が意外な好評を博している。Hoick さんのサイトで書かれている歌詞に対する「居心地の悪さ」が、どうも私を含めたみんなに共通しているようだ。

かわのそばを あるいたら きこえてきた はるのこえが あひるたちは おおよろこび しぶきあげて みずにはいる ホラ はなが ラララララ さいてる とりが ララ・・・

まず、現在もこの曲が掲載されているのかを知らなければならない。
道立図書館に行って音楽教科書そのものを探したが、ここには所蔵されていない。
もう一度インターネットに戻って検索サイトを検索した。

神奈川県立総合教育センターが「小学校音楽 教科書題材データベース」というありがたいサイトを起ち上げてくれている。

ここの検索窓に“ワルトトイフェル”と入れて検索した。

小川

それで出てきたのが、全110件のデータだ。この内、圧倒的に多いのがスケーターズ・ワルツだ。

年度ごとにワルトトイフェルで見ていく。

昭和26年度
この年では、学校図書と、教育出版の両方が三年生用にスケーターワルツ(以下SW)を掲載している。

昭和27年度
SWは学校図書社からは消え、教育出版社の3年用に残る。

昭和28年度
SWをふくめワルトトイフェルの名は教科書から姿を消す

昭和29年度
教育出版社の4年生用に「小川」が登場する。作詞者は川口蕗香。SWが鑑賞目的だったのに対し、こちらは表現目的となっている。
SWは消えたままとなっている。

昭和30年度
ところがこの小川は翌年には消失する。SWも消えたままである。

昭和31年度
この年から、「教育出版」社は撤退し、あらたに「教育芸術」社が加わっていいる。
今度はいきなりワルトトイフェルの花盛りだ。SWが学校図書社と教育芸術社の三年用、学校図書社は6年用にも表現目的でSWをアップした。
さらに学校図書社は“そよ風”という曲を5年生の表現用に掲載した。作詞が深尾須磨子となっているが、どのような曲かわからない。
なお

昭和32年度
今度はすべての曲が両社のリストから消滅した。

昭和33年度
教育芸術社は川口蕗香の「小川」を4年生用教科書に復活させた。
この年から「二葉」社という教科書会社が参入し、音楽教科書は三社の競合となった。
「二葉」社はワルトトイフェルを積極的に取り上げ、SWを5年生の観賞用に、さらに“スケート”という曲を5年生用に掲載した。
これはSWのメロディーに歌詞を載せたものと思われる。作詞は小林純一。
さらに4年生用にワルトトイフェルの“朝風のワルツ”という曲も掲載された。こちらの作詞は正木遠音。

昭和34年度
この年ワルトトイフェルは全滅する

昭和35年度
そしてこの年教科書業界が激変する。
これまで10年間双璧を形成してきた学校図書社と教育芸術社に加え、「音楽教育図書」社と「音楽之友」社が加わる。「二葉」社はもう消滅している。
4社は競い合ってワルトトイフェルを取り上げている。4年生向けのSWは4社揃い踏み。それ以外に「音楽教育図書」社は歌唱曲としても取り上げている。作詞は藤浦孝一。
音楽之友社はさらに積極的で、「楽しいスケート」と題名を変え合奏曲用に編曲している。編曲者?は麻葉みのる。教育芸術社も6年生用教科書に器楽バージョンを掲載してる。
SW以外では、音楽之友社が4年生用に「みどりのけしき」、三年生用に「たのしいワルツ」を掲載している。前者は吉川光男、後者は小林純一が詩をつけているが、内容は不明。「小川」は消滅したまま。

昭和39年度
この年のリストから音楽之友社は抜け、教育出版社が再登場。音楽教育と図書社と教育芸術社を加えた4社の競合となっている。
36年から38年のデータはない。
SWが各種バージョンで用いられていることは変わりないが、教育芸術社の4年生用教科書で「風のワルツ」、教育出版社で「小川」が復活している。「小川」の復活は33年以来6年ぶりである。
そして東京五輪を挟んで翌年には、NHKみんなのうたで放送されて、みんなの脳に刷り込まれたことになる。
このときの4年生は現在65歳だから、それ以上の年齢層には学校で習った記憶はないだろう。

