25日付け日経新聞の1面にローレンス・サマーズのインタビューが掲載された。
オバマ政権で国家経済会議委員長を務めた人で、米国の典型的なリベラル派の見解を表していると思われる。

1.先進国システムへの試練としてのコロナ危機

グローバリズムの進行した世界では、相互依存関係が強まるため、影響は一国にとどまらない。それは分かってはいたが、前例はなかった。

21世紀の先進国に共通するシステムは、「民主主義と資本主義の複合体」だ。このシステムがこの危機に対応し機能できるのかが試されている。

2.「システム」への不安

「システム」を率いる政府が不適切な方針を出した場合どうなるか、トランプ政権を見ているとそういう不安がある。それはいわばシステムの抱える脆弱性だ。

トランプはコロナに対する経済政策を誤解している。そのために感染者や死者の増大に歯止めがかからなくなっている。いまは医療専門家の意見に従い感染を抑えるための努力に集中すべきだ。


3.「システム」を支える社会保障制度

米国にはお金がないために病院に行けない人が少なくない。オバマ政権は社会保険制度の拡充を主張し続けてきた。コロナがその正しさを証明している。


4.格差の拡大がコロナ危機をもたらした

「システム」の経済的土台である資本主義経済がひずみを強めている。資金が溢れている一方で、実体経済は長期停滞を続けている。

投資機会を失った余剰マネーが金融市場に流れ込み、金融資産を押し上げた。この結果富裕層に集中が集中している。

富裕層はさらに富を求め、役員報酬を引き上げ、多くの株主還元をもとめ、自社株買いに走っている。

政府の支援は労働者やその家族を対象にすべきだ。向こう見ずな行動をとってきた企業を救うべきではない。


サマーズといえば、日本ではむしろ「悪役」として名高い。クリントン政権期に財務長官を務め、金融自由化を遮二無二推し進め、日本に無理難題をふっかけ、アジア通貨危機の引き金を引いた人物である
「たかが金貸し風情が出過ぎたまねをするんじゃないよ」を参照されたい。

そんなやつにお説教されとうはないが、さすがに歴史を俯瞰する眼は持っているようだ。「民主主義と資本主義の複合体」という観点は、民主主義の方に“?”は着くものの、理念型としてはアクチュアルだと思う。