アンモニア再論

下記の記事を下敷きにした記事です


アンモニアを燃料に使うというのは、「1万円札も燃料になります」という議論だ

前回も日経新聞からアンモニアのエネルギー利用を取り上げたが、結局尻切れトンボに終わった。

前回のテーマは石炭火発でアンモニアを混焼燃料として用いるということだったが、そもそも石炭火発という時代遅れな装置では読む気が起きない。

いくつかネットの記事もあたったが、「使えますよ」という記事ばかりだ。

製造コストの高さから見ても、「とてもこれは使えないな」という印象だった。

今度の記事は、アンモニア製造に自然エネルギーをくみこむことで、環境保全に役立てようということで、アンモニア燃料計画が「下りの技術」とすれば、こちらは「上りの議論」になる。

8日の日経の科学技術面。
見出しは三本
アンモニア製造も脱炭素
再生エネ活用、原料は空気と水
秋田・ラオスで実証へ

アンモニアは大事な化学原料

最初に驚いたのだが、世界のアンモニア生産量は年間1億8千万トンだそうだ。

合成繊維や化学肥料の材料だということで、そう言えばむかしグアノ(鳥糞)が輸入できなくなったドイツが窒素の固定法を発明して、肥料を字まかないできるようになったというふうな話を聞いたことがある。

これが「ハーバー・ボッシュ法」というのだそうで、20世紀はじめから現在まで使われ続けている。

これにもびっくりする。多量の水素を準備した上で、高温・高圧下で空中の窒素と反応させるのだそうだ。そのまんまである。

1世紀も前の技術をそのまま使っているのだから、ほとんど奇跡的だ。

水素3個と窒素1個が化学反応してアンモニアになるには大量の天然ガスが必要だ。

記事によるとアンモニア生産のためのエネルギー消費は世界のエネルギー消費の1%にも達するそうだ。それだけの天然ガスを燃やすと、世界のCO2排出量の3%を超えるそうだ。

アンモニアを燃やして燃料代わりにするという議論が、いかに本末転倒かがわかる。

アンモニアを板に効率よく生産するかが最大の課題なのであって、それをただ燃やすというのは、1万円札を燃料にするのと同じことではないか。


アンモニア生産の新技術

そうするとこちらもがぜん熱が入る。

課題は多分二つある。膨大なエネルギーを再生可能エネルギーでどう賄うかとういのが一つ。
もうひとつは、化学反応だから、なんとか効率の良い触媒を開発できないかということだ。

この記事の特徴は、情報を突っ込みすぎているために、「なぜ」というところをすっ飛ばしていることだ。しかしまさにそこが知りたいところなのだ。この辺が文系と理系の違いなのだろうか。

まず最初の課題、これは再生可能エネルギーを加水分解に利用し水素を作ることだ。これは世界中で今取り組んでいる課題で、液化水素を天然ガスのように使おうとする計画だ。

水素を産生するだけでなく、さらにその水素を使ってアンモニアを作ろうという研究も、それなりに進んでいる。

それなりにと言うのは、水素をアンモニアに変換すると、エネルギー効率が格段に上がり、輸送効率や各種設備のサイズダウンが可能になるのだが、問題は現在の生産方法だと再生可能エネルギーには荷が重すぎるということだ。

そこで、決め手となるのはやはり触媒の開発だ。ある意味できわめて20世紀的な技術ということになる。


新触媒 エレクトライド

日経が取り上げているのは、東京工大の細野らが開発した「エレクトライド」という触媒技術だ。

ただしこれについては「セメントの構成成分からない、低温・低圧で合成できる」という以外に説明はない。おそらく酸化・還元工程を含むのだろうが…

すでにこの化学工場と水力発電をコンバインさせたプラントがラオスで建設予定になっているそうだ。

その他に同じ東工大の原らのグループが開発した触媒も紹介されている。

こちらの方は「カルシウムや貴金属のルテニウムなどからなり、50℃未満でアンモニアを合成できる」のだそうだ。こちらのほうがいかにもそれっぽい。ただしなんとなくお正月用のヨイショ記事に見えなくもない。


アンモニアは炭化水素と並ぶ川上資源

とにかく炭酸ガスに目を奪われる発想ではなく、アンモニアを資源サイクルの起点として見ていく視点が必要だろう。

前回のアンモニア記事にはそこが欠けていて、それがわかりにくさをもたらしている。今回の記事も煩瑣な点では同じだが、この視点が定まっているだけ、読み解き可能である。

さらに続報を期待したい。