バイデン政権はこのままでは持たない
(フィナンシャル・タイムズ評論員)


1.多様性の尊重とマイノリティーの権利尊重とは異なる

バイデンは組閣に当たり「多様性」を強調してきた。しかし左派がもとめているのは多様性ではなく、多様な人々の権利の尊重だ。

ただし、それは共和党が多数を握る上院では拒否されるだろう。バイデンは共和党との妥協の道を探るほかないし、急進派はそれを渋々受け入れざるを得ない。

それに、左派にとって多様性よりはるかに重要な問題がある。それは富裕層の懐に手を突っ込み、貧困層の人権と未来を保障し、政治的平等の土台を再建することだ。

それなしの目くらましの多様性では、さらに民主党への絶望は深まるだけだ。


2.2・3位連合のもろさ

選挙の結果が示すのはバイデン政権が2・3位連合政権だということだ。

1位はトランプであり、2位がサンダースを先頭とする民主党左派、3位がバイデン派だということだ。

政治力学から見れば、3位の候補が勝者となるのはきわめて不自然である。バイデン=左派連合はきわめて不安定な連合であり、むしろ終わりの始まりとして理解すべきものだ。

議会選挙ではこの傾向が一段と鮮明になっている。

民主党は下院で微減、上院で微増となっている。
しかし、その内容を見ると、バイデンに代表される民主党主流派が惨敗し、左派候補は接戦を勝ち抜いている。これはサンダース自身が指摘したとおりである。

FT紙も言っている。
…つまり、バイデン氏は勝ったが、民主党としては負けたのだ。


3.民主党への絶望

FTは選挙と同時に各州で行われた住民投票をレビューし、次のような結論を引き出している。
国民はマイノリティー問題より国民全体に関わる経済問題に力を入れるよう政治にもとめている。
ということだ。
民主党の大敗の理由は明らかだ。

民主党は白人の労働者階級(高卒)が貧困問題に直面しているのに、彼らを人種差別主義者だと切り捨てたからだ。

民主党は人種差別反対を掲げるだけで、非白人の貧困克服・生活向上の課題に取り組もうとしなかったからだ。

非白人層についてのFT紙の以下の論及はきわめて印象的である。
大量の非白人票がトランプに流れた。ヒスパニックとアジア系では3分の1が、アフリカ系の男性ではほぼ2割がトランプに投票した。
彼が人種差別的な言動を繰り返したのにである。民主党はどこかに問題がある。


3.民主党の再建は可能か

FTは次のように提起する。
重要なのは共和党が非白人層を取り込むより早く、民主党が白人労働者階級の支持をとり戻せるかどうかだ。
新政権と民主党の命運はそこにかかっているだろう。


12月16日 フィナンシャル・タイムズ(21日日経新聞「米新政権、命運にぎる政策」より引用)