新型コロナ ゲノム解析でわかったこと

日経新聞日曜版にスレヴィン大浜華記者の署名記事として掲載された。

やや入り組んでいて読みにくいが、主だった中身を列挙する。

1.進む新型コロナのゲノム解析

遺伝情報の変化を遡ることで、系統樹を作っていく作業だ。

これでアダムとイブの発生時期が特定できる。

これまでの結果は予想よりさかのぼるようだ。それだけでなく衝撃的なのは、武漢で最初の患者が確認される前に、人から人への継続的感染が起きていた確率が高いことである。


2.ヒトコロナ感染者は武漢1号患者より数代さかのぼる可能性

武漢で発端者が発見されたのは12月8日。その発端者を遡ることは出来ていないが、武漢以外の可能性はある。

おそらくは夏の終わり頃に、コウモリに常駐する新型コロナが人へ、そして人から人への伝播を繰り返した後に、武漢で感染爆発したのだろう。


3.新型コロナは武漢から広がったのではないかもしれない

武漢で感染爆発に至ったのは12月中旬から下旬であったが、その時点ではすでに広東省などで少なくない新型コロナの発生とヒトーヒト感染が見られており、むしろ武漢以外の地が発生源にあった可能性を示唆する。

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武漢の食肉市場からの発生の可能性は、むしろ低いと言わなければならない。現在中国当局は武漢の市場を発生源とする見解を取り消しており、WHOも白紙に戻して検討するよう促している。

欧米の感染も思ったより早かったのではないかとの報告が相次ぐ。

フランスで12月下旬にインフルエンザ類似の症状で入院した40代男性の検体を、4月に改めてPCR検査したところ、新型コロナが検出された。

これはヨーロッパでのコロナ感染が、武漢での感染と並行、あるいはひょっとすると先行していた可能性を示唆する。

米国のCDC(疾病対策センター)も、早ければ1月中旬には感染拡大が始まった可能性があると報告している。

4.現時点での結論

新型コロナの発生源が中国であることは間違いない。新型コロナが、もともとコウモリに起源を持つこともほぼ確実である。

これが直接、あるいは他の動物を介してヒトに感染し、さらにヒトーヒト感染が起こり始めたのは去年の秋だった。

最初の感染拡大は武漢より南の地方であったが、それは大流行にはならなかった。

それらの新型コロナの一部が武漢市に入りパンデミックに発展した。残りはほぼ同時期に西方へも拡散し、その先端はすでにヨーロッパにまで達していた。それはさらに大西洋を渡り、1月中旬には米国内での拡大を開始していった。

* ウィルスの人工作成説、武漢のウィルス研究所の拡散説、武漢の市場発生説はこれらの研究によりすべて否定された。確実なのはコウモリ起源説、確実と思われるのは中国南西部のどこかで発生という説である。

スレヴィン大浜華さんの丹念な文献検索に敬意を評します。