新型コロナウィルスの研究の変遷

基本的な知識は東洋経済ONLINE 2月12日号「新型コロナウイルス:専門家見解で人工で製造することは不可能」が詳しい。これは中国の民間誌『財新』の提供記事だそうです。

1月12日 中国科学院武漢ウイルス研究所、新型ウイルスの遺伝子情報を解析。WHOに提供。

中国科学院が武漢に持つウイルス研究所は、中国で唯一のバイオセーフティーレベルP4の実験施設を有している。幹部研究員の石正麗氏はコウモリを宿主とするウイルス研究が専門。コウモリを求めて雲南省の洞窟などに通う姿から、「バットウーマン」とも呼ばれる。
2017年SARSがコウモリを起源とする、SARS型コロナウイルスによるものであることを明らかにした。
石済麗

1月21日 中国科学院上海パスツール研究所などが新型コロナの人感染機序を明らかにする。新型コロナと一体化したS-タンパク質が、人のACE2受容体を介して呼吸器官の表皮細胞に侵入すると推定する。

1月22日 中国の研究者の共同論文が「Journal of Medical Virology」に掲載される。新型コロナウイルスは、コウモリのコロナウイルスと起源が未知のコロナウイルスとの間で遺伝子が組み替えられることによって発生したとされる。

1月23日 石正麗ら、bioRxivで、「新型コロナウイルスの発見とそれがコウモリを起源とする可能性について」という研究論文を発表。
雲南キクガシラコウモリに存在するRaTG13コロナウイルスとの一致率は96%に達していることが明らかになる。この研究は『ネイチャー』誌の2月3日号で発表された。

人工ウィルスではない証拠
ただし相違点4%は、遺伝子変異1200カ所起こるのに当たり、人工的操作では不可能。
またDNAを切り離し接合するにはエンドヌクレアーゼを挿入する必要があるが、新型コロナにそのような形跡はない。

1月26日 親人民解放軍系民間軍事サイト「西陸網」が、「新型ウイルスはアメリカがつくった中国人だけに作用する生物兵器だ」という陰謀論系の記事を掲載。

1月末 「新型コロナウイルスは人間が造った生物化学兵器だ」(陰謀論)が中国内外に広がる。また石氏の実験施設がウイルスの発生源ではないか、という「疑惑」が飛び交う。

1月31日 デリー大学の研究者がbioRxivで「2019新型コロナウイルスの棘突起タンパク質に含まれる独特な挿入配列とエイズウイルスのHIV-1 dp120、Gagタンパク質との間で見られる奇妙な相似性」という研究論文を発表。

まもなく論文を撤回し、以下のコメントを残す。
このストーリーはすでにソーシャルメディアとニュースメディアにおいて異なる仕方で解釈され、拡散してしまいました。私たちには陰謀論にその議論の根拠を提供する意図はありません。私たちはさらなる分析を行ってから修正版を提出することにしました。

インド論文に対する批判が集中。
エイズウイルスは逆転写ウイルスでありコロナウイルスとの間には大きな違いがあるためDNA間で組み換えが起こる可能性が低い。従って相同性があったとしても生物学的な意義はない。
とされる。

2月2日 石正麗氏、微信(WeChat)のモーメンツに投稿。

新型コロナウイルスは、大自然が人類の愚かな生活習慣に与えた罰だ。私、石正麗は自分の命をかけて保証する。実験施設とは関係がない。不良メディアのデマを信じて拡散したり、インドの“科学者”の信頼できない分析を信じる人にご忠告申し上げる。「お前たちの臭い口を閉じろ!」と。

2月3日 亡命富豪の郭文貴、「西陸網」の記事を引用し、「新型コロナウイルスが生物兵器であることを軍が公式に認めた」と報道。

2月4日 石正麗は中国の独立系メディア「財新」に対し「陰謀論者は科学を信じません。私は国の専門機関が調査を行い、私たちの潔白を証明してくれることを望んでいます」と語る。

