1.ボルソナロ旋風と左翼の退潮

2018年にジャイール・ボルソナロの巻き起こした極右旋風は、13年間の統治が崩壊した後、左翼に致命傷を与えたように見えた。しかし、モニター心電図はこの度の地方選挙のあとモニター音を発し始めた。

10年ほどまえ、ブラジル左翼は無敵に見えた。労働者党(PT)のカリスマ的な指導者ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバは、活況を呈する経済を統括した。そして世界で最も不平等な国の1つ、ブラジルで貧困を削減した。バラク・オバマはルーラを「地球上で最も人気のある政治家」と呼ぶほどだった。

しかし2016年に早送りすると、状況はひっくり返った。ルラの後継者であるジルマルセフが弾劾され、ルラ自身が巨大な汚職計画を実行した罪で起訴された。

その年、PTは地方選挙で統治していた630都市の半分以上を失った。有権者は2年後もふたたび怒りを爆発させた。それはボルソナロに力強い勝利をもたらした。

2.11月の一斉地方選挙の示したもの

先週の日曜日の選挙は、それ以来最初の選挙だったが、左派の盛り返しはなくむかしの残骸が僅かに残っただけだ。

しかし、ボルソナロにとってもそれは大敗北だった。ボルソナロ派市長相補13人の候補者のうち当選は2人だけだった。
彼が支持した45の市議会議員候補のうち、わずか9人が勝っただけだ。

両者に代わって、有権者は伝統的な中道派と中道右派の政党を選んだ。
国民は、2018年の二極化した急進化から脱却する道を選んだ。


3.左派陣営における主役の交代

一方、選挙はブラジルの進歩主義者に希望のひとかけらを与えた。それは労働党ではなかった。驚くほど強力な結果は、党の枠から外れた新世代の若い左派にもたらされた。

サンパウロでは、ホームレス労働運動(MST)の38歳のリーダーであるギレルメ・ブーロス(Boulos)が、中道右派のブルーノ・コバス市長と対抗して予備選挙に挑戦した。

社会自由党(PSOL)から立候補したブーロスは、ボルソナロ派候補とPT候補の両方を上回り、コバスの得票33%に対して20%を獲得した。

彼の得票数の急成長は、左翼のお祝い騒ぎを引き起こした。しかしそれは労働党(以下PT)のためのお祝いではなかった。サンパウロこそはルーラの最も堅固な要塞であったはずなのに、PTの損失はさらに屈辱的だった。

ブラジリア大学の政治学者であるフラビア・ビローリ氏はこういう。
サンパウロ市長選で決選投票に非PT左翼のブーロスを迎えたことは、本当に象徴的だ。なぜならサンパウロは、PTが全国政党へと上りはじめた場所だからだ。

PSOLは、PTからの逸脱組織として2004年に設立された。2つの市長選挙で勝利し、統治する都市の数は4つに増えた。そして今度の地方選では、サンパウロと他の2つの都市で決選投票に進出した。

南部のポルトアレグレでは、ブラジル共産党(PC do B)の新星政治家マヌエラ・ダビラ(39歳)が決選投票に勝ち残った。彼はここではPTの支援を受けた。

他にも2人の青年左派がいる。東北部レシフェの町で決選投票に進出したのは、二人の若者だった。一人は中道左派のブラジル社会党(PSB)から立候補したジョアン・カンポス、26歳だ。もうひとりはPTのマリリア・アラエス、36歳である。


3.分裂した左派戦線、その理由

ブラジルの政治通の多くは、ブーロスをルーラの後継者と見なしている。ルーラはすでに75歳だ。しかも彼にはさまざまな汚職スキャンダルがまとわりついており、それがイメージをひどく傷つけている。

バルガス財団のクラウディオ・コート教授はこう述べる。
ルラは、ブラジルの政治において依然としてビッグな存在です。
しかし、彼は政治的には落ち目の状態にあり、いっぽう新世代の代表ブーロスは、上昇気流に乗っています。
PSOLは女性の権利、人種平等、LGBTの問題などについて、若い有権者と接点を持っている。この点ではPTよりも優れている。


4.「野党は共闘」しなければならない

しかし、左派が次の大統領選挙でボルソナロを打ち負かしたいのであれば、団結することを学ばなければならない。これは広範なコンセンサスとなっている。

PTを長年にわたって指導してきたEduardo Suplicyは、左派が候補を一本化するための予備選挙を望んでいる。

彼はこう語る。
2022年の大統領選挙に向け、野党が統一候補を立てて闘うことが決定的に重要です。いま、みんながそのことを熟考する必要があります。

ポーラ・ラモン記者による