米中新冷戦の本質

これが本質かどうかは知らないが、面白い分析だ。日経の6月1日付の寄稿記事。R.アームストロングという金融論説家によるもの。

1.米中関係の構図

まず私の米中関係の構図を示しておく。

国家としての米国対中国においては力の差は歴然としている。
リーマンショック以来、米国はドルを刷り続けた。物質的富の数十倍にのぼるドルは、ディスインフレのもとで、すべて富として現象している。そしてそのほとんどはアメリカの資本のもとにある。
中国は絶対に勝てない。だからこれはけんかではなく米国の一方的ないじめである。

ところが国家としての強大さを裏付ける、GAFAMなど成長産業は、その競争力の多くを中国での安定したサプライ網に依存している。

さらに製品の販路としても中国が最大の市場となっていく可能性がある。

したがって、米国はその経済的将来を中国に依存せざるを得ない。

代替国はないわけではない。しかしそれを実行するほどの体力がアメリカにあるとは思えない。

中国でウィンウィンの取引というのは、中国側がウィンウィンすること、つまり二度勝ちすることだという。

製品がハイテク化すればするほど、サプライ部門も高度化せざるを得ない。そして高度化したサプライ部門がいつまでその地位に甘んじているだろうか…?

ファーウェイ問題はそういう性格を内包している。これからも似たような問題は相次いで発生するだろう。

2.米中対立で米国は何を得るのだろう?

ここからアームストロングの所論に入っていく。

彼の提示するアメリカ側のオプションは以下のごとくである。

① 議会・政府はコロナ対応、WHO評価、中国企業の市場締め出しなどの派手なパフォーマンスを続ける。
② 香港に関してこれまで与えてきた特恵的な地位を断絶するとの脅し。具体的には「香港ドル」の否認。
③ 二正面作戦の強制。サプライチェーンを脱中国化する。ただし中国に販売するものについては「現地生産」を続ける。

これを見れば中国バッシングが不可能であることが明らかだ。「香港ドル」の否認はあるいは可能かもしれないが、サプライチェーンの脱中国化は共倒れの試みにしか過ぎない。(香港ドルの将来は正直のところ、私にはよくわからない)


3.中国に国際協調を迫るために

考えてみれば乱暴な話で、中国に国際協調を迫るために、国際協調のルールを無視した干渉を続け、他国へは干渉への協調を迫るというのは無茶だ。

しかし中国側に一部の非もないということではない。

以下の一文は目下私には正否を判断できない。

中国は自由貿易や企業の独立性、国際ルール、知的財産の尊重などで勝手な振る舞いを続けてきた。

ただ、まずはアメリカ自身が「勝手な振る舞い」とやめることが必要だ。ここに来て喧嘩両成敗論を持ち出されるのは、大いに迷惑だ。