最近、新聞の経済面にしばしば登場する言葉が“K字回復”。言うまでもなくv字回復のもじりだ。
最初の縦棒はv字の下行脚に相当する。そこで谷底まで到達したあと、今度は右肩上がりの斜線へと続く。
これだけなら歪んだv字に過ぎないのだが、上り坂の中ほどで斜め下に向かう支線が発し、その線は最初の谷底まで転落して終わる。

要するに景気には浮き沈みがあって、それは今まで続いてきたのだが、それが最近は、そのように単純ではなくなったということだ。
落ちるときは、皆もろともに落ちるのだが、上がるときには勝ち組と負け組には別れてしまうということだ。

ただし、このグラフの縦軸は生産量とか利益というのではなく、所得というところがミソだ。

あくまでもモノの例えだから、あまり細かく詮議立てすると、いろいろ矛盾が出てくるが、結論から言うと所得の源泉が勤労所得と資産所得にわかれるところに股裂きの理由がある。

しかもそれが物質財と貨幣財の比率が乖離し、貨幣発行量が野放図に増加するほど、この傾向が顕著になるということだ。

勤労所得は、基本的には増減ともに等差級数的に推移する。これに対し資産所得は、預金や投資から得られる所得だから、複利でねずみ算的に増えていく。

この差が時間軸(横軸)とともに大きくなり、乖離するようになる。これが“K字回復”の機序である。つまり、このグラフの縦軸は所得ではなく、所得の対数である。

単純にいえば「バブル経済」の構図だが、バブルが信用の野放図な膨張であるのに対し、こちらは通貨供給の増加という裏づけを持っているだけ厄介だ。戦時経済にも似ている。

なお、所得ではこのグラフが成立するが、実体経済と金融市場の利益率の乖離も同じグラフで説明できるかどうかはわからない。市場ポートフォリオの再編や、政策介入、通貨事情の干渉が無視できないからである。