Long Hash のサイトより

Oct 24, 2019 03:10 AM | José Rafael Peña Gholam


はじめに

私の長男アドリアンは、ベネズエラのカラカスで生まれました。

私は一生懸命働きました。そして節約しました。そしてビットコインのおかげで、私はすべての医療費を現金で支払うことができました。

この国を揺さぶる経済危機の真っ只中に、長男アドリアンは首都のまともな民間クリニックで生まれたのです。


ビットコインとの付き合い

ベネズエラに住んでいると、生活自衛の方法を見つけるように駆り立てられます。

そのオプションのひとつが、通貨ボリーバルをビットコインに交換することです。

過去2年間、私は給与のすべてをビットコインで受け取りました。

私はビットコインの動揺性(ボラティリティ)を完全に認識しています。
それでも、超インフレに陥っている通貨ボリーバルよりはるかに安全だと思っています。

一つの例ですが、今年1月に、カフェオレは450 ボリーバルかかりました。
9月までに同じコーヒーが14,000 ボリーバルになりました。(この手記は19年10月に書かれたもの)


出産費用の計算

そんなとき、私は父親になることを知ったのです。その瞬間から、妻と赤ちゃんに適切な治療を受けるにはどれくらいの費用がかかるかを計算し始めました。

民間クリニックの出産費用の相場は、数年前なら500ドルから700米ドルの間でした。しかしその後値上がりを続けています。

私たちが最終的に出産した民間クリニックは、最低でも1500ドル、帝王切開のときはさらに2500ドルが必要でした。

この民間クリニックは最も安価な部類に入ります。

聞いた話ではカラカスの高級診療所では、帝王切開の費用が最高6,000米ドルになるそうです。

ベネズエラの最低賃金は月額で約16ドルです。


なぜ米ドルで話すのか

おそらくあなたは不思議に思っているでしょう:

ベネズエラに住んでいるのに、なぜ米ドル換算で話すのか?

それはインフレのためです。
ここでは、ほとんどの商店が、商品やサービスの価格をドルで設定しています。超インフレから身を守るためです。

何かを買うときは、その日の為替レートをみてボリーバルで支払うか、または直接ドルで支払うことができます。持っている場合ですが。


ビットコインの利息はかなり大きい

私は最初にも言ったとおり、給料をすべてビットコインで受け取っています。ビットコインではなく、ドルで貯金することもできましたが、過去数年にわたって、ビットコインはそれ以上の大きな利息を提供してくれました。

想像してみてください。たとえばボリーバルしか持っていなかったとしたら、ハイパーインフレが原因で随分目減りしていたでしょう。
今日の医療費が貯蓄を上回っていた可能性は十分にあります。

ビットコインを持っていなかったら、妻と生まれてくる子供はどうすることになったのでしょうか。 


公立医療機関の悪い噂

最良の選択肢は、母親と赤ちゃんの世話を専門とする公立産科病院だったでしょう。

しかし、これらの場所は患者で溢れており、一人ひとりへのきめ細かな配慮はほとんどありません。備品不足も深刻だそうです。

これらの公立産科病院についての悪い話を聞いたことがあります。

これらの病院の一部の従業員は明らかに低賃金で働いており、有能な従業員はほとんどいないということです。

これは、妊産婦に対するケア不足や医療ミスにつながる可能性があります。

また、妊婦が数日間も陣痛に陥り、その間胎児一緒に放置されるとか、または疲れた産婦が赤ん坊をベッドから落とすこともあると聞きました。(ここまで来ると流石に信じがたいが…)

妻をこのように扱わせる道はありません。


ビットコインを売るリスク

多額のビットコインを売ることはリスクを伴います。息子が生まれた週にそれを体験しました。

その週、1ビットコインの価格が10,000ドルから8,200ドルに下がったのです。

このような市場の動きは非常にイライラします。私にとってとても不安な週が始まりました。

私は価格が下がるのを見て、次の値下げから身を守るためにステーブルコインに交換すべきか、または、何もせずにビットコインの価格が9月30日までに反発することを期待するか、判断が付きませんでした。

