本日のニュースでロヒンギャ問題の調査結果が出た。

ミャンマー政府が立ち上げた独立調査委員会は、「ミャンマー国軍に虐殺の意図は無かった」という報告書を提出した。

というもの。

赤旗は非常に優れた記事を掲載している。ラテンアメリカについてもこうあってほしいと望む。

まず事件の経過が客観的に描かれる。

事件の発端は「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)が軍・警察設備30ヶ所を襲撃したことにある。その後2週間近くにわたり約60ヶ所で衝突が発生した。
(ロヒンギャというのは地名ではなく、バングラから海岸沿いにラカイン州に進出してきたイスラム教徒集団を指す)

この武力衝突によりロヒンギャ住民70万人がバングラデシュに脱出した。
この過程で軍による残虐行為が重なり、それが大量亡命につながった可能性がある。

独立調査委員会は略称をICOEとする。政府が組織したものではあるが、委員の選出は独立性が保証されたものとなっている。

委員長はフィリピンのロサリア・マナロ(元外務副大臣)
委員に日本の大島賢三(元国連大使)
ミャンマーの元憲法裁判所長官
ミャンマー人で、元国連児童基金職員
という4人で編成された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが揶揄するような「政府委員会」ではない。
2018年7月に設立され、ラカイン州で関係者1500名の証言を集め検証した。

ネットではJIJI.COMの記事が読める。ただしバンコク発の情報なので、バイアスはかかっているかも知れない。

これは国際司法裁で「軍幹部にジェノサイドの疑いがある」として審理されているのとは、明らかに異色の見解だ。

以下報告の一部が掲載されている。
1.人権侵害はあった。
報告書は戦争犯罪や深刻な人権侵害、違法行為があったと認定。「一部の治安部隊要員が武力を過剰に行使し、住民殺害や住宅破壊に関わった」と指摘しながらも、「引き金になったのは武装集団による警察署などへの攻撃だ」と断じた。

2.ジェノサイドは認められない
すなわち、治安部隊の行為が特定集団の壊滅を目的としていたことを示す証拠はない。
だから、「ジェノサイドの意図があったと合理的に結論付けられない」という論理である。
どうもわからないが、これが当然なのか、意外なのかも判断がつかない。

次が「ミャンマーニュース」というサイトの記事

独立調査委員会の報告書は、20日のFacebookに掲載されているそうだ。

一部が抜粋されている。
入手可能な情報に基づいて、戦争犯罪、重大な人権侵害、および国内法違反が2017年8月25日から9月5日に発生した…
これらの重大な罪と違反は複数の者によって犯されたが、ミャンマーの治安部隊のメンバーが関与したと信じる合理的な根拠がある。
メディアは赤旗も含めて沈黙を守っている。グーグル検索をしても出てくるのは国際人権団体の非難声明ばかりだ。

とにかく事件は起きた。起きてしまった。最大の問題はこれを解決することであり、解決の糸口を見つけることである。ミャンマーを非難し追い詰めることではない。
もう一つは、ミャンマー国民も受け入れられる形で真実を追及していくことだ。ジェノサイドやエスニック・クレンジングという言葉を使うのは慎重であるべきだ。

国連や人権団体のやり方がそれにふさわしいものかどうかには疑問が残る。彼らはセンセーショナリズムの対極に自らを位置づけなくてはならない。中村先生を見習いなさい。
というのは、このところ国連諸機関の言動の「軽さ」が気になっているからだ。ロビイストに振り回されていないか、独自の裏取りをしているのか、公正な情報収集を行っているのか、独断・独善になっていないか、予算獲得のため自らセンセーショナリズムを煽るようなことはしていないのか、など気になる点もあるので、ちょっと懸念を口にしてみた次第である。

付録

根本 敬さんの「ロヒンギャ問題の歴史的背景」 という、学習資料があり、その中の表
ロヒンギャ問題の重層性
これだけの歴史的な根を持った問題であり、一朝一夕には行かない話だ。
なにかの折につけて「ポグロム」発作が再発することは大いにあるのだ。
ともに忌まわしい出来事ではあるものの、「ポグロム」と民族浄化は明確に分けて論じなければならない。
だから頼むから、強姦だの子供の虐殺だと言う話で対立を煽ろうというやり方は避けて欲しい。憎悪による団結は決して生産的なものではない。最悪の場合、「対抗ポグロム」にも繋がりかねない。
このようなアオリ宣伝からは、私には「文明人の」見下した態度しか印象に残らない。