今井佐緒里さんのレポート
がすごい。これだけの報告を書き上げた集中力に心から敬意を表する。

レポートの最初の言葉。
この原稿を書くのに5日間かかった。
一度は困難さに発表をやめようかと思ったが、あまりにも誤解が拡散しているので、不十分でも発表することにした。
一言で言ってヘビーだ。しかしトランプのWHO攻撃と韻を踏んで、ネトウヨどもによって拡散されている現在、この問題から目を背けるわけには行かない。

これを読むとわかるのは
1.ニュースそのものが本当に存在したのか。フェークではないのか

2.モンタニエが、正味のところ何をどう喋ったのかということ

3.モンタニエの理屈がどこが筋が通っていて、どこが「トンデモ」なのか

4.モンタニエがどのくらい怪しげで、どのくらいまともな人物なのかということ。モンタニエの背後にはどういう人達がいるのか。
などということだ。

これは私用の心覚えなので、どうか皆様には本文にあたっていただきたい。

最後に、ついでに本庶先生のこと(こちらはまったくのフェークで、それ自体が犯罪行為)にも触れておく。

1.できごとは本当に実際に存在した

4月16日、フランスの「どうして?ドクター」という番組でのインタビューが始まりだ。

モンタニエはこの中で「新型コロナウイルスは人為的なものであり、武漢の研究所でつくられたのだろう」と述べた。

4月17日、24時間ニュースチャンネルで同様の主張を行った。

とりあえず、核心的な事実はこの二つである。
モンタニエ
この件に関して論文は書いていない。つまり学問的な方法で自説を提示しているわけではない。

2.モンタニエは、正味のところ何をどう喋ったのか

彼の言葉は片言隻句ではない。ひとかたまりの論拠らしきものも付け加えられた主張である。

今井さんの記事から書き出してみよう。

① 「武漢の研究所」が、20年前からコロナウィルスを研究してきたのは周知の事実である。

② 今回の新型コロナウィルスは、人工的に作られたものだ。コウモリのウイルスを組み替えたものだ。
③ 海鮮市場から出たというのは、美しい伝説だが、そのような可能性はきわめて乏しい。
④ 以上から見て最も合理的な仮説は、この新型ウイルスが「武漢の研究所」で作られたものということだ。
⑤ 「誰か」がエイズのワクチンを作りたかった。そのためにコロナウイルスを使った。そのウィルスの一つが、研究所から「逃げた」ということだ。
⑥ 中国政府が知っていたのなら、彼らには責任がある。
このような内容を音声インタビューでもテレビインタビューでも言っている。

3.モンタニエの理屈のどこが「トンデモ」なのか

その前に、今井さんは日本のメディアにしっかりと釘を刺す。この怒りが難しい作業をしとげた原動力になっているのだろう。
すべてのフランスの信頼に足るメディアは、彼の主張に対し検証か批判をつけて記事を流した。しかし日本での報道では、この批判部分をわざわざ削除した上で報道している。
記事の信憑性をチェックする組織は、日本のメディアにはないのだろうか。
ということで、どこが「トンデモ」なのかの分析に入っていく。

① エイズウイルスとの「奇妙な類似性」

新型コロナ・ウィルスが人工的なものであるとする最大の根拠がこれである。
奇妙な類似性
モンタニエはこう語っている。
インドの研究者グループが新型コロナのシーケンス分析を公表した。驚いたのだが、そこには別のウイルスの配列が入っていた。それは自然に混ざったものではない。
彼らは公表しようとしたのだが結局撤回した。しかし科学的真実というのは重い。隠そうとしていても、現れるのだ。
② 「奇妙な類似性」への正統な反論

たんなる偶然か、意味のある類似かの判別は統計的(というより常識的)になされる。

もちろん我々しろうとの常識ではなく、専門家仲間での常識である。

奇特な人もいるもので、ある「科学コミュニティ」ではエイズと新型コロナに共通するシーケンスを他のウィルスと比べてみた。そうするとサツマイモ・ウイルス、ネクタリン・ウイルス、スズメバチ・ウイルスなどが次々とリストアップされた。

