「インド・コロナ問題に関連した資料」
5 月 27 日 のAALA ウェブ勉強会で清水 学さんが報告したものである。

なかなか手に入りにくい報告なので、その要約を紹介しておく。(一部日経新聞などで補充)

 
1. インドにおけるコロナ感染の経過

1 月 30 日 インドで最初の感染者が確認された。

3 月 25日 全インドを対象にロックダウンを実施した。このときまだまだ死者数が 2000 人未満の段階だった。予定期間は3週間であった。

4 月 15 日 全土ロックダウンを再延長。

4 月 20 日 感染者が少ない地域での経済活動の再開が部分的に認められた。

5 月 1 日 全土ロックダウンを5 月 17 日まで再度延長した。

5月15日 ロックダウン中にもかかわらず感染者の急増が起こった。感染者数では中国を超えてアジア諸国のトップとなった。失職者が農村に帰る際に新型コロナを持ち込む構図となる。

5月17日 全土ロックダウンを5月末日まで再度延長した。

5月25日 感染者は2週間で倍増。14.5 万人に達した。これは世界9位である。死者数 は 4172 人で中国に接近している。

5月 都市部の失業率が26%に達する(ロックダウン開始時には9%)。全国では1億2千万人が職を失った。その7割は日雇い労働者(日経新聞) 

6月4日 新型コロナ感染者21万人。新規感染者は1日あたり9千人のペースで増加。

この経過を見て清水先生は次のように結論している。

社会的セーフティ・ネット・システムが不十分の場合は、ロックダウンの副作用はコロナ感染防止効果よりも大きくなり、全体としては社会的に も マイナスになる可能性さえある。


2.なぜロックダウンが悪かったのか

13 億強の人口大国 において一斉に全国一律な形でロックダウン の対象にした。その予告はわずか 4 時間 前であった。

A.  大幅な需要減

食品とアルコール以外の消費は控えられている。

自動車の販売 台数 はほぼ ゼロである。エアコン・冷蔵庫・ TV などの耐久消費財も同様な状況である。宴会・航空機や 列車による旅行などのサービス業も同様である。

 その結果27 万以上の工場、7000 万の中小企業が需要減に苦しんでいる。

B. 労働者への被害

全土ロックダウンで仕事を失った者は 1 億 1400 万人、そのうち 9100 万人が 大都市での 日雇い労働者だった。さらに 1700 万人のサラリーマンがレイオフされた。

ロックダウンは都市で働く出稼ぎ農民を襲った。職を失った出稼ぎ農民は帰省を図ったが、それらは都市に封じ込められた。

C. ムンバイにおける日雇い労働者=出稼ぎ労働者=スラム居住者の動向

ムンバイの例を見てみよう。ムンバイでは日雇い労働者=出稼ぎ労働者=スラム居住者である。それはムンバイ2千万人市民のうち500万人程度と見られる。

彼らはロックダウンされたが、そのまま都市に残れば生活の見通しはなく、むしろ飢餓の危険さえある。

そのためあらゆる手段を使って帰省しようとする。炎天下での悲劇的な徒歩旅行が始まる。50 度を超えるのも珍しくはない。

皮肉なことに、ロックダウンが都市から農村への移動を強制するのである。

5 月中旬になると政府も列車・バスを準備して帰省を援助せざるを得なくなった。その数8000 万人といわれる。


3.政府の景気刺激策

5月12日、モディ首相は第 3 次経済的刺激策を発表した。財政規模はGDP の 1 割に相当する30兆円である。

刺激策の半分近くはインド準備銀行(中央銀行)による低利融資分である。しかし借り手がほとんどなく資金は中銀のレポ口座に残ったまま積み上がっている。

結局有効な貧困者支援となっているのは、一人当たり月あたりで
穀物 5 ㎏、チャナ 豆1㎏の現物支給のみである。食用油と塩は含まれていない。それが供与される期間は 2 か月しかない。