このシリーズはとりあえず以下の5本です


五木の子守唄と巡礼おつるの物語

巡礼歌と聞いて思い出すのは、「ととさんの名は十郎兵衛、かかさんはなんとか」という語り。

なんで覚えているかはわからない。多分チャンバラ映画で覚えたのだろう。たしか「鳴門秘帖」という映画があって、多分シリーズ物だったろう。

70過ぎの私ですらこんな有様だから、若い人にはさっぱり分かるまい。

徳島新聞(電子版)に分かりやすい解説があったので紹介する。
2017/11/20
1月11日 この文章をアップ後、直接台本が読めないだろうかと探した所、桂七福のホームページから閲覧できることが分かりました。ただしこちらは阿波浄瑠璃ではなく上方浄瑠璃の台本のようです。題名は同じですが段名が「十郎兵衛住家の段」となっています。細部も若干異なるかも知れません。
こちらは別記事としてアップしましたのでご覧ください。

徳島の伝統芸能である阿波人形浄瑠璃。その代表的な演目が「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」。

ととさんの名は十郎兵衛、かかさんはお弓と申します」のフレーズでおなじみです。

「傾城阿波の鳴門」は「時代物」の作品で、阿波徳島藩のお家騒動を描いています。10段で構成されていて、「順礼歌の段」は8段目です。

 ◆あらすじ
阿波徳島藩のお家騒動に絡み、主君の命を受けた十郎兵衛は、幼い娘おつるを祖母に預け、妻お弓とともに名を変え、盗賊に身をやつして大阪に潜んでいました。

順礼歌の段
 ある日、大坂の家に巡礼姿の女の子が訪ねてきます。お弓は言葉を交わすうち、娘のおつるだと分かります。
お弓は、おつるに国元に帰るよう諭しますが、おつるが去った後に思い直し、慌てておつるの後を追います。

偶然おつると出会った十郎兵衛は、我が子とは知らず、所持金欲しさに絞め殺してしまいます。そのあとお弓から、女の子が娘のおつるだと聞き、二人は悲嘆に暮れます。
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その後十郎兵衛夫妻はおつるの死骸もろとも隠れ家に火をつけ、徳島へ帰参します。さして最後は無事に国次の刀を取り戻したのでした。

 ◆「順礼歌の段」見どころ
「自分を祖母に預けてどこにいるか分からない両親を探して西国巡礼している」と聞いたお弓は、両親の名を尋ねます。

「ととさんの…」という有名なせりふは、その問いに答えたものです。
おつるは「同じ年頃の子どもが母親に、髪を結ってもらったり、抱かれて寝たりするのがうらやましい」「一人旅なので宿に泊めてもらえずに野山で寝たり、軒先で寝てたたかれたりすることもある。親がいればこんなつらい目に遭わないだろう」と語り、両親に会いたいと切々と訴えます。

お弓は悩みに悩んだ末、国元へ帰るように諭しておつるを帰します。おつるの両親を恋う気持ち、お弓の愛情と葛藤が胸を打ちます。
これに思い当たったのです。
私でさえおぼろげに話を知っていたのですから、明治大正の頃に人吉の花街で巡礼おつるの話を知らない人はいなかったと思います。

「一人旅なので宿に泊めてもらえずに野山で寝たり、軒先で寝てたたかれたりすることもある」という下りは、まさに五木の子守唄の情景そのものです。

悲しみや辛さの、あくどいまでのてんこ盛りは、浄瑠璃のいわば常套手段です。虫けらのように軽視される命という巡礼観も底を流れています。

巡礼歌の歌詞は、この話がひとつの下敷きになっているのではないかとも思えるのですが、いかがでしょうか。