Nov 9, 2020
BOSTON REVIEW by GIANPAOLO BAIOCCHI, MARCELO K. SILVA


の要約です。

「ボルソナロの知性との戦争」または「ボルソナロによる知性の圧殺」

リード部分

ブラジル大統領は大学に対する攻撃は民主主義を脅かしている。それはあの軍事独裁政権の暗い日々を思い起こさせる。

ボルソナロの大学への介入は就任以来25件に及ぶ。彼は教授たちに圧力をかけ、保守派の候補をゴリ押ししてきた。

そのために大学の予算を削減し、ソーシャルメディアでフェイクニュースを拡散し、敵対的な学者への攻撃を煽り立てた。

ボルソナロの2年間、学者への暴力行為と脅迫が続いた。それは軍事独裁だったあの日を思い起こさせるものがある。


これまでの教育改革

軍事独裁が終わった後、教育改革はブラジルの民主化の中心課題となってきた。

とりわけ2003年から2016年にかけての労働党政権の時代に、それは目覚ましい成果を上げた。

軍政以前に進歩的教育学者として有名だったパウロ・フレイレは、軍政時代は弾圧されていた。しかし民主化後は教育改革のシンボルとなった。彼の思想は教育計画の指針となった。

2003年に労働党政権が誕生すると、高等教育に巨大な投資が行われるようになった。19の新しい大学が創設され、173の市と町(主に国の貧しい北部と北東部)に新しいキャンパスが増設された。

「差別の積極的撤廃」(アファーマティブ・アクション)が施行され、アフロ系学生は公立高等教育の50%を占めるまでになった。


ボルソナロと極右勢力の攻撃

ボルソナロを先頭とする寡占勢力はそれが許せなかった。彼らはボルソナロの大統領就任後、教育分野に集中攻撃をかけてきた。

それはずっと昔から続けられてきた極右による教育攻撃の流れを受け継ぐものである。彼らは長い間、教育部門を文化戦争の重要な前線と見なしてきた。

彼はそれを、「ブラジルの教育の左翼支配」と呼んだ。左翼支配というのはフェミニスト、マルクス主義文化人、「家族の価値観」を否定する急進主義者による支配である。

かれらはずっと「大学の教育の質が低い、学業成績が低い、左翼の養成基地となっている」と、古典的な攻撃を続けてきた。

ボルソナロはさらにこれを煽った。恥知らずなフェイクニュースが撒き散らされた。

例えば、左翼が公立学校で子供たちに同性愛者のライフスタイルを教え込もうとし「ゲイキット」を配布した、学内でマリファナなどの材料を栽培しているなどなど。

そして「政党のない学校づくり」を合言葉に、生徒たちに、教師の発言の隠し撮りとSNSへの投稿を奨励した。

ボルソナロが政権を取ると、取締りの動きはさらに激しくなった。議会で数十の法案が提出された。「ジェンダーイデオロギー」を封殺するため、検閲が認められた。

教科書検定が一層強化され、保守的な教科書以外の採用はできなくなった。

2019年、ブラジルは「思想の自由報告」で、学者の環境の危険度が最悪の国の一つに選ばれた。

最後の拠点・大学への攻撃開始

初等・中等教育への攻撃が集中する中、大学は統治するのがより困難なため後回しになった。最大の障害となったのが大学の自治だった。

69の連邦大学と38の連邦教育機関の総長・学長は評議会で選ばれることになっている。ボルソナロはこれに噛み付いた。彼は上位三者の名簿を提出するよう命じ、その中からボルソナロが選んで任命する方式に切り替えた。

それらの候補者は左派のつながりを事前審査される。

ある大学では、ボルソナロは第三位の候補者を任命した。その候補は評議会の77票のうち3票しか得ていなかった。

大学予算の削減

これらの干渉を正当化し推進するため、ボルソナロは兵糧攻め作戦をとった

2019年に連邦大学の予算は30%削減された。その結果、大学運営システムはほぼ停止状態におちいった。

2020年、政府はさらに進んで、運営予算をさらに40億レアル削減しようとしている。これは大学予算の18%に当たる。

いまや国立大学では暗い廊下、石鹸やトイレットペーパーのない洗面所が当たり前の風景になっている。

予算削減はとくに労働党政権時代に作られた大学に集中している。その典型が、予算の半分以上が削減された南バイア連邦大学だ。バイアは黒人の多い州で、この大学の学長も黒人で女性だ。その学長はインタビューでこう答えている。
支払うべき請求書は山程あります。その中から緊急性を要するものを選び出すのが私の仕事です。大学を運営し続けるためにエアコンはすべてストップしました。

ボルソナロの賭け

大学は軍事独裁政権への抵抗において不可欠な役割を果たした。ボルソナロの大学に対する攻撃は、国の民主主義を脅かしている。

ボルソナロは自らの攻撃力の源を反知性と反左派の感情に頼っている。しかしそれはブーメランのように自分に跳ね返ってくる危険を含んでいる。