この論文が私の抱えてきた疑問にかなり答えている。専門家委員会の一人として疫学派の旗振りをしていた押谷東北大教授が、メディアの前に登場しなくなった理由を知ろうと思ってグーグル検索したところ、上記の記事が飛び出したのである。

押谷教授は、これまでPCR検査拡大に否定的であるクラスター対策の中心人物であった。彼は現職に就任する以前、1999〜2006年に「WHO 西太平洋地域事務局感染症対策アドバイザー」を務めており、尾見氏の子分だ。尾身氏は90年から同機関に勤務、99年に事務局長に就任している。

3月22日のNHKスペシャル番組では、こう言い放っている。
日本のPCR検査は、クラスターを見つけるためには十分な検査がなされていて、そのために日本では〝オーバーシュート〟が起きていない。
PCR検査を抑えていることが日本が踏みとどまっている大きな理由なんだ。
ところが4月13日、日本内科学会の「新型コロナ」緊急シンポジウムでは打って変わってこう語る。
我々は、検査数を増やすなということは一度も言ったことがなくて、感染者数が増えている中でPCR検査が増えないということは、非常に大きな問題です。
教授がPCR検査拡大にきわめて慎重ないし反対ともとれる論を唱えてきたという印象があっただけに、驚いた参加者も少なくなかった。

さすがの提灯持ちNHKもいささか頭にきた。

内科学会の前夜、デスクが「前回ご出演頂いた時は、むやみにPCR検査を広げるのは院内感染を起こして危険だという話もされていたと思うんですが」と尋ねた。

押谷教授は「すべての感染者を見つけなくても、クラスターさえ起きなければ、感染は広がらず、多くの感染連鎖は自然に消滅していく」と、従来の自説を述べた。
そしてその上で、「⼗分なスピード感と実効性のある形での『検査センター』の⽴ち上げが進んでいないということが、今の状況を⽣んでいる」との見解を示した。

これって支離滅裂じゃない?  180度の方針転換だ。しかも方針転換したという認識すらない。二つの人格が平然と同居していて、なんの矛盾も感じない。そして専門家会議にはシレッと居残る。

親分の方は5月に入っても、メディアに「PCRの実施率が低い」と喋っている。もはや完全に頬っかぶりモードだ。あんたなんぞに新生活などと説教されとうない。

どうも見るところ、この先生、尾身氏の引きで専門家委員会に選ばれて舞い上がったんじゃないだろうか。そして尾身氏におだてられて疫学派の旗振り役を引き受けた。「友がみな、我より馬鹿に見える日よ」という心境だったのではないか。

小此木さんは以下のように厳しい目を注ぐ。
NHKのスタジオで手元のメモに目をやりながら慎重に言葉を選んでいるように見えた押谷教授の説明からうかがえるのは、感染者が急増してきたからPCR検査を増やす必要があると判断して、これまでの検査抑制論を転換したらしいということだ。
この後は有料会員しか読めないが、ここまで読めれば十分だ。

結局、山本五十六のようなものだ。緒戦でのクラスター作戦の勝利に酔いしれて、彼我の力関係を読み誤り、ミッドウェーの敗北の後も方針を変えられないまま、日本を焦土へと導いてしまう可能性がある。

一つ、この記事へのコメントを紹介しておこう。
事態が収束したら、誰がどのような意図でPCR数を抑制して来たのか(政府側も含めて)検証してほしい。
もしそうなれば、この教授も間違いなくその片割れだろうね。