11日の日経3面に「アリババと政府 緊張なお」という記事が掲載された。

アリババそのものには興味はないが、習近平の締め付けの第一波=党幹部の粛清に続いて、今度は経済界に粛清の波が広がっていくのか?という関心はある。

このたび中国政府がアリババ集団に対して3千億円(日本円換算)の罰金を科した。昨年の第1四半期純利益の12%に当たると言うから、額としては驚くほどのものではない。

問題は罪の中身で、「独占禁止法違反」というものだ。これはまったく政策転換というほかない。これまで政府はアリババを支援して巨大化を促してきた。いわば政府が率先して独禁法破りをしてきたことになる。

さらに独禁法の適応がアリババを狙い撃ちして行われていることも明らかだ。最近、テンセントやバイドゥにも罰金刑が課せられているが、最大でも数千万円にとどまっている。

なぜアリババが習近平に狙い撃ちされたか。日経特派員は3つの理由を上げる。

一つは本業におけるテナント(出店者)への締め付け、つまりは下請けいじめだ。今回の独禁法違反は主にこの点に関わっており、極めてわかりやすい。
だが、日経記者は「これは表向きの理由だ」ととる。

第二は、アントグループの暴走だ。アントはアリババの設立した金融企業である。普通の銀行とは違い直接預金を扱うのではなく、融資を銀行に仲介し手数料を取るという仕掛けになっている。このため銀行法や各種金融関係法令の支配を受けない。

さらにアントが注目されるのは、最大のスマホ決済サービス・「アリペイ」を保有していることだ。これを通じて膨大な庶民キャッシュのフローの主流を把握している。

その「事実上の集金力」は金融業界に大きな影響力を発揮し、ひいては国有銀行を含む既存金融のガバナンスを脅かすものとなっている。

第三の理由は、かなり生臭いが、江沢民を先頭とする上海閥への攻撃という意味合いも持っているとされる。来年の党大会で無期限の終身指導者になることを目指している習近平にとっては、上海閥はぜひとも抜いて置かなければならない棘であろう。

これら3つの理由を考えると、習近平はかなりの決意を持ってアリババ潰しにかかってみるべきだろう。今回の賠償額は少ないが、引き続き第二、第三の矢を放ってくると考えておいたほうが良さそうだ。