とにかく、それに意味をもたせようとするには、指摘されたシーケンスが短すぎる。エイズの配列を挿入しようとすれば、断片ははるかに大きくなるだろう。これが専門家の一致した意見である。

③ 余談: 青森のキリスト渡来伝説

青森の戸来村にはキリスト渡来伝説がある。
「キリストの里伝承館」には村とユダヤのつながりを示す数々の“証拠”が展示されている。
言い伝えではイエスの弟イスキリが身代わりとなって十字架にかかり、本人は戸来で106歳まで生きたのだそうだ。
キリスト記念館

④ シーケンスは作ることができるのか

答えはイエスだ。現代の遺伝子工学では可能である。しかしそれは既存のウイルスの組み合わせという操作にとどまる。

図で示されたようなマイクロ・シーケンスの変更は不可能であり、ましてそれにウィルス的意味をもたせること(遺伝的借用)は不可能である。

以上より、新型コロナ発生への人間の介入は不可能であり、それが人工的なものである可能性はゼロであるといえる。

したがってモンタニエの主張は青森キリスト説に匹敵する「トンデモ」説である。

4.モンタニエはどのくらい怪しげなのか

今井さんは、多分ここまで書いてきてブチギレているのだろう。悪口雑言撒き散らしている。

しばらくはその言うところを拝聴しよう。
モンタニエ氏の評判は全くかんばしくない。「トンデモ学者」「オカルト学者」とすら言われている。
パスツール研究所は彼との縁を切っている。フランス国立医学アカデミーも彼を非難している。彼はその言動により、科学界から批判と嘲笑をたっぷりと受けてきた。
あるとき彼はインタビューでこう述べた。
良い免疫システムをもっていれば、人は数週間でエイズウイルスを追い払うことができる。
彼はホメオパシー療法の伝導師となった。
植物、動物組織、鉱物などを水で100倍薄めて振る作業(活性化)を、10数回から30回程度繰り返して作った水を、砂糖玉に浸み込ませた「レメディー」と呼ばれる治療薬を飲むのだ。
なぜそれが有効なのか。水が、かつて物質が存在したという記憶を持っているためだ。

ホメオパシーについては、日本医師会および日本医学会が公式見解を発表している。

2012年には、約40人のノーベル賞受賞者が、彼を弾劾する共同声明を発表している。
医学は嘲笑され、患者はだまされ、同胞は悪用された。これらの虐待を非難するのに、公的権力と保健機関は、何を待っているのでしょうか?
もはやこれに付け加えることは何一つない。
付け加えるとするならば、怒りを忘れた日本のメディアの無責任ぶりであろう。

5.フェークが意図的に拡散されている

本庶先生の名を語った偽情報が世界中に拡散しているようだ。どうも出どころはインドらしい。新型コロナのシーケンスにエイズ・ウィルスのゲノムを発見したというのもインド人だ。
本庶フェーク
これは素人っぽいフェイクだが、米国ではもう少し怪しげな話があるようだ。

朝日の鵜飼特派員名の記事(20日)でこう書かれている。
米国の世論調査では国民の約3割が「ウイルスは人造」と考えている。
43%がウイルスは「自然発生した」と答えた一方、23%は「意図的に作られた」と答えた。とくに18~29歳の若い世代では、35%が人造説だった。
FOXニュースのキャスターらは「研究所から流出」の説を後押ししており、米メディアによるとトランプ政権の中でも注目されている。
ということで、こちらはかなり深刻な話になっている。とりわけ、若い世代が影響を受けているというところが怖い。世は乱世であり、ひょっとすると末世かもしれない。

我々も、「バカバカしい」と切り捨てるだけではなく、しっかりと根拠を持って反論していかなければならないようだ。