藤崎一郎元駐米大使 「米中関係を打開するために」
(9月2日 朱健栄のセミナーでの発言)

米中の力の差は社会理念の差

いまの米中関係は 2 大大国とまでいわれる関係では全然ないのではないか。軍事的にも経済的にも、そして何よりも理念ということです。

経済だけは大きくなってきたが、その前提はそんなにしっかりしたものではない。
社会も、一党独裁ですべてを決めるという立憲的な脆弱性がまだ残っています。


トランプと習近平

トランプさんがあまりにも乱暴なので、習近平は一時期、自分が世界貿易のチャンピオンであると印象づけるのに成功した。それがたとえばダボスでの習近平主席のスピーチのように主張された。

しかし中国はコロナで間違いをしてしまった。武漢の感染が一段落した後、マスク外交で感謝を強要したり、いわゆる「戦狼」外交が強まった。

その印象があまりにも強かったから、イギリス、フランス、オーストラリア、カナダ、インドとの関係などすべて悪くしてしまった。

これが中国の現状だろうと思います。


米大統領選挙を見据えて

まず注目すべきなのが、8 月 6 日の王毅外相の新華社とのインタビューです。ここで王毅は対米 4 原則を打ち出した。対立回避、対話継続、デカップリングせず、ゼロサムゲーム(真剣勝負)はしないというものです。(デカップリングせずの意味は不明)

これに対応してバイデンと民主党は、だいぶトランプとは異なる政策を打ち出しています。

メディアを始め多くの識者(とくに日本国内)はこの点を読み違えています。バイデンの目指すのは強硬化ではなく原則化です。国益ではなく国際的なルールなのです

バイデンは対中で毅然とした態度を取るという立場を出しつつも、「自滅的で一方的な関税戦争はしない」ことを明らかにしています。

なぜなら、その戦略は中国の軍事姿勢を誇大化させ、その反映として米国の軍事肥大を招き、結局は米国の労働者をいためてしまうからです。


事態は中国の受け止めにかかっている

バイデンが勝利することを前提にすれば、アメリカは中国に「原則」をもとめてくる。

原則とは人権と民主主義です。彼らは最初の一年目に「民主サミット」をやるといっている。

そのときに中国がどういう対応をするのか、香港、WHO、台湾問題、ウイグル問題が注目される。あるいは南シナ海、東シナ海でもそうです。

しっかりやらないと、最初の一年目で相当イメージがかわるかもしれません。

その意味でこの前の王毅国務委員の新華社インタビューを大変関心をもってみています。
(いっぽうで、習近平総書記は今月3日に講話を行い、敵対勢力による「5つの企て」を決して承認しないとのべた。習近平は講話で被害者意識を強く押し出し、原理主義的な方向への傾倒を印象づけている)


王毅国務委員・外相の新華社インタビューは以下で閲覧できます。
http://jp.xinhuanet.com/2020-08/07/c_139271507.htm 

感想
誰かが、AALAニュースに転載したのを要約したものである。今後、転載にあたっては転載者の氏名と転載理由を記載していただきたいと思う。
とは言いつつ、なかなか面白い見解ではある。
ただ、立場上言及はできないだろうが、習近平の立場についても理解が必要だろうと思う。
習近平は中国共産党の維持をまっさきに考えるほどケチな男ではないと思う。ただ文革中に泥水も飲んできた人間として、「中間管理層の腐敗とそれを生み出す社会システムは我慢ができない」ということは分かる。そして、ここからが論理が屈曲するのだが、紅衛兵の造反に依拠するのはさらなる愚挙だということも理解する。
となれば、腐敗分子の粛清を思い切ってやるには軍部の力を借りるほかないということだ。
これは実は、多くの「民主政府」がたどる道でもある。民衆の力によって政権についた政府が、その地位を守るために軍部と手を結び、軍の力で強引に困難を乗り切っていくという例は枚挙に暇ない。
棺を覆って初めてその真価が問われることになるのかもしれない。
ただ軍部(人民解放軍)がはしゃぎすぎていることは間違いないので、その動きには厳しい目を注がなければならない。さらに周恩来ー楊潔篪ー王毅の外務担当者の動向にも注意を向け続けなければならないであろう。