外環道工事現場の直上で陥没が起きたというニュースは、人類にとって未知のできごとだったのではないか。
多分これまで、鉱山や砕石現場の近くではこれまでも起きていただろうが、それは縦横斜めと掘りまくった上での話だろう。
しばらく前、福岡の駅前通りで道路が陥没したが、あれは地下の浅い部分の崩落だった。
大深度でトンネルを掘る程度の土砂持ち出しが、土砂の陥没を起こすとすれば、それはどういうメカニズムによるのだろうか。
やはり一番気になるのは南アルプスの真下を突っ切るというリニア新幹線のことだ。
少し調べてみる
まずは経過を時系列に並べてみる。(主に日経XTECH記事+東京新聞より作成)
2007年 都内部分、地下40mより深い大深度トンネル方式へ変更し工事を開始することとなる。すでに埼玉県と千葉県内の約50kmが完成。現在は東京都内の工事が進んでいる。
2916年 大泉区間の工事費を再評価。1兆7千億円と大幅に膨らむ。
2020年
7月 さらに工事費の値上がり。国土交通省関東地方整備局の試算で2兆4千億と、当初の2倍近くに達する。事業費増大の主な要因は、中央自動車道と接続する中央JCTの地中拡幅部の工事。
当初は馬てい形の断面を想定していたが、円形断面に変更し、施工中の耐力を確保することとなる。
また工事で使う空気の一部が地上に漏出したのを受け、空気不使用の方法に変更した。
9月14日 事故現場直下47メートルをシールドマシンが通過。
東京新聞の取材: 通過前後の10日間、毎朝9時半から夜7時まで10日間揺れが続いた。スマホの震度計アプリで震度2ないし3の揺れ。
現場周辺の計10軒で、外壁のタイルがはがれたり、ブロック塀にひびが入るなど被害が続出。
現場の地下地盤には、礫の割合が高かったため、他工区に比べ振動が大きくなったと考えられる。
10月26日 東日本高速道路の小畠徹社長が記者会見。「大深度での掘進が地表に影響を与えるとは全く思っていなかった」と述べる。「原因調査に伴うご迷惑」に対して陳謝。
11月2日 東日本高速が付近でボーリング調査を実施。現場から北に約40mの場所で、地下5m付近に空洞の可能性がある事が判明。
11月3日 ボーリング孔から3次元レーザースキャナーやカメラを使って空洞内を調査。
11月4日 地表面から約5mの深さに幅約4m、長さ約30m、高さ約3mの空洞ができていた。空洞内では、深さ1m程度まで地下水がたまっていた。
空洞形成のメカニズムは、蓄積された地盤の体積が振動により縮小したためと考えられる。
空洞の上には、地下2.5~5mの位置に硬い粘土層があり、粘土層の粘着力は十分な地耐力を持つものと判断。
11月5日 東日本高速が有識者委員会を開催。緊急対応は必要ないが、空洞を充填することが望ましいと判断。
11月6日 NEXCO東日本などが調布市内で周辺住民向けの説明会。報道陣には非公開で住民約90人が参加。住民からは「このまま工事を続けるのか現実的な説明はなかった」との声。
原因は一種の液状化
ということで、当初予測した「土砂の持ち出しによる表土の落込み」というメカニズムではなく振動による、「土砂の引き締まり」が一種の「液状化」に類似した副作用をもたらしたということだ。
振動による地盤の体積縮小+地盤中の空気貯留→空洞形成というメカニズムは、それ自体はかなり重大な事故である。
実はこのような事象は、2年前の北海道の大地震でも経験している。札幌市内の新興住宅地で造成された土地が地下の液状化のために陥没した。真下を地下鉄が通る東16丁目通りでも数百メートルにわたって地表が陥没した。
「大深度」信仰の破綻
「大深度での掘進が地表に影響を与えるとは全く思っていなかった」というのが工事監理者の率直な感想、あまりにも率直な感想である。
結論からいえば、地下40メートルというのは「大深度」には当たらないということだ。そのことに対する「想定」がなかったわけだ。
それは、今後の工事のあり方にも関わる深刻な問題である。
超大深度なら安全か?
超大深度で掘削するリニア新幹線では、このメカニズムは地表の陥落のような重大合併症には直接つながらないように思える。分母があまりにも大きいからだ。
原因は一種の液状化
ということで、当初予測した「土砂の持ち出しによる表土の落込み」というメカニズムではなく振動による、「土砂の引き締まり」が一種の「液状化」に類似した副作用をもたらしたということだ。
振動による地盤の体積縮小+地盤中の空気貯留→空洞形成というメカニズムは、それ自体はかなり重大な事故である。
実はこのような事象は、2年前の北海道の大地震でも経験している。札幌市内の新興住宅地で造成された土地が地下の液状化のために陥没した。真下を地下鉄が通る東16丁目通りでも数百メートルにわたって地表が陥没した。
「大深度」信仰の破綻
「大深度での掘進が地表に影響を与えるとは全く思っていなかった」というのが工事監理者の率直な感想、あまりにも率直な感想である。
結論からいえば、地下40メートルというのは「大深度」には当たらないということだ。そのことに対する「想定」がなかったわけだ。
それは、今後の工事のあり方にも関わる深刻な問題である。
超大深度なら安全か?
超大深度で掘削するリニア新幹線では、このメカニズムは地表の陥落のような重大合併症には直接つながらないように思える。分母があまりにも大きいからだ。
しかしリニア新幹線でも間違いなく、この「地塊収縮現象」そのものは発生する。しかもかなり大規模にだ。
長期的に考えると、この空洞形成が間接的に地下水脈に悪影響を与え、水脈のありようを変化させる可能性がある。そしてその帰結が、環境破壊や想像もできない重大事故へと結びつく可能性は否定できない。
長期的に考えると、この空洞形成が間接的に地下水脈に悪影響を与え、水脈のありようを変化させる可能性がある。そしてその帰結が、環境破壊や想像もできない重大事故へと結びつく可能性は否定できない。
なにせ「想定外」なのだから…
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