赤旗で、松本記者がシンガポールのアジア安全保障会議を取材した報告を載せている。
前者は安部首相やヘーゲル国防相も出席する大きな会議で、マレーシアの方は学者と政府高官のワークショップみたいなものだったようだ。
当然前者は意見の言い合いになるのだが、松本記者は米中以外の発言に注目している。
ほとんどの発言が中国の「挑発的行為」を問題視。マレーシア国防相も「2国間と地域的な関与を通じて中国に対処する」ことを強調し、「法の支配の実現」を呼びかけました。
というのを引用している。
もう一つは米日両国とASEANの論議で、「リバランス」をめぐるものだった。リバランス戦略は、結局軍事同盟の強化というところにつながっていくことが、議論を通じて見えてきた。
「リバランス」政策は国務省というより国防総省のラインから出てきたもので、そういう意味では90年代クリントン政権の「ナイ構想」につながっているところがある。
ただASEANがNATO型軍事同盟への懸念を表明したのに対し、ヘーゲル国防長官は次のように対応している。
「各国は自国の安全保障に責任をもつべきだ。しかし、もし集団安全保障や同盟に参加したいなら参加すべきだ」
ということで、今ひとつ真意がわからない。「本気度」が伺えないのだ。
これは結局、中国の第二列島線(伊豆・小笠原諸島からマリアナ諸島を経てニューギニアに至るライン)構想に対して明確な態度をとれていないことに起因するのだと思う。第2列島線というのは、かつて日本で叫ばれた「マラッカ海峡生命線」と同じような発想で、防衛という名の膨張路線である。絶対に認めることのできない思想だ。
「太平洋は広い」と言って勢力圏を分割する中国の提案に、アメリカは曖昧な態度を取り続けている。
はっきりしているのは、中国の南シナ海進出や尖閣での挑発(第一列島線)は、第二列島線の形成のための必須条件だということだ。海上の防衛線は原潜とイージス艦を抜きにしてありえない。それには南シナ海とバシー海峡が必須だ。
アメリカはこの中国の戦略に対して基本的なところで腰が座っていないから、南シナ海についても正確な態度が取れないのだ。そして結局は自国のエゴを追求するということになる。そうなると「リバランス」戦略に筋が通らなくなる。
これが今の状況ではないだろうか。