違和感を覚える「国民統一政府」構想
軍により追放されたスー・チー派国会議員を中心に、「国民統一政府」が構想されているようだ。
代表のミン・コー・ナイン氏は、国民の意志が挙国一致内閣の優先事項であると述べた。
そして民主化運動と自治を求める少数派コミュニティの間の目的の統一を強調した。
そして少数民族のメンバーと抗議指導者を含む役職者のリストを発表した。
スーチーは国家顧問としてリストされた。この件で彼女とは連絡が取れていないが、彼女は何が起こっているのかを知っていると確信していたと述べた。
主な目的の1つは、国際的な支持と認識を獲得することである。
国際協力大臣であるササ博士は、こう語る。
私たちは民主的に選出されたミャンマーの指導者です。だから、自由で民主的な世界が私たちを拒絶するなら、それは彼らが民主主義を拒絶することを意味します。米国などの国は、ベネズエラの現政府を違法と判定し、野党指導者フアン・グアイドをその国の合法的な指導者として認めました。同じようにわたしたちも承認されるべきです。
元国連大使を含む国際的な専門家グループであるミャンマー特別諮問委員会は、NUGの創設を歴史的なものとして歓迎し、それは合法的な政府であると述べた。
これが目下わかっている情報である。これではバチェレ国連人権担当官が恐れる国際勢力の巻き込みと、「紛争のシリア化」というシナリオそのものではないか、と危惧する。
闘いの目標は「人権」という抽象的命題にあるのではない。軍による虐殺という事態を中断させること、虐殺が当然のこととして許されるような無法状態を停止することだ。決して軍の転覆でも「市民革命」でもない。まして欧米流の人権尊重社会を作ることでもない。
そのためには当面どうしても軍との妥協が必要になる。
選挙方法の再検討は必要であり、とりあえずインパニッシュメントは保障しなければならない。非武装の市民を虐殺したことについての真相究明は必須である。
サスペンス映画ではないが、追い詰められた犯人が人質を盾に立て篭っている。彼らにどのように銃を置かせるかの問題だ。
大事なことは、この妥協が88年以来の戦いの歴史の中で明らかな前進となることの確認だ。この妥協は軍部のお恵みではなく、闘いの中で勝ち取った確実な前進となる。
この妥協を少しでも実りあるものとするためには、ミャンマーに影響を及ぼすすべての国の意思統一が必要だ。はっきり言えば中国と日本が合意し、和平の枠組みを提起する。ASEAN諸国は当事者として作業の進展を支える。こういった構図が必要となる。
出口と展望を示すことが、なによりもミャンマーの民衆を鼓舞することにつながると思う。
繰り返すがこれを人権問題に絞り込む発想、軍部主敵論、米中対立の地政学、経済制裁一辺倒の北風政策は問題解決にならない。中長期の課題は明確に分けながら議論をしていくべきである。
そこに日本の出番があるのだろうと思う。
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