その日が息子の出産代を払わなければならない期限です。

私は待つことにしました。

残念ながら、ビットコインの価格は1万米ドルに戻りませんでした。私は損失を取り、1 BTCに対して8200米ドルのレートで取引をすることにしました。

取引と言ってもドルに変えるわけではありません。取引相手にビットコインを売り、それを対ドル相当のボリーバルで現金化するのです。そして、そのボリーバルで診療費を支払うのです。


ビットコインの現金化

私は人気のあるWebサイトであるLocalBitcoins.comでボリバルとBTCを交換しました。

息子が生まれる前の夜、私はエスクローサービスのあるLocalBitcoinsにBTCを転送しました。あとはクリニックに到着するまでに転送が確認されることを待っていました。

私はある人物との取引を選択しました。
その人は私と同じ銀行を利用し、プラットフォームで良い評判のある人で、わたしに最高の価格を提供してくれました。

この人物はシンガポールにIPアドレスを持っていますが、電話番号はベネズエラに登録されています。LocalBitcoinsのたくさんの秘密の1つです。


ドル交換はヤバ筋?

少なくとも私にとってビットコインを手に入れるのは、ドルを手に入れるのよりはるかに容易です。

まず“LocalBitcoins”にアクセスし、そこで最良のオファーを選択して取引を行います。
合意が成立し送金が完了すればあとは確認を待ちます。こうして仕事場を離れることなくビットコインを受け取ることができます。

ドルと交換するのは別な話になります。まず、私がドルを買いたいと通告しなければなりません。
(これから先はよく分からない。通告先は“my circle of friends and family”であり、彼らはWhatsapp あるいは Instagramのサイト先に存在するらしい)

もしそのサイトでドル売りを希望する人を見つけたとします。私は彼と為替レートについて交渉し、現金を引き渡す場所を打ち合わせる必要があります。(つまり非合法の闇取り引きのようだ)


BTCをボリバルに交換

私の息子の出産の場合、BTCをボリバルに交換するのは、妻の陣痛が始まった朝に行われました。

これは私にとって非常に危険な動きでした。

なぜなら時間通りに、私が診療所に支払うのにいくつも障害物があることがわかっていたからです。

取引を始めた人が反応しない可能性とか、もっと悪いことに、私の銀行が多額の送金を不審に思いブロックするのではないかとか恐れました。

私の取引相手は、同じ銀行の4つの銀行口座から、金額が異なる6つの送金を送信してきました。おそらく、1つの送金だとブロックされてしまうを回避するためでしょう。

通貨ボリーバルを受け取った後、診療所への支払いに取り掛かりました。

私はそれを2つの銀行振込に分けて問題なく行うことができました。


ビットコインは私を救った

最後の転送を終えて、私が感じた安堵と喜びは息子に会った最初の瞬間の喜びを完全に超えていました。

診療所に支払う費用負担はすべて瞬時になくなりました。

私はビットコインを使用して、自分のやりかたで出産費用を支払うことが出来ました。私はそれを誇りに思い、幸せに思いました。


ビットコインの貯蓄のほとんどを手放すのはつらいことです。しかしこの際は、息子を安全に出産させ、母親にきちんとした治療を提供することがより重要でした。

私は2月の記事で「ビットコインはベネズエラを救わない」と書きました。


いまでもその思いは同じです。

  しかし、この体験で、ビットコインが自分の生活の中でいかに重要であるかがわかりました。

わたしはビットコインのおかげで、ベネズエラのハイパーインフレと戦い、貯蓄を積み、短時間に多額のお金を支払うことができました。

たとえば、必要なものをビットコインの代わりに金でやり取りすることを想像してみてください。

ソーシャルメディアで、ビットコインは市場の憶測以外には何の役にも立たないと言っている人がよくいます。

深刻な経済問題やハイパーインフレのない国では、おそらくそれは本当です。

しかし、経済が機能不全に陥っているベネズエラのような国は、ビットコインは巨大な可能性を示しています。

私の息子の誕生の物語はその実例です。