までは到達していないのではないかと考えられる。

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