このシリーズはとりあえず以下の5本です

著作権の件では全く問題ないだろうが、「桂七福のホームページ」からの転載いささか気が引けるが、この際ご容赦を。

なお桂七福さんは上方落語の噺家さんで、徳島県に在住されているようです。「人権落語・健康・福祉を主旨とした講演活動が大好評」だそうで、お近くの方はご利用されたらどうでしょうか。


十郎兵衛住家の段

…「順礼に御報謝」と、言ふも優しき国訛。
 「テモしほらしい順礼衆、ドレドレ報謝進ぜう」と、盆に白米の志、

…「可愛らしい娘の子、定めて連れ衆は親御達、国はいづく」
と尋ねられ、
 「アイ、国は阿波の徳島でござります」
 「何ぢや徳島、さつてもそれは、マア懐しい。わしが生れも阿波の徳島、そして父様や母様と一緒に順礼さんすのか」
 「イエイエ、その父様や母様に逢ひたさ故、それでわし一人、西国するのでござります」
と、聞いてどうやら気にかゝる、お弓は猶も傍に寄り、
 「ムヽ、シテその親達の名は何というぞいの」
 「アイ、父様の名は十郎兵衛、母様はお弓と申します」と、聞いて吃驚り、…

見れば見る程幼顔、見覚えのある額の黒子、「ヤレ我子か、懐しや」
と言はんとせしが、…

ここからがおつうの口説き。
 「イエイエ勿体ない、何の恨みませう。恨みる事はないけれど、小さい時別れたれば、父様や母様の顔も覚えず、余所の子供衆が、母様に髪結うて貰うたり、夜は抱かれて寝やしやんすを見ると、わしも母様があるならあの様に髪結うて貰はうものと、羨やましうござんす。…
 「イエイエ、恋しい父様や母様、たとへいつ迄かゝつてなと、尋ねうと思ふけれど、悲しい事は一人旅ぢゃてゝ、何処の宿でも泊めてはくれず、野に寝たり、山に寝たり、人の軒の下に寝ては、た、た、叩かれたり。怖い事や悲しい事も、父様や母様と一所にゐたりや、こんな目には逢ふまい物を、何処にどうしてゐやしやんすぞ。逢ひたい事ぢや逢ひたい事ぢや、逢ひたい」
と、わつと泣き出す娘より…
junreika

次は、おつうの死骸を抱いて嘆く女房の口説き…

 「コレ娘、これ程酷い親々を、よう尋ねて来てたもつたの。一人旅では泊め手はなく、野に寝たり山に寝たり、怖い事や悲しい事も、父様や母様に逢ひたさ故と言やつた時はノコレ、悲しうて悲しうて、身ふしも骨も砕くる様にあつたれどナア…