昭和42年度
だいぶ面倒になってきたので、この後は「小川」にしぼる。
この年大事件が起こる。「小川」の第二の歌詞ができたのだ。
教育出版は従来の川口蕗香バージョンを4年生の教科書に載せる。これに対し後発の音楽教育図書は「統合版楽しい音楽 4年」で杉俊三作詞の「小川」を載せたのだ。
この辺が話がややこしくなるきっかけだろう。川口蕗香版はたぶん長年教育図書社が確保してきたものだろう。だから権利とか金銭が裏で動いたのではないか。結果、音楽教育図書は川口蕗香版を諦め、新しい詩をつけたのだろう。
この杉vs川口の激突は45年、48年も続いている。そして51年になってついに音楽教育図書が掲載を断念するまで続く。
だからこの頃の小学生、いま55から65くらいの人は杉派と川口派に分かれているはずだ。

昭和54年度
ここでさらに第三の「小川」が現れる。
音楽教育図書は音楽教科書戦線から撤退したようだ。その代わりに東京書籍社という会社が新たに参戦した。
それが叩きつけた挑戦状が、例の青木爽作詞「春の川で」だ。題名まで変えているからまさか同じ曲とは思わない。
だから50歳以上の人は知らないのが当たり前なのだ。
しかもこの年教育出版は川口蕗香バージョンを出し続けている。
これが“三種の小川”の真相だ。

昭和60年度
この年すでに「春の小川で」も東京書籍もリスト上から消失している。
それどころかSWも一切消滅した。
教育芸術社の「風のワルツ」、教育出版の「小川」が残っているのみだ。

この傾向は、昭和の最後と平成の初めまで続いていく。リストは平成13年の一覧を最後に途切れる。



それにしても、教科書会社の栄枯盛衰はまことに激しいものである。その浮き沈みの歴史のひだに「小川」は挟まっている。というより教育出版の川口蕗香バージョン
以外の作品はその荒波の中で揺られ、やがて沈んでいったのだということがわかる。どこかの合唱団の人が掘り起こしてくれた歌詞は、意地悪くいえば、考古学的には貴重な存在である。

それで、流れはよくわかったものの、歌詞が読めない。どこからか探さなくてはならない。もう一つの謎が「NHKみんなのうた」がどの歌詞を採用したのかということだ。もし青木装版ならば私はその放送を聞いてなかったということになる。なぜならその歌詞をまったく聞き覚えがないだけではなく、うろ覚えの歌詞がそれとはまったく異なるからである。

読者も期待しているようだし、もう少し突っ込んで見るほかあるまい。



とりあえず、You Tubeを丹念にあたってみて気づいたこと。
一つは作曲:ワルトトイフェル  作詞:青木 爽 編曲:小林 秀雄  歌:西六郷少年少女合唱団
という演奏がアップされていることだ。どうもこれは「NHKみんなのうた」のエアチェック物らしい。
これで問題の一つは解決した。
もう一つは、では私はどこでこの曲(おそらく川口版)を聞き憶えたのか? これがよくわからない。川口蕗香をネット上で検索したが正体不明である。しかし全国いたる所の校歌を作詞している。だから文部省筋では名のしれた人なのだろうと思う。
ついでながら、楽しいワルツ 小林純一作詞・ワルトトイフェル作曲というのもYou Tubeにアップされていて、これが聞いてみたらまさに「小川」なのだ。つまり第4の小川」なのだ。
ワルトトイフェルの方はとうに著作権切れだから、各社が勝手に詩をつけ題名をつけたらしい。

皆さん、とりあえずこれが目下の調査報告です。むかし映画で五社協定というのがあって、そのために鞍馬天狗や忠臣蔵や次郎長物は各社で勝手に作っていた。だから嵐寛寿郎だったり、大河内傳次郎だったりする。そういう「仁義なき戦い」の一幕だったようで…
なにか疲れた。もう飲もう。