以下は、南アフリカで暮らす日本人男性が感じた、NHK “コロナ略奪” 報道への違和感
という記事からの抜粋

これは7月5日付でYahoo News に投稿されたもので、ノンフィクションライターの井上理津子さんによるレポート。ただし抜粋部分は井上さんが現地で観光ガイドをしている高達さんの発言。

4月30日に、NHK BS1で「南アフリカ・学校まで略奪~新型コロナで社会崩壊寸前」というニュースが流れた。

私は未見

南アフリカ・学校まで略奪〜新型コロナで社会崩壊寸前

5週間のロックダウンを続ける南アフリカでは、その期限を30日に迎えるが、感染者が予想以上に増えていて、延長が検討されている。しかし、経済的な打撃は特に貧困層に顕著に表れている。貧しい黒人が暮らす地区では、収入が途絶えた人々による略奪が続き、その対象が商店から学校へと移っている。悪質なことに、証拠を隠滅するために放火され、200近い学校が破壊された。


という番組抜粋がまだ消えずに残っていた。


現地で観光ガイドをしている高達さんは憤る。

その内容がひどかったんです。スーパー併設の酒屋に黒人の男たちが押し入り略奪した。さらに居合わせた人たちも次々と酒を盗んだ。テレビはそう伝えた上で、「それは人々がロックダウンによって食べるものにも困ったからだ」と印象づけた。インチキ報道でした

男たちはギャングです。彼らが酒売り場に押し入ったのは盗んで転売するのためです。ロックダウン以前からそういった “闇商売” は横行している。そこに居合わせた人たちが、鬱憤晴らしに便乗しただけです。むしろロックダウンしてからのほうが犯罪は減っているのというのが事実です。

ちょうど日本で “ロックダウンしないのか” という声が上がっていたころでしょ? このにゅーすは “ロックダウンするとこうなる” と歪曲して伝えた、NHKの日本政府への忖度報道だったのでしょう。

実際には、南ア政府はずいぶん迅速に動きました。第一次コロナの時期から、子どもや高齢者、障害者への社会手当を半年間増額するなどの手を打ちました。さらに、従来は社会手当の対象外だった18歳から59歳の人たちへの手当を導入するなどの手を打ちました。

もちろんうまくいっていない点もあるが、それは他国も同様です。だから国民の間には政府のコロナ政策を支持する向きが多いのです。


同様の疑念は朝日新聞Globeも表明している

という6月18日付の記事

表現は少しおとなしいが、多量の毒をふくませている。筆者は白戸圭一さん。立命館大学の教授である。

「国際報道2020」は、国際報道における「事実」と「現実」の関係を考える貴重なケーススタディーだったように思う。

番組は、南アを取り上げ、ロックダウンによって貧困層が困窮し、略奪が多発していると伝えた。

映像では大勢の住民が商店を略奪する様子を捉えた映像などが流された。

こうした事実を並べることで、ロックダウンへの不満が強いと示し、「経済活動の再開に踏み切らざるを得なかった」南アの「現実」を伝えた。

と書いた上で、もうひとりの南ア居住者の反論を引用している。

それが吉村峰子さんの発言「事実誤認、途上国への蔑視、差別があまりにも露骨」という文章だ。これは放送直後の5月3日に自分のブログに掲載されている。

さらに5月6日には「アフリカ日本協議会」という市民団体がオンラインセミナーを開催し、吉村さんを含む4人が番組への批判を表明した。

共通する批判点はこのようなものだ。
*南ア政府の感染対策は極めて積極的で計画的だ。
*国民の多くは大統領の感染対策を支持している
*番組では南アの対策が破綻した事になっており、事実と背馳する

それは個別の事実の真偽に対する疑念ではなく、事実の組み合わせによって作られた全体的印象に対する違和感である。

6月5日、東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターがオンラインセミナー「コロナ禍とアフリカ」を開催した。

この中の発言から拾うと、

NHKの番組の放映前の4月13~18日のヨハネスブルク大学による世論調査で、ラマポーザ大統領の仕事ぶりに対する国民の支持が73%に達していた。評価しない国民はわずか4%しかいなかった。


これは「国民の不満を前に、大統領の感染対策が瓦解した」という基調で制作されたNHKの番組とは相当趣を異にしている。

5月31日時点で日本の新型コロナ感染者数は1万6851人。これに対し南アは、人口が日本の約半分の5800万人なのに3万967人で、日本より多い。

しかし、同じ時日本のPCR検査数が29万436件だったのに対し、南アは72万5125件だった。南アでは、病院だけでなく、防護服に身を固めた医療チームが車で住宅地を訪問してPCR検査をしていたのである。

これらのことは番組では紹介されなかった。

番組制作者による取捨選択の過程でそぎ落とされた事実は膨大に存在する。

伝えられなかった事実に着目しなければ、制作者が選択した「事実」に基づく「現実」の範囲内でしかアフリカを見ることができなくなってしまうのである。


蛇足になるが、かくいう私もNHKのニュースに影響された一人だ。
 
なにか変だと思いつつも、日本語の情報がなかなか手に入らない状況で気をもんでいた。南アといえば日本AALAの友好国であり、まずはその国が公式に打ち出している情報を正面から受け止めて、そのうえでメディアの投げてくるクセ球をしっかりと受け止めつつ、日本国内の多くの人々に発信していくという姿勢が必要だろう。

我々はメディア組織ではない。メディアでさえも情報の取捨に関しては誠意が必要なのだから、ひど梅諸国との連帯を謳う組織が、いい加減な情報に踊らされてはならないだろう。