6月16日付赤旗の経済面に興味深い記事が載った。
題名は端的に「コロナ禍」
コロナの影響を経済面から位置づけようと図った記事だが、あまりに対象が広く雲を掴むようなところがある。

記事は三人の記者の覆面座談会の形をとっているが、これは焦点が定め難いのを、3つの目に分散することによって、とりあえずカバーしておこうという意向の反映かもしれない。

率直に言って記事につけられた見出しや小見出しは適当とは思えないので、私の方でシャッフルしてグルーピングしたうえで、再度組み立ててみたい。

① マクロ経済の危機

各国際機関のマクロ見通しを列挙。

世銀は20年度世界経済成長をー5.2%と発表した。国別では米国-6、ユーロ圏-9,日本-6、新興+途上国は-2.5%とした。これは過去860年で最悪。

OECDも今年度見通しを発表。世界全体で-6%、第2波の如何によっては-7.6%と試算している。

② 先進国(米国)におけるコロナ禍

先進国におけるコロナ禍は次の3つだ。

第一に雇用の喪失だ。2千万人近くの雇用が失われた。しかも雇用の喪失は長期にわたると予想される。

第二に大量の貧困者の出現だ。これは失業に伴うものだ。低賃金労働者、女性、アフリカ系、ヒスパニック系に集中している。

第三に社会の亀裂の深まりだ。コロナ危機は社会のひずみを浮き彫りにしている。その象徴が白人警官の黒人殺害だ。

「この悲劇的事件は人種差別の痛みに光を再び当てた」(FRBパウエル議長)

③ 新興国・途上国におけるコロナ禍

もっとも激しく影響を受けるのは、次の4つのタイプの国だ。ほぼすべての途上国がそのいずれか、あるいはそのすべてに含まれる。

第一に、社会扶助体系の貧弱な国、ソーシャルネットの失われた都市である。

第二に、観光や仕送りが収入の多くを占める従属性の高い国だ。(観光と仕送りを一緒にするのはいかがか?)

第三に、特定輸出産品に依存し、その輸出産品が特定の品目に偏っているモノカルチャー国だ。

第四に、多国籍企業のグローバル・サプライチェーンに深く組み込まれている下請け国家だ。

④ 新興国・途上国の多重苦

新興国・途上国を苦しめるのはそれだけではない。

世界経済的には、今回のコロナ禍を通じてさらに3つの苦難が襲う。

第一に、一次産品全体が著しい価格下落に襲われる。特に産油国では原油価格の下落が著しい経済困難に襲われる。

第二に、先進国の資金引揚げにより、「投資」が対外債務として積み上がる。

第三に、国家財政では債務超過がもたらされ、格付けの低下と通貨の為替レート下落を招く。

その結果、新興国・途上国の経済が、通貨と資産価格の暴落により底抜けしてしまう。

⑤ 資本コントロールが重要

このように世界のコロナ禍の内容を見ていくと、いま最大の課題が見えてくる。

それは第一に、新興国・途上国に対し緊急支援を行うことである。UNCTADによれば、その額は2.5兆ドルに及ぶと試算されている。

4月のG20は最貧国の公的債務支払いを今年度末まで延期することで合意した。しかしこれで収まるわけではない。支払猶予ではなく債務帳消しに踏み込まなければことは収まらないであろう。

それは第二に、巨大資本の急速な資金引揚げを予防することである。

この津波のような引き潮は、巨大資本による資本の巨大な流れがルールを無視して行われた結果起こる。

それを防ぐためにもっとも必要な手立ては、国境を超えた巨大な資本の動きを、国際協調によりコントロールすることである。

UNCTADはさらに、「必要とされる場合には、資本流出を抑えるための対策」が必要となると踏み込んでいる。

第一の方針も、第二の方針もトランプは反対するだろうが、米国の国内を見ても国外を見ても、それ以外の選択はなくなっていくだろうと思う。

ただし、最後の記者Cの発言、
「コロナ危機は新自由主義の横行を反転させた。そして巨大資本の管理の必要性を浮上させた。これは時代の巨大の変化の現れだ」
というのは流石に言い過ぎではないかと思う。