2月9日 法輪功の衛星テレビ番組、「新型コロナウイルスは人工ウイルスの可能性が高い」と報道。

2月18日 ワシントン・ポストのインタビューで、専門家の意見を報道。「人工的なものを示す痕跡は皆無であり、生物兵器である可能性は強く排除できる」

3月28日 米国立保健機構(NIH)のコリンズ所長、新型コロナウィルスは人為的産物ではないとコメント。

「武漢コロナ」に関するトランプ発言の変遷

4月14日 ワシントン・ポスト、「2年前に科学分野の外交官が武漢の研究施設を訪問し、安全管理に対する懸念を報告していた」と報道。

4月15日 FOXニュース、複数の情報筋の話として「新型コロナは生物兵器として開発されたのではないが、武漢の施設での研究過程で漏洩したもの」と報道。

4月15日 トランプ大統領、「それぞれの報道について徹底的な調査を進めている」と語る。

4月17日 リュック・モンタニエが、ニュース番組に出演。新型コロナは人工ウイルスだと断言。(これに関してはこちらを参照)

4月17日 中国が武漢の死者数を約1.5倍と大幅に上方修正。トランプは「中国は情報を隠蔽している」と非難。

4月18日 トランプ「もし故意ならば中国は報いを受けるべきだ」と先鋭化する。

4月21日 WHOのシャイーブ報道官、「武漢の研究施設が発生源とはみていない」とし、モンタニエの「研究施設で加工されたもの」との主張を否定。

4月22日 ポンぺオ米国務長官、新型コロナは武漢の研究施設から流出した可能性があると発言。市内数カ所の研究施設の調査を求める。

4月30日 トランプ 記者会見

「武漢の研究所が新型コロナの発生源だ」と強く確信させる証拠を発見している。

ただしその数時間前に出された国家情報長官室(ODNI)の公式声明文ではこう書かれていた。

情報機関は全体として、新型コロナウイルスは人工でなく、遺伝子組み換えでもないと考える。
情報機関(複数)は武漢の研究施設でのアクシデントの可能性を検討するため、さらに調査を続ける。

4月30日 ニューヨーク・タイムズが以下の記事を発信。(発信時刻は)トランプの記者会見の直後。

見出し「トランプ政権高官が、ウイルスと武漢の研究所をつなげるよう、スパイに圧力をかけている模様」

情報機関の分析官たちの一部は、それによって情報分析が歪められ、中国批判のため政治的に利用されることを危惧している。
ほとんどの情報機関では、
①研究施設からウイルスが流出した証拠は見つからないだろう
②所外で動物から人間に感染した可能性が圧倒的に高い
と考えている。

4月30日 CNNも、「トランプ大統領の主張は、情報機関と矛盾している」と報道。さらにポンペオ国務長官が圧力の先頭だと指摘。

5月1日 AP通信によれば、国土安全保障省は「中国は新型コロナの深刻さを隠し、その間に自国用に医療器具を確保しようとした」と分析。

5月3日 トランプ、FOXテレビで発言。ウィルス流出について「彼らはひどい過ちを犯しそれを隠そうとした。非常に決定的で強力な報告書が出るだろう」と語る。

5月3日 ポンペオ国務長官、ABCテレビ番組で「新型コロナが武漢の研究所から流出したという多くの証拠がある」としたが具体的な内容には触れず。

5月4日 トランプ、「関税引き上げは中国への最も重要な罰則だ」と語る。

5月初め SNSで「中国科学院武漢ウイルス研究所の幹部石正麗が、秘密文書を持ってフランスの米大使館に亡命申請した」との情報が拡散。

5月6日 ポンペイオ長官、記者会見で「研究所から流出したか、ほかの場所からなのか確信があるわけではない」と述べ、従来の発言を修正。

5月7日 トランプ、「報告書が出てくるが、君たちに見せるかどうかはわからない」と述べる。

5月7日 米軍のミリー統合参謀本部議長、新型コロナは「人工的に作られたものではない。決定的な証拠はないが、意図的に流出されたものでもないだろう」とかたる。

5月11日 武漢ウイルス研究所の袁志明研究員、「危険度の高い病原体を扱う実験室では密閉性を確保しており、流出の恐れはない」と説明

5月24日 武漢ウイルス研究所の王延軼所長、「新型コロナの遺伝子情報はこれまでの研究対象と大きく異なり、ウイルスが流出した可能性はまったくない」と疑惑を否定。
所長

5月25日 石正麗、流出説を否定。さらに科学の政治化を憂慮すると発言。

5月29日 トランプ「新型コロナの初動に問題があった」とし、WHOを中国の「操り人形」と批判。関係解消を表明。