相変わらず帯状疱疹は痛い。ズキズキ痛いのとヒリヒリ痛いのが別個に攻めてくる。空襲と艦砲射撃が交替に(ときに重なって)やってくるようなものだ。ただ悶絶するような灼熱痛発作は起きなくなった。「魔の三角地帯」は燃え尽きつつあるようだ。

それで、勉強はとてもする気にはならず、残り少ない人生を家でグダグダとしている。目下はFLACデータベースというサイトで音楽を楽しんでいる。高音質が売りでYou Tubeの低音質に泣いていた私にはうれしい限りだ。

そこで本題にはいるが、このサイトでサヴァリッシュ指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏でシューベルトの交響曲全集が聞ける。1967年の東独現地録音。別にデジタルでもなく新しい録音でもなく普通なのだろうが、大変素晴らしい音が出ている。

未完成交響曲を聞いてそのあまりの美音にびっくりした。残響をたっぷりとっているが、ホールが最後まで鳴っている。この間ペテルブルクで聞いたマリインスキー劇場のようだ。

未完成というのはむかしワルターのレコードで「運命」と抱合せになっていた。その後高校に入って小遣いを貯めて買ったのがジョージ・セルの未完成だった。あまり感激した覚えはない。友達が貸してくれたミュンヒンガーの未完成は、私のセットが安物だから、どうやっても最初の低弦の音が聞こえなかった。

大学に入ってもレコードを買うようなカネはなかったから、フォンタナの安売りレコードにすがるしかなかった。その頃買ったのがサヴァリッシュとウィーン交響楽団のハ長調交響曲だった。これも音は最悪で、スピーカーの前に座布団で蓋をしているような情けない音だった。まぁ1時間を超えるような曲をLP1枚に詰め込んでいたのだから仕方ないのだろうが。

それがトラウマになったのか、サヴァリッシュというとなにか敬遠するようになっていた。

そのむかしはNHKの番組に登場して、さっそうたる指揮ぶりを披露してくれて、私なりにフアンだったのだ。一言でいうと「明晰」というのが一番ピッタリしている。しかしレコードではそのような雰囲気はさらさらなかった。

初出の時から廉価版扱いだったようです。PHILIPSにとって、サヴァリッシュはその程度の指揮者だったわけです。サヴァリッシュは、このときのPHILIPSとの専属契約は『私の長い経歴のうちでも、ひどく後悔することとなったもの』と振り返っているそうです。mitch_haganeさん


今回サヴァリッシュの演奏は、日本デビューの頃と同じく颯爽としていて、ケレン味がない。音は磨かれてつやつやとしている。とくに内声部の音がスーッと浮かび上がってくるさまは、なんとも気分が良いものだ。

おそらくギリギリまでレガートをかけて、弓を弾き切っているのだろう。ホールの特質を飲み込んだサヴァリッシュが独特の音を作り出したのだろう。そして生来のリズム感の良さが、それを崩さずに持ちこたえさせているのだろう。

ヴァントと北ドイツ放送SOの未完成に度肝を抜かれてもう20年も経つが、これもまた一つのシューベルト像であろう。それでは少しサヴァリッシュを漁ってみようか。

サヴァリッシュ+シュターツカペレ・ドレスデンのシューマンは、シューベルト交響曲全集のあと、70年代に入ってからで、残念ながらまだ著作権切れにはなっていない。

You Tubeで聞いているが、これはシューベルト以上にすごい。ひょっとするとサヴァリッシュがこのオケを世界最高のオケにまで育てたのではないかと思われてきた。よく聞いてみるとたしかに、サヴァリッシュ好みの彩り濃く切れの良い音を出すオケだ。あの頃欧州公演を果たしたN響は、たしかにこんな音を出していたように思える。

追加: シューベルトのハ長調交響曲を聴いた。私は何でもセルの演奏を基準にしているが、どちらかというとセルはシューベルトが苦手だ。
この演奏はセルよりすごいと思う。サヴァリッシュのすごいのは対旋律を必ず浮き出すことだ。ほとんど偏執的だが、それが煩わしくならないのは人徳なのだろう。
少なくともサヴァリッシュはこれでフォンタナ盤の恨みを果たしたと言える。